PandoraPartyProject

シナリオ詳細

正義の在処 ~Shadow of Justine~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●きみの正義はどこにある
 暗い部屋。泥めいた血とよごれた臭い。
 男は壁際に両手を縛って吊るされていた。
 無数の拷問具をテーブルに並べたふくよかな男が、道具を丁寧に消毒している。
 隣では額に大きな穴の空いた男が悶絶の末に絶命し、今まさに解体される所だった。
 心配しなくていい。君も五日ほどで同じ姿になる。ふくよかな男はそう言って、衛生マスクを被った。
 道具のひとつを握り、吊るされた男へと振り返る。
 その時だ。
 暗い部屋に光がさした。
 開いた扉の逆光が、2メートル近い男のシルエットを浮かび出す。
 振り返り目を細めて見れば、それがエンチャントラバー性のボディスーツであることがわかるだろう。頭部はやや硬質な素材らしく、前面をフェンシング競技者のような透明シールドで覆っていた。
 誰だ。そのように問えば、真っ黒なラバースーツの男は二歩部屋へと踏み入ってから拳を握り込んだ。
「正義だ。正義を執行しにきた」
 投げ放たれた拷問道具。それをキャッチし、握力だけでへし折る。
「ジェイコブ・ジェファーソン。47歳。殺人十八件、傷害七十五件、強姦、強盗、強請、その他複数の容疑あり……正義を――」
 うるせえ。そう叫んで解体のこぎりで斬りかかろうとする男。
 その喉がなくなった。
 握力によってこそぎ取られたのだ。
「執行する」
 膝から崩れ落ち、白目を剥いて倒れる男。
 ラバースーツの男はゆっくりと、吊るされた男へと振り返った。
 ありがとう。助けてくれよ。縄がとけないんだ。
 そう語る彼に、ラバースーツの男は歩み寄った。
「アマル、アンダーソン。19歳。違法薬物の販売、窃盗、傷害の容疑あり」
 待て、俺は命令されただけだ。
 吊るされた男は叫んだ。
 免罪符だって買った。教会にだって通った。もう許されたはずだ。不正義なんかじゃない。
 そう主張した。
 そんな彼の恐怖に歪んだ顔が、シールドの表面に反射した。
「勘違いをするな」
 ラバースーツの男は。
「俺こそが正義だ」
 一瞬にして相手の顔面を握りつぶした。
 ラバースーツの男。
 その正体は分かっておらず、噂を知る者からはただ一言こう呼ばれていた。

 ――『シャドウ』

●教会
「ベックス・ベイキー教会。免罪符と懲役により罪人を許した。正義を執行する」
 シャドウがゆっくりと歩いている。
 教会のベンチに折り重なるようにして、無数の教会関係者たちが絶命していた。
 教会で日曜の祈りを捧げていたただの住民でさえ、女子供問わず積み重ねられていた。
「彼らは罪を悔い改めた。牢獄で過ごし自らを見つめ反省した者たちだ。彼らに罪は、既に無い!」
 聖なる剣を握り、頭から血を流しながら叫ぶ神父。
 神父の法力を込めた斬撃が、しかしシャドウの手に握りつぶされた。
「それを決めるのは貴様ではない。俺だ」
 神父の腹を、手のひらが貫通していく。

 同時刻、片腕を失った若い教会職員が地面を這うように大通りを進んでいた。
 困惑する人々をかきわけ、ある人物を見つける。
 何かの用事でたまたまこの町を訪れていた――『あなた』だ。
「おねがい、します。シャドウを、シャドウを、倒して」
 あらゆるものへ助けを求めようとしたのだろう。
 彼が握りしめていた無数の書類のうちの一つ。それは、ローレットへの依頼書だった。空白の依頼書に血でただ『help』とだけ書かれていた。
 意識を失い行く若者が、教会で起きたこと、シャドウに関して知りうること、その全てをはき出して、息を引き取った。
 あなたは……。

GMコメント

 このシナリオは突発的に起こった事件です。
 PCは偶然近くに居合わせ、助けを依頼されたイレギュラーズとして即席チームを組み、ここへ結集しました。
 相談はややメタな視点にはなりますが、情報の共有や集合がすんだものとして、そして教会へ駆けつけるまでの短い間に済んだものとして扱います。

