PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<昏き紅血晶>紅色が、膚に喰い付く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――よっ。こんにちはお嬢さん! あんたに似合う真っ赤な宝石、“紅血晶”が入ったよ!

 ――知らない? またまたご冗談を。こんなに売れている宝石なんざ、10年見渡してもないだろうさ! 見てみなよこの赤色! 本当に血を固めたみたいだろう? なんでも地下で発掘された、未知の宝石らしいってんだから驚きだ!

 ――これを紹介したのは外でもない、御贔屓にしてくれるお嬢さんだからさ。綺麗だからか、希少だからか、流通が絞られててねえ。俺もこいつを手に入れるのに苦労したってもんだよ。

 ――色々噂も出回ってるが……俺はこう考えてる。紅血晶を付けた女性は「化け物じみて美しくなる」……ってね。そう考えるとお嬢さん、ちょっと興味が沸かないかい?

 ――お嬢さんはいつもウチを贔屓にしてくれるからな。だから特別にちょっと安くしても良いんだが……どうする? 買うかい?



「そうなの、そうなのよ。大変なの」

 グレモリー・グレモリー(p3n000074)の隣で、身の丈30cmばかりのふくよかな小女性が話をしていた。
 まず自己紹介。其れから世間話に30分。兎に角話題の尽きない彼女はミモザ・エデという。其の場にいた武器商人が言うには、「今には丁度良いくらいの“春”」だそうだ。

「今度頼んでみなよ。春眠暁を覚えずって言葉の意味を身をもって知ることになるからさ。……しかし初耳だね。ミモザ、キミは海洋でコスメブランドを立ち上げた筈だろう? ラサに友達がいたのかい」
「ええ、勿論よ。ラサは特に乾燥が酷いから、ハンドクリームとかの流通が多いのだけれど……いつも御贔屓にしてくれているメイラって子とね、連絡が取れなくなってしまったのよ! メイラは成人して、お父様のお手伝いをしているのよ。メイラのお父様は果物の商人をしていて、色々と仕入れて下さるの。私はメイラと時々物々交換するのだけれどね? この前はそう、珍しく寒いからってハンドクリームと毛布を受注なさって。とっておきを捜して贈って差し上げたら、素敵な果物が届いたの! 私、とっても嬉しくて直ぐにお菓子屋さんに、この果物をタルトにして頂戴! ってお願いしたのよ。そのタルトのまあ美味しい事! 私一人じゃ勿論食べきれないから、ご近所さんにもお配りして」
「……話の途中だけど、ごめん。依頼の話をしてもらっても?」

 あら、とミモザは口元に手を当てる。そうしてこほん、と咳を一つした。

「最近“紅血晶”という装飾品が流通しているのは御存知かしら。なんでも最初は旅人が持ち込んだとか、地下で取れたとか、色々な噂があるのだけど……この前メイラは手紙で私に内緒話をしてくれたのよ。『とても希少な紅血晶を手に入れた』って。よくない噂はあるけれど、いつも贔屓にしていた商会から手に入れたものだから、きっと大丈夫だって言っていたのよ。でも、それから連絡が取れなくなってしまったの、だから私、心配で心配で……ああ、この心配が杞憂ならどれだけ良い事か! ねえ皆様、どうかメイラの様子を見に行って下さらない?」
「……メイラはラサの令嬢らしいんだけど……ミモザがさっき言ったように、ラサのネフェルストでは今“紅血晶”って宝石が出回っている」

 だけど妙な噂があってね。
 そうグレモリーは続ける。“宝石を手にしたものは化け物に成り果てる”――と。

「噂だけなら良いんだけど、そもそもどうしてこんな噂が出て来たのかが問題だ。その根っこに何かあるかもしれない。――まあ、ミモザの心配を解消すると思って、メイラの屋敷に行ってみて。何もなければ其れでいい……だよね、ミモザ」
「ええ、ええ、そうですとも。何もなければ勿論其れで、私は安心だわ! だってそうよ、風邪を引いているだけかもしれないもの! 風邪と言えばグレモリーさん、そうそう、海洋も最近何故か寒いのよ? 鉄帝の辺りは大丈夫かしら。物凄く今年は寒いって、あちこちで言っているわ……」

 また始まった。
 ミモザの話が続くのを、うんうんとグレモリーは頷きながら……集まってくれたイレギュラーズには「いってらっしゃい」と目で告げるのだった。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 血のように赤い宝石、だそうですが……

●目標
 ラサの屋敷を調査せよ

●立地
 ラサ、ネフェルスト。其の片隅にひっそりと立つ屋敷です。
 果物の流通で有名な商人の屋敷ですが、近所の人によれば数週間ほど前から賑やかさ、おいては人の出入りがぱったりなくなった、という事です。
 時折叫び声や悲鳴のようなものも聴こえるという証言が入っています。

●エネミー
 ???

