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シナリオ詳細

<咬首六天>年越し・年末大歌合戦!!

完了

参加者 : 9 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゼシュテルの年末
 鉄帝国。動乱のうちに帝位簒奪が発生し、新皇帝のもとにカオスを描き始めた国家。
 その混乱はいまだ収まらず、されどローレット・イレギュラーズによる反撃による国土の奪還は着実にその足音を鳴らし始めた、そんな時期。
 つまるところ年末なわけである。上述したように、鉄帝国はいまだ混乱の中にあった。とはいえ、年末、冬。新たな年を迎えるということには変わりはなく、混乱はあれど希望に満ちた一年を迎えたいという希望もまた、人々の中に根強く残っていた。
 今年の冬は厳しい。その中でも、何か……娯楽のようなものがあれば。そういった思いは、市井の人々の中に、着実に根付いていたのである……。

「というわけで、皆に歌を届けへん?」
 そういうのは、出雲興縁と名乗る少女だ。『泳雲掴夢』の四文字を座右の銘として、場所時間所属無く舞うバトル・パフォーマー……を自称する彼女は、有原 卮濘 (p3p010661)の知人であるらしい。
 場所は、アーカーシュ・ポータル。広い『港』であるこの場所が、会場にちょうど良いということで借り上げられていた。
 何の会場にちょうどいいか、と言われれば、年末の大歌合戦の会場にちょうど良い……ということであった。
「歌合戦っていうのは」
 卮濘が尋ねる。
「つまり、練達とか、再現性東京の年末にやっているような、あれ?」
「そうそう!」
 興縁が笑った。
「ほら、歌の力は無敵無限やん。年末こそ、いろんな歌を聴いて、来年に向けてのパワーにしたいわけや」
「なるほど。それで、アーカーシュにお客さんや皆を呼んで、慰問を兼ねたコンサートを開く、というわけなのね?」
 レイリー=シュタイン (p3p007270)がそういう。大急ぎで作られた舞台は、アーカーシュのゴーレムたちも手伝ったのだろう、随分と大掛かりなそれに見えた。
「うん! それにな、こう、電波も飛ばしたいねん」
「電波?」
 エーレン・キリエ (p3p009844)が声を上げた。
「放送をするということか? だが……」
「うん。電波塔なんかは、まだまだ確保してへんけど。うまくやったら、国中に電波を届けられて、ラジオ放送にのせられるかもしれへん。そうしたら、国民のみんなにも、元気を届けられるんちゃうかと思ってな?」
 興縁の言葉に、「なるほど」と天之空・ミーナ (p3p005003)が言う。
「いい案だ。鼓舞、というのかな。市民たちにもいい娯楽になるだろうし」
「なるほど。歌合戦ということは、和歌を詠みあうてきなやつです?」
 観音打 至東 (p3p008495)がむむむ、と指で文字を描きながら和歌をそらんじて見せるのへ、
「いや、この場合は歌は歌じゃろ。ミュージック、ソング、じゃ。ポエムではなく」
 クレマァダ=コン=モスカ (p3p008547)がそういった。
「ああ、そういう」
 むむー、と至東がうなづいた。
「歌といったら私も歌いたい! アイドルだものね!」
 海紅玉 彼方 (p3p008804)が、にこにこと笑っていった。
「歌を聴けば、きっとみんな元気になるよね。たのしい、って気持ちは、きっとみんなに伝わると思う!」
「うむ。歌うのも、届けるのも。いいものだ」
 エクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)がうなづいた。
「では、さっそく、打ち合わせを始めたいな。それぞれどんな歌を歌うか……観客の動員も、相談したい」
「どうせなら、派手にやろうよ!」
 セララ (p3p000273)がにこにこと笑ってそういう。
「みんなに、元気になってもらえるように!」
 その思いは、ここにいる者は同じだっただろう。自分たちの力で、元気になってもらいたい。そんな思いが、確かに、この時……多くの仲間たちの胸に一致していた。
「それじゃ、早速やりますか~♪」
 卮濘が上機嫌でそう言うのへ、仲間たちは「おーっ」と声を上げて応じた。

 かくして、年末。
 イレギュラーズたちの歌合戦が、始まろうとしていた!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 こちらはイレギュラーズたちへのリクエストによって発生したお仕事になります。

●成功条件
 歌合戦を成功させる!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 年末、新たな年を迎える人々に、笑顔を届けたい――!
 そういった思いから開かれる、アーカーシュ・ポータルでの歌合戦!
 皆さんは歌合戦の参加者として、部隊を派手に演出しながら歌を歌うことになります!
 サポート参加者の皆さんは、観客として、スタッフとして、あるいは歌手として参加し、一緒に舞台を盛り上げていくことになります。

●諸注意
 プレイングに、実在する歌の歌詞を掲載することはお避け下さい。
 著作権など関係から、描写はできかねるためです。
 オリジナルで歌詞を考えてみたり、どんな系統の歌を歌うかを指定して、洗井落雲に丸投げしたりしましょう!

