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シナリオ詳細

<最後のプーロ・デセオ>月夜の奇襲 ~空より、そして海より~

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●高度三百メートルの夜空より
 深夜、フェデリア島近海。海面から高度三百メートルほどの上空に、十夜 縁(p3p000099)はいた。ミサゴの飛行種からなる海洋軍の輸送部隊、『オスプレイズ』に運ばれているのだ。
「シーガイアとアモンの爺さんを追ってインス島に乗り込むはずが、まさかフェデリア島に逆戻りたぁな」
 海洋軍艦シーガイアはその艦長アモンや乗組員らとともに、縁達の目の前で突如艦隊から離脱しインス島の方へと消えていた。それなのにシーガイアを追ったらフェデリア島近海に戻ることになったという事実に、縁としては苦笑いするしかない。
 だが、シーガイアがフェデリア島に姿を現したこと自体は、縁には理解出来る。
 折しも、ダガヌチの巫姫なる存在が大量のダガヌチや配下を連れ、フェデリア島に転移してきていた。狙いは、フェデリアの中心に眠るアーティファクトだ。ダガヌチの巫姫は、竜宮の『玉匣』と同等とされるこのアーティファクトを用いて、悪神ダガヌを復活させるつもりであるらしい。ダガヌが復活すれば、フェデリア島は崩壊し、大量の死者が出ると見られている。
 フェデリア島に出現したシーガイアは、その一環と言うことだろう。
「……それにしても、シーガイアに乗り込むのはいいんだが、もう少し違った手段はなかったもんかね」
 三百メートルほど下を眺めながら、縁はぼやくように独り言ちた。

●離脱の理由と、その後の動向
 時は、しばし遡る。
「シーガイアが艦隊を離脱した理由ですが、おそらくこれだと言うものが判明しました」
 海洋軍艦アンリミテッド・バイオレンスの甲板で、ローレットの情報屋『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)が言う。艦長ホオジロや副官ヒョウモン、そしてイレギュラーズ達の視線が勘蔵に集まった。
「その原因は、ダガヌの影響により発生した新型の肉腫、瘴緒(しょうのお)です」
 肉腫という単語に、イレギュラーズ達はざわめく。豊穣で幾度となく戦ってきた肉腫の、その新種とは!
「この肉腫――瘴緒は、感染した者が眠りに入るなどして意識を喪った際に、その身体を操ります」
 そして感染者は操られるままに、味方の情報を流出させたり、敵を拠点の中に招き入れたりなど、敵にとって有利になるように動く。その間の記憶は、感染者には残らない。
「元々シーガイア全体に瘴緒が蔓延していて、何らかの方法によって乗員が眠らされたために操られたものだと思われます」
 この勘蔵の推測は、当たっていた。シーガイアでの瘴緒の蔓延をアモンから知らされた濁悪海軍の幹部にして魔種、名原 月光(なばら つきみつ)は、アモンから海洋艦隊の情報を入手する一方で、紫色の中身が入ったビンをアモンに渡した。アモンらの手によって艦内に満遍なく置かれたビンにはタイマーのようにある時間が来ると自動的に壊れる仕掛けが施されており、ビンの中身は気体へと昇華してシーガイア中に充満し、吸った者達を眠らせた。そうなれば、瘴緒は乗組員を操ることで、シーガイアを自在に動かせる。
「なるほどな……それなら、あのデタラメな速度も納得出来る」
 勘蔵の説明に、ホオジロは得心がいったように頷いた。シーガイアは艦隊から離脱する際に、他の艦以上の速度を長時間出し続けている。推力を漕ぎ手に依拠するガレー船である以上、通常航行よりも速い速度を延々と出し続けるのは無理であり、事実アンリミテッド・バイオレンスやその他の随伴艦はシーガイアを追おうとして漕ぎ手が限界に至った。だが、瘴緒が憑いているとなれば、疲労や限界など超えて漕ぎ手の身体が操られていたとしても、おかしい話ではない。
「ともかく、インス島に乗り込んでシーガイアを――」
 ホオジロがそう言いかけた時、飛行種の伝令が甲板へと降りてきた。
「シーガイアが、フェデリア島方面で確認されました!」
「何だとぉ!?」
「――あのスピードを維持できるとなれば、私達を迂回してフェデリア島方面にいるとしてもおかしくはありませんね」
 伝令の報せに、ホオジロは驚愕し、その副官ヒョウモンは冷静に状況を分析した。
「問題は、私達ではシーガイアに追いつけないことですが……」
「くそっ!!」
 シーガイア奪還は叶わぬのか、とホオジロは地団駄を踏んで悔しがる。沈んだ空気が場を包むが、それは勘蔵によって破られた。
「……この艦では確かに追いつけないでしょうが、この艦に拘らなければ追いつく手段はあります」
「そいつは何だ!? 教えてくれ!」
「落ち着いて下さい、艦長。それでは、勘蔵さんも話せませんよ――で、その手段とは?」
 黙りこくって思案に耽っていた勘蔵が口を開くと、ホオジロは勘蔵の両肩をガッシと掴んでガクガクと前後に激しく揺さぶる。ヒョウモンはホオジロを宥めつつ、勘蔵に続きを促した。
「オスプレイズ、ですよ。確か今は、フェデリア島にいると聞いています」
 オスプレイズによる空輸ならば、シーガイアに追いつくどころか先回りも余裕と思われた。それどころか、シーガイアがフェデリア島に至るまでに二往復ぐらいは可能であろう。
 勘蔵とホオジロ、ヒョウモンが手早く打ち合わせをした結果、まず第一陣としてホオジロをフェデリア島へ、ヒョウモンとアンリミテッド・バイオレンスの戦闘要員をフェデリア島近海へと空輸。そして、第二陣としてイレギュラーズ達が空輸されることになった。

