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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>コングと鉄帝プリズンブレイカー<獄樂凱旋>

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●コング、動く……動くが……!
「ラド・バウの皆、イジメルナ! ユルセナイ!」
 鎧を着た巨大なゴリラが地面をパーで殴り続けている様子をご想像頂きたい。
 ばーんと殴るその一回で周囲のひとびとが一斉にちょっとだけ浮遊するくらいには衝撃が走り、波紋状に広がる衝撃が目に見えてしまう程度にはパワーがあった。
 誰もそれを止めようとは思わないし、止められるとも思っていない。
 そう、彼こそはラド・バウA級闘士コンバルグ・コング。
 パワーとインパクトだけなら最強と言われるラド・バウの花形であり、当然ファンも多く彼自身もラド・バウという世界を愛している。
 それ故に、昨今頻発し始めた『釈放囚人たちによるラド・バウ襲撃事件』に激しい怒りを覚えていたのである。
「オレ、倒す! 今倒す!」
「落ち着け旦那」
 『DD』と呼ばれるコングのマネージャーが冷静に(バウンドしながら)後ろから声をかけた。
「どうやら囚人を雇ってんのは革命派の連中らしいぜ。『アラクラン』知ってるか?」
「シラナイ!!!!」
「だよな」
 DDは被っていた赤い帽子を脱ぐとカリカリとあたまをかいた。
 コングはこの通り『優しくて力持ち』というゴリラの鏡みたいな性格をしているが、器用さや知性が欠点になっている。
 あっちこっちでおきる囚人襲撃事件の噂を聞く度に現地へ突っ走るが、ついた頃には大体事件は終わっているし、相手もそれをわかっているのかコングにあえて情報を流して無駄に走り回らせるという情報戦(?)を仕掛けてきているフシがあった。
 DDとてA級闘士のマネージャーである。これまで様々な情報戦に(コングの代わりに)挑んできた彼の嗅覚は、今回の事件の奥に居る存在の狡猾さや『攻めにくさ』を嗅ぎ取っていた。こういう相手はコングが最も苦手とするタイプであり、コングが今回の事件において封殺されている原因だと思われていた。
「今回の相手は闇雲に走り回っても解決しねえ。旦那を封殺してるヤツを見つけ出して叩かねえと」
「叩く!?」
 手をグーにしてかざすコング。
「物理的にって意味じゃねえが大体あってる。けど旦那、あんた『黒幕を見つけ出す』とか絶対無理だろ」
「…………」
 コングは翳した拳をそのままに、ウーンと唸って地面を見つめた。
 溢れる野生を武器に戦うコングはその野生的な勘から敵を見つけ出すことができるが、それ以上に『群れへの意識』が強すぎるせいで襲われている低級闘士や受入難民たちの情報に踊らされてしまうのだ。
「ここはローレットに任せようぜ。見つけたら一緒に殴りにいけばいい」
「ムウウ……」
 コングは珍しく困った表情を浮かべ、掲げた拳をゆっくりと下ろしたのだった。

 前述したように、最近ラド・バウ独立区を襲撃する勢力が問題になっていた。
 その戦力は新皇帝によって釈放された囚人達で構成されており、どうやら彼らに仕事を持ちかけた者がいるという。
「今回――独立区の中に潜入して、意図的にコングの旦那へ些細でかつ遅い情報を流すヤツがいる。
 そいつを見つけ出して叩くのが今回の仕事だ。つっても、居場所や正体を暴いたからっつって易々と叩かせてくれるほど相手も安くねえはずだ。
 逆に情報を探って正体を突き止める仕事と、一旦合流してからそいつを叩く仕事。この二つに分けようと思う。
 コングの旦那は前半の仕事じゃあんまり役に立たねえ。後半に期待してくれ。相手が見つからなきゃそもそも出番がないんだがな……頼んだぜ?」

GMコメント

 ラド・バウ独立区はその圧倒的武力を背景に日常生活を維持しています。
 が、そんなエリアを襲撃する者たちが現れました。
 釈放囚人、そして革命派を名乗る集団。彼らの問題はやはりあちこちで起きているのですが……今回フォーカスされるのはコンバルグ・コングです。
 どうやら彼に対して意図的にカス情報を流して踊らせているヤツがラド・バウ独立区内に紛れ込んでいるようです。
 ヤツを見つけ出し、コングと一緒に倒しましょう。

