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シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>『家族のため』という大義名分

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 お金で買えない物は確かに存在する。だがしかし、この世のほとんどの物はお金で買える。少なくとも、鉄帝の厳しい冬を凌ぐために必要な物は全てお金で買える。
「おい、知ってるか? 軍の奴らの愚痴を盗み聴きしたんだが、ここにイレギュラーズたちが来るらしい」
「まじかよ!? あいつらって確か、首に懸賞金が掛かってたよな?」
「ああ。刑務所の近くで拾ったアレが正しいならな。額はばらばらだが、少なくとも一人殺れば、一家どころか二家族以上が冬を越せる額が出る」
「けど、相手は『鉄帝国の正義の味方』だろう? そんな人たちを手にかけるなんて……」
「――だが、このままじゃ、俺たちは冬を越せない」
 急な皇帝の交代。新たなルール。それに伴う略奪の数々。その上、今年の冬は一段と厳しくなるらしい。例え家があったとしても、子どもたちにひもじい思いをさせてしまう。
「正義の味方様なら、分かってくれるだろ! 俺たちはやるしかないんだ」
 切羽詰まった男の表情に、他の男も口を噤む。
「新しい皇帝には不満しかない。あのルールの所為で、俺たちは奪われてばかりだ。だが、今回は事情が違う。イレギュラーズを殺すなら、その為に必要な化け物も貸してくれるらしい。それがあれば……それがあれば、一人くらいなら殺れる。貰った懸賞金は山分けだ。そうすれば、皆で、家族と一緒に冬を越せる」
「…………」
 男たちは顔を見合わせると、固い表情のまま頷いた。「もしかしたら、いけるかもしれない」そう感じたらしい。
 皆が同意したのを確認すると、男たちの内の一人が地図を取り出し、確認しながら話し合い始めた。
「とりあえず、この南大門の近くに潜んでいようと思う。居住区の方からも離れてるし、絶対に誰か来るはずだ」
「とはいえ、軍の奴らに邪魔されたくはないな……」
「なら、東の方の墓地にいかないか? イレギュラーズたちも、一般市民は巻き込みたくない、なんて考えていそうだしな」
 そう言って指差したのは湿地帯だ。その北の方には、いつか彼らが埋められるであろう墓地がも存在する。
「ここなら、いけるか?」
「普段は行かない場所とはいえ、地の利は俺たちの方にあるはずだ。……大丈夫、一人だ。一人だけおびき寄せれば……」
 切羽詰まったような表情の男たちは、話し合いを続ける。もう、後には退けない。


 アーカーシュにあるギルド・ローレット魔王城支部。そこでは、不凍港を奪還しようとイレギュラーズたちが話し合いの席に着いていた。
「つまり、独立島アーカーシュの方針としては、南大門で牽制しつつ、森林地帯から郊外、住宅街、市場を抜けて港に行く港の方へ行く、ですよね?」
 博士の代理で共に席に着いていた『蒼の記録装置』サフィロス・クレイン(p3n000278)は作戦概要を聞き返すと、イレギュラーズの一人がその言葉に頷いた。
「こっちの湿地帯の方を抜けて~じゃ、駄目、ですか?」
 サフィロスのその言葉に、一部のイレギュラーズたちが首を傾げた。
「えっと、そちらの方はそもそも道幅が狭くて、沢山の人が通るのは大変、です。ですから、一部隊くらいは少し遠回りになりますが、ベデクト港に向かっても良いと思います、です。それに――」
「それに?」
「この地域の人たちは、新しい皇帝になってから搾取された人たちが多いと聞きました、です。そんな中、練達で発表した予報では、今年の鉄帝の冬は厳しい物になるということが分かっています、です。そして、イレギュラーズの皆さんには懸賞金が掛かっています、です」
「つまり、」
「懸賞金欲しさに、イレギュラーズを襲う人たちがいるかもしれません、です。
 大昔の『記録』にもあります、です。人は、遠くにいる偉い人や国の一大事よりも、身近にいる家族を優先する傾向があります、です。ですから……僕が口を挟むようなことではないと思いますが、そのことも留意した上で動くべきだと思います、です」
 確かに、その可能性はある。しかし、イレギュラーズたちを倒せるほどの力が彼らにあるとは思えない。
「ええと、この話し合いのちょっと前に博士が少し様子見しに行ったのですが、どうやら魔物――天衝種がいるみたい、です。誰かが使役しているようにも見えたそう、です」
「もしかして、それが湿地帯の方に?」
「……です」
 サフィロスは首を縦に振った。どうやら当たりらしい。
「お願いできます、ですか?」
 進軍の邪魔をされるかもしれない。イレギュラーズたちには、サフィロスのお願いを聞くしかなかった。

