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シナリオ詳細

恐怖! 反転ゴーレム

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●くるくる、どかーん!
 残暑がまだまだ激しい幻想の夏の終わり、そいつは突然現れた。
 激しい雄叫びと共に現れるは、巨大な岩の怪物、ストーンゴーレム。
 逃げまどう村人たちをその長い腕で吹き飛ばし、弓で応戦する兵士に岩を投げ沈黙させる。
 蹂躙、破壊、殲滅。思う存分暴れまわり、落ち着いたゴーレムは、破壊し損ねた一つの家を見つけ……まるで嬉しそうに腕を天に掲げる。
 するとどうだろう。ふわりと家が浮かび上がり、ある程度の高さで、一気に天地がひっくり返ったかのように回転すると、そのまま真下へと急降下して――

●身体も個性もひっくり返せ
「反転……ゴーレム?」
『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)が怯えたように『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に尋ねると、「ご安心くださいなのです」と答える。
「反転といっても物理的な反転なのです、どこからともなくそいつが押し寄せて家やら人々やら警備兵のみなさんをひっくり返していっていったからそんな名前が付けられたのです」
「……それでも、怖い」
 ユリーカがその返事に頷き、依頼書と地図を広げる。
「はい、とっても怖くて強い奴なのは変わらないのです。それで皆さんに討伐をして欲しいと、領主さんから依頼が来たのです」
 反転ゴーレム。それは小さくて5メートル、大きくて10メートルはあろうかというとある巨大なストーンゴーレムにつけられた異名である。
 ありとあらゆる木々や建物、人々を文字通り天地をひっくり返すようになぎ倒す事からそう名をつけられたのだそうだ。僅かな生き残りが、頭をぶつけた衝撃かゴーレムに何かをされたのかはわからないがその性格が「真逆」になっていた事もその名の由来となっている。
 ある日突然現れたそいつは、小さな集落を襲い、その巨体を生かした薙ぎ払いや身体の一部を使った投石、そして天地をひっくり返し頭を叩きつけさせる謎の神秘攻撃などで、とある集落を瞬く間に滅ぼしてしまったのだという。厄介な事に、そのゴーレムは住民が油断しきっている農村のみを何らかの方法で感じ取って襲い掛かるため、警備兵の存在はそいつを遠ざけてしまうのだとか。
 周囲の村々に被害が及ばぬよう幻想領主が傭兵団を派遣し討伐に当たるも全滅、頭が地面に埋まり、足だけを出した状態で発見される有様であったのだという。こうして、事態を重く受け止めた領主はローレットに討伐を依頼したのだ。

「皆さんはある村に2,3日ほど待機して、そいつが来るのを待っていて欲しいとのことなのです」
 住民が警戒してゴーレムが逃げ出さないように、旅行者と偽り滞在。ゴーレムが現れれば住民の避難と討伐を行う。幸い住民の数は少なく、ゴーレムの動きも遅いので、避難誘導にはある程度のゆとりがあるはずだ。だが――

「問題はゴーレムなのです。頭をごっちんこされされないようにだけは注意なのですよ?」

 ユリーカが心配そうに、イレギュラーズ達の頭を眺めていた。

GMコメント

 こんばんは、塩魔法使いです。
 デカブツとの死闘ありギャグありな1本をお送りします。

●依頼内容
(1)住民の避難誘導
 巨大な魔物の姿に住民が混乱しています。カリスマなり凄いオーラなり更なる恐怖なりで落ち着かせたり気をそらせたりすることで避難させましょう。避難誘導は失敗しても依頼結果に直接影響はありませんが、その後の戦闘に最大4人、数ターン程遅れてしまいます。
(2)敵の撃破
 ゴーレムが押し寄せてきました。力を合わせて倒しましょう。
 何やら厄介な能力を持っているようです。

