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シナリオ詳細

<咬首六天>屍者と共に骸骨は笑う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「いやぁ……参っちまったねぇ……こんな所で兵隊さんと出会っちまうなんて……ククク……」
 兵士達に一斉に武器を突き付けられたその男は、壁に背を付けたままゆっくりと手を挙げ、不気味に笑う。
 ここは鉄帝地下鉄道。狭い通路が延々と繋がるこの場所で、瘦せこけたスキンヘッドの男はザーバ派に属する兵士達に壁際に追い込まれていた。
「貴様は……囚人サリクだな。医師という肩書を持ちながら、何人もの市民を毒で殺害した連続殺人犯。そうだな?」
「おやおや……アタシみたいなもんを知ってるので? こりゃあ驚いた……誤解してる様ですが、あれは事故ですよ事故……うっかり薬の量を間違えちまいまして……ククク……」
「貴様の主張などどうでもいい……どうやら仲間の囚人とははぐれた様だな。捕縛させて貰う。抵抗すればこの場で処断する」
「ククク……アタシみたいな、骨と皮だけの骸骨みたいな野郎が兵隊さんになんか勝てませんよ……どうぞ、縄でも何でも使って捕まえてくださいや……」
「……毒を使っても無駄だぞ、この人数相手に勝てる訳もない」
「えぇえぇ勿論ですとも……」
 抵抗の素振りも見せない囚人サリク。そして兵士の1人がゆっくりと近づき、その身体に縄をかけようと手を伸ばし――。
「プップッ」
 すると不意にサリクが口から針を飛ばした。針は手を伸ばした兵士の両目に精確に突き刺さる。
「ウ……アアアアアア!!
 兵士が苦悶の叫びを上げる。それは針を刺された痛みだけではない。針に仕込まれた猛毒が一瞬にして全身に回り、全身が裂かれる様な痛みに襲われたからだ。
「貴様ァアア!!」
 兵士達が怒声を挙げながら一斉に武器を振り上げる。
「おやおや……アタシなんぞに構ってていいので? ほら、アタシと仲の良いお友達が後ろに……」
「戯言を、グアッ!!」
 サリクがそう言った直後、兵士達の背に激痛が走る。彼らの背後に立っていたアンデッドの天衝種――ストリガー達がその燃え盛る爪を振り下ろしたからだ。
「いつの間に……!!」
「ヘッヘヘヘ……無駄話はいけませんぜ兵士さん達……」
 そのつい先ほどまで、サリクを追い詰めていた兵士達。しかし気づかぬ内に、無数のアンデッド達に背後を取られてしまっていたのだ。
「グァアアアアアアア!!」
 アンデッドモンスターの天衝種の別種、プレーグメイデン達が怨念の籠った怒鳴り声を上げ、どす黒い衝撃波を次々と放つ。巻き込まれた兵士達が毒に蝕まれ、凍り付き、果ては精神まで狂わされていく。
「全く……ほんとにアタシは不幸だ……こんな所で兵隊さんと出会っちまうなんて……ほんとはここに来そうなイレギュラーズ達を殺そうとしていたのに……ああなんという不幸……あとこりゃあおまけだ」
 更にサリクが懐から小さな瓶を放り投げると、割れた瓶から放たれた毒ガスが兵士達の動きを更に鈍らせた。
「おの……れ……囚人……サリク……!!」
「ククク……どうやらもう動けないようですね……大丈夫、アタシは医者ですから……皆さんまとめて治療してあげますよ……うっかりまた『事故』を起こさないように気を付けながらね……クク……ククク……!!」
 サリクの不気味な笑い声が、地下鉄道にこだましたという。


