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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>服だけを溶かす鉄帝スライム(ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてくる)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 説明しよう。服だけを溶かす鉄帝スライムとは――服だけを溶かすスライムである。
 鉄帝の山奥に住んでいるとされ人里に降りてくる事は……まぁ結構な頻度であるのだが。しかし敵対する姫騎士とかいう種族が現れない限り、そんなに人類に敵対的では無い事は――皆さん当然ご存じの通りだろう。
 しかし。昨今の鉄帝に渦巻く、恐怖や怒りの感情は彼らにも刺激を与えていた。
 平穏ではなく蔓延る騒乱の気配に鉄帝スライム達の感情もかき乱され……故に。

「街の方へと、鉄帝スライム達が群れを成して降りてきているらしいんだ……!! このまま街になだれ込んだ場合、どれだけの被害が発生するか分からない! その前にスライム達を駆逐してくれ――!!」
「服だけを溶かす鉄帝スライム……服だけ……?」
「あらあら、そんな動物もいるのね。混沌の世の中は広いわ」

 連中の討伐依頼が出たのだと、説明するのは情報屋であるギルオス・ホリス(p3n000016)である――ルエル・ベスティオ(p3p010888)やリリーベル・リボングラッセ(p3p010887)を前に、だ。
 二人共最近ローレットに属したんだっけ? 服だけを溶かすスライムに遭遇した事はあるかい? ない? 割と時々出てくるよ。その度にとんでもない被害を齎していくことがあるよ。僕が知ってる限り、幻想とか豊穣で出た事あるよ。まぁとにかく連中の姿を見つけたら――
「即、撃破するんだよ。取りつかれでもしたら大変な事になるからね――服が!」
「噂をしてればギルオス、来ましたわよ! 鉄帝スライム共ですわ――!!」
「あっ、待つんだヴァレーリヤ! 連中にはまだ一つ、大きな特徴が――!」
 と、その時。噂をすれば来た――服だけ溶かす鉄帝スライムだ!!
 指で指し示すはヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)である。うわあああ街道に沿って真っすぐ進撃してきてるうううう! なんで律儀に街道に沿ってくるんだろう。几帳面な性格なのかな?
 ともあれヴァレーリヤは往く。無辜なる民に手出しはさせぬと――! だが。
「うわ!? なんですのこのスライム達……ちょ、ちょっと待っ! このスライム達、私を見るとビンタしてくるのですけれども!!? なんでですの!? どういう理屈で!??」
 ただし。鉄帝スライム達には一つだけ例外がある。
 それは――ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてくるという事だ! なんでなのかは分からない。だけどそれは鉄帝スライム達の魂に刻まれた宿命であるのかもしれない……! ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤだけはビンタせよと――うぉぉ! ばちーん!
「私ちゃん、色々ビックリなんですけれども――うわ、こっちは普通に服を溶かしてこようと!」
「とにかく追い払わないといけないわね、これは!」
「ギルオス――さてはこれもまたお前の所為かあああああああ!!」
「僕は案内しただけだろう、どうして文句を言われなきゃ……ぐあー!!」
 が。ヴァレーリヤ以外の者達には、やはり衣服を喰い尽くさんと普通(?)に襲い掛かってくるものだ。故にリリーベルやルエル達は即座に迎撃の構えを取らんとする……ので、景気づけにヨハン=レーム(p3p001117)はとりあえずギルオスを殴っておいた。
 こうすればきっといい方向に進むはずだからな。多分! もう一発殴っとくか!
 ――なにはともあれ鉄帝スライム達が押し寄せてくる。
 一匹残らず駆逐してやるとしよう――皆の服が犠牲になる前に!! うおー!!

GMコメント

 うおー! 服を溶かすスライムだー! たすけてー!!
 リクエストありがとうございます、以下詳細です!

●依頼達成条件
 服だけを溶かす鉄帝スライム(ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてくる)を撃破せよ!!

●フィールド
 鉄帝西部、サングロウブルクにも程近い森の中です――
 その森の中を突っ切る様に鉄帝スライムは押し寄せてきています! このままでは街に到達し、数多の住民たちの衣類が犠牲となってしまうでしょう! その前になんとしてでも追い払ってください――!

 時刻は昼なので視界などには問題ありません。
 スライム達は傾向として、何故か律儀に街道に沿って街に向かわんとしています。

●敵勢力
 エネミー『服だけを溶かす鉄帝スライム(ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてくる)』です! 長いので『鉄帝スライム』としましょう!