GMコメント

 初めまして、こんにちは、こんばんは。萩野千鳥です。
 早速ですが簡単に説明致します。

●目的
 天衝種(アンチ・ヘイヴン)の撃破

●地形
 全体的に湿地帯で少し滑りやすいです。北の方に下層民墓地があります。

●敵
『フューリアス』×15
 幽霊のような、人魂のような魔物、天衝種です。
 怒りに任せて衝撃波を飛ばしてきたり、痺れさせてきたりします。
『下層労働者』×5
 鉄帝国民です。反新皇帝派ではありますが、懸賞金欲しさにやけになった状態です。
 斧やバールのような物を手にしています。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 以上です。どうぞ宜しくお願いします!

  • <大乱のヴィルベルヴィント>『家族のため』という大義名分完了
  • GM名萩野千鳥
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月08日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

雨紅(p3p008287)
愛星
シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)
魂の護り手
結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
ファニー(p3p010255)
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)
ライブキッチン
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス

リプレイ


 森林地帯からベデクト湾へ向かう途中に、その湿地帯はあった。地図通り、北部には下層民墓地が広がっている。依頼を受けやって来たそこにいる『敵』は、その風景にある意味しっくりくる。イレギュラーズたちの前に立ち塞がるのは鉄帝国の下層労働者、その付近を浮遊しているのは幽霊のような人魂のような、明らかな人外――天衝種『フューリアス』。
「お前たちがイレギュラーズか。俺たちのために、家族のために、死んでくれ!!」
 ある者は木を倒すための斧を、ある者は大型の釘抜きであるバールを、ある者は土を掘るシャベルを……明らかに武器として使われてこなかったであろう道具を手に、顔を強張らせながらもにじり寄る。そんな彼らを前に、『ライブキッチン』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)は仁王立ちする。
「あなたたちがどこの宗派か知らないけれど、どんな宗派でも共通の理念があるわ。それは、『よいこはあたまなでなで。わるいこはおしりぺんぺん』ということよ。さて……あなたたちは今、お金をもらって人を殺そうとしている殺し屋さんです。これは『よいこ』でしょうか? それとも、『わるいこ』でしょうか?」
 諭すようなアルフィオーネの言葉に、下層労働者である彼らは苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる。彼らも内心、分かっているのだろう。その様子を見ながら言葉を続ける。
「まぁ、言わずともしれたことよね。このまま引き下がるのであればよし。ただし、これ以上の愚行をつづけるのであれば容赦はしない。たっぷり、お仕置きしてあげる」
「っ、そんなことは知っている! けどなぁ! お前たちに、俺たちの生活のことなど分かるか!」
 逆上するように吠え、手に持っていた武器を振り上げる。しかし、その攻撃を避けながら『新たな可能性』シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)は彼らに告げる。
「……自達、責める気、ない。でも、死ぬわけには、いかない。つまり……自達も、戦うだけ。悪く、思わないで、お互い様」
 シャノは彼らの背後に立つフューリアスに向かって、無数の弓矢が放たれる。出鱈目に放たれたそれは避けられるも、こちらが敵意を持っていることを示すには十分だった。シャノに続くように、『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)が前に出る。その姿は、他のイレギュラーズたちに比べて随分と軽装だ。ひらりと外套を翻しながら、フューリアスを牽制するように軽くジャブを入れる。その横で、『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は名乗りを上げる。
