シナリオ詳細
神なきゴッドのエスケープ
オープニング
●ハングリーなファミリーにフューチャーをプレゼンツ
光あるならば影がある。
宗教国ネメシスとて影はある。
一見炊き出しボランティアにみえるテントの裏に、その影はあった。
「つまりあなた方は、天義から亡命したい……と?」
コインの数を数えていた飛行種の女が、抑揚の少ない声で言った。
長机の向かいには、帽子も目深に顔を隠した壮年の男。
「私の孤児院についていた支援団体はつい最近まで活動していたのですが、天義に対するテロリズムを敢行して……」
「愚かですね」
ぴんと弾いたコインがテーブルで回る。
「吠えた犬は撃たれる。この国の常識じゃありませんか」
「分かっています。我々だってあの人たちがそんなことをするなんてゆめにも……」
「けれどあなたも同じ犬だ」
回るコインを手で叩く。
バンという派手な音が、男を反射的にすくませた。
「少なくとも地元の教会はそう思っている」
「そ、その通りです……」
「今この時でさえ、あなたがたを抹殺するか、とらえて残る仲間の居場所を絞りだそうと計画している」
「お、おそらくは……けど知らないんです! 私たちは支援金を貰っていただけで、子供たちだってなんにも!」
「どうでもいい」
一発音ずつを区切って、繰り替える。
「ど・う・で・も・い・い」
「…………」
「今言うべきは二つです。すべて私に差し出すか、ここで終わりを迎えるか」
「あなたがどういう方かは知っています。けど、どうやって……」
「今」
テーブルの上。飛行種の女は自らの手を指さした。
派手に叩いてコインを止めた、その姿勢のまま止まっている手だ。
「今この手の下に、なにがあると思いますか?」
「それは……」
手をどけて見せる。
するとそこには、コインなんてなかった。
否、ハート型に小さく折りたたまれた紙片があった。
両手を開いて見せる。
「この紙切れを受け取った瞬間、交渉は成立します。どうしますか?」
男はおそるおそる、紙片をつまみあげた。
開いてみると、財産の全てを受け渡すための手順と、もうひとつのことが書かれていた。
眼鏡を取り出し、装着する。
「あなた方の亡命、承りました」
女は『情報屋』ニネット・ハーシェ。
またの名を『夜逃げ屋』ニネット。
●ゴッデスのビジットにイレギュラーズアンドゴッドが
「どうも、ゴッドいますか? いや居るならいいんです。出さなくて――出さないでくださいややこしくなるから。いいですってば」
このような調子でローレットの窓口を訪ねてきた女情報屋ニネット。
彼女はある書類を提示すると、こんな風に話した。
「やっているんでしょう? 何でも屋」
ニネットは天義と練達というある種両極端な国を渡り歩く情報屋だ。
その活動範囲からも分かるとおり天義の姿勢に共感しているわけでも、練達の挑戦にかぶれてるわけでもない。
彼女の動力源は常に金。普段は情報屋として活動し、天義に反抗する者をこっそり支援したり亡命を手伝ったりする裏の仕事も請け負っていた。
「慈善事業? 冗談でしょう。財産全て、足りなければ借金させてでもむしり取りますよ。新しい人生を売るんですから、こちらのリスクや出費もかさむんです」
指でお金のシグナルを作って見せるニネット。
それを左右に振りながら、仕事の話を続けた。
「近日、天義の孤児院から大人一人と子供複数をいちどに亡命させる仕事を受けまして。逃がし屋を使おうと思ったんですが……残念ながら彼らも足がつきまして」
お金のシグナルを作ったまま、ニネットは自分の首に一文字をきって見せた。
「幸い私のことはバレてないようなので、ここは一つゴッドのコネとやらを使ってみようかと……ああ、そちらの組織に居ますよね? ゴッド。いいです出さなくて。連れてこなくていいですってば」