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております!

  • <咬首六天>年越し・年末大歌合戦!!完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年01月19日 22時10分
  • 参加人数9/9人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 9 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC2人)参加者一覧(9人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
レイリー=シュタイン(p3p007270)
騎兵隊一番槍
観音打 至東(p3p008495)
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
有原 卮濘(p3p010661)
崩れし理想の願い手

リプレイ

●歌よ、歌よ
 その日、アーカーシュのあちこちに、こんなチラシがまかれていた。
『年越し・年末大歌合戦の開催!
 いろいろと大変な昨今ですが、それだからこそ、歌の力で皆を笑顔にできるはず。
 一時の安らぎに、あなたの心にぜひ歌を。
 スペシャルなゲストとして、
 ローレット・イレギュラーズの皆さんも参加予定!
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)
 『矜持の星』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
 『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)
 『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)
 『刹那一願』観音打 至東(p3p008495)
 『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
 『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方(p3p008804)
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)
 『崩れし理想の願い手』有原 卮濘(p3p010661)
 されに、飛び入りの皆さんの参加もお待ちしています!
 現時点で参加発表のあった方は、
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
 『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
 さん、などなど。
 ローレットや軍、派閥所属問わず、皆さんのご参加をお待ちしております。
 また、当日は一部地域にて、ラジオ放送の予定も――……』