 皆さん、鉄帝には服だけを溶かす鉄帝スライムがいるのは当然ご存じだとは思いますが、念のため説明しておきます――奴らは服を溶かしてくる特殊能力を持っています。しかし『服だけ』である様に、なんと素肌には一切の害を齎しません――!!
 どういう原理かって、そういう事になってるので、そういう事です。考えるな、感じろ!

 とにかく鉄帝スライムは衣服をむしゃむしゃしますので気を付けてください。
 めっちゃ大量にいますが、一体一体は弱いので薙ぎ払っていく事は可能でしょう。
 お湯とか塩とかにも弱い気がします。なんだこのスライム達、どうやって普段生きてるんだ……
 いいですね。とにかく取りつかれない様に気を付けておいてください――いいですね!

 あっ。ただしヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてきます。何が何でも必ず強めにビンタしてきます。それが自らに課された宿命であるかの様に――! ばちーん!!

●味方戦力
 ギルオス・ホリス(p3n000016)です。新人イレギュラーズの為に参戦してくれました――って、そんな訳ないだろう! 僕は情報屋だぞヨハン=レーム!! いや確かに僕は皆に依頼の案内はした――だけどだからと言って情報屋まで参戦する必要性ってなにかあるかい!? あっ、止めろ! 僕を盾にするな! やめろ――!! うわー!!

 ※自由に囮にでもしてください!

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度は、衣服の面積が減る度にわかんない事になります。
 でもヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤが強めにビンタされる事だけは確実ですのでご安心ください! パァン!!

  • <総軍鏖殺>服だけを溶かす鉄帝スライム(ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてくる)完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年11月30日 23時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
※参加確定済み※
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
※参加確定済み※
キャナル・リルガール(p3p008601)
EAMD職員
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
熾煇(p3p010425)
紲家のペット枠
トール=アシェンプテル(p3p010816)
つれないシンデレラ
リリーベル・リボングラッセ(p3p010887)
おくすり
※参加確定済み※
ルエル・ベスティオ(p3p010888)
虚飾の徒花
※参加確定済み※

