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シナリオ詳細

<ジーフリト計画>バラミタ・グレンツェ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 マイケル鍾乳洞。それは以前、ラド・バウ独立区が発見した地下道の一角である。
 地下道は、鉄帝各地にかなり大規模に広がっている。
 故に地下道を巡る戦いも行われている……その最中に。

「――この先か。バラミタ鉱山にも繋がっているラインというのは」
「ふー! 結構歩いたけれど、ホントに着くかしらね? 迷ったりしてない?」

 マイケル鍾乳洞の更に『奥』へと進んでいるのはイレギュラーズ達に加えて、ラド・バウ独立区に属するスースラ・スークラとイルリル・イーラントの二人もであった。二人は、ラド・バウに残ったビッツの代わりに地下へとやって来た者達――
 なんでも、この先がバラミタ鉱山に繋がっていると聞くのだ。
 バラミタ鉱山と言えば地下資源で有名な大鉱山。それに不凍港ベデクトにも近い――かつて海洋との戦争の際に交渉によって権利を割譲された地でもあったか。あそこまで繋がるルートを確保できれば、ラド・バウは大きく補給路を拡大させられるだろう。
 ……が。闘士達もここへと来た理由は、それだけではない。
「たしかウォロクの話によると……この辺りには精霊もいるのだとか」
「精霊?」
「大精霊、だろうかな。ミシュ……なんとか。
 その精霊の力を『今後』に借りられないかとする思惑も、あるそうだ」
「今後――ね」
 そう。バラミタの地下には炎を司る精霊がいる、という話なのだ。
 スースラが語った『今後』とは、およそ近い将来に訪れるであろう、帝都決戦の事である。厳密にはまだ確定していない未来の事……帝都が戦場になるかは定かではないが、しかし。新皇帝バルナバスが玉座に座す帝都が戦場になる可能性は高い。
 であれば。帝都に在るラド・バウがその決戦において大々的に巻き込まれる可能性も、また高かった。
 ……流石に個人実力の高いラド・バウ勢力と言えど、大規模な戦争が行われればどれ程被害を抑えられるかは分かったものではない。故に、今の内に備えを手に入れておきたいと考えるのは必定であったか。
 その為にスースラやイルリルは此処へと至ったのだ。
 マイケル鍾乳洞を通りバラミタまでのルートを確保する。
 その為に、邪魔な魔物でもいれば――排除する為に。
「……そうしていれば早速、だな」
「わぁ天衝種よね? 結構な数がたむろしてるわ」
 然らば、見えた。路線をまっすぐに進んでいれば……その先に、少し開けた空間が見えてきたのだ、が。同時に魔物――恐らく鉄帝に最近蔓延っている天衝種――の姿も捉えられた。予想通りと言えば予想通りだが、やはり目標地点までの途上にこんな連中がいては目障りな事この上ない。
 ――排除させてもらうとしよう。
「まだ敵は気付いていないな。ふむ。上手くすれば迂回して、挟み撃ちの様な形で攻勢を仕掛ける事も可能かもしれない……全員で一丸となって正面から押し込んでいくのも手だが、どうしたものか」
「中央にいる蛇……アレがなんかリーダーっぽいわね」
「ああ。フィラグとかいう天衝種だな。
 図体に似合わず、治癒の術を得意としていると聞く」
 が、その前にとスースラが一度、敵の様子を見てみれば――なんとも、天衝種達はまだ此方に気が付いていない様だ。ならば敵が気付く前に戦力を振り分けて挟み撃ちの様な事も出来るかもしれない……
 警戒すべきは中央に座している蛇の様な個体、天衝種フィラグ。
 巨体であるが、その図体から繰り出されるのは基本として治癒の技であるとか。
 奴を残していれば他の個体共の生存性が高まるかもしれない。
 先に倒すか、或いはやはり全員一丸となって押し込んでいくか。
 さてどうしたものか。
 バラミタとマイケル鍾乳洞の境界線……バラミタ・グレンツェにて、思案を巡らせるものであった。