「どうも、イレギュラーズ。依頼が入ったよ。鉄帝の地下に広がっていた鉄帝地下鉄……は、流石に知ってるかな? あそこにはまだまだ色んな危険が蔓延っているみたいで……今回の依頼はそんな危険な存在の1つ。囚人サリクの対処をしてもらうよ」
『ガスマスクの情報屋』ジル・K・ガードナー(p3n000297)は、イレギュラーズ達に説明を始める。
「どうも、先日その地下鉄……あるいは地下道を探索していた兵士の一団がその囚人に襲われたみたいでね。戦闘時の混乱に紛れて1人だけ逃げられたみたいだけど……他は全員死んでしまったみたい」
 サリクはかつて医師という立場でありながら、その裏で多くの人物を毒で殺害した連続殺人犯でもある。
「よく分かんないけど、本人は唯の医療ミスだって言ってるみたいだけどね。絶対嘘だけど。狙われたのは女性や子供が中心。捕まえようとした兵士を殺した事もあったみたい。まあ外道だね。不健康な程に痩せすぎた身体を自分で骸骨だと普段から言ってたみたいだけど。そんな見た目に反してかなりの戦闘能力を持っているみたいだね。複数の毒や、毒を仕込んだナイフや針を使うらしいよ。しかも、奴は今複数の天衝種を従えている事も確認されてる」
 天衝種ストリガー、天衝種プレーグメイデン。どちらもアンデッドモンスターの天衝種であり、その両方が複数体確認されているらしい。
「何せ生存者が1人で、必死に逃げ帰ってきたような状況だったからね。多いのは間違いないけど、精確な数に関しては全然分からない……と、まあ説明はこんな所かな。地下道内部はかなり入り組んでいて、狭い。先に内部を徘徊してたサリクの方が地理的有利はあるだろうけど……まあキミ達ならなんとかなるよね。頑張って」

GMコメント

 のらむです。地下道に潜む囚人とアンデッド達を蹴散らしてきてください。

●成功条件
 囚人サリク、並びに天衝種達の撃退、あるいは討伐。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●戦場情報
 鉄帝地下鉄内部。細い通路が入り組むように張り巡らされている。暗く、寒く、ジメジメとしている。
 おおよそのサリクの位置は判明しており、サリク自身は隠れている訳でもないので、サリクの発見自体は容易。

●囚人サリク
 医者の立場で何人もの市民を毒殺した連続殺人鬼。
 毒を用いた距離を問わない単体、範囲の攻撃を持ち、『毒系列』の重いバッドステータスや、『麻痺系列』のバッドステータスを与えてくる。
 神秘攻撃力、回避のステータスに優れている。

●天衝種ストリガー×??
 生前に激しい怒りを抱いていたアンデッドモンスター。数は不明。
 燃えさかる爪を怒り任せに振るう。至~近距離の単体や列への攻撃を行い、『火炎』系のBSを伴う。

●天衝種プレーグメイデン×??
 生前に激しい怒りを抱いていたアンデッドモンスター。数は不明。
 毒や病、狂気をまき散らす。
 怒り任せの衝撃波のような神秘中~超距離攻撃を行う。単体と範囲があり、『毒』系、『凍結』系、『狂気』のBSを伴う。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
 
 以上です。よろしくお願いします。

  • <咬首六天>屍者と共に骸骨は笑う完了
  • GM名のらむ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ファニー(p3p010255)