【シャドウ】
 自己正義的な言動をし、罪と考えたもの全てに対して殺害という私刑を行なう。
 教会の噂によれば彼は『人間ではない』と言われており、人間としても扱われていない。
 その証拠に戦士六人がかりで襲いかかってもまるで歯が立たず、全員死亡したという。
 若者が話す内容によればシャドウは魔力的に強力な身体を用いた物理攻撃に優れており、銃弾を掴んだり剣を握力で止めたり魔法を握りつぶしたりするという。
 だがその性質ですらシャドウの一端にすぎないとも噂され、底知れぬ恐ろしさと共に語れている――『モンスター』である。

【補足】
 場所はベックス・ベイキー教会内外。
 一般的なカトリック系教会と似たような作りで、やや小規模です。

※注意
 このシナリオではキャラクターが大きな怪我をおう場面が多く発生します。
 自身のキャラクターのダメージ描写が苦手な方はアドリブ度設定に加えて『ダメージ描写なし』とプレイングに記入していただければ、それらの描写をカットします。
 無い場合は最悪腕をもぎます。(混沌の医療は腕もぎレベルの重傷も五日くらいで治るのでご安心ください)

 また、アクションシーンを含めロールプレイの幅が非常に大きなシナリオとなっております。
 デフォルトでアドリブ多めの設定が成されておりますので、アドリブが苦手なかたは『アドリブなし』とご記載ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 正義の在処 ~Shadow of Justine~完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月18日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レンジー(p3p000130)
帽子の中に夢が詰まってる
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
美音部 絵里(p3p004291)
たーのしー
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー
ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)
鉱龍神
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
アルフォンス・クリューゲル(p3p006214)
目指せアイドル!
ロゼ(p3p006323)
聖ロゼ

