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シナリオ詳細

<ジーフリト計画>黒のエニグマ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 皇帝ヴェルスが敗れ、新皇帝バルナバスが誕生してしばしの時が過ぎた。
 混迷の鉄帝国は分断され、派閥が覇を競う今――
 派閥の一つ独立島アーカーシュは幾度目かの岐路に立たされている。

 アーカーシュが奪還した街アルマスクは、敵である新皇帝派による一斉攻撃の目標にもなっていた。
 敵が企てたまさかの六正面作戦は、しかしアーカーシュが有する諜報の網に絡め取られ、未然に大量の軍事力で迎え撃つことが叶っている。
 これは充分な迎撃力があると想定されているから、イレギュラーズは『手が空いた』訳だった。
 つまり『よりイレギュラーズらしい仕事』が出来るということだ。

「本当にお疲れ様。これなんだけど、もし良かったらどうぞ」
「ああこれはどうもすいません、デスクワークには糖分と休憩は欠かせませんね」
「ええ、そうですね。これは助かります」
「なに、なに!? おやつ!?」
 アーカーシュの帝国軍基地――執務室では歯車卿とマルク・シリング(p3p001309)、それからリーヌシュカ(p3n000124)とリュドミーラ少尉が書類と格闘していた。
 そしてそれをなぜだかすずな(p3p005307)が手伝わされている。たしか後で剣の稽古――すずながくれるご褒美――を約束していたのだが、先に片付けなければならないから……といった理由だったと思う。
 何はともあれ、皆の戦いぶりを良く知るアーリア・スピリッツ(p3p004400)は紅茶をいれてきたのだ。
「ありがとうございます。それでは休憩にしましょうか」
 すずなが一同を見渡す。
「ジャムがいっぱいじゃない!」
「たっぷり用意したわ」
 集中が途切れるであろう時間に、凰花桃と木イチゴを砂糖で煮詰めた新しい名産品を添えて。
 働きづめの歯車卿には彼の実家の酒でも混ぜてやりたいところだが、それはまだ時間が早い。
「アーリア大好き!」
「そういえばジェックちゃんが、あとで話があるそうよ」
 リーヌシュカの頭を撫でてやったアーリアが、壁を指さす。会議室の方向だ。
「ちょうど区切りもついたところですし、飲み終えたら行ってみましょうか」
 歯車卿がそう結んだ。

 アーカーシュの帝国軍基地――会議室に現れたのはジェック・アーロン(p3p004755)の背に隠れた、『黒冠』セレンディの姿だった。
「うん、そうそう。大丈夫だよ」
 彼女を迎えに行ったジェックはセレンディの手を取り、椅子に座らせてやる。
 セレンディはアーカーシュの周囲を取り巻く『雲と雷の壁』を司る大精霊だ。
 ここが地上と比べて比較的安全なのは彼女のお陰と言える。
「それで話っていうのは何だろう?」
 マルクの問いかけにセレンディが頷き、ゆっくりと話始める。
「あの、あのです――」

 ――遙か昔のこと。
 アーカーシュの盾を司るセレンディがその任を得る前の話。
 セレンディはバラミタ鉱山に姿を見せたことがあるという。
「そこはかつて、活火山でした」
 炎の精霊と共に火山を鎮めるため、自身の力の一片を置いてきたらしい。
「……わたしのちから。エニグマ石――セレンディバイトの宝珠(オーブ)です」
 バラミタには物資が眠っており、独立島アーカーシュとラド・バウ勢力がアプローチを試みているが、そのついでに入手すればセレンディの力が強化出来るという訳だ。一石二鳥である。
 実際『どのように強化するか』は後日の課題だが、今は置いておこう。
「火山が復活したりなんてことはないのかな」
「大丈夫です、死火山になりました」
 セレンディは「炎の精霊の力が大きくなったから問題ないです」と答える。
 幸いにも友好的な存在であるらしい。
 作戦は明快だ。イレギュラーズは鉱山――洞窟の奥深くを冒険し、宝を得る。
 なるほど戦争よりは、よほどイレギュラーズらしい。

「バラミタ鉱山には、地下を通じてラド・バウ独立区もアプローチしています」
 そう述べた小金井・正純(p3p008000)が鉄帝国の地図を広げた。
 バラミタ鉱山の安全が確保出来れば、ルベン駅や、彼女等が発見したアルマノイス旧街道の入り口、それから南部まで様々なルートを開拓出来ることにもなる。
 マルクの立てた戦略――鉄帝国の全土開放にも通じている施策だ。
「空、地上、それから地下。地下のルートの多くは他のラド・バウやなんかの派閥に譲るとしても。友好的な勢力と共闘出来ることは、僕等にとっても意義があるね」
「ええ、地下はマイケル鍾乳洞を経由して、多くの派閥を繋げることが出来そうですから」
 マルクの言葉に正純が頷いた。
 一連の作戦が成功すれば、六天派閥すべてが物理的な連携をとりながら、帝都を包囲出来ることになる。
 そしてアーカーシュは『ラトラナジュの火』に続く、『もう一つの切り札』とも言える『セレンディ』の力を強化出来るとすれば――
「いいじゃない!」
 リーヌシュカが勢い良く席を立つ。
「ねえ、着いていってもいいでしょ?」


