シナリオ詳細
<総軍鏖殺>疎開民を護衛しよう
オープニング
鉄帝の とある街。
群雄割拠の修羅の国と化した鉄帝の中で、他と変わらず影響を受けている。
つい最近も、帝位についた魔種バルナバスの勅令を真に受けた盗賊に襲われていた。
幸い、レギュラーズの協力により事なきを得、盗賊たちは捕まえているが、いつまた他の盗賊に襲われるか分からない。
それに対抗するべく、街では防衛態勢が整いつつあった。
◆ ◆ ◆
「お疲れさま!」
「ああ、お疲れ」
街を巡回していた皇 刺幻(p3p007840)は、街の住人に声を掛けられ応える。
少し前、街を襲う野盗を叩きのめした刺幻だが、その時の縁で街の巡回の依頼を受けていた。
(大分、態勢が整ってきたな)
街を巡回しながら、刺幻は判断する。
(練達のロボットに、ラサの傭兵……随分と伝手があるみたいだな)
視線を向ければ、オモチャの兵隊のようなロボットが飛びながら巡回し、義肢を着けたラサの傭兵が街の住人を相手に避難誘導の訓練をしているのが見える。
(ロボットは、街の近くの遺跡から得た技術で作ったとか言ってたな。ラサの傭兵の方は、怪我で一線を退いた者に、無料で補助器具を提供することで協力関係になったらしいが)
色々と用意周到だが、用立てた依頼人は、別段いまの状況を見越していたわけではない。
ただ、何かあった時すぐに動けるよう、日頃から準備していたようだ。
(あの2人もウォーカーらしいが……この国に思う所があるんだろうか?)
刺幻としては、今の鉄帝の動きは色々と気になっている。
(この国のあり方も、少しお仕置きがいるな)
などと思っていると――
「おーい、ちょいといいか?」
街の実質的な統治者である、軍人のギギルに声を掛けられる。
「リリスが話があるってよ。俺も行くから、一緒に行かねぇか?」
依頼人に呼ばれているということで、刺幻も一緒に向かう。
「いま、どこに居るんだ?」
「この前とっ捕まえたガキ共に飯食わせてる所だ」
向かった先では、他のイレギュラーズと一緒に叩きのめした野盗たちの食事の世話を、リリス達がしていた。
「パンのお代りはあるから、足らなかったら言いなさいね」
十代後半の青年たちに食事を配り終えたリリスは言った。
「食べないと怪我治り辛いわよ」
「うっせぇババア、恩着せがましいんだよ」
「はいはい。そんだけ憎まれ口叩く余裕があるなら沢山食べれるでしょ。どんどん食べなさいな」
そう言うとリリスは、追加でパンを置いて、刺幻たちの傍に寄った。
「巡回お疲れ様。悪いわね、急に呼んじゃって」
「それは構わないが……随分と待遇が良いな」
噛み付くような視線を向けて来る野盗のリーダーに、刺幻は真っ向から視線を返したあとリリスに言った。
「あそこまで世話をしなくても良いんじゃないか? 自分のことは自分でさせても良さそうだが」
「いずれそうしたいけど、今はそれ以前の段階。あの子達、大人に面倒見て貰ったことないみたいだから。躾ける前にしてあげないとね――と、その話は一先ず置いといて、ちょっと他の話をしたいのよ。ここじゃなんだし、部屋変えましょう」
そう言って他の部屋に案内する。
そこでは、もう1人の依頼人であるヴァンが、大量の書類仕事をしていた。
「お疲れ様です。すみませんね、急に呼んじゃって」
そう言うとヴァンは、地図を机に広げて言った。
「街の住人の一部ですが、一時的に疎開して貰おうと思いまして。このルートを通ろうと思うんですが、気になる点はありませんか?」
地図に書き込まれたルートや、移動する住人の詳細を確認して刺幻は言った。
「女子供を避難させるってことか?」
「ええ。とりあえず、戦えない人は一時的に街を離れて貰おうかと」
「それに加えて、他の国に触れて貰おうと思って」
「どういうことだ?」
刺幻の問い掛けに、リリスが応える。
「少しでも、この国が好い方向に変わる切っ掛けになれば良いなと思ってるのよ」
「他の国に疎開させることが?」
「ええ。変化させるには、自分達以外のことを知らないと難しいもの。鉄帝以外の国の常識や価値観を知ったり、そこに住んでる人と関わったりして、今までにない考えや気持ちを持てるようになって貰わないと」
「この国を変えたいってことか?」
「百年単位の話だけどね」
「気の長い話だ」
「ええ。でもまぁ、幸い私達、寿命は長いから。気長に続けていくつもり」
リリスの話に、苦笑しながら刺幻は思う。
(こういうのも、お仕置きってことになるのか?)
