シナリオ詳細
<晶惑のアル・イスラー>麗しき薬師に伸びる悪徳の手
オープニング
●
傭兵、ラサの地で怪しい動きが確認されている。
市場に流通している紅血晶。
地下より発掘されたという小の宝石は現在、人気が急上昇しており、商人達が躍起になって取り合っているという。
わざわざ隣国の幻想貴族が使いをやってまで購入しているというから、その人気は本物だろう。
だが、この紅血晶には不吉な噂もある。
曰く、宝石の所有者は化け物になり果てる……と。
●
傭兵首都ネフェリスト。
サンドバザールに近いバーに、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)を始めとしてイレギュラーズ達が集まっていた。
「紅血晶の対策をしたいところですが、私からは別の依頼をお願いしたいと思っています」
最近、悪徳商人ゲドレの倉庫を摘発する依頼を出したばかりだが、その商人が直接サンドバザールにて、直接幻想種を狙っているという情報が入ったのだそうだ。
サンドバザールには、深緑の一件もあってラサで生計を立てざるを得なくなった者達もいる。
今回、襲われる可能性が高いのは、薬草やハーブを販売している若い幻想種達5名。
「フレグラント」と名付けられた店は、美しい店主や店員が詰めており、商品もあって密かに人気の店となっている。
そんな店の隣に、突如として金品、宝石のアクセサリーの店が開かれたという。それが悪徳商人ゲドレの出店だ。
働いているのは彼の部下である傭兵3人と盗賊3人の計6人。今回はグラオ・クローネ当日とあって、ゲドレ本人の姿も見られる。
彼等は人並みの途切れを待ち、幻想種を全員捕えて奴隷とするつもりなのだ。
「そのような所業、絶対に許せません」
下手に手を出せば、こちらが悪者にされかねない。
幻想種達には心苦しいが、ゲドレ達が行動に移ったタイミングで摘発するべきだろう。
ゲドレ達が本気で抗戦を始めれば、ペットのサンドエミューと共に交戦してくる。
ただ、サンドバザールでの交戦となる為、広域に影響が及ぶ技はある程度控える必要があるだろう。
「穏便にいくとは思えませんし、ゲドレという商人は紅血石を個人としても所有していると言います」
くれぐれもお気をつけてと、アクアベルはさらなる情報収集の為、バーから出ていったのだった。
●
サンドバザールの一角、「フレグラント」。
そこには、ラサ在住の女性を中心に人々で賑わう。
「いらっしゃいませ!」
麗しい幻想種の女性店主が笑顔で出迎え、その両脇にはすらりとした美少年と可愛らしい美少女が控えていた。
この店は幅広く薬草を取りそろえ、合わせて様々な効能のあるハーブ、普段の料理と合わせて旅にも持ち運べる香辛料なども目を引く。
普段森に住む幻想種達が目利きした品々とあり、ラサの人々からも絶賛され、少しずつ人気が高まっている店だ。
その隣は空き地だったが、なぜか最近になって金細工や宝石のアクセサリーを扱う「GDR出張店」が。
商品に交じり、最近巷で人気の紅血石を扱っているとあって、こちらも多数の人々が訪れる。
早くも紅血石がなくなったことで、そちらが閑散とし始めるが、店主であるゲドレはまるで気にする様子はない。
「紅血石の流通という目的は果たしたし、これからの商品調達こそ本命だからな」
汚らしい笑みを浮かべるゲドレは、部下達に隣の店の様子を探らせる。
商品がなくなれば、客も減っていくはず。ある程度人並みが減ったところで幻想種達の拉致に動く算段だ。
部下の傭兵、盗賊らは白い粉……アンガルカの入った袋を手にし、準備は万全。
今か今かと、そいつらは突入のタイミングを窺うのである……。
- <晶惑のアル・イスラー>麗しき薬師に伸びる悪徳の手完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年03月05日 22時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
ラサ首都ネフェリストのサンドバザール。
そこに、集まるイレギュラーズ達の反応は。
「悪徳商人め……性懲りもなく怪しい薬を悪用しますか……!」
「悪徳商人、幻想種さん達に手を出そうとするなんて……許せない」
