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シナリオ詳細

<鉄と血と>一つでも多く、命を零さないように

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 リア・クォーツ(p3p004937)の頭痛は激しくなるばかりだった。
 クラースナヤ・ズヴェズダー革命派は武器を得た。
 各地で放棄した民草は鍛え直され、『人民軍』との名をほしいままにする。
 いざや開かれた決戦は帝都スチールグラードを燃え上がらせる。
 春の訪れを感じさせぬ帝都の土は未だ白く――けれどどこかでは赤く、黒く染まっていくだろう。
 ラドバウと同じく、帝都の近くへ拠点を持つ人民軍は鉄帝の地下に広がる鉄道より帝都へと攻め上がっている。
「シスター。何故か分かりませんが、酷く嫌な予感がするのです」
 アルブレヒトからの呼び出しを受けたリアは彼からそう言われていた。
「何か引っかかるのかい?」
 そう問うシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)や炎堂 焔(p3p004727)もまた呼び出された者達である。
「……理不尽に勝つための武器を得た、沢山の訓練をした。
 人民軍の彼らも無駄死になんてしない――させてはならない」
「そうだね……人民軍の人達がなるべく傷つかないようにしないと」
 そういう焔にアルブレヒトはこくりと頷いて、けれど暫し目を閉じている。
「そのために、少しだけ彼らよりも遅くに出動したいのです」
「一緒に行けばいいじゃない」
 リアが言えばアルブレヒトは少しだけ目を伏せる。
「――戦いにおいて一番警戒するのは後ろでしょう?
 僕はあまりそういうのは得意ではありませんでした。
 とはいえラド・バウの闘士の中にだってそういう方面が得意な闘士もいます」
「アルブレヒトは奇襲を警戒してるのね?」
 リアが言えばこくりとアルブレヒトは頷く。
「人民軍は所詮は『人民』です。
 本職の軍人が行なう隠密強襲を看破して進むのは難しいんじゃないでしょうか」
「だから、後から行きたいってことだね。彼らへの奇襲部隊を逆に奇襲するために」
 シキの言葉にアルブレヒトはこくりと頷いた。
「彼らが前に行きたいというのなら――私達で彼らの後ろを守りませんか?」
 そう言ったアルブレヒトは、兄としての目をしているように思えた。


 人々は銃を取った。
 それは王を倒して革命を果たすためでなく、体制を乱し己が利益を貪らんとするためでもなく。
 自分達を守るために、家族を守るために。
 尊き考えではない。当たり前のことだ。それでも、難しいことだ。
 革命の象徴だった彼女が、ただの彼女としてその銃声を告げたように。
 何でもなかった人たちが、何でもない人達のままに自分達を守るために武器を取った。
「……くだらない」
 ある女は吐き捨てるようにそう言った。
「本当に――くだらない。ただの一般人が、銃(それ)を手にすることの愚かさが、本当に分かっているのですか。
 そんなことだから、我々はこういった手が取れる」
 ――けれど、女は知らなかった。
 彼女や彼女の与する組織がどこまでも冷酷で合理的で冷徹であるのか。
 それを彼らが――ローレットがとうの昔に理解していることなど、女は知らなかった。
 知りえなかった――そして、戦場で『知らない』ことほど愚かなことはないのだ。


 ――地下道を進み、帝都内部へと入り込んだ人民軍が怒涛の如く制圧圏を広げていく。
 その後ろ、後続が続々と帝都へ乗り込もうとする場所で銃声が轟いた。
 それらの銃弾は人民軍へと到達――するよりも前、割り込むようにして展開された障壁と盾によって防がれる。
「思った通り来てくれたわね!」
 リアは響く嫌な音色に合わせ、押し寄せた敵兵へとそう叫ぶ。
「皆、奮起しろ! 俺らがこの人達に出来ることをしよう! 人民軍を守れ!」
 そう叫んでいるのは革命派に合流したオースヴィーヴルの一派。
「――読まれていたということですか」
 動揺したように目を瞠り、けれどどこか悲し気に目を伏せたのは――きっと今回の大将首だろう。

