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シナリオ詳細

再現性東京202X:さんぬき公園のうそつき怪談

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●怪異よりの依頼
「これはどうも、ろおれっとから来たという特待生様でございますな。この度は私どもの依頼を受けて下さって、どうもありがとうございます」
 その人物は額に仏めいたいぼのある、人の良さそうな顔をした男性だった。
 手ぬぐいで額の汗をぬぐい、弱った表情をする彼の腰から下はするりと半透明になって消えている。
 彼はいわゆるところの、幽霊であった。
「折り入って依頼しますのは、『人払い』なんでございます」

 再現性東京202X希望ヶ浜地区。練達の中にあるそれは、東京をイメージして作られた街である。
 人々は平和な日常を送っているつもりだが、その影には怪異怪談妖怪変化が跋扈しているという。
 とはいえ悪いものばかりではない。今回依頼してきたホーライさんという幽霊もまた、怪異なのだから。
「私どもは前前からこの公園に住んでおる、まあいわゆる怪異でございます」
 細身のサラリーマン風の出で立ちをしたホーライは、いぼのある額を手ぬぐいでぬぐって話を続けた。
 彼の後ろには同じように足の透けた幽霊たちが何人かおり、木々の間から興味深そうに、あるいは不安そうにこちらを覗き見ている。
 そう。ここは希望ヶ浜にある自然公園である。自然とは名ばかりに人工的な植林によって林の様相をなしたこの公園はそれなりに広くはあるものの、少し外に出れば高いビルが乱立している。まさに都会の公園といった有様だ。
 お金をかけて管理されているらしく、夜になれば入り口にロープがはられ立ち入りが禁止されるルールになっており、定期的に清掃が行われるおかげで見た目もクリーンだ。
「私どもはここを気に入っておりまして、人様の迷惑にならぬよう昼間は姿を消して林に潜み、夜は静かにベンチに座って月を眺めるような暮らしをしているんでございます。
 しかし……」
 ホーライさんはそう述べると、ハアとため息をついて後を続けた。
「このところ、街の若者が夜に公園へ入ってきてたむろするようになったのでございます。
 年の頃にして20から22といったところでしょうか。柄のわるい男女のグループでして、酒を持ち込んで騒いだり、壁に落書きをしたり……管理人の方も注意をなさているようですが、いかんせん柄が悪いものですから」
 なるほど人間のトラブルというわけか。
 ならばその連中を物理的に振り回してこらしめてやるのだろうか?
 そう誰かが発言したところで、ホーライさんはあわあわと首を振って否定した。
「いいえとんでもございません。私どもはここを静かに過ごしたいだけで、乱暴は好みません。
 ですので……どうでしょうか。オバケのふりをして驚かせて、若者たちが近づかぬようにして頂くというのは」

 そう、これは。
 幽霊から『オバケのふりをして人間を追い払ってほしい』という、なんとも奇妙な依頼なのであった。

GMコメント

 妖怪、幽霊、都市伝説。なんでもいいので怖いなにかのフリをして若者たちを驚かし、この公園から追い払いましょう。
 依頼人の幽霊さんは乱暴を好まないようなので、若者を直接痛めつけるタイプの手段は避けたほうがよさそうです。それ以外であれば多少大がかりなことでも大丈夫でしょう。

・さんぬき公園
 希望ヶ浜地区に存在する自然公園です。
 林のように木々が生い茂り、舗装された道は定期的に清掃されごみのない綺麗なものです。
 中央には人工的な池があり、等間隔におかれたベンチや街頭のおかげで夕方でもしずかに過ごせます。
 作戦を開始する深夜はこの街頭は消えているのでかなり真っ暗になることでしょう。

 驚かす対象となる若者たちは実は数グループあり、大学生っぽい男女のグループや柄の悪い不良っぽいグループ、こっそり忍び込んだカップルなど種類は様々です。
 なので全員でひとつの脅かしプランを練るより、数グループ(あるいは単独)にわけて脅かしプランを複数試すのがオススメです。
 見事彼らを追い払い、夜の公園はヤベーという印象を抱かせ幽霊さんたちの憩いの時間を守りましょう。