ある意味、現行体制を否定する準備をします、と言ってるのに等しいので、先の長い話ではあるが間違っては無いだろう。
「――なるほどね」
小さく笑みを浮かべると、改めて地図を確認して刺幻は言った。
「進行ルートは良いと思うが、この場所は気を付けた方が良いな」
ある地点を指差し、刺幻は続ける。
「平地で開けてるから、大人数で襲われ易い。狭い道で潜伏されて奇襲を受けるのもキツいが、こういう開けた場所だと力技で押し切られる可能性がある」
「やっぱり、そう思いますか……」
「護衛増やした方が良さそうね」
ヴァンとリリスは話し合い、刺幻に言った。
「ローレットに護衛の依頼を出そうと思うの。もし良かったら、受けて貰えないかしら」
「都合が合えば構わないが……襲われる確信があるのか? 随分と入念だが」
これにリリスが応えた。
「いま捕まえてる子達、この街が狙い目だって教えられたみたいなのよ」
「……誰にだ?」
「本名は知らないみたいだけど、『手配師』って呼び名の奴らしいわ。色々と非合法の手配をしてたみたいで獄中送りになってたみたいだけど、今回の騒動で自由になったようね」
「ろくでもないな……」
実際、ろくでもなかった。
「まいどあり~」
けらけらと笑いながら、『手配師』は野盗に地図を売り渡した。
「ご機嫌だね」
「あんたらのお蔭だよ」
にやにやと笑みを浮かべ、『手配師』は情報提供者に応える。
「鉄帝から逃げる奴らが通るルートと日時、ここまで調べてくれてりゃ、言い値で捌ける。下手に戦う気の奴ら相手にするより、逃げる奴らを狩る方が楽で良い。逃げる時に財産持って出るから、稼ぎも良いしな。ひひひっ、フィーバータイムの内に稼げるだけ稼がねぇと」
そう言うと、新たな地図を取り出して言った。
「さて、こいつは誰に売ろうかね?」
それは、リリス達が予定しているルートが記された地図だった。
- <総軍鏖殺>疎開民を護衛しよう完了
- GM名春夏秋冬
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年10月27日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
「住んでいた場所から避難しなきゃいけないなんて、この国はどうなってしまうですかね……」
馬車に乗り込む幼い子供や母親達を見て、『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)が呟く。
疎開民は一様に不安を浮かべていた。
すると、『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)が、疎開民に近付き気持ちを込めて言った。
「みなさまが、次の場所で元気にはじめられるように、ニルたちがついてます、大丈夫ですよ!」
元気付けるニルに、疎開民の視線が集まる。
応えるように、ニルは言った。
「ニルは、かなしいのはいやだから、ぜったいぜったい、まもります」
「僕も守るにゃ!」
ニルに合せるように言ったのは、『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)。
「僕もニルも、みんなもいるから大丈夫にゃ!」
元気付ける2人に、疎開民の表情が和らぎ、それを見たメイは――
(メイたちの頑張りが皆を笑顔にするなら、できることはなんだってやるですよ)
ニルとちぐさの2人を見て、やる気を見せていた。
すると、『闇之雲』武器商人(p3p001107)が声を掛ける。
「無事に着けるよう、我(アタシ)達で手配してやろうではないか、猫の娘」
元気付けるように言う武器商人に――
「はいです。皆の笑顔を守れるように、できることをやるですよ。今日はそのうちの一つです!」
メイは力強く応え、それを聞いた疎開民は頼み込む。
「よろしくお願いします」
これに、ちぐさが元気良く返す。
「みんなで守るから安心して欲しいのにゃ!」
安堵の表情を浮かべる疎開民。
それを見て、やる気を増すちぐさに――
「ちぐさも一緒なの、ニルはなんだか嬉しいです。とってもとっても心強いのですよ」
ニルが呼び掛け、笑顔で応えるちぐさだった。
そして疎開民が馬車に乗り込み終わると、依頼人のリリスが改めて皆に頼む。