口ではそう言っても、表情がちょっと柔らかいところからしてゴッド(御堂・D・豪斗のことである)を憎からず思っているらしい。
「で、どうです。鳴ってみませんか『夜逃げ屋』に」
- 神なきゴッドのエスケープ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年09月13日 21時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●つらかったら逃げてもいい。ただし立ち向かうより容易だとは限らない。
「ワーキンにはリワードが必要!」
両手を翼のごとくひろげ、『不知火』御堂・D・豪斗(p3p001181)は天空に飛翔した。具体的には高度30センチの空を一秒弱飛翔した。
「オールプロパティはあくまで指標、人の子が責任を持って事を為すにはアガペだけでは成り立たん! ヒーローズ&エンジェルズも得る物があるからこそここにいる! まあゴッドはゴッドである故、そのリージョンには囚われぬがな!」
着地し、振り返り、もう一度『囚われぬがな!』と叫ぶゴッドに、一同すこしずつ目をそらした。
唯一目をそらさなかった『特異運命座標』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)が小さく手を上げる。
「気になったんですけれどー、亡命にあたり全財産を報酬にあてたら……亡命先で無一文になったり、しませんわよねー?」
「そのウォーリーはいらない」
「ウォーリー?」
「全てのマネーをスティールするなら相手をキルしたほうが断然にファーストかつスマート。第一に、このゴッドはゴッデスにそのようなヒューマンをセレクトしない!」
「んー……なんて?」
「全財産を剥奪したいなら殺して奪ったほうが早いし、そもそもそういう人を自分はスカウトしないって言ってる」
『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)が明後日の方向を見ながらそんなことを言った。
国家間の亡命。それも結構な人数となればコストは莫大なものとなる。援助のきれた貧しい孤児院にそんな資金はなさそうだし、全財産を奪うといっておきながらむしろ投資してる可能性すらあった。こういう人生助けるレベルの行ないは後に太いコネクションになったりするので、あながち無駄遣いともいえないが。
「ま、裏にどんな事情や交渉があったかは知らないし、興味はないけどね。子供の為に働くのは中々にやる気が出ると思うよ?」
「うん」
『オーガニックオーガ』百目鬼 緋呂斗(p3p001347)が腕組みのまま頷いた。
「子どもたちのために僕、精一杯頑張るね」
悠は『たぶん犯罪組織の亡命とかテロの供与とかもしてるんだろーなー』とも思ったが、そこは黙って置いた。折角第三者がやる気を出しやすい案件をふってきたのに、気分を崩すこともあるまい。
ぱっと手を広げて翳す『偽装職人』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)。
「天義の考え方好きではないのです。ルルは孤児院で暮らしていたので他人事には思えませんし絶対無事に逃がしてみせます!」
「んー……」
『飲酒シャトルラン』祈祷 琴音(p3p001363)がぽつりと呟こうとしたことをウィスキーとともに飲み込んだ。
「私もローレットも、仕事を選ばないわねぇ」
と、そこだけ言ってみる。
「それにしても、国が変わっても人はかわらないものねぇ。幻想でも貴族に逆らう民衆殺してこいとか珍しくなかったしねぇ。今回も依頼主と目的が違うだけで本質的には大差ないでしょぉ」
