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シナリオ詳細

<晶惑のアル・イスラー>紅の暴虐、無辜なる者を喰らうのか

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あらわれたバケモノ
「な、なんだ!?」
 娼館「女神の前足」にて書類整理をしていた娼館主の男……ギルギットは、聞こえてきた破壊音に思わず立ち上がる。
 何かが盛大に壊れるような音。
 此処ではないが、それなりに近い。一体何が起こったというのか?
「イーモン! イーモン! 何があった、何の騒動だ!」
「うす。妙なのが近くの店をぶっ壊しました」
「妙なのだあ?」
 ギルギットはイーモンを連れてバタバタと外へ出ていくが……嫌な予感がして空を見上げる。
 すると、離れた屋根の上に妙な男が立っていることに気付く。
 顔はこちらに背を向けているので見えないが、老人のような真っ白な髪がどうにも目を引く。
「ハ、ハハハハ! 全ては偉大なる純血種(オルドヌング)の姫君が為。征け、壊すがいい!」
 吸血鬼。そう呼ばれている連中の噂をギルギットは思い出す。
 調べても尻尾が掴めなかったが……まさか、アレがそうだというのか?
「さあさあ、今日この日、この砂の都に月を君臨させるのだ! 我らが『月の王国』のために、ゆくがいい!」
 紅血晶で出来たかのような人型と、ラサに多く生息する砂狼が変貌したと思われるモノの群れ。
 気付けば、あちこちで似たような破壊音と悲鳴が響いている。
 ギルギットの中で警報が響き、素早く「どうするべきか」を決定する。
「イーモン! 全員で籠城! 助けが来るまでもたせるぞ!」
「うす!」

●女神の尻尾防衛戦
「ネフェルストが襲撃されているです」
 【旅するグルメ辞典】チーサ・ナコック (p3n000201)は集まった面々にそう切り出した。
 紅血晶。その宝石を手にした者が化け物になり果てるという噂の付きまとう、美しい宝石だ。
 ラサのあちこちに広がりつつあったその紅血晶の調査はイレギュラーズによって調査が進められていたが、人を化け物にするというその力は真実であり……けれど、その調査も進めていた最中の、この急報である。
 奇しくも今宵は美しき冬の夜、グラオクローネの伝承を準え人々が過ごす憩いの日だ。
 まず第一報は、信じられないような報告だった。
 ネフェルストに向けて巨大な影が飛翔した、というのだ。
 それは竜ではない。亜竜種達が見れば一目で『竜種』ではないと口にするだろう。
 だが、強大なる竜種を模した『晶獣』が此方に向けて飛び込んできたというのだ。
 其れを皮切りに『紅血晶』は共鳴するかのように人々を獣に転じさせた。だが、商人達は手放すことはない。人の欲は何よりも深く、魅入られてからはもう遅かった。
 それゆえに、ネフェルストは赤い輝きで覆われた。輝きに魅入られなかった何の罪もない人々も、その赤い輝きに今引き裂かれようとしているのだ。
「皆さんは、『女神の前足』と呼ばれる娼館の防衛に向かってほしいです」
 女神の前足。
 悪徳娼館と名高いその娼館だが、実は悪徳でも何でもないのだという。
 むしろ悪徳娼館というていで売られてくる子を買い取って助けたり、犯罪者一歩手前の連中を上手くコントロールしたりしているのだ。
 ラサは……特に夢の都ネフェルストはその性質上、悪徳商人がキノコより良く生える。
 そういった連中が生えてくる土壌を作らない為に用意された「悪徳娼館風の娼館」が女神の前足なのだが……その娼館主ギルギットは今、僅かな護衛や働いている従業員たちと共に「女神の前足」の硬く分厚い扉を閉め、籠城戦に入っている。
 しかし、相手は紅血晶に魅入られたバケモノの群れだ。
 何処までもつかは、分からない。しかし彼等は間違いなく何の罪もない無辜の民なのだ……!
「今すぐ向かってほしいです。そして、救ってくださいです」

GMコメント

娼館「女神の前足」防衛戦です。
少しばかり奥まった場所にある娼館でもある「女神の前足」は、今回の騒動の中心からは離れているようです。
……が、運の悪いことに近くに紅血晶の力によって変化した怪物がウロウロしています。
女神の前足が本格的な防衛戦に移行するのも、そう遠くはないでしょう。
そうなる前に女神の前足を守ってください!

