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シナリオ詳細

侵略・雪だるま帝国

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂漠にだって、雪は降る
 ――ラサは混沌有数の灼熱地帯だ。
 大部分を砂漠が占めるラサは、冬の時期であろうと他国より概ね気温が高い傾向にある。
 だから雪が降るなんて事はこの国では一部の地域程度の話……の筈なのだが。

「な、なんだこりゃあ……!? 雪が、降り積もってるだと……!?」

 ラサ北部、テルタン砂漠地帯を通りがかった商人は――驚愕した。
 なんと辺り一面雪景色なのだから。この辺りは鉄帝に近いが故に、まぁ雪が降るのがあり得ないとまでは言わないが……しかし先日通った時は別にこんな事は無かったのだが、急に降り積もったのだろうか――?
 疑問に首を傾げる商人。と、その時。
『――降伏せよ人類。繰り返す。降伏せよ人類』
 なんぞや声が響いた。それは人の言葉を介しているが、人の声色ではない――
 振り向けば、なんと其処には列を成して此方へと向かってくる……

 大量の雪だるま達がいた。

 なんだアレは。このラサに雪だるま、だと……?
 思わず商人は目を疑ったが、次の瞬間。中央に在る一際巨大な雪だるまが此方を向いて。
『こんな熱砂の環境に住まう貴様ら愚民たる人類を、我ら雪だるまが適切に飼ってやろう――なぁ。お前ら頭おかしいだろぅ。こんな植物も水も何もない環境下にどうして住まうのだ。太陽に頭がやられてしまったのか?』
「滅茶苦茶失礼な事言ってくるな、この雪だるま……
 それってお前達が太陽の下で暮らせないだけでは?」
『無礼な! 我を誰と心得るか――雪だるま帝国237代目総統、エンペラーであるぞ!』
 知らない。一体全体どこの魔物にそんな歴史があるというのか……
 が。どうにもふざけている場合ではなさそうだ。あのエンペラーとやらが近付いて来れば、同時に寒々しい冷気が此方へと至って来た。雪も降り、あっという間に雪原へと染め上げてしまうかの如くだ。
 更には小型の雪だるま達が襲い掛かってくる――うわあああ!
『屈服せよ人類! 貴様らは我々の家畜となる運命なのだ――!』


「……と言う訳で、ラサを雪原地帯にしようと目論んだ雪だるまが進撃中だ。
 このままだとオアシスに到達してしまうらしい――
 皆にはその雪だるまを一刻も早く撃滅してほしい。うん」
 ラサの首都ネフェルストで語るはギルオス・ホリス(p3n000016)だ。今しがた述べた様に北部地帯の一角で妙な雪だるま式の魔物が現れているらしい……『雪だるま帝国に永遠の幸あれ!』などと謳いながら段々人のいる方向へと向かっているのだとか。
 連中のふざけた存在や主張はともあれ、雪だるま軍団の首魁は周囲に雪を降らせる能力を宿しているとの事だ。それでラサの砂漠でも雪が降り積もる事になっているのか……
「まぁ雪だるまを倒せば異常気象は治るだろう。
 気候が元に戻ればラサの熱砂で雪は解けていくさ。環境に問題はない。
 ただ……戦う現場では暑かったり寒かったりはするかもしれないね」
「風邪をひきそうな環境だな……」
 やれやれ、寒いのか暑いのかどっちかハッキリしてほしいものである。
 しかしまぁ幾ら魔物の力とはいえ無尽蔵ではあるまい。元々ラサの砂漠環境を強引に冷やしているのだ……それは相当な力の消耗を続けているのではないだろうか。極寒環境を維持する魔力が無くなれば、後は雪だるま達にとって地獄の環境が待っている。

 戦いようは幾らでもありそうだと、イレギュラーズは思案を巡らせるものであった……

GMコメント

●依頼達成条件
 雪だるま帝国を作り上げんとするスノーマンの殲滅!