●調査パート
 一番重要かつ、皆さんの活躍が必要なパートです。
 コングはカス情報に踊らされており、その情報を流しているヤツが一人あるいは複数ラド・バウ独立区内に紛れ込んでいるはずです。
 推測するに、前からずっといた人や顔見知りではないでしょう(それならDDがすぐに気づけるはずです)。
 アノニマスなどの潜入系スキルを使ってこの地に紛れ込んでいる可能性が非常に高く、そういうヤツを見つけ出すにはやっぱり歩き回ったり情報を聞き回ったり、または神経を鋭くして見回ったりといった地道な調査が必要になります。
 このパートではコングが同行してくれますが、彼は調査に一切の役に立ちません。ですがコング自身がラド・バウ内でやたら人気なので、聞き込み調査をする際に隣に置いておくとスムーズになるでしょう。

●戦闘パート
 カス情報を流しているヤツを見つけ出したあとは一旦合流して襲撃をしかけます。
 もうこうなるとコングが頼もしすぎるので、思いっきり暴れられます。
 前半で役に立たなかった分アテにしていきましょう。
 コングとのツープラトン技を楽しんだり、コングをけしかけたりしてお楽しみください。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <総軍鏖殺>コングと鉄帝プリズンブレイカー<獄樂凱旋>完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年11月15日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
虹色
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
雨紅(p3p008287)
愛星
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

リプレイ


「色々なところで勝手しているみたいね、彼ら……全く、コングさんをどうこうしようだなんて後が怖くないのかしら……?
 とはいえ、搦手にはちょっと……あまり……かなり、向いてない方だから」
 バインダーにとじた資料を捲りながら、『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)はそんなふうに呟いた。
 雪に溶けいるかのような白銀のなかに、赤い片目だけが宝石のようにきらめいている。
「できる限りお手伝いしてあげましょうか。私は独立自治区の表を歩いてみて、コングさんに関わる話をしている人を探すわ。みんなはどうするの?」
「私はあえてコング様のそばに隠れ、様子をうかがっている人間を逆に探し出しましょう」
 仮面を指でおさえるようにしながら、『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)が薄く微笑んだ。
 口に塗られた紅のせいか、彼女がコングに対して好感をもっていることや、協力したいという意思の表れがわかる。
「なんというか、優しいだけでなく可愛らしさもある方なのですね、コング様」
「可愛い……?」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が首をかしげたが、人によってはそうみえるのかもしれないと姿勢を戻した。
「ともあれ、誰が対象であっても、流言飛語(デマ)のたぐいは許せない。
 人々が誰の言葉も信用できなくなり、街の雰囲気が荒んでくる原因になるからな」
「確かに……ラドバウを混乱させる意味でも、有効だ」
 『金色凛然』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が青い瞳をぱちくりと瞬きさせて言った。髪が短くなったせいか、瞳の印象がより強まった。
 雨紅とはまた別の形で、彼女の目をみていると考えていることがなんとなく分かるのだ。
「情報戦……おおよそ考えられる限り、この組織にとって最も大きな弱点を突かれたと言える、か?
 まあ、いい。今回の下手人は、怒れる獣を下手に突付くとどうなるか、身を持って味わうことになるから、な」
「その通りだ。冷戦下でうろちょろされると非常によろしくない。お膝元でうろちょろとされているのは甘く見られていることの証だしな」
 『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)は仲間達の行動をある程度メモにまとめつつ、コングの様子をうかがった。
 ラドバウ闘技場のそば。高い建物の上に立ちじっと遠くを見つめている。
 彼曰く『犯人捜し』なのだそうだが、高い所からながめて見つかるものではもちろんない。
「『ナメられたらぶっ飛ばす』役割はコングにふるとして、まずは連中をあぶり出さないとな」
「はい! 人を嘘で騙すのって、ひどいのです。
 コング様がわるいひとをえいえいってできるように、ニルもお手伝いするのです」
 『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)は小さなネズミを使役状態にすると、エクスマリアが同じく使役したそれと交換する。
 一方で、『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は資料を確かめてみるねと言って白い日傘をゆっくりと回している。だいぶマイペースな彼女なので、自分の役割を一旦共有したあとはすぐに行動にうつるつもりなのだろう。
 そういう意味では『筋肉こそ至高』三鬼 昴(p3p010722)も同じだ。
「こういう輩はアングラなところに沸くもんだ。ああしてコングが高い所で目立ってる間に、私はそっちを探させて貰う」
 壁に背をつけ腕組みしていた昴がすっと動き出し、手を翳して歩いて行く。
 十七号たちも顔をみあわせ頷き合い、それぞれの行動にうつるべく散り散りに歩き出した。


