PandoraPartyProject

シナリオ詳細

エゴママスナイプ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ごめんないね、ゼノン。私達にはこうするしか……」
 謝らなくても、分かってるよ。家族の中でまともに奉公に出れるのは俺くらいだって。
「最後の命令を聞いてくれるかい、ゼノン」
 奉公先の屋敷の主人は善良すぎた。騙された金をもぎ取られ、保険金を子に残す為にと自殺の偽装を任された。
「そんな……お前が殺したっていうのか? 仕様人の分際で、お父様を…!」
 そうだよ、アンタの父親が望んだから。でも証拠は墓まで持って行かせてもらう。そういう命令だから。

 最適な温度で緩やかに、心だけが死んでいく。
 俺はどうにも幼い頃から察しが良すぎたらしい。その力を、周りの人が求めた通りに使い続けた。
 未来の自分がどうとか、考えるのもかったるい。死なない程度に流されてやるから、誰か俺を幸せにしてくれ。

「お前、新入り? 銃の扱いうめーじゃん!」
「これぐらい普通っすよ」
「言うじゃねぇか、はっはっは! 気に入った。お前は今日からカリメロ盗賊団の副長だ!」
「はぁ。……はぁ?!」

 勘弁してくれ、ガラじゃない。

「ゼノン副長、ありがとうございます! アンタの作戦がなきゃ俺、衛兵に囲まれて死んでましたよ!」

 ちょっと考えりゃわかる事に、無邪気に喜んでんじゃねーよ。

「ゼノン、子分たちにすっかり懐かれてるな! 俺より人気なんじゃねぇの?」

 カリメロさんはもっとリーダーらしくしてくれ! 遊びすぎなんだよアンタ!!

 特異運命座標と盗みの現場がかち合ってボコボコにされた時は、正直死んだと思ったが、奴らの甘さに救われた。
 カリメロ盗賊団あらため警護団は、心を入れ替え田舎町デルーダの警備を任されている。
 元々、俺達はやむなく盗みをしていた奴の集まりだ。ボスが悪趣味な放火で人を殺すってのも、盗賊団を強く見せるための嘘。他人の恨みを買うなら最低限でいいってのがカリメロさんの口癖だった。
 食い扶持が保証されてからは、皆嬉しそうに働いている。

 無くしたと思っていた真っ当な人生。その中で、誰でもなく自分の意思で、自分のエゴで力を使ったんだ。

『よくも私を罠にはめたわね! じっくりたっぷり、いたぶってから食ってやるわ!!』
「そういうの、もうどうでもいいんすよ。
 狙い定めた目的だけは、絶対に外さねぇ。
 部下が逃げ切れた時点で、俺の勝ちなんで」

ーーたとえ惨たらしく殺されたって、後悔なんてする筈もない。


「田舎町デルーダが、魔物に襲撃されたそうだ。
 今朝方、村の警備をしていた警護団のボス・カリメロが、重症の身体を引きずってローレットへ報告に来てくれた」

 すでに魔物の撃退は完了し、警護団に怪我人が多く出たものの、村人への被害はゼロ。事態はほぼ収束したと言ってもいい状態だがーー報告する冬越 弾正の表情は曇ったままだ。

「撃退した魔物の一部が、棲家の森に逃げたらしい。その時に警護団の副長・ゼノンが拐われてしまったそうなんだ」

 町に迷惑はかけられない。かといって警護団は戦う力を残していない。
 今から助けに向かったところで、すでに手遅れかもしれない。

「それでも、俺はゼノン殿を諦めたくない。……付き合ってくれるか?」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! NMの芳董です。
 察しが良くても世渡りが不器用。そんな人生もあるかもしれませんね。

●目標
 ゼノンを魔物の棲家から連れ帰る(生死問わず)

●ロケーション
 魔物の棲家である、森の前から依頼はスタートです。木々がうっそうとしており、森の中は薄暗く、足場のよくない場所もある様です。
 魔物がねぐらにしているのは森の奥の洞窟で、戦うには十分の高さと広さがあります。