「クソが、なんだって俺がこんなことを」
 リーベンドルフ少尉は焦っている。
 彼の部隊はカンテラを頼りに洞窟内を進み、分かれ道にさしかかったところだった。
 隊員の一人が転び、足を挫いてしまったのだ。
 彼は荷物を仕方なく背負ってやりながら、毒づいていた。

 帝国では新皇帝が発布した総軍鏖殺の令により、罪人が釈放された。
 リーベンドルフもその一人だ。
 そもそも彼は軍内における物資横領の罪で捕まっていた。そういった小賢しい真似をする手合いは、同僚達からの扱いも良くない。より粗暴であったり、力を誇示するタイプが幅を利かせる現状においては、なおさら彼のような性格では生きにくいのだろう。
「隊長、この奥に空洞があるようです」
「デカした、行くぞ野郎共」
「アイサー!」
 新皇帝派は、イレギュラーズの息がかかった六天派閥へ一斉攻撃作戦を企てているが、六正面作戦など正気の沙汰ではない。そんな所からはおさらばして、こういった任務を選ぶのが賢いやり方だ。
 リーベンドルフは、幸いにしてイレギュラーズがバラミタ鉱山にアプローチする情報を掴んでいる。
「臭うぜ、ここは。何かが眠っているにチゲェねえんだよ」
 単に燃料や鉄などの物資を確保するためだけに、来ているはずがない。
 わざわざアーカーシュとラド・バウという、二派閥までもがここを選んだのだ。
 何かあるには違いない。直観がそう告げている。
 そもそも物資を得るだけなのであれば近場の鉱山でも良いはずではないか。
 これはリーベンドルフの単なる推測にすぎないが、実際のところ当っていた。アーカーシュからやってきたイレギュラーズの一団は、鉱山の物資を無視して、奥深くにある洞窟へ足を踏み入れたようなのだ。
「いよいよツキがまわってきたか?」
 天衝種なる魔物を横目に、リーベンドルフは口角をつり上げた。
 うまくイレギュラーズを追いかけて、奴等が得ようとするものを奪っちまえばいい。
 イレギュラーズは強いが、何も正面からやり合う必要はないのだ。
「俺はな、そこいらの馬鹿な奴等とは違うんだ。頭ってやつを使うんだぜ」
 リーベンドルフは舌なめずりしながら、自身のこめかみを指でつつく。そして再び歩き始めた。

GMコメント

 pipiです。
 セレンディの宝珠を手に入れ、彼女を強化するチャンスです。

●目的
 バラミタ鉱山の奥を目指す。
 セレンディの宝珠を手に入れる。
 敵を追い払う。

●ロケーション
 バラミタと呼ばれる鉱山です。
 今回侵入するのは鉱山の奥深くにある、天然の洞窟です。
 あたりは暗く、また足場は滑りやすいため注意が必要です。
 道は曲がりくねっており、見通しが悪いです。
 全員で並べるような広い場所もあれば、人ひとりがどうにか通れるような狭い場所もあります。
 それは敵にとっても同様なのですが……。

 往復で半日程度かかる見込みです。
 道中はおしゃべりしたりお弁当食べたり、見張ったり、先の地形の安全を確かめたりとかしましょう。
 ちょっとしたサバイバルな遠足です。

●敵
 天衝種を引き連れた、新皇帝派の部隊です。
 皆さんの後を付け狙っています。
 皆さんはそれに気付いて居ますが、こいつらは皆さんが気付いて居ることを知りません。
 どこでぶつかることになるかは分からないのですが(プレイング次第なのですが)、何らかのアプローチでうまく出し抜くことが出来るかもしれません。たとえばこちらに有利な地形で迎え撃つとか、奇襲するとかです。
 真正面からぶつかっても、皆さんなら普通にどうにか出来る相手だとは思いますが、被害を減らせるには越したことはないでしょうから。

『隊長』リーベンドルフ少尉
 バラミタにアプローチする情報を掴み、横槍をいれようとしている人物です。
 功績を立てるのにやっきになっています。
 新皇帝派の帝国軍人なだけあって、なかなかに強いです。
 体格が良く、格闘戦を好みます。フィジカルに秀でており、物理攻撃力とタフネスが高いです。
 逃げ足が速く執念深い性格ですので、そちらのほうが厄介かもしれません。
 変に道中うろちょろされても面倒くさいですので、逃がさず徹底的に叩いておきたいところです。

