PandoraPartyProject

シナリオ詳細

絶・倉庫番

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●倉庫番
 倉庫番。
 それは、駆けだし冒険者のためのお仕事。
 具体的には、荷物を動かしたり、荷物を動かしたり、荷物を動かしたりする。
 たまに警備員みたいなこともする。
 そういう奴である――!

「というわけで、倉庫番をお願いしたいのです」
 ムフォーッホッホ、と恰幅のいい商人が笑った。
 ラサの豪商、スーグニ・ウラギールさんである。
「えーと、すぐに裏切るさん?」
「ムフォーッホッホ、スーグニ・ウラギールですぞ」
 些か失礼な仲間のイレギュラーズの言葉にも、スーグニさんはとても良い笑顔で笑って流してくれた。
「名前がどうにも、地方の方言のような名前でしてな。何ともいいづらいようで。よく商人仲間にも『裏切るのか!?』と真顔でナイフを向けられたものですな――」
「壮絶な過去をお持ちのようで」
 仲間のイレギュラーズが戦慄した様子で言うのへ、あなたもちょっとビビった。
 さて、ラサのウラギールさんのお屋敷での出来事である。
 倉庫番をしてもらいたい。そのような依頼でやってきたのが、あなたたちローレット・イレギュラーズ達だ。
 倉庫番。なんとも古式奥ゆかしい、フレッシュなお仕事である。駆け出しの冒険者や用心棒が、まずは信頼を得るためにやるような仕事であることは間違いないのだが、さておき。
「いやはや、何度か依頼をしているのですが、皆途中で逃げだしてしまいましてな――こうなっては、ローレットの皆様、そう、歴戦の皆様に頼るしかないと。今ならちょうどレベルキャップも解放されたでしょうし、一発乗ってくれるかな、と」
「レベルキャップというものの意味は分かりませんが」
 仲間が小首をかしげた。
「どんな仕事でも、受けた依頼はきっちりこなす。ローレットのルールですから。大丈夫ですよ、信じてください、裏切り者さん」
「ムフォーホッホッホ、スーグニ・ウラギールですぞ」
 スーグニさんは良い笑顔で笑ってくれた。とりあえず、あなたも適当に笑ってお茶を濁した。
 さて、件の倉庫であるが、スーグニさんの家の庭にあった。小さな入り口である。たとえるなら、本当に、掃除用具などを仕舞うような、小さな倉庫と言えた。
「ここの倉庫番を?」
「はい、此処の倉庫番を」
 そう言って、スーグニさんが扉を開く。薄汚れた、狭い室内が見えた。奥の方は見えない。が、外観から見ても、そう広い倉庫ではあるまい。
「奥に、思い出のアルバムを仕舞っておりましてな。ですが、こう、この恰幅では、この扉をくぐるのも難しい」
「そうですね。その腹では」
「ムフォーホッホッホ」
 スーグニさんがさわやかに笑った。
「そういうわけですので、とってきてほしいわけです。来月、娘の結婚式がありましてな。娘の成長記録をふと読み返してみたくなったものです――男としては、ウェットで情けないとお思いでしょうが、親というのは、何ともね?」
「ええ、わかりますよ、ベトレイヤーさん」
「ウラギールですぞ」
「ええと、すみません。では、早速探しますね」
 と、仲間がそういうので、あなたは頷いた。早速、少々小さな扉から、中に入る。ゆっくりと進んでいくと、真っ暗な道が、存外奥へ奥へと続いているのが見えた。しばし、すすむ。
「なんだ。見た目より広いんだな」
 仲間の一人がそういう。すすむ。すすむ。すすむ。
 すすむすすむすすむすすむすすむすすむすすむすすむすすむすすむすすむ。
 すすむ。
 先が見えない。
「いや、おかしいだろ」
 仲間の一人が声をあげた。
「何分進んだ!? どれだけ!? いや、もっとはやく突っ込めよ!」
「ムフォーホッホッホ。お気づきになられましたか」
「裏切っちゃったさん!?」
「ウラギールですぞ」
 と、辺りからウラギールの声が響いた。
「いま、直接……皆様の脳内に語り掛けているという事ではなく、魔導通話機で話しております。ええと、すみません、今外から電気をつけますな」
 ぱちん、と音がして、辺りが明るくなった。

 そこに広がっていたのは、無数のキューブによって区切られた、魔術的な異空間であった!!!