 などなど。
 そんなチラシがあちこちに配られていて、特に会場となるアーカーシュの兵士たちや、住民たちは、なるほど、これは楽しそうだと当日を心待ちにしていたことだろう。アーカーシュ・ポータルの特設会場には、当日には多くの観客が詰め寄せていたし、上記のイレギュラーズたちを除いても、兵士や住民たちの参加は見受けられたようで、年末の大きなお祭りの様相を呈していたのは確かだ。
 ちなみに歌合戦は、紅組と白組に分かれて行われる。これはどうも、『そういうもの』らしい。おおもとは再現性東京あたりの旅人(ウォーカー)の文化なのだろうか。この話を持ち込んできた出雲興縁は、そう説明したものだ。
「いやぁ、大好評みたいやねぇ」
 ほくほくと楽しげな顔で笑う、興縁。控室には、前述の通りのイレギュラーズたちの姿が見える。歌合戦はもう始まっていて、すでに他の参加者たちの歌声で大盛り上がりの声が、控室にも届くくらいに響きわたっていた。
「確かに、大盛り上がりのようだ」
 エーレンがうなづく。開催前に舞台を見たことを思い出せば、あの大きな舞台と、その周囲いっぱいに客が入っているというのは、確かに大盛り上がりといえただろう。
「舞台、か。ステージに立つのは出身世界の開拓村のお祭りで依頼されて以来だな……規模がだいぶ違うが」
 そういって笑ってみせる。
「しかし、2チームに分かれての歌合戦、とはな。再現性東京あたりの文化だというが、なるほど、これは盛り上がるのだろう。
 勝敗は客の投票で決めるんだったな」
「そうそう。ま、気楽に、やね。ほんとにどっちが優れてるか、なんて、そんなの決めるわけがないやん」
「そうなると、何故勝負形式に……?」
 むむむ、と至東が唸った。
「こういうのは死合い――」
「いや、物騒じゃな」
 クレマァダが目を細めた。
「こういうのは……あれじゃ、皆ワイワイ楽しく、で良い――のじゃろう? 年末じゃし」
「そうだよ!」
 すでにアイドルモードの彼方がうんうんとうなづいた。
「アイドルっていうのは、皆に夢と希望をプレゼントするんだから! 殺伐としたのはなしなし!」
「まぁ、勝負形式というのも、お祭り騒ぎの一環なのだろうな」
 ふぅむ、とミーナはうなづく。
「観客たちも、どちらが上か、なんてことは考えていないだろう。お祭り、だ」
「なるほどぉ」
 至東がうなづいた。
「確かに、そういった血腥いことは無縁なのが歌というもの。ええ、ええ。私も一曲用意してきたわけですヨー」
 目を細めて笑ってみせる至東。エクスマリアはうなづいた。
「皆のうた、楽しみにしている。
 もちろん、マリアも精いっぱい頑張ろう」
「エクスマリアは、エーレンと一緒に歌うんだよね」
 セララがそういうのへ、エクスマリア、そしてエーレンがうなづいた。
「そうだ。いわば、応援歌を歌うことにした」
 人造精霊のしゅぺちゃんが、うなづくようにくるくるとあたりを回る。エクスマリアの身を包む衣装は、軍服のようなデザインのそれだ。もちろん、本物の軍服のような質実剛健としたものではなくて、派手さと可愛らしさを存分に振りまくそれである。
「しゅぺちゃんにも意見をもらって、この衣装も作った……もっとスカートをも自覚してほしいともいわれたが、これ以上はまずいだろう?」
「さすがにな……」
 エーレンが苦笑しながら言う。ちなみに、エーレンもエクスマリアと合わせた、軍服風のアイドル衣装だ。メインカラーこそ黒だが、目を引くような装飾が、きらびやかさを演出している。
「それ以上は、よくないだろう? しゅぺちゃん?」
 反論するようにしゅぺちゃんがくるくると飛んでいる。「あはは♪」とその様子に楽しげに笑うセララは、今はいつも通りの魔法少女服を着ている。これはトレードマークともいえることにも所以するが、歌唱中に色々と仕掛けをしたいから、らしい。
「うんうん、でも皆にあってるよね!」
 そういうセララの言う通り、皆は様々な衣装を着ている。例えばレイリーなどは、かなりきらびやかなアイドル衣装だ。白色をベースとしたフリルいっぱいのそれは、ミーナと対になるような、そんな衣装だ。二人はユニットを組んでの登場であるため、このような、おそろいの衣装ということになる。
「ふふ、ありがとう」
 レイリーが笑う。
「どうかな、ミーナ?」
「……何度も言ったぞ、にあってる、と」
 気恥ずかし気に視線を逸らすミーナに、レイリーは嬉しそうに笑ってみせた。
「ふふ、ミーナも似合ってるわ。なんだか、こうやってお揃いで歌うのもうれしいわね」
「演者も楽しまなければならないからね!」
 と、いささかテンションの高い卮濘がそういう。ちなみに卮濘は、赤を基調としたブラトップとショートパンツ、軽い羽織をかけて、ブーツを履いている。ストリートパフォーマンスといったデザインのそれは、興縁と同系統の衣装といえる。
「せっかくだから心行くまで楽しんでいこうぜ、の精神だ!
 それに、わたしたちが緊張してしょぼくれていては、お客さんたちを元気づけることなんてできないからね!」
「そうだね。お客さんたちのためにも、私たちも本気で楽しまなきゃ!」
 彼方がうんうんとうなづく。
「なぜなら私たちはアイドルだから!」
「う、うむ! アイドルじゃからな!」
 なんとなく嬉しそうに、クレマァダがうんうんとうなった。
「なればこそ、人の心に光をもたらさなければならん!
 さぁて、そろそろ我らの出番じゃな。準備はよいか?」
「うん。飛び入りみたいな形だけど、僕たちも頑張るよ」
 ヨゾラが穏やかな笑顔でいう。その隣にはゴシックドレス姿の祝音の姿もある。
「う、うん……頑張るけれど、どうしてこのカッコなのかな……?」
 小首をかしげる祝音。似合うからよいではないか。
「それじゃあ、皆! がんばりましょう!」
 レイリーがそういうのへ、皆がうなづいた。果たして舞台の熱気が最高潮に達する中、イレギュラーズたちの出番の時が来たのである――。