「目的地まで、よろしくお願いするわ」
「こちらこそ、よろしく」
リリスに応えたのは、フードを目深に被った、『お師匠が良い』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)。
「ボクはおやつと報酬をくれる人の味方で、襲ってくる奴らの敵。つまり今日はキミ達の味方だからね」
これにリリスは返す。
「ありがとう。向こうに着いたら、美味しいおやつを用意させて貰うわ。頼りにしてるわよ」
静かに頷くリコリス。
そして出発。
イレギュラーズの案に沿う形で、陣形を組んで進む。
中央に疎開民の馬車。
すぐ近くをギギル隊が守りに就いている。
さらに外周をイレギュラーズ達が警護に就く形だ。
いつでも迎え撃てる態勢を取り、その上で警戒も怠らない。
「現況報告。今の所、敵影なし」
飛行し皆より高い視点で、広域俯瞰も使い索敵しているのは、『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)。
(このまま進めば良いんだけど)
何事も無ければそれが一番だが、最近の情勢では難しい。
(作戦目的は疎開する人たちの護衛。何としても守り抜く)
意気込みつつ、余計な力みは抜いている。
(襲撃が来ることがわかってれば対応のしようもある。皆もいるんだし、油断さえしなければ大丈夫)
なので気になるのは、野盗達に便宜を図っているという存在。
(襲撃を手引きする『手配師』とやら。元を絶たないといつまでも終わらない。何とか尻尾を掴みたいね……)
先々の予防も考えつつ、索敵を続けた。
オニキスのように周囲の警戒に当たるのは、『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)。
(いつ襲撃があっても対応できるよう、気を張らねば)
ファミリアーの鴉を飛ばし、同じように警戒に当たっているニルのファミリアーと連携して周囲を見張っていた。
(今の所は人影も見当たらぬでござるな)
内戦一歩手前の状況もあり、街道の周囲には誰もいない。
(平和であれば、人の往来もあったでござろうに……)
ちらりと、護衛対象である疎開民の乗る馬車に視線を向ける。
(この者達がまた戻って来られる様に手を尽くしてゆかねばな)
だからこそ――
(中々混乱が収まる気配がござらぬがここが踏ん張りどころ。この国の未来の為にも彼等を無事送り届けるでござる)
咲耶は気合を入れていた。
そうして進む中、神翼獣ハイペリオンから分離した白馬、シェヴァリオンに乗りながら警戒に当たるのは、『チャンスを活かして』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)。
(もうしばらくは、問題なく進めるか?)
事前に進行経路の地図を見ていたシューヴェルトは、鋭い戦略眼で判断する。
(襲撃があるとしたら、もうしばらく進んだ先にある開けた場所の可能性が高そうだ)
現在進んでいる場所は、左右が荒地になっている。
馬などですぐさま襲い掛かって来るには適していない。
(襲撃がないのが一番だが、裏で煽っている者がいる以上、難しいだろう)
依頼人から聞いた手配師を、どうにかしたいとも思っていた。
(野放しにしているのも癪だ。なんとかして近付く方法があれば……)
油断せず警戒しながら、頭の片隅で考えていた。
そうして進む中、疎開民の中にいた子供がぐずる。
母親が厳しい声で窘めるが、不安が広がった。そこに――
「困ったことはないかぃ?」
武器商人が馬を寄せ安心させるように言った。
「遠い地に向かうとなれば不安も多かろう。足りない物があれば遠慮なく言うといい」
武器商人の気遣いに、不安は薄れていった。
疎開民のケアもしつつ、馬車は進み続け――
「この先は開けた場所が続く。警戒を強めよう」
シューヴェルトが皆に声を掛ける。
それを受け、皆が気を引き締めていると――
「敵影発見! 右手から多数向かって来るよ!」
オニキスが声を上げ、飛んでいた鴉たちも鳴き声を響かせた。
即座に、皆は対応する。
「馬車の守りを頼む」
シューヴェルトがギギル隊に指示を出し、近づいた敵を抑える最後の砦の役割を頼む。
ギギル隊は応じると、疎開民の馬車を囲むように展開し守りに徹する。
その間に敵は近付いて来るが、当然イレギュラーズ達が迎え撃った。
