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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>憤怒は略奪を是とする

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝の政変。
 新皇帝となった魔種……『煉獄編第三冠"憤怒"』バルナバス・スティージレッドは強者へとあるがままに振舞うよう告げた。
 事実上、鉄帝国内は弱肉強食となり、弱者は強者に虐げられる弱者は完全に見捨てられる形となってしまった。
 強者の中には、弱者ならば何をしてもよいと考える者さえ存在する。
「新皇帝の勅令によって多くの収監者も釈放されました」
 鉄帝首都スチールグラードへと集まるイレギュラーズへと、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が説明を行う。
 今でもあちらこちらで戦いが巻き起こっており、強者同士が己の主張を正当化すべく力をぶつけ合っている。また、何かが破壊され、崩れる音がどこかから聞こえてきた。
 荒れる首都の街中も見過ごせぬ状況が続いているが、より強大な力を振るい、弱者を虐げる者がいるとなれば、そちらを優先して対処せねばならぬのはやむを得ぬことだ。
「話を戻しますが、かつてイレギュラーズと対し、鉄帝国内の警察によって収監されていたトラヴィスという男もその1人です」
 ノーザンキングスに所属していた彼はかつて、思うままに略奪を繰り返す海賊の様な所業を繰り返していた。
 今回の勅令で釈放された後は一度ヴィーザルへと戻り、同志を集めながら一大勢力になろうと躍起になり、活動をしているという。
「ですが、海賊まがいの略奪を繰り返している実状は変わらないようです」
 規模は30名程に増え、副団長の女性と共に少しずつ勢力を拡大している。
 以前はヴィーザルの海での活動が中心だったが、船を失ったことに加えて陸で勢力拡大を目論んでいることもあり、今は村を襲いながら食料や物資を奪っているという。
 抵抗する者は、容赦なく命までも奪うのだとか……。
「襲われるしかない人々を見過ごせるわけがありません」
 次に襲われると見られるのは、山間の集落。
 鉄帝にあって珍しく牧畜などを行って生計を立てている場所を、トラヴィス団が腹を満たすべく襲うという。
 彼らに今一度より強い力による制裁を。アクアベルは依頼を受けるメンバー達へと強く願うのである。


 鉄帝というのは気候的にも地形的にも、作物が育たず、生物も生息しにくい場所に位置する。
 また、鉄帝民の気質的にも、強者が全てといった考えが根強いこともあり、農業や漁業など第一次産業に従事する者は他国と比べれば少ない。
 それでも、自分達の暮らしを維持しようと、そうした仕事を敢えて選ぶ者は存在する。
 クラヴァと呼ばれる地域では、牧畜を中心とした生活を営んでいた。鉄帝内にあって比較的のどかな生活を送っていた人々であったが、ここにきて悪漢の通り道となり、狙われてしまうことに……。
「肉だああ。たらふく肉が食えるぞおおお!」
「どけ、俺のものだ!!」
 垂らすよだれを拭き取ることもせず、トラヴィス団の団員達は凶器を振りかざしつつ我先にと集落を目指す。
「さあ、奪え! てめぇの食い扶持はてめぇで確保しな!」
「「おおおおおおおおおお!!」」
 団長トラヴィスの号令もあり、団員達は血気盛んに雄叫びを上げるのだった……。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 無法地帯と化した鉄帝国内ですが、各派閥、勢力も活発な動きを見せ始めています。
 私欲を満たすべく強盗を繰り返す若者集団の鎮圧を願います。

●目的
 トラヴィス団の掃討

●状況
 鉄帝北東、トラヴィス団は地元の若者を取り込みつつ勢力を拡大し、なおも略奪行為を働いています。
 ゆくゆくは鉄帝の一勢力にと壮大な野心を抱く彼らの芽を摘んでいただきますよう願います。
 戦場となるのは、鉄帝北東の山間にあるクラヴァという地域。
 駆け付けるタイミングは状況次第ですので、迅速な移動によって現地へと到着することが望ましいでしょう。