孤児院は町の外れにあった。
管理人が恐れているほど国(ないしは土地の統治団体)はこの孤児院を重要視していないようで、とくに騎士が見張りをしているということもなくすんなりと入り込めた。
町は見たところ平和そのもので、幻想の町が異世界に見えるくらい綺麗に整っていた。ゴミはかけらも落ちていない。誰も座り込んでいない。夜道は明るく、下水道設備をはじめとする公共事業が常に民のために回っていることが見てとれた。等間隔に設置されたマンホールと、そこに刻まれた祈りの言葉がそれらを主張している。
騎士たちの見回りもきっちりとしていて、犯罪者が出る様子をまるで感じさせない。家によっては夜間蒸し暑いからと玄関や窓を開け放っているところすらあった。
治安のよい、静かな町。
そんな一角で、『鳥篭の君』シャーロット・ホワイト(p3p006207)は歌を終えた。不安がる子供たちのこころを解きほぐすためだ。
『魔剣使い』琴葉・結(p3p001166)は音を立てないように形だけ拍手をして、子供たちの手をひく。
「どんなに平和な町でも、犯罪者扱いされれば言い逃れは無意味だろうし……さっさと行きましょ」
白い衣は汚れを目立たせるもの。町の治安の良さは、それを乱すものの存在をひどく嫌うだろう。
真に恐ろしきは毎日魔女裁判の炎をあげる町ではない。
善良すぎることは、時として凶悪な圧力になりうるのだ。
「子供たちを頼みます!」
シャーロットはそういって、予め決めた配置へと移っていく。
一方で結たちは、マンホールを通じて下水道へと下っていった。
●善良さの弱点
「さあキッズたちよ、ゴッドのグロリアスなバックライトを見よ!」
身体を十字に広げてくるくるまわるゴッド。
彼の周りにはなんかきらきらしたものが現われ、軽くクリスマスツリーみたいになっていた。
「ゴッデスのプランはパーフェクト! キッズ達よ、ビッグシップに乗ったつもりで進みたまえ! ゴッドと、ヒーローズ&エンジェルズのパゥワーが合わされば……」
語るゴッドが、ぴたりと止まった。
先行していた結が『静かに』というハンドサインを出してきたからだ。
結は魔剣からのびた光を全身に薄く纏い、音や気配を殺しながらゆっくりと浮遊移動をしていた。普通なら飛行の風圧によって結構な音が出るはずだが、魔剣からのびた光がそれを吸収しているのだ。
そのうえで、マンホール上部にむけて耳を澄ます。
緋呂斗は町をうろうろと歩き回っていた。
地面を見つめ、特にはじっこのほうを凝視している。
「何かあったのですか?」
騎士のひとりがカンテラを翳して話しかけてきた。
緋呂斗は困ったようなしぐさで、落とし物をしたと騎士へ説明した。
これが幻想の見回り兵とかだったら話しかけてくれさえしなかっただろうが、そこは天義の騎士である。
「明かりもなく大変でしょう。お手伝いしますよ。どこで落とされましたか?」
とこのように、自然と協力をかってでてくれた。
彼らの見回りも犯罪抑止のためというより、こういう細かい気配りのためという側面が大きいのかもしれない。
緋呂斗は自分なりに色々と話して引き留めようとおもっていたが、この場合はむしろあんまり話さないほうがボロもでにくいだろうと考えて、しばらく騎士とともに落とし物捜しをした。
むろん、緋呂斗はただ落とし物捜しをしたわけではない。
足下を進む仲間たちや子供たちが騎士に見つかってしまわないように、予め調べた見回りルートに先回りして足止めをしているのだ。
道路に座り込んで一升瓶をラッパ飲みしている琴音も、もちろんそのためである。
……そのためなんだろうか?
