シナリオ詳細
<腐実の王国>影に侵された白亜の住人
オープニング
●
――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。
天義に下った新たな神託。
現状、箝口令が敷かれ、騎士団がこの神託の意図の解明に動く。
その騎士団も人手不足のようで、国内各所で活動しているのは小規模な小隊であることも少なくない。
エル・トゥルルを訪れていた聖騎士達の目的は、街の水が腐り始めたという件の対処に動いていた。
海に面しているこの白亜の街には、多数の人々が訪れる。
『ガレサヤ・ピレア大聖堂』へと巡礼に訪れる天義民は少なくないし、エル・トゥルルへと物資を運び入れる者、行商を行う者もいる。
そうした者達はホテルへと泊まるはずだが、そのホテルの一つが今、事件に巻き込まれてしまっていた。
「この忙しいときに……」
聖遺物の調査を進めていた3人の聖騎士達は悪態をつきながら、現場であるホテルへと向かう。
ホテルは3階建て。個人経営ながらも、個人から団体まで受付できる街では中規模程度といった位置づけの宿だ。
大通りに面したこのホテルもまた白亜の壁が特徴的だが、その宿の前で暴れていたのは、影を思わせる集団だった。
「神託……神託の……成就を……」
人型をした4つの影はそんな言葉をぶつぶつと呟きながらも、引き連れた獣と人々にホテルを破壊するよう指示を出す。
獣は2体。全身真っ黒な大型犬を思わせる姿をしているが、それらはホテルの手前にあった植え込みからかぶりついていた。
「ひいいっ……」
植え込みは徐々にその姿を消していくのに、聖騎士は思わず戦慄してしまう。
それらをできるなら排除したいところだったが、厄介なのは影と混じって一般人が凶器を手にしてホテルを破壊しようとしていたこと。
それらはこの街の住民だったようなのだが……。
「maoij0aga9……ighpairenbagoijok……」
「yoaho……ehctpa0zportipro……mipagjw」
全く聞き取ることのできない言葉を操って意思疎通を行っており、これにも聖騎士は顔を引きつらせてしまう。
「一体、何が起こっているんだ……?」
ともあれ、このままではホテルの正面扉から壁が破壊されかねない。聖騎士達は盾を突き出し、その集団を抑えつけようとする。
合わせて、聖騎士達は手にする騎士槍で影の人型と大型犬を排除しようとするのだが、一般人が凶器を振り回して邪魔してくる。
「「ioutnyzmjsmenobopielaelpaojoelkjougihgeai……!」」
「くっ、これでは……!」
多勢に無勢。聖騎士達はその一隊の攻撃に防戦一方となり、ホテルを護るので手一杯となってしまう。
「…………」
大通りで起きたその騒動を物陰から見ていたのは1人の少年。
白銀の鎧を着た小さな人影は小さく頷いて物陰へと消えていったのだった。
●
そのホテル・チョーク内部。
エル・トゥルルへと滞在していたローレット・イレギュラーズは別の依頼帰りだったり、別所に向かうべくこのホテルに泊まっていたりと様々。
そんな面々を、『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が宿泊していた部屋へと呼び寄せる。
「思ったより早かったね」
早速、彼女は窓から外を見るようにメンバー達へと促す。
そこは、2階大通り側の部屋。
入り口付近を見下ろすと、天義の聖騎士が凶器を振り回す一般人と、真っ黒な人影に大型犬を抑えつける姿が確認できた。
どうやら、暴徒と化した一隊はこのホテルを破壊しようとしていたようだ。
「ここはアタシもそうだが、多くのイレギュラーズが利用している」
街には他にもホテル、宿は存在しているのだが、イレギュラーズの利用が多いという理由で狙われている可能性が高いとオリヴィアは話す。
廊下には、老齢に差し掛かったホテル・チョークの主人が縋る様な瞳で助けを求める。
ゆっくり説明している時間も惜しい状況。暴徒と化した一般人とそれらを煽る影の集団を撃退したい。