●フィールド
 ラサ北部の砂漠地帯です。
 ……が。後述の『エンペラー・スノーマン』により一部では雪が吹雪いています。
 暑いのと寒いのの境界線で皆さんには戦ってもらいます!
 体調崩しそうな環境ですね。過酷耐性や、類するスキルなどがあれば楽になるかもしれません。

●敵戦力
・『エンペラー・スノーマン』×1体
 巨大な雪だるまタイプの魔物です。ラサの北部から侵入し、段々と内陸部へ進まんとしている様です……その目的はラサ全土を雪に染め上げ、人間を家畜とする雪だるま帝国を作り上げる事なのだとか。

 戦闘能力としては巨体が故か非常にHPが高い様です。『雹』を降り注がせる能力(物遠範、識別、【凍結系列】BS付与)も宿しており、雪だるま帝国を作り上げるべく全力で攻め上がってきます。

 また、最大の特徴として――自身を中心としてR3範囲内に雪を降らせ、極寒環境を作り上げる能力を宿しています。さむい。
 ……ただしこの能力は使用していると常にAPを消費する様で、エンペラーに攻撃スキルなどを使わせていればその内ガス欠することが予測されています。極寒環境が解除されると、ラサの気候により少しずつ溶けていきます。
 この能力が続いている間はエンペラーに強力な再生能力が宿ります。

・『スノーマン』×15体
 小さな雪だるまタイプの魔物達です。
 数は多いですが戦闘力は左程強くありません。雪を投げてきたり突撃して攻撃してきます。また、エンペラーが作り出す極寒環境下であれば非常に強力な再生能力を持つようです――ただし極寒環境下の外に出るとラサの気候により溶けていきます。ぎゃー!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 侵略・雪だるま帝国完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
アルトゥライネル(p3p008166)
バロメット・砂漠の妖精
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
温もりと約束
ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)
何でも屋
セシル・アーネット(p3p010940)
雪花の星剣

リプレイ


 雪だるまが帝国を作るべく攻めて来る――? 砂漠の地に――?
「なんとも、なかなか奇妙な光景ではあるが。
 環境を変えるレベルとなると相当の脅威だな。お帰り願おう」
「もうシャイネン・ナハトは終わったって言うのにね?
 季節外れな存在もあったものだわ……あるいはもうエイプリルフールだったかしら?」
 なんとコメントすればいいか些かに困る感じもしているのが『努々隙無く』アルトゥライネル(p3p008166)に『デザート・プリンセス』エルス・ティーネ(p3p007325)である。まぁ……魔物の一種であれば見過ごせないのには変わりないのだが……しかしどうしてこんな所に雪だるまが……
「さっむいんですけど! なんですかこの寒さ! 此処ラサですよね!? 砂漠の国ですよね!? 死にそうなんですけど!? ていうかあっちの雪だるま達も、この環境をちょっと出たら死ぬって分かってますかね!?」
「いやあ――わざわざラサに侵攻してくるのよ?
 頭凍ってるから、こんな非効率かつ馬鹿な事を選べるんじゃないかしら?」
『貴様らああ! 聞こえているぞ!
 我ら崇高なるスノーマン一族に向かって、なんと無礼なああ!』
 同様に『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)や『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)も雪だるま共の存在には疑問を呈するものである。っていうかマジで寒い!

