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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>小芝居しないと進めないダンジョン~スポーツ編~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●小芝居しないと進めないダンジョン
 そこは幻想で最近発見されたダンジョンの系譜。
 世界各地にあるソレは今回もまた、鉄帝で発見されていた。
 奥には素晴らしい宝があるとされながらも、誰もクリアできないでいた。
 その理由は、そのダンジョンのギミックにあった。
 ……が、今回に限っては別の理由でクリアされていなかった。
「……空に浮かぶ浮遊島、かあ」
「なんかイレギュラーズの連中は空飛ぶトカゲみたいなのに乗っていくらしいっすよ」
 今まで「小芝居しないと進めないダンジョン」に挑戦してきた2人組。
 しかしどんな根性でも空にはいけない。
「おい、ジョン。お前空飛ぶ何かの伝手あったりしねえか?」
「無いっす。つーかそんな伝手あったらもっとマシなことに使いますよ」
「だよなあ……そういうのありそうな学者先生連れてきた方がよかったか?」
「毎度言いますけど、あんなアホなダンジョンに来てくれねえでしょう」
「だよな」
 なら何故ここまで来たという話なのだが、さておいて。
 2人の男達は顔を見合わせると、溜息をついて身を翻す
「……帰るか」
「ええ。もっとマトモなダンジョン探しましょう」
「つーか、このパターン何度目だ?」
「なんでそんなのばっかり見つけるんです?」
「俺が聞きてえよ」

●スポーツ編らしいですよ
「やったことあるんです?」
「こう見えて身体を動かす系は得意なんですよ」
「はあ、そうですか」
「おや、心底どうでも良さそうな顔」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)とそんな会話をすると、『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201)は集まった面々へと振り向く。
「えー……そんなわけでダンジョンです。あとアーカーシュです」
 チーサはそう言うとダンジョンの資料を取り出した。
 正式名称は不明。
 愛称は「小芝居しないと進めないダンジョン~スポーツ編~」だ。
 なんなんだろうか、このダンジョンは。
 なんでアーカーシュにまでコレがあるんだろうか。
 しかもスポーツである。古代のスポーツってなんだろうか?
 あまりにも謎だ。謎過ぎる。
 ちなみにこのダンジョンの情報を掴んできたのは寛治だ。そう、また寛治である。
「ルールは簡単で、部屋に入った後に「スポーツ」をテーマにした小芝居をする。2人1組でも3人1組でもいいらしいです」
 必要なのは芝居にかける「熱」……つまり演技だ。
 それを部屋の古代機械が判定し、クリアすれば次に進めるという仕組みだ。
「必要な芝居数は不明ですが……ま、前回までを考えるに芝居の熱量次第だと思うです」
 芝居自体も難しいものではなく、本当に小芝居で良いらしい。
 スポーツをテーマにしてさえいればシリアスでも恋愛でもヒャッハーでもなんでもいい。
 というか本当に古代文明は何なのだろうか、こんなダンジョンが幾つも存在する辺りヤバげではある。
 そして、奥に進めば進むほど熱量の高い演技が必要になってくるだろう。
 恥ずかしがらずにそういう事を出来る度胸が大切ということだ。
 失敗したらダンジョンの外に射出されるが、再挑戦は可能だ。
 また熱量が足り無さそうだな……と思うなら演技の追加なども可能だ。
 これぞスポーツと一撃で分かるような、そういうのである。
 ……なんだろう、幾らでもありそうな気もする。
 無論、それは最後の手段ではあるだろうが……そういう手もあるということだ。
「今回の『宝』ですが……当時の最新の家事用ゴーレムらしいです。今じゃ遺物ですけどね」
 とはいえ、手に入れれば役に立つこともあるかもしれない。
 充分にやってみる価値はあるだろう……!

GMコメント

今回はファンドマネージャからのアフターアクションです。ありがとうございます。
ついにアーカーシュにも小芝居ダンジョンです。
クリアすると「家庭用ゴーレムH‐12」が手に入ります。
どんな家事でも的確にこなす凄い奴です。アーカーシュの生活も微妙にランクアップ?