●敵……ノルダイン、トラヴィス団
 元々は鉄帝国内、海合いの集落を襲っていた若者達の集団です。
(拙作「食いたくば、奪え!」参照)
 鉄帝国内に収監されていましたが、今回の一件で釈放され、帝都から北東、ヴィーザル地方で再び勢力拡大を目論んでいるようです。
 収監時や釈放後、彼等はさらなる力を求め、団員共々強化しているようです。

○団長、「海の暴風」トラヴィス
 筋肉質な肉体を持つ豪快な人間種青年男性。
 快楽的思考で刹那の楽しみの為、人命をも奪う残忍な男です。
 2本のカットラスで周囲を切り刻みます。

○副団長、「空の荒波」アレオレ
 豪快なトラヴィスに付き従う青髪のマグロの海種女性。
 陸上でも波を起こすことができ、それに乗って突撃してきます。

○団員×30名程度
 人間種と海種の混成部隊。
 トラヴィスに共感した血気盛んな男女が集っています。
 男性は片手斧と盾、女性はサーベル。また、人間種はマスケット銃、海種は水を魔弾として使います。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <総軍鏖殺>憤怒は略奪を是とする完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月31日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
シラス(p3p004421)
竜剣
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
駆ける黒影
柊木 涼花(p3p010038)
灯したい、火を
レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)
青薔薇救護隊