リプレイ


 鉄帝地下道は、話に聞いていた通り暗く、寒く、狭い。そんな道を突き進みながら、『スケルトンの』ファニー(p3p010255)は敵を索敵していた。
「狭っ苦しい通路ばかりの割に、敵の数はかなり多いな。サリクの周りにも既にいるみたいだ。地形までは分からないが……やっぱり挟撃を完全に防ぐのは難しそうだぜ」
「成程……情報ありがとう、骸骨のコ。いつまでもここに居座られたら今後の活動に差し障る。数の多さも地形も。中々に厄介だけど、早々に排除させてもらうとしようか」
 ファニーにそう応えた『闇之雲』武器商人(p3p001107)もまた、その『魔眼』を使って索敵を行っていた。死霊の残滓、消えかけの精霊。そんなものが嫌でも目に入ってきた。
「ん、コレは……皆、この突き当りに何かがあるのです。警戒を。罠かもしれないです」
 その時、小さなマウスのファミリアーを先行させていた『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が、マウスの視界を通じて何かを発見する。
 一同は慎重に通路を進むと、そこには確かにあった。
 壁に釘で磔にされた、複数の兵士達の死体が。恐らくは、先日サリク達に出会ったという彼らだろう。
「酷いな……悪趣味、という言葉だけでは片づけられない……本当に酷い」
『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は静かに呟く。
 その死体を降ろそうとしたイレギュラーズも居たが、『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)がそれを制する。
「対兵士、サリク、仕込ミ、使用。ソノ分、補充シテイルトスレバ、兵士、遺体活用、可能性大。遺体、触レル、感染。動かす、爆発orアンデッド化、有リ得ル」
「ふ~ん……でも、マリカちゃんが視た感じ、アンデッド化は無さそうかな♪ みんなが降ろしときたいなら降ろしとくね! マリカちゃんの『お友達』が☆」
 フリークライが調べると、死体の各部に小さな毒針が仕込まれているのが発見された。『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)は『お友達』――毒針など特に意味の無いスケルトンの群れを召喚すると、次々と死体を降ろしていった。
 遺体を埋葬したいとも思ったが、まずは脅威を排除しなければならない。一同は更に通路を進む。
 そして、見つけた。囚人サリクは複数のアンデッドを引き連れており、しかしそれだけではなく、多くのアンデッドを周囲に潜ませているのを既にイレギュラーズ達は看破していた。
「おやぁ……これはこれは……アタシはケチな医者の囚人でして……賞金首を稼ごうなんざと気合を入れておりましたが、どうもアタシなんぞが敵う相手じゃあ……」
「話に聞いていた通リ、良く回る口デスネ。デスガ同じ手が何度も通用するとは思わない事デス」
 卑屈な笑みを浮かべるサリクに『不死呪』アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)は淡々と言い、すぐにでも放てるように呪術の準備を行う。
「毒を使った連続殺人に、悪趣味な磔の罠……他にもいくらでも言いたいことはあるがな。流石にこれで医者を名乗るのはいささか無理があると思うぜ?」
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は大型の籠手と盾を構え、言い放つ。ゴリョウの耳はその間も、通路を反響するいくつもの足音を、イレギュラーズを挟み込もうと動くアンデッドの意図を捉えていた。
「そうですかい……こんな干からびた野郎にそこまでやる気出す必要もないでしょうに……でもまあ……」
 サリクは懐からいくつもの針とナイフを取り出した。
「やる気があるのはアタシもですけどね。ヒヒヒヒヒ……!」
 そして戦いが始まった。


