PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<大乱のヴィルベルヴィント>ハルキエフの主は戦火にて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ざわざわと翅が擦れる音が響いている。
 虚ろな目をしたガドレー・ハルキエフ――とある領主だった男だ――は、積み上げられた死体が翅の音にあわせて嵩を減らしていく様子をじっと見ていた。
 時折、破損した屋根から降り注ぐ月光を照り返し光るその翅は玉虫色に変じ、その目を飽きさせることはない。
 ない、が……だからどうだというのだろうか。
 彼は領主として役目を全うしようとし、否定され、そのうえでなお人ではないものを率いて人を救おうとした。
 だが、彼がとうの昔に「人を統べる領主」としての資格を喪っていたことについて、威勢のいい側近も他の何者も、ついぞ教えることはなかった。
 彼の統治していた領地はすでに『新皇帝派』の手にあり、彼もその麾下に入って戦っている。
 それが領民を守り、矢面に立たせぬことだと信じて。
(信じて「いた」、が正しいな。力を持たぬ者はもう、死んだはずだ……私が攻め落とした彼らのように)
 力なき者を守るために力を振るい、敵と見做した者を殺して回った。『話せば分かる』という言葉も何度か聞いた。
 結果、救うはずだった無辜の民はより大きい力の流れに押しつぶされ消えていった。
 ――デシェル。私は間違っていたのか?
 メイヤ、貴様は。


 ギア・バジリカよりほど近い鉄道施設『ルベン』。
 これから訪れる冬への準備、そして新皇帝派の妨害工作への対処も兼ね、革命派の面々はルベン奪還作戦を計画することとなった。
 一部の者は、ルベン周辺で発掘される古代兵器にも浅からぬ期待を寄せている。副次的な効果も十分に狙えるというわけだ。
 ――だが、新皇帝派に堕ち、現状で力を背景とした拡大路線を突き進む領主の一人がこの地に派遣されている事実を革命派の諜報班が掴み、その詳細をギア・バジリカに持ち帰った。
 その者は魔種であり、その名はローレットに交戦記録として残されていた。
 ガドレー・ハルキエフ。
 かつて己の領地を守るため『新皇帝派』だと吹き込まれた他領を切り崩し、反転したことでローレット・イレギュラーズを退けた男である。
 不幸中の幸いは、供回りの魔種の不在。
 大なる不幸は、従える天衝種の悪辣さと、今まさにルベンに到着しつつある、オースヴィーヴルの軍人達の存在。
 斯くして、汎ゆる人の思惑と死の匂いが立ち込めるなか、ルベン奪還作戦が幕を開ける。

GMコメント

●成功条件
・ガドレー・ハルキエフの撃破or撃退、天衝種の撃退
・オースヴィーヴル軍の撃退
・(努力目標)オースヴィーヴル軍の過半数を殺さず捕縛する

●ガドレー・ハルキエフ
 拙作『<総軍鏖殺>疑心、悪鬼とともに』の結果を受け、配下だった男からの呼び声を受けて反転した憤怒の魔種。現在はグロース将軍麾下となり、『鉄道施設ルベン』の防衛にあたっています。なお、もともと同行していた件の魔種の姿は現在のところ見当たりません。
 指揮統制能力が極めて高く、レンジ3以内の天衝種にEXF/CT/特殊抵抗の増加効果を与え、且つ【副】【瞬付】により5体の友軍に限り存在感を希薄にすることができます。
 これは「移動、全力移動」のみ選択した場合に適用されるもので、【ブロッキング】+移動可能な【気配消失】に近い性能を持ちます(使うとしても1~2回でしょう)。
 本人は主に剣技により戦いますが指揮官タイプのため『十分倒せる強度の魔種』止まりの性能です。自覚があるため、本人は指揮と連携を重視します。強いて言えばEXFがやや高め、生存能力に大きく振った構成です。

