PandoraPartyProject

シナリオ詳細

服にだけダメージを与えていく洞窟

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●服にだけダメージを与えていく洞窟
「ふーん、ここが依頼にあったダンジョンね」
『猪突猛進爆走街道』ゾフィー・リンドムート(p3n000286)はローレットで引き受けた依頼書を片手に、件の洞窟へと目を向けた。
 ここはゾフィーが調査依頼を受けた洞窟だ。とある神殿の調査中、地盤沈下によって地下に隠し通路が現れたのだ。上層階にめぼしいものもなかったせいか、そこに宝が眠っているのではないかという話らしい。
 らしい、というのは途中までしか調査が進まなかったためである。
「なんで作業を中断したの? それ以上すすめなかったってことは理由もあるよね」
 尤もな話である。しかしゾフィーがいくら問うても、依頼人は口を閉ざしたままだった。
 あーとか、うーとか。反射でやめなさいと言いたくなるような呻きばかりを零し、苦悩に塗れた表情を浮かべていた。
 ようやく紡がれた言葉は「俺には無理だった、とにかく厚着で行ってくれ」の一点張り。
 その時点でやめておけば良かったのだが、ゾフィーは何も考えず依頼を受けた。
 なにせ何も考えていないからである。
 細かい事は気にしない、いけいけドンドン手当たり次第。そんな彼女は軽い気持ちで依頼をもぎ取り、洞窟に入ってものの数秒で後悔することになった。

「ひぃい、服が破れた……」
 隠し通路の先――洞窟内部は水晶の温床となっており、そこいら中に母岩にクラスターが群生している。どれもこれも大粒なものであり、先へ進めば進むほど鋭角な箇所が衣服をいたずらに破っていった。幸いなことといえば怪我をするほどではないことくらいだろうか。
 ゾフィーは顕わとなったマジで太い太ももに少々の寒気を覚えながらも、水晶の群生地を抜けようと足をすすめた。

 進んでも進んでも洞窟の内部は明るいものだった。入り口付近の光を水晶がかき集め、奥へ奥へと運んでいるのだろう。そのお陰で調査はかなりしやすいものであった。
 服が徐々に破けていくこと以外は実に順調である。
「これなら調査も余裕だよね!!」
 完全なるフラグを立てつつゾフィーが進めば、そこにあったのはキラキラと輝く水晶たち――に紛れるようにして何かが蠢いていた。試しに踏んでみれば柔らかな感触が靴底に伝う。
 ふかふかとは違うぶよぶよ。はて、これは一体なんなのだろうかとゾフィーが悩めば、そっとデカいケツを撫でられ、顔から火が出る。たいへんけしからん光景だ。
「ひぇええ!? だ、誰!?」
 振り向いても誰もいない。
 じゃあ気のせいだったか……と普通は思わない。でもゾフィーは思ってしまう。深く考えないためである。
 気を取り直すようにして前を向けば、再び撫でられた。今度は水晶によって顕わとなったマジで太い太ももに対して。見ればそこにあったのはなんとも説明しづらい形をした触手である。これにはP倫も自主出動、モザイクのような靄のようなものに紛れた何かはもぞもぞと動いていた。先端から根元へと辿れば、それは床と繋がっており、その本数もかなりのものだった。
 普通の人間なら気色が悪いと悲鳴の一つでもあげて逃げるだろう。
 しかしゾフィーは羞恥に身悶えながらもそれを振り切ろうと考える。
「このまま走り抜けたら撒けるんじゃない!? たぶんお宝もこの先にあるよね!!」
 言うや否や彼女は走り出す。服を掴まれればそれを振り払い、マフラーを突かれれば囮としてそれを脱ぎ捨てる。そうして走り続けた彼女は満身創痍だった、主に服が。
「服以外無事なの腹立つ……うう、こんな恰好誰にも見せられないよ」
 目立つ傷など一切無く、ゾフィーはほぼ全裸に近い恰好となってしまった。
 残っているのは大破しかけたフリルの下着上下セットとボロボロのブーツ。
 そして顕わとなったのはデカいケツとマジで太い太もも。……いいよね。
 このままではP倫が再び動くことになるかもしれないが、ここにあるのは数多の水晶。
 それによって届けられたのは暖かな目映い光。謎の光によって事なきを得た……得たのかな……多分得たゾフィーは地図を手に取りあたりをつけはじめる。

