シナリオ詳細
フェアリーテイルの魔法
オープニング
・期間限定カフェ「フェアリーテイル」
幻想の街中に、期間限定のカフェがオープンした。
「いらっしゃいませ」
最初に出迎えてくれるのは、フリルとレースがたっぷりの衣装を纏った少女。お姫様を想像させるような可愛らしいお辞儀をして、少女は席に案内してくれる。
「メニューはこれさ。ゆっくり悩んでいいからね」
次に出迎えてくれるのは、華やかなスカーフを身に着けた青年だ。彼は王子様のように優しい笑みを浮かべて、おすすめのメニューを教えてくれる。
「この『白雪姫の毒林檎』は林檎の形のムースで、中に甘く煮詰めた林檎が入っているんだ。あと『ガラスの靴』は靴の形の器にシャーベットが盛り付けられていて――」
ここは、おとぎ話をコンセプトにしたメニューを揃えているカフェ、「フェアリーテイル」だ。お店の営業はグラオ・クローネの時期のみ。店員は童話に出てくるお姫様のように、あるいは王子様のように華やかな衣装を身に着け、客を迎え入れる。
「このカフェでは、誰でもお姫様や王子様になれるのよ」
少女が客に笑いかけると、耳元のイヤリングが輝いた。
「あなたもおとぎ話の主役よ。この時間を楽しんでね」
・あなたも主役
「おとぎ話がコンセプトのカフェらしいよ」
畏まった服装をしているのは『茨の棘』アレン・ローゼンバーグ(p3p010096)だ。彼は衣装に似合うように胸を張って、それから優雅に微笑んだ。
「グラオ・クローネの時期限定でやっているんだけど、メニューもおとぎ話をイメージしたものなんだ」
白雪姫の赤い頬、ラプンツェルの髪、王子様のキス、等々。童話の登場人物であったり、ワンシーンであったりを連想させるような名前のメニューが用意されている。メニューを考案した青年曰く、「物語の世界に飛び込めるようなお菓子」だそうだ。
「それから衣装も。お店の人はお姫様や王子様みたいな服とかを着て、お客さんを迎えるんだ」
着飾るのは店員だけではない。客も物語の登場人物になりきれるように、ティアラやネックレスなどのアクセサリーや、ブローチなどが用意されている。つまりここは、誰もがおとぎ話の世界に飛び込めるようなカフェなのだ。
「で、みんなにお願いしたいのは、このお店で楽しい時間を過ごしてもらうことなんだ」
少女と青年の依頼は、この店の噂が街に広まるようにすること。そのためにまずは、イレギュラーズにもこの店を楽しんでもらいたいということなのだ。店員としてでも、客としてでも良い。ここでおとぎ話の世界に入り込んでほしいのだ。
「お店手伝った人にも、お礼でお菓子を食べさせてくれるみたい」
だからお菓子食べたい人も好きな方を選べるよと、アレンは笑う。
「それじゃ、来てくれるのを待っているよ」
- フェアリーテイルの魔法完了
- NM名花籠しずく
- 種別カジュアル
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年03月01日 22時15分
- 参加人数6/6人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 6 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(6人)
リプレイ
「はじめまして、ヘンゼさん、グレーテさん」
本日はよろしくお願いいたします。そう丁寧に頭を下げたのは『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)だ。睦月はそれから客をひとり呼んでいるのだと告げた。
「その人が来たら、僕に応対させてもらってもいいですか」
「勿論よ」
グレーテに微笑まれ、それからドレスを選ぶように勧められる。
これが楽しみで来たのだ。店に置かれている様々な衣装をいくつも眺めて、それから茨姫がモチーフのドレスを見つけた。袖や裾に茨の刺繍があしらわれたそれは、触れようとする人を退けようとする雰囲気がある。夫以外の誰にも触れられたくないのだから、これくらいが丁度いい。
茨を模したティアラを髪に載せて、鏡に向かって微笑む。愛らしく美しい、賢い姫であるために、誰にでも笑みは忘れないように。
睦月が接客をする準備を進めている間に、夫――『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)は席についていた。