 少ない手がかりを元に『犯人』を探し出す。
 一見すると困難極まるミッションだが、エクスマリアには既に解法が見えていた。
 というのも、コングに情報を流して右往左往させるには『確実に情報が流れる』ことが重要なのである。
 勿論流す本人が直接ま隣にいるのが一番だが、それではさすがに怪しまれる。
 ラドバウ住民の中で、かつコングに近い人物にスパイを紛れ込ませ、2~3人のハブを介して噂を拡散しコングの耳へ届けることになるだろう。
 つまり、末端から逆に噂の出所を辿っていくという作業になるのだ。
「しかし、既存の噂は、既に風化している。新しいニュースで、噂を釣る」
「ウワサヲ……ツル……?」
 一緒に通りを歩いていたコングが顎に手を当てて首をかしげている。
 多分『ウワサ』っていう魚を釣り竿で釣り上げるエクスマリアを想像しているのだろう。なぜそんなことをという気持ちが顔に出ていた。
 そこでエクスマリアがとったのは、コングがエキシヴィションマッチを開催するというニュースを流すことだった。
 コングといえばラドバウA級闘士。戦い方も派手でエンタメ性が強く、難民生活でストレスが強まっている自治区民にとって格好の娯楽である。
 人も当然あつまるし、ウワサも広まりやすい。そしてコングの耳にも届きやすい。
「まあ、まずは聞き込み調査、だ。今日は、勝手に動くなよ?」
「ワカッテル。エクスマリア、オマエにマカセル」
 意外にも、というべきなんだろうか。エクスマリアが一言釘を刺しただけでコングは素直に彼女に従った。
 なぜそんなに素直に従うのかと尋ねてみると……。
「エクスマリア。オマエ、強い。オレ、越える日、近い」
 と端的に答えたのだった。

 コングを連れ回しての聞き込み調査は、実のところ囮でもある。もう既に釣りは始まっているのだ。
(周囲に怪しい人影は……おや?)
 雨紅は気配を消しながらコングを尾行していた。
 というより、「コングを尾行する存在を尾行する」という二重尾行である。
 雨紅と同じように気配を消し、アノニマスまで使って民衆に紛れ込んでいる存在があることを察知した彼女は、あえて行動には出ず相手を泳がせた。
 まだ『誰かがいる』ということまでしかわからないし、そもそも人気のあるコングが街を歩くと人が集まってきやすい。追っかけもいるのでついて歩く人間もまた多いのだ。
(まずは顔ぶれを記憶しておきましょうか……)
 この情報はいまこの瞬間には役に立たない。だが、後で必ず役に立つ。そう確信して、雨紅は仮面の下で目を細めた。

 そしてここからは、直感の世界だ。
 雨紅はなんとなくのアタリをつけて、コングについてまわっていた民衆たちのなかの一人を追加尾行することにした。
 気配を消すといっても意図的に隠れなければ見つけることはそう難しくない。「なんかあの人気配薄いなー」程度の直感でも、充分追う価値があるのだ。
 そうして追っていくと、路地の裏から裏へと対象は進んでいき、自治区の中でも元から治安の悪かったエリアへと入っていった。
「ここは……闇闘技場……」
 ラドバウの公式戦に出られなくなったような連中が集まり、レートの高い賭け試合をするなどして集まる闇の闘技場。いわゆる『闇闘士』たちが多く排出されるこの場所は、ラドバウ独立自治区のなかでもかなりグレー寄りの場所だった。
「ん」
 そこで声をかけてきたのは昴だった。
「ここのことなら、調べておいた。コングのウワサも確かに流れてた。ウワサの末端なのか、それとも流す本人なのか、はたまた途中のハブなのかは分からないがな」
 昴は闇闘技場に客として入りつつ、コングのエキシヴィションマッチのウワサを流していた。
 それに食いつく人間はやはり多いが、昴が特に目を付けたのは『既に知っていそうな人間』である。
 情報には速度があり、人によって違う。アンテナの広さや人脈の広さが当然影響するが、ついさっき決めて流し始めたばかりの情報をもう知っているということはそれだけコングに対して注意が深い証であり、彼をマークしている黒幕かその仲間である可能性が高まるのだ。
「しかし、それにしても……この闇闘技場はなぜ排除されないのでしょう?」
「金が集まるし物資も集まるからな。ラドバウが武力的背景基盤から独立しているのは知っていると思うが、その武力は闇闘技場のぶんも含まれている。連中を敵に回して基盤を揺るがすより、味方にしておいてグレーゾーン扱いしたほうがマシということだろう」
 二人は闇闘技場を一通り探り、そしてめぼしい情報を覚えてから仲間のもとへと戻った。

