PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<総軍鏖殺>Old Weapon

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝には古代兵器が多く眠る。
 古代兵器とはなんなのだろうか。かつて存在した古代文明の遺産……ともされているが、ハッキリとした事は分かっていない。しかし確実なのは鉄帝の大地では時折そういった現存の技術とは異なる――或いは超えている――兵器が見つかる事があるのだ。

 しかし。古代兵器、もしくはその技術は簡単に接収できるモノとは限らない。

「よ、よせ! その蔵に触るんじゃあない……! そこには食糧なんぞ――ぐぁ!」
「うるせぇ爺だな……黙ってろ。今お前らを守ってくれる奴なんざいねぇんだよ」
 ――鉄帝南部の山中に存在する村が、賊の襲撃を受けていた。
 新皇帝の勅令以降、こういった光景は鉄帝国各地で巻き起こっている……大きな街などであれば勅令に反発する者達が自警団を組んだりと自衛する者もいる、が。辺境の村などではそうはいかない――そもそも戦える様な者がいない事も多いのだ。無法を成す者達が襲い掛かって来れば成す術もない……
 そして村から食料などの物資を略奪すべく、一人の男が頑丈そうな扉へと手を掛けた。
 蔵だ。その扉には、やけに大仰に鎖が撒かれており、随分大事そうなモノが眠っている事を想像させる。さて中に眠っているのは食料か、金品か、隠れ潜んだ女子供か……
 舌なめずりしながら鎖を破壊し、扉を開けてみせれ――ば。
「んっ……なんだこりゃあ? ボロっちぃ機械だけかよ!
 クソ! こんなの売ったって二束三文にもなるかどうか……
 ……ってなんだ? オイ、こいつら動き出ッ……!!」
 其処に鎮座していたのは古臭い機械群。
 蜘蛛の巣も張っている――相当長い年月放置されていたのだろう。
 使えるかも分からぬ代物に、男は露骨に舌打ちした……その時。
 その機械群が一斉に動き出した。
 人の気配を感じたのが始まりか。それとも日の光を浴びたのが始まりか。
 分からぬが、確かなのは一つだけ――彼らは目前の存在全てを敵視している。
 善も悪も関係ない。自らと違う存在を全て滅さんと……

 ――直後に始まる銃撃音が、村の全てを塗りつぶし始めた。


「古代兵器が目覚めた一件については聞いたか?
 どうも危険物として封印されていた個体共が、パヴィラ村にあったそうでな……
 目覚めた古代兵器達は村を壊滅させ、そのまま山を下りんとしているらしい」
 語るはゲルツ・ゲブラーだ。パヴィラ村には、元々鉱山が近くにあったそうなのだが……その発掘作業中に、かつて古代兵器が見つかった事があったらしい。しかし人を見るや否や襲い掛かってきた上に数が多かった故に、厳重に封じて外に出てこないようにしていた。
 ――が。混乱の中で目覚めた古代兵器達が再び暴走を始めた。
 村に襲い掛かって来た賊を全滅させ……しかし血が足りぬのか、次なる獲物を求めているという。
「パヴィラ村の生存者が駆け込んで来てな。それで事態が判明した。
 情報によるとかなりの数の古代兵器が目覚めているらしい……
 が、幸いと言うべきか連中の進行ルート上には、南部戦線が保有している小規模な砦があってな――此処ならば敵を迎え撃ちやすい。現地の兵力と合流して、お前達にはこの兵器群を全て沈黙させてほしい」
「砦を使っての防衛戦、って事か」
 暴走する連中を放置していれば次はどこが被害を受ける事か……
 故にこそザーバ派としては古代兵器の迎撃の為に動き出す。
 ゲルツが述べた様に、防衛しやすそうな地もあるのだ。その砦には城壁や塹壕、堡塁が幾つか既に整備されている様で、ここで敵を迎え撃てば有利な状況で戦えるだろうと見込まれている。
 勿論敵の数は多い。余裕と楽観視は出来ないが、戦い方は在る筈だ。
 既に現地では駆けつける事の出来たザーバ派の軍人が防備を整えているらしい。
 ――彼らと合流し、古代兵器を破壊してほしいのだ。
「全く、各地で新皇帝派が暴れている際になんて事態だ……
 ――しかしこうなってしまったからには古代兵器も利用させてもらおう。
 連中を破壊したら、その部品や素材に関しては回収してほしい。
 南部戦線の技術力向上に役立ってもらうとしよう」
「――使えるのか?」
「暴走している個体だ、そのままでは使えないだろうが、な。しかし技術部が解析した結果で、なんらか利用できるモノに転用できるかもしれん。古代兵器は一部、鉄帝軍でも使っている事はあるのだ、きっと不可能ではないだろう」
 古代兵器そのものに善も悪も存在しない。
 使えるのならば使う。害を成すのならば破壊する。
 いずれにしてもまずは暴走している個体達を止めてほしいと――ゲルツは皆を送り出すものであった。