「……この集団がどこから現れたかは後で情報収集するとして、だ」
正面は大通り。これほどの集団が移動していたのなら、目撃証言も多数あるはずなのだが。
「今はあれの鎮圧が優先だ。アタシは宿泊客の避難に動くから、正面は頼んだよ」
そう告げ、オリヴィアは宿の主人と共に客の避難誘導を始めたのだった。
- <腐実の王国>影に侵された白亜の住人完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年02月28日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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天義、エル・トゥルルのホテル・チョーク。
そこに滞在していたイレギュラーズは現状を把握して。
「なんじゃあ?!」
騒がしさに飛び起きたティーンエイジャーの亜竜種少女『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)は窓の外を見下ろし、何やら騒ぎになっていることを知る。
「全く、何が起こっているのか分かった物ではないね……」
純粋なる冒険者だと自負する『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)もまた別室でその光景を視認する。
天義の聖騎士が押しとどめているのは、狂気と化した住民達。
それらを従えていた複数いる影の人影は、大きく膨れ上がった大型犬のような終焉獣2体も引き連れていた。
一隊はなぜか、このホテルを破壊しようとしているらしい。
「ふぅむ、大変な状況ですね。っていうか、何がどうなってこんな状況になってるんですかね……?」
この状況を訝しむたい焼きの外見をした『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)だが、現状では情報が足りない。
「あ~これトラブルに巻き込まれた! って奴だね。うん、知ってた!」
正式名称を菖蒲型魔導機巧人形拾壱號という『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)はここ暫く不穏さを感じており、この事態を予期していたようだ。
「それじゃあ、お仕事と征こうか」
「こりゃいかん! 急いで行かねば!」
ラムダ、ニャンタルは部屋を飛び出して事態の収拾に当たるべく動き出す。
その後、メンバー達はオリヴィアから手早く事情を聴いて。
「寝起き早々戦闘とは!」
ニャンタルが思わず叫ぶと、他メンバー達も所感を口にする。
「寄りにも寄って、人の多いホテルを狙われるか」
駆けつけられた聖騎士は僅か3人だけ。
大勢を狂人に変えられては人手不足になるだろうと、幻想貴族の出身、『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は語る。
「悪意を認める気はないが、俺達が使ってたために襲われたのならば俺達が責任を持って守らないとな」
音楽一家の生まれ、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が言うように、イレギュラーズが多く詰めているホテルだから狙われた可能性が高い。
ならば、自分達が対処すべきなのは必然と皆確認し合う。
「まぁ、なんであれやることはそう変わらないと思うのでいいでしょう」
ベークは僕程度で力になれればいいがと不安を覚えるが、事態は急を要する。
「とにかく、まずは大人しくして貰わないとね」
「聖騎士さん達もなかなかに押され気味、早々に助勢としようか」
カイン、ラムダの主張通り、一刻を争う事態。
イレギュラーズは取り急ぎ、入り口で暴徒となった住民らを抑える聖騎士の救援に入る。
「貴公らは……!」
ホテルに詰めていたイレギュラーズ数名の姿を認め、劣勢だった聖騎士達の瞳に正規が宿る。
「ご無事ですか、聖騎士の皆さん」