リプレイ


 鉄帝、首都から北東の山間部を馬車が行く。
「急いで現地に向かうぞ!」
「おう、少しでも早く着きてぇんだろ? 任せろ。舌噛むなよ?」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の呼びかけに応じ、『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)はドレイク・チャリオッツの手綱を強く握る。
 ルナはできる限り全力で移動できるよう対策をし、全員をチャリオッツの引く荷台に乗せていた。
 その車軸、車輪を中心に、『青薔薇救護隊』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)が保護結界を張り、不測の破損を防ぐ。
「これなら、思う存分走れるってもんだぜ。連中なんざよか先についてやるよ」
 ルナ自身のモード・シューティングスターによって、流星の如く山道を爆走するチャリオッツ。
 加えて、イズマが広域俯瞰で道順をチェックし、道案内を請け負うこともあって、この分なら余裕をもって目的地に到着できるだろう。
 一方で、『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)も周囲の状況を確認し、特に今回掃討すべき敵の動きに注意を払う。
 先に目的地であるクラヴァ地域に到着できたことでルナが少し速度を緩めると、メンバー達も戦いに備えて話し合いを始める。
「まったくもう、彼の大罪が玉座に座ってからというもの、国は荒れ放題ね……」
 現状の鉄帝、国内事情に、ヴァイスも嘆息を隠さない。
 弱肉強食自体は自然の常であり、ヴァイスも完全に否定はしないが、今のまま行けば最終的に国民は全員倒れてしまうと指摘する。
「全く、少しずつ問題を解決するしかないのかしらね、やっぱり」
 虚空を見つめ、ヴァイスは再び溜息をついた。
 話を聞いていたレイアにとっては、鉄帝が6つの派閥に分かれてから2度目の依頼。
 どうやら、初回の依頼はわからないまま棒立ちになってしまったらしく、自らの情けなさを実感していたらしい。
 しかし、派閥の参加について様々な意見が飛び交うローレット内の空気がギスギスしているのはいただけないとレイアは思い、気を取り直して依頼に臨む。
「ええ、今はやるべきことをやるだけですわ」
 結婚して人妻となったレイアは騎士の夫についてこの地へと赴いている。その地点でやるべきことは決まっていると彼女は腹をくくっていたのだ。
「それにしても、なんでこうノルダインっつーのはアホが多いんだったく」
「海だけに留まらず、船を失っても今度は山に来るとは……随分な野心だ」
「こういう乱暴は野心とは呼べねえな、ただの暴走だぜ」
 馬車を走らせつつ悪態を漏らすルナに、イズマ、『竜剣』シラス(p3p004421)が相槌を入れる。
「だが、略奪を許すわけにはいかないな」
「トラヴィス団の方々は、ひいては盗賊の方々は。奪うだけでは先がない、ということを理解できないのでしょうか……」
 続いて、イズマが一言断言すると、今度は『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)が疑問を口にする。
 確かに、ヴィーザル地方は人々が生きていくには厳しい地域だという。それでも、トラヴィス団がそれだけの勢力なら、もっと他にとれる手段はあっただろうにと涼花は語った。
「まあ、外様の戯言かもしれませんけれど……」
「ふむ、やはりこういう根っからの悪人という輩はどこにでもいるものだな」
 仲間達に合わせ、『Immortalizer』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)もこの時勢だからこそ表に出てきたのだろうと口を開く。
「強いとはいえ、上には上がいるというのを理解していないようだ」
 ただ、ローレットを始め、いくつかの派閥のように新皇帝の方針を是とせずに暴れる輩を止める者が現れる。
 そうした考えに及ばぬからこそ、こうなっているんだろうなぁとフレイは頭を振っていた。
 そこで、トラヴィス団のことは全く知らないとルナが前置きし、同じく状況から仕方なくノーザンキングスに与しているノルダインが知り合いにいると話す。
「あいつはアホだが、ノルダイン全体のイメージが落ちるのだけは避けてぇんだ」
 だからこそ、今回ばかりは少し真面目に仕事をするとルナは意気込む。
「――あぁ、これが怒りというのでしょうか」
 涼花は一人のクリエイターとして、牧畜など広義の「つくる」ことに携わる方への尊敬の念も抱く。
「口は悪くなりますが、ムカつくんですよ――!」
 それだけに、そうした人々を蔑ろにするような行為……今回のような略奪行為に苛立っていた。
 なお、このトラヴィス団と『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)は交戦したことがある。
「勅令での釈放からトラヴィス団の解放は予想できた」
 彼にとって、その依頼は召喚されて程なく、鈍った戦闘の腕を少しずつ慣らしていた時期だったという。
 あの後、領地を得た彼にとって、今回はリベンジ戦と捉えていて。
「……受けて立とうッ!」
 前方から攻め来る若者の一団を遮るべく、メンバー達はその進路場へと回り込んでいく。
「そろそろね」
 ヴァイスが仲間達へと告げると、前方から咆哮が聞こえてくる。
「さあ、奪え!」
「「おおおおおおおおお!!」」
 団長ノルヴィスの叫びに、団員は目の色変えて集落を襲撃しようと武器を抜く。
 そんな敵に備え、イズマは予め荷台に積んでいた食料樽セット(業務用)を地面へと設置していて。
「肉だけじゃない、食料ならここにたくさんあるぞ! 欲しいんだろう!?」
 スピーカーボムを使い、イズマは敵へと持ち寄った食料をアピールする。
「「ひゃっはあああああああ!!」」
 よだれを止められない団員達は刃を振りかざしてイレギュラーズへ飛びかかってきたのだった。