GMコメント

 彼らには勢力の技術力の礎となってもらいましょう――以下詳細です!

●依頼達成条件
 暴走している古代兵器の鎮圧、および素材回収。

●フィールド
 敵勢力は他の村や街を襲わんと山を下りてくる動きを見せている様です――幸いにして、彼らのルート上にザーバ派の小規模な砦が存在していました。此処には小さいですが城壁や塹壕、堡塁の類が複数存在しています。この地が戦場となります。
 この陣地内で戦うと敵の攻撃を凌ぎやすく戦える事でしょう。
 一方で動きはある程度制限されるので、陣地外に出て戦うのも手かもしれません。

 また、皆さんは古代兵器襲来の少し前に陣地でザーバ派軍人と合流出来ます。
 堡塁などの補強を行ってもいいですし、戦う為の配置を整えてもいいでしょう。
 陣地工作や罠設置、その他類するスキルがあると便利かもしれません。

●敵戦力
・古代兵器テグスタ×10体
 脚部が四脚、上半身が人型の――所謂ロボットの様な個体です。
 暴走状態にあり、視界内に入る生命体を執拗に追撃してきます。
 後述するドローンよりも全体的に性能が上であり、頑強です。攻撃手段としては左腕に取りつけられている機関銃による制圧射撃が特徴的でしょう。【足止系列】や【出血系列】のBSを付与する事があります。

 また、右腕側には強力な範囲攻撃を齎すグレネードが装備されています。
 壁などを破壊する事に優れており、一体につき一回だけ使用できる弾薬の様です。

・古代兵器テグスタ・ドローン×30体
 空を浮遊するドローンの様な機械です。
 身体の下部にライフルの様な銃身が取り付けられており、遠距離単体攻撃を放ってきます。移動力に優れていますが、一方でその他のステータスに関しては脆弱の様です。特に耐久力は高くありません。

●味方戦力
・ザーバ派軍人×20名
 南部戦線に所属する鉄帝国軍人達です。
 全員銃剣を持っており、遠距離攻撃も前衛もこなせます。
 ただし適正としては銃を扱う事に優れた後衛型が10名。
 剣を取り付け突撃する事に優れた前衛型が10名、という構成の様です。

 皆さんと共に戦います。基本は陣地内に籠りながら敵勢力を迎撃しますが、彼らはイレギュラーズに好意的ですので、なんらか指示があればその通りに動いてくれる事でしょう。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <総軍鏖殺>Old Weapon完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ


 古代兵器――実際に見た事がある者もいるだろう。
 例えばギア・バシリカ。あれも古代兵器の一種だ。
 まぁアレ程大きくはない、が。暴走している古代兵器とは実に面倒くさい。
「まったくー! 厳重に封じてたのに暴走を始めるなんて……あれ? でも上手い事解析できればこれって敵地に送り付ける特攻兵器――トロイの木馬? 作戦に援用できそうな? ふふ、夢が広がるね!!」
 ただ『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)の様な発想も時としてはあるだろうか――どんなモノでも使いよう次第なのだと『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)と共に思考するものである――
 が、ひとまずどう使うにせよ、まずは暴走している個体は止めねばならない。
 故にヒィロは敵襲来の前に陣地を強化せんと駆けるものだ。
「ヒヒ。鉄帝の古代兵器は興味深いものが多いが、これだけ一気に再稼働を始めるとはねぇ……しかも揃って人間に襲い掛かるときた! やぁやぁお役目は重大だ。ここで止めれなきゃ次は別の場所が――ってね!」
「開けてはいけない箱を開けてしまった、と。まずはとにかく暴走を鎮圧しないとな。
 接触までもう少しばかり時間があるのは幸いと言えるだろうか……」
 同様の動きを見せているのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)に『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)だ。彼らは既に陣地に到着していた軍人らと合流し、共に陣地の更なる強化を行わんとする。
 敵が来る方向にイズマは有刺鉄線を持ち込み、敵の進軍を阻める策を基準に動いていく。後は――簡易な壁が何枚も重なっているイメージで防御を増やそうか。うまく行けば敵のグレネードを無為に消費させる事が叶うかもしれない。
 そして武器商人はグレネード対策に壁そのものの強化を目指そうか。
 やはり脅威になるのは壁を破壊しやすくなるグレネードなのだからと――
「やれやれ。大人しく眠り続けてくれれば只のお宝として発掘されただろうに。いやその場合は新皇帝派の賊が持って行ってたかな? まぁなんでもいいか」
「暴走してるなら止めなきゃね。ふぅ、全く今の鉄帝はやる事が多いなぁ」
 さすれば『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)は、空から俯瞰する様な観察眼と共に、陣地概要を把握せんとするものである。どこを優先的に強化した方がいいか構築作業に協力せんとし、更に『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)はラムダらと連携しながら、己も陣地の強化に専念する。
 特に警戒すべきは飛行型ドローンかと思案しながら、だ。柵を利用し、直線的に飛行させぬ事は出来ぬかと手段を巡らせる――あぁ、後は屋根の補強もしておこうか。上空からの攻撃が来た時に少しでも防ぎやすいように。
「敵の数に対し、こちらの数は少ないが……充分だ。
 目覚めたばかりの古代兵器如きに遅れは取るまいよ」
 然らば『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は現地の兵を指揮下に組み込もう――そして指示を迅速に繰り出していくものだ。
「良いか諸君。我らの後方には民がいると心得よ。
 我らこそが防波堤。我らこそが彼らの生死を左右するのだと。
 ――今この一時を惜しめ。一分一秒に全力を注ぎ、撃退の準備を整えよ!」
「はっ!!」
 専門の技能を持つイレギュラーズに各地を任せ、軍人らは単純作業などを行わせて効率化を図る。ラムダなどと情報を共有し、どこに人員を派遣すべきか即時判断。少しでも、少しでも強化を施さん――
「強いのが一斉に襲い掛かってきたら大変だからね。進入路を限定する様に再構築しよう! それから敵が大量に進んできそうなこのポイントに足止め目的の罠を設置しようか。大丈夫、もう少し時間はある筈!」
「力仕事が必要そうなら任せてよ――大抵のモノはバラせるし、筋力には自信があるからね!」
 特にヒィロやイグナートはあちらこちらに。ヒィロは敵が侵入してきても対処できるように遅延目的の罠……落とし穴や行止り、吊上げ、後方遮断などなどを分散配置せんと計画。それらの動きを支援する様にイグナートは力仕事を積極的に請け負うものだ。
 彼に宿りし祝福があれば、解体は容易。物を運ぶのも自前の筋力で当然、だ。
 皆で協力し、更に強力な拠点としてみせよう。
 ――そして時計の針が進め、ば。
「……来たな。では作戦通りにいこう。皆、戦闘の準備だ」
「開かずの扉には魔が宿る……と言った所でしょうか」
 イズマが気付く。続けざま『随分と数が多いようですが』と紡いだのは『高速機動の戦乙女』ウルリカ(p3p007777)だ。彼女の視線の先には、こちらへ近づいてくる無数の古代兵器共がいる――
 まもなく射程圏内だろうか。こちらの陣地も慌ただしく動き始め、迎撃の準備が進む。
 ……全く。新皇帝の勅令に従って好きにした賊の方々も金目のものを探して古代兵器に殺される羽目になるとは思わなかったでしょうね。
「……自律行動する四脚の兵器……懐かしい類ですね。
 味方なら頼もしかったのですが、こうなってしまっては止むを得ませんか」
 そして彼女もまた己が得物を構えようか。
 ここから先には一体たりとも通さぬ――それが依頼であり役目なのだから、と。