GMコメント

 さてそんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 帝都決戦に挑む人民軍の後方を奇襲してきたグロース師団を逆に奇襲してやりましょう。

●オーダー
【1】グロース師団の撃破

●フィールドデータ
 鉄帝国地下鉄の内部、帝都方面への入り口のほど近く。
 皆さんの背中の方からは人民軍の声が聞こえてきます。
 戦場自体は広い空洞になっています。

●エネミーデータ
・『未熟なる魔弾』ドルテ
 新皇帝派の女性軍人。鉄騎種。
 上官が倒れたことで緊急的に昇進でもしたのか、かなり若いように見受けられます。
 パワードスーツに身を包み、魔導銃を手に交戦を仕掛けてきます。

 魔導銃はレールガンの一種の様子。
【貫通】属性の他、【凍結】系列、【痺れ】系列などが予測されます。

・グロース師団兵〔ライフル〕×5
 ライフルを装備したグロース師団の兵士です。
 軌道性、速度、膂力強化の性能を持つパワードスーツに身を包んだ軽装歩兵です。
 遠距離から貫通や強力な単体攻撃を行います。

・グロース師団兵〔マシンガン〕×5
 マシンガンを装備したグロース師団の兵士です。
 軌道性、速度、膂力強化の性能を持つパワードスーツに身を包んだ軽装歩兵です。
 広範囲に向けて弾幕形成を図るでしょう。

・強襲型ストリガー×4
 生前に激しい怒りを抱いていたアンデッドモンスターです。
 両手が燃えさかる爪になった人型の存在。

 パワードスーツを装備され、機動力や反応、火力面での強化を行われています。
 燃えさかる爪を怒り任せに振るいます。
 【火炎】系列のBSを持つ物理至~近距離の単体や列への攻撃を行います。

・強襲型プレーグメイデン×4
 生前に激しい怒りを抱いていたアンデッドモンスターです。
 毒や病、狂気をまき散らします。

 怒り任せの衝撃波のような神秘中~超距離攻撃してきます。
 単体と範囲があり、【毒】系列、【凍結】系列、【狂気】のBSを伴います。

・強襲型ラースドール×4
 装甲を拡張され、遠距離攻撃に特化したラースドールです。
 古代遺跡から出土したパワードスーツに怒りが宿り、動き出した怪物です。
 細身の自動人形といった雰囲気があります。

 手をドリルのように回転させて単体へ攻撃する他、
 同様に胴体を回転させる突撃は【移】付での範相当への攻撃となります。
 その他、機銃掃射による中距離扇攻撃を行います。
 これらの攻撃は【出血】系列のBSを伴い、【致命】傷を呼ぶ可能性があります。

●友軍データ
・『優心雷火』アルブレヒト・アルトハウス
 ラドバウの闘士。善良で正々堂々とした戦いをする模範的武人と評されていました。
 下記3つの依頼にて焔さん、リアさんらと交流を持ちました。
 今回は食材の一環としての他、難民の自衛のためにも武器は必要と考え参加しました。

 ステータスはHP、物神攻、命中、防技などがやや高め。
【痺れ】系列、【火炎】系列を使う近接~中距離レンジのアタッカーですが、
 やろうと思えばタンクの真似事も出来そうなスペックではあります。

 ラドバウ闘士だけあり、ほっといてもある程度の戦果をあげるでしょう。
 何かあれば指示を与えてください。

・『棘朱の剣』フリートヘルム
 赤茶色の髪の青年。オースヴィーヴル一派で若い軍人。
 よく言えば素直で真っすぐ、悪く言えば思い込みが激しい馬鹿。
『<大乱のヴィルベルヴィント>誰が為の贖罪なりや』にて革命派に降伏。
 今回は罪滅ぼしとして部下ともに参加しています。
 本能型の戦術指揮センスを持っています。