ロウラン・アトゥイ・イコロ(p3p009153)はかつての事件を模倣しているかのような悪徳商人ゲドレに少なからず苛立ち、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も人を人と思わぬ所業に沸々と怒りを露わにしていた。
「深緑に領地を預かる身としては、幻想種の方にふりかかる災禍は防げればと思います」
秘宝種である『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)は他者を売り物にするような人の業を幾度も学び、それ自体は否定していない。
処世術であったり、満たされ、悦を得るヒトの感情故であったり、理由は様々だろうとグリーフは考えていたのだ。
「私は私の手の届く範囲のものを守るだけ」
一歩引いた見方をするグリーフに対し、他のメンバーはというと。
「いっつも幻想種は攫われたり商品にされたり、あたしぷっつん来た!」
「どこぞの聖女といいコイツらといい、人の命を何だと思ってやがる!」
「……外道め。人を捕まえ、私欲のために奴隷にしようなど論外だ」
『ノームの愛娘』フラン・ヴィラネル(p3p006816)、『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)、『蒼空の眼』ルクト・ナード(p3p007354)と、やはりというべきか、並々ならぬ怒りを見せる者が大勢である。
「まったく人間種の恥さらしめが。性根が異形と変わらんではないか。捕縛しなくてはなっ」
『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)もまた、今回の主犯であるゲドレに呆れて。
「紅血晶を所有しているらしいが全然効果ねーぞ! 紅血晶仕事しろ」
実際、紅血晶の流通にも携わり、自らも有しているというゲドレ。鈴音が言うように晶獣と化してしまわないかが懸念されるところ。
「ともあれ、一人残らず捕まえるし、同胞は守り抜くよ!」
今チーム唯一の幻想種であるフランにとって、これ以上、幻想種が虐げられる実状を見過ごすことはできない。
「何としてもぶん殴ってぶちのめす!」
「ラサの方針に従わないのなら、目に物見せてあげますよ!」
ヨゾラ、ロウランがこの捕り物劇に意欲を見せると。
「二度とこのような真似が出来ないよう、徹底的に叩き潰してやろう」
「外道にくれてやる情けはねぇ。徹底的にお灸をすえてやろうじゃねぇか」
ルクト、ベルナルドもまた静かに怒り、ゲドレに引導を渡すべく仲間と共に動き出すのである。
●
さて、メンバー達はサンドバザール某所にある幻想種による薬草を中心に扱う「フレグラント」と隣の宝石、装飾を揃える「GDR出張店」に向かう。
「フレグラントの護衛が主目的ではありますが、『GDR出張店』の方も洗っておく必要がありそうですね」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)も背後関係をある程度負いたいと考えながらも、仕込みを進める。
まずは、寛治は自ら客としてGDR出張店へ。
ガラの悪い店員に出迎えられ、彼は商品棚を眺めて。
「ふむ、紅血晶(おめあて)は売り切れですか。しかし、それ以外も興味深い品揃えです」
それでも、寛治はいくつか商品を見繕い、購入する。その際、彼はゲドレへと名刺を差し出す。
「これはこれは。噂はかねがね」
寛治の名を知っていたゲドレは帳簿を取り出し、手下に運ばせた商品を丁寧に箱へと詰める。
その様子を寛治は鋭い視線で注視しながらも、笑顔を崩さない。
「ラサ国外に顧客を抱えていましてね。次回は大きな商いのご相談に伺う事になるかと」
寛治が店員の気を引く間、店内には他メンバーの姿も。
例えば、ラサの女性風の姿をしたヨゾラがいた。
「どんな物売ってるかな、1つ買ってみようかな」
普段かけている伊達眼鏡をはずした彼は予め、顔や首、体に刻まれた魔術紋を化粧や服で隠す。
不自然を装う彼はふらりと現れた後、しばらく店内を眺めてから外へと出ていく。
「う、うわぁ~出遅れた~っ」
少しして、幻想の商人から頼まれた丁稚に扮した鈴音が情けない声を上げ、店員へと訴えかける。
「今日中に紅血晶売ってくれぇ~」
ゲドレ所有の紅血晶が出てくるまで、粘り抜いて販売をと叫ぶ心づもりだ。
その間にも買い物を終えた寛治はギフトによって背景に溶け込む。
忍び足で動く彼は気配を消し去り、ゲドレ一味が行動を起こすのを待つ。
