PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<総軍鏖殺>思うままに破壊を

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝の政変は、国の有り様を一変させた。
 新皇帝が打ち出した治世のルールは弱肉強食のみ。
 警察機構を解体し、犯罪者とされた者達が野放しにされ、我こそはと有り余る力を示し、全てを奪い取ろうと振舞う。
 これによって、力なき鉄帝の民は見捨てられる形となってしまい、全てを失い、蹂躙されるのみとなってしまった。
 
 『ラド・バウ独立区』。
 ここには、闘技場ラド・バウで持ちうる力の全てをぶつけ合う闘士達が多く集まる。
 彼らは政治不干渉を掲げ、S級闘士ビッツ・ビネガーがこの独立区を纏めている。現チャンプのガイウス・ガジェルドも加わってはいるが、彼は一歩引いた立ち位置にいるようだ。
 闘士達の働きもあり、今日もラド・バウは通常運営されているが、その周囲のある街は平穏無事とはいかない。
「フハハハハハハァ!」
 ラド・バウの闘士達ご用達の店が立ち並ぶ商店街。
 そこでは、新皇帝の政策によって釈放された犯罪者達が思うがままに破壊の限りを尽くしていた。
「ここを潰せば、闘士も戦えねぇはずだ」
「後は数でボコりゃ、俺らでも倒せる。新皇帝の統治がずっと続くってわけだぁ!」
 好き勝手叫びながら、犯罪者達は得意とする武器で建物、販売されている武具、工房などを破壊する。
 中には魔物……狂紅熊とも呼ばれるギルバディアも紛れており、特攻しながらも破壊活動を行っていた。
 さらに、犯罪者としては『轟音』とも称されるガルボラがいて。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 機械となった胸部により、人外にも至るレベルの肺活量をもって放たれる咆哮は周囲を一気に破壊するほどの騒音を引き起こす。
 彼は両手に装着したクローであちらこちらを引き裂き、破壊する。
 細切れになる建物を見て、にやりと笑うガルボラは震える店主を見下ろして。
「恨むなら、スチールグラードを反映させたラド・バウと、それを憎んだヴェルクルス殿を恨むんだな」
 ガルボラはそのまま、クローを真下へと振り下ろしたのだった。


 鉄帝で最も人が集まるスポットと言っても過言ではない闘技場ラド・バウ。
 ローレットイレギュラーズはその闘士らに招かれる形で来訪したのだが……。
「現状、闘士達も手が足りていないのは間違いありません」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は慌ただしく出撃し、帰ってきてすぐに闘技場へと参加するといった闘士達の姿を見る。
 その中には、アリス・メイルという名の女性闘士がいた。
 彼女は闘士として活躍する傍ら、女性鍛冶師としてもかなりの腕を持つ。
「正直、首が回らず困ってる」
 混乱に乗じて活動を始めた実力者、領土を広げて食料、土地を得ようとする北方のヴィーザルの民、そして、解放された犯罪者。
「犯罪者どもは闘士が懇意としている店や工房を片っ端から破壊しているんだ」
 中にはアリスの懇意としている友人もおり、犯罪者の手にかかって命を落とした者もいるのだとか……。
 アリスは強く、強く拳を握りしめ、さらに続ける。
「悪いが、今は私達に手を貸してほしい」
 そこで、アクアベルが暴れる犯罪者達の情報について説明する。
「場所はアリスさんが伝えた通り、闘士の皆さんが利用する武具店、鍛冶屋などが多くの気を連ねる通りです」
 そこで10名程度の犯罪者が破壊活動を行っており、魔物ギルバディアの姿もあるという。
 店主や鍛冶師の救出もそうだが、優先して破壊しようとする建物を守らねば、人々の生活の糧が奪われてしまう。闘士達の活動にも影響が出てくるはずだ。
「中でも、轟音とも称されるガルボラという鉄騎種男性は要注意です」
 その咆哮は空気を震わせるだけでなく、広域の物体を破壊するほどの威力を持つという。
「騒々しいし、迷惑この上ない連中だよ、全く……」
 アリスは参戦する気満々でいる。彼女は茶飲み友達である鬼桜 雪之丞(p3p002312)の参加を希望していたようだが、果たして。
「ともあれ、この状況は放置できません。皆様の手で鎮圧を願います」
 できるなら、破壊された店に対して何らかの救済処置があると、店主や鍛冶師達に喜ばれるだろう。
「それじゃ行こうか。よろしく頼む」
 アリスが全身から燃え上がらせる闘気は、彼女が火竜であることを強く感じさせるのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 無法地帯と化した鉄帝国内ですが、各派閥、勢力も活発な動きを見せ始めています。
 彼らの活動を助けてあげてくださいませ。