●紅と白の歌
「というわけで! 会場のみんなも、ラジオの前のみんなも、いろんな歌を楽しんでくれてる~!?」
 司会を務める興縁の言葉に、会場中から拍手が沸いた。きっと、電波の向こうで、懸命に冬を耐える人々にも、何らかの心の支えになっているはずだろう。極限の状況下において、人が求めるのは『当たり前であったこと』だ。日常、と言い換えてもいい。その日常を、『世界はまだ壊れていないのだ』と教えてくれるその催しは、きっと多くの人の心の支えになるはずだ。
 そんな『好い感触』を覚えながら、興縁は次なる『アイドル』を紹介する――。
「ここからは、ウチやなくて、MCもそれぞれの歌手のみんなにバトンタッチやで! まずは、紅組から――」
 ぱぁん、と華やかに小さな花火が火花を咲かせた。同時に、ぴょんと、飛び込んできたのは、
「魔法騎士セララ参上! 今日は皆に楽しい歌をお届けだよ!」
 両手をひらひらとふってみせる、セララだ。
「冷たい雪 寒い夜。そんなの歌って吹き飛ばそう♪」
 ポップなミュージックとともに、歌い始めるセララ。花火がばん、と再び鳴り響き、一瞬の閃光ののちに、セララは次の衣装へと着替えている。学生服風のそれで、ウインク一つ。セララの衣装は、タイミングごとに魔法の様に切り替わっていく。歌のリズムに合わせて、飛び跳ねるように踊るセララの姿は、観客たちに『心も弾むような』楽しさを、確かに与えていた。
「素敵な曲に 気持ちを込めて 皆に声を届けよう♪」
 つらい時だからこそ、楽しい気持ちを忘れないでほしい。そんな風な、セララの想い。それを歌とダンスにのせて、ラジオに聞いているあなたにも届くようにと、歌い、踊る――。
「心ぽかぽか 体ウキウキ 楽しく歌えば気分は太陽♪」
 ぱぁん、と飛び跳ねると、セララの衣装が着物のそれに代わる。最後はしゃなり、と一礼。もうすぐ開ける新年をみんなと迎えるための。
「ありがと! さぁ、次は白組! ミーナとレイリーだよ!」
 セララがそう告げると同時に、二人が飛び出した。演出のライトがミーナとレイリーにそそがれ、そのすきにセララが舞台袖へと手を振りながら去っていく。
「ヴァイス☆ドラッヘ!」
「ぷりてぃ★みーな」
「只今参上!」
「今夜だけのステージ。目に焼き付けろよ?」
 登場する二人に、大きな拍手がそそがれる。すでに流れていた音楽に合わせて、二人はマイクを手に取り、息を吸い込んだ。
「暗い部屋 ボクは蹲り
 いつまでも 何もせず
 今日の終わりを耐えていた」
「視界に入る 小さな手
 ボクを掴んで引き上げた
 キミが明るい外へと連れ出した」
 背中合わせに、スローテンポの歌詞を紡ぐ二人。その曲は徐々にテンポを上げ、スピーディなメロディを紡ぎだす。
 それは、二人の紡ぐ絆の歌か。ゆっくりと踏み出した、二人の絆。それは徐々に速度を上げて、今まさに最高速を二人で走り出す! 一度目のメロディを歌い上げ、二人は観客たちの熱狂を受け取る様に、手をつなぎ、踊りをつなぐ。二度目のメロディを歌いながら、あなたたちともに走ろうと、疾走するように歌い続ける。
『キミを救う その影で
 諦めも 後悔も 全て洗い流して
 キミの笑顔を見る為ならば
 神様も 運命も 全て吹き飛ばして
 輝く未来を届けよう』
「皆、聞いてくれて感謝だぜ!」
 歌は終わり、ミーナがそう声を上げて手を振る。
「聞いてくれてありがとう! 私たちがいる限り、白組は負けないわ!
 さぁ、私たちに勝てるかしら? 紅組の――」
「エクスマリア&エーレンだ!」
 レイリー、そしてミーナの言葉に、続いて飛び出したのはエクスマリアとエーレンだ。
「聞いてくれ、マリアたちの歌を」
「そして、俺たちの想いを!」
 激しく鳴り響くメロディは、しかし激しいだけではない。その速度は、聞くものの背中を押し、その手を取り、ともに行こうと語り掛ける応援歌に違いない。
「絶氷に向かう その手に何もなくても」
「胸に宿る炎だけ抱いて その熱で」
『でも一人じゃない 傍に見れば 君がいるはずさ』
 二人は歌いながら、手を伸ばし、つないだ。あなたの隣にも仲間がいる、と。そして仲間とともにあるならば、強く、強くなれると。鉄帝の民は、そんな強さを持っているのだ。だから負けないでほしい――そう応援する、歌。
「君の持つ光は きっと誰にも負けない
 誰よりも強くなれ 羽ばたいていける」
 エクスマリアが、子供たちに告げる。君たちの持つ『可能性』は、きっとどんなものにも負けないと。
「力などないと 嘆くことはない
 誰もが誰かの力になっているから 帰る場所 あなたが支えて」
 エーレンは、戦えぬ誰かのために、それを歌う。力だけではない。日常を支えることだって、立派な戦いなのだから。
 だから負けないで、と――歌う!
『ともに駆け抜ける この嵐の中』
 エーレンが、エクスマリアを抱き上げた――そのまま跳躍! 回転するように身をひねり、そのエーレンの手の中から、エクスマリアが跳んだ。そのまま手を伸ばす――まるで月に手を伸ばすように。二人の紡ぐ、高何度のパフォーマンス。二人が着地すると同時に、音楽が鳴りやんだ。万雷の拍手が、二人を迎えてくれた。
「続いては白組」
「飛び入りで来てくれた、ヨゾラだ」
 少しだけ、落ち着いた照明が舞台を照らす。青のそれは、まさに夜空のようであり、小さく照らす照明は、その星空にも思えた。
 竪琴を爪弾き、ヨゾラが歌う。
「願いを込めて 降り注ぐ
 港に降りたる 獅子座(レオニズ)の――」
 それは、流星群降る星空のような、涼やかな煌めきと願いの歌。
 静かな、穏やかな曲に、観客たちもどこか穏やかな気持ちを抱く。ヨゾラに続くのは、紅組。至東だ。
「はいはい! 至東ちゃんですよ!」
 ドレス風の衣装に身を包み、至東がマイクを手にする。
「新曲「flew flown」です♡」
 同時に鳴り響くのは、バラードか。どこか落ち着いた、少しだけ悲し気なメロディは、さよならを告げる歌か。
「Deep snow larks(真冬の告天子)
 Fly higher, higher(高く高く)
 (I) Want to hear you(その声を響かせて)
 Weep softly, softly(優しく優しく)」
 歌い上げる。派手なパフォーマンスはない。ただ、歌う。心と思いをのせて。その想いの限り。
「Only just one heart(その航跡を追えるのは)
 Could trail those lines(この心ひとつ)
 Only just one heart(飛び立ち、飛び去ったあなたに)
 Could be side you(添い遂げる心ひとつ)