「お役目ごくろうさま、聖騎士諸君。俺たちが来たからには安心していい」
夫婦で参戦する『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)、『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)の2人は開口一番、ホテルを確保してくれたことに礼を告げる。拠点がなくては一般人の収容もままならないからだ。
また、睦月はすぐ、ボロボロになった聖騎士らを癒すべく聖域を展開していた。
「間に合ってよかったよ。空の敵なら俺に任せな」
「ここまで耐えてくれてありがとう。ここからは俺達に任せてくれ!」
G-ドライブで飛行するアルヴァが聖騎士達の頭上から呼びかける。 イズマも翼持つ影の天使が頭上から強襲してくるのを警戒し、ワイバーンのリオンに騎乗していた。
さらに少し高い位置で同じく空を飛ぶニャンタルが隠れている敵の存在がいないかと見回していたが、聖騎士達の支援の為と降り立ち、戦乙女の呼び声で1人ずつ癒していく。
「此処は我等に任せてお主等は逃げ遅れた者が居らんか、周囲の確認と避難誘導、これから倒す一般人の退避を手分けして頼む!」
「しかし……」
これだけの敵を前に退けというのは、聖騎士達も気が引けたのだろう。
(やはり、不服なのだろうね)
彼らの反応は致し方ないことだと、ラムダは考える。
「「nriyilxrjtiuoxr……」」
だが、その間も全く聴き取れぬ言葉を吐きながら、住民らは狂気を振りかざす。
それらを再度食い止めようとする聖騎士だが、カインが代わって。
「僕達は可能なら戦闘に集中したいからね。それらの対応を頼みたいから、ここで倒れられちゃ困るんだよねっ!」
周辺住人への対応や気絶させた一般人の保護……この場においてやることは多い。
この場は荒事に慣れているイレギュラーズに任せ、自分達がそちらへと回るべきだと聖騎士達は確認し合う。
「昏倒させたとはいえ、元に戻る保証もないし……かといって戦闘の余波に巻き込むわけにはいかないからね」
ラムダがそこで合いの手を入れると、聖騎士達も一般人の保護に回ることに決めたようだ。
「……よくここまで戦われましたね。ここから先は僕たちへお任せを。きっと、良い方向へ行きますから」
「街の人は死なせないし、敵は必ず滅する。だから俺たちのことを信用して、あとを任せてくれないか」
睦月、史之の呼びかけを受け、まずはホテル内で行われる宿泊客の避難誘導の手伝いへと回る。
(納得してくれてよかった)
ラムダもこれで、戦いに集中できるというものだ。
「この世界を喰わせてたまるか! 狂わされた人々もお前達には渡さない。助けるぞ!」
聖騎士らが一度ホテル内へと入ったのを確認し、メンバー達は襲い来る影の一隊を相手にし始めるのである。
●
影の一隊の行動は変わらない。
「yhenlz.lgouigyplesoihpfe……」
意味不明な言語を口にする住民の凶器を向ける相手が聖騎士からイレギュラーズと代わっただけ。
「神託……神託の……成就を……」
ガウウウウ、バウアウアアアア!!
空中へと舞い上がった後続の影の天使は祈るような所作をしてから闇の波動を発し、終焉獣は住民に交じって牙を剥きだしてくる。
「さて、仲間を邪魔されるのも面白くないんでね。遊ぼうぜ」
飛び上がるアルヴァは可能な限りそれらを巻き込めるよう携行品である「エルメリアの妄執」を使ってから名乗りを上げて影の天使を引き付けようとする。
「建物も人命も必ず守るぞい!」
空を舞うニャンタルもまた、影の天使達を引き付けようとしていた。
地上にいれば、仲間や一般人も巻き込む可能性があるが、これなら少なくとも影の天使を相手にする分には巻き込む可能性が大きく軽減させる。
また、地上ではカインが己の体に魔神の力を下ろし、前方へと魔力を放射して終焉獣を中心に多数の敵を穿つ。
(分からない事の方が多い現状、敵対者があれで全てかも分からない)
カインは戦いの間でも、怪しい者がいないかと警戒を強める。
