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シナリオ詳細

<フィクトゥスの聖餐>Inferior

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●命からがら
 再生し、破壊され、再生し、切り飛ばされ。
 肉の塊と化したその膠窈肉腫(セバストス)は、本来の体重より五割増し程度の容積のなかに沈んでいた。
 長らくイレギュラーズを嘲弄し、裏で聖銃士を操り、汎ゆる悪徳を仕込んできた悪意の塊たる女はしかし、その停滞に比してイレギュラーズが急激に力をつけつつあったことを見逃していた。
 故に敗北した。絶対的強者で有り続けることなど無理だというのに、欲得と自尊心に溺れたのだ。
 だがその分、彼女は、否、『それ』はただただしぶとかった。残された肉塊の山は彼女の本体を覆い隠し、逃げ去る猶予を与えたのだ。
「…………っ?」
「どうしたよ、俺様はもう戻るぜ。疲れてんだからよ」
 何事かを察したタイム(p3p007854)であったが、その確証を得られぬままグドルフ・ボイデル(p3p000694)の問いかけに首を振った。勘違いだろう。たしかに自分達は勝ったんだ。今は、聖銃士達の命が最優先だ。
 背筋に得も知れぬ寒気を覚えつつ、タイムは踵を返す。それが、勘違いでさえあればよかったのに。
 生きなければ。
 生き延びねば。
 マザー・エクィルとよばれた存在にはもう、生存本能を除く意思が残されていなかった。
 それはもう、人の意思を差配する膠窈肉腫としての本質を持っていなかった。
 それが本能の赴くままに、強度の高い命に張り付いたそれは脳を乗っ取り、そして拒絶された。

●死の気だらだら
 終焉獣(ラグナヴァイス)。
 アドラステイアの神たるファルマコンの正体は、世界崩壊を望むあらたな脅威の先触れであった。
 アドラステイア上層攻略作戦にて、ファルマコンの本体、そして渓底に潜む分体の存在も明らかとなった。
 つまり、もう偽神の種は割れたのだ。明かされた手品はもう通用しない。寒波荒れ狂う中で、神殺しは果たされるべきなのだ。
「……つまりタイムさんは、彼女がまだ死んでないって確信があるんだよね?」
 マルク・シリング(p3p001309)はアドラステイアから帰還したタイムらからマザー・エクィルの末路と、僅かな可能性を聞いた。彼の推察は全くの見当外れではなかった、という可能性がある。
 肉腫は感染性の悪意だ。その上級種たる膠窈がただ殺されるままでいるとは思えない。なにしろ彼等は、聖獣という飛び道具すら控えているのだ。マザー、ファーザー達ではなく、それを己の肉体にする可能性は十分に考えられた。
「この感覚が本当なら、そう」
 そして今から再突入する上層部に、よりおぞましい姿で待っているという直感がある。
「そして多分、わたしじゃ殺せない。グドルフさんがいないと」
「俺様かぁ? 別に構わねえが、見つけらんねえぞ」
「うん。そこは、役割分担だと思う」
 見つけることしか出来ないが、逃すことはないタイム。
 本体を探ることはできないが、その一撃が死への一本道を拓くグドルフ。
 マザー・エクィルと呼ばれた、もう本来の形を忘れたそれはきっと、その日ようやく死を迎えるのだ。