 人間種と海種の混合部隊であるトラヴィス団。
 ただでさえ混沌内にあっても厳しい環境である鉄帝国内だが、その中でも日々を過ごすだけでもことさら苦難を強いられるのがヴィーザルという場所だ。
 自分達の生活環境の向上を求め、ノーザンキングスが活動し、現状の鉄帝で自分達の権利を勝ち取ろうとするのは仕方のないことかもしれない。だが……。
「「奪え奪ええええ!!」」
 自分達の為に、他はどうなってもいいという考えの若者達を止めるべく、イレギュラーズは立ち回る。
 メンバー内でも群を抜いて素早く動くルナは敵団の動きを遮り、奇襲して弾丸をばら撒いて強制的に足を止めさせる。
 ただ、彼はそのまま立ち続けはせず、すぐさま跳躍した。
(そもそも、矢面に立つなりど真ん中にぶち込むのは俺の仕事じゃねぇからな)
 自身の仕事が遊撃だと自認するルナだ。
 矢面に立つのは仲間に任せ、彼はすぐさま団員が構えるマスケット銃や魔弾を警戒してその場から退避する。
 その場へとすぐさま駆け付けたのは、最強なる幻想で自らを加護したイズマだ。その後ろには彼が持ち寄った食料が並ぶ。
「村の家畜じゃなくて俺達から奪ってみろよ、食いたいならな!」
「「うおおおおおお!!」」
 国内を移動するにあたり、トラヴィス団は満足に飲み食いをしていなかったのだろう。
 そんな団員を先導する団長トラヴィス、副団長アレオレもイズマに注目してその排除をと襲い来る。
「アレオレ、いくぞ」
「ええ、まいります」
 海の暴風とも呼ばれるトラヴィスは2本のカットラスを空を切り、弧を描くように切りかかってくる。アレオレもマグロの海種らしく大量の水を操り、何もない陸上に波すら起こして波乗りしてくる。
 その攻撃は苛烈の一言。強敵と合わせて引付役を担おうとするイズマだが、思わぬ攻撃に少し顔を引きつらせてしまう。
 自身の力を存分に振るう集団の長へとオウェードが迫る。
「また会えたのう! トラヴィス殿!」
 どうやら相手も彼を覚えていたらしく、露骨に舌打ちする。
 相手の出方を戦略眼で見定めながら、オウェードは目の前の団員へと攻撃を集中させ、両手に握る片手斧で竜撃を思わせる攻めをみせた。
 数こそ劣るとも、イレギュラーズの技量は個々のトラヴィス団員とは比べるまでもない。
 密集するトラヴィス団団員に、シラスが混沌に漂う力を泥に変えた物を浴びせかけていく。
 立て続けに泥を発生させるシラスは相手の耐性を大きく低下させながらも、すぐさまその力を大きく充填させて次なる攻撃に備えていた。
「今回は敵の数も多いですからね」
 仲間達も手早く倒す為、存分に力を消耗させるはず。
 その支援の為、涼花は歌い、または曲を奏でる。
(心は熱く、頭は冷静に……)
 トラヴィス団に対して涼花はかなり憤っているが、どれだけ怒りを抱こうが、涼花には戦闘能力がないことに変わりはない。
「その分、わたしよりもずっとずっと強い皆さんが全力で叩けるように、誰も倒れることのないように……」
 涼花は直接の交戦を避け、仲間の支援に集中する。
 その想いを旋律に乗せ、涼花は仲間達の気力体力を回復させていく。
 レイアもまた仲間の回復に力を注ぐ。
 優先するのは、盾となって前線に立つイズマやオウェードの回復だ。
 ただでさえ強敵である団長格の相手をしていることに加え、レイア達の分まで数多くの団員の攻撃を引き付けているのだ。戦線が崩れれば、自分達の身だけでなく、集落まで危険に晒してしまう。
 戦いが始まって間もないうちは、自身の調和の力を賦活のそれに転じて振りまく。
 どれだけ仲間が傷ついているのかレイアは注視し、しばらくはその回復を続ける。
 併せて、相手の攻撃で仲間が態勢を崩し、あるいは出血しようものなら、レイアはすぐさま号令を発してその手当てを行い、万全に戦えるようサポートしていた。
 そんな回復役に支えられ、ヴァイスやフレイは立ち回る。
「一応、回復はできるけど、攻める方がよさそうね」
 ヴァイスは敵の撃破よりも、行動を封じることに重きを置いて攻撃する。
 彼女は攻撃の前に並列思考を展開することで様々な戦況を想定し、その中から最善手を選ぶ。
 味方が動きやすくなるよう、ヴァイスは直接儀礼用短剣で切りかかる。加えて、空間術式を展開して団員達の動きを止めていた。
 仲間達がそこに攻めかけることができれば、ヴァイスの思惑通りだ。
「いやはや、数は多いが……それほど強いとは思わないな」
 フレイがしばらく交戦して抱いたのは、トラヴィス団団員の力量のなさ。
 戦い慣れした相手だとは思うが、それでも烏合の衆といった印象を拭えぬフレイは自身やタンク役となる仲間を聖域で包み込む。
 その上で、黒き稲妻を発して団員数体を自身へと引き付ける。
 品なく欲を剥きだして切りかかってくる敵に、フレイは冷めた視線を投げかけて。
「自分より強いやつら相手に死線を潜り抜けてきたイレギュラーズの方が、強いし覚悟も据わってる」
 回復に動く仲間を庇う様に前に出たフレイは、障壁を展開してそれらの斬撃を食い止めてみせたのだった。


