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シナリオ詳細

巨大殺戮ロボ『DD』の進軍

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「クッククク……フフ、フッハハハハハハ!! ハーッハッハッハァ!! ついに、ついに完成したぞ!! 私の血と汗と涙と貯金の集大成がッ!!」
 練達の片隅。光彩る街並みから大きく離れた僻地、更にその地下に隠された広大すぎるロボット研究所に、高笑いが響く。
 高笑いの主は、白衣を纏った赤髪の女。名を『お蝶』という。そしてそのお蝶の眼前には、小さな山かと見紛う程の巨大な四足歩行のロボットが鎮座していた。
「巨大殺戮ロボ『DD』!! 桁外れの重量、桁外れの武装、桁外れの耐久力!! 全方位をカバーする多重魔術シールドに、これまた全方位をカバーする無数の砲門!! 一度動き出せばこいつは、私以外の全ての生物を狩りつくすまで止まりはしない!! フッハハハハハハハハァ!!」
 何故こんなロボを作ったのか? 答えはシンプルだ。作りたいと思ったから。それだけだ。
 殺戮ロボだろうとお料理ロボだろうと、作ってみたいものは作る。そして作れたから出来た。
 そして『お蝶』は、作ったロボは実際に使わずにはいられない性格だった。
「ククク……さあ行くぞさあ行くぞ!!」
 お蝶は鋼鉄の足をよじ登り、DDの内部へと滑り込む。DDは操作者不要な完全自律型殺戮ロボであった、お蝶はド派手な殺戮シーンを観賞するための席をあらかじめ用意していたのだ。
「DD、起動!!」
 お蝶が手元のリモコンのスイッチを押す。研究所内にアラートが鳴り響き、地上へとつながる巨大なハッチが開く。機械音と共に床が一気にせり上がり、巨大殺戮ロボDDが、地上へと姿を現した。
「こうなれば最早私にも止める事は出来ない!! さあ行けDD! 殺戮の限りを尽くし、我が偉大なる英知を知らしめてやるのだ! ハッハッハ……ハーッハッハッハァ!!」
 ポチポチとリモコンで進軍ルートを設定するお蝶の声に呼応する様に、DDの体内からまるで猛獣の唸り声の様な轟音が響く。DDは巨大な鋼鉄の足を上げ、進軍を始める。
 DDが目指すは、眩い光が彩る街並み。目的は、殺戮。何故ならそうプログラミングされているからだ。


「依頼が入った。練達の片隅で、強力な武装が施された巨大ロボットが出現したみたいだ。キミ達は急ぎ現場へ向かい、このロボットを木っ端微塵に破壊するんだ」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、イレギュラーズ達に説明を続ける。
「目撃情報によると、そのロボットは真っすぐと市街地に向けて進軍しているらしい。内部に誰かが搭乗しているらしく、スピーカーを通して高笑いしてるんだとか」
 その笑い声の主は自らを天才ロボットクリエイター『お蝶』と名乗っているらしい。またこの巨大ロボットの名前は『DD』で、我が英知の証明の為に町を滅ぼさせてもらうだなんだとのたまっていると言う。
「幸い、目撃者もロボットの攻撃範囲に入らない内に逃げ出せた様で、今の所人的被害は出ていない。ロボの足跡で地面はぐちゃぐちゃみたいだけどね」
 現在その市街地では民間人の避難が進められているらしいが、それでも逃げ遅れた人々や街並みが犠牲になる事は避けられないだろう。
「だが、DDの機体の大きさから考えるに、破壊する以外の方法で奴の動きを止める事は出来ないだろう。DDが街に到着するよりも早く、破壊を完了するんだ」
 また、仮にロボット内部からお蝶が姿を現した場合は、殺さず捕縛してほしいとも依頼人は言っているらしい。死なない程度にボコボコにする位なら全く問題ないとも。
「結構な技術力を持っているのは確かみたいだからね。矯正して、人材として使いたいという思惑でもあるんだろう。ま、僕にもキミたちにも関係ないけど、とにかくクライアントはそれをお望みだ。それじゃ、頑張って。唯の巨大ロボット程度じゃあキミたちの敵じゃあないと、お蝶に教えてやるんだ」