●希望ヶ浜と学園
詳細はこちらの特設ページをどうぞ
https://rev1.reversion.jp/page/kibougahama

  • 再現性東京202X:さんぬき公園のうそつき怪談完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2023年01月31日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
シャーラッシュ=ホー(p3p009832)
納骨堂の神
ファニー(p3p010255)
荒御鋒・陵鳴(p3p010418)
アラミサキ
丑三 縁(p3p010789)

リプレイ

●ちいさな怪談
(えー……と。なんかもう面子が凄いけど……がんばろっか。うん!)
 公園の東側。綺麗に角張ってカットされた植木の中に隠れるようにして『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)は地面に置いたスマートフォンを眺めていた。
 aPhonと呼ばれる希望ヶ浜で流通する通信端末で、その中でも特に小型のモデルだ。それでもリリーには背負って歩くくらい大きいのだが。
 記録されたマップを手のひらでぱしぱしとタップして操作すると、メッセージツールの着信通知が入った。それは、目標の迷惑住民が公園へと侵入してきたことを知らせるメッセージであった。

 缶ビールのプルタブをあけ、進入禁止のロープをまたぐ若い男性。やれ誰と喧嘩をしただのと軽薄な話をしながら、肩を抱いた女性と並ぶ。
 公園に侵入する迷惑カップルのようだ。服装や会話内容からして、清い交際をしているようではなさそうだ。
 男が調子よく話を続けようとしたところで、女のほうが不安そうに周囲を見回しはじめた。
「ねえ、なんか鳥多くない?」
 街灯の上を指さす女。つられて男が振り返ると、確かにカラスがとまっている。それだけではない。木の枝や道の端。ゴミ箱の上に至るまで大量のカラスが集まりその全てがじっとその男女を見つめていた。
 異様な光景に思わずぞっとしてしまったのだろう。男のほうも肩をぶるりとふるわせた。
 だが立ち入りの禁止された時間に公園へ侵入するような男だ。もう一度缶ビールをあおるとハッと笑い飛ばすように肩をすくめて見せた。
「ただの鳥だろ。なあそれより――」
 男が女の腰に手を伸ばそうとした、その時。
 一斉にカラスたちが声をあげた。まるで夜の闇そのものが吠えたかのような様子に、さすがの男も怯えた表情で振り返る。
 それだけではない。周囲の茂みががさがさと激しく音を鳴らし始め、カラスが次々と男女めがけて飛びかかってくる。
「なによこれ!」
「くそ!」
 男女は悪態をつきながらも必死の形相でその場を逃げるように走り出す。
 モンスターだらけのダンジョンや危険な荒野ならまだしも、平和な街の一角でカラスの群れに襲われるなどゾッとしない話である。
 男女が逃げ去ったあと、リリーは落ちたビールの缶をよいしょと拾いあげて掲げて見せた。それをキャッチしたカラスが飛び上がり、くずかごへと缶を放り落とす。
「これでもう、あの人たちはここへは来ないよね」
 ぱしぱしとリリーは手を払い、満足そうに頷いたのだった。

●お手製の心霊ビデオ
 『彼岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)はホーライさんへとカメラレンズを向けた。
 『俺達も当然、仕事はするけド? 折角ならお前等の手デ、慎みを知らん馬鹿共に一泡吹かせてやりてぇって思わねぇカ?』
 そんなふうに彼らを勧誘し、ビデオへの『出演』を求めたのである。
 人の良さそうな顔をしたサラリーマンといった様子のホーライさんは額の汗をハンカチでぬぐい、同じく大地の勧誘で集まってきた幽霊たちと並んでいる。
 幽霊なのに汗が出るのかという素朴な疑問が大地の脳裏に浮かんだが、それを消して映像をズームさせる。
「えーっと……僕らをとって怖くなるんでしょうか……」
「まあナ」
 そういう風に編集するんだよ、と言いながら大地は周囲に赤いインクをまいたり足跡をつけたりしておどろおどろしい見た目を演出し始める。
「で、最後は……」
 大地は仕上げとばかりに自分の胸にインクをぶちまけると、手についたインクで口元に線を引いた。さながらできたての死体のごとくに。