GMコメント

●依頼達成条件
 敵勢力の撃退。

●フィールド
 地下道。発見されたマイケル鍾乳洞の先に在る、バラミタ鉱山の地下区画です。
 些か広い空間へと辿り着きました。周囲を眺めてみると工具などが存在している為、バラミタが稼働していた頃には採掘現場か何かだったのかもしれませんね。
 しかし今は後述する天衝種達がたむろしている様です。
 敵はまだ此方に気付いていないので攻撃を仕掛ける前に、回り込んで包囲、もしくは挟み撃ちの様な形に持ち込む事も可能かもしれません――勿論、そのまま一丸となって敵と相対するのも手ですが。

 地下ですが、所々に光る石の様な灯りがあるので光源対策は必ずしも必要はありません。別途暗視なり、光源なりを用意してもOKですが。

●敵戦力
・『天衝種フィアグ』×1体
 羽の生えた蛇の様な怪物です――
 巨体であり、卓越したHPを宿しています、が。その行動は攻撃よりも治癒を基本とします。ヘイトクルー達を一斉に癒す『治癒の光』を降り注がせる援護を中心として行うようです。これはBS解除などの属性も有しています。
 また、治癒をしない場合は敵のみを穿つ漆黒たる光(神秘攻撃。識別アリ。【不吉系列】BSアリ)を放ち、薙ぎ払う様に皆さんへと撃を紡ぐ事でしょう。

・『天衝種ヘイトクルー』×15体
 陽炎のようにゆらめく人型をとった怪物です。
 剣の様な幻影を携え『近接戦』を得手とする『近接型』が10体。
 機銃のような幻影に射撃や掃射で物理の遠距離攻撃を行ってくる『機銃型』が5体。
 以上の構成になっています。
 何かに怒っているのか、怒り任せの一撃が目立つようです。
 その為、攻撃力はそれなりに高いのですが、BSなどには掛かりやすいかもしれません。

●味方戦力
・『スースラ・スークラ』
 ラド・バウ闘技場の設備点検を担っている整備担当者です。
 過去には闘士として活躍していた時期もあったそうですが、試合中の怪我により一線からは退きました。かつては『斬鉄』とあだ名されていた事もあったそうです――質実剛健とした刀を使用した剣士タイプで皆さんと共に戦います。

・『イルリル・イーラント』
 ラド・バウ闘士であり、徒手空拳の武道家スタイルの人物です。
 『八極拳』に酷似した独自の武術を収めており接近戦を得意とします。
 天衝種撃退の為に皆さんと共に戦う事でしょう。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ジーフリト計画>バラミタ・グレンツェ完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
冬越 弾正(p3p007105)
終音
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼

リプレイ


 補給路の拡大は大事。が、それはそれとしても抜け道を一つ確保できていると、いざ人民の避難が必要な時に何かしら得になることが多い――このご時世だ。実際これから『どう』なるかなど分かりはしないのだから、と。『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は思案するものである。
「いつどうなるかわからないこそ余裕を持って備えておきたいよね」
「だが……本当に、どこを見ても天衝種だらけだな。
 やれやれ。安全を確保する為にも、やはり一肌脱ぐ必要がありそうだ」
 同時。『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が見据えた先には――天衝種がいようか。このまま進めばすぐにでも戦闘開始の距離に至る、が。その前にイレギュラーズは二手に分かれるものだ。
 気付かれる前に回り込んで挟み撃ちの形にするのである。
 足音を極力殺しつつ、雲雀は敵に気配も気取られぬ様にしながら……
「ン。気付カレテナイ ナラ“奇襲”スル。フリック 正面担当 後デマタ」
「おお、見ろ。あの方向から仕掛ければ気付かれにくそうではないか?
 一気に行けるかもしれん。後方側が攻撃を仕掛けた後に、こちらも動こう――
 ――スースラ殿、ネクタイは結べたか?」
「無論だ。問題な……むっ。いや緩かったか? なにやら解けてきたな」
「スースラ殿は久しぶりだな、相変わらずお茶目な御仁だ……だがそれがいい」
 であればと『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)やスースラは正面側に残り。一方で先の雲雀、イズマに続いて背後側へ赴かんとするのは『残秋』冬越 弾正(p3p007105)に『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)か。
 別れる前に弾正はスースラを、己が祝福の対象としておこう。
 光の楔が音を伝える。其れをもってして回り込む側の様子を知らせんとするのだ。
 敵に気付かれてないのは幸い。この機会は逃せないから――と。
「まさかバラミタとマイケル鍾乳洞が繋がってたとはな……よく出来た偶然……とか思いたいけど、ひとまずはその偶然を喜んどくか――どうなるにせよルートを開いてからじゃねぇとお話にならないものな?」
 そして『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)は正面の方で準備を整えつつ、一度皆と共に息を整えるものだ。奇襲の効果が見込めるのは……当然として初手限りであればこそ、タイミングが重要。
 一拍、二拍。微かなる静寂が訪れた、次の瞬間。
「よーし! 行っくよ――!! 鉄帝の人の暮らしの為にも、必ず退いてもらうんだから!」
「堅気の皆さんの生活が掛かってるんだ――ひとつ、気張るとしようかね」
「そうね、さっさと片付けちゃいましょ!」
 一気呵成に正面より躍り出たのは『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)に『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)、そしてイルリルであった。焔は己が槍先に炎を灯し、更に目立たんとするか――それは背後に味方が回っている事から注意を逸らす為である。
 その上で無論攻勢も同時に加えよう。敵が固まっている箇所に裁きの炎とも言うべき神秘を繰り出せば、義弘もまた己が膂力をもってして敵を薙ぎ掃わんと突撃する。イルリルの手刀も天衝種へと放たれれば――天衝種らの殺意は前面に向くものだ。
 故に、その機を挟撃側は見逃さぬ。
 注意が完全に逸れた刹那をイズマは見切り奇襲を仕掛けるのだ。
「今だ――ッ! 行こうッ! ここはお前達の様な連中の溜まり場ではない。退け!」
「鉄帝の皆さん方の為に――ってね。仕留めさせてもらおうか」
「懸念要素は今の内に取っ払えるだけ取っ払っていかないとね」
 絶好のタイミング。更にイズマの動きに連鎖する形で皆も続こうか。
 イズマの神秘なる泥が放たれたと同時。カイトが紡ぐのは際限なく降り注ぐ雨――
 それは一瞬にして一体を凍土と成す災禍だ。更には、雲雀は糸を顕現させ連中を縛り上げるように展開もする――数多を巻き込む一撃が天衝種らへと襲い来るのである。
 まだ混戦の状況下でなければこそ、味方を気にする事なき撃が次々と往こうか。然らば敵の動きに鈍りが見られるものだ。カイトやイズマ、雲雀の攻勢には敵の足や手を痺れさせるが如き能が宿っているのだから。
「成程。やはりこの力は頼りになるな。三人も揃っていれば、より強力ともなるし、な」
 然らばアーマデルは、ソレらの力に些か憧れの様な感情を抱くものだ。かつての練達の事件の折では己もやってみた事があるが――味方にいてくれるとやはり、心強いと。
 そして、アーマデルも音色を紡ぎて攻勢を仕掛けようか。
 天衝種を排する為に。己に出来得ることを――今、放つのだ。