GMコメント

 Inferior[形]:劣後する

●成功条件
・肉腫+聖獣『インフェリオール』撃破
・複製肉腫『CoI』撃破
 └不殺撃破が望ましい
・(努力目標)マザー・エクィル本体の撃破

●インフェリオール
 マザー・エクィルだった肉腫の一部が出陣すべく控えていた聖獣にとりつき、その自我と能力を奪ったもの。
 本来の実力と目的意識を大きく失っているものの、聖獣の能力との兼ね合いにより『純正肉腫程度には』強力な個体です。
 素体となった聖獣は天使・人型の性質を持っていましたが、拒絶反応もあってかゾンビのように常に肉が腐り落ち、再生するを繰り返しています。
・常時【再生(特大)】【ダメージ(中)】が発生している状態です。ダメージを再生が大幅に上回っているため、放置していても死にません。
・ダメージを受けた際(BSによるスリップダメージ含む)、至範に『腐った奇跡(無・毒系列・致命)』をばら撒きます。
 『CoI』が継続2ターン以上『腐った奇跡』を受ける範囲にいた場合、複製肉腫として不可逆となり救済不可となります。
・上記の通り腐っていくため防技は世辞にも高くはありません。代わりにHP、攻撃力などが高く設定されています。EXAもそれなりなのでたまに複数回行動します。
・暴食本能(P):すべての攻撃に【H/A回復(中)】
・多重魔法陣(P):AP消費を上乗せすることで『攻撃力の上乗せ(最大値あり)』が可能
・汚れた聖光(神超範):【万能】【痺れ系列】【不吉系列】【呪殺】
・血塗れの聖斧(物理通常攻撃・レンジ1):【必殺】
 ほか、自分に対して使えないタイプの治癒スキルなども。
・HPが3割を下回った場合、本体を切り離すことがあります。称号スキル『≠Hunt』が活性化されていない場合発見できなくなり、『インフェリオール』は撃破できますが本体は生き延びます。
・称号スキル『≠Find』を活性化したメンバーが攻撃し続けることで、上記の行動は阻害できます(攻撃のヒットレートは関係なく、確定阻害)。
※現密にはセバストスではなくなった為、「原罪の呼び声」は低確率どころか確実に発生しなくなりました。

●CoI×15
 チルドレン・オブ・インフェリオール。
 インフェリオールの腐った肉を浴びたことで間接的に肉腫に感染し、これすら『聖獣様の奇跡』と認識しているため、非常に従順に働きます。
・初期位置はインフェリオールからレンジ1離れています。戦闘開始後「インフェリオールに近づく→即全員感染」という最悪の事態はないです。優先事項は『イレギュラーズの排除>インフェリオールの指示>自分の命』です。
・普通の聖銃士よりかなり強く、プリンシバル相応の実力まで高まっています。
・武器は全員銃剣を所持していますが、毒を塗ったナイフや煙幕弾など、個々人でサブウェポンを有しています。
・能力値にバラつきはありますが、堅牢なプレートメイルは共通のため防技はそこそこ。
・連携して動き、単独行動は避ける傾向にあります。

●戦場
 激しい吹雪が吹き荒れており、命中に下方修正がかかります。
 この吹雪が『腐った奇跡』の落下範囲を広げるだとか、そういった判定はありませんのでご安心下さい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <フィクトゥスの聖餐>InferiorLv:40以上完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年01月19日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
死神の足音