「裏切ったなジジイ!?」
 仲間の一人が声をあげる。
「ウラギールですぞ。いや、そうではないのです。ただ言い忘れです。
 ムフォーホッホッホ。
 ほんとうに……本当に、申し訳ない……」
 めっちゃくちゃ申し訳なさそうにスーグニさんが言うので、仲間達はとりあえず、
「そうですか……なら仕方ないですね……」
 許した。
「申し訳ございません。実はその倉庫、魔術による亜空間を利用した倉庫システムでして。見た目より広く、危険で、凶暴なのです」
「危険で凶暴?」
「例えば……そこのボタンを押してみてください。壁からレーザーが迫り、皆さんをサイコロステーキのように変えてしまうでしょう……そのようなトラップが仕掛けられている……」
 わなわなとスーグニさんが言うので、
「今、その危険なトラップを押させようとしなかった?」
 仲間が声をあげる。ムフォーホッホッホ、とスーグニさんが笑った。
「そういうわけでして、この絶・倉庫番システム……皆さん途中で嫌になって帰ってしまうのです。
 ですが! ここはローレットの皆さん! 必ずや何とかしていただけると……!」
「えぇ……」
 仲間の一人が嫌そうに声をあげた。が、確かに、受けた依頼はきっちりこなすのが、ローレットのルールである。
「仕方ない……その……絶だかゼロ式だかの倉庫番、クリアするしかない様だ……」
 仲間が肩尾をとすのへ、あなたは嘆息した。
 まったくもって道の迷宮が、あなた達の前に広がっていた。命を懸けた倉庫番。今ここに幕が上がる――!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 倉庫番です☆ 駆け出しの冒険者の方でも大丈夫☆

●成功条件
 無事に生き残り、最奥の『スーグニさんの想いでのアルバム』を回収してくる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はD-です。
 基本的に多くの部分が不完全で信用出来ない情報と考えて下さい。
 不測の事態は恐らく起きるでしょう。

●状況
 倉庫番をしてくれ。
 そう依頼を受けたイレギュラーズの皆さん。
 まぁ、経験値を稼ぐのにちょうどいいだろう、と思ったかどうかは知りませんが、軽い気持ちで倉庫番を受け入れた皆さんの前に現れたのは、凶悪強烈な上級倉庫番、絶・倉庫番でした――。
 というわけで、この凶悪な倉庫番を無事クリアし、生きて帰ってきてください。
 最奥に存在する、『スーグニさんの想いでのアルバム』。これを回収するのがミッション目標です。
 作戦決行エリアは、キューブ状の部屋で区切られた無数の部屋。立方体の部屋に、各地に通じる通路が伸びており、さらにその先に立方体の部屋がアリ……という形です。
 最悪、死にそうになったら外に放り出されます。一応死なないので頑張ってトライしてみてください。
 明かりは十分にありますので、光源などの確保は不要です。必要なのは知恵と勇気です。

●ダンジョンギミック
 とくに苦戦することになるのは、以下の四つです。分散して、得意なものを対応して、突破するとよいでしょう。

 1.サイコロステーキになるレーザー
  網目状に迫ってくるサイコロステーキレーザーが迫ってくる部屋です。クラウトサイコロステーキになります(比喩的表現)。
  重要なのは、レーザーをよけるためのステータス。例えば回避とか反応とか。そして、レーザー発射装置を見つけて破壊するための、遠距離攻撃や命中力ぅ……でしょうか。
  レーザーに服が破かれていやぁん、ってしてもいいですが、重傷は覚悟してくださいね。

 2.無重力移動迷路
  突然部屋が無重力と化し、四方八方に棘付きの壁が現れた迷路が出現します。後ろから張り付きの壁が迫ってきており、素早く移動しつつ正解のルートを探らなければなりません。針が刺さって重傷になります。
  機動力、そして無重力で移動するための防御技術(と書いて体力と読む)、そしてEXAや正解のルートを選ぶためのクリティカルなどが重要です。ファミリアーを飛ばして正解のルートを探るなんてのもありです。ファイト。

