＜腐実の王国＞神たる侵略行為

オープニング

●＜腐実の王国＞神たる侵略行為
『仔羊よ、偽の預言者よ。我等は真なる遂行者である。主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我等は歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ』
　天義に舞い降りた神託の一言。
　その神の一言は人々を盲目にさせ、天義の国の上層部を罪と説いたとしても、神託は真実である、と口にする。
　無論、国の上層部の面々はそれを塞ぎとめるが為に箝口令を敷くのだが、立てかけた板に流れた水をせき止めることは出来ず、神託は噂話の如く市中に流れる。
　そしてその神託から目をそらすが為に、天義の国上層部は別のものを敵として仕立て上げることで、その目をそらすこと。
　その作戦の舞台となるは、天義と幻想の国境にある『ヴィンテント海域』。
　かの地にわれらが侵攻することで、その神託は果たせられると言う信念を声高らかに叫び、そして天義の者たちは……幻想の国に向けて侵攻を始めていた。

●
「集まっていただき、ありがとうございます……」
　深く頭を下げるのは、天義の国に滞在中の『深緑の声』ルリア＝ルミナス（p3n000174）。
　彼女の表情はどこか不安気を感じさせており……その口から悲しみのため息とともに。
「その……皆様も知っての通り、最近この天義の国には、新たなる神託が舞い込んでおり、人々は天義の国の上層部に対し不満を声高らかに訴えているという状態です」
「この不満を目の当たりにした上層部は、どうやら目をそらすがために、幻想との国境にある『ヴィンテント海域』への侵略を開始してしまいました」
「この海域にある『ローリーダ』島に、天義の侵略の手が伸びています。もちろん島の島民たちは、神託も天啓も知らぬ状態……なぜに襲われるかもわからないままに侵略されようとしているのです」
「罪もない人々が……侵略の手に逢うだなど、黙っている訳にはいきません。どうか……島民の方たちを助けてきていただけないでしょうか……」
　見上げるルリアの言葉。
　天義の神託を悪い形に捻じ曲げ、自分たちに正義を得ようとするその方法は、悲しみを産むのであった。

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●素知らぬお告げ
　神託の言葉降りし国、天義。
　過去においては、天啓こそ全て、それに従わぬ者は全て悪である……と言う風潮ではあったが、それは最早昔の事。
　神託の言葉は、本当に天義を導くものなのか、という疑問を抱きつつある国は、今回の神託の言葉を疑いつつある。
　だが、その神託の言葉こそが真実であると信奉する者達もいる様で……今回イレギュラーズが駆り出されたのも、その一つ。
　天義の国と幻想の国の国境に近い『ヴィンテント海域』において、その神託を信奉する者達の軍勢が蠢き始めているとの話に。
「……神託に踊らされてしまう。信仰心に篤いのは結構ですが……それだけにこのような行動をとらざるを得ないのは悲しいですね……」
　と、依頼を受けた『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド（p3p000174）の零す言葉。
「そうですねぇ……教義とか、神託とか、そういうのは僕はよく分かりませんよ。というか……正しいとかよくわかりませんし」
「まぁ、彼等にとっての正義は、私らの正義とは異なるだなんて事は、極普通にありふれているような物だ。でも、私にとってはね、面白い匂いがしてきたと思うよ。神託一つでこうも歪むとは……ね」
「そうなんですね……まぁ、何でえあれ出来る事はやりますよ。なんであれ、襲った側が正しい方が少ないですからね」
　そう『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム（p3p000209）と『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ（p3p002535）の会話。
　勿論、天啓を発したのが本当に神様なのかは、この際どうでもいいだろう。
　少なくともこの海域に於いて、幾つもの正体不明、出自不明たる者達が姿を最近表しつているこそが事実。
