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シナリオ詳細

<腐実の王国>影は飛翔する

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
 ――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。

 天義に下った新たな神託。
 現状、箝口令が敷かれ、騎士団がこの神託の意図の解明に動く。
 しかし、時を同じくして動き出す者達。
 それは以前、殉教者の森で散発していた影を思わせる者達であった。


 幻想、ローレット。
「なんか、ここで依頼説明するのが久々な気がするね」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は小さく笑いながら集まるイレギュラーズを迎え入れる。
 だが、彼女はすぐに険しい顔をして説明を始める。
「『影の軍勢』……覚えているかい」
 去年の年末、殉教者の森へと散発的に現れていた集団。
 聖女ルルに従う致命者が引き連れたそれらはこのところ出現情報がなくなっていたのだが、別の形でまた散見され始めたのだ。
 前回は鉄帝を狙っていたそれらの軍勢は、今度は幻想を狙っているという。
「その聖女とやら、預言者と共に歴史修復すべきとかよくわからないこと言っているのさ」
 鉄帝の場合、魔種の討伐を掲げて聖騎士団を名乗って侵攻を企てていた。
 今回の幻想の場合はこう考えたらしい。
 もし、幻想にサーカスがやってきたときにイレギュラーズが大量召喚されていなかったなら……国は潰え、滅びが蔓延ったはず。
 そうなれば、朽ち行く王国を『魔こそ断罪すべき』とした天義が幻想を侵攻し、全てを統治すべきと動いていたはず。
 ならばこそ、それが正しい歴史であるはずだと幻想への侵攻を開始した、らしい。
「本当、滅茶苦茶だよ」
 嘆息したオリヴィアは改めて今回進行してくる一隊について話す。
 今回も致命者が影の天使数体と終焉獣を引き連れ、幻想へと向かっている。
 面倒なことに、海上から幻想を目指しており、こちらも船を使って応戦せざるを得ない。
 オリヴィアは事前に纏めた情報をメンバー達へと提示して。
「未然に事件を防げるに越したことはない。頼んだよ」
 彼女はそう説明を締めくくったのだった。


 港からヴィンテント海域に向けて出港したイレギュラーズ。
 冬の海はかなり寒々しさを感じるが、晴れ切った空を照らす太陽がそれを幾分和らげていた。
 遮る物のない青海……のはずが、空を飛ぶ漆黒の物体が複数。
 背に翼を持つ4つの大柄な人影は影の天使と思しき姿をしており、それらの中央には巨躯の獣が身を覆うほどの翼をばっさばっさと羽ばたかせている。
 その獣の背にはこの一隊の中で唯一小さな影。
「神託……神託の……成就を……」
 虚ろな瞳でそれらが見ていたのは幻想の方角。
 以前、殉教者の森で鉄帝を目指していた影の一団と同じような印象を抱かせる。
「修復……正しき、歴史を……」
 紡ぐ言葉、行き先は異なるが、天義からと思しきそれらは『神託の成就』の為に行動を起こそうとしている。
 それが何を指すのかは不明だが、影の天使はかつて冠位強欲……ベアトリーチェ・ラ・レーテの使用していた兵士に似た印象をいだかせるし、巨躯の獣はR.O.Oで観測されたワールドイーターそのものである。
 影の集団が具体的に何をなすのかといった目的は不明だが、このまま幻想へと行かせてしまえば、何かかしらの事件を起こすのは間違いない。
 影の集団を捕捉したイレギュラーズは、その進行を止めるべく攻撃を開始するのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 新たな神託に合わせて動く、翼持つ影の集団の掃討を願います。

●目的
 敵の全滅

●状況
 天義と幻想の国境、ヴィンテント海域に現れた影の天使の掃討が目的です。
 このままだと、幻想へと至るとみられる為、海上で食い止めたいところです。
 海上を飛んでいる為、船で迎え撃つ必要があります。
 船は幻想か天義の港で借りるか、所持している船を使ってもOKです。