●放たれし満月斬
「ハハハ……素晴らしいな。まさに、ダガヌ様々よ」
 シーガイアの甲板で、月光は満足そうに笑い声をあげていた。濁悪海軍全体を見ても他にあるかどうかと言う巨艦を入手出来たのだから、月光としては瘴緒とそれをもたらしたダガヌには感謝しかない。しかも、これだけの巨体であるにもにかかわらず、ガレー船にはあり得ない航行速度でフェデリア島へと向かっているのだ。自身の旗艦に相応しいと、月光が満悦するのも無理はなかった。
「お頭。零時方向に、灯(ひ)を灯している軍艦がありやす」
「ふむ……見たところ、海洋あたりのものか? だが、こんな真夜中に灯を灯しているとは、的にしてくれと言っているようなものではないか。
 ――ならば、遠慮無く沈めてやるとしよう。月も出ていることだしな」
 見張りが正面にいる軍艦を発見して月光に伝えると、月光はその不用心を嘲った。周囲の濁悪海軍らも、月光に乗じてゲラゲラと嘲笑の笑い声を上げる。
 月光は背中に生えている光の翼を羽ばたかせて、シーガイアの舳先へと飛んだ。そして舳先に降り立つと、大上段に月光剣を構えた。その刃が、名前の通り月光を宿したように光り輝いていく。
 大上段に構えた月光剣の剣先が大きな円を描くように動いていくと、煌めく刃によって月光の前に満月の如き光の円が出現した。そして月光が中段に構えてその剣先を軍艦の方に向けると、極太の光の奔流が光の円から迸る。
 軍艦へと真っ直ぐ突き進んでいった光の奔流は、軍艦を光で覆い尽くし、跡形もなく消滅させた。やんややんやと、周囲の濁悪海軍らは月光に喝采を浴びせる。不用意な海洋軍艦を沈めたことで、月光ら濁悪海軍は慢心の最中にあった。

「……やべえな、ありゃ」
 沈んだ軍艦から距離を取って海中に潜んでいたホオジロは、ゴクリと唾を飲み込んだ。自身が艦長であるアンリミテッド・バイオレンスとても、同じ攻撃を受ければたまらず消滅していたことだろう。そして、もしこの技を繰り出す月光がフェデリア島に上陸しようものなら、どれ程の被害を出したものか知れなかった。
「ですが、策は成りましたね」
 一方、ヒョウモンは軍艦が消滅したのは釈迦の掌の上と言わんばかりに、ホオジロに語りかける。ヒョウモンの言う策とは、月光ら濁悪海軍の注意を軍艦に引き付けている間に、オスプレイズによる上空からの急降下でイレギュラーズが急襲し、さらにその戦闘の隙を衝いてホオジロらがシーガイアに乗り込み乗組員の救出に当たる、と言う段取りだ。
 言わば、月光に消滅させられた軍艦は、囮であった。もっとも、この艦はいくら老朽化が進んでいるとは言え本来はホオジロが好き勝手に出来る艦ではなかったが、それでも漕ぎ手共々調達に成功したのは、ホオジロが評判通りの危険人物ぶりを遺憾なく発揮したからであった。なお、漕ぎ手達は月光らが軍艦を発見する前に脱出して退避している。
「おう、そうだな。あの魔種は如何にかイレギュラーズに止めてもらうとして、俺達は隙を見てアモンのジジイ達を救出するぞ」
 ホオジロはヒョウモンに頷きながら、アンリミテッド・バイオレンスの戦闘要員らとともに静かにその機が到来するのを待った。