(良い雰囲気の店だね)
睦月が来いと言っていたから少し警戒していたけれど、小物も凝っていて可愛らしいし、落ち着いた雰囲気が良い。おとぎ話をモチーフにしているだけある。
席の近くにあるオブジェを眺めていると、ナイフと真珠と人魚の姿を模していることに気が付く。人魚姫だろう。
人魚姫の自己犠牲の精神は、史之の隷属の精神に通じるものがある。それに、愛する人のために自分の命を諦めるような悲恋は、ただ悲しいだけでなく、美しいとすら思うのだ。
ただ、自分がそうならないようには祈っている。それは愛する人を泣かせてしまうに違いないだろうから。
しめっぽい心情はこれくらいにして、お店を楽しもう。史之がそう思った時、着飾った睦月が水を運んできた。
「あ、しーちゃん、来てくれたんだね」
命令通りだね。そう睦月が史之の頭を撫でると、史之がゆっくりと目を細めて、それから何か気が付いたような顔をした。
「もしかして、今日は給仕をするつもりなの?」
「そうだよ」
「だいじょうぶ? 転ばない? こぼしたりしない?」
何もないところで転ぶこともある睦月を、史之が心配する。すると睦月はぷくっと頬を膨らませて、史之をつついた。
「もう、しーちゃんってば心配しすぎだよ。なんにもできなかった昔の僕のイメージを、いまだにひきずってない?」
睦月も普段はお皿を並べたり、配膳を手伝ったりしている。そんなに心配しなくたって大丈夫なのだ。
「それにね、しーちゃんにこのドレス姿を見て欲しかったの」
どう、似合ってる? 睦月がくるりと回ると、ドレスの裾が広がって、茨の刺繍がより目立つようになる。ふわりと広がったレースが可憐さを引き立てた。
睦月の服装は普段は和装や男装が多い。見慣れている服装も勿論良いが、こういったドレスはやはり新鮮だ。史之は睦月の頭のティアラから足元のヒールまで眺めて、ゆったりと微笑んだ。
「うん、似合ってる。すごく似合ってるよ」
史之が睦月の頬がほんのり赤くなり、得意げな表情に変わっていく。もう一度くるりと回り、ドレスを史之に見せた。
「うん、だからこそ汚したらもったいないかなって」
「だいじょうぶです、ちゃーんと注文をとって、お品を受け取って、問題なく運べますって」
再びぷくりと頬を膨らませた睦月に、「はいはい、わかってます」と史之が苦笑する。睦月に仕える身でもある史之には拒否権はない。大人しく接待を受けることにしよう。
仕事が終わったら、史之と同じものを食べたい。そう考えている睦月の前で史之が選んだメニューは「眠りから覚めたいばら姫」。薔薇の花が開き始めているような形のジェラートに、ほどけて緩んだ茨のチョコレートが飾られているお菓子だ。それを運んでくる睦月が転びかけていたが、お菓子も睦月も無事だったので良いとする。
(もしカンちゃんが眠り込んだら)
甘酸っぱいジェラートを口に含みながら、史之は考える。
いばら姫になった彼女を、決してひとりにはさせない。百年でも千年でも待つし、目覚めさせるのは自分でありたいと思う。だって愛する人の唇を、他の男にくれてやりたくはないのだから。
お茶会を楽しめば良いなんて、なんて素敵な依頼なのだろう。そう思いながら店に足を踏み入れたのは、『蛟』尹 瑠藍(p3p010402)だ。猫がじゃれあっている様子をうつした飾りが置かれた席を選んだ瑠藍は、自分の恰好を見下ろした。
覇竜の外の物語には詳しくないが、この格好が店のイメージから外れていることは分かる。
「何かちょうどいい貸し出し物品はあるかしら」
「それならこちらです」
グレーテに案内され、衣装が並べられている場所に向かうと、たくさんのドレスが目についた。悩みながら衣装を手に取り、グレーテにいくつかの衣装を勧められ、やがて青と黒が基調のドレスを身に着けることにした。小物でシノワズリ風にしつつもとんがり帽子を被った姿は、魔女と呼ぶのが相応しいだろう。
魔女になった瑠藍は席に戻り、メニュー表を開く。様々な物語の挿絵と共に示されたメニューの中から瑠藍が選んだのは「猫の集い」だった。
運ばれてきたお菓子は、チョコレートと焼き菓子の詰め合わせだ。笑った猫の顔の形をしたパンケーキと、その側に添えられたブーツの形のカステラと王冠の形をしたチョコレート。それから皿の縁を歩くように置かれた、チョコレートの黒猫と赤猫。賑やかな見た目に、瑠藍の頬も緩む。