「上部の構造からしてそこまで続いてはいないと思うんだよね」
 ここは遺跡の地下で発見した天然の洞だ。地盤や地下水流の関係から、ある程度の長さを知る事はできた。それが正しければ、現在は3分の2程度踏破したことになる。

 それじゃあ気を取り直して前に進もう。そう考えた彼女を遮ったのは巨大なスライムだ。
 勘の良い方ならお気づきだろう。このスライムがどういった役割を持つのかくらいは。
 しかし哀しいことにゾフィーの勘は良くなかった。倒せばいいじゃんとデカいスライム相手に戦いを挑んでしまったのだ。


●ローレット
「うん? 書き置き……ゾフィーさんからなのです」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼カウンターの上に置かれた手紙に気がついた。
 読んでみればどうにも規定の時間までに戻らなければ助けが欲しい、出来れば厚着で来て欲しい。という内容であった。
 何も考えていないわりに、そのあたりはキチンとしているのも不思議なものである。

 ユリーカが外を見れば太陽は真上から西へと傾き掛けていた。
 夕暮れまでに、と書いてあったので探索する時間を含めれば、今募集を掛けるのが丁度良い頃合いだろう。
「誰か来てくれればいいのです……でも……」
 変な依頼ばかりかっさらってくるのがゾフィーの常。そして厚着の指定も気になる所。
 ユリーカは暫し悩みながらも、フォローをしてくれるイレギュラーズたちを探すことにした。

GMコメント

 ゾフィーを助けようという正義感からでも、たいへんけしからん洞窟があると聞いた。もしかしてそこなのでは? と淡い期待を孕んでも良いです。
 大事なのは厚着をして全裸にならないよう、奥へと進む。たったこれだけです。

●攻略目標
 出来うる限りの厚着をしてダンジョンに挑み、全裸になる前に最奥でお宝を回収してくる。

 服さえ着ていればダンジョンに滞在できる判定が生まれますので、服を必要としない方々もここぞとばかりに厚着してきましょう。
 防御力は後回しです、とにかく厚着をするのが正義です。

●全裸になったらどうなるの?
 なった瞬間、目映い光に包まれ入り口に戻されてしまいます。なんでですかね。

●全裸以外はどうなるの?
 謎の光が大事な部分を隠してくれます。
 暖かい光だ……。

●服ってなに?
 知らない方はユリーカに服について学び、出来るだけ厚着で来てください。

 これは本当に善意なんですけど、下着には拘った方がいいかもしれません。一枚残っているだけで服判定になりますから。決していやらしい気持ちはありません。GMの完全な善意です。性別種族年齢問わずセクシーだと面白いなって思っていますが本当に心よりの善意です。

●洞窟のトラップ

1.水晶の群生地
 トゲトゲとした水晶がたくさんあり、前に進むだけで服がビリビリ破れていきます。
 特に足元はかなりひどいので、頑丈なブーツを用意するといいかもしれません。
 脱衣初心者向けスポット(?)

2.触手まみれ
 1に比べて水晶は少ないですが、それを埋めるようにして怪しい形の触手が蠢いています。先端には口のような部分も存在しており、小さな牙も見え隠れしています。
 触手たちの好物はお洋服。特に生き物の革や、棉素材のものをムシャムシャするのが大好きです。
 生き物には興味が無く、食べ物の洋服を探すため実にいやらしい感じで肌を撫でてきますが、相手にそんな意志はありません。
 柔肌を撫でるのも、筋肉質な身体をまさぐるのもすべて偶然です。いやらしいと思ってしまうほうがいやらしいです。