 商人の家をノックしても、誰も出ません。
 ……人の気配はあります。
 戦闘の用意はしておいた方が良いでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • <昏き紅血晶>紅色が、膚に喰い付く完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
ファニー(p3p010255)

リプレイ


 ――商人ギルドを運営していれば、いつかこんな事態に遭うという事は想定出来ていた。

 だから『闇之雲』武器商人(p3p001107)はあらゆるコネクションを使い、メイラとその父が贔屓にしていた商人を調べ上げた。
 メイラはどうやらアクセサリの蒐集が趣味だったようだ。様々な商人が扱う種々の商品を集めては、家族や友人に自慢していたらしい。

「でも、見付からなかった?」

 『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)が結論を述べた。そうさ、と溜息を吐いて武器商人は言った。
 結果としては――メイラに紅血晶を売った商人の尻尾は掴んだ。少し前からラサに滞在していた宝石商だったらしい。紅血晶だけでなく、様々な宝石を取り扱っていたのだそうだ。けれども……

「既に尻尾を巻いて逃げた後だった。逃げ足の痕跡もないという事は、消されたのかもしれないね」
「後者だとすれば……ますますに穏やかじゃないな。色宝事件を思い出すね」

 『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)が口元に指を当て、思案しながら言う。
 そうして見上げたのは、寒々しくさびれた屋敷だった。
 此処はメイラが家族や使用人と共に住む屋敷……の、筈だった。だが、今はまるで人の気配が感じられない。数年前から無人だと言われても信じてしまえそうだ。
 史之がハイセンスで屋敷内の気配を探り、さらに『スケルトンの』ファニー(p3p010255)が透視で屋敷内を覗き――二人ともが、嫌そうな顔をした。いや、ファニーは骨なので余り表情の変化は判らないのだが。

「どうした」

 いつでも扉をぶち破る準備は出来ている、と『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)が腕組みをしながら探査組に問う。
 史之は一言、言った。――血腥いと。
 ファニーは肩を竦め、其の言葉を継ぐ。

「端的に言って死体だらけだぜ。道理で静かな訳だ。――だが、ほんの少し音がする。そうだな?」
「うん。……気配が一つだけ、ある」
「上階ですか? 窓は全部閉ざされて、カーテンも閉められているので確認は出来ませんでしたが」

 媒体飛行を終えて降りてきた『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が二人に確認する。史之もファニーも、そうだ、と頷いた。
 成る程、と『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が頷き……確認するように武器商人を振り仰ぐ。

「突入するしかない、良いな?」
「ああ、勿論さ。アタシに其れを反対する権限も意思もないよ。……せめてメイラが無事でいると良いんだが」

 そんな武器商人の声は、らしくもなくどこか空々しい。
 『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)がネズミのファミリアーで扉周辺のクリアリングをした上で……ルナが其の大袈裟なくらい豪勢な扉を叩き折った。



「宝石を手にしたものは、化け物になり果てる」

 アルヴァが注意を払いつつ、各々が視覚や聴覚で周囲を確認しながら一部屋ずつ開けていく中、ニルは小さく呟いた。
 3つ目の部屋で、10人目の死体を見付けた時の事だった。

「……ニルは、なんだかそれが、とってもとってもいやです」

 ニルの細い指先が宝石に触れる。其れは紅血晶ではなく、輝きを服で秘めているニルのコア、シトリンである。
 其れはニルの大事な輝きだから。宝石で誰かが害されるのは嫌だ、と少女は言う。

「黄水晶、其れは誰だって同じさ。何もなければ良い、少し風邪を引いていたんだと言われるだけだったらどんなに良いだろうって皆が考えてる」
「ああ。――だが、実際はそうじゃない。こうして人が死んでて、……しかも其れは今日や昨日の話じゃねえときた」

 武器商人が悔しさを噛み殺すように言う。
 ファニーが其れに頷き、死体の状態を確認する。切り裂かれたような傷だが、鋭利な刃物ではない。ぎざぎざの傷跡から噴き出したのだろう血液は既に乾いて黒くなっており、死後数日が経過している事を表していた。周囲に会話出来る霊魂がいないかと探ってみたが、其れらしきものすら見付からない。
 足跡を殺して歩いていた史之が、上へ行こうと提案する。

「メイラさんの部屋は2階の隅、だったよね」
「ええ。ご近所の方から屋敷の構造は伺っています」

 アッシュが頷く。
 そして先んじて飛ばしたファミリアーの視界を確認し、……あ、と思わずつぶやいた。

「どうした?」
「――扉が開きました」

 ぎい、と音がする。
 まるで幽霊屋敷の扉が開くかのような、悍ましい音。
 そして……ぺたり、と、膚が床を叩く音。

「あ゛ぁ」

 其れが唸る音が、史之の聴覚に届く。

「あ゛は」

 其れが笑う声が、――アルヴァに届く。
 其の瞬間、



 ぺたぺたぺたぺたぺた、だだだだだだ!!