 月光が囮の軍艦を沈める様子は、上空の縁達イレギュラーズからも見えていた。
「オイオイ……あの時は全力じゃなかったってのかよ」
 その光景に、思わず縁はボソリとつぶやいた。シーガイアが艦隊から離脱した際に、縁は月光と刃を交えている。だが、今の技といい、背中に生えた翼といい、当時にはなかったヒリヒリとひりつくような得体の知れない感覚といい、今の月光は明らかにその時の月光とは違うと縁は感じていた。実際、夜間であり月の出ている今こそ、月光の持つ月光剣がその能力を余すことなく発揮出来る時間なのだ。
 さらに言えば、瘴緒に操られているアモンやシーガイアの乗組員達もイレギュラーズ達を阻むべく参戦してくると想定されている。これもまた厄介であり、月光自体が以前と違うこともあって一筋縄ではいきそうにない。
 縁がそう思案している間にも、オスプレイズのリーダーが片翼の先端を海面へと向ける。降下開始、の合図だ。
 ――時速六十キロを超える速度での、三百メートルの急降下が始まった。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は、十夜 縁さんのアフターアクションを取り入れまして、全体依頼<最後のプーロ・デセオ>のシナリオをお送りします。
 皆さんには今回、副題の「~空から、そして海から~」のうち、空からの奇襲を担当して頂きます。上空三百メートルからの急降下によってシーガイアの甲板に降り立ち、濁悪海軍の幹部にして魔種である名原 月光を撃破し、『<デジールの呼び声>インス島近海海戦』後に鹵獲されたシーガイアと虜にされているアモンをはじめとした乗組員達を救出して下さい。
 
●成功条件
 名原 月光の撃破
 シーガイア奪還&艦長アモン並びに乗組員達の救出

●失敗条件
 シーガイアの撃沈
 アモンの死亡

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 記述されている情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 フェデリア島近海。時間は深夜、天候は晴天、波は凪。
 水上や水中での行動については、それを可能にする装備が貸し出されているため、特にペナルティーなく行うことが出来ます。
 自前で水上行動、水中行動を可能にするスキル・装備を用意している場合、有利に判定されます。
 また、これは暗視についても同様となります。

●初期配置など
 戦闘前のイレギュラーズ達は、シーガイアのおよそ300メートル上空からオスプレイズに運ばれて急降下中です。
 そしてシーガイアの甲板に降り立ったところから、イレギュラーズ達の1ターン目の行動はスタートします。
 なお、通常の場合戦闘の行動順は反応を基準として決定されますが、この1ターン目に限り事前に降下順を調整したものとして、好きな順番で行動することが出来ます。1ターン目に反応を無視した順番で行動したい場合、何番目に行動するかプレイングに明記をお願いします(明記が無い場合、あるいは指定する行動順が被った場合、こちらの判断で順番を決定します)。

 月光ら濁悪海軍は囮の軍艦に気を取られて上空には意識が向いていないため、1ターン目は奇襲されたものとして行動不能となります。

 また今回、シーガイア甲板上での乱戦が想定される上、そこにアモンやシーガイア乗組員が参戦してくる関係上、範囲攻撃における【識別】【不殺】の有無については普段以上に厳密にチェックします。ご注意下さい。


【敵】
●名原 月光
 濁悪海軍の幹部の一人で、魔種です。属性は傲慢。
 『<デジールの呼び声>インス島近海海戦』にてアモンら乗組員ごと鹵獲した海洋軍艦シーガイアを、フェデリア島攻撃に用いてきました。
 能力傾向はいわゆるハイバランスです。なお、時間が夜でしかも月が出ているため、月光剣の能力がフルに発揮されます。そのため、『<デジールの呼び声>インス島近海海戦』の時よりも能力、スキルが一段と強力になっています。

・攻撃能力など
 月光剣 物至単 【邪道】【弱点】【変幻】【出血】【流血】【失血】
  月の光を宿しているとされる刀です。
 偃月斬 神/近~超/単or範 【識別】【多重影※】【変幻】【必殺】【防無】【出血】【流血】【失血】【滂沱※】
  剣閃によって、三日月状の光の刃をいくつも飛ばします。
  光の刃はホーミングして敵を追尾するため、【変幻】の値は他の攻撃よりも大きくなっています。
  対象を単体とした時の方がダメージが大きく、また【多重影】【滂沱】もこの時に限り適用されます。
 月光翼 神特特 【移】【識別】【変幻】【必殺】【防無】【出血】【流血】【失血】【滂沱】
  月光剣の力によって、月光の背中に生えている大きな光の翼です。これによって、今回の月光は飛行が可能となっています。
  直線距離にして40メートル以内の範囲で、月光が戦場を自由自在に動きます。その際に翼ですれ違い様に斬りつけたり、翼を叩き付けたりして攻撃します。効果範囲は月光が動く軌道を中心として、その左右5メートル以内です。
  また、この翼は盾としても機能するため、月光の防御技術はその分高くなっています。
 満月斬
  OPで囮の軍艦を撃沈した技です。対人と言うよりは対艦・対拠点用の技であり、シーガイア甲板にいるイレギュラーズに対して使用すると味方ごとシーガイアを海の藻屑にしてしまうことと、エネルギーのチャージに時間を要することから、この戦闘で用いられることは基本的にありません。
 BS緩和
 【怒り】耐性
 飛行
 
●濁悪海軍 ✕50
 海賊集団海乱鬼衆の中でも、特に凶悪さ、凶暴さ、残忍さで群を抜いている巨大勢力、その一部です。
 能力傾向として特筆すべきは、攻撃力にやや偏重しているくらいでしょうか。防御については、軽装であるため回避>防御技術となっています。
 なお、イレギュラーズ達の攻撃に対しては、可能であればシーガイアの乗組員達を盾にして回避しようとします。