●敵
○致命者×1体
 子供の姿をした個体です。後述の2種を引き連れる群れのリーダーと見られます。
 終焉獣の背に乗っていますが、自ら飛行も可能です。
 魔砲を中心に魔力を放出するスキルや、弓矢を使った攻撃を行います。

○影の天使×4体
 身長3m程もある人型に、大きな翼が生えた姿をした影でできた存在です。飛翔しながら、祈りを捧げる姿が特徴的です。
 大きな槍を所持し、急降下しての突き、接近しての連続突きを行い、全身から闇の波動を発することもあります。

○終焉獣(ラグナヴァイス)×1体
 全長5m程もある真っ黒な獣。四足の個体に翼が生えた黒い獣。大きな口を持っています。
 R.O.Oにおいて、世界を食べると言われたワールドイーターと同種の生物。滅びのアークから作り出された塊そのものです。
 戦闘でも食らいついてくることが多く、長い舌を伸ばして絡めてきたり、自重でのしかかって獲物を止めたりしてきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <腐実の王国>影は飛翔する完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年01月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!
ファニー(p3p010255)
大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)

リプレイ


 ヴィンテント海域に向けて出港する小型船。
 舵を握っていたのは『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)だ。
 イレギュラーズがこれから相手するのは空を飛ぶ一隊。
 水上、空中で交戦予定のメンバーの足場として、または船上から戦うメンバーの為、彼は自身の船を出していたのだ。
「R.O.Oのあの戦いを混沌でもやる、のか」
 皆、船上、もしくはその周囲で索敵に当たる。
「既に海上から侵攻するような輩までいるとはな。思った以上に事態の進み具合が早いのやもしれぬ」 
 大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)もこの状況を憂慮しつつ、船上で備えを万全にしていた。
「鉄帝の次は幻想か」
 武芸者である『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は、アドラステイアの動乱がまだ完全に収まっていない状況の中で、今回の敵の親玉がワーカーホリックなのではないかと皮肉を口にして肩を竦める。
 どうやら、エーレンもそうだが、皆幻想方面へと飛ぶ敵影を発見したらしい。
(間違いなさそうだねえ)
 背中から淡く光る3対6枚の緑色の翼を広げて飛ぶ『闇之雲』武器商人(p3p001107)も広域俯瞰で敵を発見し、ハイテレパスで仲間達へと伝える。
「冠位強欲の影に似た致命者に世界を喰らう終焉獣ねぇ。新たな信託とやらもすこぶる胡散臭い話だね? ヒヒ!」
「何にせよ、ここで食い止めておくのが肝要か」
 武蔵も戦いに備え、戦場から海上へと降り立つ。
 船はその間も空飛ぶ黒い一隊へと近づく。
 その数は6体。時折祈るような所作をする4体の影の天使が四足歩行の終焉獣とその背に乗る致命者を囲む。
「今思ったんじゃが、致命者……お主、ニッ〇ン何とか話のアレみたいじゃな!」
 『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)はそんな敵を見て思わず叫ぶが、すぐにハッとして。
「……ハッ?! 一瞬思考をジャックされたぞ! 皆、気をつけるんじゃ!!」
 意識が飛んでいたらしいニャンタルはともかく。
「天使ね……天使というからには、彼らは神に仕えているのでしょうか」
 『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)はしばし、その存在について考察する。
 正しき歴史、今、現在が間違った歴史というなら、葬られた別の歴史があったということだ、と。
「できるなら、情報収集したいですね」
 エネミースキャンに加え、直接会話も試みたいと考えるフルールは、得た情報全てを皆に共有する心づもりだ。
 『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)がオールハンデッドによる支援を行う中、皆、戦闘態勢を整える。
「神託の成就……正しき、歴史を……」
「時は遡らないのだから、正しかったはずの歴史も修復も受け入れる道理は無い」
 子供の姿をした致命者が紡ぐ言葉に、イズマが小さく首を振って。
「それに、俺達が生きるこの混沌を喰われてたまるか! ここで阻止するぞ」
「さて、はじめるとするか」
 続いて、すでに水上に降りていた『スケルトンの』ファニー(p3p010255)も臨戦態勢に入る。
「相手は飛んでいるのでな!」
 叫ぶニャンタルが飛び上がったのに合わせ、フルールも飛翔する。
 飛び上がったフルールは精霊と融合することで見た目が大人の姿となり、髪が焔へと変じていた。
「イレギュラーズはあんな連中よりもよほど仕事熱心だということを教えてやろうじゃないか」
「イレギュラーズの【運命】に抗った混沌の歴史を修正することは許しませんよ! 打倒です!」
 エーレン、鈴音がリトルワイバーンを駆って空中へと舞い上がったのを見届けて。
「武蔵、出るぞ!」
 彼女もまた船を離れ、敵の迎撃を始めるのである。