・フリートヘルム隊×10
 フリートヘルムの麾下戦力です。
 クレイモア兵や斧兵、槍兵など近接系が5人。
 ドルイド風の魔術師や猟師のような銃兵が5人。

 基本的にはフリートヘルムの指揮に従い行動しますが、
 イレギュラーズの指示にも従ってくれます。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <鉄と血と>一つでも多く、命を零さないように完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月22日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
私のイノリ
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
一条 夢心地(p3p008344)
殿
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
セシル・アーネット(p3p010940)
雪花の星剣

リプレイ


「人が武器を取るのには理由がある。大事な人とか、自分を守るとか、ね」
 そう『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)の呟きも漏れる。
 それは昨日までの日常を過ごしていた彼らが銃を取った。
「戦うのは、それを仕事とする私のような存在や、軍人だけでいいんだよ」
 誰に言うでもない独白、静かに銃を構えたハリエットはそれを改めて思うものだ。
(ただの人が武器を持つなんて……私も最初はそう思ったよ。
 でも違ったんだ。たとえ時代がそうさせたのだとしても、守るって覚悟は私たちとなにひとつ変わらないんだって。
 ふふ、だったら力を貸すしかないじゃないか。私、覚悟のある子は大好きさね!)
 背中越しの熱意を感じて『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は思う。
 すらりと構えた愛刀とともに視線を向ける先には多数の魔物たち。
「後ろから奇襲たぁ勢いを削ぐ興ざめなぐらい上手いやり方だな。
 だがこれをへし折ってやりゃ勢いは増すってもんだろ」
 義腕の出力を上げる『老いぼれ』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)もそう言えば、その口元に笑みを作る。
「だがそれを挫くのが俺らってもんだ、そうだろ?」
「これから戦いに向かう以上、最終的に人民軍の人達全員を助けることは出来ないかもしれない……
 だけど、少しでも多くの人がちゃんと帰って来られるように、ここはボク達が守るよ!」
 同意するように『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が続けた。
(手を差し伸べた人達はあたしが護って引っ張ってあげなくてはいけないのだと、そう思っていた。でも、)
 静かに目を伏せていた『光芒の調べ』リア・クォーツ(p3p004937)はふと瞳を目の前の敵へ向ける。
「違うのよねアミナ」
 革命の象徴であることをやめた少女を思い起こす。
 もう一度深呼吸してから、リアは独りの青年の方を向いた。
「その……アルブレヒト……あたしの背中、任せたわ! 頼りにしているからね!」
「――お任せください。シスター、これが終わった後も、僕の道は続く。
 僕達(ひとびと)の道は続くのですから」
 目を瞠り驚いた様子を見せた青年、アルブレヒトは小さな笑みをこぼした後、そう言って両手に炎雷を纏う。
「人民軍は一人もやらせないよ!」
 そう言う『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は敵の大将首らしき女性の手元に視線を落とす。
「レールガンだね。ふふっ、私の電磁投射砲(レールキャノン)とどちらが上か白黒つけてやろうじゃないか!」
 紅から白に、白から緋に、圧倒的な速度で出力をあげる雷光を纏い、挑戦状を叩きつけるように言い放つ。
「読みがバッチリ当たったようで何よりじゃの。逆に言えば相手は目論見が外れたことになる。
 そなたらの作戦は失敗した。そう、失敗したのじゃ! 麿たちと戦っても勝てぬぞ」
 厳然たる事実を突きつけるように言い放った『殿』一条 夢心地(p3p008344)に苦虫を磨り潰したような表情を浮かべた女。
(そのように表情に見せる辺り、まこと若いおなごのようじゃ)
 夢心地は心情を表情に露出させるドルテへとそんな印象を受ける。
(加え、敵が集団での連携こそが真価ならば! そこを乱しにかかるぞえ!)
 ふふふと笑い、夢心地はすらりと愛刀を抜き放つ。
「アルブレヒトくんの考え、上手くいったね!
 数はそれなりに多いけど、動揺してるみたいだし……前衛は人間じゃない?」
 そう続けた焔は前衛の魔獣たちに首をかしげてた。
「前へ進もうとする人達を後ろから奇襲するなんて僕は許せません!
 この国は多くの血を流してきました。今も誰かが傷付いて膝をついているかもしれません。
 ……でも、彼らは立ち上がりました。それを守るのは僕達の役目なんです」
 『雪玉運搬役』セシル・アーネット(p3p010940)は剣を構えて言う。
 それは決して依頼を受けたから、それだけの理由ではない。