・攻撃能力など
 刀 物至単 【出血】【流血】【毒】【猛毒】

●シーガイア&艦長アモン&乗組員
 シーガイアは海洋軍の大型艦で、堅牢さに定評がある艦です。
 『<デジールの呼び声>インス島近海海戦』にて、艦長アモンやその他の乗組員達と共に、味方を置き去りにしてインス島へと消えていきました。
 その後、月光によってフェデリア島攻撃の拠点として用いられています。
 アモンはじめ乗組員は全員後述する瘴緒に感染しており、瘴緒から解放するには戦闘不能にする必要がありますが、【不殺】のない攻撃で戦闘不能にした場合それなりに高い確率で死亡する可能性があります。

・アモン ✕1
 アンモナイトの海種の老騎士で、シーガイアの艦長です。
 攻撃はせず、毎ターン必ず月光を庇います(庇えなくなった場合は、邪魔者を排除しようと攻撃するかも知れません)。魔種やイレギュラーズほどではないとは言え、生命力、防御技術、特殊抵抗は高い水準にあります。
 瘴緒に操られているためか、【怒り】については無効です。

・シーガイア乗組員 ✕多数
 能力は濁悪海軍よりも落ちます。
 手にした刀でイレギュラーズ達を攻撃しようとしてくる他、手近な濁悪海軍の盾となるように動いたりもします。
 アモンと同じく瘴緒に操られているためか、【怒り】については無効です。

●瘴緒(しょうのお・デヴシルメ)
 悪神ダガヌの影響により発生した、新種の肉腫です。
 寝ている時など宿主の意識がない間に宿主の身体を操り、敵の有利になるように動かします。『<デジールの呼び声>インス島近海海戦』にてシーガイアが艦隊から離脱したのは、瘴緒の蔓延を知った月光が吸った者を眠らせる気体の入ったビンをシーガイアの各所に置かせて、アモンや乗組員らを一斉に眠らせて瘴緒に操らせたためです(ついでに言うと、漕ぎ手が疲労関係なく櫂を漕げたのも、操られている故に疲労を感じることがなかったからです)。
 操られている間の記憶は、宿主には残りません。
 なお、宿主が戦闘不能になると瘴緒は簡単に力尽きます。


【友軍】
●ホオジロ&ヒョウモン&アンリミテッド・バイオレンス戦闘要員(20名)
 副題の「~空から、そして海から~」のうち、海からの奇襲担当です。
 ホオジロはホオジロザメの海種で、海洋軍艦アンリミテッド・バイオレンスの艦長です。ヒョウモンはヒョウモンダコの海種で、ホオジロの副官です。この2人は共に攻撃性が高く、海洋軍の中では危険人物として知られています。ですが、『大号令』以降、時にはイレギュラーズ達の手を借りながら様々な作戦を成功させています。魔種相手はさすがに厳しいですが、濁悪海軍程度なら余裕で対処可能です。
 また、アンリミテッド・バイオレンスの戦闘要員達はホオジロやヒョウモンの薫陶(?)あってか、1:1では濁悪海軍にやや劣るとは言えそれなりに高い実力を有します。
 彼らは戦闘開始時には海中に潜んでおり、頃合いを見計らってシーガイアに乗り込み、アモンをはじめとするシーガイアの乗組員や漕ぎ手達を救出しようとします。

●オスプレイズ
 海洋軍に所属する、ミサゴの飛行種からなる輸送部隊です。運搬性能持ちで、これまで何度もイレギュラーズ達を戦場へ送り届けたり、空中戦の助けとなったりしてきました。
 今回、上空300メートルからシーガイアの甲板まで急降下し、皆さんをシーガイアの甲板に送り届けます。その後は、速やかに戦場から離脱します。
 なお、暗視ゴーグルを装備しているため、夜間でも問題なく飛行可能です。
 ちなみに、オスプレイズに頼らず自力でシーガイアの甲板に降りても構いませんが、その際には彼らと足並みを揃える必要があるため、機動力7以上が必要になります。


●特殊ルール『竜宮の波紋・応急』
 この海域ではマール・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

●サポート参加について
 今回、サポート参加を可としています。
 シナリオ趣旨・公序良俗等に合致するサポート参加者のみが描写対象となります。
 極力の描写を努めますが、条件を満たしている場合でも、サポート参加者が非常に多人数になった場合、描写対象から除外される場合があります。

●関連シナリオ(経緯を詳しく知りたい方向けです。基本的に読む必要はありません)
 『 <デジールの呼び声>インス島近海海戦』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8430


 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <最後のプーロ・デセオ>月夜の奇襲 ~空より、そして海より~Lv:40以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年11月03日 22時30分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC4人)参加者一覧(10人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
ガイアドニス(p3p010327)
小さな命に大きな愛

