PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<咬首六天>天使狩り

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――残り香。

 果たして、魔種にそんなものがあるのかは判らない。
 正気の埒外へ行ってしまったもの特有の腐臭のような何かがあるのかもしれないし、或いは単に、其処が居心地がいいだけかもしれない。

 ただ、そいつらは“いた”。

 まるで巣食っていた魔種の残り香に惹かれるかのように。
 地下への道を中途半端に邪魔するように。
 そいつらは何処からともなく現れ、其の扉を――打ち壊されたブランデン=グラード医院の入り口をくぐる。
 そうして群れる。群れていく。彼らに群れるという概念があるのかは判らない。
 判らない事だらけだが、事実として。ブランデン=グラード医院は再び、人ならざるものが跋扈する場所になろうとしていた。



「初めまして、ですね? 私はディアディア。ディアディア・ディディチューン」

 ラド・バウ審判団の団長をやっておりますね?

 耳に覚えのない肩書を名乗りながら、紫色の髪を緩く靡かせて其の麗人は言った。
 はて、そんなものはあっただろうか。イレギュラーズたちが首を傾げていると、“覚えがないのも仕方ないですね”とディアディアは笑みを浮かべた。

「審判団というのはあくまで私が名乗っているだけのもの。勿論公式のものではないですね。 其れに審判団と言っても“私一人”ですから。特に団員も募集しておりませんね。……と、自己紹介もそこそこに、ラド・バウを護って下さっているなか恐縮なのですが、仕事の依頼ですね」

 ディアディアは言う。
 これまでイレギュラーズが攻略してきた地点を、彼女はつぶさに観察していたのだと。
 特に誰に言われたでもない。ただ、脅威というものは二度三度、波のようにやってくるものだから。だから見ていたら、少し不思議なものを見たのだという。

「皆さん、最近地下に入られる事が多いようですね? ブランデン=グラードも確か、入り口の一つとして攻略地点に挙げられていたかと。其の傍、ブランデン=グラード医院に……“どうみても人ではないもの”が入って行くのを何度も目撃しましたね。獣のようなものや、鳥のようなもの。最初は建物の中にいてくれるなら其れでも良いと思ったのですが……最近数が増えて参りました。駆除をお願いしたくご依頼にあがりましたね?」

 ブランデン=グラード医院。
 其処はかつて、蜘蛛のような患者の少女が反転し、巣作りをしていた場所。
 地下への安全を確保するため、物資を確保するため、此れ以上の狂気の伝播を抑えるために、イレギュラーズたちが魔種を斃した。筈だった。
 けれども其処に、人ならざるものが集まっているのだとディアディアはいう。

「私には戦闘力はありません。こうして皆さんに情報をお伝えするのが精一杯ですね? 非常に心苦しいです、ただでさえ厳冬の中、難しいお願いだとは判っています。ですが、憂いはない方が良い。そうですね?」

 深い紫色の瞳を瞬かせて、ディアディアはイレギュラーズを見た。
 お願いできますか、と。最後に一言、唇に乗せて。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 地下も心配ですが、地上にも危険はあるんだよ、というお話。
 一週間程度で完結予定です。

●目標
 天衝種を駆除しよう

●立地
 ブランデン=グラード駅付近にあるブランデン=グラード医院です。
 以前は魔種と天衝種の巣となっていましたが、ブランデン=グラード攻略の際に魔種は撃破されました(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8754)。
 しかし何かを感じているのか、天衝種が未だにはびこっている状態です。
 地下へ入る際の支障になってもいけませんので、サクッと倒しましょう。


●エネミー
 ケモノxたくさん
 トリxたくさん

 人の四肢をくっ付けた獣のような近接系天衝種と、怒り狂う人の頭に翼を付けたような神秘系天衝種がいます。
 はっきり言ってしまえば雑魚ですが、一般人にとっては十分に脅威です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • <咬首六天>天使狩り完了
  • GM名奇古譚
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月15日 21時45分
  • 章数1章
  • 総採用数7人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器


 ――多数の天衝種。
 獣が歩いていた。足音を殺すような、たし、という音ではなく、ぺたり、と人間が手で触れるような音がする。
 鳥が椅子に止まっている。足ではなく、歯で椅子の背もたれを咥えるようにして止まっている。

「不気味だな……」

 ヨゾラは率直な感想を漏らしながら、周囲に結界を張った。
 直ぐにトリもケモノも気付く。“あいつらが来た”と怒りを燃やす天衝種。トリの頭部がうわあ! うわあ! と叫んで、イレギュラーズが踏み入った事を知らせた。

「厄介だね……殲滅するくらいの勢いでいかないと」

 だが、其れに臆するヨゾラではない。
 魔術紋が輝いて、ヨゾラ自身を強化する。そうして呼び出すのは混沌の渦。トリとケモノを纏めて呑み込み、暗黒に噛み砕く。

 ――魔種に果たして、残り香なんてものが存在するのか?