●敵
 反転ゴーレム × 1
 非常に巨大なゴーレムです。石で出来ているので炎と毒系統の状態異常が無効です。
 その巨体に見合う恐ろしい体力と攻撃力でつぶしにかかってきます。
 以下の攻撃を使用する事が確認されています。
 ぶんまわし【物自範】【乱れ】 マークやブロックに反応し使用、腕をぶん回して薙ぎ払います。
 自分を投げる【物超範】【万能】【反動あり】自分の身体の一部を投げ攻撃します。
 『反転』【神近単】【混乱】 イレギュラーズを神秘で浮かせ、(物理的に)反転させてきます。反転させられたイレギュラーズは上空に打ち上げられ、頭から落下し大ダメージを受けます。

●支援
【いねむりどらごん】カルア・キルシュテン(p3n000040)が装備品とイレギュラーズの平均レベルに準じた能力で参加します。
 プレイングに指定がなくとも無難に動き、レンジ1より攻撃をします。また、絡みや要望が無ければ基本的には判定のみで描写はありません。『反転』に非常に怯えています。

●備考
 緊急の依頼の為、相談期間が4日となっています。お気をつけて。
 シンプルで強い敵ですが、非常に戦いやすい敵だと思います。
 数は力だという事を思い知らせてやりましょう。待機して回避が落ちたゴーレムに高威力技を仕掛ける……なんてのも良いと思います。
 また、『反転』させられて頭をごっちんこした場合、魔種になったりはしませんが(旅人でも)頭がふらふらしておかしな言動をするかもしれません。距離的に喰らいそうだな、あの人がおかしくなったらこうするなって人はそうなった場合、どうするかをプレイングにこっそり書いておけば攻撃を受けた際に反映します。
 プレイングに記載が無ければただの混乱と同じなのでご安心を。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●アドリブ 多め
 この依頼はアドリブ成分を多めに含む可能性があります。
 もしアドリブ度の指定希望がありましたらプレイングやステータスシートに記載していただければその様に反映いたします。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 恐怖! 反転ゴーレム完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月16日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
カノープス(p3p001898)
黒鉄の意志
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
タツミ・サイトウ・フォルトナー(p3p004688)
TS [the Seeker]
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
Erectum(p3p006132)

リプレイ

●束の間の田舎旅行
 絵に描いたようなド田舎。それがこの村を説明するのに相応しかった。
 敢えて詳しく説明するならば小さくもそれほど貧しくなく、時々領主である貴族がぶいぶい言う以外は平和な、幻想の中でも幸せな方の農村。もう秋も近いというのに寝坊して出てきた蝉がミンミンと鳴き続ける、そんな夏の終わりの田舎。
 黒い所が一切無さそうな、そんな呑気とも言える村の宿舎の一室に村の見回りの休憩がてら相談に励むイレギュラーズ達の姿があった。
「それにしても、何のためにあの魔物は人々を反転(物理)させてるのでありましょうな?」
 その奇抜なモンスターを不思議がるのはErectum(p3p006132)。『郷土料理からその土地の風土や歴史を調べる研究家』という名目で村を訪れていたErectumは、すっかり村の住民から気に入られてしまったようで、今日もどこかの農家で食事を頂いた帰りなのである。
「なんでだろう、本能的なものなのかな?」
『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)が村ののどかな光景を描きあげた絵を数枚、整理しながらErectumと一緒に考える。
「ミーナ殿、何かわかるかな?」
「さーなー、しっかしまーた変な物が現れたもんだ」
 村の地図を片手に考え事をしていた、『紅の騎士』天之空・ミーナ(p3p005003)が返事をする。
 イレギュラーズ達の狙いは何でも天地真っ逆さまにひっくり返す摩訶不思議な神秘術を行使するという巨大なストーンゴーレム。平和ボケした村のみを襲い、全てをなぎ倒していくという恐ろしい魔物である。実際、この魔物によって幾つも村が壊滅的被害を受けているのだ。放置していてはたまったものではない。
 だが、そのゴーレムはミーナの言うようにへんてこな所があるのだ、そのゴーレムは何を考えてか、なぎ倒すというものの、大半を上下ひっくり返して行くという特徴があるのだ。立ち向かった僅かな住民や兵士達も、若干埋めてひっくり返しておくほどの徹底ぶり。
 その破壊っぷりから付けられた名称は……。
「『反転ゴーレム』なんて名前、絶対紛らわしいだろ」