 そいつはまるでケモノのように四つん這いになって、一階をまっしぐらに目指す! ドレスの裾をひらひらと揺らしながら、真っ赤な膜で覆われたような腕を振り回しながら、階段をべたべたと降りて来たのは、

「――……嗚呼」

 フルールが嘆かわし気に呟いた。
 其処にいたのは……“人の形をしたもの”としか言いようがなかった。
 まるで皮膚が裏返ったかのように真っ赤な膜が全身を覆い、人とも化け物ともつかぬ姿で、……いや。其れは既に正気を失っているのだろう。一同を踊り場から見回し、ぐるぐると瞳を回した後、にいやりと笑顔を作った。

「いら、しゃい、ま、せ」

「おきゃ、く さま」

「おちゃを」

 噎せ返るほどの血の香りが蔓延する中。
 ルナが咄嗟にライフルを構え、挑発のような一撃を“其れ”にお見舞いしていた。



「あ゛ぁ!!!」

 最早人ではない“ドレスを纏った其れ”が唸り、血色に尖った爪を振るう。
 成る程、死体を引き裂いたのはこの爪か。ファニーは何処か冷静にそう分析しながら、指を振るう。

「仲間はいない。感じた気配はこいつのものだ」

 そう言いながら、きらりと一番星を凶悪に輝かす。なぞるのは流星の軌道? 其れとも、相手の死線だろうか。
 ああ、と頷いたのは化け物をブロックしている史之だった。

「恐らく一人……一匹でずっといたんだろう。生きている俺達の気配を感じて降りてきたんだ」
「あ……あああ…… おちゃ を」

 おちゃを、だして。

 日常を繰り返すかのような物言いが、逆に悍ましい。
 だが恐らく、“そいつ”は言葉の意味を理解していない。ただメイラがこれまでに使ってきた言葉を真似ているだけだ。

「おちゃ お う゛え……う゛う゛う゛」

 瞳があらぬ方向を向いて、しかし的確に武器商人を殴りつける。
 武器商人と史之が二人で“そいつ”を引き付け、ルナやファニーは後ろから攻撃を仕掛ける。
 史之はどこか冷静に、相手はそこまで素早くはないと分析していた。素早さに特化したルナが迎撃に成功したという事は、相手は其処まで素早く移動できない。まして二人がかりでブロックしているのだ、此処から何処にも行くことは敵わないだろう。

「その真っ赤なものは血、ですね。血の膜で全身が覆われています。其れと、胸元に光るものが」

 分析したフルールが、情報を共有する。
 皆の視線が、自然と“それ”の胸元へと寄った。確かに……血の膜でよく見えないが、銀色と赤色に輝くアクセサリのようなものが見える。

「アレが紅血晶か? 引き剥がす方法は?」
「無理ですね。すっかりと膚になじんでしまっているように見えます」

 アルヴァの願いは砕け散る。
 助けられる命は助けたい。義賊として動いているアルヴァは人であるなら、と願っていたが――最早人ではないのなら、いっそ命を終わらせてやるのが優しさというものだろう。
 “殺して”とすら言えない程に宝石に蝕まれている。もう少し、あと少し早く見付けられたら。アルヴァは唇を噛み、ありったけの速さでもって“メイラらしきもの”の背後に回り込むと武器に神聖を纏わせて、一撃を叩き込む。
 アッシュがさらに援護を撃ち込む。生命力の権限、その燈火を赤いいかづちと変え、メイラの胸元に真っ直ぐと撃ち下ろした。

「……ッ」

 宝石を手放せば、壊せば、元に戻るのですか。
 ニルは聞きたい。でも出来ない。だって、メイラは応えてくれない。
 真っ赤を纏ってあらぬ方向を見て、もう彼女はミモザが話していたメイラではない。

「黄水晶、目を逸らしちゃ駄目だよ」

 そっと握った拳をほどくように、かかる声があった。
 最前線にいる武器商人だった。

「しっかり見るんだ。世の中には――こういう悪意もある。いいかい黄水晶、アレがアタシたちの敵さ」

 世界を蝕む悪意という敵さ。

 ルナとファニーが更に放った攻撃で、ぐらりと“メイラ”が揺らぐ。攻撃を受ける度に彼女の身体からは薔薇のような花弁が散って、玄関ホールはまるで花を散らしたかのように美しく飾られていた。

