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シナリオ詳細

再現性東京202X:すーぱーびゅーてぃふるあんでっどあくしょん

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ウガガガガガ、ウガ、ウガガ。ウガウガ」
 再現性東京の片隅らへん。人がもうびっくりする位居ない地区に、建設途中で放棄された巨大テーマパークがありました。
 なぜ放棄されただとか、なんでそんな場所にテーマパーク作ろうとしただとか。語るに語り尽くせない海の様に深い理由があったそうですが、とりあえずその件に関してはどうでもいいです。とにかくありました。
 そして建設業者や経営陣がその中途半端なテーマパークから離れて時が経ち。人々の記憶から抹消された今日この頃。
 人は居なくなったものの、スケルトンやらゾンビやらその他様々な種類のアンデッドがこのテーマパークに住み着いているらしいです。
 超巨大スケートリンクではあちこちでアンデッドが華麗に滑ったり無様に転げまわったりしている様ですし、アトラクションエリアではジェットコースターに乗ったり轢かれたりコーヒーカップを回したり回されたりしている様です。あと何故かは全く分かりませんがちゃんと電気も通っているみたいです。
「ウガ」
 とりあえず今の所人的被害は出ていない模様ですが、心霊スポットとして有名になってその道のプロが押し寄せても困るので、今の内に誰かがここを大掃除した方が良いかと思われます。遊びながらでもいいので。
「ウガー」


「アンデッドが再現性東京の遊園地っぽいとこにザーッと現れたのです。夜妖って奴なのです。ですのでみんなで現場に行ってスケートリンクの上をシャーっと滑ったりアトラクションでワーって言いながらアンデッド共をどかんとボコしてきて欲しいのです。びゅーてぃふるに」
「はあ、またですか。そうなんですか。僕はもう帰っていいですか?」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はシャキーンと説明を始める。その隣には『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)もバーンと立っていた。
「ほら、あんでっど経験者からのアドバイスとか……」
「いやあんな雑魚相手にアドバイスもなにもあったもんじゃ」
 ユリーカはガン無視して説明を続けた。
「この中途半端テーマパークは大まかに2つのエリアに分かれているのです。超巨大スケートリンクと、アトラクションエリアなのです。超巨大スケートリンクはその、まあ、超巨大なスケートリンクなのです」
「そのままですね」
「いやでもホント広いのです。想像の7倍くらい広いのです。中央ですっ転んで立てなくなったら、長い間這って移動しなきゃならなくなる位には広いのです」
「…………いや、でもスケートリンクって結構維持が大変な気がしますけど、本当に滑れるんですか? 長い間放置されてたって言ってましたけど」
「アンデッドがいっぱいいるという事を除けば何の問題もなく滑れるのです。なんでか知らないけど。はい次」
「えぇ……」
 ユリーカは構わず説明を続ける。
「そしてアトラクションエリア。これはもう説明するまでもないのです。テーマパークのアトラクションと聞いて思いつくものは大体何でもあるのです」
「何でもって事はないでしょう」
「じゃあ、試しにテーマパークのアトラクションをいくつか頭に思い描いてみるのです」
「はぁ」
 ハインはとりあえずいくつか思い描いてみた。
「それ全部あるのです」
「えぇ……?」
「で、まあアンデッドはゾンビだったりスケルトンだったりそれ以外だったりするのですが、共通してめちゃ弱いのです。めちゃ。めちゃめちゃ。めっちゃめちゃ。経験者さんはどう思うのです?」
「どえらい雑魚ばかりです」
「そう、どえらい雑魚ばかりなのです。ですのでどうせなら思いっきり格好つけて。あるいは楽しんで。己の本能を最大限に呼び起こし、アンデッド共をボコボコにしてきて欲しいのです。びゅーてぃふるに。ぐっどらっく!」
「遊び感覚でいいと思いますよ。ほんとに」