さて、小芝居しないと進めないダンジョン~スポーツ編~です。
チームを組んでスポーツ系の小芝居を実施しましょう。
皆さんなりの演技をぶつけてきてください。
当然ですが、どんなスポーツでもいいです。ノリだから。
俺のスポーツはこれなんだ!っていう勢いが必要です。相撲? いいよ、来いやあ!(雲龍型)
プレイング全部を内容と相手で埋めてOKです。
互いにNGシーンを打ち合わせてプレイングを決めると良いと思います。
なお、相手が見つからない悲しい子はチーサを拉致できます。ちゃんと適宜合わせてくれます。

ちなみにですが、無理矢理突破しようとした場合には古代ゴーレムが現れます。
無茶苦茶強いので、無理矢理突破はしない方が無難でしょう。
一応こんな感じです。

・無粋な奴をぶっ飛ばす古代ゴーレム
全長10Mの謎金属製の古代ゴーレム。
ゴーレムパンチと範囲攻撃のゴーレムビームを使います。
もうとんでもない強さです。

それでは、皆様の熱い演技をお待ちしております!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <総軍鏖殺>小芝居しないと進めないダンジョン~スポーツ編~完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年11月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
メイ・ノファーマ(p3p009486)
大艦巨砲なピーターパン
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!
月瑠(p3p010361)
未来を背負う者
シャールカーニ・レーカ(p3p010392)
緋夜の魔竜

リプレイ

●総軍併殺(汰磨羈命名)
「まさかアーカーシュにまで小芝居ダンジョンがあるとは……あまりに予想外ですね」
 『男の子』新田 寛治(p3p005073)の、そんな今更な言葉が響く。あるものはあるんだから仕方ない。
 ほんと、なんであるんだろうか。不思議である。
「今回はスポーツドラマということで、題材は野球! こちらはチーサさん入れて9人、対戦相手はきっとゴーレムがやってくれるでしょう。……野球の各ポジションを臨機応変にこなせるゴーレム、ものすごく優秀なのでは?」
 サラリと組み込む寛治に『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201)が嫌な顔をするが、これはもう仕方がない。
「アーカーシュってやっぱり面白いところだね~。飽きないよ」
 『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)も「うんうん」と頷いているが、騙されてはいけない。
 これはアーカーシュというか鉄帝全体でも色モノ指定である。
「やきゅうはモカてんちょーと店の仲間でやったことあるよ。それに、ふる……にったさんがいろいろ考えてくれるから大丈夫だね」
「テーマ野球に合わせて装備にも気を付けたニャ! 周囲から目立つ為……そして頑張った汗と泥んこが目立つ様にと敢えての白ニャ! そう、これぞトロの着ぐるみニャ!」
 トロの着ぐるみの効果で語尾が「ニャ」になっているのは『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)。色んな意味で目立っている。まるでチームマスコットのようだ。
「練習に使ってボロボロのゴールデンケツバットニャ! 必勝のお守り……力こそパワーニャ! 負傷時そして怪我からの復帰に使用する包帯ニャ! あの日の思い出……タコ串パンとコンポタ缶ニャ! これらを駆使して戦うニャ!」
 もはやマスコットと呼ぶほかないが……さておいて。
「うおー! やきうの時間だー! なんで!? なんて自分で突っ込んでる場合じゃないね。また小芝居だ! 前はちょっといい思い出ないけど今回は楽しそう!」
「小芝居しないと進めないダンジョンとはいったい……妙なダンジョンもこの世にはあったものだな」
 『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)に『緋夜の魔竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)も頷くが……ほんとに「なんで?」だろう。なんでだろう。
「小芝居ダンジョンスポーツ編で野球か……<総軍鏖殺>というよりは、<総軍併殺>とかにならんかコレ? ヘイヘイ、ダブルプレー取ってくぞ! しまってこーッ!!」
「こ、これが噂の小芝居ダンジョン……アーカーシュに他にないよね? 大丈夫だよね?? とにかく、アタシ達がやるのは野球だ。野球が好きで、でも病気で自分ではプレーできない妹に喜んでほしくてやってるって設定……妹いないけど」
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はやる気満々だが、『天空の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)もなんだかいきなりカッとばしている。ホームランだ。まだ小芝居は始まっていないのに。
「野球の時間だ!! しまって行こうぜ!!! オレは昔野球をしていたけれど右肘を壊して野球を続けられなくなってグレたヤンキーという設定で行くよ! 部室に酒を持ち込んで飲んだりしてるよ! 決して酒が飲みたいだけじゃないよ!!」
 おっと、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)も中々にとばしている。
 そんなイグナートたちの視線の先では、芝居内容を察したアーカーシュゴーレムたちがザッザッザッと出てくる。
 そう、汗と涙と眼鏡の飛び交う試合……プレイボールである。小芝居だけど。