　勿論、主権が及ぶかどうか微妙な立ち位置である国境沿いが襲われるとなれば……幻想側からすれば、怒りを覚える事件なのも当然のことだろう。
「……幻想との国境へ侵略とは、いよいよ舐めた真似をしてくれますねぇ……後々まで火種が残ると思いますけど、宗教馬鹿どもは何を考えて居るのやら」
　クックック、と低く笑う『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド＝アルス＝アーヴィン（p3p009380）。
　それにああ、と短く頷きながら。
「全くだ。アネモネみてぇに趣味の悪い虐げ方をしやがって……まさか、アイツの差し金じゃねぇよな？」
　軽く首を傾げる『鳥籠の画家』ベルナルド＝ヴァレンティーノ（p3p002941）。
　他の依頼に向かった者達から聞く限りでは、現れる敵陣の中には、言葉無く死を与えるように指示する者が居た、という話もある。
　そして、それが致命者なのではないか……とはまことしやかに流れる話。
「それが致命者だろうとなかろうと、今の所は何とも言えないものだねぇ……でも、こいつが無限に敵を生み出すというのは、随分と面倒だ。物量で押し潰される前に、電撃戦を仕掛けるとしようかねぇ、ヒヒヒ……」
　不敵に笑う『闇之雲』武器商人（p3p001107）に、ウィルド、ベルナルドも。
「まぁ個人的にはわざと侵略させて、政治的に殴る方が好みなのですが、裏で糸を引いている連中の思惑に乗るのもつまらないですし、精々邪魔するとしましょうか」
「そうだな。事態はどうであれ、惨劇を起こさせる訳にはいかねえ。ここで奴等を仕留めなきゃ、街の人達が犠牲になるだけだからな……絶対に止めてみせる」
　並々ならぬ気合いを入れる二人に、シフォリィも。
「そうですね。これは人命がかかっています。ワールドイーターまでいるあの相手……ここを必ず守りきりましょう」
　ぐぐっと拳を握りしめる。
　そんな仲間達の気合いの入り方に、ルーキスは。
「ふふふ。いやはや……武器商人君が言う通り、つい笑いそうになっちゃうね。さぁて私達も『正義の味方』らしいことをするとしよう」
　何処か楽しげなルーキスに、『スケルトンの』ファニー（p3p010255）はちょっと肩を竦めつつ。
「何だか楽しそうだな、ルーキス。まぁいいが……取りあえず俺は致命者を討伐する班でいいんだよな？」
　と問い掛けると、それに『ラド・バウA級闘士』サンディ・カルタ（p3p000438）が。
「ああ。俺も致命者討伐の方だな……致命者は唯一の人型たる者らしいからな、それだけを狙い撃ちすれば、上手く行きそうだよな」
「そうだな。とは言え俺も脆い身体だ。単身で突っ込んだって、即退場が目に見えてるしな。宜しく頼むぜ、武器商人」
　とファニーの言葉に武器商人は。
「勿論だとも、骸骨のコ。確りと守ってあげるよぉ」
　ひらひら、ふわふわと手を振る武器商人……どこか頼りなさげだが、黒いナニカもそれに応じるかの様に揺らめいていて。
「……お、おう……んじゃ、島に上陸だ！」
　と、イレギュラーズ達は島に降り立つのであった。

●神の名の下に天誅を下す時
　そして、島に降り立ったイレギュラーズ達は、島唯一の町へと急ぐ。
　周りの島々が襲撃されている……という話は聞いているものの、自分達の島まで襲われるだなんて思って居ない様で。
「みんな、落ちついて聞いて欲しい。今この島に向けて、致命者と思しき集団が近づいて来ている。落ちついて、それぞれの家に戻って欲しい。そして、俺達がいいって言うまで、絶対にドアを開けないでくれ！」
　とベルナルドやシフォリィ、ベークの三人が真摯な態度で、島民達に声を掛け、家の中に閉じこもるように伝えて廻る。
『え……本当なのか？』
『やだよぉ……死にたくないよぉ……』
　と、不安を口にする島民達が当然居るのだが、そんな島民達には。
「大丈夫だって。中にいりゃ、鯛焼きが守ってくれっからさ」
「鯛焼き……まぁ、鯛焼きですけど。でも、島の人達は絶対に守って差し上げますよ」
「そうそう、大丈夫、俺達がちゃんと守ってやる。だから……任せてくれ、な？」
　サンディ、ベーク、ベルナルドの言葉。
　不安に震える人達の肩を叩き、笑顔を見せる事で……彼等の精神的不安を解いていく。
　そして、大きな混乱無く島民達を避難させた後で、街を範囲に収めるようにして武器商人とシフォリィが柵等を街を包囲するように柵や不要物を積み重ねてのバリケード等、短時間でできる防衛設備を次々と設置。
