シナリオ詳細
<獣のしるし>嘗ての汚泥、すすげど塗れて
オープニング
●祖父よりの手紙
相変わらず北へ南へと飛び回るアンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)の元に、驚くべき報が届いた。
第一の驚きは、三年前の『あの事件』以降連絡を寄越してこなかったアンナの祖父オーギュスト・ダンドレイクから手紙が来たことだ。
天義国内の領地経営をすべく事務所に戻ってきたアンナに、困惑した様子の執政官がよこしてきた手紙は確かにダンドレイク家のスタンプがおされ、封筒におそるおそるペーパーナイフをはしらせると第二の驚きが待っていた。
「対鉄帝国境沿いに、ベアトリーチェらしき影……?」
ローレットが最初に戦った冠位魔種『ベアトリーチェ・ラ・レーテ』のことを、あなたは知っているだろうか。
かつて天義という国を滅ぼしかけた存在であり、事実ローレット・イレギュラーズたちのもたらした奇跡がなければ滅んでいたとまで言われる大事件。いわゆる『冥刻のエクリプス』事件の首謀者である。
事件の始まりはといえば、国内に死んだ筈の人間がかつての姿で帰ってくるという月光人形事件からであった。国内は混乱し、その隙を突くかのように数々の大事件が勃発。
大司教が魔種であった事実や大物執政官の政治的腐敗、国家的大事件であった『コンフィズリーの不正義』が偽りであったという事実の発覚や、法王を狙ったテロリズム。
しかし最も強烈に、そして悪夢のように焼き付いているのが『煉獄篇第五冠強欲』ベアトリーチェ・ラ・レーテが天義の大地に展開した『暗黒の海』である。
汚泥の世界とも呼ばれるこれは、ベアトリーチェ・ラ・レーテの展開した固有結界のようなものであり、汚泥の軍勢が支配する魔境であった。
「その『汚泥の兵』が殉教者の森に展開しているって言うの?」
死者は蘇らない。それは冠位魔種ですらあらがえない世界絶対のルール。ベアトリーチェの再来という可能性を一旦脳内で除外し、アンナは別の可能性を模索した。
模索とはいったが、暗中に手を翳すようなもの。今は情報が少なすぎる。
なにかヒントはないかと手紙を読み進めると……簡潔な文体で『殉教者の森へ行け』という旨の文章で終わっていた。
というより……「ベアトリーチェらしき影あり、殉教者の森へ行け」という極めて簡潔な文章しかそこにはなかった。驚きのあまり時間や思考が引き延ばされたのだと気付いて、アンナはほっと息をつく。
だが、少しだけわかる。
文字のどこか角々しい筆体の中に混じるまるみや、インクの太さからわかる万年筆を押す力のやわらかさ。少ない字数でありながら、アンナへの温かみのようなものが、その手紙からは感じられたのだった。三年前に触れたあの温かい手を、思い出す。
紙片に焚き付けられたであろうどこか爽やかな香りを吸って、アンナはきびすをかえす。
「殉教者の森へ行くわ。今頃ローレットにも同じような情報が入ってるだろうから」
●ワールドイーター
ローレット天義支部は混雑し、複数の依頼書が情報屋によって発行されている。
アンナが手に取ったそれは、やはり殉教者の森に関するものだった。
「『殉教者の森』は鉄帝天義間にある深い森です。木々の影響で非常に暗く、ある意味国を隔てる森といって良いでしょう。
かつては鉄帝国が領土を主張したこともありましたが、『気高く聳え立つ聖塀』の建設以降天義領として続いています。ですがその『聖門』が勝手に開かれ、森には『汚泥の兵』が大量に沸いています。それだけではなく……」
言いよどむ情報屋、アンナが怪訝そうに先を促すと、情報屋はROOに関する資料を開いた。
「ROOネクスト世界内にて確認された『ワールドイーター』。これが同時に出現しているそうです」
その事件は知っている。ROO内の天義に相当する国を滅ぼしかけた怪物だったはずだ。
「それが、現実にも……一体何が起きてるの?」
「それを今から確かめるんです。といっても、やるべきことは怪物の討伐なのですが」
そう、依頼内容は『影の軍勢』の討伐。
国境を越え鉄帝国へ進軍する彼らを放置すれば、いずれは帝国の弱者達がその餌食となるだろう。新皇帝が弱者を守って派兵するなどありえないからだ。
「あなたにはこのエリアでの討伐をお願いします。暗い森ですので、ライトを持っていくとよいでしょう。お貸ししましょうか?」