 3.迫る壁
  四方八方から壁が突き出して、シンプルに潰しに来ます。シンプルですが、こういうのが一番面倒くさいのです。
  防御技術やEXF、HPなどが重要視されます。耐えて、避けて、突破するのです。避けきれなければ重傷になります。
  攻撃力高めのメンバーで、破壊しつつ突破する……というのもスマートでいいと思います。

 4.オーバーロード・ゴーレム
  最奥を守護する、巨大なゴーレムです。単純にHPと防御性能、攻撃能力の高いユニットになります。
  BSなどの搦め手は使いませんが、アタッカーとしては驚異的。
  ここでは戦闘の得意なキャラで、一気に仕留めてしまうのがいいでしょう。
  ゴーレムが守るのが、スーグニさんの想いでのアルバムです。なんでこんなヤバい奴に護らせてるんですか。

●味方(?)NPC
 スーグニ・ウラギール
  恰幅のいいラサの商人です。
  裏切ってません。ちょっとおっちょこちょいなだけでいい人です。
  外から色々手助けしてくれます。例えば、信用度は墜ちますが、2の迷路のルートを教えてくれたり、3で壁が次にどこから出てくるのか教えてくれたり……上手く使いましょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • 絶・倉庫番完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年11月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女
フロラ・イーリス・ハスクヴァーナ(p3p010730)
お嬢様(鉄帝)