『新皇帝派軍人』×6
 機銃で武装しています。
 遠距離射撃、近距離扇の掃射の他、至近距離では格闘します。
 やはりフィジカルに秀でています。

『天衝種』フューリアス×2
 周囲に満ちる激しい怒りが、人魂のような形となった怪物です。
 怒り任せの衝撃波のような神秘中~超距離攻撃してきます。単体と範囲があり、『乱れ』系、『痺れ』系のBSを伴います。

『天衝種』ラタヴィカ×2
 流れ星のように光の尾を引く、亡霊のような怪物です。
 俊敏性や機動力に優れており、戦場を縦横無尽に飛行します。高威力の物超貫移で体当たりをする他、怒りを誘発する神秘範囲攻撃を行います。

●味方
『セイバーマギエル』リーヌシュカ(p3n000124)
 鉄帝国軍人の少女で、皆さんに良く懐いています。
 前衛型で、結構強いです。特に指示しなくてもそれなりに動きますが、指示しても構いません。

『黒冠』セレンディ(分霊)
 セレンディの分身のようなものが着いてきてくれます。
 蜃気楼のようなもので、攻撃も出来ず、また被弾などもありません。
 道案内兼おしゃべり相手です。

『陸軍少尉』リュドミーラ
 リーヌシュカの義姉で、帝国軍人です。
 どちらかというと書類仕事が得意ですが、俊敏で身軽に行動出来るため今回のような探索には割と向いています。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 アーカーシュの諜報能力によって、敵の動向やスペックがかなり掴めている状態です。

  • <ジーフリト計画>黒のエニグマ完了
  • GM名pipi
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マルク・シリング(p3p001309)
軍師
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
すずな(p3p005307)
信ず刄
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
結月 沙耶(p3p009126)
怪盗乱麻
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

リプレイ


 普段ならば湿り気を帯びているであろう石壁は、けれど霜に覆われている。
 素手で無闇に触れたら、張り付いてしまいそうだ。
 白い吐息を吐き出して大気を吸い込むと、胸の奥が刺されるような気さえする。
 一行はバラミタ鉱山の奥にある洞窟へ足を運んでいた。

「ここは、問題ないみたいです」
 ストックで足元を探りながら、滑らないよう慎重に歩みを進める『ドラネコ配達便の恩返し』ユーフォニー(p3p010323)は、冒険というものの『いろは』を良く理解している。
 自ら光源となったユーフォニーはやや後方から、一行の視界を確保していた。
 そういえば『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)にとっても、こうした『探索らしい探索』は何時ぶりのことだったろうか。
 気温は氷点下を大幅に下回っている。凍てついた足場はかえって滑りにくいようで、油断大敵とはいえ少しばかり安心した気持ちがない訳でもない。
「宝探しみたいでわくわくしますね……!」
「ええ、そうですね」
 そう言って地面の凹凸を「よいしょ」と越えたユーフォニーに、続くマリエッタが応じた。
「……たぶんこっち、だと思います」
 控えめに指さしたのはセレンディ――浮遊島アーカーシュの気象と防御機構を司る精霊――の幻影だ。
 歩いているというよりは、浮いたまますいすいと着いてくる。
 本体はアーカーシュのショコラ・ドングリス遺跡奥に居るが、こうしておしゃべりが出来るのだ。
「こっちですね、ありがとうございます」
 アーカーシュの気象を司る精霊といえば、マリエッタはポポッカを思い出す。一緒に来ることが出来れば喜んでくれたろうかとも思うが。けれどポポッカは、ずいぶん寒がりだったっけ。

 一行は一時間ほど洞窟を進んでいた。
 ずいぶん暗く、見通しも悪い――マリエッタは慎重に歩みを進める。
「あぁー、足元滑って危ないですよシュカさん!」
 ふいに駆けだしたリーヌシュカを『忠犬』すずな(p3p005307)が窘める。
「すずな! アーリア! こっちこっち! はやく! ここ見て! すごく綺麗な眺め!」
「はあい、転ばないようにね」
 はしゃぐリーヌシュカ(p3n000124)に、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が応じた。
 この冒険に際しリーヌシュカは「付いて行っていい?」などと述べていたのを思い出す。「まったくもぉ」とは思ったが、実際のところ現状は探検であり、遠足に近い。
「シュカさんの手綱はお任せしますよ! リュドミーラさん!」
「はい、ほんとすいません、あの子。もう」
「お姉ちゃんも早く!」
 そして空洞を覗き込めば、たしかに頷ける。奥では水晶のような柱がぼうっと煌めいていた。
 おそらく何らかの魔力が働いている鉱石なのだろう。
「鉱山だけじゃなく、こっちの資源も活用出来そうだね」
 ジェックの言葉に、一同が頷く。
 時間が限られた今回はともかく、そのうち採取に来ても良いだろう。
「ジェック! はねがはえたのね!?」
「あーうん。まだ慣れないけどね」
 振り返った『天空の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)にリーヌシュカは満面の笑みを浮かべた。
「いいなーはね! わたしもはえないかな」
 リーヌシュカはずいぶん楽しそうだ。
「まあ、こういうのも、気分転換にもなって良いと思います」
「ええ、招かれざる客人は居るようですが」
 述べたすずなに続けた『明けの明星』小金井・正純(p3p008000)だが。確かに最近は奪還やら制圧やらで慌ただしいことしきりであった。もっともすずなや正純の言うところの『招かれざる客』、即ち新皇帝派の軍人達もこの洞窟に来ているようだが――それはそれで存分におもてなししてからお帰り願うまでだ。
 いずれにせよここバラミタ鉱山からのルートがつながれば、各派閥を結ぶ線が見えてくる。
 六派閥が協調して帝都を包囲し、新皇帝を打倒する。その道筋が拓けるのだ。
(僕たちのやってきた事は、一歩一歩、確実に前進している)
 そう『浮遊島の大使』マルク・シリング(p3p001309)は思う。
 この一歩もその先へと繋ぐのだと。