●イレギュラーズVSゴーレムズ
 スポットライトがユウェルに当たる。
 暗い舞台の上で輝くユウェルの顔は、まさに希望に満ち溢れている。
「わたしのポジションはピッチャー! 才能の原石的なあれ。磨けばひかります! やきう大好きピッチャー! あんまり変化球は得意じゃないけどストレートで押していくタイプ。おーばーすろーの本格派エース! ピッチャーわたししかいないけど」
 此処に至るまで色々あった。そう、芝居の尺の都合で語らないが本当に色々あった。
 今日のゴーレムズの試合はそれをどうにかする一手であり、たった1人の新人であるユウェルにイレギュラーズの未来は託されたのだ!
「新人だけどやる気は人一倍! おつむはよろしくないけどキャッチャーの新田せんぱいに任せておけばいいよね?」
 此処で背中を向けている寛治のドヤッた眼鏡キラリがスポットライトを受けてすぐに消える。頼りになる先輩である。
「うおー! ピッチャーと言えば先発完投! 今日は一人で投げ切るぞー!」
 とはいえ、それは非常に難しい話でもある。何しろ控えもいないのだ。
「ん~最後まで力いっぱい投げれば勝てると思うけど……新田さんの指示に従った方が楽ちんだし楽しいからまるっと従うます。なんでたまにスローボール投げると空振りするんだろ? ちぇんじあっぷ? フォークは知ってる! すとーんって落ちる奴! あれは得意! へっへー、今日は三振の山を築くのだ」
 眩い笑顔だ、しかし光があれば影もまたある。
 右肘を壊して野球を続けられなくなってグレたヤンキーであるイグナートには辛いだろう。
「けっ、泥と汗にまみれて必死になって、球遊びがそんなに楽しいのかねぇ!」
 イレギュラーズとゴーレムズの試合。
 弱小の野球チームであるイレギュラーズだが、イグナートは人数合わせに仕方なくの参加であり……やる気はなかった。
 試合会場はイレギュラーズのホームであるローレットスタジオ。よし、学生野球なのか社会人野球なのかプロ野球なのか、その辺の設定は考えるんじゃない。小芝居なんだから、大道具凄いけど。
 凄い人数を収容可能な大規模会場だが、ホームでの試合にも関わらずゴーレムズの応援は士気が高い。
 まるでアウェイにいるような凄まじいゴーレムズの応援……けれど、負けてはいられない。
「ふふ、テクニカルなポジションなら任せておけ。この、ねことしての俊敏さを存分に見せつけてやろう!」
 だが3番ショートの汰磨羈は余裕のある口ぶりでこそあったが、ゴーレムズは強く……かなりつらい状況だ。
 ショートとしての役目を存分に発揮し、広い守備範囲内を駆けずり回って守りまくろうというその意思はしかし、当然のようにスタミナの消耗が激しい。
「大丈夫だ、問題ない。この程度は疲れている内に入らないさ」
  そして、ジェックのポジションはセンター。
「ユウェル、寛治のバッテリーが抑え続けてる間は仕事がないけど……打たれてもいいよ、そのためにアタシがいるんだから」
 その決意は固く、激しくジェックも動き回る。
「ライトとレフトは多分チーサとゴーレムがやってくれる。けど、外野を全部守りきるつもりで守備範囲広めにいこう!」
 そう、キャッチャーは寛治だ。捕手のポジションで下位打線と、典型的な役回り。
 本人曰く「野球でメガネキャラはキャッチャーと昔から相場が決まっているのです。具体的にはID野球とか言われてた頃から」であるらしい。
「本来の私は一球一球配球を考えてサインを出す頭脳派ですが、ユウェルさんは勢いで押したほうがいい場合もあるので、気持ちよく投げてもらえるようにリードしましょう」
 具体的にはインハイ一球で内角を意識させて、そこからアウトコース低めを攻める方向性だ。
 なおユウェルは魔球を投げるらしいので、捕球の度に捕手にダメージが蓄積する設定にしているらしい。
 具体的には序盤は平気だが、中盤以降は左手にヒビが入ったりする予定だ。小芝居だからね。
 そしてセカンドを守る5番はメイ。チームのポジティブシンキング枠でムードメーカー。
「やれば~、できる!」
 強力なゴーレムズ相手でも、そんなメイのポジティブさは仲間に活力を与えてくれるのだ。