●女神の前足
ネフェルストで有名な悪徳娼館……風の娼館。
硬くて分厚い壁や扉などで守られていますが、いざ戦闘となればそう長くはもたないでしょう。
中には娼館主のギルギットや護衛のイーモン、娼婦やお手伝いさんたち、そして看板猫のメガミがいます。

●出てくる敵
・『吸血鬼(ヴァンピーア)』ベリア
『月の王国』からやって来ているという、紅血晶の流通に携わっている者達です。
皆が「血色で美しい宝石だ」と口にするため何処かで噂のように吸血鬼と呼ばれ始めたそうです。
白い髪に赤い目を持つ美少年風です。
赤いオーラの刃を近接攻撃の剣として、あるいは中~遠距離に放つ「ブラッドカッター」を使用します。
撤退の判断が非常に速く、この場で倒すことは不可能です。

・プレヌ・リュンヌ「ダン」
晶獣(キレスファルゥ)。
人間が紅血晶に侵された状態のうち『もっとも深刻な状態』です。この段階では人の意思は失せ、紅血晶に操られるがままの怪物と化します。
体のほとんどは結晶に置き換えられ、もう元に戻ることはできず、もはや強力な魔物といってもそん色ありません。
話は通じません。殺すことでしか救いはないです。
こうなる名前の名前はダン。恋人にプレゼントする紅血晶を、今まさに渡すところでした。その恋人はもう……。
攻撃方法は全身を輝かせ魔力の粒子を放ち「単体を爆破」「自分の周囲を爆破」「自分のHPとBSを回復」します。

・サン・ルブトー×20
晶獣(キレスファルゥ)。
晶獣のうち、特にラサに多く生息する砂狼が変貌したものとなります。
血のようなクリスタルに侵食されたオオカミは、皆正気を失っています。
非常に凶暴で、群れを成して人を襲います。
連携攻撃を行い、主に牙や爪による物理属性の攻撃を行います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <晶惑のアル・イスラー>紅の暴虐、無辜なる者を喰らうのか完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月05日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
冬越 弾正(p3p007105)
終音
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
猪市 きゐこ(p3p010262)
炎熱百計
ライオリット・ベンダバール(p3p010380)
青の疾風譚