 飛行する相手はさほど移動速度が速いわけではない。
 その為、小型船が敵を捕捉できる位置に来た地点でメンバー達は散開する。
(目標は概ね影天使、終焉獣、致命者としとめていくことになるかと思う)
 皆、役割こそあるが、チームとしての作戦は鈴音が思っている通りだ。
「俺が相手だ。ここから先へは進ませない!」
 力を高めるイズマは中央、終焉獣を目下のターゲットと見定め、根源たる力を泥に変えて空中へと解き放つ。
 広がる泥は一隊全員へと浴びせかかる。
「「……!?」」
 前方、幻想しか見ていなかった致命者一隊だ。その一撃は奇襲と感じられたことだろう。
 無論、イレギュラーズはこの機を逃さない。
「いつもなら俺様を止めてみせろ、と言いたいところだが、今回は止める側だな」
 水上を行くファニーは愚者の行進で自己強化した後、終焉獣に届くギリギリの距離から、白骨となった自身の人差し指で相手を指さす。
「こんだけでかい図体だ。傷を付けるのは難しいかもしれないが、的当てには十分すぎる」
 指先から伸びる魔力は、四つ足の獣へと浴びせかけられて。
 …………!!
 獣の異変に気付いた致命者。影の天使達も後方のイレギュラーズに気付き、合わせてこちらへと近づいてくる。
「まずは敵の頭数を減らすことを優先」
 イズマ、ファニーが終焉獣、致命者を抑える手筈。
 リトルワイバーンの風花に跨るエーレンはその周囲にいる影の天使達へと距離を詰めて。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。お前たちの進軍、ここで止めさせてもらうぞ!」
 間合いをはかるエーレンは最も近い影の天使に居合で切りかかった。
 手応えは十分。だが、後続が槍を突き出してくる。
 仲間達から突出しすぎぬようエーレンは仲間の支援範囲へとすぐに身を退く。
 支援は、すでにイズマが防具による加護が発動し、飛行戦闘に適した状態としてくれていた。
「ちゃんこ鍋をワイバーンと共に一気食いして気合いは入った!」
 相手が近づいてくるなら、鈴音もその範囲内で応戦する。
「リトルワイバーンを駆るわたしが空で遅れをとるとおもうなよ、影天使どもっ!」
 鋭い突きに盾で応戦する鈴音。
 更なる一撃はしっかりと避けた鈴音は神聖なる光を瞬かせ、影の天使達を灼いていく。
「もう少し、海面に近くに……」
 とりあえず、敵隊を引き付けようとフルールは炎を飛ばす。
「面倒じゃが、影の天使はタイマン勝負で倒していくぞ!」
 単身で飛び回るニャンタルも手始めに影の天使へとしかけ、漆黒の大剣で斬りかかって天使達の連携を断ち切る。
 翼は広げていたが、船上に位置取っていた武器商人は影の天使達に破滅の呼び声を聞かせて。
(武蔵の方、近づいてくるよ)
 武器商人の呼びかけを受け、武蔵が迫る影の天使を迎え撃つ。
(やはり、目立つ小型船を襲うか)
 思惑通りと見た武蔵は適度に距離をとりつつ、砲弾の雨を天使達へと撃ち込んでいく。
「神託……邪魔……排除……」
 奇襲を受けた致命者一隊も殺気を伴い、本格的にイレギュラーズを排除しようと攻撃してくるのである。