「さぁ、私と戦う者は誰ですか?」
「――!」
 挑発的な笑みを浮かべるトールの方を、何体かのフューリアスが振り向いて彼の元へと向かおうとする。
「かかったな!」
 トールに近づくフューリアスたちを、『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)が操る気糸による斬撃で、捕えるように足止めする。足止めできなかった者たちも、その斬撃を喰らったせいか、表だった傷は見えないが悶えているように見える。
「マリエッタさん、私たちは向こうを対処しましょう」
「……、そうですね」
『千彩万華』ユーフォニー(p3p010323)に声をかけられた『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は、表情を暗くしながらもユーフォニーの言葉に応える。下層労働者たち相手に心を殺しきれない。そう判断したのか、マリエッタは彼らの横を通り過ぎ、フューリアスを相手に魔力で作られた血鎌を振る。
「――――!!」
 血鎌によって斬りつけられたフューリアスは、金切声のような音を発しながら衝撃波を飛ばす。その攻撃は、近くにいたマリエッタやユーフォニーを襲う。
(っ、このままでは彼らにも当たってしまいます。彼らとフューリアスを引き離さなくては……)
 できるだけ多くを巻き込むように、ユーフォニーは万華鏡のような空間を展開する。その美しい幻想的な光景は、フューリアスの目には好ましく映らなかったらしい。一部のフューリアスはユーフォニーに視線を向ける。フューリアスを相手にした七人は飛んでくる衝撃波や攻撃をいなしつつ、確実に傷を負わせる。
「よし、今の内に……!」
 誰かが、小声でそう言った。その視線の先には雨紅。背後から武器を振り下ろしたところで、カタ、と何か音がした。
「させねぇぜ!」
 下層労働者と雨紅の間に割り込むように『スケルトンの』ファニー(p3p010255)が立った。ファニーはにやりと笑いながら、彼らの攻撃を避けることなく受け流す。
「よう、懸賞金が欲しいんだろう? 俺様と遊ぼうぜ?」
「へぇ? そんな細腕で俺たちと戦おうってか?」
「確かに細腕ではあるけどなぁ? ほら、こいよ!」
 ファニーの安い挑発に乗るように、五人が彼の元へと襲い掛かる。ファニーはそれらをひらりと躱しながら、フューリアスと離れるように後退する。ある程度離れたところで、雨紅の方へと目配せをした。――作戦第二段階の合図だ。


「こんな数いるなんて、聞いていません……!」
 フューリアスと下層労働民たちが離れたところを確認すると、雨紅はまるでフューリアスたちから逃げるようにファニーが引き付けた下層労働民たちの方へと向かった。そんな姿を見たある下層労働者が、ターゲットを雨紅へと変える。
「お嬢さん。逃げるなら俺たちの糧になってくれ!」
「それはお断りします」
 逃げるように駆けていた雨紅はくるりと振り返ると、雨紅の元へとやって来る下層労働者の一人を思い切り打ち上げる。
「ぐ、ぁ!」
「この!」
 雨紅に反撃しようと武器を振るおうとした下層労働者。しかし、その攻撃はひらり、と躱される。
「ほらほら、俺様を忘れるなよ? ――平伏せ、おまえたちは頭上の星々を見ることすら叶わない」
「は? ――っ、」
 ファニーの声が聞こえると同時に、一部の下層労働者たちの身体に異変が起こる。ある者は痺れによる痙攣を、ある者は黒い何かに縛られたような状態になったのだ。傷は負っているが深手ではない。
「くっ……おい! お前ら、こいつらをやれ!」
 動けなくなる仲間たちを見た一人の下層労働者が、離れた場所にいるフューリアスに向かって叫ぶ。他の仲間たちの手で既に数は減っていたが、彼の叫び声を聞き、数体のフューリアスが彼の元へと向かおうとした。しかし、その前にアルフィオーネが立ち塞がる。
「行かせないよ。あなたたち相手に手加減は無用ね。冥土に送ってあげる」
 低空飛行していた身体を更に上空へと浮き上がらせると、上から全てを燃やし尽くしそうな火炎ブレスを放つ。フューリアスが燃えるその様子は、まるで地獄の炎に焼かれる罪人だ。その光景を見た下層労働者は「あ、ああ……!」と震えた声を出しながら腰を抜かす。そんな彼の肩に、ファニーがぽん、と手を乗せる。
「ひぃっ!」
「悪いが、暴れられたら困るんでね。大人しく捕まってもらうぜ」
 そう告げると、どこからか取りだしたロープで身体を縛った。