「反転とは穏やかじゃねぇネーミングだな……あ、違うの?」
 ミーナの言葉に一瞬『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)が驚いたのも無理はない。無垢なる混沌において『反転』と言えば、純種が魔種へと堕ちる恐怖の現象に名付けられた名称なのだ。よりによって同じ名前を付ける必要ないだろうに。
「ひっくり、返されたら、身体も、性格も、真逆になるって、だから、反転」
 質問に答えたのは、比較的のんびりと旅行を楽しみ、今も散歩を終えたペットのココゼットと遊んでいた『孤兎』コゼット(p3p002755)。
「性格が、真逆になるって、どいうこと、なんだろう。いい人、やられると、悪い人に、なるのかな」
 ゆっくりとベッドにココを乗せれば、湧き出た疑問をぽつりと呟いて。考え込む。
 考えれば考える程不可解な魔物の行動ではあるが、その行動は極悪非道のそれである。その目的が何にせよ、この地域の平穏の為にはあの怪物を倒さねばなるまい。
「何処から現れたのかも解らんが、油断した農村のみを狙うとは度し難いゴーレムだ。その所業の報いは我々の手で下すとしよう」
 旅行客の護衛という体の為、鎧姿のまま壁にもたれかかっていた『黒鉄の意志』カノープス(p3p001898)もまた、重く低い声でその意志を伝えた。その瞬間。

 爆発音の様な地響きと、地震――つづいて、何かの咆哮が部屋に響く。
「噂をすれば、だね」とメートヒェンが呟いた。


 場所は変わり村の中心部。村の中でのんきしていた村の住民たちもその異変に気付いていた。
 音とともに、突如、村全体から見渡せるほど大きな大きな黒い人影が現れたからだ。人影は前のめりの体勢になれば、喧しく叫び……次の瞬間、村中に降り注ぐ小石。
「な、なんだこりゃあ!?」「なんなんだあいつは!? ゴーレムか!?」
 平和ボケしている彼らもそこでようやく怯え、叫び出す。あわや阿鼻叫喚一歩手前――そんな時。

「ゴーレムは俺達の仲間がしっかりと抑えている! 慌てずに避難してくれ!」
『TS [the Seeker]』タツミ・サイトウ・フォルトナー(p3p004688)が駆けつけながら、住民達に声を張り上げる。
「お前さんはあの観光客!? 助けに来てくれたのか!?」
 村人たちが驚き、タツミに声を掛ける。タツミが答える前に、黒馬『ラムレイ』にまたがった『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が現れ、住民全体に呼びかける様に、
「この場はローレットが預かった! ゴーレムの狙いは村である! 落ち着いて村の外に避難せよ!」
 と言葉を投げかけながら、戦旗型のオーラソードを展開する。その勇姿と説得力に住民は納得したのだろう。彼女が戦旗で逃げるべき場所を支持すれば、村人達はそこなら安全とその場所へと迅速に向かっていった。

 彼らを邪魔しないようにしつつも、すれ違う一つの影――予め決めていた地区の避難誘導を受け持ち、ようやく仕事を終えた『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン (p3n000040)がイーリンの元へ駆け寄ると「……ここで最後?」と声をかける。イーリンは肯定の意志を示せば、手を伸ばし。

「ええ、ここにいた住民で最後よ、そして逃げ遅れは居ない……飛ばすわ、捕まって!」


●進撃!破壊!反転!
「――!」
 複数の巨大な岩が噛み合って人の姿をなしたような岩の巨人、ストーンゴーレムがゆっくりと、ゆっくりと村へと歩いていく。頭に位置する部分には、『目』のような光る物体が1つ。『口』の様な切れ目からは時折おぞましい咆哮と、オオオオ……と言う音が鳴り響く。
 一歩。また一歩。10メートル弱はあるその身長の岩の怪物は、歩くだけで惨事を生む。
 大地は揺れ、魔物の巨大な脚に木々がミシミシという音と共になぎ倒される。なぎ倒された木は、暫く横たわっていたと思えば急にふわぁっと浮かび上がり……宿舎で待機していた6人が到着した時には既に手で振り払われた木々や草木は文字通り天地が反転したかのようにひっくり返っていた。