「「肉だ、食いものだあああ!」」
 叫び、勢いのままに攻めようとする団員に、シラスが呪いの歌を響かせることで、メンバーの攻撃をより効果的にする。
 散開しかけた敵をイズマが集め、オウェードが団長、副団長を食い止め続ける中、ヴァイスやシラスの攻撃によって団員の勢いを削いでいく。
「「うう…………」」
 銃弾、水弾を発する腕が上がらなくなってきていた団員達。
 聖域を展開するフレイがその弾丸を受け止めた直後自己修復する傍らで、ヴァイスやイズマが瞬かせる閃光が団員数体を纏めて倒していく。
 30人程いたトラヴィス団団員だったが、立っている数は見る見るうちに減っていく。
「戦場に音楽を、今できる最高の支援を!」
 敵の掃討に力を注ぐ仲間が更なる攻撃を全力で行えるよう、涼花は音楽を響かせる。
 力こそ全てと主張してはばからない鉄帝だ。
 そんな中で響く涼花の曲はこれ以上なくイレギュラーズの力を高め、さらに団員が光に包まれて倒れていった。
「チッ、イレギュラーズ……!」
 少なからず、トラヴィスは以前より強くなっていると自負していたはず。だが、イレギュラーズはそれ以上に力をつけていたことを認めざるを得ない。
「どうした? 腹を満たすどころか、口すらつけられていないぞ?」
 煽るイズマへ、うねる波に乗ったアレオレが奇襲を仕掛ける。
「ええ、遠慮なくいただきます」
 波を直接叩きつけ、水飛沫を浴びるイズマは一時的に水中行動で対処するが、決してダメージは小さくない。
 それでも、イズマが倒れずにすんでいたのは、回復支援を行うメンバーの支援が優れていたからだろう。
 レイアもまた歌を響かせるが、それは天使の歌。
 心地よいフレーズ、メロディがメンバー達へと活気を与え、戦意を奮い立たせるのだ。
 更なる波を起こそうとしたアレオレだが、ルナがその背後から奇襲する。
「……っ!」
 術式を紡いでいたアレオレが僅かに怯むと、すぐさまヴァイスが後方から逆に術式を撃ち込むと、シラスが一気に仕掛けて格闘魔術による連撃を叩き込む。
「ふん、マグロがシラスに勝てると思うなよ?」
 相手が仰け反る隙をつき、シラスは神秘的破壊力を集約させた拳を打ち込む。
「う、あ……」
 大きく目を見開き、アレオレは崩れ去った。
「アレオレ、クソ!」
 次々倒れる部下や相棒の姿に奮起したトラヴィスはカットラスを乱舞させてくるが、防御を固めたオウェードは淡々とそれらを受け止めて。
「トラヴィス殿、お前さんは強くなったと思うが……」
 全ての斬撃を凌いだオウェードは相手の攻撃の間隙を突き、片手斧でその腹部を切り裂く。
 それでも、歯を食いしばるトラヴィスが振り下ろすカットラスを、今度はフレイがルーンシールドで防いでみせた。
「な……」
 相手はもはやただ1人。
 回復の手を止めたレイアが前に出て、慈悲と無慈悲の一撃を打ち込む。
 続けて、後方からルナが飛びかかる。
「狩りっつーのは、力だけじゃねぇ。頭でやるもんだからな」
 ルナが相手の足を止めるべく狙撃すると、シラスが格闘魔術を間断なく浴びせかけていく。
「テメーには監獄も生ぬるい」
 これだけ劣勢にあってなお、トラヴィスの戦意が衰えてないことを悟り、シラスは手を抜くことなく魔力を纏わせた殴打で攻め立てる。
 そこに、防御から完全に攻撃へと転じたオウェードが仕掛ける。
「ワシもまた強くなっている事を忘れるなッ! これで決着を付けるッ!」
 オウェードが使うは鉄帝の武技。
 対城技とも称される猛撃に、トラヴィスがついに白目をむく。
「ガ、アァ……」
 負けを認めることのないまま、若者達の長は気を失ったのだった。