リプレイ

●正義は心にあらざるや
 白いハトが声をあげて飛ぶ。
 靴屋の看板をかすめるようにして、ネメシスの静かな町中を低く早くとんでいく。
 教会へ向かう道へ、いくつもの足音が並び、重なり、一本の道へと合流していく。
「正義の名の下に罪人を裁くなんて、流石、天義って感じですよね。お話を聞く限り、犠牲者はたくさんみたいですし。『お友達』探しに来たかいがあったのです。むふー」
 合流しかけのメンバーを見回して、『トリッパー』美音部 絵里(p3p004291)は突入の準備を整えた。
 事件があったというベックス・ベイキー教会近くの建物に隠れるようにして、『玻璃虹龍』ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)は教会の様子をうかがっている。
「正義とか実のところ曖昧な概念だと思うんだけどなぁ。曖昧なくせに用法を間違えると正気を失う厄介さもあるが……。私からすれば善悪だの正義だので他者を測るとか愚行だけど」
 あらかじめ決められたメンバーが集まったわけではない。
 偶然居合わせたイレギュラーズが、この事件の解決を依頼されたにすぎなかった。
 そうした運命の交わりもまた、イレギュラーズのイレギュラーズたるゆえんなのかもしれない。
 『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)が五感を共有させたハトを飛ばして様子を見ている段階だ。偵察内容によれば、屋内で民間人らしき男女複数名が積み上げられ、今まさに神父らしき人物が殺害されたことがわかった。
 危険に飛び込む不自然さからファミリアーによる偵察行動が察知されたのだろうか。握りつぶすようにハトが殺害され、死亡する直前の苦痛が共有した五感を通して伝わった。
「こういう相手に直面すると、誰かの正義が皆にとって正しいとは限らないって思い知らされるわね」
「屋内だと戦いづらいよね。挑発して外に出て貰う?」
 『聖ロゼ』ロゼ(p3p006323)がそっと物陰から教会をのぞきこむ。
 路上におびただしい血液が散っていて、その惨状から野次馬らしい気配もない。
「女子供問わず積み重ねてるんだっけ。ある程度の覚悟がないとこんな事は出来ないわな。この国においてでも、洒落が通じないというか、シリアス界の住人というか……モンスターとか言うみたいだけど、正義に拘ってるし、人だとは思うんだけどなぁ」
 同じく覗き込んでいた『目指せアイドル!』アルフォンス・クリューゲル(p3p006214)が、黙って武器に手をかける。
(正義をくだらないと思うほど捻くれ者にはなれず、正義をどうでもいいと感じるほど虚無主義にもなれず、強いて所感を述べるのならば、国家正義の名の下で大義名分を得た正義執行はとても楽しかった……なんて)
 黙っているアルフォンスの一方で、『スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)と『大賢者』レンジー(p3p000130)は既に突入の姿勢にはいっている。
「ひゅう、強烈だねぇ、シャドウちゃん」
「君の正義はとても歪だね。ねじれてねじれて、もう自分でも気づけないほどに固く絞られて何も見えなくなっているんだね」
「『正義』って魔物か。そう言う土壌なんだろうが」
 『紅蓮の盾』グレン・ロジャース(p3p005709)が壁に背をつけて腕組みをし、奥歯を噛むような顔をした。
「ミイラ取りがミイラに、ってな。独善的な正義振りかざして秩序ってのを崩しちゃ、何も変わらねえ。人を守るための正義じゃなく、正義を守る為に暴力を振るうようになっちまえばそりゃぁただの怪物さ。正体がなんであれな」
 血まみれの路上にヴィマラとレンジーが歩み出て、教会に向けて呼びかけ始めた。
「誰かに感謝されたいって言うなら、この辺にしときなよ、じゃないとどんどん孤独になっちゃうよ? 感謝じゃないってんなら何が楽しくてこんなことやってんの?悪いやつがいなくなるよか、悪い奴がいい奴になって友達になるほうが100倍楽しーじゃん。正しいか間違ってるかより、楽しいか楽しくないだよ、間違ってるかどうかなんてそこには関係ないよ、間違い何て一回は起こすよ、人間なんてさ、大事なのは心持ちだよ今のあんたはどう? 心の底から誇りに満ちて、心底嬉しいと思う?嫌な奴全部殺したら、幸せな世界になるって思う? 本気でそう思ってんならおせっかい言っちゃったな! ごめん! そー言う事ならワタシの方は、明日のワタシに誇れる生き方を今日もやるぜ! あんたが殺した人の為にね!」
 長く語りかけてみたが、内部から返答らしいものはない。
 はじめは聞こえていた物音すら今はせず、ただ静寂と血の臭いだけがあった。
「君の正義は罪人の命の方が罪人でない人よりも大きいのかな? 1人の罪人を殺すために何倍もの人を殺すということは、罪人の命の方が重いということになるよね? それとも、君からすると生き物は全て罪人であって、死するべき対象ということかな。それなら確かに納得できるよ。納得は出来ても共感はしないけれどね。わたしの罪は慈愛であって、罰は傲慢なんだ。君を含めた全ての命は尊ぶものであるし、話し相手にいつも飢えている、そういうことだね!」
 レンジーの問いかけにも、不思議と反応はなかった。
 たとえば承認欲求であるとか、たとえば倫理感であるとか、そういったものを刺激すると往々にして人は感情的になり、理屈にそぐわない行動をとったりする。包囲された屋内からわざわざ出てきて怒鳴り散らしたり、近くのものを壊して威嚇したりといったものである。
 だけれどなぜか、一切のリアクションがなかった。
 屋内に入り込んだハトですら即座に絞め殺すような男である。ろくな奇襲ができるとも思えない。
 よしんばできたとして、ほんの数秒と何発かの攻撃が通りやすくなるだけのことだ。その数秒でことが済む相手なら、宗教国の教会で皆殺しなんてことを遂行できるはずもなく……。
 結果、この不気味な相手が待つらしい教会内へと踏み入ることになった。