リプレイ

●上空三百メートルより
 十を超える影が、闇に包まれた高度三百メートルの空を進んでいく。海洋軍艦シーガイア奪還の依頼を受けたイレギュラーズ達と、彼らを運ぶ海洋の輸送部隊『オスプレイズ』だ。
(ひとまず、アモンの爺さんらが裏切ったわけじゃねぇってのはわかったな。
 ……ま、かと言って厄介な状況になっちまってることに変わりはねぇんだが、流石にこれ以上奴さんを調子に乗らせるのも面白くねぇ訳で)
 突然、艦隊から離脱したシーガイアを目撃した『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は、それが新種の肉腫『瘴緒』によるものだと聞かされ、艦長アモンらが裏切ったわけではないとは理解した。とは言え、縁の思うとおり、アモンら本来のシーガイアの乗組員は瘴緒に操られるままに、縁達の前に立ちはだかるのが予想され、状況としては厄介ではある。
 だが、シーガイア離脱を仕組んで鹵獲した魔種、名原 月光にこれ以上好きにされるのは業腹でしかない。
(ホオジロの旦那ほどじゃねぇが、俺もそこそこ獰猛な自覚はあるんでね)
 海洋軍の危険人物とまでは行かずとも、縁とて元ギャングである。いい加減月光に痛い目に遭わせてやろうと、縁は睨むような目つきで三百メートル下のシーガイアを見下ろした。
(船ごととられてるって、また大変な状況ですねぇ……)
 『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)が、現状に対して内心で嘆息する。だが、この事態を放置しておくわけにはいかない。ベークとしては、どれ程の事が出来るかは不明であるものの、依頼を達成するために可能な限りの事はする心積もりでいる。
 もっとも、海中ならともかく集団戦の中でベークがどれだけ役に立てるかは未知数であり、そこに不安はあった。
(新種の肉腫ってやつ、また厄介な性質だねアレ……助けられるだけマシだけど)
 瘴緒と、それに憑かれたアモンらシーガイアの乗組員のことを考えた『ヤドリギの矢』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は、苦虫を噛み潰したような表情になった。
 正直なところ、瘴緒に操られるままに立ちはだかってくるシーガイアの乗組員達を攻撃するのは、気が引ける。だが、ここで止まっていては、誰も助ける事は出来ない。――故に。
(覚悟を決めて前に進むよ、俺は。これ以上の犠牲が出ることは、失敗することは許されないんだ。
 ……月光を倒して、船を取り戻す!)
 ぎゅう、とミヅハは愛用の弓を固く握りしめる。その固さは、ミヅハの覚悟の固さを示すようでもあった。
(オスプレイズ……なんか親近感というか、飛行種が活躍すると嬉しくなるね。
 それは置いておいて――サポートに入っていた前の戦いで一度撃退はできたから、倒してシーガイアやそこのヒトたちを返してもらうよ!)
 オスプレイズには頼らず自力で飛行している『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は、ぐるりと周囲を見回した。鷹とミサゴの違いはあるが、同じ飛行種が作戦の要として貢献している姿は、アクセルにとって嬉しく、誇らしい。
 そしてアクセルは、海面の方に意識を移した。シーガイアが離脱した際の戦闘に、アクセルは応援として加わっている。その時、イレギュラーズ達は狂王種と挟撃されていると言う状況にもかかわらず、月光に傷を負わせて撃退した。だから今回も勝てるはずだし、勝ってシーガイアや乗組員達を奪還すると意気込んだ。

 シーガイアの甲板で、月光が背中に光の翼を生やした。そして月光は舳先の方へと移動すると、光の柱をフェデリア島の方へと向けて放つ。その先には灯を灯している囮の海洋軍艦があったが、光の柱に呑まれて瞬く間に消滅した。
(あの威力……それだけの実力があって、最高のパフォーマンスで戦える状態下にあるという証明としては充分だね。
 それでもシーガイアの乗組員たちをさも人質に取るかのように扱うなんて、余程こちらを翻弄して嘲笑いたいのか……それともイレギュラーズが怖いのかな?)
 『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は、その威力に反射的にゴクリと唾を呑んだ。しかし、それでも本来の乗組員が人質のようにシーガイアに乗せられていることを、雲雀は訝しむ。だが。
「――どちらにせよ、乱戦の弾除け代わりに使おうなんて真似をこちらが許すワケがないのだけどね」
「そうだね。無味乾燥に、ただの報告書にしてあげよう」
 雲雀の言に、『あなたの世界』八田 悠(p3p000687)が応じた。
 人質がいて、魔種は絶好調らしいと、状況はいいとは言えない。だが、雲雀にしても悠にしても、負けるつもりも人質となっている本来の乗組員達を見殺しにするつもりもない。
 後にこの件が物語になるならば、人質を救出し、魔を打倒するカタルシスを以て語られるところだろう。だが、そんなものは物語にあればいいのであって、今はただ依頼を達成するまでだ。
 二人がそんな会話を交わしている間にも、オスプレイズのリーダーが翼の先で海面を指し示した。降下開始、の合図だ。縁を運んでいるリーダーを皮切りに、オスプレイズ達は急降下を開始した。
「ひゃああああ、落ちる、おっちるー! ちょっと楽しく……なるかー!」
 時速六十キロを超える、三百メートルの急降下。その最中、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は恐怖を覚えて叫んだ。同じ時速六十キロオーバーでも、水平飛行と急降下とでは感じる恐怖は段違いとなる。急降下を怖がるのではなく楽しもうとしようとしたアリアだったが、到底無理だと再度叫ぶ。
 急降下の時間は三十秒ほどだったが、アリアがそれをより速く感じたかより遅く感じたかは、不明である。