「来るぞ――配置に付け! ローレットに、本物の鉄帝軍人たる姿を見せてやるが良い!」
 エッダは指示の声を張り上げる。全ての作業を切り上げ、戦闘態勢を整えよと。
 突撃しか出来ぬ盆暗では、南部戦線は生きていけない。
 今こそ諸君らの力を存分に示せと。
 まだだ。有効射程まで引き付けろ。まだだ、まだ、まだ――
「――放てェ!!」
 直後。数多の銃声と硝煙が生じる。
 一斉射撃の音――先行する飛行型に直撃しバランスを崩そうか、さすれば。
「機械が暴走して突っ込んでくるなんて勘弁だけど……まぁでも、新皇帝派の人間をアイテにするよりは、機械をぶっ壊す方が気が楽ではあるよね! さっ! 頑張って解体しなきゃね!」
「数が多いからね……なるべく纏めて仕留めて行かないと、余裕がなさそうだね」
 イグナートやラムダも順次動き出すものだ。イグナートはわざと敵に見つかりやすいように動きて、自らに注意を引き付けんとし。ラムダは射程圏内に入った連中を多数巻き込む一撃を放とうか。
「わーお、お宝がいっぱい♪ ……これで暴走とかしてなければ良かったのだけどねぇ」
 零す吐息。あぁあぁ無傷で手に入ればどれだけ良かったか、と。先の自らの一撃でバランスを大きく崩していく個体達を見ながら呟くものだ。ジャンクパーツでも使えるモノがある事に期待かなぁ。
 ――そしてテグスタ達の攻撃も本格的に始まる。ドローンタイプは陣地に次々と射撃を繰り出し、少し離れた所からは機関銃の斉射も次々と波の様に襲い掛かってくる……が。イレギュラーズやザーバ派軍人は迅速に堡塁や塹壕に身を隠せば多くの者達は直撃を避けうる。これも全ては念入りに陣地を構築したが故の成果か。
「さっ。ここからが本番だね、張り切ってこー!」
 直後。敵の攻勢の波が弱まった一瞬を見計らって飛び出したのはヒィロだ。
 彼女は自らに戦闘の加護を齎し強化しながら、往く。
 物理攻撃を遮断する魔法陣を展開すれば、全てとは言わないが敵の攻撃に対し有効なモノだ――ならばとそのまま多くのテグスタを巻き込む様に己が勇気を闘志として迸らせ、敵の目を引き付ける様に彼女を立ち回る。
 さぁこっちだよー! と言わんばかりに。
 無論、彼女が誘導せしめる先にあるのは設置していた数々の罠だ。
「機械の身でどこまでこっちの策を見破れるかな……? 試してみるとしようか」
 それだけではない。同様にイズマは幻影を用いて敵を誘き寄せんとするものだ。
 それは動く幻影。人の……正確にはイズマの姿を模したソレはテグスタ達から見れば生きている者と変わらぬ――故にこそ無駄な射撃が紡がれもしようか。そのまま逃げる幻影を追わんとテグスタたちの視線と意識は其方に向こう。
「今だ、ドローンを撃ち落とせ!」
 であれば、その横っ面を撃ち抜くようにイズマは指示を飛ばすものだ。
 自らも広範囲を纏めて叩き伏せる音色を刻みて――一気にドローン達を攻め立てん。
「ドローンはともかく……脚部が四脚とは。
 安定性を確保しつつ重量兵器を運用する良いコンセプトです。
 銃火器仕様という点からも堅実なアセンブルだといえますね」
「しかしこの数の暴走を止めねばならないとはなんとも骨の折れる話だ。戦乙女も気を付ける様にねぇ。一体一体はともかく、数が纏まれば流石に楽とはいかないだろうし、ね……ヒヒヒヒヒ!」
 続けてウルリカは敵の波を堡塁の中から見据えつつ、テグスタの構造を把握するものだ。成程、悪くない構造ではある、と。一体いつ頃に作られた古代兵器か知らぬが――しかし遥か以前からウルリカと同様な見解を持つ技術者でもいたのだろうか――
 が、数が多ければなんとも厄介だと武器商人は口端釣り上げながら笑みを零すものだ。
 倒しても倒しても未だ敵の数は多い。
 ウルリカは堡塁から出て常に移動しつつ射撃を繰り返し、武器商人は陣地内の有利なクロスポイントへ誘導せんと破滅の呼び声を撒き散らそうか。アレを生かしてはいけぬと、機械の身であろうと悟らせる様に。
 さすれば――戦闘は激化していくものだ。
 陣地近くまで到達したテグスタ達は拠点を粉砕せんと機関銃の乱射を繰り返す。ドローンらは空から見つけた人影を撃たんと散発的に立ち回るものだ……尤も、多くのイレギュラーズの手も加わって強化された陣地は未だそうそう簡単に崩れぬが。
 だが――懸念はやはり存在する。それは。
『ギギ……目標装填――ファイア』
「――グレネードだ! 総員退避、直撃を避けよ!!」
 壁を纏めて打ち砕くグレネードだ。
 指示を飛ばしながら前線にて戦っていたエッダはすぐさまに気付き、味方へと注意喚起――
 直後。テグスタから放たれたグレネードが陣地を吹き飛ばさんと、着弾した。