 一般的に穏やかな冬の海は寒々しいはずだが、その海域だけは荒々しくも熱い戦いが繰り広げられる。
 影の天使達は致命者の意志に従い、闇の波動を発し、激しく槍を突き出してくる。
 槍はともかく、闇の波動には暗闇、不調、不吉と様々な異常をもたらすことがフルールの分析で割れている。
 黒い波が押し寄せるのを見れば、鈴音はすぐさま号令を上げてチームの態勢を立て直す。
 仲間達の引き付けもあり、海面近くまで降り立って猛攻を繰り出す影の天使2体へと紅蓮の鳳凰を浴びせかける。
 炎に身を焼かれて、大きく仰け反る影の天使達。
「ここは俺に任せてもらおう」
 その隙を逃さず、エーレンが追撃する。
 一度、身を退いていた彼は再び突貫して。
 間合いに入りさえすれば、距離など関係ない。エーレンの十字剣は確実に影の天使の体を切り裂く。
 苦悶する天使は両手を合わせて祈る様な仕草をした直後、爆ぜ飛ぶように姿を消した。
「ほれほれ、コッチじゃコッチ!」
 炎に塗れたもう1体はニャンタルが翻弄する。
 影の天使らが自分に少しでも気を払えば、武蔵ら仲間達の戦況も有利に運ぶはず。
 すかさず、ニャンタルが大剣で強烈な一撃を叩き込むと、影の天使はその身を裂かれて苦しむながらも黒い波動を発して応戦してくる。
 仲間達の攻撃が続く中、ニャンタルはさらなる一撃をと渾身の一撃でその体を両断し、虚空に消し去った。
 仲間達が空中を飛び回る中、武蔵は冷静に終焉獣と致命者も捉えて。
「砲撃用意! 頭上に注意せよ!」
 武蔵の呼びかけを受け、終焉獣&致命者を抑えていた2人を含めたメンバーが敵から距離をとるタイミング。
 武蔵はその機を逃さず、火力を籠めた砲弾を発し、広域に激しい爆発を巻き起こす。
 さすがに強敵の致命者や終焉獣がそれだけで墜ちることはなかったが、爆発の中心にいた1体が海面に至ることなく消え失せてしまった。
 ここまで、影の天使達の攻撃を多く引き付けていた武器商人は全身にキズが増えてはいたが、動けなくなるほどの深さには至っていよい。
「矢がくるぞ」
 致命者が射てくる弓矢が個別に仲間達を狙う中、その矢がファニーを狙えば、敵の動きを察した鈴音の声もあってすぐさま武器商人が彼を庇う。
「骸骨のコ、大丈夫かい。ヒヒ」
 その身に刺さった矢を引き抜き、問いかける武器商人に、ファニーは細い腕を振って健在をアピールして。
「俺様はこんな骨身だ。見てのとおり脆いから、早めにこっちに加勢しに来てくれよ?」
 それに応えるかのように、鈴音が動く。
 影の天使も弱っているはず。彼女は仲間に囲まれる敵を仲間ごと閃光で包み込んでいく。
 神気閃光は邪悪のみを裁く。イレギュラーズは誰一人傷つくことのないまま、影の天使のみが光の中へと消え去っていった。
 