親切にランタンを指さす情報屋に、アンナは礼を言ってから依頼書を取る。
まずは、確かめなくては。
この問題はきっと、天義と無関係ではないのだろうから。
- <獣のしるし>嘗ての汚泥、すすげど塗れて完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月25日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
危機感、というものがある。
かつて死した者が再び現れ、ささやきかけてくることへの恐れ。
かつて社会を崩壊させてしまった存在が、再び現れ国を壊してしまうのではという恐れ。
天義国内にやんわりと渦巻いているのは、そんな恐れだった。
少なくとも、『あのひと』が『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)に手紙を送ってくる程度には、国に危機感が蔓延しているのだろう。
「そう。お祖父様が私に連絡するくらい、事態を重く見ているということ。まずは、この目で確かめてみましょう」
アンナは手紙を鞄へとしまい込むと、代わりにとばかりに水晶の剣を引き抜いた。
兄の意志が籠もったであろうそれは、深い夜の森でもきらめいて見えた。
『殉教者の森』についての知識を、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)は深く知っているわけではない。
「確か、鉄帝と天義の国境沿い……? なのよね」
「そうね。鉄帝国って周辺国に対してとにかく領土を主張するところがあるから、天義も外交に苦労してたみたい。海洋にすら持ち込んでくるくらいだもの」
『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)が笑い話のようにいうが、目の前にそびえ立つ『気高く聳え立つ聖塀』なる巨大な壁の列を見る限り、笑い話ではないのだろう。
「軍事力を背景に領土を拡大……か。別に悪気があってやってるわけじゃないんでしょ」
「そりゃあね。寒くて飢えるような土地ばっかりだから、豊かな土地を欲しがるのは当然だと思うわ。シレンツィオが手に入った時は小躍りして喜んだはずよ」
「小躍り……」
セレナはあのヴェルスというイケメン皇帝が小躍りするさまを想像してくびをぷるぷると振った。夜のクラブでユーロビートを踊りそうな顔をしてるせいでイメージがそっちに寄ったのだ。
「話をもっと前に戻しましょ。ベアトリーチェの戦いのことは知ってるのよね?」
「うん……」
イリスが複雑そうな顔をした。よほどのことがあった顔だし、実際あったのだ。
動きを鈍化させたとて、無限の増殖を見せる暗黒の海――汚泥の兵を食い止め、削り、倒し、延々と繰り返す時間は続く。
それはまるで泥沼に嵌まって溺れるかのような、それこそ地獄のような体験であった。
「古参? って言って良いのかしら。多少前からローレットに所属してたイレギュラーズなら、あの戦いのことは忘れられないわよね」
『銀焔の乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)も例外ではない。100人規模の精鋭が死を覚悟して挑んで、奇跡がいくつも起きて、そして文字通り奇跡的に勝利を収めたのがあの戦いだ。
アルテミアはこほんと咳払いをして気分を変えた。
「それと、『ワールドイーター』のことも気になるわ。あれってROOで観測されたバグエネミーよね。現実にいるってことはバグエネミーとは別物ってことになるけれど……」
「どちらの世界にもいたけど、運が良いか悪いかこちらでは確認できずにいて、今こうして目の当たりにしているってことなのでしょうか?」
ROOから『外に出てきた』ケースは、秘宝種に電子生命体として入り込んだケース以外には確認されていない。というより、練達の中枢にのみサーバーがあるのだから、そこから抜け出したらバレるだろう。
「『向こう』ではなぜ発生したのかわかりますか?」
「それこそ、世界のバグとして自然発生したんじゃなかったかしら?」
『凛気』ゼファー(p3p007625)が既に開いてしまっている門へと近づいていく。
門の向こうは薄暗く、そしてそれ以上に淀んだ気配が充満していた。