リプレイ


 崩れ落ちる肉体を有り余る再生力で補い、『インフェリオール』は宙を漂っていた。周囲に並ぶ少年少女は肉体の一部に肉腫を宿し、拍動とともに蠢くそれと浮き上がった血管をなぞり、悦に浸っている。
「――彼女だわ。そんな姿になっても存在の執着はまだ残っているのね」
「……やれやれ。おれさまの目は節穴だったってこったな」
 ついこの間倒したというのに、『この手を貴女に』タイム(p3p007854)の脳裏につんざくような悲鳴のようなものが響く。その言葉には真実味があり、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)を始めとするイレギュラーズの、こと『マザー・エクィル』という存在を目の当たりにした者達はその生き汚さに吐き気をもよおした。
「インフェリオール。これが、マザー・エクィルだというのか」
「貴様……仕留めたと思っていれば、まだ生きていたか!」
 あの時、子供達を操らせ、自らは前に出ることを拒んだその醜さを『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)は覚えている。だからこそ、今の醜さにも得心がいくというものだ。だが、久方ぶりにその存在と対峙した『浮遊島の大使』マルク・シリング(p3p001309)はそのあまりの変貌に戸惑いを隠せない。しかし、彼にも応報の権利は与えられている。奪われてきた命や、魔種となった少女について。
「マザーへの引導を渡すのはブランシュの役目じゃないので、露払いと行きましょうか。主役は任せましたよ」
「……ローレットの資料で見たのと随分姿が違うけど、タイムさんの言葉通りなら『いる』んだね。お友達のタイムさんが困ってるとあれば手伝わない手はないよね……!」
 『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)や『オリーブのしずく』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は、この戦いで真に応報すべき者達を知っている。ここまで築き上げた者達の努力を知っている。だから、その血路を拓くために己が為すべきことを理解していた。役割を為さねばと考えるより、感覚が理解している。
「あの御方の敵……敵ィ……!!」
「許さない、逃さないィ!」
「神を騙った者と、信仰を間違えた者たちの果てがこれとは、なんともやるせないですね?」
「しっかり私が……私達が、ケリつけてやるよ」
 肉腫を得た者達、CoIと呼称されるそれらは間違いなく正気を失っていた。本質的に母(マザー)となり、彼等の上に立つこと……成れの果てとしては十分すぎた。『高速機動の戦乙女』ウルリカ(p3p007777)と『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)は哀れにこそ思えど、その末路は妥当だと感じていた。だから、これから行うことは慈悲ではなく敵意により成し遂げられよう。
「あなたにも分かるわよね、わたしの気配」
 タイムはフラーゴラに目配せして、ゆっくりと一歩前に出た。意味の通じない鳴動を響かせ続けたその異形は、タイムの姿を確認するなり悲鳴のような声を上げ始めた。劇的な殺意なれど、それを的確に当てられるかといえば、甚だ疑問だ。
「タイムさんは……私が守るからね……!」
 彼女に割って入る形で動いたフラーゴラは、盾を突き出し振るわれた斧を受け流す。腕に返ってくる反動の強さに眉を寄せつつも、十分受け止めきれると判断した。問題があるなら、正気に戻った時だ。
「よし、二人が抑えてくれてる間に全力で無力化させる。この子達罪はないけど、インフェリオールと心中させる訳にはいかない」
「へッ、死にたがってるなら野垂れ死にさせてやりゃあいいのによ!」
 マルクとグドルフは逸る気持ちを抑え、CoIの無力化を優先する。他の面々も、タイムとフラーゴラへ一刻も早く加勢するため、そして目の前の子等を正気に戻すべく得物を手に向かう。
 虚ろな目をしながらもその実力は不釣り合いに高い。肉体を破壊する勢いで実力以上の力を発揮しているのだから、無理からぬ話であるが……。