「様子はどうだろう?」
「こちらはまだ大丈夫です」
 マルクへ答えたユーフォニーはドラネコさんを二匹連れており、偵察によって敵の動向は掴めている。
 一行は頃合いを見ておびき出し、片付ける算段を付けていた。
「あ、よければこれをどうぞ、皆さんも。」
「ありがとう」
 ユーフォニーがチョコミントを配る。こうした場所ではカロリーと水分の補給は欠かせない。
 小休憩をはさみながら、糖分が一行の身体に熱を与えてくれたところで、再び歩き出す。
「こんどは、たぶんそっち」
「宝珠の方向が、なんとなく分かる。来たことがあるからでしょうか」
「はい……記憶は曖昧ですけど」
 正純達の目的はセレンディの力を分けたエニグマ石の宝珠を得ることにある。
 それがあればセレンディの力を強化出来ることにつながるのだ。
 正純等が所属する独立島アーカーシュは今のところ順調だが、敵は『冠位魔種』憤怒のバルナバスなる正真正銘の怪物である。
「『備えすぎる』ということはないでしょうし」
「少しでも戦力が――『切り札』が増えるに越したことはないからな」
「ええ、『切り札』は一枚とは限らないもの。セレンディちゃんの宝珠、手に入れちゃいましょ!」
 正純の言葉に『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)が続け、アーリアが結んだ。
「そう言えば、話に出てきた炎の精霊ってここにはもう居ないの?」
 尋ねてみたジェックは「いるなら会ってみたいね」と続ける。
「居るとおもいます……どうして、です?」
「だってキミ(セレンディ)の友達なんでしょ。なら、アタシも仲良くしたいじゃん」
 そう言うとセレンディの幻影は、どこかはにかんだ風に、そして少し嬉しげに投影像を揺らがせた。
 後で知ることになるが、炎の精霊――ミシュコアトルにはラド・バウ独立区がアプローチしており、彼等もまたジェック達の仲間であるから、いずれ会うこともあるかもしれない。
(……しかし、炎の精霊の力、か)
 炎の精霊といえば――沙耶は思わずにいられない。
 深緑の地で二度戦ったシェームは、今はファルカウの中で眠りについているのだろう。
 また会いたいとも思う。願わくば嘆きの顕現ではない形で――


 一行は和やかな空気で洞窟を進んでいる。
 準備も万端であり、怪我人もいない。
 ユーフォニーとリュドミーラは頷き合いながら、厚手の裏ボア手袋で器用に鉛筆を掴むと、方位磁針をクリップした手記に地図を書き込んでいた。
「一致していますね」
「はい」
 複数の視点で同じ解答が得られているのは安心だ。
 二人の書き込みを確認した正純も、これまでの道筋を頭に叩き込んでいる。
 すずなも都度都度、脇道などをチェックしていた。待ち伏せに適した場所を探すためだ。
 アーリアも足を止め、人数を確認する。全員居る、問題ない。