GMコメント

 のらむです。アンデッドアクションです。アンデッドは雑魚です。よろしくお願いします。

●注意事項
 相談期間が短いです。アンデッドは気をつけなくていいですがそれだけ気をつけてください。

●成功条件
 アンデッド共を薙ぎ倒す

●情報制度
 このシナリオの情報制度はAです。
 想定外の事は起こりませんし、アンデッド共は弱いです。

●アンデッド
 めっちゃ沢山いるしめっちゃめちゃに弱い。
「ウガ」だの「カタカタ」だの「キシャ―」だの言いながら襲ってくる。
 武器を持ってたり持ってなかったりする。
 また、アンデッドどもは戦闘音やら気分やらで勝手に集まってくるので、誰も行かない場所があっても問題ない。

●戦場情報
 OPの通り『超巨大スケートリンク』と『アトラクションエリア』の2つのエリアに分かれています。在りそうなものは大体あります。好きな場所に行ってアンデッドをぶっ叩いてください。どこに行ってもアンデッドは弱いです。好きに遊んで大丈夫です。何か壊しても大丈夫です。

●シナリオ方針
 気楽に気軽に気兼ねなく、自由にアンデッドどもをシバキ倒すシナリオです。
 攻撃さえしてくれれば遊び回っても勝てます。時間も無制限なのでなんやかんや勝てると思います。個人で動いても団体様で動いても問題ないと思います。
 そんな訳なので細かい戦略を考えてプレイングを書くというよりは、好きな武器で好きなスキルを使い好きなように戦い好きな様に遊ぶのがおすすめです。
 使えるギフトがあれば使ってもいいですし使わなくてもいいです。
 如何にして格好つけたりつけなかったりして立ち回るかをプレイングに書けば、楽しく戦えると思います。お気軽にご参加ください。

  • 再現性東京202X:すーぱーびゅーてぃふるあんでっどあくしょん完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月28日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
ユイユ・アペティート(p3p009040)
多言数窮の積雪
結月 沙耶(p3p009126)
怪盗乱麻
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
フロイント ハイン(p3p010570)
謳う死神
トール=アシェンプテル(p3p010816)
つれないシンデレラ
幽火(p3p010931)
君の為の舞台

リプレイ

●ゴンドラはまわる
「練達だいじょうぶ?」
 『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)の第一印象は、多分100人中50人以上は浮かべるまっとうな印象であろう。あとの50人は「前の洗剤より白い」でした。本当に大丈夫かな練達。というか統計取った人
 史之は統計データの書かれた紙をスゥーって丁寧に破いてから、丸めてベンチ横のくずかごへ放り投げた。
 枯葉や小枝がまばらに落ちてる以外は思ったよりキレイな遊園地である。ベンチも多少手で払うだけで座れたし、くずかごもなんか普通にくずかごだ。
「でもなあ……」
 ぼやこうとする彼がベンチから立ち上がると、その肩をトンッと『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)が小突いてきた。
 小動物のじゃれ合いみたいな軽く愛らしい小突き方に、思わず笑みの浮かんだ顔を向ける。
「ふふっ、この腐臭、なつかしいよ、しーちゃん(史之さん)」
「あっこれプラスのポイントなんだ……」
「だけど三途の川を渡れない人々にはここで絶えていただきましょう。死者は根の国へ。それが世界の決めた理です」
「そこはキッチリするんだ……」
 睦月がいかにも遊園地にやってきたカップルみたいに振る舞う一方、そのずっと向こうではウガウガいってるゾンビの集団がスクラップの山みたいになっていた。
 そうスクラップの山。さっき二人でボーナスステージかなってくらいぼこんぼこんに蹴散らしたからである蹴散らしすぎてなんかバリケードみたくなり新たなゾンビが通れなくなってるくらいには山である。
「改めて考えてみると属性もりもりだよね、しーちゃんって。えへへ、冗談だよ。僕ねえ、しーちゃんと夫婦になれて幸せ。もちろん援護もするよ。内助の功ってやつだね」
 はにかんで笑い、腰の後ろで手を組んでみせる睦月。えらく可愛いのに背景がゾンビ山なのはなんだろう
「さ、デートしようしーちゃん。僕ね、観覧車に乗りたいなあ。憧れてたんだ。掃討よろしくね」
「デートでいいのかなあ」
「いいんだよ」
「いいのかあ」
 史之に否やはない。
「さあご主人さまであり大切な妻を守るための一振りの刃になってみせよう。
 睦月へは指一本触れさせないからなアンデッドども!」
 史之はここでようやくやる気を出すと、観覧車へ続く道へ向き直った。
 太刀『衛府』を抜刀。睦月と手を繋ぐと、睦月のほうは魔力回路を通じて『凍印守護障壁』を展開した。
 攻防一体。二人三脚。二人は遊園地ではしゃぐカップルそのもののように走り出し、そして邪魔な背景と化したアンデッドたちを蹴散らしていったのだった。