 ラサだからこの季節でもわーあついですねー日焼けしちゃいますよ――

 そんなお気軽気分でシフォリィは来たというのに! ひー!!
 クソ、何はともあれ雪だるま達の進撃は止まらない――
 どころかイレギュラーズ達を視認して敵意をより露わとするものだ!
「全く。ラサに久しぶりに訪れたと思えば……何ですかこの雪だるま達。雪だるま帝国なんて聞いた事ありませんよ。まぁ……それでもこんな異常気象が街に近付けば、なんらかの被害が出るのは間違いないでしょうね。ソレは避けたいですし食い止めましょう」
「マジ、あたり一面銀世界。量によっては歩きにくいし凍ると滑る……しかも家畜扱いされるとか、そんな状況下で暮らしていきたいなんて思う訳ないだろう。アイツ等は雪で頭がやられてるんじゃないのか?」
 故に――ラサでは珍しい白い息を零しながら『溶けない結晶を連れて』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)に『陰性』回言 世界(p3p007315)はスノーマン達の侵略へと立ち向かうものだ。
 共に、過酷なる環境への対策を身に着けていれば雪の影響もカットできるもの。特にジョシュアは手袋も嵌めて出来るだけ暖かい恰好もしていようか――その上で彼が紡ぐのは、炎を宿した一撃。雪だるまであれば炎には弱いだろうと……
『ぐああああ!! お、おのれ人類なんと卑怯な!!』
「……失礼。頭どころか、全身余すことなく雪だったな。
 ああ、天然100%の雪だ。脳髄なんて高尚なモノは、最初から存在する筈もないか」
 然らば推察通りエンペラー達が炎の負に苦しんでいる!
 通りやすく、効果も増加している様だ。此方を罵ってくる言葉を掛けてくるが――知った事ではないと世界は更に嘲笑たる感情を醸し出そうか。それは奴の注意を引き付ける為でもある……小さなスノーマン達から引き離さんとする為に。
 一体ずつ確実に仕留めていくのだ。雪の加護が無くなれば連中など有象無象に等しい――だからこそエルスやアルトゥライネルは狙いすましていく。エンペラーから距離が離れている個体など倒しやすいモノを中心に。
「さ、寒い! このもこもこの服でも寒さがしみ込んでくるよ……!! でも、負けない!! 天義貴族アーネット家三男のセシル・アーネットは寒さなんかに負けたりしないんだ――へぷちッ!! い、いくよ、マーシー!! 僕達はさいきょーだ!!」
 そして――エンペラーが顕現せしめたラサの雪原を駆け抜けるのは『特異運命座標』セシル・アーネット(p3p010940)である。彼は友達たるトナカイのマーシーと共に、ソリに騎乗しながら往くものだ……!
 何の因果か此処が雪原であればソリも引きやすい環境。
 芸術とも言うべきソリの運転をもってして彼は往く――あ。眼前はマーシーの御尻があり視界の半分ぐらいが……そう、御尻に染まっているけど問題ない! だってマーシーと僕は一心同体だから! お尻越しでも攻撃を雪だるまに叩き込むなんてお茶の子さいさいだよ! とりゃー!!
『ぬううう小賢しい人類共がああ! お前達は永久なる家畜として飼ってやるからなぁ!』
「ほう――しかし、それはある意味此方の台詞なのだがね」
 然らば。エンペラーが更に雪を積もらせんと出力を増強。
 雹の嵐を降り注がせる――が。合わせて言の葉を紡いだのは『何でも屋』ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)である。何故かって? 見方を変えれば連中はある意味、ラサにとって恵みの存在とも言えるのだから。
(常に水に苦労しておるラサ民の為に自ら運んで来てくれるとは、有り難い侵略者様もいたものだ! 是非とも有効活用させていただくとしよう……! うむ! その存在、その魂の全てをもってしてな――!)
 雪とは雨に等しい。雨はつまり水。ラサはいつだって水を歓迎するのだ――ッ!
 故に彼はスノーマンの足を止めんと遠方より弓を引き絞るもの。
 あぁ行商人の戦を見せて進ぜよう。
 彼の瞳は既に寒波の帝国などという夢想ではなく、確かなる未来を見据えているのだ。