 形がアレなのでモザイクみたいな靄が纏っています。
 まさぐられても洋服を食べていくだけなので安心ですね。

3.スライムだまり
 洞窟の奥は高温多湿、スライムたちに大人気のスポットです。
 その結果、大小様々なスライムたちが身を寄せ合って暮らし、獲物が来るのを今か今かと待っています。
 とりわけ彼らが好きなのは金属で出来た鎧や、硬い素材のもの。
 ひんやりボディでゆっくり溶かすのが大好きなようです。
 ですが、それは生き物を傷つけるために使われません。
 皮膚や骨が溶かされることもありませんし、機械のボディが傷つくこともありません。全裸判定されたら謎の力によって外へ放り出されるだけです。

 ここは風通りも悪いのでやや息苦しいです。
 少し動けば暑くなり、今すぐにでも服を脱ぎたくなるでしょう。
 ここまで辿り着いたらひんやりスライムに感謝して脱がされるか、なんとかして掻い潜り一番奥に向かうだけです。

 ちなみにゾフィーはデカいスライムにボコられて丸呑みにされています。
 余裕があったら助けてあげてください、余裕があったらでいいです。ほんと余裕があったらで……。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●NPC
 ゾフィー・リンドムート(p3n000286)
 何も考えていない冒険者。巨乳。デカいケツとマジ太いふとももがトレードマーク。
 現在はボロボロの下着姿でデカいスライムに丸呑みされています。かわいそう。
 たぶん外に放り出されるの秒読みです。

 以上です。
 洞窟の調査に付き合って下さい。
 決していやらしい気持ちはありません。

  • 服にだけダメージを与えていく洞窟完了
  • GM名森乃ゴリラ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月24日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
鈴鳴 詩音(p3p008729)
白鬼村の娘
結月 沙耶(p3p009126)
怪盗乱麻
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
紫暮 竜胆(p3p010938)
守護なる者

リプレイ

●なんで厚着指定?
「探索依頼と聞いているのだが……厚着が必要……なのか? 私服自体も然程持っていないんだが……」
 あまりこういった指定の依頼は受けたことはないのだと、ルクト・ナード(p3p007354)は首を傾げた。それでもやれることだけはやろうと、下着とフィルムスーツ、それから寒冷地用に使っていたあれこれを着込んでいる。
「確かに厚着が必要というのは中々珍しいご指定ですね、救出対象もいらっしゃいますし……この服が役立ってくれると嬉しいのですが……」
 冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は色鮮やかな肩出しの十二単を翻した。幾重にも重ねられたそれは動くのも大変だが、指定されている以上は役立ってくれるだろうと考えていた。しかし実際にどう影響するのかまでは分からないと顔を曇らせれば、郷田 京(p3p009529)がその話に乗ってきた。
「寒いってワケでもないのよね? しかし動きづらいったらないわ、十枚よ十枚? こんだけ着込んだら動くに動けなくない?」
 彼女の疑問は洞窟そのものについてだ。寒いのであれば納得はいく、しかしどうにもそういった言葉はユリーカの口から聞く事はできなかった。
 三名は首を傾げたものの、答えは見つからない。指定ならば致し方無しとそれぞれが動きづらさに溜め息を零した。

 そんな者らに反し、厚着をしなかったイレギュラーズ達も勿論いた。
「そもそも厚着するほどの衣装は持っていないんですよね」
 鈴鳴 詩音(p3p008729)は虚ろな眼を右往左往させる。服装の指定に見合うだけのものは無かったのだと、不安げな声を上げた。
「厚着で向かえば動きにくくなるからな。怪盗としては――いや、ダンジョンアタッカーとしてそれは致命的だろう? それを踏まえれば、薄着の者がいくらか居ても良いとは思う」
 結月 沙耶(p3p009126)としては動きやすさを優先し、薄手のコートに留めたらしい。敵が居る以上は倒す役割も必要なのだと頷いている。確かに全員が厚着をすれば動くべき時に動けなくなってしまうだろう。そんな彼女の言葉に同意したのは紫乃宮 竜胆(p3p010938)だった。彼もまた、いつも通りの恰好を選んだ猛者である。
「確かに貴殿の言う通り、動きづらさは問題だろう。私としてもいつもの着物で十分だろうとは踏んでいるが……厚着の指定が少しばかり気がかりだが、ともかく向かうとしよう。ゾフィー殿が捕らわれているようだからな」