GMコメント

 のらむです。巨大殺戮ロボと研究者をぶっ飛ばしてもらいます。

●注意事項
 こちらの依頼は相談期間が短めとなっておりますので、ご注意ください。

●成功条件
 街に到達する前にDDを破壊し、お蝶を捕縛する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●戦場情報
 DDは現在街へと続く巨大な道路の上を歩き進軍している為、戦場はその道路上になると考えられる。
 現在道路は封鎖されている事、またDDの巨大さから、一般人が不用意に近づいてくる事は想定しなくても良い。
 時間帯は夜。

●巨大殺戮ロボ『DD』
 お蝶が生み出した殺戮ロボ。巨大な四足歩行の獣の様な形をしている。
 お蝶以外の全ての人間を殺戮する様プログラミングされている。
 当然イレギュラーズ達が接近すれば攻撃を開始するが、移動ルートが設定されている為それで進軍が止まる事はない。
 広範囲に渡るロケット爆撃や毒ガス、巨大なシールドなどの武装の存在が確認されているが、その全容は不明。
 能力値はHP、防御技術がとても秀でている。とにかく硬い。また、『怒り』『足止系列』といったバッドステータスでDDの進軍を逸らしたり遅らせる事は出来ず、DDを対象に『マーク』や『ブロック』を行うことは出来ない。

●ロボットクリエイターお蝶
 今回の事件の犯人。善悪の区別がつかないというより、最初から善悪など気にしていない。
 DD内部の観客席から外部の様子が視認可能で、スピーカーを通じ喧しく口出ししてくる。
 DDが破壊される寸前に緊急脱出装置によって飛び出してくる。
 戦闘能力は皆無。ぱんちを使う。ただの雑魚。

 以上です。よろしくお願いします。

  • 巨大殺戮ロボ『DD』の進軍完了
  • GM名のらむ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)
生来必殺
フロイント ハイン(p3p010570)
謳う死神
玄野 壱和(p3p010806)
ねこ

リプレイ


 DDのスピーカーから発せられるお蝶の喧しい声。そしてDDはその声に応える様に、大きな道路を踏み壊しながら進軍を続けていた。
「『クックック……この偉大なる我が発明に、人々は心から感服し私に畏敬の念を』」
「あー、聞こえてないかもだけどそこの暴走ロボと発明者、止まりなさーい! 今大人しくすれば悪くない措置が待ってるよ! 多分!」
「『……ん?』」
 聞こえていた。お蝶は分厚い装甲ガラスに顔を付け外の様子を伺うと、そこには今しがた勧告を出した『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)――イレギュラーズ達の姿があった。
「『よくわからんが……ことわーる! 止まる気も無ければ止まる気も』」
「オッケー、じゃあ失礼!」
「『何が……ぐおおおおおお!!』」
 次の瞬間、カインが放った魔力の砲撃が、DDの巨体、お蝶が居る観客席付近に直撃する。その巨体がグラリと揺らいだ。
 DDの全身から赤いアラートが発せられる。無数に設置された機械の瞳がギョロリとイレギュラーズ達を冷たく見下ろし。
 そして戦いが始まった。