「……。わかりました。終わらせます」

 せめて、安らかに眠れますように。
 ニルが決意と共に混沌の渦を放つ。其れは“メイラ”の胸元にあった宝石にひびを入れ、……ひびを広げ……そしてぱりん、と割って。

「あ、」

 人間らしい、澄んだ少女の声が一つ響くと、真っ赤な膜に包まれたままの化け物は、どさり、と花弁の上に倒れ――動かなくなった。



「どう証明する?」

 疑問を呈したのは、意外な事にルナだった。
 斃れた“メイラ”の息を史之が確認し、死んでいると静かに彼が頭を振って……沈黙が落ちて少ししてからの事だった。

「此処にいるのは化け物だ。お嬢様の影も形もねえ。化け物がドレス着て俺たちに襲い掛かってきた、事実としては其れだけだ。俺は嫌だぜ、面倒な説明会を開くのは」
「そうだな、……だが、言い方を変えるなら……“メイラが化け物になって周囲の者を手に掛けた”じゃなく、“メイラたちは突然現れた化け物に皆殺しにされた”って報告も出来る。無論其れに騙されるローレットじゃねえし、あくまでラサへの対外的なものになるだろうがな」

 ファニーがどうだ、と一同を見る。
 反論するものはいなかった。ええと、とフルールは少し理解に時間を掛けているようだが、特に反対意見がある訳ではなさそうだし大丈夫だろう。

「――ドレッドレオ」

 死体の胸元にある首飾りを確認して、武器商人が小さく呟く。
 其れは? と誰かが問うた。

「今回メイラに紅血晶を売った商人の名前だよ。また聞く事があるかもしれないから、共有しておく。……サヨナキドリに喧嘩を売ったらどうなるか、教えてあげないといけないねえ」
「……ドレッドレオ。……わるい宝石を売った、商人さん……」

 ニルが呟く。
 絶対に忘れないと。悪い宝石を売るのは、やめさせなければいけないから。

 紅血晶は何処から仕入れたのか。
 誰が売り込んできたのか。
 そもそも紅血晶とは宝石なのか。宝石でないなら一体“何”なのか?

 アッシュが一欠片、紅血晶を摘まむ。
 ハンカチーフにくるもうと指でつまむと、何故だかちりちりとした妙な感覚がした。
 まるで、――膚に噛み付かれているような。



 ――久し振りに美しい宝石を買いました。

 原石ではなく、加工されたものですが……ドレッドレオさんが“最近流行りの石なんだ”と仰っていました。
 紅血晶。わたくしも名前は聞いた事があります。なんでも旅人が持ち込んだとか、様々な噂が飛び交っていると。何処までが真実で何処からが虚構なのかは、まだ未熟なわたくしには判り兼ねますが――今度舞踏会がありますから、話題作りにこれを付けて行ってもいいでしょう。
 銀の装飾に、中央に飾られた血のように赤い石。ピジョンブラッドもそうですが、人は血が流れているから、こんなに赤い色に惹かれるのかしら?


 ……。
 …………。

 舞踏会に紅血晶を着けて行ったら、皆に何処で手に入れたのかと問い詰められました。
 少しだけ怖かった。だって皆、わたくしの胸元をみるや目の色を変えたのですもの。
 わたくしは正直に、ドレッドレオという商人からとお答えしました。ドレッドレオさんにご迷惑にならないかしら?
 彼ら彼女らが、商人さんのところに押し掛けないと良いのだけれど。

 だって、彼は言ってくれた。
 “紅血晶を譲るのはお嬢さんだけだ”って。
 そうよね、ドレッドレオさん。
 わたくし、次は指輪が欲しい。


 ……。
 …………。


 ――なんだか最近、身体の具合がおかしい。

 紅血晶をずっと身に着けているから、首と肩が疲れているのかも。
 でも、離す気にはなれない。だって離している隙に、メイドや使用人が持って行ってしまうかもしれないから。
 ……わたくしは何をしているのでしょう。一緒に育った使用人を疑うなんて。
 でも、でも……この石は其れくらいに美しいのです。ずっと身に着けていたいくらいに、一時の衝動に身を任せたくなるくらいに、美しいから。
 だから、護る為にもわたくしが身につけておかなければ。


 ……。
 …………。


 ――あか

 あか、あか、あか
 
 あか、あか、あか……ほんものの ち よりも この いしのほうが うつく しい

 だれか たすけて

 だれか……

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
メイラは決して意志の弱い令嬢ではありません。
ですが、そんな彼女の理性すら揺るがせる魔性が、あの石にはあったのです。
ちりちり。ちりちり。
ご参加ありがとうございました。

PAGETOPPAGEBOTTOM