●いざ洞窟
「……人助けのための厚着、と不思議に思っていましたが……。ああ、うん、なるほど。ロクでもない場所ですね此処。完全に理解しました」
 ボディ・ダクレ(p3p008384)は呆れた様子で洞窟内の様子を眺めている。
 指定通りモコモコ服を着てやってきたものの、それらは少しずつ水晶の餌食となりつつあった。動く度に誰かの服が破れ、ひんやりとした空気が隙間から入り込んでいく。できるだけ安全であろう道を選んだとしても広がっているのは数多の水晶。どう頑張っても被害は免れぬものであった。
 他の者達も悩ましい声が上がりつつある。このまま進めば奥へ辿り着いた時にはどうなることやら……と、一行の頭には様々な想いが浮かんでいたが、それを気にしていない者も確かに居た。
「この依頼、完全にもらったであります!! 自分のあとに続くでありますよ!!」
 鉄壁のコンバットスーツを着込んだムサシ・セルブライト(p3p010126)だけは元気であった。それもその筈、彼のスーツは合金製。引っ掻き傷などは細かいダメージは負うものの、破かれる心配など無用である。
「それじゃあムサシ様が先頭のほうがいいですよね。私が道を選びます」
 ボディの一声により役割は決まった。彼は通り抜けしやすそうな道を選び、それをムサシが突き進む。光源の妨げにならぬよう水晶を壊して道を作ってやれば先程よりも進みやすくなってくれた。これで一安心、残る道も同じように――そう考えていた一行へと襲いかかったのは、いかがわしさの権化でもあるアレな形の触手である。モザイクのように靄が漂っているのにはいっそ悪意すら感じられた。
「なんだこの触手達は!?」
 沙耶が声を上げた瞬間、触手達は意志を持ったが如くイレギュラーズ達へと襲いかかる――といっても相手の狙いは身体では無い、それを包み込んでいる衣服たちだ。
「ちょっとまて、なんだこれは服を溶かすな……ええい食べるな!? えっちっち案件だったかこの依頼!?」
 溶かすなと言われれば触手達はもぐもぐと衣服を食べていく。実に素直だ。
 そして少しずつ侵蝕していくそれは沙耶に限った話でもなかった。
「帯はダメです、ダメなんです!! でも羽織はもっとダメです!! それ以上食べられたら直して貰えなくなります!!」
 帯を引かれていたのは睦月だった。あれほど着込んでいた十二単は触手たちの良い餌だったのだろう。瞬く間に食まれ、隙間からは可愛らしい刺繍の入ったキャミソールレースが見え隠れしていた。ごちそうさまです。
「水晶……綺麗だな……いやそんな事言ってる場合じゃないです」
 詩音は現実逃避から逃れ、触手達に向かって刀を抜いた。一太刀を浴びせればアレな形状の触手達は容易く崩れ落ちていく。それを見て男性陣が一斉にそっぽを向いたのは決して気のせいではなかった。ヒュンとするもんね、致し方なし。
「何故そのような顔を……?」
「それ以上はやめておこう、詩音殿」
 竜胆は斬り伏せられた触手から目を逸らし、そっと詩音の肩を叩いた。のも束の間、彼の衣服に侵入者が現れる。
「はっ♡ そんな♡ 男にまで……♡ そんな形をしておいて見境もないのか!? ええい邪魔だ!!」
 同じく斬り伏せれば粘着質な液体が吹き上がった。先程と比べて大型だったこともあったのだろう、長い鎌首がビチビチと跳ね上がり、異様な液体がどんどんと撒き散らかされていく。これにはP倫メーターもうなぎ登りである。
「マジあり得ないぬるぬるとかちょーイヤなんだけど!? 斬るのがダメなら燃やして引きちぎりた――やっ♡ こら、ちょっとまって♡ どこ触ってんだテメェこの野郎!?」
 京は矯正を上げたり罵声を轟かせたり大忙しである。しかしここで炎を生み出せば洞の中には煙が充満し、調査の妨げとなってしまうかもしれない。かといって千切れば謎の粘液が撒き散らされてしまうだろう。
「振り払ってでも前に――やめろフィルムスーツの隙間から入ってくるんじゃな……んん♡ クソ、なんでこんな依頼が舞い込んできたんだ!?」
 ルクトはなんとも言えぬ表情でそれらを掻い潜ろうと試みる。幸いなことに無理矢理前に進めば触手は諦めることが多かった。とはいえそれは後ろの触手のみ。前には未だ触手達が蔓延っている。
「纏わり付かれる前に進むのが良さそうでありますな……気持ちが悪いのは少々我慢をするのであります!!」
 幸いなことにムサシは食われるような衣服を着込んではいなかった。彼は男女問わず襲いかかる触手を振り払い、捕まったイレギュラーズ達を庇うようにして逃がしてやる。そこで目を付けたのは通路に落ちている皆の洋服である。囮代わりにそれを放り、鉄壁のスーツでぶよぶよとした足元をしっかりと踏みしめていった。
「仕方がありません、服を犠牲にしていきましょう」
 ボディの声により、皆は衣服を差し出す形で前に進む。触手達も動き回る獲物よりも、捨て置かれた衣服に興味があるらしい。群がる姿はヤツメウナギを彷彿とさせ、より一層気持ち悪さを醸し出していた。
「もうやだやだやめろ!! 皆、このまま切り抜けるぞ!!」
 沙耶の叫びと共に、みなは命からがら――もとい衣服からがらその場を切り抜ける事にした。