リプレイ

●「女神の前足」防衛戦
 ネフェルストのあちこちで怒号と悲鳴……そして戦闘音が響いていた。
 それはラサにありがちな、よく出る阿呆の起こした騒ぎなどでは断じてない。
 ましてや、ネフェルストに潜む犯罪集団のやらかした騒ぎですらない。
 ネフェルストに向かい飛来した強大なる竜種を模した『晶獣』と、それに呼応し人々を変異させた紅血晶。
 そして、なだれ込んできた敵の群れ。
 状況はとんでもなく悪い。しかし、それを撃退せんとする者たちも今あちこちで戦っていた。
 女神の前足。そう呼ばれる娼館前に集まった一団もまた、その1つであった。
「紅い結晶の魔獣を率いて居る者が居ますね。あれが今回の襲撃の首謀勢力、彼らの一味の者ですか……」
 『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)が、敵集団の中に1人いる、毛色の違う者を見つめる。
『吸血鬼(ヴァンピーア)』。そう呼ばれる者たちの1人であることは明らかだが、確かに首謀者の1人であるのだろう。
「誰かがあちこちにばら撒いた赤い宝石……あれがこの悲劇をを生み出している。けどまだ間に合う、まだ助けられる人たちがいる。守れるものがある。なら足を止めている暇はない。そうよね、みんな」
「敢えて悪徳を名乗り、人を助けてきたのが「女神の前足」なら……今度はあなた達が助けられる番だよぉ」
 『この手を貴女に』タイム(p3p007854)と『陽だまりの白』シルキィ(p3p008115)も、そう言い合う。
 この娼館を守るため、タイムたちは此処に立ちはだかっている。
「今でも時々、思い出す。初恋の人を手にかけてしまった時の感触を。あの苦しみをダン殿も味わったのかと思うと、怒りで血が沸騰しそうだ。せめてイーゼラー様の元へ、魂を届けなければ」
 『残秋』冬越 弾正(p3p007105)も過去を思い出すが……そう、こちらに向かってくるプレヌ・リュンヌ「ダン」の苦しみを思えば、弾正の怒りは当然と言えるだろう。思い出すのは『錆色機竜』菅井 順慶のこと……この件は順慶とは関係はないが、弾正のトラウマを抉るには充分すぎたということだ。
「月から吸血鬼? どうせ来るなら迷惑な吸血鬼より可愛いウサギが良かったデス。何が目的かは解らないデスガ、物を壊したいだけならお帰り願うデス」
「可愛い看板猫さんもいるお店…絶対に守り抜く。みゃー。変えられちゃった人や狼は気の毒だけど、あのお店をやらせはしないから……! この騒動を招いた吸血鬼は……招くのもお断り、とっとと帰って!」
 『不死呪』アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)と『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)がそう言えば、『吸血鬼(ヴァンピーア)』ベリアがクックッと笑ってみせる。
「面白い。やれるものならやってみろ!」
 元より説得できる相手などではないだろう。それは分かり切っていたことだ。こんな凄惨な事件を起こす者が今更言葉で止まるとも思えない。だからこそ、『炎熱百計』猪市 きゐこ(p3p010262)は戦闘に向けて気持ちを切り替えていく。
「悪徳……良い響きね……まぁ実態はさておきそういうの名乗る人には好感が持てるわね‼︎ 少し火力をサービスして頑張って敵を薙ぎ払っていこうかしらね!」
「そうっスね! こうなってしまった以上はやるしかないないっス……彼と彼の彼女の為には出来るだけ早く終われせてあげるっス」
 『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)もそう言えば、全員が事前の打ち合わせ通りに動き始める。
 これ以上やらせはしない。その気持ちは全員が一致しており、戦意をこれ以上ないほどに高めていた。