●ラースモールド×無数
 全長10cm程度の甲羅状の外鋼を持つ小虫。これでも天衝種です。
 攻撃行動を行いませんし、HPも後衛ですら一掃が容易な程度です。
 ただし、これらの特性はそこそこ高いEXFと「かばう」の積極的使用にあります。当然ながら鈍いし小さいので単体では無視して問題ないのですが、多数が特定対象にとりつき「かばう」を使用した際、複数が死につつ一部がEXFで復活し、補いあいながら対象を生かそうとするところにあります。
 その代わり、対象は機動と反応が落ち、HPが継続的に微減します。

●マシーナ・タウロス改×20
 前述のシナリオに登場した天衝種の改良版です。ラースモールドが常にとりついている個体が5~6体はいるため、「そうでない」個体の処理を優先すべき。
 前回同様、曲射による遮蔽物無視の射撃と各種矢を使い分ける弓手タイプ、前回とやや異なり【移】【足止系列】などを用いて機動力の優位を積み上げてくる槍兵タイプに分かれます。
 数が数なので、前回よりは強いとはいえ個体性能は脅威とまではいえませんが、ガドレーの統率下だと話が変わってきます。

●オースヴィーヴル軍人×15~20程度
 第三勢力。基本はイレギュラーズに敵対しますが、襲われれば天衝種にも応戦します。<革命流血>の流れで、革命派、こと司教アミナの手引きで襲撃された(と勘違いしている)オースヴィーヴルの領民が挙兵し、ルベン地下の古代兵器を狙っての進軍です。
 そこそこ練度の高い兵隊達で、個の力こそ高くはありませんが互いにかばい合い連携しあって戦闘を行うため、スペック以上のしぶとさと実力を感じることでしょう。
 非常に防御力の高い重装兵を1~2名抱えています(2名ブロック可)。

●(友軍)歯車兵(散弾銃列)×10
 革命派の技術力により作られた『歯車兵』の一種です。
 耐久性や基礎性能が高いとはいえませんが、大きな特徴は炸裂散弾銃(物中範・低威力【必殺】)を使用できることです。
 機動力に乏しいですが、デコイに使ったり誘導しての斉射など、有効活用は可能でしょう。
 どう運用するかで潜在的な難易度がそこそこ上下します。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <大乱のヴィルベルヴィント>ハルキエフの主は戦火にてLv:35以上完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年12月08日 22時07分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)
微笑みに悪を忍ばせ

リプレイ


「おー、めっちゃいるー! こりゃ、よーく集めましたなあ!」
「平坦な地形に拓けた視界、油断ない陣容……そしてこの数の差か。これはまた」
 『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は新皇帝派勢力のあまりの数の多さ、そして一糸乱れぬ統率力に舌を巻く。遠巻きから見ても綻びが見当たらないとなれば、近付くのは尚更危機感を覚えるだろう、とも。『獏馬の夜妖憑き』恋屍・愛無(p3p007296)の目からしても、この状況は脅威に写った。これに、オースヴィーヴルの人々が合流し乱戦を強いられるのだ。最悪の想定もやむを得まい。
「でも、これが成功すれば一歩前進なの」
「困難だが成し遂げてみせよう! オースヴィーヴルの人達も可能な限り生かして、だけどね!」
「交通の麻痺も、派閥のいざこざも、オースヴィーヴルとかいう連中とのいざこざも全部新皇帝派の思惑通りってか……くそ、面倒っスね」
 『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)と『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)の目には、明確に光が灯っていた。凶悪な状況ではあるが、不可能なことはなにひとつなく。そして、それを解決できるという――実力に裏打ちされた、どこまでも疑いのない澄んだ瞳である。他方、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)にとっては今の状況すべてが新皇帝派の掌の上であり、彼等が関知しないオースヴィーヴルの混乱もまた、彼等に利する。やはり元を断たねば話は動かないということに他ならない。
「……来たか、ローレット。『遅かったな』と言ったほうが良いか?」
「ガドレー。貴様をあそこで仕留められなかったのは俺の失態だな」
「さて、どうかな。君ひとりが抱え込むのは傲慢ではないかね?」
 距離を詰め、周囲を警戒する仲間達とともに戦闘射程に踏み込んだ『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)は、重く閉ざしていた口を開いた。待ち構えていたガドレーにかけた言葉は、彼からすれば傲慢と捉えられただろうか? 彼一人で戦局がひっくり返っていたのなら、それは奇跡の体現に他ならないからだ。
「対面するのは初めてですが、いやはや……そこまで部下や領民の事を気にかけているとは、領地を治める貴族として感服しましたよ。とんだ間抜けも居たものだとね」
「怒りで目を曇らせた結果がこれとはな。反転したあなたを救う術はないが、これ以上の犠牲は許容できない」
「高尚な決意や軽い挑発は終わったかい? 私が愚図であることと、君達に負けることはイコールにはならない……ここまでは分かるか? そのうえで、倒せるというならかかってくるといい。受けて立とう」
 『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)の挑発は、果たして相手にのみ向けられたものだっただろうか? 自戒のようにも聞こえたのは、ガドレーのみだっただろうか。ガドレーはそれを自覚している。『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は彼を救えぬ代わりにこれから被害に遭うであろう人々を減らし、以て彼への意趣返しとする気でいる。その意気やよし、ということか。遠くから響く足音はオースヴィーヴルの軍勢、その目には揃って明確な怒りが灯っている。――この感情が齎すものの意味を、果たしてこの時のイレギュラーズは理解していただろうか?