「なるほど、これは確かに反転ゴーレムと呼ばれても納得なのであります」
 Erectumはその光景を見れば、即座にその巨人へ銃口を向ける。これ以上近づけるわけにはいかない、避難誘導を受け持っている戦力がたどり着くまでは食い止めなければ。全速力で近づき、そのゴーレムを捉えれば引き金を引き、牽制射撃。そこで漸く自らに敵意が迫っているのに気付いたのか、眼前にいたイレギュラーズ達に気づけば、こちらへ怒りの咆哮を上げる。邪魔をするなと言うつもりなのだろうか。
「村に被害を出させるつもりは無い」
 その咆哮にも負けず、カノープスが飛び出しその足元で大盾を構えれば、それが相当鬱陶しかったのだろう、反転ゴーレムはかがみ、薙ぎ払おうと大きな腕を振り回した。その大きさに見合った恐ろしい馬力。大きな砂嵐が巻き上がり、全身を鎧に包まれたカノープスでさえ盛大に弾き飛ばされる。即座に受け身を取り、即座にかけられたみつきのヒールに感謝の意志を示す。
「抑えに反応して行動を変えるとは、随分頭のいい事だ……だが、頑丈さならば引けは取らん」と再び立ち上がるカノープス。彼を嘲笑うかのような音を『口』から漏らしながらその『一つ目』で見つめれば、ゴーレムは前を向き直り再び村を破壊しにいこうと、のしのし歩き出す……が、10秒も立たぬ内にメートヒェンが即座に割り込み、「次は私だよ」と護りを固める。
「罪もない人々を傷つけるのを見過ごすわけにはいかないからね」
 まるで感情があるかのように苛立ったゴーレムは、何度も、何度も、腕を振り回し、来たる挑戦者を弾き飛ばすようになぎ払い続ける。動きはトロいが、その図体の大きさで無理矢理当てるように、何度も腕を振るう。1回転、そして、2回転、3回転!
「遅い、よ」
 その猛攻をものともせず、護りを固めていたコゼットは兎の如く回避する。
 1回目の腕を飛び越え、2回目の腕をしゃがみ躱し……3回目で漸くかすり傷を喰らうも、ほんの1,2メートルしか弾き返せない有様である。 
「運が悪かったな……私がいたって事が運の尽きだぜ」
 最前線を離脱したコゼットの代わりにミーナが飛びかかり、彼女もまた防御の構えを取ろうとする。
再びゴーレムが腕を構え、吹き飛ばした、次の瞬間。虚空より槍が放たれ、ゴーレムの岩の隙間に突き刺さる。
 ゴーレムがよろめいた隙、それに飛び乗ったのは避難誘導を終え、駆けつけたタツミの姿。
「またせたな! さぁ、気合い入れていこうぜ!」
 構えれば、ゴーレムの脚の細い部分を一撃斬りつけ。おまけでもう1発浴びせれば、槍を引き抜き、持ち主へ投げ返す。
 その光景を見て、ミーナが振り返れば、全力でラムレイを走らせ飛び降りたイーリンの姿がそこにあり。その得物は地面に刺さり、オーラの旗となりはためいている。
「さあ、始めましょう。『神がそれを望まれる』」
 戦旗を引き抜き、構えるイーリン。事前の調査の甲斐ありかかった時間はわずか1分足らず。その勇姿にミーナは微笑めばゴーレムの方を向き直り。
「……残念だが、時間切れみたいだな」
 防御の代わりに、暗闇を宿した剣を一発ぶちかました。