　更に、その一つ外側にはベルナルドとサンディの二人が足首が嵌まる位の落とし穴や、煙の上がる地雷を設置し防衛陣を築いていく。
　……そして、一通り村の防衛網を組み立てたところで、ルーキスが。
「……ん。来たみたいだね。方向は……あっち、北東側の方から来てる」
　先んじて呼び出して置き、上空から監視させていたファミリアの視界にて、海の上を進む舟影を確認。
　ゆっくり、ふらふら……まるで幻かの如く近づいてくる舟影の中には……ぼんやりとした影の『何もの』かが居るのまでは判る。
「了解。それじゃベルナルド達、宜しく頼むね」
　とハイテレパスを通じベルナルド達、村の防衛を担当する三人に短く告げると共に、残る五人は柵の中で、敵の襲来を待ち構える。
　……暫しして、船は沿岸へと接岸。
　ガタン、と橋が架けられ、その中から姿を表す人型の影。
　彼が手を翳すと、彼の前に次々と『天使』の様な者と、熊の様な獣状の姿の『ワールドイーター』達が召喚される。
　そして先陣を進むワールドイーター、中に天使、そして……護られるように致命者の陣容で、島の島民に向けて進軍。
　……そして、柵の処まで到達すれば……ドカンと大きな音が鳴り響き、地雷が炸裂。
『グガァゥゥ……！？』
　ほんの僅かなダメージを喰らうワールドイーター、そしてサンディは、柵の上にアクロバティックに乗り上げて。
「獣に天使に神託ねぇ……なぁ、致命者とやら。お前は本当に『そんなもん』が欲しかったのか？」
　びしっ、と指を突き立てて言い放つサンディ。
　……対し致命者は、何か目立った反応を返す……という事は無く、無反応。
　そんな致命者に向けて、更にサンディは。
「『神託』ってのは『誰の願い』だ？　『お前自身の願い』はどこに行った！　自分の声すら聞かねぇヤツに、『神』が言葉を託すかよッ！！」
　辛辣に言葉を突き立てるサンディ。
　しかし、やはりというべくか反応は無く……致命者はそっと手を掲げる。
　どうもそれは戦闘指示の様で、天使とワールドイーター達が次々と咆哮を上げて攻め込み始める。
　そんな敵陣の動きに。
「しゃーねぇな。なら、俺がこの戦場、作り上げてやるぜ！」
　開口一番、敵陣に斬り込んでいくサンディ。
　攻め入るサンディに対し、当然左から右からワールドイーターと天使が襲い掛かる。
　とサンディは周囲の者を掴み、投げ放ち道を強引にこじ開けていく。
　そうサンディが先陣を切り拓いたところへ、更にウィルドとルーキスが。
「さぁ、残飯漁りに来た野良犬ども。チャンスをあげますよ、一欠片程度でもプライドなり良心が残っていたら、逃げ隠れせずに掛かってきなさい。幻想の貴族として裁いて差し上げますよ、ククッ……」
「わぁ……何だか悪徳貴族みたい。ま、奴等にそれを介する知能は……」
『グルゥゥ……！！』
　両手を天高く振り上げて、大きな身体を見せつけるワールドイーター。
　そのまま身を振り落とし、地面を揺らしながら爪の一閃を叩き付ける。
　勿論かなりのダメージなのだが、ウィルドは表情を変えず。
「クククッ……その程度ですか？」
　とカウンター気味に己の鼓動を高めつつ、防御を破壊力に変えた渾身の一撃で反撃。
　喰らいし獣は、そのまま身を後方にズシン、と転倒させ、天使とワールドイーター何匹かが巻き込まれて潰れる。
　だが、その数を補充するかの如く、致命者の召喚は即座に行われていく。
「本当、あの致命者を倒さないと数減らす事すら出来なさそうだな」
「そうみたいね。なら、こっちも……景気付けに一発洗い流してあげよう」
　何処か嬉しそうなルーキスは、混沌に揺蕩う汚泥を周囲に放ち、合わせて武器商人も。
「さてさて……この声で正気のままにいられるかなぁ……ヒヒヒ」
　と破滅を呼ぶ声で敵を惹きつける。
『グガァ！』『ウゥ……』
　ワールドイーターと天使の声が協奏。
　サンディと武器商人の二人を軸に敵が攻撃を嗾けていく一方で、ルーキス、ウィルドは範囲攻撃で全体的に削る。
　そして、体力の状況を見据えた上で最後にファニーは。
「それじゃぁ、こっちも仕掛けさせて貰うぜ。この俺様を止められるものなら止めて見せろよ」
　挑発気味に笑いながら、その指先から放つ星の一閃。
　その一閃は単体をターゲットにし、かなりの威力で以て確実に死を与える。
　そう五人の攻撃により、一刻目で一体を確実に倒す。
　次の刻、致命者は射線が通らぬよう仲間達の影に隠れ、そして……死した者を追加召喚。
　その一体は、イレギュラーズ達の真ん中に召喚する事で……イレギュラーズ達を攪乱しようという作戦の模様。