リプレイ


 服だけを溶かすスライムは混沌に取って冬の風物詩である――別に春でも夏でも秋でも出てきてる気がするけれど!
「ふむ! 服だけを溶かすスライム! 古典的だが発生源は何なのだろうねギルオス君。僕が思うに錬金術師の失敗作か、それとも甲冑を着込んだ騎士に対抗するとか目的があるのか……見ようによっては服だけを溶かすというのは、それはそれで使い道があるとは思わないか? 戦術・罠・医療と数多に使用法が……こら、そのなんとも言えない顔をやめろ。僕は精一杯シリアス顔でこの仕事を乗り切るんだ!」
「今更どんな顔をしても手遅れだと思うんだけどなぁ、ヨハン!!?」
 スライムを見据えながら早速に矢継ぎ早に囃し立てたのは『帝国軽騎兵隊客員軍医将校』ヨハン=レーム(p3p001117)である。無理だから諦めなって! どう足掻こうがこれがマトモな依頼じゃないのは明らかだろ! 歴戦の君ならもう分かってるだろ!
「ともあれ……ギルオス、これを見ろ。そう、やかんだ。僕は今からやかんに入った水を魔力(まぢから)で温める、奴らの弱点と思われる湯が出来上がるまで時間を稼いでくれ。これが狙われたら僕たちは切り札を一つ失う事になるな、可能な限り離れておくぜ!」
「魔力(まぢから)ってなんだ! オイ、ちょっと待っ……オイ!?」
 離れておくぜ! 大事な事を二度繰り返したヨハンは超絶早口と共にお湯の作成にとりかかるものだ。うおおお!
「ハッ! アレは……服だけを溶かす鉄帝スライム(ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてくる)! 服だけを溶かす鉄帝スライム(ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてくる)じゃあないスか! いやー珍しいモノを視れたッスね! 眼福!!」
「ちょっと! 私の所だけ依頼のジャンルが別じゃありません事!? アイタ! アイタタタ!! こら、止めなさい! なんで殺意マシマシで往復ビンタしてきますの!!? 世の不条理が此処にありますわ!?」
 ばちーん! ばちーん! バンバンバンバン!!
 そんな音が響いたとギルオスが視線を向けてみれば――そこには鉄帝スライムを視れた事に歓喜する『EAMD職員』キャナル・リルガール(p3p008601)と超絶の勢いのビンタを受けている『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の姿があった。
 何かおかしくはなくて!? そんな叫びが掻き消える程のビンタだ! そういう習性を持ってるスライムなんだから仕方ない。ヴァレーリヤは……容赦するなッ!
「なんですか! この、服だけを溶かすって……なんですか!!?
 こんな生物が存在しても良いんですか!?
 倫理的によくない気がするのですけども――!」
 が。ヴァレーリヤはともかく、その他の面々は衣類の心配が急務だ! 特に『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)にとっては自らの性別がバレる様な事態はまずい――! これ、過去最大の強敵にして難敵では!?
 くっ。一刻も早く撃滅しなければ。
 しかしどうやって戦ったものか。今の所ヴァレーリヤを狙っているが……迂闊に攻撃を叩き込めばすぐさま液体をぶちまけてくるかもしれない。ていうかマジであの液体なんなの?
「服だけ溶かすのかーどんな原理なんだ? まぁでもこれも、スライムにとってのちゃんとした食事の一環なら、まぁそう言う事もあるのかしれねーな? 意味は分からないし理解できるとは言わねぇけどよ!」
「服だけを溶かすって繊維は溶かせるけど金属は溶かせないとかあるのかな。『服』と思わせれば溶かせられるなら、このスライムも使いようがあると思うんだ。定義上で効果範囲が変わるかを検証できると重要な何かが分かりそうだね……」
 思考を巡らせているのは『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)に『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)の二人。特にハリエットは思うものだ。上手く使えば粗大ゴミの処分に……えっ、現実逃避? 違うよ? タブン。
「人さまの召し物を溶かすだなんて嫌なスライムですこと!
 一体全体どういう育ち方をすればそのような暴挙をするようになるのか……
 肌を晒すというのは情緒もあってのことですわよ? ねぇリリ?」
「そ、そうね……うう、それにしてもはじめての依頼、緊張で胸がドキドキするわね」
「あら、そう――? 私ちゃんくらい肩の力を抜いた方がよくってよ? ほら」
 どこぞの猫も元気いっぱいですもの、ね? と『甘やかなる毒花』リリーベル・リボングラッセ(p3p010887)に紡ぐのは『特異運命座標』ルエル・ベスティオ(p3p010888)である。リリーベルは初めての依頼の様で、どうやら心臓の鼓動が早まっ……いや初めての依頼がこんなので大丈夫か!!?
 ともあれルエルと共に頑張るべく彼女は決意を固めるものである。
 どんなのが相手だとしても、全力でやれば……きっと依頼を達成出来る筈だから!
「行くわよ……! まずはスライムさんが届かないギリギリを……
 わー! スライムさんが触手を伸ばしてきたー!」
 ……達成出来る筈だから!