「お疲れ様。はいシャボンスプレー」
 観覧車の扉を閉じ、本来外からするはずのロックを適当にかけると、史之は鞄から取り出した衛生スプレーを睦月にかけてやった。
「えへへ、気を使ってくれてありがとうしーちゃん」
 にっこり笑い、睦月は観覧車の席に座る。史之と隣り合わせるようにして、外側を向いて。
 ちらりと見ると、観覧車の下のほうに集まっていたアンデッドたちがこちらを見上げてウガウガカタカタやっている。
 史之は自分にも衛生スプレーを施してから、観覧車の背もたれによりかかる。
 いくらアンデッドが発泡スチロール並に脆いからって、ああも大量にかき分けているとじんわり汗もかくものだ。雪国でやる雪かきに近い……のかもしれないが、史之はその例をあまり知らない。
 ふうと息をつくと、同じく脱力したらしい睦月がこてんと史之の肩に頭を置いた。
 繋がる体温。ゆっくりと上がっていくゴンドラ。東京と呼ぶには随分した町めいて再現された森や山のずっと向こうに、都市の風景が見え始めた。
 スッと睦月が頭を動かしたのを感じて、視線を降ろす。
「ねえねえしーちゃん」
「ん」
「キスして」
 こちらを見上げ、顎を上げて見せる睦月。
「家に帰ったらじゃ……」
 だめ。と薄めを開けて抗議する意志を示す睦月を見て、史之は自分の唇をついなめてしまった。
「……わかったよ」
 唇が近づく。
 ああ、ゴンドラが帰った頃には、またアンデッドを掃除しないとな……なんて考えながら。

●アンデッドの遊園地
「ずっとこんなとこで遊んでても飽きちゃわない?
 外にはもっと楽しいコトがいっぱいあるんだよ♪
 みんなで一緒に遊びにいこうよ!きゃはっ♥」
 『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)が楽しそうにクレープ屋のワゴンの前をスキップすると、呼び出された『お友達』が次々とそのあとに続いた。空っぽのクレープ包装紙を手に歩く者。割れてしおれた風船をぶらさげて小走りになる者。割れて何も移さないスマホをつけた自撮り棒を掲げてピースする者。それはまさに廃墟の遊園地に相応しいアンデッドであった。
 むしろ、今この遊園地でガタガタしているアンデッドたちのほうが無作法に見えるくらいに。
 パレードでもするように歩くマリカの前に、十を超えるスケルトンの集団が立ち塞がる。彼らはモップやらなにやら遊園地スタッフが持ちそうな道具を手に、武器のように構えていた。
 マリカは歩く足を止め、灯火の魔眼を開いたまま小首をかしげる。
 そんな彼女を守るかのように『お友達』の集団は左右に広がり、ある者はクレープ包装紙を握りしめて拳を作り、ある者は風船のヒモに石をくくりつけぐるぐる回し、ある者は自撮り棒を棍棒のように両手持ちした。
「ね、一緒にあそぼ。連れてってあげる」
 マリカの『勧誘』に、スケルトンアンデッドたちは咆哮をあげ走り出す。
 狙いはマリカ一人だが、迎え撃つのは『お友達』の群れだ。
 ばきばきとホネの折れる音がいくつもしたあと、マリカの前には文字通り屍の山。
 悪しき肉体から解放された霊魂たちに、マリカはもう一度問いかけた。
「皆で一緒に遊びにいこうよ」
 きゃは、と笑うマリカがスキップして歩き出すと、先ほどの『お友達』に加えて何人かの『お友達』が列に加わった。
 それはまるで、広がり続けるパレードのようだった。