 げらげらという笑い声がする。スカジャンを着て頭をまだらに染めた若者がヤベーヤベーと言いながら公園の道を歩いていた。
 その左右には同じような格好をした若者が並び、その内の一人がどかっと公園のベンチへとこしかける。
 そして……。
「あ? なんだあいつ」
 道を挟んで向かいのベンチに青年が座っているように見える。街灯の光が届かないせいでよく見えないが、見ようによっては眠っているようにも。
 若者たちはニヤニヤと笑い合い、ポケットに手を入れながらその青年へと近づいた。
 眠っているところを脅かし、ついでに恐喝をして財布の中身を戴こうという腹づもりのようだ。
 が、そのもくろみは最初の一手目から外れることになる。
 よおと言って肩を叩いたその瞬間、青年はごとりと地面に崩れ落ちたのだ。
 不審に思ってスマホのライトを向けてみると……青年は血塗れのまま目を開き、恐怖の表情で横たわっていた。
「うわっ!」
 思わずスマホを取り落とす。
 するとどういうわけか、青年のポケットから滑り落ちたスマホが映像を流し始めた。
 血塗れのサラリーマンが不似合いな鉈をぶら下げて歩いてくる映像だ。
 幾度もノイズが入り前後する映像は、迫るその男の下半身が半透明に透けていることをまざまざと見せつけ――。
「おいあれ見ろ!」
 ハッと顔をあげると、まさにそのサラリーマンが顔をぐちゃぐちゃにしながら走ってくるのが見えるではないか。
「――見たな?」
 倒れていた青年がぎょろりと目を動かして、言った。

●幻
「どの時代でも、どの場所でも、他種族の平穏な暮らしを脅かす人間は現れるものですね。聞けば歳の頃は20代前半のまだ年若い者達だとか……」
 ベンチに腰掛け、缶コーヒーのプルタブを開く『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)。
 缶はまだ温かく、口をつけるとほろ苦い。
「人生経験が浅いと恐怖を感じる場面に遭遇することは少なく、恐怖心も育ちにくい。
 〝恐怖心を持たない〟ということは同時に〝危機察知が出来ない〟とも言えます」
 彼を照らす街灯が一度明滅した。
「彼らが今後、足を踏み入れてはならない危険な場所に不用意に近付かない為にも、今夜は少しばかり……怖い目に遭っていただきましょう」
 もう一度明滅したかと思うと、彼の姿は消えていた。

「なあ、こんなのあった?」
 飲み会の帰りなのだろう。べろべろに酔っ払った大学生グループが公園をぶらぶらと散歩していた。手に持っていたチューハイの缶を地面に放り投げ、眼鏡をかけた男性が声のする方を振り返る。
 見ると茶髪の女子大生が地面を指さしており、そこには『真っ赤な風車が添えられたお地蔵様』が置いてあった。
 公園に入ってすぐの場所。見慣れた風景であるはずのその場所に、まるで見たことのない地蔵が置かれていれば誰だって不審に思うものだ。
「さあ、模様替えじゃね」
 実際眼鏡の男子大学生も肩をぶるりと震わせたが、強がった様子で歩き出す。
 公園にこんな模様替えもあったものではないが、酔った勢いなのか大学生グループはそのまま立ち入り禁止のロープをくぐり公園へと侵入していく。
 そしていつものように下らない会話をしながら酒を飲み直そうとビニール袋をあさった……その時。
「皆様こんばんは、お友達と一緒に夜の散歩ですか?」
 後ろからがしりと肩を掴まれた。
 それまで一切気配の無かった不意打ちのような掴み方にびくりと大学生たちが振り返ると、平成末期のサラリーマンめいた男性がそこに立っている。
 ハッとして周りを見ると、先ほどの地蔵が道のあちこちへ乱雑に並んでいた。
「おや、良かったですね。どうやら彼は貴殿らのことを甚くお気に召したようです。
 永遠にこの公園にいて欲しいそうですよ」
 男の放つ異様な雰囲気に、大学生たちはヒッと声をあげると肩を掴む手を振り払い公園の外へと走り去っていく。
 落としたビニール袋を拾いあげ、男……ホーは独りごちた。
「私、少々やりすぎましたかね。若者達もこれで多少は懲りてくれたらいいのですが。ハハハ」