「…………」
物陰からこちらを見つめる視線を感じながらも、カインは別の異変が起こる可能性も考慮しつつ立ち回る。
続けて、ベークが終焉獣のみを止めるよう動く。
すでに自身を戦いに適した状態としており、一時的な再生能力を得たベークは甘い香りを漂わせる。
終焉獣はベークへと大きく口を開いて飛び掛かってくる。
見た目こそ大型犬でしかないが、それらはワールドイーターとも呼ばれる存在。
存在を奪われるような感覚を味わいながらも、ベークは再生能力で自己を保とうとしていた。
数名のメンバーが強敵を抑えている間に、残るメンバーは狂気に侵された一般人の救出を試みる。
「「mbahpobahzpetiobihme……」」
相変わらず、言葉の意味は全く理解できないが、正気に戻す為にラムダはそれら住民に向けて影より現した幾多の鎖を絡めつかせる。
「動きを止めさせてもらうよ」
近場の一般人の動きをラムダが止めている間に、イズマが名乗りを上げる。
「住民の皆さんは俺が助ける。だから今は……」
ホテルはもちろん、これ以上街路や他の住民に被害が及ばぬよう、イズマは狂気に駆られた人々を自分へと強制的に意識を向けさせる。
そこへ、史之が斥力を発生させる。一般人だけでなく、終焉獣や空を飛ぶ影の天使も巻き込み、赤いプラズマを浴びせかけていた。
「bppnbhgiuezaoiqgo……!」
解読できぬ言語と共に暴れる一般人。拘束されていてもなお、強引に抜け出そうともがき、凶器を振り回す。
それらの武器はイレギュラーズの体へと当たり、傷を負わせてしまう。
そんな仲間達を支える睦月は号令を発し、聖域を展開し続ける。
「体が資本と申します」
戦場においては、各々の役割が滞り行われることが重要と、癒しとサポートに睦月は尽力するのだった。
狂気に汚染されてしまった人々はその体が一般人と比べて強化されているらしく、気を失わせるのに幾度か攻撃する必要があった。
それでも、ラムダが10の光球を爆縮圧壊させれば、2人が気を失って倒れる。
「今のうちに運び出してくれ!」
イズマは宿泊客の退避を終えた聖騎士らがこの場に戻って来ていたことを察して呼びかける。
彼らは頷き、すかさず倒れた人々をホテル内へと搬送していく。
イズマもその様子を注視しているだけでなく、暴れる一般人を引き付けながら、一定空間を斬砕せんとする。
それに耐えきれず、1人、また1人と体を横たえていく。
いくらイレギュラーズへと襲ってこようとも、相手はエル・トゥルルの住民だ。
メンバー不殺を徹底して残る狂気に侵された一般人を相手取る。
茨の鎧を己に纏わせていた史之もまた、追加で聖騎士らによって運ばれていく一般人の姿を認める。
「eoiuzetbpyhtpa@owajoqkoj……!」
倒れてしまえば、もはや同胞という認識ではなくなるのか、空飛ぶ影の天使や終焉獣が目を光らせ、襲おうとさえしてくる。
史之はそれらの攻撃から倒れた一般人を庇う。
影の天使の槍は史之の体深くにまで及び、聖騎士達が駆け寄ろうとするが、彼がそれを制する。
「なあに。これでも頑丈なほうだし、カンちゃんもいるから大丈夫」
「しーちゃん、大丈夫?」
倒れた一般人の傷を瞬く間に塞いでいくカンちゃんこと睦月は、しーちゃんこと史之の傷も気掛ける。
次の瞬間、周囲が光り輝いた後彼の傷が消え、体力がある程度戻れば、睦月はすぐ一般人の救護に当たっていく。
「昏倒しているだけとはいえ、ダメージはある程度負っているでしょうから……」
そんな中で、メンバー達は少しずつ狂気の一般人を抑え込む。
(怪しい相手は一人だけ、だけど……)
陰からこちらの様子を探る小柄な人影は動きを見せない。
カインはそれを察知しながらも、神気閃光を瞬かせてさらに一般人2人を無力化する。
立ち直った史之もまた発生させた斥力によって1人の意識を奪う。
続けて、味方を巻き込まぬよう配慮して攻撃していたラムダは鞘に収めたままの魔導兵器で軽い一撃を加え、最後まで暴れていた1人を昏倒させる。
ガウバウアウアアアアア!!