 さて、仲間達が影の天使を殲滅する間、イズマ、ファニーが得体も知れぬ終焉獣と子供の容姿をした致命者を抑えつけようとする。
 …………!
 鳴き声を発することなく、淡々と巨体を活かした攻撃を仕掛けてくる終焉獣。
 獣が伸ばす長い舌をイズマが切り払う中、獣の背にいた致命者は魔力を高めて。
「消滅……あるべき歴史の為に……」
 見た目に似合わぬ口調と、恐ろしいまでの魔力によって放たれた砲撃。
 イズマもこれは小型船の操舵をうまく切ることで避けることができた。
 大きな波を起こす砲撃が海を走る。
 ただ、相手を水面近くへと引きつけていたことで、それがファニーへと迫って。
 この一撃も武器商人に庇われ、難を逃れたファニー。
 一度は相手の力を封じたはずではあったが、もう力を取り戻してしまっている。
(もう向こうもカタが付いていると思いてぇが)
 力を封じていても、暴れるだけでその余波は彼にも及ぶ。
 味方が駆け付けるまで、なんとしても食い止めたいところだが……。
 この場には、すでにフルールが参じており、終焉獣の巨体へと炎を浴びせかける。
「騎乗したままなのはなんとも面倒ですね」
 フルールは早く終焉獣を倒そうと、その巨体を魔空間へと呑み込ませる。
 巻き込まれまいと、致命者がその背から離れたのを見て、彼女は苛烈なる焔で終焉獣の体を強く燃え上がらせた。
 そこに、影の天使を倒した面々が次々と駆けつける。
「終焉獣は物理だな」
 長く伸びる舌に絡まれれば、大きな口で食らいつかれかねない。
 唯の生物なら傷つく程度で済むが、相手は終焉獣。
 世界を喰らうワールドイーターと同種となれば、食らいつかれればどうなるか分からない。
「終焉獣が来るよ!」
 鈴音がまたも仲間に呼びかけると、イズマは小型船の舵を大きく切って終焉獣ののしかかりを避けていた。
 その直後を見計らい、周囲を飛んでいたニャンタルは一度抑えに当たっていたイズマに戦乙女の呼び声によって癒しの福音をもたらしていた。
 対して、敢えて仲間達からの手当てを受けていない武器商人は、深まる傷を力に変えて口元を吊り上げる。
 純然たる武器商人の力は報復の煮え炎と混じり合って。
 ――さぁ、我らの痛みに喝采を!
 凄まじいまでの勢いを伴う武器商人の猛然たるパワーが終焉獣の腹部へと打ち込まれる。
 …………!
 刹那、その巨体が大きく歪んだように皆が視覚したが、どす黒い液体を吐き出した終焉獣の様子を見れば、それが見間違いでないことは明らかだった。
 仲間達の癒しを受けたイズマは深呼吸しながら、それを見つめて。
「喰った物があるなら全部吐いてもらおうか? それは俺達の大事な物なんだ」
 ここまで、相手の力を封じるよう攻撃を続けていたイズマ。
 ただ、相手の力が思いの他強大なこともあり、思うように封じることができなかったが、ここまで弱っていれば……。
 再度、冷たい一撃を詠唱する彼はタイミングを見計らい、魔術を撃ち込む。
「喰えるものなら喰ってみろ、口でも胃でもぶち破って出てやるから」
 終焉獣の意識を自身へと縛り付けたイズマは敵が自分へと大きく口を開いたところで、フルールと同じくその巨体を魔空間へと呑み込ませていく。
 今度は完全に自由を奪い、その全身を圧搾する。
 空間の歪みに体を貫かれた終焉獣は、飲み込まんとしていた世界に飲まれていった。
 同時に、飲み込んだと思われる物が姿を現す。多数の物の中には人の姿もあったようだ。
「歴史……異分子……」
 動揺しているようにも感じられるが、相手が全身真っ黒な姿をしていることもあって、表情は読み取りにくい。
「可哀想な子。どうしてこんなことをするのですか?」
 それでも、フルールは少しでも情報を得ようと呼びかける。
「神託……。歴史は……正さねば」
 問いに答えているようでもあり、ただ呟いているようでもある致命者は、魔力を纏わせた矢でレーザービームの如き一撃を放つ。