リプレイ

●これハード依頼ですよね?
「おかしい……こういうのってノーマル依頼じゃないの……?」
 と、『夢の女王』リカ・サキュバス(p3p001254)が呆然と呟いた。
 ほのかに依頼書からかおる、与太の香り。しかし目の前に広がるキューブ状の『倉庫』は、明確(ハード)な殺意を以てしてイレギュラーズ達を迎えていた。
「ムフォーホッホッホ……本当に申し訳ない」
 スーグニ・ウラギールさんがそういう。その声が響くのは、前述したとおり『キューブ状のはこのような部屋がいくつも連なる魔術空間』で作られた倉庫である。
「あと、レベルキャップは月初だから冒険日数考えて月後半はじめに出してくれるのが丁度いいのよねえ……じゃなくて!
 ナニココ毒電波発生装置でもあるんですか? 心配性極まるのも程々に頼みます……」
 リカがそういうのへ、スーグニさんが「申し訳ない」と謝った。
「結構小心者でしてな……」
「いや、小心ってレベルではないのでは……?」
 『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)も、さすがに、むぅ、と困った顔をする。科学的とも魔術的ともとれる奇妙な空間は、おそらくはかなり高度な技術によって設計されているはずで、ちょっとやそっとの金やコネでは構築できるようなものではあるまい。これに何を隠しているのかと言えば、娘のアルバムなのだから頭を抱えたくなる。
「その……逆に取れなくなってしまったのだろう……?
 確かに、俺も同じ父親としては……子供との思い出のアルバムを、とってやりたい気持ちは分かる。
 ……そうか。娘さんは、お嫁さんに行くのか。子の結婚か……」
「はい……」
「そうか……」
「はい……」
 何か通じ合ったお父さんたち。まぁ、それはさておき、ウェールは真面目な顔に戻ると、
「これは、その。帰りはまた同じルートをとらないとダメ、というようなものではない、よな?」
「そうなのです。もしそうなら、少し大変だと思います」
 『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)がどういうの声をあげる。
「えっと……攻略出来ない、って、自信のないことは言わないのですけれど。
 でも、帰りも同じ罠を突破するのは、辛いと思うのです」
「それでしたら、強制的に脱出する魔術がありますので、帰りや、いざという時は大丈夫ですよ。
 ほら、ここ。殺人デスゲームの会場とかじゃなくて、ただの倉庫ですので」
 スーグニさんが言った。
「ただの倉庫じゃないから困ってるんだけどね……」
 『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)がげんなりとした顔をして見せた。
「スーグニさんからもらったデータを見ると、殺人トラップのオンパレードじゃない……。
 これで『倉庫番です』なんて依頼したら、当然普通の人はみんな逃げるわよ……」
 セレナの言うとおりである。前任者はみんな途中でギブアップして逃げたらしいが、ローレット・イレギュラーズ達にとってもなかなか骨の折れる(ハードな)仕事だ。一般人なら、命があるだけましだろう。
「……倉庫番って聞いてたのに、ちょっとしたダンジョンアタックになっているのね」
 流石の『砂国からの使者』エルス・ティーネ(p3p007325)も、その表情に困惑を浮かべている。
「ラサの、しかも難しいお仕事だからって張り切って参加したけど……なんだか、こう……。
 ううん、ラサのお仕事だから、断る理由はないわよね……!」
 ぐっ、と拳を握るエルスに、『自称・豪農お嬢様』フロラ・イーリス・ハスクヴァーナ(p3p010730)が目を細めた。
「……ラサのため、って言ったら何でもしてくれそうですわね」
「厳密には、あの子は『ラサのため』でもないのだが」
 ふむん、と『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が唸る。
「さておき、ゼロ式をすっ飛ばしていきなり絶とか、うっかりにも程があるだろう。
 なぁ、ウッカリ・ドジカマースよ」
「ムフォーホッホッホ。スーグニ・ウラギールですぞ」
 汰磨羈の言葉に、フロラがうんうん、と唸る。
「ですが! これくらい高難易度の方が燃えるというものですわ! 具体的には命が! パンドラが!
 じ~~~つ~~~は~~~! わたくし、重傷という状態になったことがありませんの!
 というわけで、ここは一発、ドカンとパンドラを減らして重傷モード! 帰って皆に「大丈夫? 安静にしてね?」ってちやほやよしよしされたい所存!!!
 これはかなりおあつらえ向きの依頼という事ですわ~~~!!」
「こんな依頼で重傷貰って帰ってきたら、普通にネタにされるだけなのでは?」