この先に待ち受ける戦いの予感に、ゼファーの肩がぶるりと震える。いわゆる、武者震いだ。
「泥人形の波に風穴開けて、エスコートするのが私の役目ってワケね。
お客さんが多すぎるのも考え物ですけど、まあ、退屈するよりはマシかしら」
「ふ、泥人形か」
『不運《ハードラック》超越』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)は意図せず重なった皮肉に小さく笑う声をあげた。
「あら、ごめんなさいね? あなたのことを言ったんじゃないのよ?」
「分かっているとも、ゼファー殿。同じ泥人形でもモノがちがう。俺直々に本当の泥人形の戦い方というのを教えてやろう」
「…………」
『人形』というワードに反応したのは、実はマッダラーだけではなかった。
『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)は自分の胸に手を当て、考える。
『死者を摸した人形』という存在は、あまりにも自分と重なりすぎている。
違いがあるとすれば、その目的だろうか。
自分は愛されるために生まれ、月光人形は滅ぼすために生まれた。
結果悲劇が待っていたという点では、同じモノだったのかも知れないが……。
「月光人形というものに意志や自我がなかったというのが、せめてもの救いなのでしょうか」
きっとそんな人生、耐えられないだろうから。
「さ、いきましょ」
先頭でアンナやゼーファたちが呼んでいる。
グリーフはくびをゆっくりと振り、彼女たちについて歩き出した。
●
森の中はひどく薄暗い。たまたまこの場所がそうなのか、何かしらの魔術的影響が及んでいるのかはしらない。
「背の高い木が密集する森ってね、生えてる木の高さにも段階があるの。だから何枚もフィルターが重なるみたいにして木漏れ日を小さく小さくしていって、最後には昼間ですら真っ暗になるのよ。ここはそれと似た雰囲気ね」
セレナがそう語ると、すぐに暗視のポーション瓶を開いて飲み干した。
目に月光の光が宿り、視界の明度を上げていく。
グリーフは魔術をマッダラーは暗視効果のあるゴーグルを、それでも足りない分を補うためにか、イリスは後ろ手ふわふわ浮いてる猫型のぬいぐるみをぴかぴか発光させた。
「敵は? 近くのはずだけど」
「んー……」
アルテミアはなんとも複雑な顔をして、抜いていた剣と短剣を交差させるように構える。
「もう囲まれてる、って言ったらどうする?」
「そんな気はしてたわ」
水晶剣を構え、アルテミアと背を合わせるようにして構えるアンナ。
「森に入る時点から見張られてるような気がしてたし、ずっと嫌な気配はしてたのよ」
「しかし奇襲はしてこなかった。相手がこちらの戦力を警戒したか……あるいは、壁の外の増援を警戒したかだな」
マッダラーはあえてだらんと両腕を垂らすような、無防備そうなフォームをとって前に出る。
木の陰に隠れていた汚泥兵たちが一斉に姿を見せ、闇に紛れるようにしていたワールドイーターがざわざわと姿を見せる。高度を高くして、こちらからの攻撃をすぐには受けないように警戒しているようにも見えた。
汚泥兵の一人が泥のレイピアを作り出しフルールへと突進してくる。
そこへ割り込んだのはマッダラーであった。腹を貫く剣。すかさず他の汚泥兵たちも剣を作り出しマッダラーを次々に突き刺していく。人間であれば充分死んだような傷だし、なんならそのままかつぎあげて運べそうなほど刺さってしまっているのだが……。
「『ゆるい』な。それでも泥人形か?」
マッダラーはまるで何事もなかったかのように顔をあげ、逆に相手の剣を握って『距離を詰めた』。
つまりは剣の皿に根元まで自らを差し込むことで接近し、柄を手首ごとつかみ取ることで押さえ込んだのだ。
常人なら驚くところだが、汚泥兵は驚かない。むしろセレナのほうが『ひっ』と小さく驚いたほどだ。
「今だ。俺事やれ」
「うーん、未だに慣れないわ! この世界のこの手の戦術!」
セレナは結界を展開。
広がった魔方陣が負の闇を増大させ、掌上に幻月を作り出す。放った光は周囲の泥人形たちを照らし、まるで自己崩壊でも起こしたかのようにグニャグニャと形を変えさせ始めた。
いや、実際崩壊しているのだろう。何体かはそのままぐちゃりと地面におち、ただの泥と化したのだ。
いや、泥ではない。