●護衛戦闘
(まずは近付けさせないことが先決だ)
シューヴェルトは、シェヴァリオンを駆り颯爽と前に出ると、馬上から抜刀。
振り抜きと共に放たれた形なき呪詛の刃が、複数の敵を貫く。
一撃で倒せはしなかったが、馬を駆る手が止まり、敵の後続も一時的に足が止まった。
だが敵の数は多く、スピードを落とさず近付く者も多い。
それを止めるため――
「行くぞ」
シェヴァリオンを駆り、シューヴェルトは突進。
距離が近付いた所で、敵の馬目掛けて斬撃。
途端、馬は斬り砕かれ、乗っていた野盗は転げ落ちた。
しかし野盗は、血まみれの仲間を無視し速度を落とさない。
距離が縮まり乱戦になるが、その距離こそシューヴェルトの真骨頂。
洗練された剣舞の冴えを見せ、1人で複数の敵を抑えていた。
先陣を切ったシューヴェルトに続き、皆も迎撃に動く。
(幸福なコ)
武器商人は敵に気付かれないよう、ハイテレパスでニルに呼び掛ける。
(野盗を我(アタシ)が引き付け引き離す。馬車の守りを頼んだよ)
こくりと頷くニルを確認し、武器商人は白き妖精馬――ギネヴィアを走らせる。
狙うは、一際大きな集団。
可能な限り近付くと、魂に爪を立てるような呼び声をぶつけた。
「――っ!」
破滅へ手招きするような呼び声に、敵は怒りのような、あるいは恐怖を抱いたかのような表情を見せた。そんな野盗達に武器商人は――
「ほら、こっちにおいで?」
魅了するような、あるいは嘲笑するような声と表情で、挑発する。
「それだけ大仰な人数だったら、運が良ければ我(アタシ)を殺せるかもしれないぜ? ヒヒヒヒヒ……!」
「テメェ!」
歯を剥き出しにして野盗は馬を走らせるが、すでに武器商人は動いている。
「ほらほら、あと少しだ頑張りな。ヒヒヒ」
倒すのではなく撹乱するように敵を翻弄していった。
敵は出足を挫かれ翻弄され、動きが鈍らされる。
その隙に、ニルやメイが馬車の守りに動く。
「全員で馬車を守るですね」
ニルと協力して保護結界を展開しながら、メイは仲間に呼び掛けるように言った。
「メイも周囲を囲むようにするつもりですが、回復を皆に届かせるために中央に行くこともあるからよろしくなのです!」
そう言うと、乗っている小柄な馬を優しく撫でて――
「お馬さんお馬さん。暫くの間、よろしくおねがいしますなのです!」
願うように呼び掛けると、馬は応えるように鳴き声をあげ馬車と並走する。
「メイは馬車を守るです」
「ニルも一緒に守ります」
おまじないを込めながら保護結界を展開し終えたニルは、メイの言葉に応えるように返しながら、陸鮫に乗って馬車と並走する。
同時に、ファミリアーの鴉を飛ばし周囲の状況を確認すると、敵の位置を伝えた。
「後ろから、近付いてきます」
そう言うとニルは、距離の近いちぐさに呼び掛けた。
「ちぐさ、一緒に馬車を守ろうです」
「分かったにゃ!」
2人は連携して動く。
まず前に出たのは、ちぐさだ。
「近付けさせないにゃ」
馬車に乗る皆を守るため、馬を走らせる。
気付いた敵は矢を射ろうとするが、それより早くちぐさは魔力を大地に流す。
途端、大地がめくりあがり、四方から押し潰す。
苦痛の声を上げる敵に――
(痛そうなのにゃ)
ちぐさは思わず同情してしまう。
(野盗の人もヴェルス皇帝の時代なら、もっと平和に安定して暮らせてたのかもしれないにゃ)
そう思いつつも、馬車の皆を守るため戦いの手を止めるわけにはいかない。
何しろ野盗は、仲間が傷ついても無視している。
見捨てるように馬を走らせ距離を詰めて来るが――
「近付いたらダメです」
ちぐさの隣に移動したニルが、敵の勢いを止める。
敵の進行上に泥を作り出し、地の底に引き摺りこむようにして捕えた。
「ちぐさ、このまま頑張ろうです」
「もちろんにゃ!」
1人ではなく友達2人で、息を合わせ迎撃した。
そんな2人を排除しようと、敵は遠距離攻撃を重ね幾らか傷を受ける。
しかし、間髪入れずメイが回復してくれた。
「怪我したらすぐ治すです」
援護するように声を掛けながら、攻撃にも加わる。
「馬車には攻撃させないですよ!」
側面から近付こうとする敵に、神聖なる光を放ち遠ざける。
その上で、身を挺して守るように、馬車と並走して走り続けた。
(騎乗戦闘は不得手でも、壁になって守るだけならできるです!)