●その暴虐、許すまじ
「手早く片付けて行きましょう。私がベリアを、タイム様がダンを抑えます」
「まずは数を減らした方がいいわ。そっちはお願いね!」
「ならこっちは先ずはあの狼……サン・ルブトーから片付けていくっスよ!」
 SSSガジェット3.0bとプロトコル・ハデスを発動させたライオリットは2本のレヴィアン・セイバーを構える。
 とにかく数が多く連携するサン・ルブトーは他の連中同様に此処を通してはいけないモンスターたちだ。
 どれが一番危険というわけではなく、どれも同様に危険だからこそ同時に相手していかなければならないのだ。
 そしてアリシスは吸血鬼のベリアへと向かう。
「……吸血種。この世界には存在しない種族だと思っていたけれど……それとも、旅人ですか?」
(これまで旅人以外で全くそういう存在の話を聞かなかった事からして、やはりこの世界の純種として吸血種は存在しない可能性が高そうですが)
「ハハッ。我等に興味があるのはいい。いいが……今宵は我等が月の王国にとって大事な日だ。貴様等の死骸に話は聞かせてやろう!」
 ベリアの放つ赤いオーラの刃……ブラッドカッターとでも呼ぶべきそれを受けてアリシスはしかし、その痛みに揺るがない。
「『月の王国』に姫……同郷か、或いは近しい者で集まったか。吸血種を中心とした集まり、それが貴方達の属する勢力ですか」
 ラクリモサを放ちながら、アリシスは考える。
 アリシスの知る知識と現状を照らし合わせ、その裏にあるものを見つけ出そうというのだ。
(しかし、この紅い結晶は……尋常なものではない。こんなものを生み出すような者がそう何人も居る筈がありません。恐らくは……これが待っていた彼の尻尾)
「――『博士』はお元気ですか?  プスケ・ピオニー・ブリューゲルと名乗って居た筈ですが」
 その一言に、ベリアの顔から表情が抜け落ちる。
「ドクター・ピオニーの知己か」
「やはり、これは」
「……少々、興が削がれた。ドクター・ピオニーからは何も聞いていないが……此処は我は引くとしよう。それで何かが変わるわけでもない」
「逃げるのですね、吸血種。混沌法則の下では、不死は遠いですか」
「何とでも言うがいい。我はやるべきことをやるのみだ」
 予想よりも更に撤退の判断が早い。恐らくは判断基準に不確定要素が混ざったので引くつもりなのだろう。こういう手合いは手強いが、今は追うつもりはない。
 そしてその間にもタイムはダンを抑え込むべく動いていた。
 目標としてはるべく「女神の前足」へ近づかせないよう防衛場所より前、乗り込む勢いで抑えていくことだ。
「こっちよ! 暫くわたしがお相手するわ」
「ガアアアアアアアアアアアア!」
 ダンの声からは、理性らしきものは一切感じない。その全身全てが変わり果てた姿こそが、紅血晶に変化させられたものの「なれのはて」ということなのだろう。もはや、どうやってもダンを元の人間に戻すことはできはしない。
「人々を化け物に変えてしまう紅血晶……ダンさんもその犠牲者の一人なのね。宝石を手にどれ程明るい未来を抱いていたことかしら……やるせないな」
 ダンの放つ魔力の粒子がタイムに集い、大爆発を起こす。
 強い。タイムは素直にそう感じる。赤い結晶で覆われ尽くしたその身体は硬く、タフで。魔力の粒子は攻防に使える隙の無い技だ。単体でも集団を相手し得る能力であり、こんなものがいればベリアが余裕をかましていたのも分かる話ではあった。
 しかし、それでもタイムはこの場で他の脅威がなくなるまで耐え続けるつもりだ。
「応援が来るまで範囲攻撃を一人で受けらるように位置取りには気を付けなくちゃ……!」
 その間にもサン・ルブトーと仲間たちとの戦いも進んでいた。
「貴方達のが狙うの誰デスカ?」
 アオゾラがサン・ルブトーを引き付けることで自然とアオゾラの負担は大きくなるが、ライオリットの逆理が一体でも多く巻き込むように放たれる。
「一気にいくっスよ! ここで手間取ってはいられないっス!」
 そう、ライオリットの言う通り、すでにベリアは逃げたがダンは健在だ。早く倒しそちらに加勢したいと思うのは当然だ。
「ならら私の仕事ね!」
 きゐこの鵺鳴く空の白夜墜しが発動し、魔力で発生させた雷を圧縮し超巨大な光球にした物を上空から落としていく。
「奴は逃げたか……此度は倒せずとも、いずれその首貰い受けるぞ」
「願いの星よ、降り注いで……!」
 陰者終曲を奏でる弾正に合わせ、シルキィが天紡星を降り注がせる。
「キミ達も被害者だけども……それでも、倒すからねぇ」
 そうしてベリアが消え、サン・ルブトーが全滅して。祝音は最後に残ったダンへと向き直る。
「……今度会ったら、攻撃力に自信ないけどぼこりたい……!」
