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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>機械仕掛けのバレリーナ<大回天事業>

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝の政変は、国の有り様を一変させた。
 新皇帝が打ち出した治世のルールは弱肉強食のみ。
 警察機構を解体し、犯罪者とされた者達が野放しにされ、我こそはと有り余る力を示し、全てを奪い取ろうと振舞う。
 これによって、力なき鉄帝の民は見捨てられる形となってしまい、全てを失い、蹂躙されるのみとなってしまった。

 力こそ全てという鉄帝にあっても、民全てがそうした考えではない。平穏を願い、日々を精一杯生きている者達もいるのだ。
「だからこそ、こうした鉄帝の実状は放置できないね」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は混乱の最中にある鉄帝首都スチールグラードに集まるイレギュラーズへと現状の説明を行う。
 現状、新皇帝の勅令によって、釈放された犯罪者達が再び欲のままに力を振るうことで、鉄帝民の命が危険にさらされている。
 その一つが死刑囚「大回天事業サーカス団」だ。
 クラースナヤ・ズヴェズダー革命派がその活動を察知したものの、大回天事業サーカス団は難民を相手に惨殺ショーを開始しているという。
「クラースナヤ・ズヴェズダー革命派の筆頭アミナが号令を出して救出作戦を開始したんだが、ちと後手に回っているようさ」
 人命を救出する為、イレギュラーズは個別に動く団員らを一体ずつ叩くことになる。
 オリヴィアが説明するのはサーカス団の紅一点、『踊り子』リーナとアニマールの一隊。
 比較的パワーに優れた量産型機械獣によって一箇所に纏めた民衆をリーナは蹴り殺し、団子状にしてからその上を華麗に踊り出すのだという。
「彼女にとって、シェルターという場所は自らの舞台としてうってつけなのさ」
 地中に築かれた強固なシェルターだが、パワータイプの機械獣の攻撃が続けば破壊されてしまう。
 そこにリーナが突入してしまえば一巻の終わりだ。
「敵がシェルターに突入する前に、必ず止めるんだよ」
 オリヴィアはそう告げ、メンバー達に早く現地へと向かうよう促すのだった。


 鉄帝のあちらこちらから土埃が舞い上がる。
 犯罪者は好き勝手に破壊活動を行い、物資を奪い取っているからだ。
 こんな状況では鉄帝民も通常の生活など遅れるはずもなく、最寄りのシェルターへの避難を余儀なくされていた。
 食料も物資も最低限の物しかなく、近づく冬の寒さを徐々に感じながら人々は身を寄せ合い、ただただ不安な日々を過ごす。
 そんな人々を狙う犯罪者もいる。
「ああ、やっと私の踊りを披露できるわ」
 恍惚とした表情で量産型機械獣を従える女性。
 高飛車で自信家、大回転事業サーカス団の紅一点、『踊り子』リーナである。
 地中に作られたシェルターの一つへと到着した彼女は、内部で震える人々へと言い放つ。
「さあ、その命が見物料よ。私の舞踏を存分にご覧あそばせ!」
 蒸気駆動脚部『バイラリン』を起動させた彼女は速力をもって鮮やかに舞い踊り始める。その傍で、機械獣らがシェルターの入り口、及び地面を破壊すべく攻撃を始める。
 その様子は内部にいる人々からもモニター越しに知るところとなる。
「こわい、怖いよ……」
「これが最後などと受け入れられるわけがないだろう……!」
 だが、シェルターは機械獣の攻撃によって、振動を始める。
 シェルター内部、入口から最も遠い隅へと集まる避難民達は、モニターを見つめながらただただ祈る。
 助けて、助けて。
 ここは神に祈る天義ではない。避難民の祈る相手は神ではなく、この状況から救ってくれる革命派、ラド・バウの闘士、あるいは……。
「……ローレットか?」
「イレギュラーズだ。やはり来てくれた!」
 駆け付けてくる数名の人影に、避難民は歓喜する。
 その声はリーナにも届いており、喝采が自分に向けられていないことに歯噛みして。
「この舞台に貴方達は不要よ、イレギュラーズ……!」
 なおも宙を舞い踊るリーナはシェルターの破壊を進めながらも、機械獣をイレギュラーズへとけしかけてくるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 鉄帝の混乱の最中、避難した人々を狙う大回天事業サーカス団団員の討伐を願います。