 ファニーと雨紅を中心に下層労働者たちの相手をしている最中、他の仲間たちは彼らから引き離したフューリアスと対峙していた。
 他の仲間たちが引き付けている間に、シャノは再び弓矢を放つ。その攻撃の隙を突こうとするフューリアスが背後から彼を襲う。しかし、警戒は怠っていなかった。振り返り、雷撃を喰らわせたかと思うと瞬時にフューリアスと距離を詰める。
「墓地も、近い。あるべき場所に、還って」
「――っ!」
 一体仕留めると、怒ったのかだろうか。フューリアスたちは近くにいた者たちに向けて攻撃を仕掛ける。
「どうやら、還るつもりはないようですね!」
 足元は相変わらず悪い。自身の翼で低空飛行をしているシャノとは異なり、トールは地に足をつけている。そんなトールに向かってきたフューリアスの攻撃を、無理に避けることなく受け止める。トールは身体に傷を負うが、気にも留めずに一体ずつ確実に仕留める。そのお蔭か、徐々にその数は減ってきている。
「しかし、誰か使役しているのか? 統率がとれている……まぁ、良い。まずは目の前のことからだな」
 沙耶は自由を奪うように、気の糸を張り巡らせる。魔物である天衝種が大人しくあの下層労働者に従っているというのが引っかかるが、今それに考えを巡らせる場合ではない。
「邪魔をしないで貰おうか」
 足止めされたフューリアスに更に追い打ちをかけるように、沙耶は魔弾を放つ。その魔弾を受けたフューリアスは霧散するように消える。その様子を見たトールが、マリエッタとユーフォニーに向けて言い放つ。
「こっちはあと少しです! そちらは!」
「問題ないです!」
 ユーフォニーもマリエッタもまだ以前の依頼の傷が癒えきっていないとはいえ、フューリアスからの不意打ちなどはないのでそう判断して返事をした。事実、二人の前にも残り数体程しかいない。ユーフォニーは魔力を溜め、一気にフューリアスたちに向けて放つ。レーザービームのように放たれたそれは、フューリアスに貫通する。マリエッタは傷ついたユーフォニーを回復させながら、手が空いたところで弱ったフューリアスに血鎌を振るう。
「あと少しですね、ユーフォニーさん」
「ええ」
 フューリアスの数が減ってきたところで、下層労働者たちが「お前ら、こいつらをやれ!」と叫ぶ。その叫びに呼応し、残ったフューリアスたちは離れた場所にいる彼らの元へと集まろうとした。か、しかし。
「行かせないよ。あなたたち相手に手加減は無用ね。冥土に送ってあげる」
 それはフューリアスと下層労働者たちの間にいたアルフィオーネが、間に入り込み燃やし尽くした。