「ああもう。帝国だとか237代目だとか知らないけれど、これ以上思い通りにはさせないわよ! こんな寒暖差、風邪を引いてしまうわ……うう。ホント身体に悪いわね」
 アルテミアは体を身震いさせるものだ。彼女も寒さを和らげるお守りを宿している――とはいえ、ささやかなる程度。暑さと寒さを繰り返していれば身体には悪そうだと感じえようか……
 故に、一刻も早く敵を倒さんと小型の雪だるまを狙う。
 極寒領域の外周部に位置し名乗り上げる様に敵を引き付けるのだ。
「どうしたの。わざわざこんな暑くて乾燥した所に来たのに親玉からは離れないのね――あぁやっぱり自分で侵略する頭なんてないからかしら? コバンザメならぬコバンダルマね!」
『ゆきいぃぃぃ!』
「しかも何よその鳴き声は! 行動原理も声も安直なのよ――!」
 然らばそのまま小型共を引き連れてエンペラーの効果範囲から引き出さんとする。
 猛暑の砂漠へと踏み込ませればこちらのモノだ。再生能力は途絶え、雪だるまは溶けていく運命しかあるまい――故に彼女は刹那のタイミングを見切り攻勢へと転じる。
 全身全霊の大喝と共に刺突を繰り出せば、彼らを『外』へと至らせるのだ。
 ――所詮は極寒領域が無ければただ溶けるだけの雪だるま。
「こんな所へ来た事を悔やみながら溶けていきなさい? それが雪だるまというものよ」
 そして肝心のエンペラーに関しては世界が引き続き挑発と撃を紡ぐ。
「ラサに来たのが運の尽き。いや自業自得か?
 恨むなら侵略先にラサを選んだ己の采配を恨むんだな」
 全力なる移動を繰り返しつつ世界は隙あらば停滞の呪術を奴めへと。そして。
「むむむ! どいてください、どいてください!!
 どかないなら――そのまま轢いちゃいますからね!!
 マーシーは突然止まれないんだよ!!」
「スノーマンだかなんだか知らないけれど……ラサは砂漠の国なんだから!
 雪の帝国は雪の大地に築けばいいんじゃないの! 帰りなさい!!」
 引き続きソリを駆るセシルは、すれ違いざまに雪だるまへと斬撃を放つものだ――小型の連中が邪魔立てせんとすればマーシーで轢いちゃおう。いいぞマーシー! がんばれマーシー!
 同時。衝撃によって空舞う個体がいれば――ソレはエルスが確実に仕留めに掛かる。
 月の魔力がこもった一撃は寒冷たる使徒共を薙ぎ棄てようか。
 ええい全く。雪だるま達の全く分からない野望になんて付き合えるもんですか!
 今すぐ止めてあげようと――彼女は次なる個体を狙いすます。
 エンペラーの展開する極寒環境内にいる個体達は流石にある程度堅いものだ。傷つけても回復していく……しかし、やはり先のアルテミアが引き摺り出した個体などは太陽の光を浴びればダメージの方が遥かに大きい。
 そういった個体を狙えば比較的簡単に数を削り取る事は出来ていた――そして。
「帰ってください雪だるま帝国! ここ領地にするの間違いなので!
 ていうか永遠にこの術式展開しないといけないの気付いてますか!?
 一瞬でも解いたら貴方達溶けるんですよ――!? もう!」
『たわけぇ! 私の力を人間如きと一緒にするか――ぜぇぜぇ!』