(可愛らしい見た目だこと)
覇竜のドラネコといい、猫という生き物は何処でも人気だ。こういう見栄えのするメニューを絵に描いて広報に使えば宣伝になるのではないだろうか。
見た目を存分に楽しんでから、まず赤猫のチョコレートを口に運ぶ。ヘーゼルナッツの香りが豊かで、滑らかなチョコレートが舌の上で広がる。続けて食べたパンケーキはふわふわで、ほんのりとした甘さが食べやすかった。王冠のチョコレートは中が柔らかい生チョコで、食感の違いが楽しい。
可愛い見た目のものは食べるのが勿体ないと言うけれど、やはり食べ物は美味しく食べるに限る。そう瑠藍はお菓子の一つひとつを味わうのだった。
エプロンドレスに頭の上につけたリボン。アリスの恰好をした『欠けない月』ピリア(p3p010939)が「いらっしゃいませ」と挨拶する。
「こんにちはなの! きょうはきねんび? それともなんでもないひ?」
店に来た少女と少年が、今日は少女の誕生日なのだと教えてくれる。ならば楽しんでほしいと、ピリアは少女たちを席に案内した。
かわいいカフェは見ているだけで楽しい。大好きな絵本の世界に入れたようで、わくわくとした気持ちになる。
アリスのように、ピリアはシロウサギを探して店をぱたぱたと歩き回る。少女と少年の視線がピリアを追いかける。
ピリアが店の机の間を曲がったとき、メカニックなうさ耳と尻尾をつけた『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)と出会った。バニーさんだ。
「ウサギが出てくる御伽噺と言えば?」
きらきらとした目を向ける少女たちが、思いついたものを挙げていく。そのうちの一つに、ハインは大きく頷いた。
「そう、ウサギとカメだね。僕が用意したのはこれ!」
ウサギとカメの形をしたお菓子が、少年たちに差し出される。レープクーヘンという、蜂蜜と香辛料をたっぷりとつかった、甘くスパイシーな焼き菓子だ。二人がそれを口に運ぶと、ふわりと表情が柔らかくなる。
「いっぱい食べてね」
料理もできるからと、自分で作ったお菓子だ。こんな風においしく食べてくれるのなら作った甲斐があると言うものだ。
少女たちがレープクーヘンをもう一枚食べた頃、マジックショーが始まった。トランプを広げているのは、幽火(p3p010931)。不思議の国のピエロの恰好をして、少女たちの前に立つ。
お菓子作りが不得手な幽火がこの店できることは、自然と接客になる。大道芸人時代の芸とそれなりの接客くらいしか役に立つことが思いつかないけれど、この場では十分だ。丁度トランプもあることだし、ピエロらしく振る舞いながらカード芸をすることにしよう。
何が始まるんだろう。そんな表情をしている少女と少年に、まずは恭しく挨拶をする。
「本日はカフェ『フェアリーテイル』にご来店いただき、まことにありがとうございます」
特別な日に、ちょっとした刺激を求める少女たちに、楽しい時間を。それから、一緒にショーを披露してくれる仲間たちの目や気持ちを楽しませてられるような、素敵な出来事を。
幽火が何の変哲の無い見た目のカードを取り出す。少女にも近くでそれを見せ、普通のカードだということを確認させる。
「ピリア、持ってごらん」
「はいなの!」
ピリアがカードを受け取ったとき、幽火の手が一瞬カードを覆う。「ワン、ツー、スリー」
次に少女たちの目にピリアの手が映った時、そこにあるはずだったカードはメニュー表に変わっていた。「わわ」と声を上げるピリアと少女たち。
「ふしぎのくにの、ふしぎなできごとなの~♪」
メニュー表を渡し、ピリアが拍手をすると、少年もわっと拍手をしてくれた。驚いていた少女も笑顔になり、大きな拍手をした。
メニュー表にしかけがあるのかとメニューを覗き込む少女に、ハインが近づく。
「何か気になるものはあるかな? 僕が作るよ」
少女が顔を上げると、ハインはシルクハットやバーを持っている。マジックをしてくれるのかと少女が問えば、ハインはお手伝いなのだと片目をつぶった。
ハインにはマジックの知識や技能はないけれど、マジックが一瞬の隙に行われるものだということは知っている。バニーはカジノやバーでも有名だけれど、マジックショーのアシスタントだってしているのだ。セクシーな格好で注意を引けば、机の上には不思議な出来事がいっぱいだ。
「あれ、ここにあったお花は? カードがかざしてあったの」
「紅茶のカップになってる」