「そろそろ頃合いかな?」
 殿を務めていたマルクが一行へ呼びかける。
「そうですね、良い時間と場所だと思います」
 頷いたマリエッタ達は、少しスペースのある場所へシートとクッションを敷いて腰掛けた。
「そういう感じなんだね」
「はい」
 皆に視線の高さを合わせるように、立ったまますいと腰元まで地面に沈んだセレンディの幻影に、ジェックが呟いた。精霊のこういったちょっとした仕草は、なんだかちょっと不思議な感じがする。
 マリエッタが断熱材を紐解いた。崩れたり凍ったりしないかと少し心配していたが、美味しそうなサンドイッチが姿を見せてくれて、ほっとした。
「温かな飲み物もありますから」
 帝国製の簡素な魔法瓶から、各々のカップへ温かな紅茶を注いだ。
 立ち上る白い湯気とふくよかな香りに、心が安らいでくる。身体の中から暖まるようだ。
「……」
 セレンディは黙ったまま――恐らくアーカーシュ側で――サンドイッチをもくもくと食べ始めた。
 そうしてくれていることに、ジェックとアーリアはなんだかほっとする。
「そういえばセレンディちゃん。ね、宝珠ってどんな色? どんな所に置いて行ったの?」
「漆黒です。鍾乳石を祭壇に見立てています」
 なるほど、結構分かりやすそうだ。
「おいしそう。私これがいい!」
「ほら、あぶないの」
 ハムのサンドイッチを手にしたリーヌシュカが二度ほど跳ねたから、アーリアが座らせてやった。
 ともあれ一行はようやく落ち着くことが出来た。
「マリエッタのお弁当、おいしいじゃない!」
「お粗末様です」
「私はこっち、島の名物エリザベスアンガス正純の缶詰をバンズに挟んで正純バーガー!」
 木の実のオイルで煮た小魚は骨まで柔らかく食べられる。もちろん――アーリアが頬へ手を添える。
 お酒はまだまだ我慢の時だ。
「正純バーガー! それも一口ちょうだい!?」
「もちろん。正純バーガー、とっても美味しいわよ」
「……あの。いえ」
 正純はなんともいえない複雑な表情で、缶詰から視線を逸らした。
 こうした品物で島の食料が潤沢であることは喜ばしいのだが。学会――アーカーシュ・アーカイブスのやり口、もとい発表には、まだなんとなく納得しきれていない。
 しかしずいぶん大人になったものだとアーリアは思う。いや、どことは言わないが。
 少女は徐々に大人になっていき、恋をしたりお酒を嗜んだりするのだろう。
 感慨深げにリーヌシュカを見つめていたアーリアは、ふとすずなへ視線を移す。
「……んん? アーリアさん? どこを見て――シュカさん? いやあの、私の尻尾に何が……?」
 気付けばサンドイッチを頬張ったまま、リーヌシュカが後ろに回り込むようにして両手をわきわきさせている。なんとなくむずがゆいような気分になったすずなは、視線から逃すように尻尾を振った。まあ、はしゃぎすぎない程度に相手をしてやったほうが良いのだろう。
「お行儀が悪いですよ」
 それにしてもリーヌシュカは薄着で元気なものだ。こうした環境への鉄騎種のタフさは少しうらやましくも思える。現場は奇しくもカオスシード(人間種)とウォーカー(旅人)揃いなのだ。専門の装いをしている沙耶辺りも平然としているが。それはさておき。
「いつもほんとすいません。あ、お弁当ありがとうございます、それではいただきましょうか」
 申し訳なさそうなリュドミーラも囲み、一行は食事の時間を取ることにした。
 ユーフォニーも小さなお肉の包みを紐解き、白ミケの白リーちゃんと、黒ミケ茶翼の黒リーちゃんを代わる代わる呼び、ご飯をあげる。ごろごろと喉を鳴らして頬にすり寄るドラネコ達を撫で、もう一度見張りと偵察をしてもらった。
 飛んでいく二匹には感謝に堪えないが、食事中であっても敵に出し抜かせるつもりはない。

 こうして一行は代わる代わる見張りを立てつつ、小一時間の休憩を行った。
「それじゃあ進もうか」
 そして立ち上がったマルクの言葉に頷き、一再び探索を再開する。


 幾ばくか進むと、一メートルほどの横穴が現われた。
「ここを通るのかな」
 ジェックの問いにセレンディが頷く。
 続く道は這ってくぐり抜けるほかなさそうだ。
「すずな、おさきにどうぞ!」
「それではお先に失礼して……って騙されませんよ、シュカさん」
「えー……」
 すずなが後ろ手に尻尾を抑える。
 ともあれ一行は二十メートルほどの細い穴を進んだ。
「ようやくひらけたな」
 沙耶は溜息ひとつ、立ち上がる。
「押さない・駆けない・(危険な気配があれば)喋らない」
「うん、おさないかけないしゃべらない」
 リーヌシュカが走りだそうとするたびに、アーリアが唱える言葉はそろそろ呪文めいてきた。
 言いさえすれば、一応はきちんと従ってくれるあたり、良い子ではある。落ち着きはないけれど。
「ここはどっちだろう」
 問いにセレンディは曖昧に首を振る。
「こっち、ここ。黒い岩目が増えてないかしら?」
「本当だ」
 アーリアが指さした方向には、どこかセレンディを思わせる色彩の石が見えている。
「じゃあ、こっちのルートがよさそうだね」
 マルクが述べ、一行は更に歩みを進めた。