●ナチュラルボーン
 『スケルトンの』ファニー(p3p010255)はベルトの金具を外しラフに腰を緩めると、羽織っていたジャケットを脱ぎ捨てる。
 シャツのボタンも外し始め、その白く透き通ったような肋骨を晒した。
「って、おいおい。骨の脱衣シーンなんて誰が喜ぶんだよ」
 ハハッと笑い飛ばし服をその場に脱いでベンチの上に畳むと、こきりこきりと首を左右に振って関節をならした。
「じゃ、後は頼んだぜ」
 ホーライさんに服を預けると、ファニーはそのまま池へとちゃぷりと足を入れた。

 学ランを着た男子の集団がずかずかと公園へとやってきていた。高校生の不良グループといった様子で、彼らは我が物顔でベンチへ座り非行のテンプレートといったような道具を取り出す。
 すると、ぱしゃりと後ろの池から音がした。
 何気なく振り返る少年。
「どうした?」
「ああ、べつに……」
 魚か何かがいたのだろう。少年は気にとめずに視線を前に戻そうとした。するとまたぱしゃりと音がする。
 先ほどよりも大きな音だ。
 魚にしては大きく、そしてあがる水しぶきも強い。
 誰かが池に入っているのだろうか。少年たちは舌打ちをして池に注目した。
 自分達のナワバリを荒らした不届き者をボコボコにしてやろう、とでも考えたのかもしれない。
 だが池からスウッと突き出されたのは意外すぎる物体だった。
 人骨。それも腕の骨だ。
 ばしゃんと音をたて、それが池の縁を掴む。更に柵を掴んでゆっくりと骸骨の頭をのぞかせた。
「楽しそうだなァ…………オレも混ぜてくれよォ…………」

 その後、少年たちは四つん這いで追いかける人骨に怯え逃げ惑い、公園から去って行った。
「heh、まったく酷いよなぁ。俺様はこれが素の姿だってのによ」
 ファニーはホーライさんから渡されたバスタオルで頭の骨を拭いつつ、カタカタと顎をゆらして笑うのだった。

●鬼の居ぬ間に?
「主題は縄張りの主張では無く、公共の場に於ける礼節も欠けた不法侵入者共への仕置きか。承知した」
 『アラミサキ』荒御鋒・陵鳴(p3p010418)は顔を覆った札のようなものを僅かに揺らし、かすかに見え隠れする口元に笑みのようなものを浮かべた。それは笑ったのではなく、引き結んだだけかもしれないが。

 ひと組のカップルが夜の公園へと忍び込んだ。
 理由は勿論、人目につかぬ野外でいかがわしいことをしようというものだが、今夜はどうも公園の様子が変だ。
 空気が妙になまぬるく、どこか鉄臭い。
 女のほうが不安そうにするのを誤魔化す形で、男が暗がりへ手を引こうとした、その時だった。
「助けて! 助けてェ!」
 女性らしき声がした。誰のものだろうかと振り返ると、見知らぬ女がカップルの目の前まで走りそして転倒した。
 その尋常ではない様子に困惑しつつも、女が『あれ』と言って指さす方向を見やると……そこにはケタケタ笑う子供の姿。
「お兄さん達、とっても美味しそうね」
 血塗れの手と口をした子供の笑顔に、カップルは当然血相を変える。
 無許可で公園へ入り込んでいるのだ。誰かに助けを求める筋合いではない。二人は悲鳴をあげて夜の公園を走ったのだが……。
「禁を犯す不届者よ、我が地より疾く去れ」
 池からずるりと現れた異様な存在が、手にした槍で地面を叩きそう威圧を込めて言い放った。
「不浄を持ち込み、池を穢す者には我が罰を与えよう」
 ぶん、と凍てつく槍で近くの木を斬り付けると、更に一歩踏み込んでくる。
 こうなればもはやカップルとて悲鳴をあげるだけでは済まされない。
 わけもわからず声をあげ、半狂乱で逃げ出したのだった。

「……ふむ」
 したたる水を振ってはらい、陵鳴は突き出していた槍を引っ込める。
「依頼主が霊魂であろうと一向に構わぬつもりだが……」
 影から様子をみていたホーライさんへ振り返り、陵鳴は顔を覆う紙を揺らした。
「成仏する気は?」
「いやあ、この『人生』も楽しいものでして」
 ホーライさんは額をハンカチでぬぐいながら、照れたように笑った。