盆に置かれていたはずの花がいつの間にか消え、花柄の紅茶のカップに変わっている。
すごいとはしゃぐ少年たち。ウサギとカメのウサギはサボり魔だけれど、一度負けた今は反省しているのだ。これからも楽しいマジックが見られるように手伝うこととしよう。
ハインが少女たちに出すためのお菓子を作っている間もショーは続けられる。現れたティーポッドは温かな紅茶で満たされていて、注げば薔薇の香りが漂った。
「ねえ、マジックの仕掛けってどんなの?」
「ふふ、それは秘密さ」
「どうして?」
「知らないほうが夢の中にいられるじゃないか」
おどけたように幽火が言うと、少女は一度きょとんとして、それから納得したように頷いた。
「ほら、周りを見てごらん」
少女が顔を上げると、オパールのような輝きがふわふわと浮かんでいた。そして、エプロンドレスを身に着けた少女の姿、時計を持ったシロウサギ、ニヤニヤと笑っている猫をはじめとする物語のキャラクターが浮かんでは、ぱちりぱちりと消えていった。この空間で、物語が進んでいく。
歌を歌うピリアの、この店を楽しんでほしいという願いの形だった。
少女たちが退店してすぐ、髪や胸ポケットに咲いた花に気が付いたのだろう。店の外からきゃあきゃあと騒ぐ声が聞こえた。それを聞いた幽火がゆっくりと息を吐き、つられてハインとピリアもほっとしたような声をあげた。喜んでくれてよかったと、三人で顔を見合わせる。
「それじゃあ僕たちもティータイムにしようか」
ハインが用意していたのは、ヘンゼと共に作った赤と白、それから両方が混ざった色の薔薇のチョコレートだった。赤薔薇のチョコレートの花弁を一枚かじると、内側は白いままだった。色が塗り替えられたもののようだ。
「白い薔薇にはこの赤いソースをかけてね」
薔薇の色を染めると、その香りがぐっと強くなる。
「おいしいの~」
「うん、すごくおいしい」
「よかった、うまくできて」
チョコレートの舌触りはなめらかで、チョコレートの風味に混ざって薔薇の香りがほんのりとした。
夢の世界の、夢のような味だった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
NMコメント
こんにちは。椿叶です。
おとぎ話をイメージしたカフェでお菓子を食べたり、手伝ったりする話です。
目的:
カフェの宣伝ができるように、カフェを楽しむことです。お店側として楽しむか、お客さん側として楽しむかは自由に選べます。
状況:
場所は幻想にあるカフェです。グラオ・クローネの時期限定で営業が行われ、おとぎ話をコンセプトとしたメニューがあります。店員側の衣装もおとぎ話をイメージしたもので、王子様やお姫様などの服装で接客をします。
青年&少女について:
店の経営をしている二人です。メニューの考案と料理は主に青年が、接客は主に少女がしています。
青年の名前は「ヘンゼ」、少女の名前は「グレーテ」です。
できること:
【1】客として楽しむ
お客さんとしてお店のお菓子や雰囲気を楽しんでください。
おとぎ話の登場人物になりきるための装飾品なども貸し出しされています。物語の世界に入り込みながら、お菓子を楽しんでもらえたらと思います。
【2】お店を手伝う
お仕事の内容は主に接客とお菓子作りのお手伝いです。お手伝いをしつつお店の雰囲気を楽しんでください。
お客さんがお店を楽しむための手伝いをしてください。おとぎ話のお姫様や王子様などになりきって、雰囲気を作ってください。
お手伝いをしてくれた方はお礼として好きなお菓子を食べさせてもらえます。
サンプルプレイング【1】:
おとぎ話をイメージしたお菓子かあ。どれもかわいいんだろうな。
そうだな、私はお客さんとしていろんなお菓子を食べたいかな。「人魚姫の涙」ってお菓子が気になるなあ。
サンプルプレイング【2】:
僕はお店のお手伝いしようかな。お菓子作りはあんまりだけど、接客は楽しいから。折角おとぎ話の世界にいるわけだし、ここはしっかりしないとね。王子様になりきって接客するよ。
食べたいお菓子があればプレイングに記載していただければと思います。料理名を決めて内容こちらにお任せでも構いません。記載がなければこちらでお菓子を選ばせていただきます。
よろしくお願いします。
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