「セカンドとショートって内野でいちばんいそがしいんだっけ? 6-4-3とか4-6-3とか33-4とか。ま、ボクの華麗な守備でかんぷー勝ちですよ。ガハハ」
 だが、やはりゴーレムズは強い。ユウェルの球にすぐに対応して当ててくるその動きは、やはり強豪ということなのだろうか?
「くっ……!」
 ライトのレーカもボールを必死で追うが、相手の打撃が想像以上に伸びる。
 まだホームランは出ていないが……牽制もしてくるゴーレムズの選手は強い。
 レフトのチーサにもすでに疲れが見えていた。
 そう、このチームには今1人、足りていない。此処に居るべきニャンタルが、いないのだ。
 一体彼女に何があったのか……? スポットライトが、その過去を映し出す。
 ブォン! ……ブォン! 響くのは全力でバットを振るニャンタルのスイング音。
「……ふぅ、朝練はこれ位じゃな。今日の試合もいっちょやってやるかのぉ! ムハハ!」
 しかしその後「その試合」がニャンタルに故障をもたらしたのだ……!
「ぐぅううう?! 今の手応え……そしてこの痛みは……!?」
 右腕に故障を抱えてしまったニャンタルは、一時離脱するしかなかったのだ。
「……よっ! 暫くこのチームは皆に預けるぞい……それ迄に腑抜けた事しとったら許さんからな……!」
 そう言って一時離脱したニャンタルのことを思いながら、ユウェルはボールを握る手に力を籠める。
「打たれちゃったらしょうがないよね。相手が上手かった! 勝っても負けてもやきうは楽しい物。みんなも楽しんでこー! でもやっぱり勝ちたいよね。みんながんばろー!」
 ピンチでも笑顔を忘れはしない。試合はすでに9回表、3対5でゴーレムズが2点のリード。
 本来のメンバーが欠けている今の状況で、どうすればいいのか?
 もはや何も手はないのか。いや、ある。イグナートが……ユウェルや寛治の姿、そして仲間たちを見て熱い心を取り戻し始めていたイグナートが、ついに奮起する。
「オレは何をやってるんだ! アイツらが全力でやってるってのに不貞腐れて……なんてダセェんだよ!」
 ファールボールを全力で追いかけてフェンスに激突しながらキャッチをするその姿は、まさに本気の野球人。
 その姿に喚起されたか、仲間たちの動きも鋭さを増していく。
「どうした、私はまだ立っているぞ。御主等の攻めはその程度か……!」
 汗だくになりつつ、獰猛な笑みを浮かべる汰磨羈などは、その最たるものだろう。
「此処を守ると決めた時から、この程度の死線は織り込み済みだ――!」
 ジェックも汚れも擦り傷もなんのその、泥臭く走って走って、時にスライディングをしながらボールを補りにいく。
 ボールが手にあれば後はこっちのモノとばかりに全身を使って走者の至らんとするベースへ球を送る姿は、アツい。
「病室から妹が見てるんだ、恥ずかしいプレーはできない。早く鋭く正確に遠くまで、弾を飛ばすのは得意だよ! あ、間違えた、球ね、球」
 仲間たちが更に熱くなる中、寛治は自らの傷の痛みを我慢していた。
 7回表、ホームに突っ込んでくるゴーレムとクロスプレーになり、タッチアウトにしますが吹っ飛ばされたその時。
 肋骨を折ったり、左脚を痛めたりと負傷したが、仲間にはそれを隠してプレー続行していたのだ。
 しかし、気付く者……たとえばイグナートなどは勘づいている。
 それでも仲間たちの好プレーに支えられ、ついに9回裏……だが、ここで転機が訪れる。
 スポットライトが照らすのは、再びニャンタル。
「お主は……右腕に何を……って、コレは……お、お守り……??」
 その人物(演者:ゴーレム)に渡されたものを見て、ニャンタルは辛そうな顔を浮かべる。
「おま……っ、こんな事しおって! 我の腕は……もう……っ!」
 そこで1度、背景が差し替えられて。
「なっ! またお主か……今度は何を……って、タコ串パンとコンポタ? 我に……元気を出して欲しい……と? ……ふっ、馬鹿よの、お主は……! 我に元気を出して欲しかったら、コロッケパンとおしるこじゃろうが! ……まぁ、元気は出たぞ。感謝じゃ!」
 そして量産型ハイペリオン様に乗ったニャンタルが、ついにローレットスタジアムに降り立つ。
「ふっ……我はこのチームの主砲……ニャンタルよ……今が復活の時!!」