「闇闘技場? そうか……ふむ……」
 十七号はどこか複雑な表情をして黙り込んだ。
 レインが心配そうに顔を覗き込んでいると、ハッとそれに気付いた十七号が苦笑を返す。
「私の……いや、『インガ・アイゼンナハト』という人物を知っているか。鉄帝で闇闘技場のひとつを支配していた女だ。強さや気配からしておそらく魔種だろう。
 以前ラドバウの低級ファイターをリンチすることで派閥にダメージを与えるという活動をしていたんだが……」
「そのひとが……関係してる?」
「それはわからない。とはいえ、闇というのは狭いもの。人脈も限られるし情報も共有されやすい。全くの無関係と考えるほうが難しいかもしれないな。
 問題は、コングにデマを流す張本人であるかどうかだ。情報網を貸す程度のことはしていそうなんだが……」
 むむむと悩む十七号と見て、レインは別の話へ切り替えることにした。
「わからないなら、そのままでいいよ。それより……」
 レインが差し出してきたのはこの辺りに元から住んでいる人や移り住んできた人を記録した資料だった。といっても管理している人間が雑だったのか新皇帝即位のドサクサで乱れたのか、内容はかなりずさんなものだ。明らかに抜けてる情報もあるし、間違った情報もある。
 それがどうかしたのかと十七号が目で問いかけると、レインは資料の一ページにスッと指をあてた。
「ここ。泣いてる」
「泣いている?」
 ノートブックのページの継ぎ目。一見なにもないような場所をなぞりながらそんなことをいうレインを訝しみつつ……しかしよく観察してみる。
「これは。切り取られている?」
 よく観察しなければわからないほど丁寧に、ページがひとつだけ抜き取られているのだ。
 記録しそびれたり間違ったりすることはあっても、『意図的に抜かれる』というのはあやしい。
 管理していた人間に聞いてみても、そんなことをした覚えはないという。
「この『抜けた資料の人物』……怪しいな。でかしたぞレイン」
 十七号にしてはめずらしく『でかした』なんて言ってしまうほど、どうやらテンションはあがったようだ。