「致命者は子供。可愛い子供。基本的に遠距離攻撃なのね」
 仲間達へと敵の能力を伝えるフルールは自らに女神の祝福を施してから、手招きをして致命者を引き付けようとする。
 だが、相手も広範囲を見回しており、特定の1人ばかりを気掛けてはいない。
「致命者……絶対目は逸らさぬぞ」
 遠距離攻撃を得意とする相手とあって、意図せぬ方向から飛んでくる攻撃は脅威だ。
 とはいえ、敵はもはや1体のみ。
 鈴音はここまでくれば反撃あるのみと、レーザー矢や砲撃を躱しつつ他の敵と同様に閃光で包み込む。
 武蔵も矢をギリギリのところで避け、水上を自在に動いて。
「この武蔵をそう簡単に沈められると思うなよ!!」
 仲間がいないことを確認し、武蔵はありったけの弾幕を展開して致命者を撃ち落とそうとする。
 掠っただけでもかなりの威力と、ムサシは自己修復を行う間に、前方の煙が晴れていくのを目にするが、依然として敵影が健在なことに歯噛みしていた。
 仲間を巻き込まぬように船を位置取らせたイズマは、終焉獣同様に冷たい魔術の一撃を撃ち込み、強く注意を引こうとする。
「排除……」
 今度はバズーカを思わせる砲撃を飛ばす致命者の背後へと、エーレンが回り込んで。
「機動力で遅れはとらない」
 それだけの自負を持っていたエーレンは、真っ向から刃を薙ぎ払う。
 確実の影を斬ったエーレンだが、自身は相手の動きを止めることを重視していた。
 本命として攻撃するのはニャンタルにフルールだ。
「本日の運試し! 当たるも八卦当たらぬも八卦ーーー!!」
 憎悪の爪牙で目の前の存在を蹂躙するニャンタル。
 確かにその体はずたずたに引き裂いたはず。……だが、致命者はその身がバラけるのを食い止めてみせた。
「神託を……成就……!」
 すでに守る影の天使も、終焉獣もいないが、フルールは何かを信仰していた報われない子供なのかと考えて。
「哀れなるこの子を弔ってあげましょう」
 この子供が信じるものではないだろうとは推察しながらも、フルールは紅蓮より強く、激しく、残酷に、真なる焔を浴びせかける。
「かつての誰かを模した者よ」
 その体が燃えるのを見て、武蔵が呼びかける。
「私には貴様たちの目的が理解することはまだできていない。だが……」
 全身が燃え上がった相手にもはや、これ以上の攻撃は不要と察しながらも、彼女はさらに告げる。
「他者に害を為そうとするのであれば止める、ただそれだけなのだ」
「れき、し……しゅう、ふ、く……」
 その体は灰になることもなく、青海へと散っていったのだった。


 致命者の率いる影の集団を討伐したイレギュラーズ。
 戦いの間中、戦場を飛び回っていたニャンタルが小型船へと降り立ってすぐ、へばって倒れ込んでしまって。
「うぉぉぉ……飛び回って疲れたぞ……。エーレンよ……労いの1杯……フルーツ牛乳を頼む……」
「少し待ってくださいね」
 ギフトを解除したフルールはニャンタルの要望に応えて飲み物を用意していた。
 その傍らで、終焉獣の飲み込んでいた物を回収していたイズマは敵の死体を探していたが、その一切が残されていないことを確認する。
「……神託がいよいよ姿を現した、って事か」
 自分達が滅ぶべきだと言われたところで、屈するはずもない。
 彼はその神託にどこまでも抗おうと誓うのだった。

成否

成功

MVP

フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは致命者にとどめを刺した貴女へ。
 執筆中にたまたま見ていた某配信のアーカイヴで量産型なんたら言われたから、びっくりしました。モチーフはそれですね。
 参加していただき、ありがとうございました。

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