●我ら奇襲に成功せり
 海洋軍艦を囮に使った、イレギュラーズ達の奇襲は、成った。濁悪海軍らの注意は囮の海洋軍艦に奪われていた上、その海洋軍艦が月光の満月斬によって消滅したことから、月光ら濁悪海軍は慢心の最中にあった。故に、上空三百メートルから急襲するイレギュラーズに気付くことはなく、容易く奇襲を許した。
「よう、随分と元気だねぇ。腹の傷はもう塞がったのかい?」
「ぐっ!?」
「がっ!?」
 シーガイアの甲板の前方に降り立った縁は、不敵な笑みを浮かべながら月光に語りかけつつ、家伝の秘術を以て自身の周囲の気の流れを止めにかかる。荒れる海を凪へと静めるが如きその術に、警戒など皆無であった濁悪海軍らが抵抗できるはずもなく、縁の周囲の濁悪海軍らの動きは海面が凪いだように止まった。
(貴方を、月光の盾にさせるワケにはいかないからね)
 次いで雲雀が、アモンを中心にしてその周囲を破邪の聖光で照らし出す。アモンやその周囲にいる者達は、避けることさえままならないまま、邪悪を灼く聖光にその身を灼かれていった。そしてすぐさま、雲雀は気配を消してその場から動き、乱戦の中に身を隠す。
(ふふ、奇襲もばっちりなおねーさんなのでっす!)
 三メートル近い体躯を持つ『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)が、シーガイアの甲板に降り立った。ガイアドニスが想像したとおり、突如空から降ってきたように見える倍近い体躯の女性に、濁悪海軍はただ驚愕するしか出来ない。
(無敵鉄壁おねーさんが、お相手するのだわ!)
 すかさず、ガイアドニスは内に滾らせた戦いの鼓動を、周囲に向けて衝撃波の如く解き放つ。奇襲され、驚愕に陥っている濁悪海軍に、ガイアドニスから放たれた戦意に耐える精神的な余力は無く、その戦意を浴びた者は残らずガイアドニスに敵意を向けた。
(月光は後! まずは、アモン艦長やシーガイアの乗組員を助けないとね)
 オスプレイズと呼吸を合わせつつ自力でシーガイア甲板まで降り立ったアクセルが、雲雀に重ねるようにしてアモンの周囲を破邪の聖光で照らしていく。アモンと濁悪海軍は聖光に灼かれてもまだ余力を残していたが、瘴緒に憑かれたシーガイア乗組員は力尽きてバタバタと倒れ伏した。宿主が倒れたことにより瘴緒も力尽き、シーガイア乗組員達は瘴緒から解放される。
「イイ気になってるところ悪いが、まずは挨拶代わりだ!」
「ぐふっ!?」
 月光の前に降り立ったミヅハは、六度の零距離射撃を月光に仕掛けた。目にも留まらぬ早業で次々と矢を番えては撃ち、月光の腹部を六本の矢で貫いていく。月光は口から血を吐いた――が、魔種である月光の生命力はまだまだ旺盛である。もっとも、ミヅハにしても魔種がこの程度で倒れるとは思っていない。故に、「挨拶代わり」なのだ。
「さて、僕の相手をしてもらいますよ」
 ベークは、食欲を掻き立てるような甘く香ばしい、焼き菓子のような香りを自身の周囲に漂わせる。その香りを嗅いだ濁悪海軍らは、わけもわからないままに反射的にベークの方を向いた。ベークとしては、後はこの香りに誘き寄せられてきた濁悪海軍らの攻撃に耐えるだけだ。そうしていれば、仲間達が倒してくれる。
「ン。囮作戦 オ見事。今度ハ フリック達 応エル番」
 海洋軍艦を囮に使った、上空からの奇襲作戦は成功したと言える。『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)は作戦を称賛しつつ、これから始まる戦いに備えんとした。最終的な作戦の成否は、フリークライ達イレギュラーズの活躍にかかっているのだ。
「心 無視 操ル。フリック 許サナイ。シーガイア ミンナ 心身共ニ 返シテモラウ」
 そうは言っても、フリークライ自身は攻撃能力を全く持ち合わせていない。だが、ヒーラーとして仲間達を癒やし支えることは出来る。
 陽光がフリークライに降り注ぎ、暖かな風がフリークライを包む。慈愛の風光を纏ったフリークライの施す癒やしは、常よりも効果の高いものとなった。この差が、後に戦線を支えるのに大きく響いてくることになる。
(月夜の決戦なんて、絵になるシチュエーションだよねえ。
 夜討、天誅。月の光をも覆う闇夜の仕事人として、役を振らせてもらおうか)