「あなた達の敵はこっちですよ。さあさあ、殺しに来るですよ!」
 ブランシュはフラーゴラとの連携で先手をとった一同の中でも、真っ先にCoI達の陣営に飛び込んでいった。ブランシュの動きを視線で追った彼等は、次の瞬間、自分の裡に強烈な敵意が湧き上がることを自覚する。思考を誘導されたとは知らぬまま。
必然、かなりの数の銃剣がブランシュに向けられるが、それでもなお遅い。
「大きく扇状に布陣している、ブランシュの挑発に反応してない奴もいるぞ!」
「インフェリオールに近付けさせなければどうにでもなる! 今は引き離した子を優先して倒そう!」
 ブランシュの踏み込みは十分だったが、敵の布陣が一枚上手だった。全員を纏められれば最上だろうが、そんなことを言う余裕などない。
 沙耶の言葉に焦りこそあれ、その動きは的確に間合いに入った子らを小妖精で包囲する。その動きに目を奪われたCoI達は、続くマルクの神気閃光を避ける暇など、あろうはずもなし。
「寒ィだろ。ちったあ暖めてやるよ!」
「マザー、ノ、敵……!」
 テンポを乱され、傷を増やすCoI達だが、それでも根本的にはインフェリオールの支配下にあるらしい。感情を揺さぶられなかった者、その一体はグドルフに照準する。掠らせただけ優秀極まりないが、その照準器の先ではグドルフが押し付けた熱にのたうち回る仲間がいた。あまりに無力な状況は、歯噛みすることすら許されない。……何故なら彼に集中しすぎたあまり、ウルリカの攻撃をまともに食らってしまったからだ。
「これしきでは倒れませんか。やはり近くの相手から一気に倒さねば」
「ここまでやられて死なないのが逆に不気味だけど……お前は手つかずだったよな。これで死んでくれるなよ!」
 ウルリカは仕留め損ねたことに悔いるでもなく、動きの鈍っていない個体へと追撃する。ミーナはといえば、近付いてきた中でいまだ傷の浅い者の血管を的確に狙い、大量の出血を促す。まともな生体なら瞬く間に意識を失おうが、規制した肉腫による補充によるものか、持ち堪える異常性を見せた。
「…………」
「アナタの相手はワタシたち……! 行かせないよ!」 
「憎いでしょう? 殺したいでしょう? こっちよ、いらっしゃい」
 CoIとて肉腫、10秒やそこらで全滅させられる肉体ではない。だが、イレギュラーズの猛攻は彼等の継戦能力すら疑わしい勢いを見せている。当然、インフェリオールにもその状況は見えていた。見えていても、進めない。
 目の前には自分が『こう』なったきっかけ、ケチのつきはじめであった耳長の旅人がいる。それを守るべく前に出る獣種がいる。これらを排除するのが何より先だと理解していた。
 なにしろイレギュラーズ陣営は攻勢に集中し、治療に回る気配がない。ならばこの二人を打ち崩せば勝機はその手に近付くと、ソレは喜色を浮かべていた。
 その不気味な笑み(らしき腐肉の歪み)を見たタイムの心中、心底での嫌悪感は如何ばかりか。仲間がいるという安心と、倒さねばという信頼と、『彼女』を見逃さぬという使命感がなければ、立っていることすら疑わしい。優しき少女の心根は、今この戦いのために調整(チューン)されているといって過言ではないだろう。
 インフェリオールの腐肉を払いながら、猛攻を抑えるなど、見目麗しい少女二人に課すには重い試練だ。
 だが、彼女らは守られるべきではない。戦うべき理由と実力があればこその最善であったのだ。
 だからだろう。CoIを打ち払ったグドルフの目が、ぎらぎらとした敵意を隠していなかったのは。信頼があればこそ、時来たらば絶対に倒すという使命感を背負っていたのだ。