メイ達の活躍もあり、敵は近付けない。
だからこそ敵は戦い方を変え、まずは遠距離狙撃で確実に1人1人潰そうとしていた。しかし――
「させないよ」
リコリスが精密狙撃で迎撃。
嘲笑う死神を思わせる正確な狙撃は、一撃で敵の狙撃手を馬から撃ち落す。
(狙撃手は――あと8人。全員、仕留める)
急所はギリギリ外すようにして、次々撃ち抜く。
敵は馬から転げ落ちるが辛うじて生きている。
(助けに向かってくれればいいんだけど)
敵の戦力を削るため、あえて加減して狙撃しているが、敵は仲間の被害を無視して突っ込んでくる。だが――
(狙い目だね)
リコリスは個別狙撃から範囲攻撃に切り替え、点ではなく面での制圧に動く。
その分、敵1人1人に与える被害は減り、激昂しながら近付く者も出てくる。
「どうした! 止めもさせない腰抜けが!」
リコリスは明らかな挑発には乗らず、逆に敵の戦意を削る様に声を上げた。
「別に優しさで手加減してるわけじゃないんだよね」
挑発してきた敵を撃ち落し、挑発を返すように言った。
「ほらほら、這いずり回ってさっさとおうちに帰ったらどうさ。でないと次の狙撃がきちゃうよ?」
これに敵は怒り突っ込んでくるが、冷静さを失っているので迎撃し易かった。
イレギュラーズ達は敵を近づけず馬車を守り、敵の数を確実に減らしていく。
そこから止めを刺すように、一気に攻勢に出た。
「人の不幸を飯の種にする不届き者共め。この斬九郎がいるからにはお主等の好きにはさせぬ!」
一気呵成に敵を叩くべく、咲耶は勇猛果敢に馬を走らせる。
巧みに馬を操り、敵集団へ突進。
敵は迎撃しようとするが、咲耶の振るう刃の方が速い。
残像が生じるほどの速さで敵を切り裂き、さらに敵中央へと切り結ぶ。
乱戦となる距離で振るわれるのは、無数の乱撃。
巧みさよりも速さと鋭さを際立たせ、常に動きながら敵を切り裂いていった。
「クソッ!」
「囲めっ!」
敵は咲耶を抑えようとするが、常に動き続ける咲耶を捕えきれない。
それが敵の動揺を誘い、その隙を逃さず咲耶は連撃。
戦意を削ぐことを第一に、あえて止めは刺さず、だが傷を確実に刻んでいく。
それが敵を及び腰にさせ――
(仕掛けるなら、今でござるな)
咲耶は刃だけでなく言葉も使い敵を追い込む。
「手配師の言う通りでござったな! お前達はここで殺すでござる!」
明らかに動揺する敵を、さらに追い込む。
「まんまと騙されおって! お主等は手配師とやらに嵌められたのでござる!」
「どういうこった!」
「大方邪魔になったのでござろう。理由は奴にでも聞くが良い!」
咲耶の言葉で敵の全てでは無いが、明らかに動揺が広がった。
敵は足並みが崩れる。
そこに止めを刺すように、オニキスが派手に動く。
「一気に行くよ!」
飛行し高い位置から、全力の一撃を放つ。
魔神の一部を降ろし放たれる魔力の砲撃は、敵を宙に舞い上げる勢いで叩き込まれる。
悲鳴を上げる敵。そこに――
「続けて、もう一発」
オニキスは容赦ない追撃。
地面を抉りながら敵を薙ぎ払っていく。
敵は吹っ飛ばされ、腕や足をおかしな方向に曲げられ、馬から投げ出され地面をのたうつ。
爆撃されたような有り様に、弱っていた敵は混乱したように統率が乱れていく。そこに――
「これ以上掛かって来るなら、今のを何度でも叩き込むよ!」
オニキスは敵の勢いを削る様に、攻撃の手は休めずに声を上げる。すると――
「ひぃぃっ!」
怯えた者から逃げ始める。
(これでいい)
狙い通りに進み、オニキスは加速させるように攻撃を重ねる。
(今ここで全滅させるより、逃げ帰った奴らに「ここはヤバい」と思わせた方が、『手配師』とやらの仕事がやりにくくなるはず)
先のことも見通し、仲間と連携しながら攻撃を続ける。
すると敵は総崩れになり、我先に逃げ始める。