「来いよ、三流領主! 偉い人なんでしょ? 私と一曲踊ってくれない?」
「生憎、風情の分からぬお嬢さんに預ける手はないものでな」
 秋奈の手元から飛来した斬撃は、ガドレーの身に確かに届いた……ように見えた。続けざまに向けられた挑発の言葉は、並の相手なら感情を顕にして秋奈を狙っただろう。だが、ガドレーは微動だにせず弓兵を彼女に照準させ、斬撃ひとつで彼女を落としにかかる。……違和感がある、と秋奈は眉を顰めた。
「落雷注意! ってね。地上の仲間に気を取られてると上から雷に打たれてしまうよ?」
 秋奈に矢を浴びせかけた弓兵たちの数体を巻き込むように、上空から雷撃が迸る。それが自然現象ではなくマリアによる人為的、否、『神威的』とでも呼ぶべき事象なのは明白であり、威力こそ無視できようがその速射力と妨害性は純然たる脅威に映ったのは間違いない。彼等の足止めを二人で行うにはあまりに少ない。が、多少なり狙いを引き付ける意味では、その活躍は出色のものであったろう。
(今のうちにオースヴィーヴルを引っ張ってきてくれるか、いっそ倒しちゃってくれると私ちゃんはとっても助かるんだけどね……動かねえなあこの領主!)
 秋奈は正面切ってガドレーに挑みかかり、彼の行動を制限できるという確信があった。だが、なにか、計算違いがあるように思える……そう感じたのと、ガドレーの足元から砂のようになにかがこぼれ落ちたのとは同時だった。