『ファイア』
『ファイア』
『ファイア』
 そしてその一発を皮切りに、あちらこちらでもグレネードが射出され始める。
 連中が攻め時と感じたか、それとも堅牢な陣地を突破する為にやむなしと感じたが故か――分からぬが、とにかくグレネードの大きな衝撃が響き渡るものだ。炸裂と爆発音。耳をつんざくような音色は――しかし。
「この程度ではまだ揺らぎません――落ち着いて対応しましょう。
 それと、右のグレネードには警戒を……最悪自爆が考えられます」
 無事なウルリカは語る。冷静に、敵に対応し続けよう――と。
 発射した個体はむしろ脅威ではない。グレネードの残弾が無ければ機関銃を乱射するだけの兵器となり果てるのだから……問題なのは未だ残している個体の方である。最悪、陣地深くまで潜り込んでから自爆――もしくはグレネードが誘爆――という事態も考えらえる。
 強化した堡塁などに立て籠もれば重体なる身は避けられようが、間近で受ければ話は別になるかもしれない。
「……しかしこの数の兵器、封印出来てた村もなかなかやりますが、封印後に対処しなかった鉄帝本国も怠慢では。もっと早期に準備をした上で廃棄処分を行うべきだったでしょう」
「まぁまぁおかげで、上手い事解決できればパーツはこっちのモノになるだろうから良しでいいんじゃないかな? えっ、不謹慎? Haha、硬い事いわないの。これは正当な報酬ってヤツだよ」
 故に残敵に対し再度攻撃をウルリカやラムダは再開する。ウルリカの放つ無数の弾丸が暴力の嵐と貸し、敵陣へと襲い掛かろうか――直後には近くへと至りしテグスタをラムダが刹那に斬って落とす。
 零距離から放たれる極限の魔力斬撃。機関銃の銃撃を掻い潜りて、銃口諸共切り伏せん。
「ふ~む、なかなか良い武装じゃない?
 ホントは極力原型は留めて動作不能にしたいなぁ……Haha」
 軽口と共に胸部にも切っ先差し込みて動力源を絶とうか。さぁあと何体だ――?
『ギギギ……迎撃、迎撃……!』
「残念だけど、踏み込み過ぎだよ。タダの機械じゃ、この辺りが自己判断のゲンカイかな?」
「敵は足並みを乱している――いいぞ、続け! 一気に趨勢を此方に傾ける!!」
「おぉ……! イレギュラーズに続け……!!」
 然らば、陣地の罠地帯へと踏み込んだテグスタ達の足が絡めとられ、その動きが鈍っていた――故にこそイグナートは好機と見定め一気に接近。上空のドローン共を纏めて叩き落し、そのままの勢いでテグスタにも襲来するものだ。
 更にはエッダも南部戦線軍人らと共に一斉攻撃。
 銃撃、銃剣による刺突、エッダ自身も勇気と覚悟の剣撃をもってして打ち破らん。
 ――であれば段々と古代兵器達の数は少なくなり始めていた。
 ドローン達は耐久性の低さから各個に撃ち落とされグレネード対策をも考慮した陣地は、かの被害を軽減。古代兵器達の強みは一つずつ消され始めていたのである。未だ各所で抵抗と攻勢の激しい銃撃、炸裂音はなり続けているが……戦闘当初と比べれば大分少なくなっていた。
『グレネード――ファイア』
「悪あがきかな? 無駄だよ――! 無理やり使うのなんて脅威じゃないもんね!」
「然り然り。さぁて、そろそろ終わらせに掛からせてもらおうかな――?」
 そしてグレネードの一撃が壁に直撃――と同時に飛び出したのはヒィロや武器商人である。被害が全くない訳ではないが、今更そんな乱雑なグレネードが脅威になろうか、と。
 紡ぐ。ヒィロの一撃がテグスタへと。
 更には武器商人が渾身の魔力を振り絞り顕現せしめるは――神滅の魔剣。
「今までの駄賃代わりだよ。受け取ってくれ」