 奇襲による攻勢。ソレはものの見事に決まった形であった。
 背後に回った面々は気配を殺す技能に長けた者達も多かった――故にこそ天衝種らに悟られる事はなかったのだ。完全に意表を突いた強襲は、敵に甚大な被害を齎す、が。
『ガ、ァ、アアアア――!』
「蛇 吼エテル マダマダ 健在ミタイ 油断禁物カモ」
 それだけで勝負が決まる訳ではなかった。
 中央に座す蛇型の天衝種フィラグが味方の混乱を沈めんと力を振るう――
 直後にはヘイトクルー達の身がある程度癒え、動きが元に戻る個体もいるものだ。
 反撃の一手が紡がれる。故に、フリックはイレギュラーズに襲い来るモノがあらば即座に自らも治癒術を紡ごう――フィラグの力に対抗するはフリークライの力。彼が戦場に在れば、それだけで周囲の者達に『導き』の力をも与えるのだから……
 それは敵の齎す負への対抗ともなろうか。
 イレギュラーズ達は挟撃策を選んだが故に、後方側に回り込んだ者達にまで加護が届く――と言う訳ではないが、しかしそれでも正面側に位置する者達には須らくその対象に在った。
「バラミタ鉱山までのルートは必要なんだ。道を開けてもらうよ!」
 例えば焔もその一人だ。受け取りし加護が、彼女の力となる。
 その上で焔は、地面や壁に更に火を灯そう。小石にも火の祝福を齎せば、あちこちにばらまきもする――それはつまり光源となるのだ。ただでさえ暗い地下道だ。義弘の辺りは優れし感覚と暗きを見通す目が在るが、全員がそうという訳でもない。
 少しでも皆の助けになる様に。
 更に神域と言える結界を展開すれば小石の破砕もある程度防げようか。
 彼女は前面に出でるヘイトクルーへと槍を一閃しつつ――攻め立てて。
「フィアグを止めるぞ。奴さえ止めれば、連中はガタガタになる筈だ……!」
「邪魔立てする連中は任せろ。射線は俺が――切り拓く」
 さすればカイトは天衝種達全体を支えるフィアグを狙い撃ちせんとしようか。治癒役であるフィアグの動きを乱す事さえ出来れば一気に優勢になる筈だと――カイトは全てを見通す視座を得る加護を自らに齎しつつ、更に周囲を俯瞰する視点と共に状況を見据えるものである。
 そしてフィアグへの攻勢を妨害せんとするヘイトクルーを狙うのは義弘だ。
 とにもかくにも連中の数を減らすも重要だと。
 初手奇襲には成功したが、純粋な数の上では連中が上――
 攻勢が集中すれば負傷する者も出てくるだろう。故に、潰すのだ。
 自らの五指に力を籠め。振るう拳は敵を粉砕せんとし。
「連中を逃せば、いつ何時地上に溢れて出て来るかも分からん。此処で確実に潰しておこう」
 更にヘイトクルーへと攻勢を集中させるのは弾正もだ。
 奇襲側の前衛たる彼は襲い来るヘイトクルーらを留めるべく奮戦する。
 機械の如き精密さ。剱神が如き加護を自らに宿し、戦闘の準備は万全――
 その身で振るう炎の剛撃は連中を纏めて押しつぶさんばかりの勢いだ。そして。
『ギ、ィィィ――!?』
「よし、フィラグの動きが鈍っている――今の内だ。その羽根、切り刻んでやる……!」
「お前が斃れるまで降り注がせよう。
 ……蛇、か。些か思う所もあるが……状況が状況だ、止むを得んな」
 イズマは引き続きフィラグを狙おうか。
 冷たき一撃は彼方より飛来し、フィラグの意識を此方に向けんとする――
 怒れ蛇よ。その身は此処で堕ちるべきなのだから。
 同時、アーマデルは仮にフィラグの治癒の力が周囲に満ちようとも、気にせずに撃を続けるものだ。神酒の力を投じれば猛毒にして不吉なる数多の要素が敵陣へと襲い来るもの……
 彼にとって蛇とは守神でもある。混沌で縁を結んだ神もまた蛇神。
 故に――本来は蛇と見るとちょっと親しみが湧くものだ、が。
(……大抵はこうして殴り合う事になる。やれやれ、蛇とは敵対するものなのか?)
 現実は厳しいものだ。が――容赦はしない。
 奴が人々に害を齎すならば、そして己をも敵と見るのであれば。
 個人的な想いに留め――フィラグを討つための一手を投じよう。
 そして前線ではスースラやイルリルの撃を紡がれつつあった。両名共にラド・バウの関連者であれば……やはり武の力はあるものだ。ヘイトクルー達もフィラグを中心にして応戦しているが、しかし肝心のフィラグが抑え込まれている様な形で徐々に体力をすり減らしている。
「押し込んでいこう。このままフィラグを抑え込めていれば――こっちが優勢になる筈」
 故に今の流れを継続せしめんと雲雀は動き続けるものだ。
 自らに施している戦いの加護を切らさぬようにしつつ、周囲の状況を冷静に広く見据えて――技を使い分ける。数多の敵を巻き込めれば先程と同様の糸を紡ぎ、近場の個体達を優先すべきと見れば小妖精を具現化させ薙ぐ様に叩く。
 そして意識するのは、動きが鈍る能の範囲が被らないように、だ。
 イズマやカイトの位置、射線、範囲を見据えて雲雀は効率的に敵を追い詰めんとする。
 あと一歩。勝利を掴む為にも――戦いに尽力するのだ。