「このあたりはどうでしょう?」
「そうですね、ちょうど良いのではないでしょうか」
 ふとすずなが振り返り、リュドミーラが答える。
「私達が隠れている場所に視線をやったりしないよう、シュカさんに言い聞かせて下さいね!?」
「そういうことですから、ね」
「はーい」
「こっちなんてどうだろう?」
 セレンディが指さした場所へ、ジェックが歩いて行く。
「いつまでも無粋な輩に着いてこられちゃ堪んないし、ね?」
 一同が頷き、二人の人員を残してもう少し進んだ。
「今この場に新皇帝派が来る筈も無いし、安心して探索に専念できるね」
 そんなマルクの言葉を、追うものはどう感じ取ったろうか。
「時間はどれくらいありそうかな?」
「五分ほどだとおもいます」
「大丈夫そうだね」
 ドラネコさんを通して敵を監視しているユーフォニーの答えにマルクが頷いた。
「そろそろ頃合いだな」
 敵方には聞こえぬ声音で沙耶がささやき、一同は気配を閉ざした。
 あちらはカンテラ頼りだ。こちらから向こうは見えるが、向こうからこちらは見えない。

 こうしてじっと待つ。
 自身の鼓動が聞こえてくるほど、静かに息を潜めて待ち続ける。
 ほどなく待ち伏せしているすずなとマリエッタの耳に足音が聞こえてきた。
 魔物をひき連れた新皇帝派の軍人達のものだ。
「ったくよお、こんなとこに何があるってんだ、ええ?」
 隊長であるリーベンドルフ少尉がぼやき、先程マルク達が進んでいった狭い道へ入っていく。
「んー? おい、明かりを貸せ」
 リーベンドルフの不審げな声音に、一同は緊張を走らせた。
「……何だ石の境目じゃねえか」
 そのあたりで岩目が黒曜石のような岩盤に切り替わっており、人影と見間違えたのだろう。
「いいこと思いついたぜ」
 リーベンドルフが振り返った。足音がとまる。
「石の様子が変わってきたぜ。あいつらそろそろ何かを手に入れて引き返す頃合いじゃねえか? この先をよう、確認したらよう。そっちかさっきんとこで待ち伏せてやるってのはどうだ?」
「ハッ! 連中は我々の追跡には気付いて居ない、絶好のチャンスかと!」
「へへっ、だろお? これで楽して一網打尽だぜ!」
「ですぜ!」
「あんな連中と真正面からやり合うなんざ、馬鹿のやることだからよ。俺はココがちげえんだ」
 リーベンドルフが自身のこめかみを指でつつく。
 笑いをこらえるように肩を震わせたリーヌシュカの手をアーリアとリュドミーラがぎゅっと握る。
「……」
「…………」
 まだだ。
 まだその時ではない。
 一行はじっと待ち続けている。
 そしてリーベンドルフ一行が広場へ姿を見せた、その瞬間。

「探索に専念したいんだ。悪いけど眠っていてくれるかな」
 ユーフォニーの魔力嵐とジェックが放つ無数の弾丸、マルクの魔術が突如敵陣を猛襲した。
 続いて後背に潜んでいたすずなとマリエッタも敵陣へ駆ける。
 それはイレギュラーズによる完全な奇襲だった。
「あ、ああ!? ふざけんじゃねえぞ、このオレの頭脳が」
 リーベンドルフが身体を震わせ狼狽える。
「マルク曰く丁子作戦って言うらしいよ」
 ジェックが次の狙いを定めた。
 一行は広場で横列になり、縦列で行進する敵へ十字砲火を仕掛けた。
 完全に各個撃破のやり方だ。
「ひ、ひきかえせ!」
「逃がしてなんてあげないんだから!」
「ええ、無論です」
 正純が弓を引き絞り、アーリアが艶やかに手のひらを翻す。
 弦音と共に――アーリアと正純は漆黒の術式を展開し、そのまま混沌の波動を敵陣へ叩き付けた。
 思わず足を止めた敵達が身体をぶつけ合い、足を滑らせ転んだ者も居る。
 圧倒的な一斉攻撃を前に、現時点で応戦出来た敵は一人もいない。
「ずいぶんと私達の後をつけていたみたいじゃないか」
 沙耶が述べた。
「クソが、気付いてやがったのか、卑怯モン共が!」
 先程の自身の言葉を忘れでもしたかのように、リーベンドルフが悲鳴を返す。
「もしかして、君たちもアレをねらっていたつもりか?」
「アレ!? そ、そそ、そうだ! アレだ。俺にわからねえことはねえ」
 とてつもなく胡散臭いが、ともあれ。
「悪いな、怪盗は狙った獲物は同業者にも渡さないのでな」
「あああクソが!」
「ついでにつけ狙ってた罰だ、ここで倒れていってもらおうか?」
 飛び出して来たラタヴィカへ沙耶が指差すと、無数の戦闘人形が襲いかかる。
 斉射――雪月花を思わせる陸海空の三連撃に、はやくも一体が消滅した。
「今井さん」
「お任せください」
 今井さんが帝国式の大型機銃を両手で支え、掃射する。
「くそ、引き返せ」
「そうはさせてあげられないんですよね」
「ええ。油断大敵、というやつです。確認を怠った貴方達が悪いのですよ?」
 振り返れば背後には、二人のイレギュラーズが待ち構えているではないか。
 マリエッタの聖なる血印が輝き、顕現した大鎌を振るい抜く。
 つづくすずなの一閃を受け、天衝種フューリアスが消滅した。
「転進! 後ろは二人だ! 突破しろ!」
「二人だから脆い――そう考えているのでしょうが」
 させるわけがない。マリエッタが再び神滅の鎌を振るう。
「おやおや。鉄帝国軍人が逃げるのですか?」
「逃げてねえぞ! 転進、転進だ!」
「転進ねえ」
「言葉だけは勇ましいものですが」
 アーリアと正純は、最早あきれかえっていた。
 敵が今更になって踵を返したところで待ち伏せ組みの猛攻が止む訳もなく。
 反撃を試みようにもアーリアと正純、マルクによる三重の混沌術式がそれを許さない。
 運命をねじ曲げるように、敵達は足をもつれさせ、幾人もが地へ転んだ。
 僅かなチャンスに反撃を試みようとも――弾丸が降り注ぐ――ジェックが全てを縫い止めてしまう。
「……脆すぎる。『一網打尽』とやらにするのではなかったのか」
 沙耶の言葉通り、リーベンドルフの浅知恵は全く役に立っていない。
 リーベンドルフは迷っていた。
 前へ突破するのは不可能だ。
 だが後ろにはマリエッタとすずなが立ち塞がっている。
 逃げることさえ出来やしない。
「――聞きしに勝る軟弱ぶりですね」
「クソがああ!」
 すずなが放ったとどめの言葉にリーヌシュカがけたけたと笑い、リュドミーラさえ苦笑を隠せない。