「僕が、助けたいから。前へ進もうとする人達を――助けたいから! 僕が、僕達が彼らを守り抜くんだ!」
 叫んだままに、セシルは一気に走り出す。
 圧倒的な速度で飛び出したセシルのことを止められる者は敵兵にはなかった。
 グリムセイバーに纏う温かなる光が零す燐光を引いて戦場を駆け抜け、そのまま振り抜いた。
 瞬き輝く神聖の光がアンデッドたちの身体へ降り注いでいく。
「投降しなさい」
 それに続いて前線へと飛び込んだリアは炎熱を帯びた旋律を戦場に奏でる。
 燃える旋律はアンデッドモンスターを中心に多くを焼き、その注意を惹きつける。
「リア君の言う通りだ! 投降したまえ。悪いようにはしない」
 最大出力まで到達したマリアの言葉にもグロース師団の表情は硬い。
「投降しないのなら……戦うしかない。可能な限り加減はしよう。
 倒れた相手にトドメを刺すこともしない。だが、運悪く死んでも恨むじゃあないよ?」
 最終通告の言葉にも返事はなく、ふと息を入れてマリアは走り出す。
 緋色の雷光を纏い繰り出した連撃でストリガーを蹴り飛ばしながら、先を目指して飛翔する。
「それなら相手が立て直す前に、もう一押しっ!」
 続けた焔がカグツチを投擲する。
 天井めがけて飛翔した愛槍はその形を変質させていく。
 放たれたるは裁きの炎、文字通りの神判の業火を模した広域破壊をなす紅蓮の柱。
 壮絶たる炎は敵の身体を焼いていく。
「愚かなことを! 貴方達のせいで、貴方達のせいで愚かな人が銃を取る!」
 悲痛さを帯びた絶叫と共に、ドルテがレールガンを撃ち、後続のグロース師団もまた銃撃を開始する。
「アルブレヒトさん、フリートヘルムさん。グロース師団との戦いは、これで最後にしたいんだ」
 そんな叫びを聞きながら、ハリエットは友軍へと声をかける。
「ええ、その通りだと思います」
「同感だ。俺らみたいなのが苦しむのも、俺らの家族が銃を握るのも、見たくねえ」
 アルブレヒトとフリートヘルムが各々応じれば。
「……ありがとう。力を貸してほしい。
 きっと、あの人に膝をつかせることができれば、ここの人たちっが戦う理由はなくなるから」
 そういったハリエットの言葉はきっと正しかった。
 壮絶なコントロールのままに引いた鋼の驟雨が敵のみを苛烈に叩き伏せて行く。
「全く敵が多くて厄介事上ねえっつうのに毒だのばらまくのは質悪ぃ。とっとと土塊になっとけ」
 それに続けるようにバクルドは義腕に内蔵された鋼鉄球を戦場にばら撒いた。
 強磁性を帯びた鉄球たちはアンデッドたちの身体を撃ち抜き、内部から磁力を走らせる。
 露骨に身動きが悪くなり、いよいよと連撃に焦れたアンデッドたちが動き出す。
『アァァァアア!!!!』
 アンデッドたちの怒りにも似た咆哮が響き、燃え盛る爪が紅蓮の線を引く。
 どこまでも怒りに任せたそれらの攻撃は、冠位憤怒の影響か、はたまた――
「アンデッドたちずいぶん怒っているじゃないか。なにかヤなことでもあったの?
 その怒りごと眠らせてあげる。もうゆっくり休んでいいんだよ」
 前衛、アンデッドらへと肉薄する位置でシキは剣を薙いだ。
 美しくも烈しい乱舞を描く斬撃は近づいてきていたプレーグメイデンを主体にストリガーを巻き込みながら幾重もの軌跡を描いた。