一方、フレグラントは数名のメンバーが接触をはかる。
フランは直接見習い従業員となって働く。
なお、その肩にはクロウタドリの姿となったベルナルドがペットとして振る舞う。
どうやら、幻想種が狙われているという話は、従業員も周知していたらしい。
「最近幻想種が狙われているから、ローレットの幻想種が手分けしてお店を回っているんだよ」
ローレットの活動の一環だと知れば、幻想種らも快く協力してくれる。自分達の身を守るためもあったろうが、何よりローレットに対する信頼が得られていたことが大きい。
なお、裏でベルナルドは用心棒となる幻想種と精霊疎通を行い、事前に状況説明に当たっていた。
また、客としてはヨゾラがこちらにも顔を出す。
隣の店にいた時と同じ格好で、ヨゾラは感覚を研ぎ澄まして隣の店からの奇襲を警戒する。
また、裏手口を闇の帳を使って気配を遮断していたロウランが守っていた。
(思うに、ただ突入するだけなら入口で守れば問題なく……避難に裏口を使ったところにアンガラカを使うのでは?)
それなら、エミューも使えるし、用心棒2人も足止めされてしまうからだとロウランは推察する。
ともあれ、ロウランはレーダーを使い、店内を窺う。動きがあれば、何かかしらの反応が感知できるはずだ。
ルクトだけは、別の形で状況の推移を待つ。
「他の面々は潜入を主体として張るようだな」
メンバーの介入手段は従業員だったり、客だったりと手段は様々。
そんな中、ルクトだけは飛行して空から二店舗を文字通り俯瞰しながら監視する。
目や耳に自信があるルクトは全身の感覚を鋭くして、いつでも動けるように待機する。
GDR出張店の商品が減り、客が減ってきたことでそちらの店員の手も空き始めたのだろう。
徐に外へと姿を現したGDR店員……ゲドレ手下の盗賊らをルクトが注視する。
「……それらしい人物が出てきたな。作戦準備」
結局、紅血晶の販売を断られてしまった鈴音。
通行人よろしく店の前をうろちょろしていた彼女に、店員らも舌打ちしつつ、なかなかフレグラント側へと近づけずにいた。
ただ、傭兵達もまた表に出てきたことで、強硬策に出ることにしたようだった。
(…………?)
傭兵にファミリアーの存在を気づかれたと悟ったグリーフは、その1匹を囮にしつつ、もう1体で観察を続ける。
(3人以上なら……)
ロウランは事を起こしそうとする店員が3人以上と認め、パンツァーファウスト型クラッカーを派手に鳴らす。
こちらにやってくる人影がいないことで、ロウランは表側へと出て。
「通行人ども~、危険だから向こういってな~」
それもそのはず、フレグラントの店内はちょっとした騒ぎになっていたからだ。
「こっちに来て使い方教えてくんねぇかなぁ」
きっかけは、ゲドレの手下である盗賊が下手に出て声をかけてきたことだ。
「先輩、勉強としてあたしに対応させてください!」
店内では、フランがすでに店内へと入ってきたゲドレの手下3人と直接対していた。
何せ、彼女も幻想種。連れ去るなら幻想種の新人とあってフランが真っ先に狙われる。
もちろん、フランも伸ばしてきた手を払い、魔性と共に衝撃波を発して相手を牽制する。
「計画がばれてないとでも思った? そうはさせないよ!」
「うるせえ!」
強硬策に出た盗賊が小さな布袋に手をかける。
そこで、動いたのがベルナルド。
店内で身を潜めていた彼は、幻想種の用心棒と精霊疎通によって連携を取る。
「今だ」
ベルナルドの合図で、用心棒が精霊に呼び掛けて風を起こす。
「ぐわっ!!」
中身……アンガラカが盗賊2人の顔にかかり、1人はそれを吸い込み、呆けてしまう。
直後、後続として傭兵達が飛び込んできた後、ゲドレ本人もペットのサンドエミューと携えてくる。
「何やってやがる!!」
部下を叱り飛ばすゲドレだが、荒事になればやむなしと自らも青龍刀を抜いて襲い掛かって来るのだった。
●
「突入~」
どす黒い感情を察知してフレグラント店内へと飛び込む鈴音の次、ヨゾラも保護結界で店内を守りながら変身バンクによっていつもの姿へと戻り、戦闘態勢を整える。
「大人しくしな!」
幅広の刃を突き出すゲドレの正面へと寛治が店外から敵のみを狙って制圧射撃を行う。
「はい、脅迫行為を確認しました。ありがとうございます、これで正当防衛の言い分が立つというものです」
「チッ!」
グーー……グーー……!