 『夜を裂く星』橋場・ステラ(p3p008617)が至極冷静にまともな事を言う。
「後多分……そういう事をプレイングに書くと、洗井落雲は『重傷にしない方がおいしいだろうな……』って思って、パンドラは減るけど重傷にならないパターンになると思うのですが……」
「マジですの!?」
 フロラがぐわぁっ、って表情をした。
「いや、知らんが……洗井落雲……いったい何者なのだ……?」
 汰磨羈が頭を抱える。まぁ、さておき。
「とりあえず、早速最初の部屋に行ってみるか。ニル、索敵を頼むぞ。恐らく部屋と部屋を繋ぐ通路には何もないだろうが……念のためな」
「はい、お任せくださいなのです」
 ニルがにぱぁ、と笑って、ファミリアーの小鳥を放つ。小鳥はさほど緊張した様子もなく、キューブ状の部屋と部屋を繋ぐ通路へと進んでいった。
 果たして進んでみると、次のキューブ状の部屋に到着する。そこは、他の部屋に比べて、長方形のような形状をしている。
「露骨に罠がある、って構造ね」
 セレナが言う。
「ムフォーホッホッホ、ここはサイコロステーキレーザーの部屋ですな」
「……なにそれ?」
 スーグニさんの言葉に、セレナが胡散臭げなものをきくように尋ねる。
「そこは進もうとするとレーザーが発射されるタイプの罠が仕込まれております。レーザーは四方八方から降り注ぎ、直撃を喰らえば切り刻まれ、サイコロステーキのようにブロック状にされてしまうという恐ろしい――」
「あなた、わたしたちを殺す気でしょ!?」
 思わずセレナが突っ込む。スーグニさんは凄く申し訳なさそうに、
「すみません……憧れだったので設置してしまいました……」
 というので、
「憧れならしょうがないのかな……」
 セレナも許した。
「ふふふ、ここはわたくしの出番!!!! ですわね!!!」
 どん、とフロラが立ちはだかる! ばーん、と胸を叩き、
「わたくしの四肢は義肢……つまり交換可能! あと太ももはバイオミートなので、実質当たり判定は体と頭のみ!
 つまり極小! 弾幕STGの自機のあたり判定くらいに極小!!
 でーーーすーーーのーーーで! わたくしが身体をはって! 重傷をもらって! 突破してみせますわ!!
 わたくしのプレイングをご覧あそばせ! だいたいこのサイコロステーキレーザーのことしか書いてありませんわ!
 つまり! ここに全力投球ということ! お分かりかしら!? わたくしは、このサイコロステーキレーザーに、すべてを賭けたのですわ!」
「で、どうします? 師匠(せんせい)?」
 と、ステラがフロラの後ろで何のこともなしにそういうので、汰磨羈は、ふむ、と頷いた。
「うーん……これが魔術にせよ科学にせよ、レーザーを使っているとするならば、だ!」
 くい、と眼鏡をかけるたまきち先生!
「良いか? こうして……うむ、あのあたりでよい。思いっきり攻撃する! すると、だな――!」
 いうや否や、汰磨羈はその手を掲げる。太極は此処に顕現し、陰と陽の間より放たれる高熱波が、空間を焼いた――同時、付近の壁面が崩れ落ち、煙を巻き上げる!
「よし! レーザーは、噴煙などで容易く減衰・希釈を起こす繊細な現象なのだ。つまり今なら、レーザーなどは蚊に刺されるに等しい!」
 だっ、と駆けだす汰磨羈。壁から煙を切り裂いてレーザーが射出されるが、なるほど、その一撃は命をとるには至らない。
「ニル! 今のうちに発射装置を確認せよ!」
「はい、なのです!」
 ニルが頷いた。その目が、天井部を動く、円形の物体を捉える。そこから赤色の光が放たれ、各壁から連動するようにレーザーが放たれているのを確認した。
「天井のが、そうなのです! ケイオスタイド、混沌の泥よ、すべてを飲み込め!」
 えいや、と掲げた手から、混沌の泥が巻き上がる! 解き放たれた泥は、天井の主装置を完全に破壊した。すぐにぶうん、と低い音がなって、暴れ喰うレーザーが瞬く間に弱まり、消えていく。
「凄い! あっという間ですね!」
 リカが驚いた声をあげる。
「なるほど、うまく対処したものだ」
 ウェールも感嘆の声をあげた。
「流石師匠(せんせい)です! ニルさんも、お疲れ様です!」
 ステラがそういうのへ、ニルがにぱ、と笑った。
「お役に立てて、うれしいのです」
「ええ。すごいわ。私は戦うしか能がないから、今は役にたてないけれど……」
 エルスが少し申し訳なさそうに言うのへ、
「いやいや、その分ラストでは力を借りるとしよう。
 では、次に行こうか! 我々ならば、どんなトラップもこえてゆけるだろう! なぁ、ワーキガ・ムレテールよ!」
「ムフォーホッホッホ、スーグニ・ウラギールですぞ~!」
 わーっはっはっは、と和やかな雰囲気で進む一行。パラパラと煙が舞う中、フロラが一人佇んでいた。
「あれ?」
 そう声をあげた。