 悠は、より多くの味方に支援を及ぼせる位置に降り立つと、周囲の味方に『闇夜の仕事人』の役を振り、それに相応しい力を与えた。
(月光が出てると強くなるとは面妖な……でも今回のレーさんは、サポート森アザラシっきゅ!
 厄介なのは置いといてー、本命さん達が強敵と戦いやすいようサポートっきゅ!)
 『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)は、出来る限り多くの濁悪海軍らとシーガイア乗組員を巻き込むようにして、闇夜の中に包み込んだ。かつて幼い頃のレーゲンに孤独感を感じさせた闇夜は、敵だけを包み込んで戦う力を奪っていく。濁悪海軍らは辛うじて耐えたものの、シーガイアの乗組員達は耐えられずに倒れ、瘴緒から解放された。
(月光とやらがリーダーの濁悪海軍が敵で、アモンとやらがリーダーのシーガイア艦組は操られてるだけなんだよな?)
 情報の多さに困惑しつつも、『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)はレーゲンが昏倒させたシーガイア乗組員の一人に駆け寄ると、可能な限り気配を殺して甲板の縁の方へと駆け寄っていく。そこには、『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)が待っていた。
(死別するってのは……置いてく方も置いていかれる方も、とっても苦しい事なんだ)
 それは、家族であれ同僚であれ、その程度に差異はあれども変わりない。だから、ウェールは「お節介」としてアモンやシーガイア乗組員の救出に名乗りを上げた。
 ランドウェラから昏倒したシーガイア乗組員を受け取ったウェールは、甲板から海面へとゆっくり降下すると、シーガイア乗組員を海面に横たえる。後はひたすら、ランドウェラと共に昏倒したシーガイア乗組員を戦場となっている甲板から退避させていくだけだ。
「はじめまして、そして倒れてね!」
 アリアはじっくりと戦況を見定めると、シーガイア乗組員が多く集まっている場所を狙い破邪の聖光を放つ。濁悪海軍らは聖光に灼かれつつも耐えたが、シーガイア乗組員は聖光に耐えきれずに次々と倒れ、瘴緒から解放された。
(――もう一回!)
 さらにアリアは、携行品を費やしてその効果でもう一度、まだ倒れていないシーガイア乗組員が多い辺りを狙って破邪の聖光を放つ。先程と同様に、聖光に灼かれた濁悪海軍らは耐えたものの、シーガイア乗組員は残らず昏倒。
(瘴緒に囚われた人達を助けるために、私に出来る全力を――!)
 シーガイアの甲板に、『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)の歌声が響く。涼花の歌はスキルの発言であり、その歌声を聞いたイレギュラーズ達の心には、如何なる困難にも耐えられそうな勇気が沸々と湧き起こってきた。
(……月が出てるだけで勝った気になってるってのも、まぁまぁ随分威勢の良いことで。
 まぁどうせ、人質を盾にしてイキってるつもりなんでしょーがね。
 囮に引っ掛かって、奇襲の猶予与えちまってる辺りもなんとも言えねぇが。)
 飛空探査艇に搭乗しているため、オスプレイズからはわずかに遅れることになった『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)も、シーガイアの甲板付近まで降りてきた。
「――雨空ってのは、月夜すらも覆い隠すもんなんだよ。それを教えてやるよ」
 降りしきる雨の帳を纏いつつ、カイトは混沌に揺蕩う根源的な力を穢れた泥に変える。そして、月光やその周辺にいる濁悪海軍らの運命を、その泥によって黒く塗り替えた。直接何かされたようには見えないものの、運命を塗り替えられたことにより濁悪海軍らの生命力は確かに翳った。ゾクリとするような寒気や、あるいは吐き気を覚えた者も少なくない。さらには、その圧力が月光をはじめ濁悪海軍らの行動を封じている。
 さらにカイトは、携行品の力によって強引に同じ攻撃を対象を変えて繰り返し続ける。甲板の濁悪海軍らは一人残らず穢れた泥に運命を黒く塗り替えられただけでなく、その圧力によって行動を阻害され、反撃の機会を失った。