「これは……影? 闇に溶けるように消えてるわ」
「たしかにそうみたいね。この敵たちは影でできてるって聞いたけど……本当みたい」
フルールは早速精霊天花を行い精霊達と融合すると、『紅蓮天威』の術を解き放った。
全てを貫く紅蓮の一条が、汚泥兵のみならず木々すらも焼いていく。
「ワールドイーターは……まだ下りてこないのね?」
まるで様子見でもするように高所に陣取る球形のワールドイーターに不気味さを感じつつ、フルールはその様子や特性を観察し続けていた。
「なんでもいいわ。今のうちにこいつらをかたづけて――!」
アンナが躍り出た、その瞬間。
樹幹の後ろに隠れていたであろうローブの男性が姿を見せた。
手には剣。泥人形にはとても見えない。
「『致命者』――!」
アンナは反射的に相手の剣の動きを注視した。自らの心臓を一瞬で貫けるような動きを察知し、それを後ろに飛びながら剣で払うことで回避した。
相手は更なるステップで距離を詰め、今度はアンナの足を狙う。
「しつこい!」
アンナは剣でそれを振り払い、今度は大きく後ろに飛んだ。
追いかけようと走り出す『致命者』――だが、それはこちらの狙い通りだ。
「あなた、恋すると周りが見えなくなるタイプかしら?」
『致命者』の足元がすくわれ、顔面から地面に転倒する。
追撃を察知したのか転がって交わす彼に、ゼファーの槍が突きつけられた。
ギリギリで身を引いたために、槍の切っ先が顎をわずかに切るだけで済んでいる。
ゼファーはとまらず自らを軸にして回転。槍のこじり部分を突き出すようにして相手に打撃をうちこんだ。
相手も相手で咄嗟に立ち上がり飛び退くだけの俊敏さはあったようだ。
しかしゼファーの突きによって生じた衝撃波は、飛び退いた程度でよけられるものではない。『ワイルドキングストリーム』という、パワーさえあれば全て解決するという発想によってA級闘士が編み出した技の応用版なのだ。『致命者』はおろか周囲の泥人形。そして地面の土や草にいたるまで纏めて吹き飛び、彼らは樹幹に叩きつけられる。
ついにトドメを――とアンナが倒れた『致命者』に剣を突き立て、その動きを止めた――その瞬間。
「上よ!」
イリスが叫んだ。
いかにして気付いたのかは、このさい『勘と経験で』としかいえないのだが、それまでこちらをじっと観察していたワールドイーターが急速に高度を落とし、頭上を覆う雲のごとく広がったかと思うと大量の『影の槍』を落下させてきたのだ。それも、自由落下とは思えないほどの速度をつけて。
イリスはアンナをかばうように地面に押し倒し、自らの背で槍を受けた。
そこは流石のイリス。タンクビルドとしてトップランカーを走る彼女の防御を『たかが槍ごとき』が抜けるはずはない。
しかし痛みはあるようで、イリスは「んっ」と呻くようにして目を細めた。
「イリス、大丈夫!?」
「ノーダメージ……ではないけど、平気! みんなは!?」
「ご安心ください」
グリーフは結構な勢いでくらったようで、身体のあちこちに槍が刺さっている。
しかし稼働には全く支障が無いという顔で槍を次々に引き抜き、治癒の魔法を唱えることで自らのボディパーツを修復してしまった。
「どうやら、この槍にはこちらの防御や動きを鈍らせる効果があるようです」
「その割には平気そうだったけど?」
踊るように降り注ぐ槍を剣で弾いていたアルテミアが問いかけると、グリーフは『冗談でしょう』とでもいうように肩をすくめるポーズをした。彼女にしてはめずらしいしぐさだが、誰かのマネだろうか。
「私にこの程度のBS攻撃は通用しません」
「たのもしいわね」
アルテミアはぺろりと唇をなめると、勢いよく走り出した。
「攻撃可能な距離に下りてきてくれたってことは――」
走り、飛び、樹幹を蹴って更に飛ぶ。それを何度か繰り返し、アルテミアは背から青き光の翼を展開した。
そこからは急上昇。交差させた双炎の蒼と紅が剣を纏い、ワールドイーターを貫いて更に天空へと飛ぶ。
「落とすわよ、そっちで受け止めて!」
くるんと空中でターンをきめると、アルテミアはワールドイーターを蹴り飛ばした。
飛行するだけの体力を失ったせいだろうか。ワールドイーターはドーナツのように歪んで地面へと落下。再び這い上がろうとするも失敗し、それならばと全方位に影の槍を生成、発射する。
「その攻撃はもう見た」
前に出て槍を積極的に受けるマッダラー。