●突破せよ! 絶・倉庫!
 さて。イレギュラーズ達は次なる部屋に侵入する。すると、ふわり、と身体がうき始めた。どうやら、無重力空間になる装置が作動したらしい。
「むむ、ここは私では役に立てなさそうだな……」
 汰磨羈がねこになって、ステラの頭にぽん、と乗っかった。
「でも、確かに……身体がふわふわして動きづらいですね……」
「ふふ、ここは私に任せてほしいわ」
 そういってセレナが笑う。
「たしか、ここは無重力+迷路、と言った感じなのよね。ファミリアーも飛ばせるし、偵察は可能。
 それに、魔女と言ったら箒で飛行……というわけだから、無重力でも問題ないわ!」
「確かに、その通りね」
 エルスがそう言って頷く。
「俺も飛行ができる。ファミリアーも複数飛ばせるから、一緒に攻略と行こう」
 ウェールがそういうのへ、セレナが頷いた。かくして、二人は無重力空間を『飛ぶ』。二人が長方形の部屋に侵入した刹那、通路と部屋を透明な壁が隔てた。同時、そこから凶悪な棘の付いた壁が走り出し、二人を後方から襲う!
「来たわね、いきましょ!」
「ああ!」
 二人が飛翔。飛び出す。だが、同時にあちこちから壁がせり出し、さながら立体迷路のような構造で二人を迎え撃った!
「ファミリアーを飛ばそう! スーグニさんも、アドバイスを頼む!」
 ウェールの言葉に、セレナもファミリアーの小鳥を先行させた。
「す、少しお待ちください……!」
 スーグニさんがそういうのが、しかし背後から迫る壁は待ってくれない。一気に飛翔しつつ、二人は狭い壁の隙間を飛びぬける!
「慌てなくていいわ、アドバイスだけ頂戴!」
 セレナが箒の柄を強く握った。スピードを上げるのを、ウェールが追従する。スーグニが叫んだ。
「右隅の通路です!」
「了解!」
 ウェールが頷き、二人は通路に飛び込んだ。上昇、下降。左右移動。あらゆる精密な飛行操作をして、迷路を飛び出す!
「トラップの制御装置だ!」
「併せて破壊しましょう! 1,2の!」
 3,で二人は同時に攻撃を放つ! 寸分たがわずそれが制御装置へと突き刺さると、トラップは瞬く間に作動を停止した。あちこちの壁が引っ込み、棘の壁もまた収納される。通路と部屋を隔てていた透明の壁も取り払われ、通路から仲間達がやってきた。
「お二人とも、お見事な飛行技術でしたわ~~~!!」
 フロラがぱちぱちと拍手をするのへ、セレナがわずかに頬を染めた。
「ありがと……さ、次行きましょ!」
 そう言って、僅かに笑ってみせた。
 さて、次の部屋に進んでみれば、今度は正方形の大きな部屋のようだった。降り立ったのは、リカとステラだ。
「ここは、壁が迫ってくる……という所らしいけど」
 リカがあたりを見回す。正方形の部屋の壁には、あちこちに切れ込みのようなものが見える。リカが嫌そうに目を細めた。
「あの形で迫ってきます、って主張が激しいですね……で、どうしましょう?」
「ふふ、まずは拙の無機疎通で、動きそうな気配を察知します! キューブステージそのものに、動くか所を教えてもらいましょう!」
 もちろん、その辺の無機物が流ちょうに思考できるわけではないが、それでも『わずかな違和感』を察知することはできる。
「きますよ! リカさん!」
 ステラが叫んだ! 同時、壁が立方体を生み出し、二人を押しつぶさんと襲い掛かる――ふぅん、とリカは唇を舐めた。
「なら、サキュバスの力を――無機物にはもったいないけれど、見せてあげるわ!
 壁を突き破れ、夢幻の魔剣!」
 リカがその身体を夢魔のそれへと変化する。同時、高らかに掲げた手、厳密には腕輪が輝き、雷の刃となって放たれる! グラムと名付けられた魔剣は、迫る立方体を完全に粉砕した!
「ハッ――潰されるのなんてゴメンよ。食肉加工工場みたいなトラップだけれど、壊してしまえば何の問題もないわ」
 妖艶に笑ってみせるリカに、フロラがが通路から声援を送る。
「ひゅー! さすが師匠ですわーーっ!」
「いや、師匠って何、知らないんだけど……まさか最低限の戦い方を教えただけで? 鳥のヒナかなんかか!?」
 困惑するリカを尻目に、ステラが叫ぶ。
「もう一度来ます! 天井と、正面から! 天井は拙に!」
 ステラが飛びあがり、その拳を天井より降る立方体へと叩きつけた! 竹を割る様に、ステラが天井の立方体を拳で粉砕する! べきべきと落下する破片が、足元に落下した――刹那!
「ええと、さらに右手左手同時!」
「ああ、もういいわよ! つまりやたらめったら、あちこちからくるって事ね!」
 背中合わせに立つと、二人は雷の魔剣を/赤き光の拳を、力強く構える。
「ええと、結局そうです! というわけで、四方八方めっちゃくちゃに粉砕しましょう!」
「これってサキュバスのイメージ的にありなのかしら、まったく!」