 ヨゾラは周囲を見回すが、其れらしきものはぱっと見たところ此処には見付からない。もしかしたらもっと奥に行けばあるのかもしれないが、其の為にはうようよしている天衝種たちを超えていく必要があった。
 出来る限り多数の敵を相手取れる位置に移動して、混沌の渦を巻き起こす。時折トリがうわあ! と叫び、其の叫びが衝撃波となってヨゾラを襲う。
 星の祝福で其れを癒しながら、ヨゾラは其の場にいる天衝種たちをまずは掃除する事にした。混沌が、哭く。

成否

成功


第1章 第2節

祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫


「天衝種……此処にまで沢山沸いてるなんて」

 祝音は周囲を見回す。異形の獣が、異形の鳥が、人の営みを冒涜するかのように病院を占拠していた。
 流石にこれだけの数を殲滅するのは祝音一人では難しいかもしれないが、――これからの安全を保つためにも、無理しない程度に多く斃さないと。

 熱砂の嵐が吹き荒れる。
 まるでラサの狂乱を思わせるような祝音の攻撃はケモノもトリも巻き込んで、廃病院で渦を巻く。

 うわあ!
 うわあ!

 トリが悍ましい声で鳴く。
 こんなものに鉄帝の人たちを襲わせる訳にはいかないと、祝音は熱砂を越えて噛み付いてくるケモノを振り払い、睨み付ける。
 天から降る光輪が癒してくれるけれど、無理は禁物だ。気力が尽きる前に後続に任せて退くべきだろう。
 何か判る事はあるだろうか、と天衝種と交戦する傍らで祝音は周囲を調べる。どうやらここには入院患者が多数いたようだが、……彼らは無事に避難できたのだろうか?
 出来れば入院病棟に行って確かめたい。だが――そう考える祝音を嘲笑うかのように、異形の天衝種たちが進路を阻む。残念だが、これ以上の調査は難しそうだ。
 飛び掛かってきたケモノをかわし、祝音は再び嵐を放つ。この厳冬には酷なほど熱い嵐に天衝種は呑み込まれ、千々と散って行った。

成否

成功


第1章 第3節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って


 友達の国を守りたい。
 イーハトーヴが鉄帝の動乱に関わり始めたのは、そんな理由だった。
 けれど、色んな出会いがあって。
 守りたいものが増えていって。
 そうして、イーハトーヴはこの鉄帝という国の安寧を願うようになっていた。
 できる限りのことをしたい。
 「守りたい」という願いを願いのままで終わらせたくない。
 望む形に近づけるために――憂いの芽は、小さいうちに摘んでおかなければ。

 気で練られた糸がぶわり、と鋭さを持って舞う。
 トリとケモノはいとも簡単に絡めとられて刻まれて、その機動力を奪われる。

 出来るだけ多くを、
 出来るだけ一撃で。

 イーハトーヴはそのように位置どって、光の翼をはためかす。
 味方を癒し敵を屠る其の一撃で、トリとケモノはぶわり、と青黒い塵になって消えていった。
 ―― 一体一体の攻撃力も、体力も、さしたるものではない。だけれども……

「数が多いなあ……!」

 ちいとも減った気がしない敵の数に、思わずイーハトーヴはそう言わずにはいられないのだった。

成否

成功


第1章 第4節

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

「気持ち悪ィバケモンどもがウヨウヨいやがる」
「全くだ。この間魔種を掃除したところなんだがな」

 グドルフがうんざりとしたように呟く。
 昴は地下への道を開く際に交戦した魔種の事を思い出しながら、ばきり、と拳を鳴らした。
 その間にも憤怒を燃やした天衝種たちがグドルフと昴へとびかかる。
 グドルフはあえてケモノの嚙みつきを、トリの衝撃波を受けた。
 敵が最も隙をさらすのは、攻撃を放った後だからだ。
 昴もまた闘氣を纏い、戦うための態勢を整えて――其の拳で天衝種へと殴り込みをかけた。

「オラァ!」

 グドルフは手によく慣れた斧を取り出すと、斬るというより叩き付けるようにケモノをぶった切る。
 そうして斬り、斬り、斬り払いながら、当初の作戦通り天衝種を屋外へと引き付けていく。
 其の傍を昴は離れない。グドルフが斬り払い損ねた天衝種を殴り飛ばし、其の骨と肉をへし折ってやる。

「オラオラァ、カスども! 真っ二つにされたくなきゃあ、とっとと道をあけな!」

 ケモノとトリの攻撃は真っ向から受ける。
 それこそがグドルフの真骨頂だからだ。攻撃を受けてからが本番だ、傷ついた分だけグドルフは強くなり、斧の一撃は敵の攻撃を封じ、其処を真正面からたたっきる!