 迫りくる敵の攻撃を受け流して、リアは彼らの方に向き直る。
「あなた達にはあなた達の理由があって、そっちに立っているのでしょう。それ自体は間違いじゃない。
 奪った命は戻らない。どんな理由があれど、その行為は罪よ。
 だけど人は、罰を以て罪を償う事が出来る。
 そして罪と罰を受け止めたなら、その先は赦されなければならない」
「……我々に退路はない。作戦が失敗した以上、降伏は許されません!
 計画に失敗したのならなおのこと。突撃せよ! ここで磨り潰し、戦果をあげずして引き下がれようか!」
 リアの説得に対して、震えるようにドルテが言ってレールガンを構える。
「ここは通しませんよ! 皆が前へ進もうとしてるんです! 邪魔なんてさせない!」
 イレギュラーズの突撃を受け、波を打つように後退しせんとしたストリガーから視線を外さず、セシルは再び剣を開く。
 瞬く光は仲間達の猛攻で傷を受けたアンデッドたちへと降り注いでいく。
「青いの」
 ドルテの指示に合わせて動き出す敵を見定め、夢心地は思わずそう呟くものである。
 注意を惹きつけられたからか、或いは純粋に突破するためか突出してくるアンデッドの1体へと夢心地は愛刀を振り下ろす。
「まだ投降する気はないかい? 人間同士争うなんて馬鹿らしいとは思わないのかな? まだやる気なら覚悟したまえ!」
 マリアは目減りしていくアンデッドたちを蹴り飛ばしながら再び問う。
「やはり彼女を倒すところから始めたほうが良さそうだね」
 グロース師団はドルテを気にして動いている。
 マリアは雷光を纏いながら彼女へ届く道を探り始めた。
「このまま一気に片付けちゃおう!」
 槍の姿へと復元されたカグツチを手に、焔は刺突を払う。
 放たれた炎の刺突はゆらゆらと動き出そうとしたプレークメイデンへと苛烈なる壮烈なる炎を叩きつけた。
 撃ち抜かれた刺突にその個体が再び後方へと吹っ飛んでいく。
(試してみる価値はありそうだね)
 焔は倒れた魔獣に触れるや、紅蓮の火が付いた。
 それは決して燃え広がることなどなく、熱くもない。
 焔の持つギフト、神炎。
 明らかなる動揺が敵陣から溢れだす。
「落ち着いて鎮火しなさい!」
(やっぱり慣れてないのかな?)
 動揺するドルテへ焔はそんな印象を抱く。
「怯むな! 前へ進め! 鋼鉄の弾幕を披露するぞ!」
 自らを奮い立たせるように言ったドルテのレールガンによる砲撃に始まり、グロース師団が反攻してくる。
「道が開いた。ドルテさん達のところへ行って」
 ハリエットは愛銃に籠めた弾丸を一斉に戦場へと叩き込んでいく。
 出鱈目に放たれた弾丸たちは跳ねまわり暴力の嵐とかしてアンデッドたちを吹き飛ばしていく。
「道を切り開く!」
 シキは剣を振り抜いた。
 鮮やかに閃く斬撃の乱舞でもって敵を薙ぎ払い、作り出した道を押し開いて目指すは後方。
 増えてきたアンデッドの骸の数を背景に、友軍が抑え込みを掛けられるようになりつつあるのを感じ取りながら、確実に前へ。