「お嬢さん、一体どうなさったのですか。こんな所に座り込んでは風邪を引きますよ」
通りかかった騎士が声をかけるのも無理からぬことである。まあ、夜間路上に座り込んでる人がいたらとりあえず話しかけるような人たちではあるが。
「へあー」
琴音は普段でもそうそう出さないような声と顔をして、べろんべろんに酔っ払ったふりをした。
ついでに騎士の足にしがみついてなんかよくわからないことを喋った。
天義の騎士ぜんぶがそうではないが、少なくともこの町の騎士はお人好しが多いらしい。
「何か嫌なことがあったのですか。話を聞きますよ」
そういって隣に座り、琴音の支離滅裂な会話に応じてくれた。
「…………」
ルルリアは屋内の影に紛れるようにして、完璧に気配を消していた。
まるでそこにいないかのように、狭い下水道の中を進む。
しかし真上……からずっと遠くで交わされているやりとりに、なんだか複雑な気持ちになっていた。
この町の騎士たちは、どうやら人を疑わない。
はっきりとした犯罪者や、魔種や、怪物でもないかぎり、受け入れて暮らしているらしい。
下水道のにおいはそれほど悪くなく、よくないゴミも流れていない。住民が節度ある暮らしを堅実に守っている証拠だ。
良い町だ。だがそんな町に、孤児院の子供たちが生きる未来はないらしい。
危険がないと判断したところで、ルルリアは不安がる子供たちにぬいぐるみを手渡した。
「お姉ちゃん達が付いてるから安心してくださいねー! ぬいぐるみさんが皆のことを守ってくれますよっ。えへー。お名前はなんて言うんですかっ?」
明るく話しかけて気分をやわらげる。
彼らがパニックを起こせば計画が破綻するから……というのもなくはないが、どちらかといえばルルリアなりの善意や思いやりである。
暫定的にそばについていた悠も同じく子供たちについていたが、とくに何をするというでもなく、強いて言えば浮いていた。
いや、存在が浮いていたというのではなくて、(実際ちょっと浮いてはいたが)物理的にふわふわ浮いていた。
どうやら子供たちに軽い信仰心をもたれたようで、それに付随する効果として浮いているらしい。
なんでと問われても、そういうものなのだとしか。
少なくとも子供たちが不安がることはなく、大人しくついてきてくれているのは助かった。
「どんなものも、たまには意味を成すのかな」
そう考えていると、ルルリアが手を翳した。
騎士が真上に近づいているらしいのだ。
「なるほど、出番だね」
悠がマンホールの上でうずくまっている。
ここが幻想なら見て見ぬ振りをされるか馬車でひかれるかのどっちかみたいな格好だが、馬車で近づいてきた騎士はその馬車をとめ、急いで駆け寄ってきた。
「どうなさいましたか。どこか具合が?」
その時、遠くで悲鳴。
何事かと顔をあげると、メリルナートが慌てた様子で駆け寄ってきた。
馬車に乗っていた別の騎士も、その様子にただならぬものを感じておりてくる。
「死体が。死体があったんですー。血まみれでー!」
メリルナートは魅力的な体つきや美しい顔やその他色々をこれはもう惜しげも無く利用した。
対して騎士は。
「それは大変です。自分はこのご婦人を送り届けますので――」
「分かった。こちらのかたは自分が」
真面目と善意だけを配合した様子で、メリルナートたちへ真摯に対応してくれた。
メリルナートは十分すぎるほど魅力的だったが、それよりも騎士たち自身の善意と信仰心が上回ったようである。
「死体を見たというのはどちらですか?」
「あっちですわー」
お人好しなら好都合。メリルナートは口車に乗せる形で、騎士を別の場所へと連れて行った。
町から出る最後のポイント。
シャーロットはうろうろと、細い路地や物陰を探って回っていた。
「捜し物ですか?」
通りかかる騎士がそんな風に声をかけるのは、この町では当たり前のことである。
シャーロットが振り返ってみれば、相手は平和な町のお巡りさんと言った風貌の騎士であった。
「女の子がこんな時間に歩き回っては、よくありませんよ。お家まで送ります」
「えっと」
シャーロットは迷った。家はこの町にはありませんとはさすがに言えないので、他の理由をでっちあげねばならない。
「このあたりで黒猫を見ませんでしたか! 飼っている老猫がいなくなってしまい、このままでは死んでしまうんです」
昔かっていた鳥が死んでしまったことを思い出して涙ぐむシャーロットに、騎士はうーんと深く唸った。