 そう、9回裏で打席は寛治。このタイミングで現れたニャンタルに寛治はフッと笑う。
 もはや満身創痍でバッドを振ることすらできない。もはや無意識にバットを構えて打席に立つのみ。
 薄れゆく意識の中で勝利だけを求めて、内角ギリギリに立ってホームベースに覆いかぶさるように構え、狙いはデッドボールでの出塁だ。
 そして……狙い通りに相手のインコース直球をほぼ避けずに食らってデッドボールで出塁を決め、後続の打線に希望を繋いだのだ。
「後は、頼みます……」
 意識を手放したその姿は、まさに勇者。アワアワオタオタするメイが寛治を運んでいくが、それでも走者は出た。
「トレーニングをサボってたオレが活躍出来るほど野球は甘くねぇんだよ! クソッ! 後は任せたからな!」
 だが続くイグナートはバントから出塁するも無念のアウト、打順はジェックだ。
「いよいよ回ってきたアタシの打順。九回裏満塁ツーアウトの大チャンス。ここで勝負が決まる──」
 そんな時に入るのは、妹の危篤の連絡だ。
 野球は妹の為にやってるだけで、妹以上に大事なことなんてない。
 だから本当ならすぐにでも代打をお願いして妹の元に駆け付けるべきだとジェックは分かっている。
(……でも、それで良いの? そんなんで本当に、妹に自慢の姉でいられる?)
 妹(演者:ゴーレム)の姿をジェックは思い浮かべる。
「何より、アタシは野球が……好きになっちゃったんだ。ここで逃げるような腰抜けには、なれない……!」
 だからこそ、ジェックはバットを構え直す。
「さぁ、打つよ!」
 そして……巡ってきたのは汰磨羈の打席。
(三番としての役割とは、確実に4番に繋いで点を取らせる事。故に、私が的確に行うべきは――)
「敵の弱点を的確に突き、走者の歩を進ませる事だ」
 既に走者がいるなら、その走者を進ませる為に打ち。走者がいないなら、自身が塁へ出る事に集中する。
 その為に敵の守備を俯瞰的に把握し、守りの意識が薄い箇所へ打球を叩き込む。
「ちなみに、私の得意技は流し打ちだ」
 言いながら、汰磨羈はバットを構える。
「こう見えて職人気質でね。私が持ちうる全ての技術を、存分に叩き込ませて貰おう」
 寛治の死球による出塁には密かに涙し、必ず点を取ると決意を固めていた。
 そして、最後の望みとして、何が何でも4番のニャンタルへつなぐ為に死力を尽くした一打はヒット。
 だがそれでも、大きい。大きいのだ。
「希望は繋いだぞ、ニャンタル。私達は、御主を信じる……!」
 結果は……天高く放たれたホームラン。一気に逆転したイレギュラーズの勝利を、スタジアムの歓声が迎えていた……。
「いや、今回は流石に疲れたな……今すぐに、スポーツドリンクをガブ飲みしたい気分だぞ」
「芝居だけど。絶対妹のもとに駆けつけた方が良いって」
 無事に家庭用ゴーレムを手に入れた後、汰磨羈はごろんと大の字に転がる。
 ジェックも全部抜けきったような顔で倒れているし、みんな似たような感じだ。
 まあ、当然だ。熱が入り過ぎてちょっとマジで野球してたのだ。疲れるに決まっている。
「その家庭用ゴーレムに、その手のフォローをする機能が付いていたりしないか?」
「どうだろう。どうかなー?」
「その辺どうですかね」
 メイと寛治の問いに、家庭用ゴーレムH‐12は適切なフォロー方法を導き出す。
「クールダウンを推奨します。軽く舞台を一周するのが適切です」
「まだ走れと⁉」
 そんな声が響いて、笑い声に変わっていく。あと、冗談じゃなく軽くクールダウンで走らされたらしい。
 何はともあれ任務完了、である。筋肉痛が個々人を襲うかは……この2,3日中の結果をお楽しみだ。

成否

成功

MVP

新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

状態異常

なし

あとがき

野球をするにせよ、てっきりミュージカルじみたものがくるかと思ったらガチ野球が来た件について。
皆さまの熱いパッション、受け取りました!
ありがとうございました!
このシリーズやるとMVP誰に出すか本気で悩むので好きです。

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