●エネミー
 アルラウネ
  人語を喋る食中植物のモンスター。中・遠範に識別の【毒】を振り撒く他、近扇をツルの鞭で叩いてきます。
『ウフフ。私ほど美しければ、何をしても許されるって事……分からせてあげる!』

 げるるんスライム×20
  アルラウネに従う雑魚モンスター。一匹の攻撃力はそこまで高くありませんが、群れると厄介です。
  うち4匹ほど、【痺れ】粘液の個体が紛れているとの情報もあります。

●その他登場人物
 冬越 弾正(p3p007105)
  ローレット所属の特異運命座標。音の精霊種です。特に活躍する予定はありませんが、指示があればサポートをしてくれます。
「よし、戦闘に合わせていい感じのBGMを奏でよう!……要らないのか?」

『カリメロ警護団・副長』ゼノン
  今回の捜索対象です。警護団の中では猟銃使いで、指揮官の役割でした。黒髪に青い瞳の覇気のない青年です。

『カリメロ警護団・隊長』カリメロ
  今回のお話には登場しません。警護団の団長。行事大好き陽キャのパリピで、盗賊をしていた時にローレットの依頼とかち合いボコボコにされて盗賊業から足を洗いました。重症を負った状態でローレットを頼りに来たため、現在は医者の元で治療を受けています。

●その他
 この依頼の情報精度はBです。依頼人の言葉に嘘はありませんが、不明な点もあります。
 このシナリオは『サンタVSサンタ 〜奴らが街にやって来る〜』の後日譚となりますが、前回参加していなくてもお楽しみいただけます。

 説明は以上となります。それでは、よい旅路を。

  • エゴママスナイプ完了
  • NM名芳董
  • 種別カジュアル
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月01日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
変わる切欠
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!

リプレイ


「諦めたくない。僕だって、助けられる命は助けたいですよ」

 無辜なる混沌は未だ破滅の道を辿っている。さりとて、ただ終わるだけではいられないのだと、『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は暗い森を突き進む。
 特異運命座標は、未来を明るい方向へと確定せしめる力がある。ゼノンがどんなに危機的状況にあろうと救い出せる筈だと、行く手を阻むスライム達をワールドエンド・ルナティックで蹴散らした。

「気をつけろ弾正、世の中には服だけ溶かすスライムも存在する」
「なに!? それは……裁縫の用意をして来るべきだったか」

 俺は詳しいんだ、と混沌の闇を語る『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)と、風邪をひかないかと考える弾正。明後日の方向に心配をはじめた二人へ『星巡る旅の始まり』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)はツッコむべきか悩んだが、連戦を警戒し、進行先へ意識を集中する事にした。ランタンを掲げ、弾正の道案内を元に先導するべく進んでいく。

「上空の方はどうですか?」
「うむ。地上はスライムがうようよしておるが、空には魔物がおらんようじゃな」

『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)は言葉を返し、杖を振るって人助けセンサーを展開した。戻ってきた反応はーーいまにも消えかけているようなチカチカとした拙いもの。事態の緊急度が伺える。
(直ぐに其方へ向かうぞ! 気力をしっかり保て!!)
 急く気持ちとは裏腹に往く手を阻むスライム達。蛇巫女の後悔で薙ぎ払いながらアーマデルは眉を微かに寄せた。

「それにしても戦闘が多いな。まとめて襲いかかって来ると思っていたが」
「まるで足止めしてるみたいですね。アルラウネがこの森の魔物を統率しているのでしょうか」

 同意した睦月は更に思考を加速させる。町へのモンスター襲撃事件は、聞き及ぶ限りとても激しいものだった。その中で何故、ゼノンだけがつれ浚われてしまったのか。仲間達も同じ事を疑問に思っていた様で、ジョシュアが問いを投げかける。

「僕はゼノン様とお会いした事がないのですが、皆さんから見て、彼はどういった方だったのでしょうか? 特別な力を持っているとか…」
「ゼノンさん、ちょっとだけ召喚前の夫さんに似ているのですよね」

 答えた睦月が、左手の結婚指輪を愛おしげに撫でる。

「察しがよくて、自己犠牲的で。何もかもわかったふりをしておきながら、心の底では別なことを考えている」
「ゼノン様はなんというか、不器用な方なのですね」
「そうなのじゃ」

 言葉少なく先を急いでいたニャンタルが口を開く。

「お人好し過ぎ…いや、他人に流されすぎなんじゃ」

 自分の皿の中の物を、他人に分けて、分けて、分けてーー分け続けて何も残っていやしない。分け与え続けた分、欲しいと誰に伝えるでもなく、ただ"諦め"という毒を口に含み、飲み込み切れないまま乾いた皿の前でじっと死を待っている。

 それは一種の自殺行為ではないだろうか?