●月光の最期
 初手でイレギュラーズの奇襲を許したことにより、月光ら濁悪海軍は盾となるはずのシーガイア乗組員を多数失い、また少なからぬ戦力が倒れたり傷を負ったりした。月光は戦況を立て直そうとするが、最初の奇襲の時点で趨勢は大きくイレギュラーズ達の側に傾いており、挽回は不可能だった。
 何より大きいのは、カイトの攻撃の圧によって月光の行動が阻害され続けたことだ。その間に、ホオジロらアンリミテッド・バイオレンスの戦闘要員達がシーガイアに乗り込み、船内の漕ぎ手達を昏倒させて瘴緒から救出していく。
 漕ぎ手達が残らず救出された頃には、堅牢だったアモンも倒れ、甲板にはシーガイアの乗組員も、濁悪海軍も一人残らず戦闘不能になっていた。
 残る月光は、何度かカイトからの攻撃の圧に耐えた。その際にはイレギュラーズ達の間を縦横無尽に飛び回り、すれ違い様に背中の光の翼で斬りつけている。だが、運良く行動できた際に、出来たかどうかは別として逃亡を試みるのではなく、イレギュラーズ達への攻撃に拘ったのが、最後に月光の運命を決めた。

「もう、限界だよね? そろそろ、決めるよ」
 ニョアの細剣の剣先に神秘力を可能な限り集約したアリアが、月光の腹部を突いた。既に無数の傷を負って血だらけの月光の身体を、ニョアの細剣が易々と貫いていく。アリアの見立てたとおり、月光の魔種相応に潤沢な生命力は、もうすぐ尽きようとしていた。
「月光と名乗るなら、夜明けには是非とも掻き消えてもらおうか」
 もっとも、悠は夜明けまで月光を生き存えさせるつもりはない。悠の発した炎の欠片は、花吹雪が如く月光の周辺を舞い、その身体を炎で包んだ。じゅう、と血と肉の焼ける匂いが、周囲に漂っていく。
「ベーク、オイラに合わせてよ」
「わかりました。任せて下さい」
 アクセルはベークに連携を求めると、アリアが細剣で穿った傷を目掛けて魔力の砲弾を放つ。砲弾によって大きく開かれた傷を目掛けて、ベークが猛烈な体当たりを仕掛けた。
「がはっ!」
 魔力の砲弾によって傷を拡げられたところに体当たりを受けて、月光は口から大量の血を吐いた。
(死にかけの自棄っぱちであの厄介な満月斬ってのを撃ってこないとも限らないからな。
 最後の最後で大失敗なんて後味最悪だし、使って来る前に全力で止めるぜ! チャージなどさせるものか!)
 ミヅハは、死に体になったからこそ、月光が完全では無いにしても満月斬を使ってくるのではないかと警戒していた。満月斬は囮の海洋軍艦を瞬時に消滅させているだけに、例え十分な威力が出せなかったとしても、使われてしまえばシーガイアとて危ない。
 となれば、可能な限り速やかに撃破する必要があると、ベークの体当たりの後にすかさず畳みかけるべくミヅハは動いた。
「散り際の置き土産なんてお断りだぜ! 『ジャックポットは一度だけ』──一度で十分! これで最後だ月光!」
 ミヅハは月光に接近すると、弓の零距離射撃で月光の心臓を二度、撃ち抜いた。ゴボォ、と先程にも増して月光は大量の血を吐く。誰の目にも、終わった――かのように見えた。
 だが、惜しくもミヅハの矢は、心臓は射貫いていても月光の命まではまだ届いていない。しかし月光には満月斬を使うだけの力は無く、用いてきたのは背に生やした光の翼だった。
(フリック ミヅハ ヤラセナイ)
 ミヅハは「ジャックポットは一度だけ」によって月光に大ダメージを与えたものの、逆に攻撃を受ければ大ダメージを被る状態になっている。既に深手を負っている上にこの状態で光の翼を受ければ、間違いなく可能性の力を費やすだろう。そうはさせまいと、己の身体を盾にして光の翼を受け止めた。
「月は太陽がないと輝けない、とも言うけれど。
 お前もそれと大して変わらねぇんだよ。十全な場作りで話が崩される程度の傲慢はただの慢心。
 だから――その勘違いした『月』ごと、覆い隠してやる」
 何度目になるだろうか。カイトは、穢れた泥によって月光の運命を黒く塗り替えていく。風前の灯火であった月光の運命は、完全に穢れた泥によって、黒く塗り潰された。最早、月光の運命が輝くことはない。
「纏わり付け、熱砂の嵐――」
「おねーさんのパンチ、受けてみるのでっす!」
 雲雀は、ラサの砂漠を想起させる熱砂の嵐を吹かせて、月光に纏わり付かせた。身体を覆い付くさんとする熱砂に動きを鈍らされた月光の鳩尾に、ガイアドニスが目にも留まらぬ速さで拳を叩き込む。常人よりも巨大な体躯から放たれる神速の拳に、月光は身体をくの字に曲げて悶えた。だが、それもほんのわずかな時間に過ぎない。
「そら、大当たりだ――お前さんの『ツキ』ごと食らってやるよ」
「ぐ……うがああああっ!」
 携行品によって強化された縁の放った、普段よりも巨大な黒き大顎が、月光を頭から囓っていく。既に抵抗する力が残っていない月光は断末魔を上げながら、頭から足まで残らず食い尽くされた。月光が手にしていた月光刀だけが、大顎に食われずに残され、シーガイアの甲板で月の光を浴びて輝いていた。

成否

成功

MVP

カイト(p3p007128)
雨夜の映し身

状態異常

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)[重傷]
防戦巧者
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)[重傷]
灰雪に舞う翼
八田 悠(p3p000687)[重傷]
あなたの世界
カイト(p3p007128)[重傷]
雨夜の映し身
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)[重傷]
流星の狩人
刻見 雲雀(p3p010272)[重傷]
最果てに至る邪眼

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍により、シーガイアは無事に奪還され、艦長アモンをはじめとする乗組員達も無事に救出されました。
 MVPは、封殺で月光の行動を阻害して、味方の被害軽減に貢献したとして、カイトさんにお贈りします。

 それでは、お疲れ様でした。

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