「ハァー、囮!? か弱い私を一体何だと思っていますの! さっきからビンタされ続けている私を見て何も思いませんの!? 地味に痛いんですのよ、アレ! 口内炎をうっかり噛んでしまった時に匹敵する痛さですのよ! 口内炎噛んだらまた広がる予感がするんですわよ――!! あああああ!」
「ああ! ヴァレーリヤに鉄帝スライムが関節技キめてる!?」
「うおーヴァレーリヤにだけ負担をマシマシには出来ねーぞー! ヴァレーリヤは何かしたんだろうし、いや何したかは知らねーが俺も仔竜形態で行くぞー! これなら服はかんけーねーしな! がぶー!」
「ちょっと! 私が何かしでかしたのは確定は止めてくださいます事!?」
 頬が段々膨れ上がってきてるヴァレーリヤを囮に今の内なんとかするんだ!
 抗議の声が挙がってくるものだが、だけど彼女に集中している今がチャンスなのは間違いない。ギルオスの言に次いで熾煇もまた仔竜の姿――つまり全裸――!? の姿で至ればスライムに溶かされる心配は……
 あっ! それでも物珍しさに触れようとしてる! でもビンタはしない!
 やっぱヴァレーリヤに何か原因があるんじゃねーの? 酒に酔って鉄帝スライムを酒瓶で殴り飛ばした事があるとか……まぁとりあえず熾煇もがぶがぶして抵抗するものである。うおー!
「はぁはぁ! お願いでございますわ私を守って下さいまし! ちゃんと守ってくれたら……帰り道に略奪するのは無しにして差し上げましてよ! 大サービスでございますわ! 夜道の背後を気遣わなくて良くなるんですのよ! ツケにした酒屋の費用を肩代わりしてくれるだけでOKで……あッ――!!」
「うーん。やっぱりヴァレーリヤさんはあのスライムと過去になにかあったのかな……? すごい闘志だよね、スライムが……これはもう一族に何かしたとしか思えないよ……」
「はぁ~もう近付きたくありませんわね……流石にこの子たち相手に接近するのはイヤイヤですわ~ハリエットちゃんさま! どうにかこうにか遠方からまずはお願いできればと!」
 皆を説得しようと敬遠な聖職者のフリをするヴァレーリヤ――そういう所だぞ! と言わんばかりにまーたスライム達のビンタが襲来! なので、まぁ、一応とばかりにハリエットの射撃が彼方より飛来する。その動きに呼応して動くのはルエルか。
 ハリエットが優先して狙うのは囮になってくれている者達に飛び掛かろうとしている個体だ。一体一体……いや数が多いので薙ぎ払っていこうか。撃って撃って撃ちまくり――さすればルエルは飛び掛かってくるスライムちゃん達を鉄扇で弾き飛ばすもの。
「ふふん。リヤちゃんさまとの因縁、ただならぬモノを感じますが……
 私ちゃんにまで来るのであれば容赦は出来ないですわ!
 この私ちゃん自慢の美しい鉄扇の餌食になりたいのは、次はどなたですの?♡」
 飛び散る飛沫がルエルの服を微かに溶かす――が。無遠慮なのが好みでないだけであり、ルエルは別に脱ぐ事は構わない。いやそもそも自らの身体に恥じる所があろうか! この程度で恥じらう程見、すぼらしいものではないですもの!
「あー……マジで溶けるんだぁ……
 やばいね、何がやばいってね、おにゃのこのね、あられもないお姿が……ネ!
 いやぁ……これは不可抗力だから仕方ないってヤツだ……ネ!」
 キャナルさん。カメラ目線で同意を求めてくるの止めてください!
 一応キャナルもスライムを何とかする為に反撃の一手を紡ぐものである。明らかに狙われている司祭がいるので全力で司祭を利用すればもっと楽に殲滅できそうだが、まぁ流石にかわいそうなのでちょっくら……ネ?
「しかし……いや待てよ……ひょっとしてひょっとすると……この鉄帝スライム達を使って、ちょっとした小金くらい稼げたりしないかなぐひひ!」
 ……何を想い付いたのかキャナルの口端に笑みの色が宿る。
 ひぃ、なんだかろくでもなさそうだぞぉ!
「この距離なら流石にスライムも……リリーベルさん、大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫よ――それじゃあ、この辺りから予定通り……お塩を撒きましょうか」
 そうして地上で様々に注意を引き付けていれば上空ではトールとリリーベルが戦場を眺める様に飛翔していた――直後、リリーベルが投じるのは塩だ。鉄帝頭部で取れる岩塩『マッスル・パウダー』を、えいえいっ!
 同時にトールも動く。スライムの攻撃が当たらぬ領域で剣撃叩きこむのだ! ふふん。幸い殺傷能力は皆無と聞いている。ならば不用意に近づかなければ、この依頼勝ち確ではないかと!
 このままリリーベルさんを庇いつつ粘り強く戦おうと思います! スライムだけに――って。