「さぁさ、出番ですよアタシのお友達の皆さん……」
「「「グガァアアアアアア!!」」」
 サリクのお友達。アンデッドモンスター達が、激しい怒りを露わにしてイレギュラーズ達に襲い掛かる。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。悪いが今の鉄帝に医者モドキの外道を生かしておく余裕はない。人々を見境なく襲うアンデッドもな……覚悟してもらおう」
 エーレンは迫るストリガーに鋭い居合斬りを放つと、その胴体を瞬時に両断した。
「サテ、行きマショウ」
 アオゾラはサリクと、その周辺に並び立つアンデッド達をじっと見据える。その全身から蒼い呪いの風がゆらりと放たれ、サリク達を包み込んだ。
「サァ、ワタシが憎いデスネ」
 そしてアオゾラが呟くと。サリクとアンデッド達の怒りや憎しみが増幅され、一斉にアオゾラに向けられた。
「ガァアア!!」
「感情任せの攻撃程、対処しやすいものは無いデスネ」
 振り下ろされるいくつもの炎の爪。アオゾラはスルスルと冷静に爪の隙間を潜り抜ける様に立ち回り、その拳を構える。構えた拳に、黒い呪いが込められていく。
「もう終わりデスカ? ワタシは別にいいデスケド」
 そして放たれる、群がるアンデッド達の胸元を抉るような一撃。それと同時に体内に流し込まれた呪術の力が、その全身を蝕んでいった。
 と、その時、チクリとアオゾラの腕が傷んだ。サリクが放った毒針が突き刺さったのだ。
「へえ」
 アオゾラは大した興味も無さそうにソレを見ると、ゆっくりと毒針を引き抜き、放り捨てた。致死毒だろうが麻痺毒だろうが、アオゾラには通用しない。
「この程度デスカ? これならまだ食あたりの方が効きますよ」
「へっへへ…………クソガキめ」
「成程。ではそちらの事はクソジジイとでも呼べばいいデスカ?」
 サリクは忌々し気にアオゾラを睨みつける。
「全く嫌な方々ですねえ……」
 サリクは腕に注射針を突き出して心身を回復する。そして一旦間合いを取ろうと動くが、
「おっと、"不幸"だね? こっちは通行止めだ。こんな所にずっと潜んでいたんだ、ネズミみたいにチョロチョロしたくなるのも理解出来るけど、そうはさせないよ」
 そこに素早く回り込んだ武器商人が退路を塞いで移動をせき止める。
「んーむ……ですがほら、見てください? あなた方の退路も塞がれた様ですよ? ヒヒ……」
 サリクの言葉通り、通路を回り込んできたアンデッド達がイレギュラーズの背後に現れていた。
 しかし即座に対応に動くものが居た。ゴリョウだ。ゴリョウは即座に身体を反転させると、アンデッド達を鋭い眼光で睨みつける。そして大きく息を吸い込んで、騎士盾をガン! と床に叩きつけた。
「オメェさんらの相手はこの俺だぁ!! 潰されたい奴からかかって来なぁッ!!」
 そして威勢よく叫びを上げると、アンデッド達の意識は無理やりゴリョウに引っ張られる。
 その対応の速度は、やはりこれが想定済み、あるいは計画通りだった事を示していた。攻撃が頑丈な1人に集中してしまえば、挟撃などなんの意味も為さない。
「なんだと……?」
「ぶはははッ、悪ぃが想定済みだ! 兵隊さんらの命を賭した情報に足元掬われたな自称お医者さんよぉ!」
「チッ……だが早々に殺せれば何の問題も無い! 殺っちまいな!!」
「出来もしねぇ事を口にするもんじゃないぜ!!」
 アンデッド達がゴリョウに襲い掛かる。振り下ろされる爪を籠手で弾いて顔面を殴り、衝撃波を盾で受け止めて跳ね返す。
「地の利を取れれば勝ちだとでも思ってたか? だったらお気の毒だぜ……さぁ、俺様の攻撃から逃げられるかな?」
 ファニーはサリクに指先を向けて、言い放つ。そしてほんの僅かに指先を動かしただけで、サリクの全身に凄まじい激痛が奔った。
「グ……!! 兵隊……あの時逃した野郎の情報ですかい……仲間を見捨てて逃げた臆病者の分際で、怠い事してくれたもんですねぇ……」
 サリクは痛みに顔をしかめながら吐き捨てた。
「臆病者、断固、違ウ。兵士達、情報、フリック達、伝エタ。フリック達、遺志、全ウスル…………サリク、遺体、利用。コレ以上ノ、侮辱、許サナイ」
 フリークライがいつもと変わらない、しかしどこか強い口調で言い放つと、寒く暗い通路に暖かな風と光が差し込んで、仲間達の傷を癒した。
「鉄の塊に説教されるとは……大人しく錆びといて下さいや」
「ガァアアアアア!!」
 プレーグメイデンが叫び、衝撃波を放つ。様々な災厄が込められたソレを、フリークライは正面から受け止める。
「我、墓守。死者、怒リ、受ケ止メヨウ」
 そこに込められたのは純粋な怒り。フリークライはソレを真正面から受け止める。衝撃によって身体が揺らぎそうになるが、ガシリと踏み留まった。
「フリック、蝕マレナイ、凍ラナイ。狂ワナイ。立チ続ケル限リ、邪魔ハサセナイ。」
 純白の花が僅かな魔力を帯びて。放たれた光輪は更に仲間の傷を癒していった。
「こっちからすりゃあ大邪魔なんですがねぇ……」
「まぁまぁ、ここに居座ってる事自体が邪魔なんだから文句言わないの☆ それよりあなたの『お友達』ってこれで全部? 早く全員紹介してね♪」
 マリカが言い終えると、首なしの騎士がサリクに突撃する。大剣の一撃がサリクを抉り、声なき声は、かの者の死はすぐに訪れるだろうと予言した。
「こいつは参りますねぇ……頼みますよアンタ達。アタシはまだ死にたくないんです」
 アンデッド達は未だわらわらと蠢き、イレギュラーズに襲い掛かっていた。
「幾ら来ようが、構いませんよ。纏めて駆除出来るのなら寧ろ楽なものですから」
 アッシュは迫るアンデッド達の動きを冷静に見定めると、掌の上に展開していた魔法術式をぐっと握りつぶした。
 瞬間、アンデッドの周囲に張り巡らされていた気糸がアンデッド達の身体を一斉に斬り裂き、そして締め上げて動きを封じた。
「酷い事するじゃぁないですか、アタシのお友達に」
「言葉の軽薄さも、ここまで来ると一種の才能かと勘違いしてしまいそうになりますね。あなたは唯利用できるものを利用しただけでしょう?」
「へっへへ……まさか」
 薄ら笑いを浮かべるサリクをアッシュは冷たく見据える。そして両の掌に魔力を込めると、その両手に魔力で生み出した二丁拳銃が握り締められる。
「あなたはいつまで医師を名乗るおつもりなのです。あなたは罪を犯した罪人……最早其れを名乗る資格もないのですから」
「さあてね……アタシには難しい事は分かりませんや」
 アッシュは小さく息を吐き、引き金を引く。光り輝く銀の弾丸が、動きを封じされたアンデッド達の頭部を次々と吹き飛ばしていった。
「……まあ、補充はまだいるからいいですけどね。ククク……」