「思ったよりはあの観客席は頑丈みたいだね。自分が乗る想定だから、全体の構造よりもそこの装甲を優先しているのかな? けど……無理やりそんな事をすれば、どこかに綻びが出る筈」
 カインは先程放った魔砲の手応えを加味した上で、DDの全体構造を観察する。どこを重点的に攻撃すればより早くDDを破壊できるのか、と。
「『なんだか知らんが邪魔はやめろ!』」
「英知の証明なんて他にも幾らでも方法があるっていうのに、全くこれだからマッドサイエンティストは! ……なんて愚痴はさておき……見えた!! 右前脚!!」
 装甲が過剰に強化され、かなりの重量となっているらしき観客席。それはDDの前方にあった。更に、DDに取り付けられた兵器の中でも一際目立つ、巨大なシールド発生装置はDDの右側面に取り付けられていた。そしてそれら両方の重量を受ける右前脚こそが常に最大の負荷がかけられているDDの弱点だと、カインは早々に看破した。
「と、いう訳で! どうせ脚を狙うなら右前脚を狙って! 他を狙うより効率的に狙える筈だよ!」
 仲間達に呼びかけ、カインもまた全身に魔力を集中させていく。
 その最中、カインの全身が揺らぎ、そして分裂するかの様に召喚されたのは、且つての異世界でカインの似姿を再現したモノ。
「それじゃあ、もう一度。随分情熱とお金をかけたロボットみたいだけど、一思いに破壊しちゃうよ!」
 そして放たれた二連の魔砲は、螺旋を描いてDDの脚に直撃し、青い爆炎を巻き起こした。
「『何故私を邪魔するんだ!! あ、嫉妬か!?』」
 お蝶の言動に応える者はいなかった。
「(まぁ、お蝶に関しては本当の意味で善人でも悪人でもなく、無垢なだけでしょうけど。けれど何もかもを突き詰めると善も悪もなくなります。そして純粋すぎて、世界に入りきらなくなるのです)」
『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)は、DDの巨体を見上げていた。
 悪意が無ければ、あるいはそれが善意からの行動だったとしても。だからと言って全てが許される道理など無い。
「(彼女は混沌に肯定され得るあらゆる科学技術を突き詰めた。その結晶がこのDD……同情はするべきではなく、感情も殺して対処するべきですね……)」
 ハインは静かに大鎌『テートリッヒェ・リーベ』を構える。やるべき事はシンプルで、狙うべき場所も分かった。後はただそれを実行するだけ。
「……対象を確認。対象に敵性を認識。IFFに異常なし。システムを戦闘モードに移行。対象の沈黙まで全武装の解放を承認。ターゲットの『終了』を開始します」
 そしてハインはDDの脚目掛けて飛び出した。その身に宿る神秘と充填能力を力へと変え、『urknal』。ビッグバンを演算する。
「『なんかよく分からんがこっちに来るな貴様ぁ! 凡人の嫉妬は見苦しいぞ!!』」
「…………」
 感情を殺したハインには、お蝶の声など耳を通り抜けていく。そしてハインは大鎌を一気に振り下ろす。
 その切っ先が装甲に突き刺さった瞬間、その切っ先からあらゆる色が混じった創生の光がされ、DDの装甲を『呑み込んだ』。
「有効。敵対勢力の装甲に甚大な損傷を確認。『終了』を続行します」
 ハインはただ淡々と、DDに攻撃を仕掛け続ける。
「どうせ話など通じないし、そもそもそれをする価値も無いとは思っていたがな。この甲高い声を聞いていると気が滅入ってくる。さっさと終わらせるとしよう」
『含牙戴角』イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)は大型の狙撃用対物ライフル『Dominator』を構え、DDの右前脚に狙いを定める。
「そんな醜いカラクリ人形に乗った程度で絶対者気取りとはな、器が知れる」
 そして引き金を引く。轟音と共に放たれた弾丸はDDの前足に直撃し、その装甲を吹き飛ばした。
「排除スル」
 直後、DDは無数の砲門からミサイルを発射する。そのいくつかがイルマにも迫るが――。
「出来もしない事を口にするな。貴様も貴様の飼い主も。まとめて奈落のどん底に引き摺り下ろしてやろう」
 イルマは素早く狙いを付け、再び引き金を引く。弾丸は飛来するミサイルに直撃し、いくつものミサイルを巻き込みながら空中で爆発四散した。
「大したことはないな。どうやらこの機械人形に誇れるのは、その器の小ささに反比例した巨体だけの様だ」