●目的
 『踊り子』リーナ以下、全てのアニマールの討伐。

●状況
 鉄帝の各所にある小規模シェルターの一つを、リーナと彼女の率いるアニマール3体が強襲します。
 内部へと避難する難民を守りながら、リーナ達の迎撃を願います。

●敵
○『踊り子』リーナ
 『大回天事業』の紅一点のバレリーナ。腰から下が機械化した改造人間で蒸気駆動脚部『バイラリン』を使い、多彩かつ華麗な足技を繰り出してきます。
 回避、命中、攻撃のバランスが非常に高いアタッカーです。

○アニマール×3体
 量産型機械獣複数体で構成されたチームです。

・ライオン
 全長2mほど。通常のライオンと同程度の大きさです。
 量産型とはいえ、機械獣となったことでその力は強化されており、太い腕でこちらの体を引き裂こうとしてくる他、威嚇咆哮も行います。

・トラ
 全長3mほど。こちらも通常種と同程度。
 こちらはジャンプして見た目以上の軽やかなステップで躍りかかってきます。

・ゾウ
 全長6m程。同じくアフリカゾウと大きさは同程度。
 動きは鈍いですが、鼻で縛り付けてきたり、鞭のように叩きつけたり、強く地面を蹴って体当たりしてきたりします。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <総軍鏖殺>機械仕掛けのバレリーナ<大回天事業>完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年11月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
シラス(p3p004421)
竜剣
雨紅(p3p008287)
ウシャスの呪い
一条 夢心地(p3p008344)
殿
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで

リプレイ


 新たな体制となり、混迷極まる鉄帝国内。
 やりたい放題に暴れる元犯罪者の中で、現状ローレットが目をつけている危険な集団の一つが元死刑囚「大回天事業サーカス団」。
 観客をも巻き込んで殺戮ショーを行う非道集団である。
「件のサーカス団を討つのじゃ」
「今回の仕事は、サーカス団を倒して堅気の皆さんを守る事だ」
 『殿』一条 夢心地(p3p008344)は端的に今回の目的について告げると、『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)が続ける。
「なーにがサーカス団だ、やってる事がただの愉快犯じゃないっスか」
「まぁ……民草を巻き込むなんて……昔の妙見子みたいなことしておりますね! 草生えますよ!」
 露骨に呆れる『紅眼のエースストライカー』。『宙より堕つる娘』水天宮 妙見子(p3p010644)はというと、大仰に驚く素振りをして笑ってみせた。
「こんなんまで野放しにされて、鉄帝も随分ヤベー状態になってんな」
「今鉄帝の治安は乱れているが、目の届く範囲は何とかしたいもんだ」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)、義弘は鉄帝の現状を憂い、力なき民を救済したいと語る。
「避難したシェルターでまで命の心配をせねばならん……鉄帝の民たちをそんな目にあわせるわけにはいかない」
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)もそんな仲間達の意見を耳にしてから口を開く。
「こいつらの題目には正直興味はないが、ふざけたサーカスは即日廃業してもらわねば」
「あまりいい気はしませんので、ここでくたばっていただきましょう!」
 エーレンの意見に妙見子が応じる。
 他メンバーからも異論は出ず、皆、急いで現地へと急行する。