 天衝種らの抵抗は激しかった――封殺の力は大いに動きを縛っていたが、完全完璧という訳ではない。フィラグが動ける隙間を突いて自身や味方に治癒の力を施し、態勢を立て直さんとする事もあったか。
 ヘイトクルーらの攻勢によってイレギュラーズを削らんとする……ものの。
「させるか――! 治癒しても、また縛ってやる。お前達を倒し切るまで止めるものか!」
「フィラグの力だっていつまでも万全に行える訳じゃない。削り切ろう――」
 それでもイズマや雲雀の繰り出す力も、また苛烈であった。
 フィラグが抵抗しても、それを上回らんとする意志と技能があったのである。
 イズマは引き続きヘイトクルーらを神秘の泥で押し流しながら、フィラグへの射線を確保し続けよう。奴を怒らせ、常に自らに注視させんとするのだ……そして雲雀はイズマの動きに連鎖する様にしながら敵の動きを再び縛らんと力を振るう。
 さすれば徐々に、徐々にヘイトクルーらの数も減ってくるものだ。
 フィラグの治癒が間に合っていない。
 一方でイレギュラーズ側は――フリークライによって常に満たされていた。
「フィアグ 限界? フリック 永久機関搭載 マダマダ 行ケル 粘リ勝ツ」
 フリークライの治癒は正に永劫が如く。
 もしも仮にフィラグが万全であったとしても――長期戦に至ればフリークライの方が真価を発揮するだろう。卓越した体力があっても、負の要素を掃う力があったとしても、それでも永遠の彼方にまで在れるフリークライに勝てようはずがない。
 ――我 不朽不倒 大樹ト知レ。
 フリークライは常に治癒の権能を振るい続ける。
 体力が削れている者を特に優先しつつ、暇があれば味方の活力を満たす号令を走らせようか。彼の力があってこそイレギュラーズ達の戦線は安定しているのだ。
 此処は必ず取ってみせる。補給路の拡大は大事だと、フリークライも分かっているのだ。
 この先に使い道は――色々ありそうでもあるのだから。
『ギィィィィィ――ッ!!』
「フィラグが金切り声を上げ始めたな。
 そろそろ限界か……蛇の縁もある。せめて苦しませないようにはしてやろう」
 然らばフィラグが負った傷に叫び声をあげるもの――
 奴が抵抗の光を浴びせてくるものだ、が。それでもアーマデルは止まらない。
 邪魔立てするヘイトクルー達を薙ぎつつ、遂にはフィラグにも攻勢を仕掛けようか。
 削ぐ。その身を、その魂を。
 未練の結晶が奏でる音色にて。フィラグをいよいよ――追い詰めん。
「正念場だな。ヘイトクルーは任せてくれ、イレギュラーズはフィラグを!」
「帰ったら盛大に勝利のお祝いをしたい――ところね!」
 そしてスースラやイルリルは一気にヘイトクルーらを削らんと総攻撃。
 ――敵陣に穴が開く。最早数の優位はなく、フィラグへ攻撃を仕掛けるのも容易い。
 で、あれば――焔もフィラグをこの機に叩かんと跳躍するものか。
「さて、と。そろそろ仕留めるよ! 骨だって燃やしてみせる! 耐えられるかな――!」
「怒れる魂よ、還るべき場所へ逝くがいい。
 他者を害する事でしか存在を保てぬ輩に紡ぐ意はない――
 貴様らには蜘蛛糸ほどの慈悲もやるものか!」
 焔は超速に至る速度のままにフィラグへと一閃放つ。