 呻き声を上げるゴーレム。もはや、彼の足では逃げることもかなわず、食い止めずとも彼らを倒さねば村へ到達できない……そう判断したのであろうか。ゴーレムは何かを投げるように腕を振り上げると、次の瞬間、その身体の一部が切り離され、重力よりも遥かに早いスピードでイレギュラーズ達の方へ隕石のように向かっていった。
「あぶねぇ!」
 岩を辛うじて避けたみつきが、ゴーレムの視線に気を配りながら、傷ついた仲間を癒やす。「まるで重力でも操ってるみたいだ」
「というより、本当に操っているでありますか?」
 レーザーガンを構え、Erectumが若干とぼけたように言いながら一か八か全力を込めた一撃をお見舞いする。先程よりも強く放たれた一撃は、その岩の体を溶かし、焼き切っていく。
「重力を操るなんて厄介ね……短期決戦と行かせてもらうわよ」
 力を溜めていたイーリンが反転ゴーレムに飛びかかる。依代の剣より放たれるは、雪崩れ込むような剣撃と魔撃の嵐。不意に放たれた熾烈な攻撃にゴーレムがおもわず揺れ、動きを止める。次の一発を浴びせんとイーリンが再びオーラソードを構えたその時。頭に位置する場にある、その『目』が紅く光った――次の瞬間、足元をすくわれた感覚をイーリンが感じたときには、既にその足は地面から離れていた。
「きゃあ!?」
 ゴーレムの頭の高さまで浮き上がるイーリン、イレギュラーズ達が皆唖然と眺める中浮かび上がった彼女は次の瞬間――くるりと反転、垂直落下。落下しきれば草原の上に落ちたというのにごちんと鈍い音が響いた。
「お、おい、イーリン、大丈夫か」
 力なく倒れ、動かなくなるイーリンの姿を見たミーナが血相を変え駆け寄り、イーリンを助けようと駆けつける。ふらふらと手を伸ばしたイーリンの手をゆっくり握り、声をかけ――驚愕。まるで知的な様子はどこにも見られないような、ふにゃあとしたイーリンの表情を見てしまったからだ。
「あらあら、ミーナちゃん。私は大丈夫よぉ」
 イーリンはおっとりとした様子で微笑み、ゆっくりと立ち上がっては、うふふと笑う。言動は明らかにおかしいが、なんともないように再び戦旗を手にゴーレムの方へと向き直り飛びかかったあたり、混乱はしているものの戦う事事態に支障はないらしい。
「おお……これは……おっとりしてるイーリンもいいもんだよなぁ」
 その事に安心したのか、普段見ない物を見てしまったからか、イーリンの豹変した姿に戦闘中であるにもかかわらず内心にやけそうになるのをこらえるのミーナであった。

 ミーナは安心するも束の間――効果があったと認識したのだろうか。ゴーレムは唸り、何度も、何度もイレギュラーズを叩きつけんと『反転』攻撃を放つ。
『反転』と称した重力攻撃により、何度も浮き上げられては、頭を打ち付けそうになるイレギュラーズ達。戦力を温存するべく弱った仲間を身を呈して守りながらも、その原理や作用にカノープスが「反転、何とも原理を理解しがたい」と呟くのも無理はない。

 その言葉が聞こえたのか、メートヒェンはそんなカノープスに平気な様子で返事を――
「かのーぷすドノ、イガイトナントモナカッタヨ、ミンナガゴーレムニミエルケド、オオキイヤツガホンモノダヨネ」
――するも明らかに様子がおかしい。ピピーとか電子音がしてるし言葉から抑揚が消えている。どうやら脆にくらってしまったらしい。

「あら~メートヒェンちゃん、なにかおかしいわよ~」とイーリンがその様子にツッコミを入れるあたり、当の本人にその自覚はないのだろう。

「あれが、反転……二人共、心配……あたしがやられたら、どうなるん、だろ……?」
 コゼットは人が変わってしまったかのようなイーリン達の様子を心配しながらも、二人がなんだかんだ無事と知れば魔具を構え、ああはならないようにと強く決心し――ゴーレムの正面から突っ込んだ。気付いたゴーレムが再び瞳を輝かせ、次はコゼットを浮かそうと神秘術を放つ――が、むしろその浮遊力を逆に生かされてしまい。
「そっちが、ひっくり返そうと、してくるなら、あたしも、ひっくり返すよ!」
 コゼットの強烈な一撃を、顎へと、そして『目』へと脆に受けてしまう。
 何かがひび割れる音と、よろめくゴーレム。膝を突き、頭を下げてしまったその瞬間。