「うわぁ……ホントに第三、第四だかのあんでっどあくしょんが生まれちゃってる……」
 遊園地の(いろんな意味で)どうかしてる有様を眺めていた『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)。
 仲間たちは自由気ままに好きなエリアへと散らばって、そこでアンデッドを好きなように蹴散らしていることだろう。ここでコーリツがどーとか野暮なことを言うユイユではない。
「そーだなー、ボクはどこいこっかな」
 入り口で手に入れたパンフレットを広げると、狂ったような顔のリスが車で走り回るイラストが描かれたゾーンが目にとまった。
「あ、ここいいかも! ゴーカートってやつだ!」
 思い立ったら即行動。
 突っ走るユイユを邪魔するようにアンデッドたちが立ちはだかるも、ピッと緑の葉っぱを二本指に挟んで取り出すとユイユはそれをカードや術札の如く放った。
 ボッと炎を灯した葉っぱは大量の鬼火へとかわり、目の前のアンデッドたちを炎上させる
 己が炎に包まれた人間特有の慌てふためいた動きをする彼らの上をぴょんと飛び越えたユイユは、『火どころか傷ひとつついていない』アンデッドたちが地面をころげまわる様を見てベッと小さく舌を出した。
 中には本当にくたばってバラバラのホネと還るものまでいるのだから、ユイユの術は侮れない。
 とかなんとかやっていると早速乗り場へ到着。
「やったー! のりまーす!」
 気に入った色のカートに飛び乗りエンジンペダルを踏み込むと、ぶぅんといい音をたてて走り出す。
 と、備え付けのバックミラーに何台かのカートが映り込んだ。
 ハッとして振り返ると後続車両。運転手は勿論アンデッドである。ウガウガいいながら距離をつめ、手に石を握り投擲姿勢をとっている。
 そっちがその気なら! とユイユはどこからともなく取り出した亀の甲羅をセイッて言いながら投げつけた。
 どういう理屈か派手な爆発が起きてスピンする 後続車両。
 ついでに路上を歩いていたアンデッドたちをコイコイーンと撥ねまくる。
「どんどんあんでっど達を轢きまくろー! 塵も残すな! ゴーゴー!!」