「これも縁だ。ゼノン殿の元へ急ごう――いや、」

 アーマデルの元へ、偵察に向かわせていた霊魂『酒蔵の聖女』が慌てて舞い戻って来た。蛇巫女の後悔の後悔を発動させ、神酒の香りで落ち着かせてやると、「すぐそこに"いる"っすわぁ」と霊魂疎通で囁いた。漂う致死毒の気配にジョシュアが一瞬、目を細める。

「戦いの準備を。これまでの敵の立ち回りはやたらと動きに無駄がない。気を付けていこう」


『君は僕達とは違う見た目をしているね』『僕達と違う強い毒を持っているね』
 スライム達は口々に私を凄い凄いと褒めちぎって特別に扱った。だから私もそれに応えた。彼らを従えて他の魔物を森から追い出し、望まれるままに強く振る舞い、喜ばせるため近くの村だって襲撃してみせた。

 そこで出会ったのだ、この男に。
 私の策を見抜いていながら他者を逃がし、『自分は特別だから仕方ない』と諦めた様な目をした奴が。

――嗚呼、こいつは私と同じだ。

 気づけば私は、男を森の最奥にまで強引に引きずり込んでいた。


「ぐっ、ぅ……!」
『アハハ! もう無駄口を叩く気力も失せたかしら!』

 アルラウネのツルがゼノンの身体を締め付ける。スライムと戦い続けた身体は麻痺が全身に行き渡り、動こうにも動けない。

(あーあ、これで終わり…か……)

 瞼の重たさに抗えず、ゆっくりと閉じようとした――その瞬間。

「諦めてはダメです!!」

 弾正が奏でる勇壮なるマーチと共に、勢いづいた睦月がブレッシングウィスパーを周囲へ展開。祝福の囁きをメロディに乗せて仲間へと祝福を運ぶ。
 傍らに控えていたジョシュアが支援の輝きを帯び、ディアノイマンで目標数値を演算=算出。手にした得物はレプリカなれど、三花の愛銃たる姿に相応しい火力をもってアルラウネを強かに撃つ。

『きゃあっ! な、何よ何なのよアンタ達!』
「ゼノン様を救いに来ました。――お覚悟を」

 痛みに驚きゼノンを手放すアルラウネ。再び取り戻そうとツルを伸ばすが、ジョシュアの狙撃が絶妙なタイミングでそれを牽制。投げ出されたゼノンの身体をニャンタルがしっかりと受け止めて、ヴァルキリーオファーで傷を癒す。

「救、い…? は、何で……」
「どうせ門前払いに駄目だ無駄だと諦めておったのだろう?」

 当たり前だとゼノンは眉を寄せた。敵対までした子悪党1人のために化物だらけの森まで入って助けに来るなんて、割に合わない。
 彼の考えを見透かした様にニャンタルは力強く言葉を続けた。

「ここに居る者達の中で、お主の命を諦めているのはお主だけじゃ! もっと自分の事を大切にせい!!」

 遠のきかけていた意識がはっきりとする。それだけを言いに来たのかと口にしかけて、ゼノンは口を噤んだ。それこそ己も、仲間を大切にした結果ここにいるのだ。 

「――さぁ、ここ迄来てみんか!この性悪モンスター! 町では美しさがどうのとうそぶいておったようじゃが、我が芯の美しさを見せつけてやるわ!!」
『はぁ!? アンタなんかに私の美しさが負ける訳ないじゃない!』

 英雄願望がニャンタルの身体を突き動かす。ゼノンを守ろうと構えた彼女へ、ツルの鞭が強かに振り下ろされた!