「『なんだコラ貴様ぁ!! 全部聞こえてるんだぞ!!』」
「…………」
 お蝶が何やらわめいていたが、イルマは完全に無視した。
 直後、DDは自らの巨体の表面に、青白いシールドを展開する。
「そのシールドは1つの懸念事項ではあったが……どうやら備えていたのは間違いではなかった様だな。元が付くとはいえこちとら生物兵器だ……兵器らしく、無慈悲に潰す」
 そのシールドを仰ぎ見て、『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は呟く。そして『狼札ヴォルフガンク』を纏めて掴み、宙に放り投げる。
「まずはそのシールドからだ」
 宙に浮かんだカードがピタリと制止し、無数の銃が実体化する。全ての銃口がDDに向いたかと思うと、一斉掃射。無数の弾丸がシールドの突き刺さり、パキリと小さなヒビが入った。
「そこか。悪いがその自慢のシールド、早々に叩き割らせて貰う」
 ウェールはその小さな綻びを見逃さなかった。カードをヒビ目掛けて投げ放つ。
 カードがヒビに直撃した瞬間、バキバキとシールドが全体に広がり、そして一気に砕け散った。
「『うおおお!! 自慢の魔術シールドが!!』」
「殺戮するつもりで来たんだろう? なら殺戮されてもしょうがない。そして……まだ終わりじゃない」
 ウェールの猛攻は止まらない。更にウェールはカードを投擲する。カードの表面に描かれていたのは、炎。
 DDの巨体に張り付いたカードが眩い光を放ち、爆発する。紅い炎が巨体に纏わりつき、爆発の勢いでDDの巨体が後退させられる。
「いくつかの手段は防ぐ様みたいだが。どう足掻いても進軍を遅らせられないという訳ではない様だな……ここに俺たちがいる以上。誰一人として傷つけさせるつもりはない」
「『ググ……DD!! 踏み潰せぇ!!』」
 お蝶が叫び、DDはその巨大な鋼鉄の足を振り上げる。
「おっと、中々危ない兵器も持っている様だ……大変な事になってしまうだろうね、相手が私たちじゃなければ」
『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は振り下ろされた鋼鉄の足に、跳躍からの跳び蹴りを放つ、軌道が逸れた脚はグニャリと不安定な格好で地面に突き刺さった。
「自己顕示欲か、快楽か……いったい何が目的かは分からないけど、DDは破壊させて貰うよ!!」
「『私の集大成を破壊させるか!! そしてこれは100パーセント自己顕示欲だ!!』」
「そこははっきりしてるんだね……それなら尚の事、方向性を変えるべきだとは思うけど……まあ今はいい、行くよ!」
 地面に突き刺さった脚目掛け、モカは地を蹴り駆け出した。
「キジュウ、掃射」
 降り注ぐ銃弾の雨を不規則なステップで回避しながら、DDの脚に肉薄。次の瞬間、モカの姿は消えた。少なくともDDのカメラには、捉える事は出来なかった。
「街の破壊だけはさせる訳にはいかない、まずはその脚を破壊させて貰うよ!!」
 残像すら捉える事が困難な、超高速の蹴りの連打。あらゆる方向からDDの脚にモカの蹴りが突き刺さり、ひしゃげていく。
「『おのれ、この……卑怯だぞ!!』」
「ハイハイ、卑怯ヒキョウ。というか、あー、あれダ。お前一度黙ってロ」
『ねこのうつわ』玄野 壱和(p3p010806)は心底呆れたという様子で呟く。
「『なんだ、どこから声が聞こえる!?』」
「ウエ」
「『上ぇ!!』」
 壱和の姿はDDの背の上にあった。『ワルプルギスの箒』に乗り上空よりDDに接近した壱和はその背に取り付き、拳に魔力を込めていた。
「(乗った時の事を何処まで考えて造ったかは知らねぇが、こういう密閉された建造物って外から巨大な質量がぶつかった場合、中の空間にモロに衝撃が行くんだよナ)」
「『誰だか知らんが降りろ!! DDの巨体に乗る権利はこの天才科』」
「だから黙ってろっテ」
 ガン!! と壱和が背に魔力を込めた拳を叩きつける。その衝撃でDDの巨体が揺れ、スピーカーから悲鳴な様なモノが聞こえた。また殴った。悲鳴が聞こえた。壱和は滅茶苦茶に殴りまくった。滅茶苦茶喧しい声が聞こえてきた。
「『アガッ!! ゴヘ。オエッ……!! やめろ!! 殺す気か!!』」
「まあそれでモ、別ニ」
「『それでも別に!? グァッ!!』」
「オマエと世間話する程暇じゃないんだヨ」