相手がローレットだと察したゲドレだが、もはや止められないと徹底抗戦の構えに出ることにしたようで、サンドエミューも暴れさせる。
寛治も望むところと敵と見定めたゲドレ一味の後頭部を撃ち抜かんと弾丸を放つ中、手下は戦いの合間にも、店内の幻想種を連れ去ろうと画策するが。
「困るぜお客さん。ウチの店はお触り禁止なもんで!」
ベルナルドも手下へと奇襲し、人の姿をとって放った雷撃で敵を撃ち抜いていく。
交戦するメンバーの中で、一味に興味を抱かれていたのはグリーフだろう。
(彼らにとって必要なのは商品。それは、幻想種の方でも、紅結晶でもいいのでしょう)
ならば、彼らを惹きつけるのに、自身の胸の輝きはうってつけだと、己の核をのぞかせて。
「赤い宝石を買い取ってくれると聞いたのですが」
「ほお、これは手にしたいものだな」
ゲドレ自らがグリーフに手を伸ばすが、彼女は魔光を輝かせ、強く敵を惹きつけようとする。
「アンガラカも紅血晶も、どこから手に入れて何をどこに移すのか、話してもらいますよ?」
主犯のゲドレへと呼びかけるロウランは、ゲドレを中心に閃光を瞬かせる。ロウランの発した光はゲドレ一味にのみ襲い掛かり、その体を灼いていく。
「まだ、アンガラカを持ってるんだよね」
盗賊達が白い粉を所持しているのを確認したヨゾラは、呪鎖で縛り付けて力を削ぐ。
「僕等が吸っても危険な気がするからね」
魔術紋を光り輝かせ、ヨゾラは星空の極撃を叩き込めば、フランが用心棒らの力を借りて。
「落ち着いてあたし達と同じ敵を狙って!」
頷く用心棒らは風を巻き起こす。続き、フランが霧氷魔を浴びせかけた無抵抗な盗賊1体を凍らせ、倒してしまう。
「クソッ!」
傭兵が思わず声を荒げるが、弱り目に祟り目とばかりに鈴音が熱砂の嵐を浴びせかけていく。
「ここから逃すわけにはいかないので!」
そこで、盗賊が脚を活かしてこの場からの突破を試みるが。
「脚……機動力には若干の自信がある」
飛行したまま参戦するルクトは低空より戦場より敵が抜け出さぬよう急降下して華麗な空中殺法で手下を攻め立てる。
「格の違いを見せつけるぞ」
苛立ちげに歯ぎしりしたその盗賊は両手の刃を振り回し、メンバー達へと切りかかってくるのだった。
●
幻想種達の店、フレグラントで起こる戦いには多数のギャラリーが集まっていた。
店内には、店主や店員が隅へと退避してイレギュラーズや用心棒らの勝利を信ずる。
「頑張って……!」
ただ、その声に応じるのがゲドレの手下であることも多々あった。
主にゲドレを抑えていたグリーフだったが、その手下にも自らの赤い宝石を覗かせて注意を引く。
繰り出されてくる数々の刃。
グリーフはそれらを魔力障壁や結界を展開して受け止めて。
「私は大丈夫です」
「なんて奴だ!」
ゲドレの手下はゲドレと共にグリーフを倒そうと連撃を叩き込むが、彼女は立ちふさがり続ける。
(なぜ倒れないのか。その焦りを。かける時間を、割くリソースを消費させるのが、私の役割です)
ゲドレ一味が自身へとリソースを割き、消費させることこそグリーフの狙いだ。
その間に、仲間達がゲドレ一味を着実に攻撃を重ねて。
ベルナルドは戦場にいる敵だけを見定めて閃光を走らせ、さらに紫色の帳を下ろして人道外れた行いを終わらせんとする。
その帳を受け、動きを鈍らせた盗賊に再度アンガラカを振りまくのを警戒するヨゾラがさながら星の光が瞬くように極撃を打ち込む。
軽やかに刃を振るっていたはずの盗賊はその一撃で昏倒し、蹲るように崩れ落ちていく。
盗賊の手から零れ落ちるアンガラカの入った布袋を回収しようとした傭兵。
だが、それをロウランが許さず、激しく瞬く神聖の光がその傭兵の体を灼き、意識を奪い去ってみせた。
グー、グー……!!