 イレギュラーズ達は順調にアンデッドの数を減らしていたが、やはり数が多く、中々殲滅には至らない。しかしそれでも作戦は功を奏しており、イレギュラーズ達の被害もかなり抑えられていた。一方サリクは、徐々にダメージを蓄積させていた。
「サリク。医者ナラ、自分、治療スレバイイ。テキルノナラ、ヤッテミロ」
「……説教の次は挑発ですかい? 全く……」
「私欲ノ為、人ヲ殺ス。ソンナ人間、最初カラ、医者デハナイ」
 フリークライは献身的に仲間の治療を行い続けている。
「しかし本当に数が多い……アンタらと違って俺様達に怨みは無いが……お寝んねしててもらうぜ」
 ファニーは蠢くアンデッド達に掌を向ける。白い魔力が掌から溢れ出す。
 そこに込められたのは魔術か祈りか、あるいは呪いか。『ソレ』は不可視の一撃となってアンデッド達を襲い、その運命を捻じ曲げる。捻じ曲がった運命に囚われ、アンデッド達の動きが一様に封じられた。
「……っと、まあこんな所か。こんなロケーションじゃあ星どころか空も見えやしないしな……あぁそうだ、終わる前に聞いとかないとな。アンタ、自分を骸骨だと名乗っていたようだが……さて、本物の骸骨を見た感想はどうだい?」
「自分はまだマシだと思えて安心しましたよ……あと気味が悪い」
「アンタも大概口が悪いな」
 そしてファニーは再びサリクに指を向ける。
「ま、それでも俺様は優しいヤツだからな。アンタを許すぜ。仲直りの印に、もう一度星を見せてやるよ」
 そしてファニーは静かに指を傾けた。再びサリクの全身に奔る激痛。白い骨の先は死をなぞる。
「ウグ……」
「流石に軽薄な笑いも減ってきた様デスネ。結局何が楽しくて毒を盛っているかは分かりらなかったデスガ、サッサと片付けてしまいまショウ」
 呻くサリクにアオゾラは一瞬で接近。その胸元に硬い殺意を込めた蹴りを叩き込んだ。
「ハァ……死にたくはないんですがねえ……アンタ、ちょっと本格的に邪魔なんで退いてくれませんかね。流石に殴られ続けて疲れてきた頃でしょう?」
 サリクの言葉に、武器商人は愉快そうに笑う。
「まさか。我(アタシ)の底抜けの頑丈さを舐めて貰っちゃ困るねえ。キミ達に倒されるよりも、この寒さで凍り付いてしまう方が先だよ、きっとね」
 サリクの退路を早々に塞いだ武器商人により、張り巡らされた通路を逃げ回られて、じわじわと長期戦を仕掛けられるという展開は防がれていた。
「ま、そうなる前に終わらせるけど。これまで散々人を姑息な手段で陥れて殺して来たんでしょ? そろそろ受けてもいい頃合いだと思わないかい? 報いって奴をね」
 武器商人が大きく腕を広げると、その両腕に『混沌』そのものの力が集まっていく。それは影の様な不定形を為して両腕に纏っていく。
「ガァアアアア!!」
 その時、ストリガーが炎の爪を振るい、武器商人を斬った。
「"火を熾せ、エイリス"」
 呟いた瞬間、武器商人の両腕に蒼い炎が灯された。そして大きく腕を振るうと、炎を纏った影の塊が次々とアンデッド達を包み込み、そして灰へと変えていくのだった。
「ク……なんてこった。無能な屍共が……」
 アンデッド達の攻撃を受け流しながら、ゴリョウは小さく鼻で笑う。
「ハッ……無能ね。マトモな薬も毒も作れねぇエセ医者といい勝負だぜ。俺らの動き一つ止められんとはなぁ」
「どいつもこいつも……そんなにアタシを怒らせたいので? アンタらはじっくりと毒で殺してやりますよ……おっと、治療だった」
 この程度の煽りに乗るんなら、最初から医者になんて向いてねぇよ、と。ゴリョウは小さく呟いた。
「未だに勝利を諦めないその執念は結構だが。お前だって追い詰められている事は理解できる筈だ……このまま、決めさせて貰うぞ」
 エーレンは海洋王国聖十字剣『サザンクロス』を構える。精神を集中させ、自らの動きを最速へと近づけていく。