「ちょーっと止まってくださいね……通じないんでしょうけど」
倒れた一般人が搬送されるホテルへ終焉獣が向かわぬようベークが体を割り込ませて押さえつける傍ら、メンバー達は空を舞う影の天使の掃討にかかる。
とはいえ、そちらを抑えていたアルヴァ、ニャンタルが徐々に追い込んでいたようだ。
「排除、排除……」
「俺が無策でお前ら全員に喧嘩売ると思うか? 策はあるんだよ」
高機動を活かして攻め立てるアルヴァは飛行戦闘の対策も万全。
急接近してきた天使へとアルヴァが狙撃した弾丸が相手の傷口より黄金の残滓を残す。
「人に仇なすなら、たとえ天の遣いでも御免だね。消えちまえ!」
「あ、ああ……」
煽った敵が連続付きを繰り出して態勢を崩したところでアルヴァは追撃し、神聖を纏った一撃でその頭を穿つ。
「ほれほれ、我を追って空までやって来るといい。お主等などチョチョイのチョイじゃ!」
こちらは、敵を挑発するニャンタル。
「歴史の……修復を……」
アルヴァから距離をとった彼女は急降下してきたそいつへと大剣を手に思いっきり暴れると、浮力を失った天使は空中で姿を消した。
一般人対処を終えたメンバーもいつの間にか加わっていて。
「話が出来るなら交渉したい所だけど、全く出来そうもない雰囲気だね!」
カインが最高火力の魔力を天使2体へと叩き込むと、イズマが地上の終焉獣と纏めて捉えて。
「それは修復じゃなくてただの破壊だ。そんな横暴、許すものか!」
鋼の細剣を操り、乱撃を浴びせかけて天使1体を墜とせば、ここまで回復支援に徹していた睦月が急降下してくる天使に毒の魔石を撃ち込む。
「修復、しゅう、ふ、く……」
封殺の真似事くらいに考えていた睦月だったが、悶えながら天使が姿を崩したのに拍子抜けしていた。
バウアウアウアウアアアアア!!
ただの大型犬に見せかけた終焉獣は直接襲ってくるだけでなく、遠吠えしたり、歯型を飛ばしたりして遠くの物も破壊する。
これまで、獣達がホテルを狙わぬようベークは食い止め、再生能力の付与を重ねて抑えに徹する。
(やはり、ここはお任せした方がいいですね)
攻撃手段は用意していたが、ここは仲間に任せるベーク。
実際、瞬く間にメンバーは終焉獣も追い込んでいく。
ガウアウアアアアアアア!!
大きく口を開く終焉獣に、ラムダが桜花の如き炎片を舞わせて攻め入り、……流れるように緋の花弁を散らす。
どさりと音を立てて動かなくなる獣。しかし、イレギュラーズの攻勢は止まらない。
アルヴァが頭上から強襲し、申請なる力を込めた弾丸で撃ち抜いた終焉獣に、史之が迫る。
すでに彼は敵の全身からどす黒い血を流させ、悪夢を見せつけて弱らせている。
一刻も早い戦いの終結を。
歯型で体を浸食される史之が太刀で幾度も切りかかると、よろけた終焉獣が完全に動きを止める。
うおおおおおおおおおお!!