 迫りくる多数のアンデッドたちの数が減っていく。
 そのやや後ろから突っ込んでくるドルテを見て夢心地は一歩前へ足を擦り進める。
「これ以上の抵抗は無意味と知れ!」
 刹那のうちに一気にドルテの眼前へと飛び込んでいく。
 何とか体捌きで退避しようとしたドルテのパワードスーツへと振り下ろされた斬撃は確殺自負の殺人剣。
 邪道の究極に近き一閃にパワードスーツに斬痕が浮かぶ。
「あとはフリートヘルムくん達に任せるね!」
 焔は友軍に声をかけると一気に戦場の後方へと飛び込んでいく。
 後方へと迂回して振り払ったカグツチは傷こそ与えぬもののグロース師団兵やドルテの精神を揺さぶるには十分だった。
 続いたバクルドは義腕機構により自身を弾き飛ばして一直線にドルテへと肉薄してみせれば、そのまま彼女の方を吹き飛ばす。
「よぉ、若えの、老いぼれの相手をしてくれや」
 険しい表情を浮かべるドルテへ、そのまま明鏡雪鋼覇を抜いて声をかける。
「確かに人民は兵隊のように統率が取れてるわけでもねえ、士気の上下に著しく左右されるほど不安定だ」
「分かっているのなら、どうして無茶をさせる!」
「――人の流れは時に御しがたいほどに強くなる。そうやすやすと止まりはしねえ」
「そうやって幾つもの死体を増やして、どうするっていうのですか! 死体が増えるくらいなら、その前に止めさせないと」
「増やさせねえ、なあ、若えの。流れを削ごうとして逆に止められた気分はどうだぁ?」
 ぐぅと唸るドルテへ、バクルドは攻めかかっていく。
「やぁ! 私はマリア! 似てるようで似ていない戦法同士、正々堂々と戦おうじゃないか!」
 ドルテへと到達したマリアはそう声をかければ、そのまま緋色の流星が如く肉薄していく。
「その名は聞いたことがある。ローレットにそんな名で紅の雷を繰り出す者がいると」
「知ってもらえているとはね。であればこういったものも聞いたことがあるかい?
 ――電磁レール形成! 攻撃対象に接続完了!」
 真紅に輝く鎧をまとい、マリアが肉薄すれば、ドルテの目が見開かれていた。
「これで私が攻撃を外すことはない!
 では始めよう! これが極天式電磁投射砲『緋雷絶華』だ!」
 そのまま緋雷を纏うマリアは若き将校へと蹴撃を叩き込む。