●怪物か人か
「ンフフフ!いつの世も若い世代というものは恐いもの知らずが多いものですぞ。
 それ自体は悪いわけではございませぬ…が、その無鉄砲さから他種族に迷惑を掛けるのは少々いただけませぬな」
 人間形態をとった丑三 縁(p3p010789)は口元に手を当ててうすく笑う。
 かつて存在していた世界にて、「悪縁様」「目厄様」「縁怨鬼」などと呼ばれた祟り神である彼を封じるための人柱となった巫女が元になっているというが、その様相はやはり少々化物じみていた。
 これで元の状態よりずっとまともなのだから、人によっては夜道に立っているだけで悲鳴をあげるだろう。ローレットにたまにいる、『そもそもが化物』系のウォーカーである。
「ここであったのも何かの「縁」。ええ、存分に怖い目に遭っていただきますぞ、ンフフフ!」
 どうやら縁はこの依頼にうってつけの人材(?)であったようで、本人としてもテンションがあがっているようだ。
 では早速と言って衣を纏うと、そこそこ人間めいた風貌をとりはじめる。

 地元でも怖いものはないと豪語する札付きの不良グループがあった。
 夜中に改造バイクで走り回り、酒と喧嘩に明け暮れる彼らはひとけのない夜の公園の一角をまるで自分の庭のごとく占領する。
「もし、そちらの方々。こんな真夜中にここで何用ですかな? 悪い事は言いません。早々にお帰りになられた方が賢明ですぞ?」
 そこへ、突如闇から抜けるように現れた女性がそう声をかけてきたのである。
 不良たちは顔を見合わせ、そしてにやりと笑う。生意気な女にわからせてやろうという顔だ。
 そして一人が懐から折りたたみナイフを取り出した……その時。
「いけませんなぁ」
 女の姿が突如として、一言で形容できないような怪物へと変化したのだった。
 巨大な蠢く肉塊がンフフと笑い、うごうごとしながら手だか触手だかわからないものを伸ばしてくる。
「今は魑魅魍魎が徘徊する時。小生みたいなものに襲われても文句は言えませんぞ?」
 言われて周りを見てみれば、同じような物体が大量に蠢き茂みや池から這い出てくるではないか。
 不良の仲間達がヒアアと喉から絞り出したような悲鳴をあげ、恐慌状態になって逃げ出していく。
「お、おい!」
 折りたたみナイフを握ったままの不良青年が逃げた仲間に呼びかけるが、その声は届いていないようだ。
 ぎゅっと青年の手首が肉塊に掴まれる。
「ンフフフ! 小生を見ましたな! これでそなた達とも「縁」が出来ましたぞ! ええ、いつだって悪い事をしたら小生が見ておりますぞ」
 顔(?)を近づけいくつもの目が青年を凝視する。赤い糸と釘によって雁字搦めにされた巨大な肉塊の中央が縦に裂け、その内側からなにか粘液のようなものが吹き出し青年の顔にかかった。
 生ぬるい空気に触れ、今度こそ少年は折りたたみナイフを取り落とし恐慌状態になって逃げ出したのだった。

「大成功ですぞ、ンフフフフ」
 縁は落ちたナイフを拾いあげ、丁寧に畳むと、それをふりふりと可愛らしく左右に振って見せた。

●さんぬき公園のうそつき怪談
「いやあ、助かりました」
 ホーライさんは額をハンカチでぬぐい、ほがらかに笑っている。
 ベンチには子供を連れた主婦らしき女性が、街灯の下には車椅子に座る老人が、茂みの奥では木の枝に彫刻をして遊ぶ青年の幽霊が見える。
 彼らは互いに干渉し合わない程度の静かな時間を、この夜のなかで過ごしているようだ。
 ホーライさんはそれらをちらりと見てから、イレギュラーズへと向き直る。
「よかったら、また遊びにきてください。私どもは静かな夜が過ごせるなら、それで満足なのですから」

成否

成功

MVP

丑三 縁(p3p010789)

状態異常

なし

あとがき

 ――おしまい

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