 flew, flown……」
 求めるように、手を伸ばした。照明はゆっくりと降り注ぐ雪の様に、舞台を照らした。
「さよならは雪のように
 土に積もっていくでしょう
 春を待つ間に消えるからと
 言い訳をうそぶいて

 Bone chills swallowed echo(反響を飲み込んだ寒気が)
 Never go through shutted collar(閉めた襟に入り込まないように)
 And never cut every keys you locked (閉じた鍵を壊さないように)
 Our scarves will work for that(マフラーをかけておきましょう)」
 祈る様に、その手を胸に――至東を照らしていた、ゆっくりと消えていく。
 ――続く白組は、こちらも飛び込み参加の祝音だ。鳴り響くのは、とても可愛らしいポップなBGM。例えるならば、ころころと転がる子猫のよう。
「猫さんみゃあみゃあ、可愛いみゃあみゃあ
 小さなお手手でみゃあみゃあみゃあ♪」
 歌う祝音も、まるで子猫の様に歌い、その手や体を揺らす。歌を聴いた子供たちも、きっとにゃあにゃあと喜んでいたに違いあるまい。
 さて、再び紅組の出番だ。今度の歌手は、まさに正統派アイドル、カナタ・オーシャンルビーと海紅玉 彼方だ!
「やっほー! 希望が浜からこんばんわ! カナタ・オーシャンルビーだよ!」
 わぁ、と歓声と拍手が上がる。
「今日のライブはとってもスペシャル! 私と私、二人分の歌を、とどけますっ!」
 そういうと同時に、カナタの隣に、練達の機械によって再現された『3D映像』が現れた。3DCGを投影し、舞台の上に立っているように見せる技術だ。
 歌い上げるのは、二人のカナタ。私と私。同じだけど、違う二人。
 彼方は、静かに、穏やかに。
 カナタは、元気いっぱいに。
 歌い、踊る。二人のカナタ。
 パフォーマンスも対照的だ。
 いうなれば静と動。
 対となるような、二人の歌。二人の舞。
 幻想的でもあるし、リアルでもある。
 夢のような、そうでないような、夢幻のカナタ。
 二人が歌う。同じ声、でも違う声、重なる――奇跡の様に。
 歌い上げれば、カナタは、彼方は、にっこりと笑う。
「ありがとうございました」
「どうだった、私たちの歌!」
 最高だった、という声が上がる。ぱちぱちと、たくさんの拍手が飛び交う。ああ、これでそアイドルだ。そう思う。
「さて、二人で歌うのは、私たちだけじゃないみたい。次はこの人! クレマァダさん!」
 そういうと同時に、世界が青に染まる。薄い青。それは海の青。深海の青。そういったもの――。
「多くは語らん。聞いてほしい。波にのせて、どうか、どうか、遠くまで――」
 青く、透明なドレス。海を思わせるそれ。クレマァダがゆっくりと、瞳を閉じた。
「優しい夢を みるの
 ヒカリは ゆらり ゆれる