 鉄帝某所、地中へと作られたシェルター。
 3体の機械獣と改造人間がその上部となる地面の破壊を進めていた。
「さあ、その命が見物料よ。私の舞踏を存分にご覧あそばせ!」
 機械化した下半身で機械獣と共に地面を削るのは、『大回天事業』の紅一点、『踊り子』リーナである。
「むむむのむ。以前に取り逃がしたあの踊り子かの」
 夢心地はこのサーカス団かつリーナとも直接対した経験があったようだ。
 このままでは中にいる人々が危険な為、引付役となるメンバーが進み出て。
「サーカスの割には子供が楽しめそうな出し物じゃないね。そんなんでオレたちを楽しませてくれるのかな?」
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。腰から下がゴツい割に動きがノロそうだな」
 まずは『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が呼びかけ、続けてエーレンが名乗りながら煽ると、リーナが足を止める。
 機械獣もまた不審そうに、イレギュラーズへと視線を投げかけていた。
「私も舞いながら戦うものではありますが、貴女のそれを舞とは呼びたくないですね」
「聞き捨てなりませんわね」
 続く『仮面の舞姫』雨紅(p3p008287)の呼びかけに、リーナは青筋を立てて表情を一変させる。
(他の皆様も妙見子はリーナ様を打ち取ってくださるのを期待しておりますよ)
 妙見子の傍で、『竜剣』シラス(p3p004421)がシェルター内で避難民にも聞こえるよう呼びかける。
「さあ、どなた様もご覧じろ。次なる演目は怪物退治芸でござい」
 ァァァァァァ……。
 シラスの声が聞こえたのか、イレギュラーズの登場に沸き立つ歓喜の声が地上まで聞こえてくる。
「見たくもねぇサーカスをやられても、面白くねぇのさ」
「サーカス団員たるもの、民を喜ばせることが本来の役割。……にも関わらず再三の狼藉、最早これ以上看過するわけにはゆかぬ」
 敵の動きに注意を払う義弘が腕を鳴らし、すらりと妖刀を抜いた夢心地がリーナを正視して。
「殿的存在として、この一条夢心地が成敗してくれるわ」
「その前に、肉団子にしてさしあげてよ!」
 ギリッと歯ぎしりを鳴らし、飛びかかってくるリーナ。
「死人の肉団子とか趣味の悪ぃもんよりも、もっと面白ぇ玉遊び見せてやるっスよ」
 そいつの背後へと回り込むように位置取った葵がサッカーボールを指の上で回転させるのだった。


 敵は踊り子リーナと機械獣ライオン、トラ、ゾウの3体。
「というわけで、皆さん頑張ってきてくださいましね!」
 妙見子の呼びかけを受け、敵の引き付けに動き出したのは、エーレン、イグナート、雨紅の3人だ。
「お前の所のサーカスには足踏みを見せるだけの演目があるのか? さぞや退屈なサーカスなんだろうな」
 エーレンは敵を威嚇しつつも妙見子に瞳だけ向けて。
(重責を担わしてしまっているからな。いらぬ負担をかけぬようきっちり己の務めを果たさねば)
 すぐにリーナらを見つめるエーレンは強く敵の意識を自分達へと繋ぎ止める。
 そのまま、シェルターから離れる様にエーレンが動くのに合わせ、イグナートも叫ぶ。
「ここから先に行きたければ、オレを倒してからにしてもらおうか! オレを殺せる程度の芸が出来なきゃ通れないよ!」
 市民を守る為、イグナートもまた機械獣を引き寄せようとする。
 リーナはイグナートらも睨みつけてはいたが、その意識は自身と似た印象を抱かせる雨紅に強く向いていて。
「誰も何も残すつもりのないそれは、ひとりぼっちで踊るのと何が違うのです?」
「……残りますわ」
 それがリーナのたわ言と雨紅は感じて。
「それとも、観客の心に残る自信がない? それはつまらなくて当然ですね」
 雨紅にとって、それは自分達を狙わせる為の煽り、そして、本心だ。
「残りますわ。絶命の時、私の華麗なる姿を脳裏に焼き付けて!」
 妙見子はリーナに睨まれたまま、抑えに向かったメンバーの為に英雄叙事詩を口ずさむ。
「強くてニューゲーム……とまではいきませんが、多少は頑丈になりますよ……」
 魔力を帯びた詩は戦いに臨む仲間達を奮い立たせていく。
 中でも、雨紅は同じ舞手としてリーナに思うことがあるのだろうと妙見子は気にかけていたようだ。
 シェルター内の民間人の避難誘導へと向かう妙見子が不安がっていたことを義弘は思い出して。
「お前さんだけが動く訳じゃねえからよ。気をしっかり持て。堂々と誘導しろ。体張らせてもらうからよ」
 彼女が手を振るのを確認し、義弘は抑え役から意識を逸らした機械獣がいないか視線を巡らす。
 上手く敵の意識がシェルターから逸れているのを視認した義弘も人々を護るべく回り込んでいた。