「後ろに召喚出来るのか？　こいつは厄介だぜ」
　すぐに一歩離れるファニーだが、召喚されたワールドイーターが距離を詰め、攻撃しようとしてくる。
　……しかし。
「こいつは天義の皆の怒りだ。受け取れ！」
　次の瞬間、その身は紫電に瞬き、更に白き光に包まれ消える。
　後ろを振り返ると、ベルナルドとシフォリィ、ベーク。
「……本当、神の信徒を騙る者達が、神聖なる光に焼かれるなんて皮肉ですね」
「全くだ。取りあえず島民達はみんな避難した。後は村に入り込ませずに倒さないとな！」
「そうですね。まぁ僕の役割は時間稼ぎがメインですし……可能な限り敵の足止めと妨害に励むとしましょう」
　三人はバリケードの内側から出る事無く、ただ入り込もうとする敵だけを倒すことに注力。
　敵陣深くまで切り込んだ仲間達が、致命者に立ち塞がる敵を次々と倒し、相手の召喚は三人で対応。
　……どうやらその召喚も、距離は目の届く範囲まで、かつ……遠ければそれだけ時間も掛かる様で、遠くに召喚出来る数は多く無い。
　只でさえバリケードや柵もあり、例え抜かれたとしてもそこで手間取っている間にシフォリィ、ベーク、ベルナルド、更にファニーにて集中砲火を喰らわせれば、敵が敷地内に入るのは至難の業と言わざるを得ない。
　そして……十数分経過した頃には、やっと致命者の周りが手薄になる。
「いいか、神の意志だか加護だかは、俺が奪ってやる！」
　とサンディは強く宣言。
『……』
　しかしその言葉に対しても、反応を返す事の無い致命者。
「ま、意思疎通出来るだなんて思って無いし。ま、キミを残して置くと邪魔でしかない。此処で退場して貰うよ」
「ああ……絶対に逃がさないからな」
　ルーキスの言葉に不敵に笑うウィルド。
　サンディが切り込み、致命者の注意を惹きつけた所に、ウィルドの神威とルーキスの剣閃。
　動きを見据えた二人の攻撃……致命者は避けられない。
　深く身に刺さりし一閃に、僅かに呻き声を上げたかと思うと……そのまま、其の身は黒き煙と共に消失。
「ヒュー。よし、後は残る奴等を倒すだけだぜ。一気に行くか！」
　ファニーの言葉に武器商人はくすりと笑い。
「そうだねぇ……んじゃ、後は時間を掛ける必要も無し。さっさと倒して行くとしよう、ヒヒヒ」
　召喚こそ無くなれば、後は数減るがのみ。
　イレギュラーズ達の猛襲は勢いを増し、残る敵を跡形も無く潰して行くのであった。

●神の声は
　そして……致命者の脅威をはね除けたイレギュラーズ。
「……これで良し、っと……お疲れ様でした」
　ベークがそう仲間を労うと、ルーキスもくすりと笑い。
「そうだね。しかし……この事件は、暫く長引きそうだね。イレギュラーズは何処でも引っ張りだこだ。ま、お陰で合法的に天使様を叩けて、私はスッキリするんだけどさ」
「……天使を叩けて、スッキリするものなんですか？　まぁ、人には人のストレス解消法がありますもんねぇ」
　ルーキスの言葉に小首を傾げつつも、納得するベーク。
　ともあれ、島を襲撃した敵は跡形も無くなった。
　見れば接岸していた筈の船も……まるで何もなかったかの如く消えていて。
「本当、彼等は幻の様な存在だったのかもねぇ……人の信奉する心が作り出した魔物……その原因は人、にあるのかもしれないねぇ、ヒヒヒ」
　笑う武器商人。
　勿論その真意は分からないが……少なくとも人の目をそらすべく、無辜の民を被害に逢わせようだなんてのは言語道断。
「まぁ……致命者の気配も無くなりましたし、街の人達に終わりを報告しましょうか。皆さんは、柵とかの後片付けを御願い出来ますか？」
「勿論だ。罠も全て撤去しないと名……俺達がいなくなって残ってた罠にかかって無くなるとかなんて、目も当てられんしな」
「ありがとうございます」
　ウィルドの言葉にぺこりと頭を下げるシフォリィ。
　そして街に戻り、ドアを叩き。
「お待たせしました……もう大丈夫です」
　と街の人達に声を掛けていく。
　街の人達はほっとした表情を浮かべて……イレギュラーズ達に、言葉にならない感謝の限りを告げるのであった。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました！
今回は天義の上層部の暴走……という事になるのかは分かりません。
でもその贄になるのは何も知らない無辜の民となれば、皆様しか守って頂ける人が居ない訳で……これからも宜しくお願い致します！