「イレギュラーズだ! 警戒しつつ押し包め! 数はこちらが上だぞ!」
「甘く見られたものだ。だが、確かに多い」
「相手にあわせて動くのは悪手なの。先ず待ち構えて確実に倒すのよ」
 遠巻きにイレギュラーズ、そして天衝種達を見咎めたオースヴィーヴルの指揮官は、愚直な特攻は悪手と理解しているのだろう。数人単位で散開し、しかし重装兵を分散させずに中央に配置して突破すべく向かってくる。愛無はその数に閉口しつつも、胡桃の雷撃を受け足並みを乱した者達目掛け咆哮を上げ、その機先を殺いだ。
「歯車兵!」
「回り込むっスよ! 新皇帝派と俺達とで挟めば無理攻めも出来ねえだろ!」
 ウェールの合図に合わせ歯車兵たちが散弾をばらまいてオースヴィーヴル兵を追い立て、ウェール本人と葵も攻めに回ることで彼等の動きを制御せんとする。狙いは新皇帝派とイレギュラーズの間に追い込み、新皇帝派の動きを牽制しつつオースヴィーヴル兵の意識を逸らすことが狙いらしい。
「細かい問答は後だ! 今すぐ立ち去るというなら見逃す。命惜しい者は即刻退避しろ! さもなくば、天衝種と魔種が諸君に牙を向くぞ!」
 ダメ押しとばかりにジョージの脅しが入り、数名の兵士がたじろぎ二の足を踏む。周到な攻勢のまえに傷を増やしているのも大きいか――しかし。
「喝ッ!」
 地面を盛大に叩く音と、咆哮一発。それが指揮官の杖と喉から発されたものだとは、その場の誰もが信じられなかったやもしれぬ。
「衛生兵、治癒術! 装甲兵、囮は無視しろ! 前進! 射程のある者は木偶を落とせ! 怒りの儘に動くな!」
「ちょっと……これは想像以上に厄介なのよ」
「僕としてはこの布陣も少々不安が残るけどね。新皇帝派に一般人を近づけるのは……」
「ですが、数は多少は減らせていますよ。十分な効果があるということでは?」
 当然、オースヴィーヴル兵はさきの強烈な攻撃の連続で倒れる者もいた。が、重装兵の存在や治癒術士が健在なこと、何より指揮官の指揮能力と感情統制が何分に強烈だ。このままでは想定よりずっと悪いと、胡桃は警戒を強くする。愛無にかわって兵士を抑えるウィルドは自らの実力と護りに自信を持っていたゆえに気づいていなかったが……否。
『そもそもその危険性に気付いていたのは愛無だけだったのではないか?』
 そう、今となっては語らざるを得ない。
「…………おかしい」
「どうしたっスか、藪から棒に」
「俺も気になっていた。天衝種の数が想定より少ない……?」
 ウェールが出し抜けに呟いた違和感に、葵は思わず顔を歪めた。ウェールはすでに2体の使い魔を放ち、他の面々もそれぞれ警戒を強くしている。というか、だ。この激変する状況下で牽制射のみにとどめ、騎兵の動きが秋奈とマリアへの迎撃のみ――というのはいかにもおかしい。ジョージもその違和感に気づいていた。気配消失系統なら、視野を広くもてば問題ない。そんな単純で強烈な解決策、そこに陥穽があったのではないかと。
「そもそも、ですが。使い魔の反応が」
 ウィルドの口からその続きが放たれるより早く、ウェールの周囲を固めていた歯車兵が次々と破壊されていく。幾つかは山なりの射撃により、或いは、『そもそも潜んでいた伏兵により』。
 驚愕を貼り付けたウェールの視界の隅で、使い魔の視界が赤黒く塗り潰された。

「さっきから『お誘い』してるのに、全く靡いてくれないなんてあるかい? 私ちゃん、自信喪失しちゃうぜ?」
「私の落雷に巻き込まれてるはずなのに……?!」
 秋奈とマリアはよくやっていた。
 ガドレーの正気を奪うことはできなかったが、釘付けにはした。剣戟と槍衾を掻い潜って幾度も落雷を、挑発を『当てたはずだ』。彼の足元を見れば、どこからか舞い込んだのか砂利めいたものが転がって――?
「そこの、君。そう、以前私の首に届きそうだった君だ」
 ガドレーは、敢えて二人を無視した。そして、ジョージへと視線を向けた。
「君は、目の前で私が『こうなる』のを見たはずだ。なぜ、私は反転した? あそこに、何が居たと思う? ……そして、私達と君達の間には誰がいる?」
「な」
 何を言っている、とジョージは問い返そうとした。そして、回りくどい言葉のすべてを悟った。

『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』。
 居並ぶイレギュラーズ達は数多の戦場を駆けてきた。
 ゆえに、多く戦ってきた魔種達が持つ『その特性』よりも、確固の実力をこそ重視していた。なにしろ関わりの薄い相手の呼び声など、聞くに値しないからだ。
 だが、今まさに怒りに燃え、義憤にかられ、命の危機を目の当たりにしたオースヴィーヴルであれば、どうだ? 反転こそしないまでも、狂わせるのは容易いはずだ。
 だからこそ。ウェールの周囲にとりついたマシーナ・タウロスを撃破した彼等が気付くにはあまりにも。
 