●氷上のダンスマカブル
「これが初仕事でよかったのかな? ま、頑張ろうかな。死なない程度にね!」
 幽火(p3p010931)はアンデッドたちが滑ったり転げ回ったりしているスケートリンクの『壁』の上にバランス良く立つと、タカタンッと小気味よいステップを踏みならした。
 アンデッドたちがその音に反応し振り返るのもつかの間、幽火は宙返りをかけながら氷面へとジャンプ。
 何体ものアンデッドが滑りながらも向かってくるが、幽火はわざとおどけた調子のポーズをとり、故郷の大道芸人の全てがそうしていたように満面の笑顔を作ってみせると、自らへ掴みかかるアンデッドたちの腕と腕の間をすり抜けて滑って見せた。
 くにゃんと不自然なくらいの柔軟さで身体をまげてすり抜ける幽火に、アンデッドが慌ててふりかえり、そして転倒する。
 アハハとわざとらしく笑ってみせると、おどけたステップをわざと失敗して転倒した。
 くるくる周りながらウワーと叫び滑っていく幽火。
 彼を捕まえようとしたアンデッドたちまでぽこぽこと撥ね飛ばされ、ボーリングのピンもかくやという勢いで散らばっていく。
 やがて起き上がった幽火は頭をくらくらと回した後、瞬きをして背筋を伸ばした。
 ……アンデッドに囲まれていた。
 立ち上がり、ウワーとまた叫んで。
 そして。
 どこからともなくトランプのカードが束になって手のひらへと現れた。
 振り返っては投げ、慌てたようにばたばた腕を動かしては投げ、その全てがアンデッドたちの顔や腕に突き刺さる。
 更には幽火はどこからともなくワインの入った瓶を取り出すと、その先端にポッと炎を灯した。
 くるりと回し、瓶でジャグリングを始める幽火。
 四方八方から飛びかかるアンデッドたち。
 が、どれも幽火を捕まえることなどなかった。
 ずっと離れた場所に背筋を伸ばして立ち、胸に手を当て、架空の観客に向けて深々と一礼した。
 そのずっと後ろで、群がったつもりのアンデッドたちが纏めて爆発四散する。
「うん……この世界も、なかなか楽しいねぇ」

 幽火が素敵なショーを見せた様子にぱちぱちと拍手をしつつ、『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)はハッと何かに気付いて振り返った。
「沙耶さん! これって、遊園地デートなのでは!?」
「遊園地デートだろうか?」
 本当にそうだろうか? と爆発炎上するゾンビたちを見て表情を曇らせる『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)。
 デートスポットにゾンビが出たらそれは確実にカップルを殺すフラグなのだが……。
 などと考えつつ視線を戻すと、トールがキラッキラした顔でこちらを見ていた。キラキラっていう効果音も出ていたし実際なんかきらめきが可視化できた。
「う、うむ、そうだな……」
 小声で『アンデッドが邪魔だが』と呟くがトールはしっかり聞こえていたらしく、『それを除けば!』と力強く言った。力強さついでにガッツポーズまでした。
 でもってそこからはスケート場へやってくるカップルのそれである。自分にあったスケート靴を探して履いて、おずおずと氷上に足を置く。
「アンデッド、いなくなっちゃいましたね。さっきので全部だったんでしょうか」
「そうかもな。また来るかもしれん。暫くいよう」
 沙耶はといえば、平然とした様子で氷上に立つとトールにスッと手を差し出す。
「あっ、もしかして沙耶さんスケート得意なんですか? じゃあ――」
 といって手を取った瞬間、二人同時に思い切り転んだ。
「「わわっ!?」」
 靴で相手を傷つけてしまわぬようにと配慮した結果、トールをまたいで押し倒す形になってしまった沙耶。それではいかんとギリギリ膝と両手で押しつぶすことを免れたようで……沙耶はかあっと顔をあからめた。
「す、すまん。実は氷上での動きは慣れていないのだよ……」
「一緒ですね」
 トールがはにかんだように笑い、そして身体を起こす。
 膝を突いて向かい合うような、あるいは抱き合うような格好になってしまったが、トールもトールでぷるぷるしているのでこの姿勢が限界っぽい。
 二人はなんとかぷるぷるしつつ立ち上がり、壁に片手をついて向かい合う。
「普段クールな沙耶さんも慌てると可愛い声を出すんですね、ふふっ」
「こら、からかうな」
 苦笑する沙耶。今度は手を差し出すトール。トールの手を握って、沙耶はゆっくりとだが氷上を滑り始める。
 一人では転んでしまいそうな氷の上も、不思議と二人で手を繋いでいれば転ばない気がした。
「あ、見てください。やれそうです!」
「調子が出てきたな?」
 二人は顔を見合わせ、頭のなかでイメージするフィギュアスケート選手のように少しずつ加速をかけていく。
「……って、なにをしているトール!? 流石に早すぎないか!?」
「大丈夫です! ほら、ジャンプ!」
 トールがバック走行で滑りながら沙耶の両手をとった。二人輪になった状態でトールがスピンジャンプを試みる。
 いや、ここみちゃだめだ。
 両手を握って輪になった状態でスピンジャンプなどすればとんでもないことになるものである。
 沙耶は『ヒュッ』て喉を鳴らしながら慌ててジャンプし、二人は空中を……きわめてスローになった世界のなかで見つめ合っていた。
 ゆっくりゆっくりと回るアイススケート場。太陽の光が氷に反射して、トールのなびく髪と笑顔を、沙耶の見開いた目を、それぞれの瞳に映す。
 そして。
「「ひゃああ!?」」
 二人とも女の子みたいな声をだして転倒し、こんどこそ沙耶をトールが押しつぶしたのだった。