「ヘヘ……いやあ、道連れも無しに死ぬのは御免ですねぇ。どうです、冒険者さん。アタシと一緒に地獄への旅路に行くってのは?」
「当然、御免だな。その旅行は1人で行ってくれ」
 サリクは両手にナイフを構え、エーレンに向けて猛毒の連撃を次々と放つ。エーレンは冷静にサリクの動きを見定め、剣を振るって斬撃を受け流す。
「プッ」
 不意にサリクが吹き出した毒針。エーレンは軽く頭を逸らしてこれを避けると、サリクの手元を蹴り上げてナイフを弾き飛ばす。そして剣の刃を納め、居合の型で構える。
「中々のナイフ捌きだ。その武の才能を殺人に使ったのが残念でならない」
「まぁ、アタシはそれで満足なんですよ」
「そうか」
 一閃。雷を纏った斬撃がサリクの身体を斬った。その威力に、サリクは顔をしかめる。
「ハァ……奪った命よりも救った命の数の方が多いから、許されると思ったんですがねぇ……そういう訳でもないんですかねぇ……」
「罪は、罪。そして罪には罰が与えられるものなのです。あなたは医師ではなく……罪人として最後に名を刻むのです」
 力なく呟いたサリクに淡々と言い。アッシュは宙に描いた魔法陣から光の礫を生み出し、その全身に打ち付けた。
「あなたは殺人とのバランスを取る為にお医者さんになったの? それとも、人の命を救う自分には人を殺す権利があると思ったのかな? ま、どっちにしろマリカちゃん的にはお医者さんごっこかな☆ という訳で今からここは死体安置所ね♪」
 マリカの右目がほの暗い魔力の光を発すると、再びマリカの『お友達』が現れる。スケルトン、ゾンビ、亡霊、その他諸々。
「へへ……だったらアンタは? ネクロマンサーごっこですかい?」
「さあ、どうかな? ごっこかどうかは、すぐに身を以て知ると思うよ☆ という訳で、突撃♪」
 マリカが屍の鎌をサリクに向けて振った。すると召喚されたお友達が目の色を変え、一斉にサリクに襲い掛かる。
「ヒ……!」
 サリクが恐怖の声を漏らした次の瞬間には。骨の爪と歯が皮膚を突き破り、這い寄ってきたゾンビがその両足を貪り。亡霊はサリクの体内へと分け入り、その内臓を貪った。
「ハ、ガ、アガ、ギ……こん、な、オワ、リ……!!」
 サリクは目を剥いて手を伸ばす。そして必死にマリカの目を見て、ソレを懇願した。
「えー、別にいいけど……んーそれじゃあ、今日からあなたも、あなたの『お友達』も、みーんなマリカちゃんの『お友達』ね♪ 約束してくれる?」
「ア、グ……!!」
「オッケー☆」
 サリクが頷いたのを確認して、マリカはブンと大鎌を振るった。サリクの首が刎ね飛ばされて、冷たい床にゴトリと落ちて。その苦しみは唐突に終わった。
「と、いう訳で。残りのサリクちゃんのお友達を全部狩っちゃおう☆」
 傲慢に満ちた殺人鬼サリクの凶行は、もう二度と行われる事はないだろう。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド

状態異常

なし

あとがき

 その後のアンデッドの制圧はスムーズに行われました。探知もバッチリだったので、狩り残しも無いでしょう。
 戦闘終了後、イレギュラーズ達はサリクに殺された兵士達の弔いを行いました。
 全身に仕掛けられた罠を取り除き、出来るだけ綺麗な状態で連れ帰る事が出来ました。遺品も同時に整理して、遺族の元に届けられました。
 サリクや天衝種の死体は、気づけば消失していました。どこかのネクロマンサーがその力を使ったのでしょう。

 という訳でお疲れさまでした。MVPは、敵の挟撃に対応し、敵の挟撃の効果を大きく減らした上で敵の退路を1つ潰したあなたに差し上げます。

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