 十七号とレインは抜かれた資料の穴を埋めるべく、前後関係を調べることにした。
 というのも、管理が雑なだけあって並び方も雑で、おおよそ移り住んできた順に資料が作られている。なので抜かれた部分を埋めるには、前後にある人々から聞き込みを行うことで『抜かれた誰か』にある程度目星をつけることができるのだ。
 ここで活躍してくれたのがモカである。派閥で活動するなかで得たコネクションを使って住民を紹介し、話を聞くことで抜け落ちた情報を丁寧にひろいあつめてくれたのだ。
 そんな中でモカは別の視点にも着目していた。
 『最近、妙な噂話を聞いたことがないか。聞いたなら誰から聞いたか』とそれらの人物に尋ねて回ることである。
 ウワサのアンテナについて先述したが、『近しいが味方ではない人間』にはひとは情報を隠しがちである。たとえば近所のひとに、自分がこっそりやっている悪事を知られることを恐れる。情報が伝わらないようにするし、なんなら意図的にせき止めるだろう。
 なのでコングを誘導するためのデマを『知らない』人々にアタリをつけたのだ。
「なるほど? いいセンスだわ」
 モカたちの持ち帰った情報をもとにヴァイスが白い手帳を開く。レース模様のはいった革のカバー。どんなものとも疎通するという彼女らしく、手帳はキレイで、そして丁寧に扱われていた。
「街を一通り歩いてうわさ話を拾ってみたけど、コングさんを誘導するためのデマは確かにあちこちで流れてたわ」
 ヴァイスが『小耳に挟んだ』のは殆どが下らないウワサで、新皇帝派の軍人がファイターを処刑しようとしているとか、イレギュラーズがバルナバスの部下に捕まっただとか派手だが信憑性の薄いものばかりで、コングだけが短絡的に突っ込んでいってしまいがちなものが多かった。
 その中で着目したのは『本当にあったウワサ』である。
「相手だって、コングさんにマネージャーがついてるのは当然知ってると思うのよ。コング自身にウワサを届けるにしても、最も近しい人が嘘だと断じて彼を止めることができるもの。
 けれど、そんな嘘ばっかりのデマの中に『本当におこった事件』があったら、それを嘘と断定できないしコングさんも動き出してしまうわ。それが今回の問題だし、今回の手口でしょう?」
 マネージャーのDDが説明したのは『囚人襲撃事件に駆けつけても事件が終わっている』というものだった。
 つまり、襲撃自体は実際に起こし、それをワンテンポ遅らせてコングへ伝えるという手順をとっているわけだ。
「これには襲撃を行う実行犯である『脱獄囚人』がいて、その実行を予め知ってる『ウワサの伝達役』が別々に存在することを示してるわ」
「……むう?」
 集まった仲間達の中で唯一『つまり?』という顔をするコングに、横で聞いていたニルが指をぴんと立ててみせる。
「コング様をとりまいてるファンのなかに、ウワサを誰よりも早く、むしろ『起きる前から』知ってる人がいるのです」
 当然その人物は襲撃が実行される日時を把握しているし、確実に実行された合図も知っているはずだ。
 では逆に、『襲撃が予定通り実行されなかったら』。あるいは『既に実行が知られているとわかったら』。
 スパイとして潜り込んでいる本人は不安にかられるだろう。自分が切り捨てられたと疑うかもしれないし、うっかり流した噂がおかしかったらその出所である自分が疑われる。
「ということで……エキシヴィションマッチの会場で、『新しい襲撃事件』を演出するのです」

●釣られた魚
 手順はこうだ。
 コングがエキシヴィションマッチを開くということで会場に大勢の人がやってくる。
 試合の時間がきて、コングが現れる……かに思われたところで、全く別の人物が登場する。
 そしてアナウンスによって、コングが脱獄囚人による襲撃事件を察知して現場に向かったという報告を行う。ほどなくして襲撃者は倒され、コングがここにその襲撃者を連れてくると報じた。
 観客達はコングの手柄を称賛し、予定から若干遅れつつも試合が行われることに安堵する。
 そして……。
「お、おい! どういうことだ! こんな展開聞いてないぞ!」
 ある男が試合会場のバックヤードへ駆け込み、ある人物に詰め寄っていた。
「オレは手を引くからな! あんなバケモンの暴力に巻き込まれるのは御免だ!」
 そう怒鳴りつけられたのは、ひとりの大柄な男性。地下で活動している闇闘士だ。
「ほう?」
「その話」
「詳しく」
「聞かせてもらいます!」
 近くに潜んでいた雨紅たちが一斉に登場。男を取り押さえたかと思うと、暴れる彼を掴んで闘技場のバトルフィールド内に放りこんだのだった。

「オマエ! オレ、ダマシタ! ユルサナイ!」
 怒りのドラミングをするコングが、そこにいた。
 逃げ出そうとする男を塞ぐように、エクスマリアやヴァイス、モカや十七号、当然ニル、レイン、雨紅たちが集結して取り囲む。
「私の理想たるコングと共に戦える機会をただ眺めているのはもったいない。
 私も参戦させて貰うぞ」
 昴はこきりと首をならし、男に飛びかかった。
「イイゾ、来イ!」
 吠えるコング。昴とコングによるクロスボンバーが男に叩き込まれ、直後仲間達によるそれはもう容赦のない集中攻撃が浴びせられた。

「もう、駄目じゃないの。ちゃんと生かしておかなきゃ」
「ワカッテル、コロサナイ」
 そう言いながら男の両足を掴んで地面にびったんびったん叩きつけ続けるコングを見て、ヴァイスはやれやれと首を振った。
「ラド・バウA級闘志の実力。頼りになる」
 エクスマリアはそんなことを呟き、ニルと顔を見合わせた。
 ニルはこっそりもらったサイン色紙ならぬサイン鉄板を翳す。『なんでも食べろ』と鉄板に刻まれている。
「これにて一件落着、ですね!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この後、襲撃を行っていた脱獄囚人も発見、確保しました。
 ちゃんとコングがびったんびったんして情報を(物理的にも)吐き出させたようです。

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