 その状況に至ったという事実を、先ずは受け入れるべきであり。
 その事実を招来したのは、自分達の策略通り……と、いう事を理解することが最優先となる。
「おいおい、俺達がやりたかったのはそういうことじゃねえって――」
「余り、私を追い詰めた者等を冒涜する趣味はないが。君達は我々魔種というものを少々強いだけの魔物と同列視していなかったか?」
 葵の『そんなつもりでは』に、ガドレーは冷たく言い放つ。愛無は多少なり覚悟していたが、想定よりもずっと最悪だなと歯ぎしりをする。ウィルドは最前線で攻撃を受け止めていたが、よもや――よもや、天衝種と組んで発狂したオースヴィーヴル軍が雪崩を打って向かってくるなどとは想定していない。
 賢く戦略を組んで突っ込んでくる弱兵、程度の認識しかしていなかったのが、狂乱と憤怒に塗れ一方通行で襲いかかるだけでこうも面倒になるのか、と。
「領主サマよ……さっさと手を引いてくれない? ケーキの予約が遅れるぜ?」
「オースヴィーヴルの愚図を全員殺して、“ここ”まで刃を届かせてからすべき交渉だ、それは。なんなれば君達を串刺しに処してキャンドル代わりとしようか?」
 秋奈の挑発にしかし、ガドレーは己の首に手刀を触れさせて言葉を返した。その首筋には、這い上がってきたラースモールドが見え隠れする……『想定外だった』、とは言うまい。先程から感情が小動もしないと思えば、理由はそれかと。
「反転して、お前の理想は叶ったか? 一人でも多く、お前は守るべき者を守れたか!」
「誰一人守れなかった。君達はどうだ。あの戦いで、我が領民を一人でも救い出せたか? 命からがら逃げるのが精一杯ではなかったのか? 志が高くても、私には力がなかった。君達はどうだ?」
 マシーナ・タウロスからの矢による集中砲火を引き受け、じりじりと前進しながらジョージは叫んだ。上空からマリアの雷撃が降ってくることで些かの緩和はあれど、暴力的な勢いであることになんら変わり無いのは事実。
「ガドレー君! 領地のみを守った所で何が残るというんだ! 民が居てこその領地じゃないか! それを忘れてどうする!? 魔種に好き勝手利用されたままでいいのか!? 意地を見せろ!」
「……残念ながら、もう私は魔種なのだよ。領地も民も新皇帝派に捧げた、ただ一人の魔種だ。意地を見せるとすれば、今ここで君達を退けるぐらいだ」
 或いはマリアの「説得」は、彼がこうなる前であれば有効だっただろう。だが、その言葉の一つ一つが遅きに失した要素「でのみ」構成されている……現実は、彼女の希望的観測を悪意によって下回る。
「このまま怪我人ばかり増えても逃げ切れんな。撤退すべきだ」
「まだ、敗けちゃいな……っ」

 愛無は辛うじて足を止めていない現状を潮時とみて、冷酷ともいえる判断を下した。反論しようとしたウェールは既に立てる状態ではなく、皆まで言う暇なく愛無に抱えられる。
 追撃しようと思えば出来ようが、ガドレーはそれをしなかった。……それよりも、狂乱の渦にあるオースヴィーヴルの者達をどう扱うかで心が一杯であったから。

成否

失敗

MVP

恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣

状態異常

日向 葵(p3p000366)[重傷]
紅眼のエースストライカー
ウェール=ナイトボート(p3p000561)[重傷]
永炎勇狼
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)[重傷]
音呂木の蛇巫女
恋屍・愛無(p3p007296)[重傷]
終焉の獣
ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)[重傷]
微笑みに悪を忍ばせ

あとがき

 お疲れ様でした。
 戦力配分、敵の根本的な特性、その他諸々。準備すべきことが多かったがゆえのシビアな積み重ねだったと思います。

PAGETOPPAGEBOTTOM