「『舐めるなよ……スパーーーク!!』」
「ム」
 DDの全身から、雷が迸る。しかしその寸前、壱和はDDの背を蹴り一気に跳躍、電撃を避け、止んだ所に落下と同時に更なる拳を叩き込んだ。
「『この、降りろ! そして脚から離れろ!! バカ共がぁ!!』」
「アホにバカと言われるとはとても心外だな。大体これのどこが賢いんだ?」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は鋼の細剣『メロディア・コンダクター』を構え、そう言い放つ。
「そもそもこの兵器、一度乗ったら二度と降りれないじゃないか。降りた瞬間に踏まれて蜂の巣だ。破壊に特化しすぎているせいで補給も出来ないし、備蓄が尽きたらその中で力尽きて終わりだぞ!? 言いながら改めて思ったが、やっぱりアホだろ!?」
「『なん……この、なん……なんだコラァ!!』」
 とりあえずお蝶は怒りの声を上げ、DDから無数のミサイルが放たれる。
「それでも、街に到達してしまえば尋常じゃない被害が出る。だからこそ性質が悪く、全くもって笑えない……! 何としてもここで止めさせてもらうぞ!」
 そしてイズマは細剣を振るう。剣先から放たれた魔力から旋律が鳴り響き、そして障壁と化した。その障壁に次々とミサイルが衝突し、爆散する。
「全方位をカバーしているのは結構な事だが、足元がお留守だな!」
 そしてイズマはそのまま一気にダメージが蓄積されているDDの右前脚に迫る。
「そもそも殺戮の限りを尽くしたら、英知を知らしめる相手もいなくなるじゃないか。貴女の凄さはよくわかったから、ここでおしまいにしてくれ」
 そしてイズマは細剣を連続で突き出した。魔力が込められた刀身は分厚い装甲を安々と貫き、巨大な脚はバチバチと火花を上げて更なる損傷を受ける。
 幾度に渡って攻撃を受け、抉れ、ひしゃげ、焼き焦げたその脚目掛けけて、更なる追撃を仕掛ようとする者がいた。『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)だ。
「ふざけて良いことと悪いことの区別もつかないんスか……! いい大人でしょうが、あなたは!」
「『ふざけているのは貴様らの方だ、凡愚共!!』」
 お蝶の言葉に更なる怒りが込めあげてきそうになるが、イルミナは大きく息を吐いて冷静さを保つ。
「…………落ち着いていきましょう、巨大なロボットは脅威……ッスけど、弱点も判明して、もう一押しで壊せるッス……脚さえ壊せれば、その機動力は致命的な程に落ちる筈ッス……巨大ロボと言えば関節狙い、むかーしむかしからそう決まってるッス!」
 イルミナの口調はいつも通りだ。だがその心中は、決して穏やかなものではなかった。
 造られたもの、造るもの。目の前の『造られたモノ』は唯プログラムに従う他なく、それ以外の一切を禁じられている。殺戮という一文字のみを。
 真に存在すべきでないのは目の前の巨大なロボットではなく、それを悪用する『造ったモノ』なのだと。イルミナはそう思っているからこそ。お蝶に憎悪にすら近い感情を抱いていた。
「…………今はやるべきことをやるだけ……ッス」
 イルミナは自分に言い聞かせるように呟くと、コア・スフィアからのエネルギーを全身に巡らせる。次の瞬間、イルミナ全身に蒼い雷を迸らせながらDDに急接近する。
 その両腕、両足に青いブレードを形成し、半壊したDDの右前脚に飛び掛かる。
「キジュウ掃射、毒ガス、フンシャ」
 降り注ぐ鉛の雨と毒の雲。イルミナはそれらを受けながらも、僅かにも怯む事無くブレードを振り上げた。
「これで……進軍は終わりッス!!」
 右前脚の周囲を旋回しながら放たれる無数の蒼い斬撃。それはボロボロになったソレをあらゆる角度から斬り、そして――。
 バチン! と激しい音を立て、そして両断された。
「『なんだと……本当にこのDDの脚を……グオッ、まずい!!』」
 超重量を支えていた右前脚が経たれた途端、その効果は目に見える形で発揮された。
 どうにか3本の脚で巨大を支えようとするDDだったが、それらの脚もグニャリとひしゃげ、そしてその巨体がグラリと地面に崩れた。
 まだ破壊はされていない。無理やりであればどうにか移動する事は出来るだろう。
 しかしもはやそれは『進軍』と呼べるものではなくなっていた。
 あとは、仕上げをするだけだ。