「—―ッ!!」

 バチィン!! と激しい音と共に叩きつけられる細身の身体。だが、"それでいい"のだ。
 闇の帳で森の暗がりに紛れ移動していたアーマデルがゆらりとその姿を現す。

「開けた場所への引きつけ、感謝するぞニャンタル殿」

 攻撃の為にアルラウネは前へと意図的に吊り出されていたのだ。それを当人が気付く間もなく、英霊達の無念が残した残響が辺りへと響き渡る。

『ちょっと、何これ…動けない、ッ…!』
「英霊残響:逡巡――ようやくその厄介なツルも鈍ってきたか。食虫植物の様な姿をしているが…成程。さぞやよく燃えるだろうな」

 アルラウネの指示で森の主を守ろうとぶよぶよ素早く割り込もうとするスライム達。それらを纏めて一掃するべく、アーマデルは辺りへ酒気を漂わせた。

「最高にいい気分っすわァ!」
「酒っ気に喜ぶのは構わないが、巻き込まれるなよ」

 テンション高めの聖女へ言葉だけを返し、アーマデルはあらゆる呪いを呼び寄せた。蛇巫女の後悔――柘榴の香りがスライムごとアルラウネを蝕む。

『調子にのってッ…私は特別な魔物なのよ! アンタ達の力なんて遠く及ばないって、分からせてあげる!』
「こちらも毒と鞭…鞭剣の扱いには慣れていてな、わからせ返してやろう」

 ツルと蛇腹剣の激しい打ち合い。その内に睦月はサンクチュアリでニャンタルとゼノンの傷を癒していた。

「クェーサーアナライズもかけて、と…これで痺れは取れた筈です。どうですか?」
「痺れは取れた。けどだりぃわ」

 普段の調子を取り戻した様子のゼノンに、睦月は優しく微笑みかける。

「ゼノンさんはここで死ぬつもりだったのかもしれませんが、まだ生きていましょうよ。あがきましょうよ。この世界は案外、いいところだから」
「……そっスね」

 軽口の底には確かに"芯"があった。何か掴めたような、そんな呟き。それでいいとニャンタルが満足げに頷き、地を駆ける。

「特別な一撃を喰らえぃ! クラッシュホーン!!」

 放たれた渾身の一撃を、アルラウネは避けきれない。重なった異常状態でまともに動けず攻撃を喰らった。どうと倒れる身体。それでも奥歯を食いしばり、植物の魔物は暴虐なるツルで特異運命座標を打ち据える!

『まだよ、まだ…ッ!』
「ジョシュア殿!」

 アーマデルの声にジョシュアはスコープから視線を外した。迫りくる毒の一撃はーーしかし。

「僕に毒は効きませんよ。痛くはありますが」

 毒の精霊種たる彼の髪に紫色が混ざる。己を打ったツルを掴みながら、ジョシュアは異形創神から彼女の毒を伝い、その真意を悟った。

『凄いね』
――いやだ。
『特別だね!』
――そんなの望んでない。私は、皆と同じがよかった!!

「貴方の毒が貴方自身を蝕むならば、これで終わらせてあげましょう。……デッドエンドワン」

 大気が震える。一弾一殺…それを叶える魔弾がアルラウネへと迫り、身体を鋭く貫いてーー


「さて、まずはゼノンよ。お主はまず我儘を言う練習からじゃな!」
「それは俺も勉強をしておきたい。あまり感情を表に出すのが上手い方ではないからな」
 森の中を抜けて、平原を馬車が行く。ニャンタルの提案に食いつくアーマデルとは対照的に、ゼノンは睦月へ助けを求める視線を向けた。気づいた彼女は胸を張って、
「我儘なら任せてください! 昔しーちゃ…夫さんによく言いましたから!」
 との一言。弾正も講義を聞く構えだ。喧騒をBGMにうたた寝しかけていたジョシュアは、呼ばれた気がして森へと振り向く。

 そこにはただ一匹のスライム。特別という毒を中和された小さな姿が、彼らの帰路を見守っていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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