 その喉を切り裂く様に。もう炎を払わせたりなんてしない――! 直後には弾正の殺意の塊とも言える一撃も飛来しようか。天衝種らの憤怒などこの世には不要なのだ。新皇帝の意のままに沿う魂よ……消え失せろッ!
 フィラグの身に次々と傷が増えていく。ヘイトクルー達も最早止められぬ。
「終わりだな。これ以上の抵抗は無意味――っても分かりゃしねぇだろうさ。
 あぁ。だから、せめてすぐに決着をつけてやろうかね」
 であればと。義弘も此処に全力を注ぐものだ。
 全身の力を雷撃に。拳に纏わせ一閃するは、フィラグの頭部へと。
 さすれば――奴の身、全てを襲うかのような衝撃が突き走り。
 声にならぬ声が地下に響き渡ろうか。
 それは断末魔。やがて、フィラグの身が地へと倒れ伏すものだ。
 動かぬ。それは最早ただの死骸。この地に蔓延っていた天衝種の……終焉だ。
「やれやれ……しっかし、なんつーかこの国、地下から色々ときな臭いもんしか出てきてないが……大丈夫か? フローズヴィトニル然り。向こうはそれを理解ってて先回りしてるってのもあるが、腹立つな……」
 そしてフィラグが倒れれば最早ヘイトクルー達も耐えられぬ。
 カイトの最後の一撃たる零度の紡ぎによって薙ぎ払えば――彼は呟こうか。
 地下の現状を。そして鉄帝に蔓延っている敵の思惑を……
 ――とまれ、今の俺達に出来ることは道を切り拓くこと、か。
「最終的には冬の先の春への道を……繋げる事が出来りゃいいんだがな」
 誰だって寒いのは勘弁だろ? 手足の指先が凍る感覚なんて、好む者はいない。
 ……ま、俺も残念ながら寒くする側なんだが。
 それはそれとして、今は自らに出来る事を尽力させてもらおうかと……
「逃ゲル 個体 イナイ。後ハ 他ニ潜ンデ無イカ 調査必要?」
「ああ――一応調べるだけ調べておこうか。この先の道筋も気になるしね」
「今後、本格的に使われる事になるとすりゃ、危険を残しておく訳にはいかねぇしな……」
 ともあれ。フリークライやイズマ、そして義弘は周囲を見据えるものだ。
 敵意がまだどこからか迸っていないかとイズマも念のため警戒は怠らない。
 全て問題ないとラド・バウに報告相談する為にも、もう少し調べておこうかと……
「酒蔵の聖女。周囲を見てきてくれないか。報酬はもちろん酒で」
 然らばアーマデルも霊魂へと声をかけるものだ。
 報酬の酒は『蛇巫女の後悔』なる神酒で……しかしこれ、『呑み過ぎて二日酔いになって後悔する』なんて意味の名前らしいな。ちょっと知りたくなかったぞ……いやもう少しなんというか、こう。後悔にも方向性というか……うーん。
 ――何はともあれ。天衝種らの殲滅は確かに果たす事が出来た。
 スースラやイルリルも無事だ。ラド・バウに戻れば良い報告が出来そうだ、と。
 周囲の安全と皆の無事に安堵しつつ――帰路に就くとしようか。

成否

成功

MVP

フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
 あちらこちらで新皇帝派は破られ、勢力が広がっていますね。
 地下も大きく確保され――やがてはもっと大きな動きにも繋がる事でしょう。

 ともあれ、この地は皆様の活躍により確保されました! ありがとうございました!

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