「うーん。プリンシバルとしては強いんでしょうけど、今のブランシュにあなた達の攻撃が当たりますか?」
「ギィィィ……!」
 ブランシュは四方八方から向けられる殺意を華麗に躱し、仲間の攻勢へと繋ぐ。『アレ』から引き剥がすために。『アレ』に殺させぬために。挑発し、避け続け、己が倒し難き敵、倒さねば信じるべきマザーの驚異となるのだと思わせるように。
「死なせない。一人もだ。でも、容赦はできない。君達が正しく罪を償うために、僕はなんとしても君達を止めるよ」
「おめえはマジでお優しいぜ! それに乗っかるおれさまも、大概なんだがな!」
 マルクは神気閃光を片っ端から叩き込み、CoIへの傷を着実に増やしていく。常の彼からは考えられぬほど攻勢に偏った戦い方だ。状況が許すなら攻めに転じるのだろうが、それにしても荒々しい。殺さぬという決意が乗っている分『甘い』のだろうが、役目を果たしている強靭さが窺える。
「インフェリオール、貴様を絶対逃しはしない! この子達も、貴様の思い通りにはさせない!」
「ここで死ぬとただの餌で終わる……そんなのが許されてたまるかよ!」
 天使とは碌でもないものだ、どんな姿であっても。ミーナは常々そう嘯く。だが、死ぬ運命にある子らを想い、仲間の戦いぶりに倣い、的確に死を免れる一撃で肉腫を剥ぎ取っていくその姿の何処に、天使の醜さが見えるだろうか。
 沙耶はCoIの行動を大きく制限しつつ、追撃に向かう彼女らの姿を見る。苛烈でありながら、誰一人見捨てるということをしない。殺意と狂気に溺れ、肉片に触れれば不可逆になるそれを水際で引き上げる姿に、完全なる慈悲の形を見た。
「子どもは間違えるものです。おまけに悪い大人たちに騙されていたのですから、もう充分でしょう?」
 肉腫の潰える姿をみやったウルリカは、インフェリオールに向き直る。
「制圧完了、これよりインフェリオールを殲滅します……制限、解除」
「では、ブランシュも全力で臨みましょう!」
 ブランシュとウルリカ、人の手によって編み出されたものが人の狂気の果てから生まれたものを討つべく照準する。『その瞬間』を見逃すまいと得物を握るグドルフの背に、マルクの手が触れた。
「グドルフさん、怪我が」
「あぁ? こんなのツバつけときゃ治るって」
「いや、今じゃなきゃ駄目なんだ。マザー・エクィルを完全に殺す為にも」
 僅かな傷かもしれない。だが、グドルフの『全力』に水を差すかもしれない。マルクはそれが我慢ならなかった。彼には、殺してもらわなければと。
「仲間を信じてる……! 絶対出来るって……!」
(こんな悍ましい相手に立ち向かえるのは、みんながいるからよ……!)
 全力の治癒、渾身の防御。攻撃を受けても霞のように消え、しかし腐肉を垂れ流すインフェリオールの姿と猛攻は、全力の護りを固めてもなお激しかった。気を抜けば倒れるほどの猛攻に晒され、それでも耐えきったのは仲間が控えていたからこそだ。
「すまない、耐えてくれたこと感謝する! ここからは私も相手する!」
 インフェリオールの有り余る悪運を剥ぎ取る如くに異常を齎す沙耶の手管が。
「かたっぱしから治るなら、まずは動きを鈍らせればいいのですよ」
「治る暇など与えません」
 だからだろう。ブランシュにより動きを封じられたインフェリオールに降り注ぐ、ウルリカの後先考えぬ猛攻が。
「どれだけ再生しようが……それを上回ればいいだけの話だ!」
「二人共、ありがとう。もう、逃しはしない。最大出力だ」
 ミーナとマルクによって放たれた、苛烈なる一撃が。短時間で、見る間にインフェリオールの腐肉を剥がしていく。まるでその肉体のなかに真実が隠れている、それを見抜くかのように。
「そろそろ、あなたの番」
 タイムの言葉に応じるように。
「あんだけ調子ブッコいてイキリ散らかした挙げ句、山賊なんぞに負けて恥ずかしくねえのかい。オマケに、キモいバケモンになってまで復讐に来るとはよ」
 得物の様に、必達の死を担いでグドルフ・ボイデルが現れる。


 腐肉のなかに隠れていた、あるいは潜んでいたその顔が、イレギュラーズの猛攻で顕になった。
 ……誰あろうマザー・エクィルの、しかしだいぶ『幼い』顔だ。
 それを見ても驚くほどに、タイムは心が動かなかった。治癒と、護りと、使命感。それを成し遂げる機械のように、その成れの果てをにらみつける。逃すまいと。
 その姿を目の当たりにした沙耶は、今しかない、と妖精をけしかけた。いやだいやだと顔を振るそれの眼前に、グドルフが歩み出た。
「結局、お前もそこら辺の雑魚と"同じ"かよ。蓋を開けてみりゃ、こんなもんだ。セバストスでも──ザントマンの方が、てめえの数百倍強かったぜえ!!」
 それが核なのかそうでないのか、わからない。
 だが、其れを砕けるという直感はある。
 それが果たすべき相手だという本能がある。
 然らば、グドルフの斧が敵を違えることはない。

 腐肉が爆ぜ、イレギュラーズを穢す。
 だが、マルクとタイムの献身によって、運命をすり減らしつつも戦闘不能に陥る者は誰一人としていなかった。
 悪夢のような奇跡、奇跡のような悪夢は、この日を以て終わりを告げた。

成否

成功

MVP

タイム(p3p007854)
女の子は強いから

状態異常

なし

あとがき

 大変お疲れ様でした。
 マザー・エクィルとここまで長い付き合いになるとは私も思っておらず、本当に、マジでびっくりしています。
 愛されて、或いは憎まれてここまで来たのを喜ばしく思っております。
 また、悪くも愛しくも思われる者を生み出せたらと思っています。

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