『ピギッー!』
「あっ!!」

 そうは問屋が卸さない。低空飛行していたトールに絡み付いてきた!
 あ、まずい! まずいです! バランスが取れず……うわあああ!
 そのままトールは落ちていく。と言うか引きずり込まれていく――
「ひゃあっ!? 太ももにぬめっとした感触が…? あわわわっ、墜ちる~~ッ!?
 ぴえええええ! スカートは、スカートだけはどうかお慈悲を――!!
 もっと具体的に言うと前だけは! 前だけは許してください~! ふえぇ~ん!」
「くっ、やはりこうなるか――! ルエルにリリーベル! そっちは無事か!?」
 案の定、大ピンチ。ヨハンは新人側たるルエルにリリーベルの状況を、やかんに卵入れて茹でつつ確認しようとする――いや君何してんのマジで!?
「ふふっ。トールちゃんさま、愛らしさがあふれておりますわね。
 あぁ。煌びやかなる肢体ですわ! あら、リリは何故慌てているのかしら?」
「ひぃ~ダメよ、お洋服を溶かすなんて悲しいわ……
 これ以上はちょっと、ね。だからごめんなさいね~ギルオスさん~……」
「そうですわよ! リリーベル! こういう時の為のギルオスシールドですわ!
 ほら行きなさい! 貴方はむしろ服面積が減った方が喜ぶでしょう――!?」
「なんだヴァレーリヤその偏見塗れの思想は!?」
 ルエルはむしろ歓喜していた。ルエル……この器、さては如何なる依頼をもこなす必要があるイレギュラーズに向いてるな……!? 一方で服をちらほらと溶かされつつある肌面積増量中リリーベルは、肌が晒される事よりお洋服が溶かされてしまっている方が悲しかった――なのでギルオスの背中を頼りつつお塩を撒いていくとしよう。えっ!!?
「ていうか僕!? 僕が犠牲に!? うわあスライムの大群がこっちにい!」
「はっ。ギルオスさんが危ない……! ギルオスさん今援護を……
 あっ、しまった。こっちも見つかっちゃった……!」
 であればヴァレーリヤに投げ込まれたギルオスの声に反応して動きが乱れたハリエットの気配が察知されたのかスライムが来る――! えぇい。私、近寄られたらほぼ何もできないんだよ。こないで? もう!
「服あんまり持ってないんだよ! 新しい服買う余裕あんまりないの!
 弁償してくれる? してくれないよね? だったら……来ないで!」
 問題点ははたしてそこなのか? しかしハリエットにとっては別に肌を晒しても死ぬわけでもないのだ――それよりも服代の方が痛い。乱射乱撃雨あられ。ハリエット、ちょっぴり怒りの儘にスライムを薙ぎ払う――! それでも数が多くてちょっとだけむしゃむしゃする個体に取り付かれれ、ば。
「やれやれ、そっちの方を気にしてたのかい? 今度一緒に洋服でも見繕いに行こうか――とりあえずは僕のコートを貸してあげるから、これでも上から羽織っておくんだ。多分ちょっとはマシに――うわ、また沢山来た!」
「わわ、ギルオスさん! 一応手袋とぱんつは守るから安心してね」
 最後の一線だけは守り抜いてみせると、ギルオスが羽織らせたコートの暖かさを感じながら――ハリエットはスライムを再びに薙ぐものだ。
「むぅ! しかしこれは……危険なエネミーではないが服を溶かされれば恥ずかしい、そしてなめくさったアルコール中毒にはびんたをしてくる。真剣に立ち向かうにはちょうど良い塩梅だな……ギルオス、ここまで適した相手を準備するとは流石はベテラン情報屋……」
「ゆで卵の次はコーヒーの準備しながら何言ってんの君???」
 ヨハンは――もう君キャンプ気分じゃないかい!? お湯の準備ちゃんとしてる!?
「かっー! もう仕方ありません事ね! 腹をくくって私がもう少し頑張れば宜しいんでしょう!? ほらほら、獲物はこちらでしてよ! 美しく性格も良く、可憐にして清純潔白、スタイルも良いグラマラスにしてスタイリッシュな完璧司祭が……ぐわー、急に威力を増してくるの止めなさい! どういう意味ですの!」
「そういう意味なんだろうなぁ。しっかしこいつら……どうも衣服というか、繊維を好んでるっぽいな? だったら布とかでもダメなのか? くそー外に干してあるタオルでどうにか代用出来ねーかと思ったんだけどなー」
「それよりそろそろ私の服、限界なんですけど~~!
 ぴゃああ! 待ってください待ってください、どうかお慈悲を~~!!」
 ともあれこのままでは埒が明かぬとヴァレーリヤ、後で囮代を請求しようと企みながら鉄帝スライムに立ち向かう――! 同時に熾煇は『衣服』がダメなのか『布』がダメなのかチェックしてみるものだ。うーん鉄帝スライム、どうして繊維が好みなんだ?
 が、そろそろまずい。主にトールの肌面積が!
 胸元とスカートを辛うじて抑えながら戦う彼――でもバレそうー!
「思ったより数が多いわね……! お塩まみれになっちゃったから帰ったらシャワーを浴びたいわね〜ルエルちゃん、後で温泉にでも行ってみないかしら?」
「ははぁ。それは良いですわね! 新しい洋服も欲しいですし、身体を清めたらデートに行きましょうか! ま、鉄帝は色々大変ですし、ちょっと下った方がいいかもしれませんけれど」
「温泉……!? おにゃこたちの、温泉……!? ははぁ――成程、閃いた、ネ」
 だが鉄帝スライムの数も減っているのだと、リリーベルにルエルも頑張るものである。全て無事に終わったら汗を流しに行くのも良いと……さすればキャナルの瞳が怪しく輝くものである。お巡りさん、この人です。