 ほらもう疲れてるじゃないですか――! シフォリィはエンペラーを直接に狙い撃ちしながら言うものだ。寒さと、奴の紡ぐ雹の嵐により流石にシフォリィの動きはいつもより鈍い、が。それを念頭においた上で、やり様はある。
 気力を奪う様な加護を自らに纏わせればエンペラーの精神力を削り続けようか。
 同時に咲かす極小の炎乱は奴を足元から焼くが如くだ――しかも一撃では終わらぬ。
 シフォリィの軽やかなる跳躍は幾度でも奴を切りつけて……あっ。ついでに寒さを少しでも凌ぐ為に借りたひよこちゃんを胸の間にぎゅっ、と入れておけば暖かいものだ。くそ! こら、ひよこ! そこ変わって!
「寒い方がまだ過ごしやすいでしょうに。
 わざわざこんな所にまで来たのはそっちの判断ですからね――」
 直後。シフォリィの動きに合わせてジョシュアも撃を放つ。
 街に向かわせないように狙い穿つ射撃が雪だるま達を決して通さぬものだ。鉄帝生まれで寒さに慣れている彼にとって寒さは慣れているもの……故に雹の齎す負にも対抗してみせようか。
「おお、恵みの水をもたらす神の御使いよ!
 雇われの身ゆえ貴方様に弓引かねばならぬ事をお許し下さい!
 これもまた我らの間に敷かれた定めなれば――!!」
 そしてハビーブはまるで嘆く様に言の葉を紡ぎながら――一撃穿つものだ。
 が。それはおべっかに等しい言葉である……そう、全てはスノーマンの調子を乱す為の策謀に過ぎない。実際の所ハビーブの本心は、エンペラーなどと名乗るスノーマンが許せぬ程。
 なぜならばそもそも――
(わしの家名Al Sultanとは皇帝の意……誰の前で『皇帝』を名乗るか、雪だるまよ……! この砂漠では、果たしてどちらが真の皇帝か弁えるが良かろうっ……! 身の程をわきまえぬのならば――罰をその身に受けるが良い!!)
 故に彼は戦う。徹底的に距離を保持し、彼方から奴の行動を封じる様な一手を放ち続ける――
 そも、今や商会を構えるに至った彼も、最初は盗賊どもから自分で身を護りながら戦う行商人から始めたのだ。行商人の戦とは敵の息の根を確実に止める事ではない……僅かな好機に賭けて逃亡の隙を作る事……! だからこそ数多の負を齎し機を窺わん――!
『どいつもこいつも、何故我ら帝国の支配を受け入れぬ!
 このような大地に価値があるとでも思っているのか――!!』
「……何故わざわざ過酷な環境に身を置くか?
 今日を生きるありがたみを忘れてしまう方が愚かだろう。
 この砂漠の大地が、誰しもにとっても疎まれているとでも――思っているのか?」
 直後。エンペラーの怒号にはアルトゥライネルが語ろうか。
 雪原には雪原の良さがあるのだろう。それを否定するつもりはない。だが――
「不自由に怯えて縮こまることなく。
 人と人とが繋がり、何処までも広がるラサが俺は好きだ。
 ――この砂漠の大地には。その砂粒には。夢があるんだ」
 だから、お前達に侵略などさせない。エンペラーの言に屈したりなどしないのだ――
 彼は紡ぐ。熱砂の嵐をもってして。
 小型の雪だるまをも――この熱の色に染め上げてみせよう。