 残るメンバーは機械獣から排除しようと動く。
(狂人の思考はよく分からぬが――)
 夢心地は、リーナが自らの手、もとい、脚で民を屠ることに愉悦を感じているのだと推察する。
(よってアニマル軍団が直接、民を攻撃する可能性は低いが……)
 夢心地がしばし考察する間、すでにシェルター側の後方に位置取っていた葵が集中力を高める。
 感覚を研ぎ澄ます葵はまず、動きの鈍いゾウへと愛用のサッカーボールを蹴りこみ、叩き込んでいく。
 それだけでなく、葵は敵を纏めて捉えてサッカーボールを掃射する。翻弄される機械獣はボールに打たれ、少しずつ体力を削られていた。
 シラスも敵陣へと魔術を発動させ、激しい電撃を浴びせかけていく。
「やっぱり機械には電撃だろう」
 シラスの電撃を浴びた機械獣の動きが僅かだが、ぎこちなくなる。抵抗力が高いと感じたゾウなどには効果的で、仲間達へと強く意識を向けていたようだ。
 仲間が上手く抑えられている状況なら、義弘はさながら複数の頭を持つ蛇の如く機械獣複数に剛腕を打ち込む。
 とはいえ、万一の事態もありうると、夢心地は獣の挙動に細心の注意を払う。
「とまれ、3体程度であれば、モノの数ではないわ」
 夢心地は間合いに入ったライオンから、妖刀で切りかかる。
 少しずつ、仲間達が敵をシェルターから離してくれたことで、妙見子がシェルター内の避難民とコンタクトをとる。
「それでは妙見子は一般人の誘導をしましょうか……」
 民衆をコントロールすることなど、妙見子……傾国の狐の前では造作もないこと。
 愛用の巨大な鉄扇を持った妙見子は体力がないことを自認している。
(こんな久々に傾国ムーブをするとは思いませんでしたけど。い、いややはりちょっと不安ですが……)
 避難の足を引っ張らぬようにと自らに聖なるかなを下ろせば準備完了。
「さ、皆さんあの戦いに巻き込まれたくないでしょう?」
「ああ、ありがとうございます」
「イレギュラーズ、来ると信じてたよ」
「できるだけ後ろに、私が守って差し上げますからね」
 我ながらよく言うと心中で呟きながらも、妙見子は初めて人々を扇動する。
 彼女は敵の攻撃から盾となり、避難誘導しながら交戦に臨むのである。