 ――と、その時だった。鉄帝スライム達の動きが、急速に鈍る。

 これは……塩とお湯か!!
「今だ、押し返せ! 機を此処にあり!」
「うぉー! 小銭、小銭の為に回収――あ、溶けていくッス!!」
 やっとお湯を投げ込むヨハン。続くキャナルは捕獲せんとして……しかしスライム達が消失していく……! くそ! お湯をかけるとこんなに溶けるなんて!
「コイツらを元に『服だけ溶かす医療用人造スライム』とかを作成する予定だったのに!! 割と火傷の時とかに役立つと思う」
「何はともあれ殲滅ですわー! うぉおお律儀に真っすぐ進んでくる、自分たちの真面目さを恨みなさい! これが聖職者からの裁きですわ! あ、あらギルオス? ごめんなさいギルオス。私、貴方の性癖にケチを付けるつもりは毛頭ないのだけれど……幾らなんでもそうやって堂々と見せつけられると困ってしまいますわ」
「君がさっき連中の傍にまで投げ込んでくれた所為なんだが!?」
 キャナルの野望はともあれ、続けざまにはヴァレーリヤもスライム達を一掃する――とても司祭とは思えぬ声を挙げながら。同時に切り拓かれた道の先に(服のダメージが甚大な)ギルオスがいれば……思わず目を逸らすものだ。
 ヴァレーリヤさんも女性だもんね……だったよね? アルコール魔人じゃないよね?
 ともあれそうしていれば綺麗に一掃できたものであった。
 鉄帝スライムの死骸? を熾煇は奥歯で噛みしめていれ、ば。
「それにしても、このスライムはどこから来たんだろうなー? 鉄帝の固有種とかそんな感じの特別なスライムなのか? どうやって増えるんだろうなー? ていうか結構コイツらうめーな。ところてんみたいに、何か酢とかに漬けても旨そーだな。ちょっと持って帰れねーかな」
「ぴええ……もう私は会いたくないですぅ……ぐすん」
 一方でトールはギリギリ色んなモノを護り切る事が出来たようだ。マジでギリギリだが。
 しかし――とヨハンは改めて鉄帝スライムに思考を巡らせるものだ。
 この機敏さ、やろうと思えば強いびんたが出来た筈だ。加減しているのか?
 もしかするとこいつら鉄帝スライムにも鉄騎の血が受け継がれている……?
「そうか、こいつらは一人前の戦士を育てる為にスパーリングを行ってるんだな? 一段落ついたら礼を言おう。遙かなる鉄帝国の山が育てたスライム……いや、先輩に。フッ、この仕事で一つ学びを得たよギルオス。僕たちは自然の一部であり、彼らとの違いはささいな事なんだ――ただ生まれた場所が微かに異なり、生まれ持った姿が微かに違うだけ――」
「何か悟りを得たような感じになってるのやめてくれるかい!?」
 この依頼そんな何か高尚な内容あった!?
 えぇい。もう頭が痛くなりそうだ……とにかく帰ろう。帰って服でも着替えよう。
「私も『きゃー』とか悲鳴を挙げた方が良かったかな」
「いや、無理をしなくていいよハリエット……
 と言うか君はそのまま純粋なままでいておくれ……ああいう風になっちゃダメだよ」
「え。誰の事を今指差したの?」
 誰だと思う? ギルオスはハリエットへと――はぐらかす様に視線を宙に浮かせたとか。
 何はともかく! 鉄帝スライムは見事イレギュラーズ達によって食い止められた。
 だが油断してはならない。鉄帝スライムが滅びた訳ではないのだ……

 いつかきっとまた山を下りて――皆の前に姿を現す事があるかもしれない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 服だけを溶かすスライム(ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤには強めにビンタしてくる)は混沌の風物詩ですね……!
 ありがとうございました!!!!!

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