●正義は身体にあらざるや
「シャドウさん、あなたに話があるので外に出てくるのです。逆に、ひょっとしてあなたの方から私達に言いたいこともあるんじゃないですか?」
 相手の出方が分からぬ以上、ゆっくりと踏み込むことになる。
 即席で決めた陣形は、絵里とグレンが前方を固めつつまわりの仲間がその後ろから続いて侵入。アルフォンスやェクセレリァスは野外から様子をみつつ、エスラやロゼが遊撃に回るという配置だった。
 相手は籠城に有利な状態。いかなる奇襲があるものか。
 そう考えていた彼らの予想は、すぐに霧散して消えた。
 具体的にいうならば、教会の正面入り口……開放された両開きの大扉の前にグレンたちが立った時点で消えた。
 真っ黒いエンチャントラバー製スーツ。頭をすっぽりと覆うメット。大柄な黒い人影が、こちらに背を向けて立っている。
 喉や腕や腹をえぐり取られた神父の死体が足下に。身体の一部を派手に損壊した無数の死体が山積みに。
 そして握りつぶされて原型をとどめていないハトが、まだ彼の手の中にあった。
 イレギュラーズたちは動き出した。
 ヴィマラはマジックロープを放ち、グレンと絵里は組み付こうと接近をしかける。それに混ざってレンジーとロゼは近接戦闘をしかけにいった。
 初撃のヴィマラによるオーラのロープはシャドウの首に巻き付き、グレンと絵里が動きを阻害するように立ち塞がる。
 そこまでは良かった。
 シャドウがわずかに前屈みになった……かのように見えた時には既に、グレンと絵里の喉をシャドウの手が掴んでいた。
「部外者複数名。正義の執行を妨げた。正義を執行する」
 手の中のものを握りつぶす。
 あたりまえの動作でありながら、それは的確かつ高速で行なわれた。
 咄嗟に相手の腕を掴んで引きはがそうとしていなかったら、首から上が無くなっていたかもしれなかった。
 声も出せぬ外傷。飛び散る血。
 ヴィマラのロープが即座に引きちぎられ、今まさにとびかかっていたレンジーとロゼがフリーになった。
 退けるようなタイミングではない。
 レンジーは手を翳し、破壊の魔術を解き放った。
 空間ごと捻るような重い音。
 と共に、ロゼが鎌を叩き付ける。
「君がやってる事は加害者と被害者が変わったぐらいでしかない。どこで終わらせんの? 罪なんて誰しも重ねてるし終わりはないよ」
 刃は確実に心臓部に刺さった筈だが、スーツの弾力なのかすぐさまはじき返されてしまった。
 レンジー、ロゼ。それぞれの手首が掴まれる。二人の視界が急速に横に引き延ばされた。
 それが瞬間的に振り回すように回転させられたからだと気づいたのは、自分たちが教会の壁を破壊して外に放り出された後だった。手首から先がなくなっていたと気づいたのも、その時である。
「――ッ!」
 ただごとではない。
 ただごとではないが、放置できる案件でもない。
 回復魔術を強引にぶちこんで無理矢理手のかわりになるような植物を生やし始めるレンジー。
 そうしている間に、アルフォンスとェクセレリァスが射撃のラインを確保すべく回り込んできた。
 レールガンを構えるェクセレリァス。同じくライフルを構えるアルフォンス。
「この砲撃は痛いんで是非是非当たってね」
 一斉射撃。
 シャドウに、そしてその周囲にある全てのものに構うこと無くうちまくり、その隙にグレンたちは正面門から野外へ逃げ出した。
 追いかけるシャドウ。
 が、足音など聞こえなかった。
 外に出たと思ったその時には、彼らの前に回り込んでいたのだ。
「冗談じゃねえ!」
 第二の攻撃――が加わる直前。シャドウの脇腹にエスラの手のひらが当てられた。
「私だって正しいことばかりしてきたわけじゃない。だけどね。シャドウ、あなたの正義は認めないわ」
 巨大な魔方陣がシャドウと重なるように展開し、ショットガンのような拡散魔術弾が至近距離から発射された。
 勢いで吹き飛ぶシャドウ。
 ギリギリで振り込まれた腕がエスラの腕を掠り、表面の肉をごっそりとえぐっていった。
 それをじわじわと自己修復しながら、出血を抑えるように布をぐるぐると巻き付けるエスラ。
 ちらりと教会内に目をやれば、おそらくは罪もないであろう女性や子供の死体が転がっているのが見えた。
「お祈りしてただけの女の人や子供まで……許せないわ。私は正義じゃないけれど、それでも私は私の正義に従ってあなたを断罪する!」
「正義?」
 そこでようやく。
 ようやくにして、シャドウが声をあげた。
「貴様らに正義などない」
 魔術の爆煙がはれる。
 地面にはエンチャントラバーのスーツが破れた状態で落ちている。
 視線を上にあげれば、きっとそれが見えるだろう。
 真っ黒なゲル状の球体が、ただただ浮かんでいるのが、見えるはずだ。
「俺こそが正義だ」