「がんばれ、ローレット!」
「貴方達が頼りよ。応援しているわ」
 避難民から声援が飛ぶと、戦うイレギュラーズも一層力が入る。
「そら、ここまで来られないのか? やっぱりノロいぞ足踏み担当」
 強く相手を煽るエーレン。彼は避難民に被害が及ばぬよう少しずつシェルターから離れる。
 エーレンは主にゾウを引き付ける形となる。地面を揺らしつつ歩く巨躯の機械獣を抑えるのは大変だが、エーレンは十字剣を一閃させつつ、少しずつ後退していく。
「オモシロイ見世物じゃなければ、見物料は踏み倒させてもらうよ!」
 丁度、避難民はシェルターから脱出し始めたところ。イグナートはライオンやトラを相手取り、引き付ける。
 とにかく、避難民の方へと行かせまいと、イグナートは敵の行く手を阻む。
(シャッターを抜けさせるわけにはいかないな)
 そんなイグナートらをアシストしようと、シラスが破壊しかけたシェルターへと幻影を纏わせる。
 リーナや機械獣はシェルター上部に当たる地上部分を内部が見える程破壊していたのだが、いつの間にかそれがほとんど壊れていないようにシラスは見せかけたのだ。
「いつの間に……!?」
 リーナはふと地面に視線を下ろし、シェルターが補修されているのに驚く。
(うまくいったか)
 破壊の為には自分達を倒す必要があると思わせたなら、シラスの思惑通りだ。
「私達の方が、皆様の心に残るものであると証明して見せましょう」
 無論、雨紅がそれを許さず、仲間達が全機械獣を撃破するまでは足止めする。
「貴方から肉塊になりたいようね!」
 リーナは脚部の『バイラリン』から蒸気を噴き出して蹴りかかってくるが、雨紅も華麗な足さばきでそれを軽やかに避けてみせる。
「『アクロバット』に避けて舞う姿、特等席でご覧あれ」
 怒りによって、リーナは相手も心乱れている。
 加えて雨紅が跳躍した相手を高く蹴り上げることで、敵も踊りが単調になる。そうなれば、雨紅も比較的攻撃を避けやすくなっていたようだ。
 とはいえ、雨紅も踊りでこそ一歩も退く気はないが、タイマンでの戦闘力はリーナに分があるのは認めざるを得ない。
 ここで機械獣が突っ込んでくれば一気に状況が覆るが、そこは同じく抑え役となる2人が視線すら逸らさせない。
 シラスはシェルター側へのフォローの後、すぐにそれら機械獣の動きを止めようと攻撃に加わる。
「ドッグランじゃねえんだ、躾の悪い獣は檻に入ってろ!」
 発動させたのは、アルトゲフェングス。
 戦闘用に縮小させた疑似式魔術『銀花結界』によって、シラスは機械獣を1体ずつ閉じ込めていく。
 夢心地は冷静にじたばたと暴れる機械獣へと、仲間と協力して個別に攻撃を集中させる。
 敵の統制は乱れていると見たと夢心地は間合い内かつ近い位置で動きを止めていたライオンから斬撃を見舞い、切り倒さんとする。
 苦しむライオンは牙を剥き、イグナート目掛けて剛腕を振り下ろす。
 それを防いだイグナートは竜撃の一手を打ち込んで体勢を崩す。
 続き、後方から葵が蹴りこむサッカーボールがライオンの右前脚を潰す。
 葵はさらに、戻ってきたサッカーボールをシュートすると、大きく弧を描いて飛んでいったボールがライオンの顔面を砕く。
 アオォォォォ……。
 葵に牙をへし折られたライオンは真っ先に崩れ落ちていく。
 順調に敵と対する仲間達を尻目に、妙見子はこちらへと飛んでくる攻撃、衝撃などから盾となる。
「まさか私がこんなに動くと思ってませんでしたけど……これも何かの縁ですね♡」
 彼女は傷つけども、避難民には戦いの余波を一切受けさせない。
「すみません……」
 謝る鉄帝民に、妙見子は笑顔を見せる。
 ――こういう戦い方も悪くない。
「妙見子ちゃんがんばりまぁす♡」
 次なる攻撃に備え、妙見子は鉄扇を構えるのである。


 踊り子と交戦する雨紅。
 装飾品の効力もあって、皆が見惚れてしまうような舞いを披露しながら立ち回る。
「舞踏で勝負とは生意気ですわ」
 表情を歪めるリーナの傍らで、イレギュラーズは機械獣の討伐を加速させる。
 シラスは幻想福音で雨紅を癒した直後、しなやかに飛びかかってくるトラを結界で覆う。
 好機と見たイグナートは再度、勝利を掴み取る一撃を叩き込み、態勢を立て直しながらも竜撃の一手で虎の胸部を強打した。
 クゥゥゥ……ン。
 どうと横倒しになるトラを確認し、メンバー達は残る機械獣ゾウを見上げる。
 こちらは依然としてエーレンが円を描くように立ち回って抑え続けるが、仲間が集まる前にと義弘が接敵する。
 全身の皮が厚そうな相手だ。
 ただ連打を浴びせるだけでは効果的なダメージは見込めないと察した義弘はゾウの側面部に掌打を打ち込み、同時に気を送り込む。
 パオオオオオオオオオ!!
 体内でその気が破裂した痛みでゾウが咆哮する。
「勝負はこれからだ」
 ゾウの意識が逸れるのを見たエーレンがさらに名乗りを上げた後、夢心地が切り込む。
「3体程度ではあれば、モノの数ではないわ」
 邪道とも呼べる剣技で、彼は相手の鼻、顔、腹といった部分を切り裂き、見事ゾウを仕留めてみせた。