 フューリアスは皆、霧散するかのように消えて行った。イレギュラーズたちは、ファニーがロープで縛った下層労働者たちの元に集まる。縛られたからか、それとも無力であると分かったからか、彼らは暴れることはなかった。しかし、敵意を隠そうとはしない。そんな中、最初に彼らに話しかけたのは、マリエッタだった。
「……どうして、このような手段を選んだのですか? そんなに私たちは頼りにならないですか?」
「っ……! 違う、あんたらが『正義の味方』だってのは分かっている! けどな、俺たちには家族がいるんだよ!」
「そこまで分かっているなら何故だ。いくら大義名分があるとはいえ、本当にこれしか手段はなかったというのか?」
「家族を養うことの大変さを、お前たちは知っているのか? 奪われ、搾取され続ける俺たちのことを、お前たちは本当に知っているのか!?」
 沙耶の言葉に対し、悲痛な面持ちで叫ぶ。その表情には余裕はない。
「特別な技術もない。ただ身体を動かすことしかできない俺たちができることなんて、この程度が関の山だ」
「確かに、生きる為なら自分の心を偽り、目の前の苦渋の選択を受け入れなければならない事もあると思います」
「ん……生きるため、殺す。それも、自然の、摂理。けれど、奪って、殺せば、獣になる。もう、戻れない。やめておいた方が、いい」
「シャノさんの言う通りです。『家族のため』と思って他人を殺めようと、あなたが手にしかけたその業を、何の罪もない家族にも背負わせて生き続けるつもりですか?」
「――っ、」
 トールとシャノの言葉に表情を歪める。
「身近な家族を優先するのは当然です。私はそれを否定しません。むしろ大変な情勢のなか、大切な人たちと生きたいと願ってくれてありがとう。生きる希望を捨てないでくれてありがとう
 ――私が否定するのは、こんな情勢にした原因です!」
「そんなの……そんなの、分かっている」
 ユーフォニーの言葉にある者は項垂れる。
「皇帝が入れ替わってこうなったのなんて、馬鹿な俺たちでも分かる。だが、それでも、俺たちは一攫千金に賭けるしかねぇんだ」
「懸賞金を貰ったとして、冬を越した後はどうするつもりだったんですか?
 ……今、新皇帝に抗う派閥がいくつもあります。私たちはあくまで手助けをしているだけで、そのほとんどは鉄帝の人たちが主導しています」
 雨紅が語りかける。その言葉にシャノが「事実、自達、港、取り返しに来た」と続ける。
「もし皆様が『既に誰かを殺していた』なら、きっと捕縛だけで済ませはしなかったでしょう」
「それ、は……」
「港、動くようになれば、人が集まる。そうすれば、命も、繋げるかも」
「うんうん。なんだったら、炊き出ししたり、必要な物を私たちが支給したりするよ!」
「そんなこと――っ!」
 アルフィオーネの言葉に逆上するように、ある者が声を荒げる。しかしそれは、マリエッタが首元に血鎌を近づけることで静かになる。それにファニーが抗議する。
「おい! マリエッタ、何するんだ!」
「……今の未熟な私では、皆さんと同じように優しくできる気がしません。優しさを反故にしてまで何かをするなら、この手を血に濡らすこともできる――と、そういうことです」
 暗い表情のマリエッタは血鎌を退ける。その様子を彼女の後ろから、見ていたユーフォニーが「大丈夫ですよ」と声をかける。それは彼らに対してだろうか。それとも、マリエッタに対してだろうか。皆が判別できないまま、ユーフォニーは続ける。
「アーカーシュを始め、各派閥は越冬対策に乗り出しています。私たちを信じて欲しいです。……信じることに勇気が要るのも分かります。大切な人がいるなら尚更」
 するする、とロープを解く。彼らから敵意はもう感じない。
「それでもどうか……そのためらいに、勇気を」
 差し出された手を、彼らはぼろぼろと涙を溢しながら握った。

成否

成功

MVP

ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘

状態異常

トール=アシェンプテル(p3p010816)[重傷]
ココロズ・プリンス

あとがき

お疲れ様でした。
天衝種『フューリアス』を撃破し、彼らの計画も頓挫させました。
ご参加頂き、ありがとうございました!

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