全ての敵を倒したところで、周囲の住民から割れんばかりの拍手と喝采が巻き起こったのだった。
●
影の天使に終焉獣を殲滅したイレギュラーズ一行。
不意に飛び上がったニャンタルが物陰の煌めきを見逃さない。
「そこじゃーーーーーーーーー!!!!」
彼女がけしかけた黒い顎が煌めく白銀の鎧へとしつこく食らいつき、離さない。
「一般人は鎧など着とらんからの!」
それは、アドラステイアにいた聖銃士を思わせる姿をしていた。
「……誰の思惑なのやら。どこのどなた様だか知らないけど……高みの見物だとか頂けないね?」
「…………っ」
ラムダも続けて呼びかけると、その少年は驚いて顔を硬直させる。
しかしながら、すぐにすました顔に戻ったその少年……致命者は全身からただならぬ雰囲気を醸し出す。
「信託の成就を妨げる者……許してはおけぬ……」
そいつは抜いた長剣を大きく振るったかと思うと、すぐにその場から姿を消してしまう。
「逃げられてしまったか」
ファミリアーで致命者が街の外へと向かうのを視認したイズマだったが、今は街の被害状況をチェックする方が先と判断して追跡を止める。
被害はここに至るまでの街路のあちこちに破壊された跡がある。
それらは正気を失った一般人や、討伐した敵によるものに違いないだろう。
今はそれらの修復を行う方が先だ。
聖騎士らと協力しつつ、メンバー達は事後処理を進める。
「この者はどこに居って干渉されたんじゃろな……?」
ニャンタルは一般人の介抱を手伝う際、老若男女バラバラで関係や住んでいる場所などに共通性を言い出せなかった。
ただ、今日の記憶を聞いたところ、たまたま近場を通っていたことが聞き出しによって判明した。
「向こうにあるのは……」
その方向には、巨大都市テセラ・ニバスがあるとニャンタルは睨む。
また、ニャンタルは先ほどの致命者が着用していた鎧に注目していて。
「奴はあの3人と同じ聖騎士、なのか?」
「いや、同僚にあのような少年はいない、が……」
アルヴァがそれについて問いかけると、聖騎士達も思い当たったのはアドラステイアの騎士達だったという。
少年がどういう経緯でこういうことをしているのか、気になるところだが……。
睦月が癒し、目覚めた人達に史之が異質言語について問うが、残念ながらいずれも狂気に侵されていた時の記憶がないらしい。
「やれやれ……」
事後処理の最中、オリヴィアが直接状況報告を聞きにやってくる。
メンバー達から報告を受ける中、史之が挨拶へとやってきた。
「やあ、オリヴィアさん、久しぶり。さんざんな再会だね」
「全くだ」
悪態づく彼女へと、史之は睦月を紹介する。
「こちらは俺のご主人さまで妻さんのカンちゃん」
「えっと、はじめまして、オリヴィアさん。睦月です。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
よろしくと頭を下げる2人に、オリヴィアも白い歯を見せるのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは多数の一般人と終焉獣を討伐したあなたへ。
致命者……白銀の鎧を纏う少年はまた姿を現すはずです。その暗躍を皆様の手で食い止めていただければ幸いです。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
天義、エル・トゥルルで起こる事件の解決を願います。
●状況
エル・トゥルルにあるとあるホテル・チョークが何者かによる襲撃を受けているという知らせを受け、急行します。
先に駆け付けた聖騎士3名が抑えてくれていますが、かなりボロボロになっていて、これ以上は厳しいようです。
彼等と交替し、ホテル・チョークの防衛を願います。
●敵×14体(+1体)
○影の天使×4体
人間種成人と同程度の大きさをした影。背に大きな翼を持ち、飛行も可能なようです。
ハルバードを所持。急降下、連続突き、薙ぎ払いといった近距離攻撃と合わせ、闇の波動を発してきます。
○終焉獣(ラグナヴァイス)×2体
全長1m余りある大型犬を思わせる姿をしています。
どうやら、今回防衛対象であるホテルを喰らおうとしているようです。
戦闘では飛びかかり、食らいつき、遠吠えの他、歯型を飛ばして食らいつかせる遠距離攻撃も使います。
○狂気に駆られた一般人(略称:一般人)×8体
エル・トゥルル在住の一般人で、子供が1人、大人が6人と年配の男性が1人。いずれも包丁やハンマーなど凶器を持っています。
どうやら、意味の分からない言語で、意思疎通を行っているようですが……。
○致命者×1体
今回の事件を影で操っていたと思われる存在。現場では直接姿を確認することはできません。
白銀の鎧を纏った少年の姿をしていたという情報もありますが、詳細は不明です。
●NPC:聖騎士×3名
白銀の鎧を纏う天義の聖騎士達。騎士槍と盾を所持。
影の天使や終焉獣を排除したかったようですが、一般人も交じって襲ってきており、抑えるのが手一杯となってボロボロになっています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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