『おのれェ! 我らの同胞をよくも――!』
 そして戦況は段々と、イレギュラーズ側に傾きつつあった。
 エンペラーの悲痛な声が響いた原因は、小型の雪だるま達の数が徐々に減ってきているからである。アルテミアに引き付けられ、エンペラー自身は世界の挑発に乗ってしまった事により極寒範囲に全員がいなかった事が大きな要因だろう。
 更には――エンペラー自身の気力の限界も近付きつつあった。
『貴様あああ! さっきからネチネチと卑怯だぞ!!』
「何を言いますか! そっちが凍結させてきてるんだから、おあいこです!
 ええ。最後の一滴まで溶けてもらいますよ――雪の様に!」
 シフォリィによる斬撃である。彼女の一手には、エンペラーを削る大きな力があった――
 このままでは極寒の結界は維持できない。維持できなくなれば、その時は……!
 故にエンペラーはなんとかシフォリィを払わんとするものだが、しかし彼女の撃は止まぬ――そちらの冷気か私達の熱気か、どちらかが終わるまで勝負です!
「ハッ。ざまぁないな。
 237代まで続いた帝国の歴史にも遂に終止符が打たれるってわけだ。
 いや、そもそもそんなモノが本当に存在してたかも疑わしいけどよ」
「無理に砂漠を侵略するからこうなるんですよ……諦めてください。
 雪だるまは最終的に溶けてしまうのが定めでしょう」
 続け様には世界とジョシュアもエンペラーへと攻勢を仕掛けようか。冷気の空間が解ける狭間を狙いて、世界は白蛇の陣を紡ぐ――その牙は雪だるまの生を吸い取ろう。溶かし砕きて知らぬ間に。ジョシュアも再び炎の負を齎さんとエンペラーを狙い撃ち。
 徐々にエンペラー自身の体積も小さくなってきている。
 ラサの太陽に――その熱に――負け始めているのだ。
「よし、マーシー! ラストスパートだ……!
 雪だるま帝国237代目総統、エンペラーを討つときは今だ! 行くよ!!」
 然らばセシルはここが正念場だと決意露わに。
 エンペラーへと再度斬り込もうか――! ギルオスも載せる事が出来れば良かったのだが、彼は情報屋であったが為か戦線には参戦しなかった。くそう。だがマーシーと一緒ならばエンペラーと言えど打ち倒せる筈!
 仕留めに掛かろう。取り巻きの雪だるまを全て溶かしたアルテミアやエルスも往く!
『貴様! 我が同胞らの虐殺者め!!』
「そっちが仕掛けてきておいて随分な言い草ね。貴方も溶ける時よ――!」
「砂漠の国から、出て行ってもらうわ。ここは貴方の国じゃないの!」
 最後の力を振り絞り、雹を吹き荒らすエンペラー。
 しかし――アルテミアの剣に乗せる、焦がれる程の熱量は全てを凌駕せしめるものだ。
 冷気を切り裂き届かせる。直後には息の根を止めんとするエルスの一撃も舞い込みて。
『ぬ、ぐ、ぁあああ――!! む、無念……!』
「支配のみを振りかざす者など誰にも受け入れらまい……終わりだ」
 そして、アルトゥライネルが最後の一撃を叩き込む。
 ラサは国ではない。
 さりとて勝手な建国宣言を受け入れる地でもない――
 其れを知れ。スノーマンよ。
「おお……陛下が、消える……!」
 然らば。ハビーブは見るものだ――エンペラーが消滅せしめるのを。
 ……だがそうはいかん! 奴には利用価値があるのだ……!
「陛下、意識はございますか? 此方へ――ええ。秘密の拠点へとご案内しましょう。
 その地で再起を図るのです……!」
 声が届いているかも分からぬが。しかし微かに残った雪を回収しよう。
 エンペラーを構築していた雪だ。上手く行けば……地下の洞窟で永遠に飼える……そう。無尽蔵に使える氷室として……! ふふふ。わしも依頼人も周辺住民も万々歳だ……! どっちにしろ、どうせ二度と出てはこれないように管理すればな……!
 さて――そんなハビーブの思惑はともかくとして。雪だるま帝国の侵略は途絶えた。後は。
「……ところでこの雪って消えてくれるわよね?
 いえ消えて貰わないと困るのだけれど!
 ああ。暫くはこの辺りは水浸しかしらね……」
 エルスの心配は雪がちゃんと全て解消されるか、だ――
 というかだ、そもそも砂漠の国は昼夜問わず暑いイメージがあるかもしれないが、実際は夜は北国並みに冷えるものである。昼だろうが夜だろうが過酷な環境なのだ……それをこの雪だるまは分かっていたのだろうか?
「雪なんかなくたって十分ヒエヒエなのにね?」
「そうですね……あ。でもまだ雪が残ってるならかき氷楽しめますかね? ひよこちゃん、食べたいですか? 一緒に涼みましょうかね。うんうん。やっぱり暑いのはつらいですよここ!」
 と、その時。シフォリィは己が胸の間から顔を出したひよこちゃんに語り掛けるものだ――暑さを取り戻しつつある環境。かき氷に丁度良いかもしれぬ、と。
「ふー疲れたぁ……おっと、今度は暑くなってきたね。うう。早く帰ろう」
 そしてセシルは、思わぬ寒暖差にくしゅ……っ! と、くしゃみ一つ。
 あわわまた無茶してって幼馴染みのディランに怒られるかな?
 でも頑張ったから褒めてくれるかな――へへ。楽しみだな。
「そ、それにしても極寒領域がなくなっても、なんだかまだ寒気がするわね……
 ううっ。もしかして普通に風邪ひいちゃったかしら……あ、あ――」
 ヘ、ヘクチッ! 更にアルテミアも同様に、身震い一つ。
 早く帰って暖かな飲み物でも取ろうかと――思うものであった。

成否

成功

MVP

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 砂漠にも雪が来る……事もあるのでしょうね。雪だるまが侵略してくるのは中々ないでしょうが。
 ありがとうございました!

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