「『クソ、せめてお前らだけでも排除してくれるわ!!』」
 地面に倒れ込んだDDの巨体から、全方位に機銃掃射が放たれる。
「やってみろ。その無様な格好で何かを成せるというのであればな。貴様も、貴様が作ったこの機械人形の力も、この程度とはな。負け犬の屈辱を味わいながら、臭い飯を食って惨めに暮らせ」
 イルマは両断されたDDの脚を盾として銃撃を防ぐと、お蝶の乗る観客席に更なる銃弾を撃ち込んだ。
「『うぐおお……私の英知を知らしめるという完璧な計画がぁ……!』」
「頓挫したというなら、お前が完璧ではなかったというだけの話……二児の父として平和な日常を、明日の笑顔を兵器なんぞに壊させてたまるかよ!」
 ウェールは宙にカードを数枚放り投げながらDDに突撃。実体化された弓から放たれる無数の矢と共にカードを振り下ろすと、激しい戦意が込められたソレは凄まじい切れ味を発揮し、DDの巨体を更に抉った。
「さて、そろそろ終わりかな……はっきり言ってもう勝負はついたけど、まだ続ける? 巻き込まれても知らないよ!」
 全身から異音を発し始めているDD。カインは更なる追撃を仕掛けるために術式を展開すると、機銃の様な勢いで放たれた魔砲の弾幕がDDの全身の装甲を吹き飛ばした。
 DDは絶え間ないアラート音を発し続けている。その音も段々と弱まり、終わりが近づいている事を示していた。
「『私が、このロボットクリエイターお蝶が! 大体貴様らが何の権利を持って』」
「ターゲットの『終了』まで残り僅か。これより、最終プロセスに移行」
『ドドメ』に十分なエネルギーが充填できたと確認できたハインは再び大鎌を構え、再演算を行う。そして大鎌が振るわれた。そこから生まれた光は、先程よりも強く光り輝き――。
「『巻き込まれるぅうう!!』」
 観客席からお蝶が射出された直後、DDの全身が大爆発を起こし、眩し程の光に包まれながら、ついにその動きを止めるのだった。
「グエッ」
 地面に墜落したお蝶を、すぐさまイレギュラーズ達が包囲した。
「オオ、意外と完全には吐いていなかったカ、ナカナカのガッツダ……じゃなくテ。なア、こいつ殺っちゃダメなんだロ? 死ななければいいんだったら頭と胴体さえあればよくネ? どうせ必要なのってこいつの頭ん中の技術力だけなんだしサ……ダメ? そっかぁ」
 仲間に止められ、壱和はしょぼんとした顔を見せる。
 多分止められなければ普通にやってた。
「何かを作り、使ってみたいという気持ちは解るよ。次は土地を整備するロボットを作ったらどうだ? 混沌の広大な大地に手を加えるってのも悪くないだろう」
「そんなもん誰が作るかぁ……」
 イズマは小さく息を吐き、DDが通ってきた進路を指さす。
「……このぐちゃぐちゃな地面の後始末をしろって事だよ! 破産したくなければ、人の為に働くんだな」
 お蝶はわかりやすく嫌そうな顔をしていた。
「く……働きたくない……!! 自分の好きな事だけをして生きていたい……!!」