バタバタと暴れ、蹴りかかってくるサンドエミューも面倒な相手だが、鈴音はそいつに熱砂の嵐を浴びせながらもゲドレに気を払わずにはいられない。
(化け物に変化しないか気になるけど……)
ゲドレよりも、まずは弱った敵を仕留めるのが先。
鈴音は更なる嵐を巻き起こし、巻き上げた盗賊を見事に仕留めて見せた。
フランもまた傭兵1体を追い込む。
バタバタと暴れるサンドエミューが邪魔する中、フランは抱いた強い意志を手下へと向けて。
「絶対、先輩達はあたしが守るよ!」
フランの強い想いが衝撃波となる。
その一撃には耐えられず、メイスを落とした傭兵は膝から倒れていく。
直後、ルクトも機動力を活かした攻めで傭兵を追い込む。
この場から逃れようと動いたように見えたルクトは、勢いを伴って発動させた魔術を浴びせかける。
「……捕らえた。大人しくしろ、外道め……命が惜しいなら尚更……な」
息はあったようだが、その傭兵にはルクトの声はもう届いていないようだった。
グー……、グー……。
ここまで、じたばたと暴れ、強烈なキックを見舞ってきていたサンドエミューもまた、疲れを見せていた。
衝術を撃ち込むベルナルドは、続けざまに零距離から長剣で刻み、トドメを刺してしまう。
ここまで銃弾をばらまいていた寛治も鉛を掃射し、残るサンドエミューの頭を撃ち抜いて仕留め、ゲドレの体も穿つ。
「ローレット……実に忌々しい……」
気づけば、自身の手勢全てが倒れていたことに気づくゲドレ。
そいつをグリーフが押し留めて。
「皆さん、態勢を整えていただければ」
ただ、皆不穏な空気を察知し、ゲドレから目を離せずにいた。
「どうせ捕まるくらいなら……!」
懐から取り出した紅血晶を掲げたゲドレの両足が膨れ上がる。
どうやら、すでにその足は徐々に人間のそれではなくなっていたらしい。
「晶獣化は認めねー!」
すかさず、鈴音がゲドレに大盾を突き出して体当たりし、その手から紅血晶を零れさせる。
「これ以上、紅血晶に呑まれさせはしません」
さらに、ロウランがその紅血晶を魔弾で見事に砕いてみせた。
ロウランは更なる攻撃をと身構えるが……。
「貴様ら、よくも紅血晶を、よくもおおおおお!!」
突然、ゲドレから放たれるオーラが禍々しいものへと変貌する。
「これは……」
完全な晶獣化こそ防いだが、反転してしまったゲドレは原罪の呼び声を発し始める。
「ふはは、これはいい! 貴様らのおかげでいいものを得た!!」
ゲドレを危険視したヨゾラが星の破撃で殴り掛かり、ロウランも絶対不可視の刃を放ったものの、ゲドレはさほど応えた様子はなく。
「俺はここで終わるわけにはいかんのだ!!」
晶獣となった両足で高く飛び上がったゲドレは、まさに人外の動きでサンドバザールから姿を消してしまったのだった。
●
魔種となり、半身を晶獣と化したゲドレはこの場から逃げ去ってしまったが、彼の手下6人はフランがギフトによって生み出した蔦でぐるぐる巻きにしていく。
「檻の中で思いっきり反省しろー!」
傍ではヨゾラもまた縄で縛っていたが、動けなくなった手下に、ベルナルドがドリームシアターによって、金が魔物になって襲い掛かってくる幻影を見せつける。
「「うあああああああああああああっ!!」」
「これで、二度と金儲けをしてぇなんて思わねえだろう」
それを見ていたルクトが小さく唸って。
「どうやら、紅血石(クソ宝石)を売りつけていた勢力でもあるようだし、その情報をひっぱたいてでも引き出した方が良さそうだ」