 うんざりとした声を上げつつ、リカが飛ぶ。ステラが飛ぶ。果たして二人の破壊者は、四方八方より迫りくる壁を片っ端から粉砕し続けた。これもある意味で、スマートな解決方法と言えただろう。
「ラスト! 停止ボタンきます!」
「私に殴らせて! ストレスたまってるの!」
 リカが叫び、飛びあがった。上空より迫る立方体のてっぺんに、わざとらしいくらいにわかりやすいボタンが設置されていた。
「舐めやがってッ!」
 舌打ち一つ、リカはそこに魔剣を叩き込む。ばぢん、と強烈な音を立てて、それがはじけ飛んだ。同時にトラップの機能が停止して、あれほど積もっていた瓦礫も、破砕された壁も、一瞬にして綺麗なそれへと変わってしまう。
「消えた……幻影だったのかしら?」
 エルスが思わずそういうのへ、ステラが苦笑した。
「いやぁ、手ごたえは本物でしたよ……?」
「不思議なものね……ほんと、何なのかしらこの倉庫……」
 エルスがそういうのへ、しかし応えるものはスーグニさんも含めていない。何なんだこの倉庫。本当に。
「でも、この次が最後の部屋なのよね?」
 エルスがそういうのへ、皆は頷く。長い倉庫番も、これにておわるだろう。次は、『思いでのアルバム』の保管された最奥に間違いなかった。通路を進んでいくと、やがて大きな広い、真っ白な立方体の中に出る。部屋の中央には、わざとらしく数冊のアルバムが保管されていた。
「ここ、日の光も当たりませんし、温度も一定。湿気もカビもありませんし、保存に最適なのですよね……」
 スーグニさんが言うのへ、
「子の姿を色褪せずに保存しておきたい……気持ちは分かる、が。やはり大げさが過ぎると思うぞ……」
 ウェールも流石に困ったような顔をした。とはいえ、これでラスト……と近づいた刹那! アルバムを中心に、地面が盛り上がった! そしてそれは瞬く間に、巨大なゴーレムの姿をとる!
「おお、最後の守護神、オーバーロード・ゴーレムです。趣味で発注しました」
 スーグニさんが言うのへ、
「う、うーん。趣味なら仕方がないのです……?」
 ニルが小首をかしげる。
「言ってる場合じゃないわよ! 構えて!」
 セレナが叫んだ。ゴーレムは身体をきしませながら、拳を振り下ろして強烈な一撃を放つ! それは、直撃せずとも余波だけでイレギュラーズ達を打ちのめすには充分な威力を持っていた!
「くっ……! 最後の最後に厄介なものを!」
 汰磨羈が痛みに顔をしかめながらそういう。
「こういうのは任せて……さ、奮っていくわよ!」
 そんな中、エルスが声をあげ、飛び出した! ゴーレムが、迎撃とばかりに拳を振り下ろす! エルスはそれを華麗に跳躍して回避してみせると、振り下ろされたばかりのゴーレムの腕の上に飛び降りた。そのまま腕の上を疾走する!
「砂塵に踊る月――月光玲瓏、私の斬撃に一点の曇りもなし!」
 振り下ろされる、月のような大鎌。それは青ざめた月光の光にも似る。月光の斬撃が、この時、ゴーレムの頸部を切り裂いた。ず、と線が走り、ゴーレムの首が斬り落とされる。そのままゴーレムの首が落下すると同時に、その身体はバラバラになっていった。エルスが着地すると同時に、ゴーレムの身体から零れ落ちたアルバムを受け取る。
「これでいいのね? スーグニさん。
 ……こんなゴーレムに守られなきゃいけないようなもの、だったの……?
 いえ、彼等は一般的にお宝を守ってるのが鉄則なものだったから……少し驚いて、ね?」
 そう思わず尋ねるエルスに、スーグニは笑って応えた。
「お嬢さんも、きっといずれ分かりますよ」
 エルスは、不思議気にアルバムを見つめ、胸に抱いた。
「スーグニ様。戻ったら、お子さんの思い出、教えて欲しいのです」
 ニルがそういうのへ、スーグニは笑って応えた。
「お疲れでしょう。すぐに転送させますので、屋敷でくつろいでください。お話はその時に。
 この度は本当に、ありがとうございました」
 その言葉には、確かに深い感謝の色が乗っていた。
 奇妙でふざけた依頼であったが、そこにのせられた親心は、確かに尊いものだったに違いない。
 その願いを聞き届けられたのならば、それはきっと、ハードな経験に見合う何かを、イレギュラーズ達に残してくれただろう。
「今までスーグニさんの思い出を守ってくれて、ありがとうな。ゴーレム」
 ウェールがそういうのに、僅かにキューブが振動したような気がした。それは、親の想いを守っていたゴーレムの、ささやかな返答なのかもしれなかった。

成否

成功

MVP

ニル(p3p009185)
願い紡ぎ

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 高難易度倉庫番、達成です――!

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