「わかりました。暫く一緒に探しましょう。そのあとでお家まで送りますので」
「ありがとうございます!」
このまま騎士は自分に同行してくれるという。
さて、どこで抜け出したものか。
シャーロットはむしろ、そこにこそ困った。
●闇を抜けるまで
治安のよい町は、危険な森のそばにある。
だからこそ、その間を乗り越える者はなく、町の騎士たちにとっても死角であった。
町を比較的安全に抜け出すには、この道を通ることがベターなのだ。
しかしそれは同時に、危険に身をさらすことを意味している。
「止まって」
結は仲間たちやその後ろの子供たちを立ち止まらせて、剣を抜いた。
こちらを早くから認識し、敵意をむき出しにしてくる個体があちこちにいる。結の魔剣はそのように(言葉もなく)教えてくれた。
「ここは奴らの縄張りみてぇだ。お代を払って通して貰うか?」
「『お代はあなたの命です』って? 冗談っ!」
暗闇から飛び出す『ダークハウンド』。
結は魔剣の光を全身に纏うと、高すぎる跳躍によって攻撃を回避。なにもない空間を蹴ってジグザグに飛ぶと、ダークハウンドを切り裂いた。
「敵よ!」
「わかった!」
緋呂斗は素早く対応。ツヴァイヘンダーという威力の高い剣を構え、回り込もうとするダークハウンドを切りつけた。
背後で小さくなる子供たちに振り返る。
「大丈夫、怖くないよ。僕、みんなと友達になりたいな」
そんな風に子供をなだめる一方で、悠はふわふわ浮いたまま何もない空間を指でなぞった。
奇妙な毒液が空中に生成され、ダークハウンドへと浴びせかけられていく。
「数はたいしたことない、かな」
「それでも、油断大敵!」
ルルリアは腰から銃を抜いた。
黒い魔法銃と白い魔法銃である。それらを交差するように構え、側面から回り込んでくるダークハウンドへと連射。
迫るより先に撥ね飛ばされ、ダークハウンドは地面を転がった。
それでも起き上がろうとするダークハウンドに手を翳すシャーロット。
魔術でできた花びらや羽根が散り、突風でふかれたかのようにダークハウンドへ襲いかかる。
一方では、子供たちの背後を守っていた琴音が酒瓶になにやら詰めて投擲。
直撃して燃え上がったところを、メリルナートが指をさすようにして狙いを定めた。
巨大な馬上槍が空中に浮かび、先端を相手にぴったりと向ける。
メリルナートが目を細めたその一瞬、僅かに起き上がったダークハウンドに槍が飛び込むように突き刺さった。
あちこちで倒れ、動かなくなるダークハウンドたち。
殲滅が不可能だと察したのだろう。あちこちに控えていた別のダークハウンドたちは小さく吠えてから逃げていった。
「うむ、ヒーローズ&エンジェルズ……ゴッドジョブであった!」
「ゴッド、なにもやってないでしょう」
ぱっとまばゆい光が彼らを照らした。
ゴッドは両手を広げてくるくる回ったまま、妙に上機嫌にライトに照らされている。
逆光になってうつる人影は、ニネットのものであった。
今回の依頼人、ニネット・ハーシェ。
背後で光っているのはトラックという練達製の乗り物で。そのヘッドライトが光っているらしい。
「そんなことはない。ゴッドのシャインにより癒やしゴッドオーラでモンスターを――」
「大丈夫、見てましたから。ちゃんと見てましたから」
よしよしとやるシャーロット。
「ゴッドの活躍はあとで聞きますから、全員乗ってください」
親指でピッとトラックの荷台を指さすニネット。
「ゴッデスもゴッドジョブであった!」
「はいはい……ゴッドも頑張りましたね」
「なに、ゴッドとフレンズ達にとってはブレックファースト前よ! ユーからのリワードで乾杯といこうではないか!」
ゴッドとニネットの間には二人にしか分からない独特の空気があった。
にっこりと笑い、ルルリアたちはトラックに乗り込んでいく。
エンジン音を唸らせて夜闇を抜ける一台のトラック。
あんまりよろしくない乗り心地を感じながら、未来を思う。
子供たちにどんな未来が待つのだろう。
新しい土地。新しい生活。新しい常識。
汚れた窓にうつる夜の景色と遠ざかる天義の夜景が、トラックの振動のなかで混ざり合って、夜闇のなかに全部が溶けていくような……そんな、夜だった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――God Job!