『ギギ――』
 両断する。武器商人は、変わらぬ笑みをその顔に張り付けながら。
 ……やがて戦場の数の差は逆転する。ドローンは最早使いものにならず地に撃ち落とされ、陣地に侵入しているテグスタを殲滅するべくザーバ派軍人達は包囲する様に押し込もうか。イレギュラーズ達も前線にてテグスタを押さえ、撃滅し始めて。
「足元に突撃だ、転ばせろ! 数はもう左程ない――一気に攻め立てれば勝てるぞ!」
 その戦線の一角ではイズマが奮戦していた。
 自身の限界を突破しうるコードを常に用い、神速を得ながら。
 彼は戦い続ける。此処で必ず奴らを止めるのだと、意思を抱きながら。
『ガ――ガガガ! グ、グレネー……』
「それはもう使わせない!」
「大人しく解体されな? もう終わりなんだから、ね」
 最後の一撃を――紡ぐのだ。
 テグスタがグレネードを使う前に。イズマは敵のみを穿つ銃撃掃射。刹那に怯んだテグスタの隙があらば――間髪入れずに、ラムダが斬り裂こう。イズマの一撃に合わせた死角からの襲来……最早古代兵器などに防ぎ切る一撃に非ず。
 ――そして、終わった。最早銃撃音は鳴り響かない。
 陣地を眺めてみればかなりボロボロとなっている……やれやれ。徹底して陣地を強化高いがあったというものか。マトモに平地でぶつかっていれば、相応以上の被害が出ていたかもしれない……
「いやー手強かったー! 流石にこれだけの数がいると大変だねー! でもさ、こーいうの複製して箱詰めして新皇帝派の軍事拠点にプレゼント――送り付けたり投下できたら、楽しいパーティーになりそうだね! ダメ? やるだけやってみてもいいじゃん! あはっ☆」
「まぁ古代兵器がどの程度まで運用できるかは、また南部戦線の技術部次第かなぁ……とにかく、後は古代兵器を回収しておこうか。それも依頼だしね」
 ともあれヒィロは勝利と共に古代兵器の運用法をなんとなし想像するものだ。今回は暴走していたわけだが、指向性を向ける事が出来れば戦力になるのでは……と。
 イズマは戦場各地に破損している古代兵器の回収を始めようか。武器や素材を綺麗に取り出す方法がないかも――調べながら。
「かなりの銃弾を所有していた様ですね……このグレネードとか、列車砲の榴弾に仕えないでしょうか。ひとまず城塞へと届けてみましょう――どのような形であれ、技術の向上になるでしょうし」
「壊しまくったしジャンクパーツばかりなのは仕方ない、か。
 今度は暴走しない新品でも堀でてほしいもんだねぇ」
 同時にウルリカやラムダも周辺の残骸からまだ使えそうなパーツを抜き出すものだ。
 ザーバ派軍人も戦場の片づけと同時にドローンなどの回収を進めて――さすれば。
「……さて、将軍にご報告せねばな。戦勝の――報を、だ」
 エッダは城壁から見下ろす。激しい攻防が繰り広げられた、戦場の跡を。
 数多の古代兵器は残骸となり果て、最早暴走する個体はなし。
 ――完全なる勝利の報を届けに、戻るとしようか。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

美咲・マクスウェル(p3p005192)[重傷]
玻璃の瞳

あとがき

 依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 古代兵器……暴走する敵となる事もあれば、使える兵器となる事もあるのでしょう。
 ありがとうございました!

●運営による追記
 本シナリオの結果により、<六天覇道>ザーバ派の技術力が+10されました!

PAGETOPPAGEBOTTOM