「そこが弱いんだな! 村に被害を出すわけにはいかねぇ! ここでブッ倒れやがれ!」
 タツミの放った、全身全霊の一撃が、射程距離内に入ってしまった『目』へと突き刺さった。
 破片が散り、断末魔の様な叫びがゴーレム口から溢れる。
 頭をあげ、がく、がくと震えれば……ゴーレムはがくん、とうなだれ、膝をついたまま――停止した。


●リバース・ゴーレム・エンド
 臨戦状態を解除し、周囲で警戒に当たるイレギュラーズ。動かなくなったそれを見張り続け何分経っただろうか、パキン、パキン、と岩の一つ一つから崩れるような音が中から響いた次の瞬間、一斉にガラガラとゴーレムの巨大な身体が崩れ落ち、バラバラになったその身体が盛大な音と土煙を巻き起こしながら草原に転がった。
「……危なかったな」
 とっさに大盾を構え、岩から身を呈して守ったカノープスが、大きなため息をつく。
「倒したのでありますか?」
 Erectumの言葉に、コゼットがぴょんと岩に飛び乗り、高所からその残骸の中心を眺める。残骸のてっぺんには、頭の岩の部分に埋め込まれていたであろう粉々になったガラス玉のような物体がそこにあった。おそらく、あれがゴーレムの『目』、そして魔力源であったのだろう。
「みたい、だね、何も、聞こえない」
 その玉の残骸と自らのギフトによって安全と確認したコゼットは、それを伝える。
 次の瞬間、イーリンとメートヒェンがよろめき、うめき声を上げる。
「おう、正気に戻ったか! 災難だったなあ! まさか身体だけじゃなくて性格までひっくり返っちまうなんてなあ!」
 みつきが笑い飛ばしながら、労うように治癒術をかける。彼なりの優しさなのであろう。
「え? ええと……ハイ、タイヘンデシタ」
 正気に戻ったばっかりでぽかんとした様子メートヒェンが話を振られ、返事をするも。まだどこかカタコト気味な様子で、おとなしくみつきのハイヒールを受け続ける。
「頭を打った衝撃というよりは、その衝撃の隙に神秘で何か悪さをされたかのようだったわね」
 一方、皆に背を向けて他人事の様に冷静に分析するイーリンの心境や如何に。ミーナはそんな彼女の心境を察してか、あるいは相当楽しかったのか。心なしか目をいつもより見開いて「でもあのイーリンもよかったぞ、今度またやってくれないか」なんてフォローをしている。
 そんなミーナに、何か言おうとイーリンが口を開けた、その時。
「お、おお! 見ろ! あれを倒したぞ!」
 しわがれた声。振り返れば、いつの間にかわらわらと戻ってきていた農民たちがゴーレムの残骸を指差し、次々と驚愕の声をあげている。「まるでヒーローみたいだあ!」「悪いぴえろを倒してる『るーれっと』ってのは、お前たちのことだったんだなあ!」なんて声もちらほらと飛んできている。盛大な拍手が上がり、万歳三唱が始まる。

「……本当、平和」
 避難誘導までして、必死に逃したというのにまた戻ってきていたのか。あまりにも平和ボケしている……彼らの様子と、自分達に襲いかかった「反転」の不幸に思わず若干のため息が出ながらも。それでも、彼らを讃える住民達を見て、どこか得意げな様子なイレギュラーズ達なのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

「やっほー! カルアだよー! 皆お疲れ様でーす!(おめめぱっちり)」
(※文字数の都合と本人のご要望によりこのシーンはカットされました)

 どうも、塩魔法使いです。半分悪ふざけな強敵でしたが参加していただき本当にありがとうございました!
 皆様の反転(物理)した性格に笑いをこらえながら、非常に楽しい気持ちで描かせていただいた塩魔法使いなのでした。
 ちょっとかわいそうな事になってしまった人には慰めの気持ちとしておまけもつけているのです。
 それではお疲れ様でした!またみなさんを会える機会をお待ちしております!

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