 Mi sinkas al la fundo de la maro
 Mi nur povas esti ĉi tie

 零れ堕ちた 言葉は
 消え逝く

 崩れさり 美しく舞う雪
 いずれすべては喪われる運命なら
 虚ろな心 抱いて謡うの
 いつかヒトツになれるまで」
 おだやかに。流れるように、歌う。さすらう。波間の様に。
『届かぬ夢を 想う
 水面に 指がふれる

 Mi atingas la bluan ĉielon
 Mia mondo estis perdita

 不知火に手を伸ばし
 零れる

 朽ちて 色褪せてゆく世界で
 そこに残されている意味を搔き集めて
 希望は 蠍の火
 またフタリで』
 響く。声。違う声。どこからから聞こえる声。
 幻視か。誰かが、そこにいるような気がした。
『いつかフタリになれるまで
 今、ヒトツに

 またあえるよ
 ここで
 きみと』
 二人が歌う。そこにいたのだ。もう一人。きっと間違いなく――。
 深海の歌。遥か空高いアーカーシュの地に、間違いなく今ここに、海があった。
「このメロディは、昔姉と一緒に作ったものが原型となっておる。
 ……どうか、覚えて帰ってほしい。
 カタラァナという名と共に、この歌を。
 さて、次が最後じゃな。派手に頼むぞ、卮濘!」
 ばぁん、と花火が上がった。先ほどまでの静寂を切り裂くように、撃ちあがる、光!
「わ た し だ っ ! いいかお前ら! ここから最後まで部っとばす! ついてこい!」
 わぁ、と拍手と歓声が沸き上がる。ヒートアップ!
「さぁて、私の番。やっちゃう? やっちゃおっか。スイッチオン、やってやるよ」
 ばぐぉん、と強烈な煙幕が巻き上がる! その煙幕を飛び越えて、衣装をチェンジした卮濘が叫ぶ!
「私の姿に歌踊り、見てって脳に焼き付けな!」
 鳴り響くのは、強烈な速度のミュージック。振り落とされるな、ついてこい。この速度に!
「さぁ、始まりだぜ。私の空想妄想夢想劇を、ここに──
 ってなシリアスはここまでにして、さぁさぁ『クラッキングタイム』の始まりだっ!
 限りある時に果てしない欲 どうにかこうにか抑えようって無駄無駄」
 頭を撃ち抜くようなポーズで笑いかける卮濘。その速度、爆音、ついてこれる奴だけついてこい。いいや、誰も振り落としはしない。無理やりにでも引っ張ってやるよ!
「イける所まで イっちまって 全部吐き出したほうが 楽だってーの!
 曖昧な自己定義 空虚な全体主義 そんなの生きてて楽しいか? 今はそんなの全部クラッキングしっちゃえば──
 ──後に残った"オマエ"が楽しめるんだぜ?」
 歌が終わる。BGMは鳴り響く。続く。止まらない。
「これで終わりか? 違うよなぁ! じゃあ、いうべき言葉があるよなぁ!」
 卮濘が叫ぶ。
「呼べ、呼べ、叫べ! まだまだ終わらせないってな! アンコール、だ! 叫べ!」
『アンコール!』
「声が小さい!」
『アンコール!』
「もっともっと!」
『アンコール!』
「いいぞもう一回だ!」
『アンコール!』
「だそうだ、出てこいフレンズ!」
 卮濘の言葉に、舞台袖からイレギュラーズたちが飛び出してくる! 歓声が割れんばかりに響いた。
「アンコール曲、行くわよ!」
 レイリーが叫んだ。皆がうなづく。息を吸い込む。BGMが変わる。
 もう一度、歌を紡ぐ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 きっと、歌の力は、皆を勇気づけたはずです。

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