 結果、触手を切り抜けたイレギュラーズ達は散々な有様であった。
 あれほど着込んでいた者はやけにすっきりとした姿となっており、いつも通りの服装をしていた者達は既に下着姿である。事情を知らぬ者がいればきっと「何があったんだよ」と天を仰ぎそうなほどの痴態だ。下着姿もエロいけれど、ビリビリの服が残っているのもまたエロいのだもの。実に仕方がない展開である。ああ、仕方がない。

「褌だけは守り切ったが……逆に良かったのかもしれないな」
 竜胆は周囲の気温や湿度にそっと眉を顰めた。なにせ触手地帯の先は高温多湿な世界が広がっていたのだ。褌一丁で立っているのは締まらないが、いや褌は締められているのだが――とにかく、頬を伝う汗を考えれば裸に近いことは確かにプラスである。
「確かにネットリとした粘液よりはマシかもしれませんが……」
 そうボディは呟いたものの、睦月はイヤイヤと首を振った。
「で、でも、ここで脱ぐのも嫌な予感がします。多少なりとも肌は覆っておいた方が良いかもしれません」
 睦月は残った布きれをそっと抱き抱える。最早裸に等しいものではあるが、それでも無いよりはマシだと肩で息を整えていた。
「そうだな、多少残っていれば――んあ♡ 残っていたか不届き者め!!」
 ルクトは衣服に残っていた触手を床へと叩き付けた。徐々に目が濁ってきているような気がするのは決して気のせいではないだろう。
「でも進むしかないよね。あとはゾフィーさんが見つかれば――」
 詩音が視線を巡らせれば視界の先が大きく揺らいだ。蜃気楼のような光景を割るようにして現れたのは巨大なスライムである。その中央にはコアの様に蠢く何かが居た。
「もしかしてあれがゾフィーさん!?」
 そこに居たのはスライムに呑み込まれた女性である。沙耶の声に反応したのか、身体がびくりと跳ね、こちら側に虚ろな視線が向けられた。
「そ、その目は何……」と沙耶は呟き、己の痴態を思い出した。ビリビリの服から覗き見えるのは確かな下着姿。認識した瞬間頬は赤らみ、羞恥が湧き出て仕方がない。同時に湧き上がるのはいっそ清々しいまでの堂々さだ。
「服が何よ!! さっさとボコっていくわよ!! それにこっちには鋼鉄のスーツを纏ったイレギュラーズだっているんだから――」
「――うわああなんでありますか!? スライムが群がってくるであります!?」
 先程まで無双をしていたムサシの絶叫が響き渡った。それもその筈、ここにいるスライムの好物は金属。つまり全身が金属であるムサシなどおやつを通り越してご馳走に近しいものだ。大小様々なスライムは我先にとムサシへ飛びかかり始めた。
「来るな近づいたら焼き殺すぞ!!」
 平時の口調などどこへやら。慌てた様子のムサシはレーザーソードの熱によってスライムを焼き焦がした。瞬間、広がるのは先程よりも濃い熱気だ。ただでさえ熱いのに、熱によってさらなる蒸気が生み出されてしまった。視界が更に悪くなり、動こうとしたルクトが「あっ」と声を上げて転んでしまった。どうやらスライムによってスーツの一部が欠損していたらしい、そこから零れ落ちるのは何故携帯してきたのか『へっちなきぶんになるくすり』である。更には運悪く、硬い岩によってそれは割れてしまった。
 中身はムサシの熱により瞬く間に蒸気へと変わっていく。これには筆者も予想外の物品が持ち込まれたなとガッツポーズで大喜びだ。
「す、すまない♡」
「なんでそんなものを持ってきたのでありますか!? みなさんは無事で――」
 ムサシが視線を向ければ、そこにあったのは先程までギリギリ保っていた節度の崩壊である。