同じく槍による攻撃を引き受けつつ、治癒によって即座に補修するグリーフ。
「『致命者』に比べて知能が低いようですね。これなら、追い詰めて倒せるかもしれません」
「かもね、けど油断しないで」
イリスは翳した盾で槍を弾き、弾ききれなかった槍は素手でキャッチして別の槍を弾き落とすというなかなかワイルドな防御法でしのいでいた。最初のくらった一発が嘘のようである。
が、そこで。
『ぐわん』――と、ワールドイーターが開いた。
巨大な饅頭に巨大な口があり、それが今やっと開いた。そんな印象をイリスは抱いた。
「まずっ――」
『ワールドイーター』というだけに、自分達まで喰らってしまおうというのか。
さすがに一瞬で消化されるとは思わないが、ろくなことにならないのは目に見えている。
そんな時。
「さがって!」
アンナがイリスの前へと飛び出した。
かばわれたお返しか、それとも攻撃のチャンスを見つけてか。
もしかしたら後者かもしれない。アンナは開いた口の『端っこ』を狙って剣を走らせる。
「ゼファー、アルテミア、『口を開かせて』!」
「なるほどね」
急降下し着地したアルテミアは逆側の口に剣を当て、切り裂いていく。丁度『口が裂ける』ような状態になったワールドイーターがそれを閉ざそうとした所で、ゼファーがずんと槍を突き立てる。口につっかえ棒でも入れるようにだ。
「で、この後は?」
「私達の出番ね」
フルールは手をかざし、『蒼星真火』の術式を発動させる。
真なる焔が燃え上がり、ワールドイーターの『口内』へと放り込まれた。
「そんなに食べたきゃ、おなかいっぱい食べさせてやるわよ!」
その隣では、セレナが『蝕ム新月』の術式を発動。
漆黒を宿した手が触れた空気から伝わるように、ワールドイーターへと流れ込んでいく。
混ざり合ったふたつは漆黒の炎となって爆発し、ゼファーたちはすばやく離脱。
ばくんと閉じたワールドイーターは、水風船のように膨らみそして……やはり爆発した。
ワールドイーターを倒したあとの森には、事実なにも残らなかった。
『影』によって作られた存在は、影に帰り、そして闇に溶けるということなのだろう。
あまりにも不気味すぎる。だが、逆にわかったこともあった。
これだけの『軍勢』を、ただの『影』だけで作り出す存在がある。それは天義という国にヒビを入れてもおかしくないような存在であり、今の時点で『集団』ですらないということだ。
もしこれがなにかしら組織だった行動なのだとすれば、恐ろしい何かが水面下で動いていることになる。
「まずはこの情報を、国に持ち帰らなくちゃね」
アンナは額にかいた汗を拭い、小さく息をつくのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●オーダー
『殉教者の森』に入り、影の軍勢お戦います。
担当となるエリアには一旦偵察が入っており、戦うべき敵のおおまかな戦力や様子などがわかっています。
●エネミー
・汚泥兵(汚泥の兵、人型)
泥でできたような人型の兵隊たちです。彼らは泥の剣を手にし、わらわらと襲いかかってくるでしょう。
個体ごとの戦闘力はとても低いのですが、とにかく数があるので効率的に蹴散らす方法を考えておくとよいでしょう。
・『致命者』
身体に何かの布を袈裟懸けにした天義の聖職者とおぼしき人間の影が確認されています。
戦闘力は不明ですが、あまり強そうには見えないとのことです。
また、顔や特徴から探したところかつて冥刻のエクリプス事件にて命を落とした教会の信徒であることが判明しています。つまり、もう死んでいるはずの人間です。月光人形と同ケースではないかと見られています。
・ワールドイーター・球体型
宙に浮かぶ真っ黒な球体型をしたワールドイーターです。
知性があるのかないのかさっぱりわかりませんが、飛ばしたファミリアーの小鳥やリスを超遠距離から感知し射殺したとのことです。
あとから調べると死体から黒い親指サイズの針が検出され、これを射出したものと思われます。
集団の中心にあり、これが主力であるとみて間違いないでしょう。
ROOでの知識になりますが、ワールドイーターは『世界を構成するデータ(建物、大地、人を問わず)を食べる』という性質があるそうです。
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