「最強の山賊、グドルフさまのお通りだぜえ!」
「……」

 昴はグドルフを心強く思いながらも、天衝種について考えていた。
 まるで誰かが弄ったような造形。ヒトのパーツを繋いだような異様さ。
 アラクネとの交戦時にいた天衝種と似通うところがある。

 ――あの時はアラクネが作ったのかと思ったが。

「実は新皇帝派の誰かが作っているのか……?」
「ああ? 何考えてん、だッ!?」

 敵を切り殴り倒しながら、グドルフが昴に問う。
 ――今はまだ疑問でしかない。何でもない、と昴は答えると、周囲の天衝種を巻き込む闘氣の渦を作り出し、グドルフが傷を与えた天衝種たちにトドメを刺した。

「出来れば早く病院として復旧させたいが、まだ時間がかかりそうだな」
「そうだなァ……とりあえずこのミソッカスどもを掃除せんことにゃあ、病院どころかヒトが寄り付かねえよ」
「ああ」

成否

成功


第1章 第5節

エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ


「じゃあ、いつも通り私が敵を止めるから、エレンシアもいつも通りに」
「オーケー。いつも通りにあたしが敵をぶっ叩く。いつもながら分かり易くて良いな」

 確認するようにレイリーが言う。そうしてエレンシアが頷いた。
 二人は多くの戦場を共にしてきた戦友だ。お互いにどんな動きをするのかは判りきっている。
 レイリーが敵を引き付け盾となり、其の横っ面をエレンシアがぶん殴る。
 単純だが、単純だからこそ有効打となる。それが二人の戦い方だった。

 明かりが頼りなく揺れる。
 廃病院は薄暗く、しかしそこに蔓延る影を二人は確かに見て取っていた。

 ぺたり、と人の肌のようなものが床に触れる音。
 ばさり、と翼がはためく音。
 うわあ! と、――トリが“鳴く”声!

「私の名はレイリー=シュタイン!」

 敵の気配を感じた其の瞬間、レイリーは名乗りを上げていた。

「さあケモノ共よ、かかってきなさい! こちらに目を向けた其の時があなたたちの最期よ!」

 そうしてレイリーは盾となる。
 うわあ! うわあ! とトリが鳴いて、ケモノ達を引き寄せる。
 ケモノたちはレイリーに狙いを定め、一気にとびかかり……そうして、エレンシアの大太刀の餌食となった。

「一ノ太刀エレンシア。ざっくりとてめぇらの命を狩り獲る!」

 レイリーは言ってしまえば、盾であり囮。
 彼女が天衝種を引き付けている間に、エレンシアは己を強化し、大太刀を邪に振るってケモノもトリも真っ二つにする。
 ざっくばらんに、しかし確実にねじ伏せる。
 まずは鳴くトリを一匹。そして次にレイリーに噛みつくケモノを一匹。
 そうして第一波をなぎ倒し……二人は一息ついた。
 レイリーは内外の気を練って、己の傷を癒す。そうしてまだいける、とエレンシアに頷いた。

「さて、どこまでいけると思う?」
「そうね……余り深入りして囲まれない程度にゆっくり進みましょう。無理は禁物だわ」

 二人は病院の奥へと進んでいく。
 そこかしこに天衝種の遺骸が積み上げられて、己たちの他にも交戦したものがいると知らせていた。

成否

成功


第1章 第6節


 ――こうしてイレギュラーズたちは確実に、そして迅速に天衝種の命の芽を摘み取り……不安の種を除いていった。
 ブランデン=グラード医院に再び静寂が戻るまで、そう時間はかからないだろう。

 しかし、異形の天衝種は果たして天性のものだったのか?
 それとも誰かが、ツギハギ遊びでもしているのか?

 多くの謎は残されたまま。
 ブランデン=グラード医院は静かに、何も語らず……そこにあるのみ、だった。

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