 トラヴィス団を掃討し、イレギュラーズはしっかりと全員を縛り付ける。
「今度は餓狼の所で収監させて貰う」
 オウェードは自ら倒したトラヴィスやアレオレに告げると、彼らもまた不服そうに顔を歪める。 
「屈辱じゃと思うが勢力を作るのは改めて大変じゃと分かったじゃろう……」
 ただ、オウェードとしては最初に彼らと戦ったことで今の自分がいると感謝の言葉を口にしていた。
「フン……」
 最後までそっぽを向いていたトラヴィス。
 そんな相手の様子をみながらも、オウェードは以前彼等と対した際に守った漁村が今回の事態で無事なのかどうかと気にかけていた。
 一方、団員達もまた揃って詰まらなさそうに鼻を鳴らし、舌打ちする。
「もう、他人に迷惑をかけすぎちゃいけないのよ? ……お仕置きね」
「新皇帝の意図はわかりませんが、人の迷惑になる行為はやめて頂きたいですね」
 ヴァイスが笑顔を浮かべつつきつく縛り付けると、レイアもまた略奪はご法度と団員達を厳しく叱責した。
 ふてくされる者も多かったが、なぜか頬を赤らめていた男性団員がちらほらいたのは気のせいだろうか。
「家畜を育て、肉にする前にまず乳などを余さず活かす……その知恵と根気を知らない者には奪わせるものか」
 食料を求めるにしても、品のない振る舞いだとイズマもまた彼等へと説教して。
「奪うのでなければ、ご馳走したかもしれないのにな?」
 イズマはそんな彼等を放置しつつ、集落の牧畜民らへと持ってきた食料樽を譲る。
「騒がしくして悪かったな。でも皆さんを守れて良かった」
 イレギュラーズが来なければ、クラヴァ地域は悲惨なことになっていたと謝意を伝える者も多い中、さらにイズマが気遣いを見せたことで涙すら零す者までいたようだ。
 そんな人々のアフターケアまで、イレギュラーズは街道や柵の補修まで万全に行う。
「この時勢だからこそ、強さに胡座をかかずに人を助ければ良いものを。どいつもこいつも私欲ばかりだな」
 フレイはこの事態に合わせて動き出した輩の動きに辟易としてしまう。
 政治をしなければ国とは言わない。新皇帝は政治を放棄しているのと同義とフレイは見なして。
「……なら、従う道理はない」
 まだ混乱の最中にある鉄帝国内にあって、逞しく日々を過ごす人々を背に、イレギュラーズは改めて鉄帝の争乱に向き合うのである。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは食料を使った敵の引き付けなど、戦闘での貢献度の高い貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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