 ――結局。
 交戦開始から僅か四十秒ほどで、敵軍は冷たい洞窟の底で雑魚寝するハメになった。
 余りにあっけない幕引きは、完全にイレギュラーズの『作戦勝ち』だったと言えよう。
「まるで仕置きだな」
「……ですね」
 沙耶がぼやく。これでは戦いとすら呼べない。
 マリエッタも思う。『手札の数』さえロクに披露出来なかったではないか。


 一行は敵を縛り上げ、武器を取り上げ、周囲を囲んでいた。
「それで、どうしようね」
 ジェックが仲間へ視線を送る。
「くっ、殺せ!」
 リーベンドルフはまるで嬉しくもなんともないことを言ってくれるものだ。
 なんというか、この状況は困る。
 身動きのとれない相手を殺す趣味もなければ、別に野垂れ死んでほしい訳でもない。
 とはいえ探索の邪魔ではある。それも大いに。
「こんな為体じゃ帝国軍人の風上にもおけないわ」
 相手は罪人ではあるが、こそ泥を働いた程度の軍人だ。
 腰に手を当てたままのリーヌシュカが近付くと、軍人達は縛られたまま一斉に身体を方向けて下から覗き込もうとし、アーリアがリーヌシュカの手を引いて下がらせた。
 彼等は今もう一つ罪の未遂が増えたのかもしれないが、それはさておき。
「ほんとしょうもないですねえ」
「そうねえ」
 不思議そうに辺りを見回すリーヌシュカを背で守り、正純とアーリアも首を傾げるほかない。
「じゃあ、こんなのはどうかな」
 マルクが軍事に達の前にたった。
「僕はアーカーシュの大使、マルク・シリングです」
「俺はリーベンドルフ。帝国陸軍少尉だ」
「私は大尉よ。佐官教育中なんだから!」
 なぜかリーヌシュカが胸を張る。
「それではリーベンドルフ少尉、新皇帝派なんて辞めて、アーカーシュで働いてみませんか?」
 そう言ってのけると、仲間達と軍人達が一斉にマルクの顔を見た。
 実際のところ、マルクはアーカーシュにおいて大使としての権限がある。リーヌシュカが事実上の佐官であるならば、マルクあたりの頭脳派達は歯車卿を幕僚とする将官のような立場とも言えた。もっとも一人という訳ではなく、またさすがにそれを任命出来る者はいないが、そこはそれ。
 単に『やってのけてしまっている』という話だが。
 ともあれ『大使』のみならず『指令』と呼ばれる日は、すぐそこだろう。
 ――そんなしばらくの沈黙の後。
「……は、はぁ!?」
 ようやく状況をかみ砕いたリーベンドルフが、素っ頓狂な声を張り上げる。
「さすがにそのまま無罪放免とはいかないけれど、重犯罪者という訳でもないし」
「……まじかよ」
 他の軍人達もざわめきはじめた。
「他のみんなもどうだろう?」
 マルクが再び問う。
「お、おれはべつにいいぜ」
「おれも、つかそもそも俺は隊長と違って横領とかしてねえし、別に新皇帝に賛成してる訳でもねえ」
「そうだ単に部隊にいるだけだ、なんだって俺がこんなことしなきゃなんねえんだ」
「いやでも食ったんだから同罪だろ」
「いやいやいやいや」
「てめえら、うるせえぞ!」
 そんな風に、ひとしきり騒いだ軍人達は、しばらくすると大人しくなってきた。
 上官を含めての会話もざっくばらんなものであり、悪い空気の部隊ではないようだ。
 聞けばリーベンドルフ以外の軍人は、単なる部隊編成の結果こうなってしまっただけらしい。
 リーベンドルフは軍備品を横領したが、話を紐解けば、食料が不足した際に部隊へ横流ししたというものだった。厳密には悪事といえば悪事だが、ちょっと情状酌量の余地は感じる。
 それにリーベンドルフ当人も怪我をした部下をぶつくさ言いながらも介抱してやったりと、なんだかんだ部下達に慕われているようでもある。
「……」
 そんな理由を聞くと、ユーフォニーは考え込んでしまった。
 食料を盗めば、食べるべき人が食べられなくなる。けれど盗まなければ飢える人も居る。
 それが帝都の実情ということか。
「それに貴方は、力よりも知恵ってタイプみたいだから」
 マルクの言葉にリーベンドルフが口角をつり上げた。
「おうよ、俺の頭脳はなかなかのもんだぜ」
 実際のところ、あんまりそうとも思えないのだが、マルクというのは策士なものだ。