 残るは『踊り子』リーナただ1人。
 ここまで雨紅と地上で、空中で交戦を続ける彼女は機械獣の全滅も視認していて。
「選りすぐりの機械獣だったのに……!」
 しかも、リーナへとそれら機械獣を掃討した手練れのイレギュラーズが集まれば、リーナも腹をくくらざるを得ない。
 雨紅が加速して敵を空中へと跳ね上げ、落下してきたところを素早いメンバーが仕掛けた直後、義弘が間隙を縫うように迫る。
「力が全て、分かりやすくていいんだろうが、気に入らねえな」
 足技で斬りかかりながらも、こちらの攻撃にも対処してくるリーナは手強い、が、イレギュラーズも負けてはいない。
「お前さんらがサーカスやるのは勝手だがよ、そのショバ代は払ってもらおうじゃねえか」
 今なお退避進む避難民。妙見子も全身ボロボロになっており、限界は近い。
 そちらへと意識を向けぬよう義弘が連打を打ち込めば、シラスも間髪入れずに距離を詰めてから雷を迸らせる。
(恐らく彼女は撤退するだろうが、手の内を晒させるよう追い込んでいく)
 まだ隠し玉を持っていると踏むシラスだが、リーナは全力で攻めており、全ての手の内を晒して交戦している。
(アクロバットな機動は既に見せてもらった)
 夢心地はリーナの蹴りの瞬間に隙が出ることを見抜いている。
 彼もまた相手が態勢を整えられぬタイミングを見て、大上段から彼女の下半身を両断する気迫で刃を振り下ろす。
「アンコールは無しじゃぞ、踊り子よ」
 足首へと亀裂が走る。リーナの脳裏にバレエ団を追放された日の頃が去来して。
「私は舞台上にあり続けることを選んだのよ!」
 戻ったところで捕まって死を待つだけ。ならばせめて一花咲かせようと彼女は華麗に舞い踊る。
 ただ、それは殺戮の舞台でしかなく、ローレットにとって許容できるものではない。
 エーレンは民間人に被害を及ぼすショーとせぬよう、彼女を中心として往復するように動いて煽りつつ十字剣で傷つけると、葵が高く飛び上がって呼びかける。
「いい足さばきっスけど、DFを抜くにゃ、ちと実力不足っスね。出直してきな」
 場こそ違えど、華々しい舞台を経験した葵はアクロバティックな跳躍から繰り出すシュートでリーナの胴を強かに強打する。
「あぁ……!」
「ここまで暴れたんだ! 逃げるなんてつれないことを言わずに最後までキッチリ決着を付けようじゃないか!」
 前回は逃走した一団だ。イグナートは今回も逃走を懸念しながらも、虎爪の構えから掌打を打ち込む。
「ああああああっ!!」
 改造人間であるが、元は普通の人間種女性。素の耐久力は他団員には劣る。これだけ立て続けに攻められれば、さすがに持たない。
 そんなリーナに雨紅が息つきながらも肉薄し、相手の動きを読み切って翻弄する。
 彼女の幕を下ろすべく、雨紅は亀裂の入った足首を細剣で貫き……破壊する。
「私は、私の……舞台は……」
 完全に気力が潰えたリーナはその場に倒れ、完全に動かなくなってしまったのだった。
 『バイラリン』による負担はリーナの身にも少なからぬ負担があったのだろう。メンバー達が近づくと、彼女は完全に事切れていた。
「踊り、舞うならば……恐怖や怒りでなく、その美しさで心に残って欲しかった」
 周囲から巻き起こる拍手は全て、イレギュラーズに対するもの。
 そんな彼女の生き様に、雨紅は本心を出さずにはいられなかったのだった。

成否

成功

MVP

雨紅(p3p008287)
ウシャスの呪い

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはリーナを抑え続けたあなたへ。避難民の誘導に動いていた貴方にも称号をお送りします。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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