 武器を突き付けられながらもそんな事を平然と言うお蝶に、イルミナは更に深いため息を吐く。
「まだそんな事言ってるッスか……いや、まあ。依頼人には引き渡します、引き渡しますよ? 依頼ッスからね! でもッスね、こういう悪い事をする人にはしっかりとお灸を据える必要があると、イルミナはそう思うんすよ。というわけで『教育』の時間を頂きたいんスけども! 切に! 切にそれを願うッス!」
 実際の所、イルミナにとって目の前の悪党を怒りのままに斬り捨てないので精一杯であった。目の前の女に悪意がなかったかもしれないと理解しつつも。その感情を完全に抑える事は簡単な事ではない。
 だが、それをはっきりと制したのはモカだった。
「気持ちが分かる……とまでは言わないけどね。それでも、彼女の技術がよりよい形で使われる未来があるのなら、それを優先すべきだと私は思う。その『教育』は……多分、それを遅らせてしまうんじゃないかな」
「うむむむむ……」
 納得しきってはいなかった様だが、とりあえずイルミナはそれ以上何も言わなかった。
「で、だ。お蝶さん。あなたは確か、他者に認められたいが為に今回の事件を起こした、そうだね?」
「ああそうだ!!」
「だったら……やっぱりその技術は人に喜ばれる為に使うべきだ。人に嫌われるより、慕われる方が何倍も気持ちいいものだ。それに……魔種や、アドラステイア。『世界の敵』と呼ばれる様な奴らと同レベルの悪とにはなってほしくないと、私は思うな。こんなに可愛いんだから……」
 そう言ってモカはお蝶の顎をクイっと指で動かし、目線を合わせて微笑んだ。
「ぐぐ、ぐぐぐぐぐぐぐ…………ハア。分かったよ。とりあえず……被害金額分の働きはするよ……この抑えきれない承認欲求も……別の形で発散するよ。もうお前たちに襲われたくないし」
「それは良かった! これからあなたの身柄は一旦依頼者の元へ移送しなければならないけど、夜勤の前の朝食をとる時間位はあるだろう。さあ、行こうか」
 こうして。巨大殺戮ロボDDとお蝶を巡る事件は、終わりを迎えたのであった。

成否

成功

MVP

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。無事DDは破壊され、街に被害が出る事無くお蝶を捕縛する事に成功しました。この事件より3日後、依頼主の監視の元お蝶が製造したスーパー整地ロボ『DE』によって戦場は綺麗さっぱり元通りになった様です。現在お蝶は厳しい監視の下で指示通りに平和的なロボットを作りながらも、『魔種』すら殺せる超強いロボットを作れないかと日々思索を巡らせているそうです。
MVPは、力技でDDの進行を遅らせつつ脚の破壊にも貢献し、シールドも即座に叩き割ったあなたに差し上げます。

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