「これで、最後!」
 迫るラースドールめがけて焔が刺突を放ち、向かってきた方へと吹き飛ばす。
 別の個体にぶつかって停止したその個体は撃ち込まれた部位から崩壊して崩れ落ちた。
「その鋼鉄の鎧を、鉄砲を斬り裂いて丸裸にしてやろうぞ!」
 夢心地はドルテへと再び愛刀を見舞う。
 振り抜かれた殺人剣が再び壮絶な軌跡を描いてドルテのパワードスーツを切り刻んでいく。
「ドルテさん。戦いには流れとか機とかがあるんだって。それに乗れなかった、貴方達の負けだよ」
 ハリエットはパワードスーツの内側が露出しつつあるドルテへとそう声をかけた。
「……たとえ、そうだとしても、私は退くつもりはありません。この上は――」
 歯噛みするように言ったドルテがこちらへと銃口を向け、彼女の魔導銃へと電磁力が集束していく。
「……遅いよ」
 後手、銃口を魔導銃に据えてハリエットは引き金を弾いた。
 戦場を奔るラフィング・ピリオド
 後より先を貫く不可避の凶弾はハリエットの壮絶なコントロールセンスもあり、魔導銃の銃口へと吸い込まれたままに貫通して抜けていく。
「なにより、人民つっても鉄帝の連中だ。軟なやつばかりとは到底思えないんだがな」
 踏み込みと同時に死剣の連撃を見舞ったバクルドは先の言葉を翻すようにそう言うものだ。
「お前さん含めて、鉄帝の連中ってのがそう簡単にへこたれるかよ」
 銃とパワードスーツを駆使して可能な限りに傷を最小限にしようと試みるドルテは、しかし。
 バクルドの最後の一閃が魔導銃へと致命的な傷を加える。
「ドルテさん何で僕達があなたの前に立ちはだかっているか分かりますか」
 セシルもまたドルテへと肉薄する。
 時さえも置きざる壮絶の聖光を引きグリムソードを振り払う。
 苛烈極まる剣閃が強かに傷を増やしつつあるドルテのパワードスーツに更なる傷を刻む。
「私達の敵だから以外の理由など、ありません」
「――違います! 貴女自身が捨て駒にされたんです。そんな所に居たら貴女が潰れてしまう!
 だから、貴女を必要としている人達の元へ行きましょう! 前へ進む人達を貴女の力で守りに!」
 傷口を抑えるドルテへと告げれば彼女は首を振って否定する。
「私は軍人だから。負けてないうちから降伏などしない!」
 そういって自分を奮い立たせ、彼女は壊れた銃をこちらに向ける。
「『愚か』といったらそうかもね。それでも彼らには銃をとる理由があったんだ」
 シキはレインメーカーの照準をドルテへと突きつけ薄く微笑んだ。
 相対する彼女の銃は既にガラクタと化しているか。
「……君が銃をとる理由は何だい、お若いお嬢さん。
 悲しい顔されたら気になるじゃん。私に教えてよ、君のこと」
「私が、銃を取る意味、は……ごめんなさい、姉さん」
 ドルテが声を震わせ、目を伏せる。
「きっと罪なんて誰にもないよ」
 膝を屈したドルテへ向けたまま引き金を弾いた。
 不殺の銃声とと衝撃があって、目伏せたドルテはそのまま魔導銃を落として、敗北に涙する女性が残る。
「もう一度言うわ、投降して。一つでも多く、命を零さないように……暖かい春の陽射しを、皆で見る為に」
 ソレを見届け、リアは再びそう促すものだ。
「新皇帝、冠位魔種バルナバスはあたし達が倒す。
 その先の鉄帝の新時代を作って行くのは、此処に居る鉄帝の民全員よ」
「作戦には失敗する、期待にも応えられない……私は、私は」
 悲し気に言ってドルテがぽろりと魔導銃を取りこぼす。
 それに続けて、次々と兵士達が武器を投げ捨てて行く。
「命あっての物種だよ。私も君達も。だから共に考えよう。より良い未来の為に何が出来るか」
 マリアは崩れ落ちたドルテへとそう声かける。
「……私は、私は、」
 繰り返す若き将校へ、マリアは立ち上がらせるように手を伸ばす。
「自棄になるのはまだ早い。まもなく国が変わるところよ、それを見てからでも死ぬのは遅くないじゃろ。
 ま、変えるのは他でもない、殿的存在であるこの一条夢心地じゃがな。
 なーーーっはっはっは!」
 呆然自失と言った様子のドルテへとそう発破をかけるのは夢心地もまた同じく。
 大笑する夢心地の声は空洞内に反響していく。
「……アルブレヒト、一旦お願い。あたし達は、やるべき事をやってくるから」
「分かりました。……御武運を。どうかご無事で」
 アルブレヒトに頷いてから、リアは走り出す。
「アルブレヒト、アルブレヒト、すっかりいい顔になったね。
 かっこいいお兄ちゃんじゃないか」
 シキが言えば、彼は少し驚いた様子を見せて。
「――そうありたいと思いますよ」
 そう小さく笑む。その様子に大丈夫だと思いつつ、シキは次へと走り出す。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

大変お待たせして申し訳ありません。
お疲れさまでした、イレギュラーズ。

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