GMコメント
※こちらのシナリオは【不知火】 御堂・D・豪斗 (p3p001181)の関係者ニネット・ハーシェより寄せられたものです。
【依頼内容】
天義の孤児院で暮らす大人一名と子供10名を全員、天義の町から脱出させること。
町を警備する騎士の目をかいくぐったり、時に足止めをして隙を作ったり、戦ったりと様々な場面を乗り越える必要があるでしょう。
手順についてはあとで詳しく解説します。
【夜逃げの手順】
0.下準備
おおかたの下準備は済んでいます。
孤児院から地下道へのルートや、ある程度まで逃げ切ってからの足などは準備済み。
PCたちの身元を隠すための覆面や服なども用意されているので、プレイングに身元を隠す旨が書かれていなくても自動的に隠す扱いとなります。
1.地下道を通って町の外へ出よう
件の町は公共事業が整っていて下水道がきっちり通っています。これを活用して町の外へと脱出します。
使用するルートは一つ。万一のための迂回路がいくつかありますが、地図は既に作成済みです。
『地下を誘導する係』をここにつけて、孤児院の大人や子供たちを連れて行きましょう。
不安な子供たちを宥める能力や、騎士の気配を自力で察知できる能力があるとグッド。
2.見回り騎士を足止めしよう
町の騎士は非常に熱心に働く真面目な善人たちです。
必ず二人一組で町を細かく巡回しており、おかげで犯罪はまるで起きません。ホウレンソウもばっちりです。
そのため地下ルートを通ろうとしても『5箇所』で足止めが必要になってきます。
あくまでローレットの者だという身分を隠しつつ、見回りにやってきた騎士たちを(しょっぴかれない程度に)足止めしましょう。
方法は各自の個性や能力、好みで決めてかまいません。
少なくともめっちゃ真面目で地味に優秀な人たちだという前提で足止め作戦を行なってください。(例えば賄賂は通じません)
1箇所につき1PCを割り当てると丁度よいでしょう。
3.危険地帯の突破
国境警備の目をかいくぐるため、あえてモンスターの発生する危険地帯を突破します。(この時点で足止め組がしょっぴかれていなければ合流できます)
今回は『ダークハウンド』という闇色の犬型モンスターの縄張りを通ります。
十中八九バレるため、戦闘によってモンスターを倒し、突破します。(戦闘終了と同時にシナリオ条件はクリアとなります)
ダークハウンドの出現数は不明ですが、油断せずに戦えば大丈夫な規模です。噛みつきなどの攻撃方法をとるらしい、です。
【NPC解説】
・ニネット・ハーシェ
ゴッドのゴッデス。
もっと詳しく言うと天義で活動中にゴッド(豪斗)にナンパされた人々のひとり。勝手にゴッデス(現地天使)と呼ばれているが、別に信奉しているわけではない。むしろ辛辣に接している。
が、どうやら憎からず思っているらしい。
情報屋以前は練達でテスター活動をしており、その時のコネで様々な支援を行なう。今回は夜逃げのルート構築や主立った足の調達がメイン。
イレギュラーズたちが危険地帯の森を突破した段階で合流する予定になっている。
・孤児院のひとたち
子供たちの世話を任されている壮年の男と、孤児院で暮らす10人の子供たち。
上は15歳下は5歳とバラバラ。
特に幼い子たちは現状を理解できなくてかなり泣きそうな塩梅である。
・町と騎士
天義と一口にいっても色々あるが、この町は騎士が警察的役割を担っている。
町はかなり(PLから見て)常識寄り。騎士たちも真面目。
【名声】
この依頼は悪依頼ではありませんが割とワルです。
そして天義に実績が残る案件でもないため、成功時には幻想に名声値がプラスされます。
Tweet