ルクトの言葉を受け、何か残っていないかと鈴音はGDR出張店を物色し始める。
「紅血晶を押収できたらよかったけどね」
最初にメンバーが確認した通り、すでに店内には紅血晶はなかった。
それでも、寛治は血紅晶の購入者や幻想種の購入者を特定する情報源とすべく、帳簿や顧客名簿などを押収していた。
同時に、メンバー数人が襲われた幻想種達のケアにも当たる。
フレグラントを訪れたロウランなどは興味のある香辛料を確かめさせてもらう。
合わせて、お礼に頂いたハーブティーを口にして。
「これはいいですね。心が落ち着きます」
「幻想種さん達には平穏に過ごしてほしいし、気を付けないとね……」
ヨゾラもまたそれを頂きつつ、幻想者の知り合いの姿を思い出すのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
白い粉の名前はアンガラカが正しいです。申し訳ありません。
MVPは敵2体を倒し、幻想種を守るという強い意志を見せたあなたへ。
恐るべき敵となり果てた悪徳商人とはいずれまた戦うことになるでしょう。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<晶惑のアル・イスラー>のシナリオをお届けします。
現在、ラサで流通する紅血晶と合わせ、またも幻想種の拉致事件が……。
●目的
サンドバザールに現れるゲドレ一味の撃退
●概要
ラサの都、ネフェルストのサンドバザールで幻想種の一団が出店を開いていますが、その隣にゲドレの一味もまた出店を開いています。
それらは機を見て、幻想種達を捕えようとしています。
●敵:悪徳商人ゲドレ一味
いずれもガラの悪そうな人間種男性。「GDR出張店」では宝石や金細工などやや高めのアクセサリーを販売しています。
いずれも白い粉、アンガラカを所持しており、これを使って幻想種の拉致を画策していたようです。
○悪徳商人ゲドレ
人間種40代男性。愛用する青龍刀で外敵を倒す肉体派である一面もあるとのこと。
紅血石の流通を積極的に行っており、合わせて奴隷売買も手掛け、金の為なら人命をも軽視する外道です。
○傭兵×3体
10代後半~20代くらい。
戦場へと向かうこともあるゲドレの手下である男達。
基本的には長剣、片手斧、メイスを使い、正面から敵をねじ伏せるのを得意としています。
○盗賊×3体
傭兵よりは年上、30代くらい。顔や体に傷を負っているのが特徴で、ガラの悪い外見をしています。
ジャンビーヤ、シャムシール、ククリを両手に持ち、素早さを活かした攻撃を行います。
○サンドエミュー×2体
ゲドレのペット。全長2mほど。空は飛べませんが高く飛び上がることは可能です。
気性は通常のエミューと違って非常に荒く、強い蹴りを得意とします。
●NPC
○幻想種×5名
店に詰めているのは5名。いずれも若い幻想種です。
店はハーブ、アロマ、香辛料などを販売しています。
1人が女性の店主、2人は男女で店員です。3人は戦闘能力を持ちません。
2人は男性の用心棒で、風の魔法と風の精霊を行使して戦うことはできますが、肉体派の相手が多い状況では厳しいと言わざるをえません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
それでは、よろしくお願いいたします。
Tweet