しかし中には、馬が潰れ上手く逃げられない者もおり、それをオニキスは見つけると――
(情報収集のために、何人か捕まえておいた方が良いかも)
素早く近付き死なない程度に攻撃を叩き込み無力化すると、持ち上げギギル隊の元に持っていく。
「情報源にしたいから、捕まえておいてくれるかな」
ギギル隊は応じ、拘束した上で馬に乗せ運んだ。
一連の戦闘で野盗を完全に打ち払い、改めて隊列を組んで先に進む。
その後は新たな襲撃も無く目的地である、中継地点の街に辿り着いた。
「お疲れ様。一息つけるよう、おやつにしましょう」
現地につき、細かな打ち合わせを現地人としたリリスは、疎開民やイレギュラーズを労うようにお茶にしてくれる。
「うん。美味しい」
リコリスを始めとした皆は、英気を養うようにお茶をして体力を回復させた後、捕縛した野盗から情報を聞き出した。
「後続は、いないんだね?」
一際暴れていたオニキスに訊かれ、野盗は引きつった顔で頷く。
当面の危険がないことを確認したあと、手配師について尋ねると――
「向こうが話を持ち掛けてきただけで、俺達はそれに乗せられただけなんだ」
言い訳するようにべらべらと話す。
話を聞くと、手配師から毎回コンタクトを取って来るようで、野盗達が直接連絡を取る手段は無いとのこと。
「用心深い相手だねぇ」
武器商人が言うように、用心深い相手のようだった。
そうして情報を幾らか得たあと――
「鉄帝国が平和になったら戻ってきて欲しいにゃ」
疎開民に、ちぐさは声を掛ける。
「みんなが帰って来れるよう、僕に出来ること、これからも頑張るにゃ!」
元気づける言葉に、礼を返す疎開民であった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
皆さま、お疲れ様でした!
皆さまの活躍で、疎開民に被害は出ず、全員無事に目的地に到着できました。
気遣いの言葉を掛けてくれたこともあり、疎開民は穏やかに新たな生活を始められそうです。
それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!
GMコメント
おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
今回のシナリオは、アフターアクションでいただいた内容を元に作った物になります。
そして、以下詳細になります。
●成功条件
疎開民の護衛を成功させる。
●状況
鉄帝のとある街から、他の国に疎開させるため、馬車で進みます。
その途中で、野盗に襲われますので、撃退し護って下さい。
●戦場
平地の開けた場所。
戦闘に支障はありません。
●護衛対象
10台の馬車に、合計で100人が分散して乗っています。
馬車は4頭の馬で牽き、速さはそれなりです。
●敵
野盗×30~?
御参加いただいたレベル帯などで人数が変わります。
最低でも30人の野盗が、馬に乗って襲ってきます。
どういう陣形で来るかなどは不明です。
強さは、そこそこです。
全員を倒してしまうか?
それとも、撤退させるぐらいで済ませ護衛対象の移動を優先させるか?
自由にプランにお書きください。
●移動手段
騎乗用の馬を用意してくれます。
馬以外も用意してくれます。ただし、速さは全員が同じです。
●味方NPC
ギギル隊×10
戦い慣れした兵士です。
PC達の指示に従います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
説明は以上になります。
それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。
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