 ベリアを今日倒せないだろうことは分かっていた。しかし弾正同様、祝音も怒っていたのだ。口には出さずとも、他の仲間も同じなのは間違いないだろう。
「最後はダンさん……いや、プレル・リュンヌの相手だねぇ」
「ダンは……彼と親しい人は、もういないのかな。悲しいけど、倒すしかない……せめて魂は浄化できますように」
 シルキィと祝音の言う通り、もうダンは倒すしかない。
 だからこそアリシスはミストルティンの槍を放ち、弾正も陰者終曲を奏でていく。
「俺の声はもう届かないかもしれない。だが、音の精霊種として何も語らずにはいられない。順慶……はじめての恋を捧げた君。君がカルトに染まる事を止められず、俺は君を殺めてしまった。今でもその絶望を拭いきる事はできない……が、絶望の果てに希望があると、足掻く事を俺は学んだ。どうか天より見守っていてくれ! ダン殿、貴方が愛する人を殺したのではない。紅結石が悲劇を運んできたのだ。その心の痛みから、俺達が必ず救ってみせる!」
 その叫びがダンに届くかは分からない。しかし、届くと信じて弾正は奏でるのだ。
「ダンさんの無念はこの痛みくらいでしか分かってあげられない。彼だったものが動かなくなる迄わたしが受け止める!」
 ここまでダンを抑えてきたタイムもそう叫ぶ。それもまた、タイムらしいダンへの弔いであるだろう。
 祝音もリリカルスターを放ち、きゐこの破式魔砲が炸裂する。
「……う~ん……なんか見事に変異してるわね……紅血晶も後で解析しないとめんどくさい事になりそうね」
「そのためにも、ここらで一気に攻めるっスよ!」
 ライオリットのソニック・インベイジョンからのデッドリースカイが命中し、アオゾラのクリムゾンファングが繰り出される。
 そして最後に、シルキィのシルク・トゥ・シーリングがダンを砕き切る。
 そう、砕け散ってダン「だったもの」は死んだ。そのあまりにも非生物的な最期は、あまりにも空しく悲しい。
「おお、終わったか」
 覗き穴でも何処かにあったのだろうか、女神の前足の扉が開き、娼館主のギルギットが出てくる。
「ええ、そっちは無事?」
「うむ。おかげさまでな」
 タイムはギルギットの悪人面……如何にも何か企んでいそうに見える悪人面に頷くと贈り物等の中に紅血晶があれば早急に手放すよう指示する。
「今回の件で分かったと思うけど」
「ああ、皆まで言うな。アレは持ち込ませておらんよ。危険すぎるからな」
 元より危ない噂のあった代物だ。善人のギルギットはそれが持ち込まれるのを良しとしなかったのだろう。
 その末路がダンだ。あまりにも悲しすぎるというものだ。
 だからこそシルキィに静かに祈る。
「……わたしには、祈ることしかできないけど。せめて、恋人さんの所へと辿り着けますように」
 その祈りがダンに届いたかは分からない。しかし、届いていてほしいとシルキィは祈る。
「ここ近辺の人達は……「女神の前足」やお店の人達や猫さんは、無事?」
「近辺は……まあ、見ての通りだが。店の者は無事だ。メガミもな」
 祝音にギルギットは頷く。祝音たちの迅速かつ的確な行動が、新規の人的被害をゼロに抑えたのだ。
 それは文字通りに素晴らしい成果であるといえるだろう。
「それにしても、今回の敵……あの吸血鬼、許せないよ。今後も気を付けないと……みゃー」
 言いながら祝音はサン・ルブトーなどの紅血晶の破片とか危険だと思うので、と集めているアオゾラへと視線を向ける。
「BS無効にもう呪われていますのでそうそう侵食されないと思うデスガ気を付けて集めておくです。何なんデスカネ、これ」
 そう、紅血晶が危険なものだとは分かっていたが今回、それは新たに危険な面を見せた。
「回収出来るものはしておきましょうか。その上で分かる範囲の情報解析ね。資料検索で吸血鬼や紅血晶の伝承を捲ってみるのもありね……」
「そうっスね。紅血晶について調べられるなら調べたいっスね。鉱石の知識はほどほどにあるつもりっスし、サイエンスで少しばかりの科学的な知見も、きっと恐らく多分あるはずっス」
 きゐことライオリットもそう頷きあう。まだ各所で戦いは続いているが……それによるサンプルもきっとたくさん集まるだろう。
 その中には、事件の進展に繋がる情報だって見つかるかもしれない。
「このままでは、すませはしないぞ」
「ええ、その通りです」
 弾正とアリシスも頷きあう。まだネフェルストの戦いは続いている。しかし、アリシスたちはすでに……その先にある戦いを見据えていたのだ。

成否

成功

MVP

冬越 弾正(p3p007105)
終音

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!

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