●正義はどこにある
 球体の表面に、無数の人面創が浮かび上がる。
 その全てが『正義をなせ』と唱えた。
 『善きことのため』
 『思慮は罪と知れ』
 『汝は正義となるのだ』
 それらの声が、音ではなく脳に直接響いていることに気づいてロゼたちは顔をしかめた。
 次の瞬間。球体は爆発するように大量の腕らしきなにかを伸ばし、グレンや絵里たちへと組み付いた。
 『正義を執行する』
 『我らに融け入れ』
 『汝は正義となるのだ』
 吹き出た血液を武器にして、絵里が黒い物体を切り裂いていく。
 一方で絵里の肉体を溶かすように、もしくは喰うようにして黒い物体があちこちから奪っていった。
「ほら来いよ、あんたの正義とやらを執行しによ!」
 グレンが黒い球体へと飛び込んでいく。
 放たれた物体がグレンの左腕をもぎ取っていったが、それでもギラリと笑って跳躍。右の拳を叩き込む。
 ェクセレリァスたちも黒い物体の対応におわれていた。アルフォンスと共に屋内へ走り、ベンチを飛び越えて身を伏せる。
 黒い物体が頭上を突き抜けていったかと思いきや、周囲のベンチを粉砕して彼らを瞬く間に取り込んだ。
 無理矢理名姿勢で銃を構え、黒い物体めがけて連射していく。肉体がめちゃくちゃに分解され、あちこちにばらまかれていくのが分かる。
 全て飲み込まれ分解され尽くしたなら、表面に浮かぶ無数の人面のひとつとなるのだろうか。
「――――――――――――――!」
 肉体を半分ほど崩壊させたェクセレリァスは自身の構成情報を血のようにまき散らしていく。他者からは奇妙な文字がばらばらに散っているように観測できることだろう。
(射線は上からのがクリアなんだけどねぇ……中々昔の様にはいかないね)
 僅かに浮き上がり、銃を連射していく。
 黒い物体にオーラのロープがぐるぐると巻き付いていった。凛倫棒という名前の鈴のついた杖がざっくりと地面に刺さり、ヴィマラは引きずり込まれないようにと踏ん張っているように見える。
「通りで話が通じないわけだ。あれは正義に狂った個人どころか、人間ですらないよ」
 レンジーは魔性植物のツタを長く伸ばすと、黒い物体へと巻き付けていく。
「群衆の圧力が産んだ傲慢の怪物さ」
「ちゃんと自分も罪を重ねてる事は自覚してるよね。正義を言い訳にしてるものね。解ってるんでしょ?」
 ロゼの放った毛糸もまた、ぐるぐると黒い物体へ巻き付いていく。
 同じく伸びた黒い物体がレンジーやロゼたちにも巻き付き、肉体を徐々に食いちぎっていった。
 肉体の殆どに黒い物体が巻き付いたエスラは膝をつき、黒い物体……シャドウに向けて手を伸ばした。
「消えなさい、正義の怪物」
 エスラの放った魔術の弾丸が空を走る。
 回避行動をとろうとしたシャドウだが、レンジーたちがあちこちから絡みつけた糸に引っ張られて固まり、そのど真ん中を弾丸が打ち抜くことになった。
 大きな穴をあけ、ソフトクリームが溶けるかのように崩れきえていくシャドウ。
 エスラたちにからみついた黒い糸もきえ、あとには壊れた教会と大量の死体と、そして血の臭いだけが残った。

●正義をかたる傲慢
 傾向はあった。
 悪い噂のたった人間をこの世から排斥すべきだと主張する人々。
 心を傷付けられたからといって過剰に攻撃的になる人々。
 自分が正しいのだから何をしてもいいと考える人々。
 天義に限ったことではなく、あちこちにそういう人間はいた。
 意志の力や心の強さがそのまま武力や暴力にかわるこの世界で、彼らの心はどこへ消えていたのか。
「もしかしたら、あのシャドウのように形をもってどこかに寄り集まっているのかもしれない」
「ぞっとしない話ね」
 レンジーやロゼたちは怪我に応急処置を施しあいながら語った。
 彼女たちの怪我は相当なものだったが、グレンやェクセレリァスやアルフォンスたちに比べればまだ軽い方だ。
 グレンは腕くらいすぐにくっつくといってからからと笑って見せ、ェクセレリァスも構成情報をかき集めて早速くっつけ直している。
 エスラは比較的残った怪我が少なかったようで、仲間の応急処置にあたっていた。
 一方で、ヴィマラや絵里たちは大量に積み上げられた死体に対応していた。
「大丈夫、皆は精一杯生きたってワタシは知ってんよ悪なんかじゃないさ」
「罪を抱えたままだと地獄行きですし。ちゃんと裁いてあげるなんて、これも救済なのです? 『皆』も悪いことしないように注意しないと」
 虚空を見上げる二人。
 群衆の正義が人に牙剥くことがあるのなら、群衆の赦しが人を解放することもあるのかもしれない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)[重傷]
鉱龍神
グレン・ロジャース(p3p005709)[重傷]
理想の求心者
アルフォンス・クリューゲル(p3p006214)[重傷]
目指せアイドル!

あとがき

 ――mission complete!
 ――good end

PAGETOPPAGEBOTTOM