 一応、足の方はロープ外してやり、リーベンドルフ隊を加えた一行は、洞窟の奥を目指している。
「見た目や置いた場所など、セレンディさん、何か覚えていることはありますか?」
「もうすぐ、だと、おもいます」
 エニグマ石。謎や暗号の石だろうか。ユーフォニーが首を傾げる。
(春が来る前に、決着をつけたいもの。だから、どうか見つかりますように)
 先程から岩の特徴を見ていたアーリアは、たしかに近付いているとは考えている。
 辺りはすっかり地質が変化し、滑らかな漆黒に覆われていた。
 ここは冷気もあまり感じない。
 静かで、声もほとんど反響しない不思議な空間だ。
 ともすれば不安にもなりそうなものだが、なぜだか温かで安心させてくれるような気配を感じる。
「こうすると、もうすこし詳細に感じられないかな?」
 マルクが手短な術式を紡ぎ、セレンディの感覚を強化する。
「もう少しこっちだとおもいます」
 セレンディが方向を指さした。近付いているのは実感したらしい。
「ここはずっとこうだったの?」
「いいえ、おそらく宝珠の力によるもの……です」
 ジェックの問いにセレンディが答えた。
「綺麗ですね、マリエッタさん」
「そうですね」
 艶やかな黒の静謐は、ユーフォニーにとって、セレンディの穏やかな心を映しているようにも見えた。
「たぶんこのへんのはずですが」
 セレンディはそう述べたが、もう少し探索が必要そうにも思える。
「水の属性……ですよね。ふむ」
 マリエッタはしばし黙考し、結論付けた。
「この洞窟内、水を感じる場所を探ってみるのもいいかもですね」
「探ってみます」
 心惹かれるまま。慎重に、けれど勇気を灯らせ大胆に。
 ユーフォニーが精霊力の探査に集中し、いくつかの横穴のうち、一つを指さす。
 未知を楽しむように歩みを進め、マリエッタとユーフォニーは思わず顔を合わせた。
 そこには漆黒の祭壇があり、仄かに輝く丸い宝珠が浮かんでいるではないか。
「――?」
「……わ」
 ふわりと浮かんだまま近寄ってきた宝珠を、マリエッタとユーフォニーが受け止める。
「これが、宝珠……?」
 二人の手に収まった球体を見たジェックが呟く。
「どうでしょうか」
「これで間違いないだろう」
「うん、僕もそうだと思う」
 不安げなセレンディの声に、宝珠を調査した沙耶とマルクが答えた。
「だったらキミの一部だ、大事に持って帰らないとね」
「はい」
 少し嬉しそうなセレンディの幻影に、ジェックはほっとする。
「人心地ついたわねえ、帰ったら祝杯にしましょ」
「いいですね。それでは戻りましょうか」
 振り返ったアーリアと正純の言葉に、一同が頷いた。

 なんだかんだで、リーベンドルフ隊はアーカーシュの独立混成連隊に組み込まれることになった。
 そして独立島アーカーシュは、もう一つの切り札とも呼べるものを手に入れたのだ。

成否

成功

MVP

マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れ様でした。
 完勝ですね。これはむーりー!

 MVPは最終的な局面で、機転を効かせて『水』を示唆した方へ。

 アーカーシュはリーベンドルフ隊を組み込んだため、軍事力が+10されました。
 またセレンディの宝珠も無事に入手しています。

 それではまた、皆さんとのご縁を願って。pipiでした。

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