「う、ううんッ♡ スライムだらけです♡」
「全裸は防いだのにあんまりです♡」
「やっ、こら♡ ドコに出しても恥ずかしくないパーフェクトボディがっ♡」
「手遅れでありますな!?」
 ムサシは普通に絶望した。助けなければならない対象がたくさん、そして自身には大量のスライムが迫っている。絶体絶命のピンチを感じながらもムサシの言葉遣いも怪しくなり始めた。
「ぐっ♡ このままでは……♡ だ、だが……使命を、諦めてはいけない……!!」
「そうよ♡ こんなの水着と変わらないわよ♡」
「こんな痴態を知られたからには♡ 全滅して貰います♡」
 全く以て説得力の無い言葉がポンポンと飛び出していった。えっちな気分にはなってしまったものの、みな目的は忘れていなかった。ただただえっちな気分なだけであって、いかに肌面積がブッチギリで優勝していたとしてもきちんと依頼の事は忘れていないのだ。エロいぞ、いや偉いぞイレギュラーズ。
「こ、このまま♡ 全部屠ります……?」
 睦月が範囲攻撃を行おうとすれば、待ったを掛けたのはボディであった。
「宝だけとって全部の服をパージすれば♡ そのまま外に出られるはずです♡」
 ワープ機能を利用して脱出を図れば被害も少ないだろう。まあ、服は全部無くなってしまうのだが。
「で、でもぉ♡ それって全裸ってことだよね♡」
「それならゾフィーを救出してからだろう♡」
 詩音と沙耶は目配せをする。全裸はとても恥ずかしいことではあるが、無事に依頼を終え一刻も早くここから離れられるのであればそれでよかった。しかし問題は宝とゾフィーをどうすべきかである。
「ならアタシが宝へいくよ♡ ゾフィーさんはお願い♡」
 京は目にハートを浮かべながら宝があるであろう奥へと走って行った。それをサポートするのは徐々にスーツを溶かされていたムサシと、既に十二単が無くってしまった下着姿の睦月だ。それぞれが道を切り拓くため、喘ぎ声と共にスライム達を蹴散らしていく。ボディの指示もあり道のりは順調であった。残るはスライムに捕らわれたゾフィーのみ。
「ゾフィーのスライムは私が行こう♡ 行け、るか?」
 沙耶は竜胆へと視線を向ける。とろんとした目ではあったが、彼は返事の代わりに駆けだした。褌を靡かせ、向かうはゾフィーの元である。
 近づいたのを確認し、沙耶は攻撃へと転じる。速力のある攻撃は柔らかなスライムを抉り取るようにして、着実にその体積を減らしていった。
「はぁ♡ はぁ♡ ゾフィー殿、この手を取るんだ……!!」
 褌姿の竜胆は割れたスライムを掻き分け、ゾフィーへと手を伸ばす。
 その瞬間、混濁していたゾフィーがしっかりと目を開いた。そんな彼女の目の前に居たのは、息を荒くしながら手を伸ばすの成人男性(褌姿)である。
「へ、変態だー!!」
「なっ!? あ、暑いだけだ♡」
 説得力の無い言葉を受けゾフィーは更にビビリ散らかした。しかし己に置かれている状況を悟り、泣きながらその手を取ることになる。
「んっ♡ 宝箱も取れたわよ♡」
 京の言葉が響き渡る。そこから皆の行動は早かった。熱に浮かされた目をしながらも自らを守ってくれていた下着を全て取り払えば、彼らを優しく包み込んでくれたのは謎の光だった。
 暖かい――なんて素敵な光なのだ。
 そう考えた皆であったが、入り口へと転送されたことにより、その考えは直ぐさま捨てることになる。
「さ、寒い!?」
 そう、彼らへ牙を剥いたのは度し難いほどの寒暖差である。
 汗があっという間に引っ込んでしまった。肌を撫ぜる風は冷たく、全裸となったイレギュラーズ達がそれらを阻む術など――持ち合わせていなかった。