●ひとりボーナスステージ
 ロケーッランチャー!
 天空から流ちょうな英語が聞こえた気がした。
 『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)はなんでかしらんけど装備したロケットランチャーを、メリーゴーランドへと向ける。
「前回はバイオレンスがテーマだったけど、今回は「びゅーてぃふる」か。
 つまり、美しく華麗に戦えば良いというわけだね」
 というわけで華麗に! とトリガーをひくと、ハインの『後方』からロケット弾が発射されはるか後方にあったアイスクリームワゴンを爆散させた。
 あとワゴンの側にぼーっとたっていたアンデッドも爆散した。
「……あれ?」

 回り始めるメリーゴーランド。夜の深まる遊園地で、イルミネーションに照らされたスケルトンの集団がハインめがけて殺到する。
「それじゃあ気を取り直して、『びゅーてぃふる』にいってみよう!」
 ピイっと指笛を鳴らすと、はるか空から舞い降りた霊鳥へと飛び乗った。
 スケルトンたちを置き去りに天空へと舞い上がると、まずは『ヴァイセ・シュニッター』を手に取る白き収穫者を意味するこの杖には、幾重にも術式が込められていた。
 その一つを、いま解き放つ。
「――『Verdammnis(滅ぼし)』!」
 杖で不思議な模様を描いてから振り上げると、天空に光の矢が大量に生成される。光はそれらを見上げるスケルトンの集団を冷酷に照らし出した。
 ニッと歯を見せて笑いかけるハイン。冷酷に、しかし美しい光の雨をオーケストラの指揮者のごとく降り注がせ、アンデッドたちをまずは殲滅していった。
 そのまま飛行すると広場に集まっていたアンデッドの集団を発見。あえて霊鳥の上から跳躍すると、杖を掲げて次なる魔術を解放する。
「――『Apotheose(神格化)』!」
 着地と同時に炸裂した光の氾濫がアンデッドたちを蹴散らし、そんなハインに目を付けたアンデッドたちが次々と襲いかかってくる。
 着地の姿勢からゆっくりと立ち上がると、ハインは杖をスッと後方へと向けた。
「――『Zorn des Drachen(竜の怒り)』」
 静かにつぶやき発動させた魔術は竜の咆哮を思わせる凄まじい波動であった。襲いかからんと走ってきたアンデッドを、その場で粉々にしてしまう程度には。
「スタイリッシュポイントの方がたかかったかな?」
 ハインは杖を顎にあててうーんと考え、『じゃあオマケ』でと杖を軽く翳して見せた。
「――『Angriff der Schatten(影の襲撃)』っと」
 目の前まで迫り、今まさにハインの喉元に掴みかかろうとしたスケルトンの上半身がまるごと消滅した。そこにあったのは完全なる闇であり。闇がスケルトンを喰らったのである。
 がらがらと崩れるホネを見下ろし、杖をもう一度振りかざすハイン。
「そろそろお片付けの時間かな。まとめていくよ」
 魔法の言葉と同時に、その日の遊園地遊びは閉幕したのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

※代筆担当より
 お疲れ様でした。代筆担当の『黒筆墨汁』です。
 遊園地のアンデッドはすっかり駆逐されきったようです。

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