●依頼完了後・ローレットにて
「へっくしょん!!」
 ローレットにくしゃみの大合奏が響き渡る。無事に洞窟を脱出したイレギュラーズ達であったが、暑いところから寒いところへの移動、更には全裸ということもあったので皆体調を崩してしまっていたのだ。それぞれが暖炉の前に陣取り、洞窟での痴態を思い出し、羞恥に揉まれながらも暖を取っている。
 そんな彼らを横目に、ユリーカは一人元気なゾフィーへと問いかけた。
「散々だったのですね。それで、お宝はなんだったのです?」
「えっとね、本だよ。内容はね……」
 ウキウキと宝である本を開けば、ゾフィーの表情はどんどんと曇っていった。心配したユリーカがそっと覗き込めば、彼女は勢いよく本を閉じてしまった。
「全裸健康法について――えっ、はぁっ!? こんなクソみたいなものを宝と称して置いていたの?!」
 装飾からすればそれこそ年代物のものであり、金細工や宝石なども散りばめられている。豪奢な見た目に対し、内容はとんだガッカリ品だったのだ。
 大方、所有者が大切に保管をし、後に引き継いだ者が外側だけを見て宝とカテゴライズしたのだろう。たいへん迷惑な話である。
「無駄骨ェ……」
「ま、まあ外側を売ればお金にはなるはずなのです」
 たとえ中身はゴミみたいなものであったとしても、金や宝石などの価値はそうそう変わるまい。
「そうだよね!? それじゃあ、換金をして――」
「――みなさんの衣装代、そこから出してあげてくださいなのです」
 有無を言わさぬユリーカの視線が投げられ、ゾフィーは守るように本を抱え直した。
「……やっぱり出さないとダメ?」
「ダメなのです、誰のせいでこうなったのです?」
 面倒な洞窟に皆を招いたのはゾフィー自身なのだ。へっちなきぶんになる薬だけはまあ、彼女の意志では無かったのだが……それ以外は彼女が依頼を引き受けたせいでもある。
「このお金がないと家賃が払えないのに……?」
「勿論なのです。迷惑料、きちんと払うのですよ!!」
「う、うぅ……もう依頼なんてこりごりだよ~!!」
 ゾフィーの情けない泣き声と共に、イレギュラーズ達のくしゃみがローレットへと響き渡った。

成否

成功

MVP

ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官

状態異常

なし

あとがき

 今回はシナリオへのご参加、誠にありがとうございます。
 みなさん率先して自らフラグをご用意していただき、大変感謝しております。おかげでとても楽しく執筆させて頂きました。
 この冒険がみなさまの思い出、その一つとなって頂ければ幸いです。

 それでは森乃ゴリラでした。
 あと下着の描写ありがとうございます、命が助かりました!!!!!!! イヤッフゥ!!!!

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