●目的
 犯罪者の討伐及び魔物の掃討

●状況
 鉄帝の街中、場所は闘技場に参加する闘士達ご用達の武器屋、鍛冶屋等が立ち並ぶ通り。
 明らかに街の破壊を目的とした行為を行い、暴れている犯罪者や魔物の討伐を願います。

●敵
○犯罪者:ガルボラ
 鉄騎種男性40代。クマの様な体躯をした大男。轟音とも称される厄介者です。
 首から胸部、腰が機械化しており、並々ならぬ肺活量を伴い、広範囲に響く咆哮を発し、両手に装着したクローを薙ぎ払い、体躯を活かした体当たりを叩き込んできます。

・犯罪者10名
 かつて犯罪者とされて投獄されていたものの、新皇帝バルナバスの勅命によって釈放された者達です。男性多めですが、女性も2人います。
 他者から強盗を働く者や、己の強さを示そうとする者、ただ他者を傷つけたい者などその思惑はバラバラで統率はありません。

○魔物:ギルバディア(略称:狂紅熊)×2体
 大型のクマ型の魔物。他の魔物を連れて群れることもありますが、今回はバルナバスの威容に屈した個体のうち、犯罪者が制御可能な数ということで2体が用意されています。
 凄まじい突進能力が特徴的で、敵を吹き飛ばす一撃も持っています。押し留めようとしても、噛みつきや角などもかなりの威力を持ちます。

○ヴェルクルス
 犯罪者や魔物をけしかけた張本人と思しき人物です。
 今回のシナリオでは登場しませんが、犯罪者達から何かかしらの情報を引き出すことができるでしょう。

●NPC
○アリス・メイル
 鬼桜 雪之丞(p3p002312)さんの関係者です。
 20歳前後の見た目をした赤髪ツインテールの旅人女性。既婚者。
 実年齢はすでに100を超えている火竜で、ラド・バウにも時折出場する闘士です。
 また、普段は鍛冶師も営んでおり、闘士用の武具の制作、整備も行っているようですが、扱いに困るような武器を作る迷工としても知られます。
 今回の政変を受け、ラド・バウ独立区に参加。所属員の武器を整備しつつ市街地の騒動鎮圧に加わっています。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <総軍鏖殺>思うままに破壊を完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月16日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
フローラ・フローライト(p3p009875)
輝いてくださいませ、私のお嬢様
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く
ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)
瀉血する灼血の魔女

リプレイ


 闘技場ラド・バウを望む鉄帝の街。
 今、国内はどこも強者が自らの存在をアピールすべく力を示しているが、ここでも同じ。
 新皇帝の勅令によって釈放された犯罪者が闘士ご用達の店が立ち並ぶ通りを襲撃していたのだ。
「迷惑な連中もいたものだ」
「目に付くものを、思うままに、すべてを壊す……。そんな世では先がない、でしょうに……」
 犯罪者の所業に呆れる『筋肉こそ至高』三鬼 昴(p3p010722)に『華奢なる原石』フローラ・フローライト(p3p009875)も同意して何も生みだせぬ未来を憂慮する。
「そんな事をすれば目的を達成する前に、潰されると決まってるだろうに」
 スバルが考えるように、戦う為の手段を奪おうとする犯罪者を、強者が許すはずもないのだ。
「何時でも何処でも変わんないなぁ。武力に劣る人達がずっと被害者だよ」
 そこで、『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)がこの戦いに巻き込まれる鉄帝の住民達を慮る。
「こんな風に暴れて迷惑かけるなんて……」
 折角、ラド・バウの皆で冬を乗り越えようと準備に力を注いでいた『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)も、目の前で暴れる犯罪者の群れに憤る。
「迷惑をかける人達はおしおきしないと!」
 頷く夏子は鉄帝においては顕著だと指摘してから持論を展開する。
「人の営みに必要なのは奪う暴力じゃない。弱きを率い強くを挫く……いや良く分かんないけど」
 話を聞いていたフローラは、自身の両親もまたきっとそういう思惑の元で命を奪われたのだと推察して。
「だから、私はこの無法を止めたい、と。そう思うのです」
 移動しながら話すイレギュラーズ達は、問題の通りのどこに敵がいるのか把握に努める。
「まずは魔物の所在と要救助者の把握ですね」 
「ああ、頼む」
 『白秘夜叉』鬼桜 雪之丞(p3p002312)はこの事態における優先事項を端的に列挙すると、依頼者であるアリス・メイルも同意する。
「戦力が十分そうであれば、救出を手伝っていただけませんか?」
 勝手知ったるラド・バウの闘士、かつ鍛冶師の彼女だ。庭のようなこの通りならばイレギュラーズ以上に動くことができるはず。
「ああ、だが、私にも一発殴らせろよ」
 白い歯を見せたアリスは早速、見知った住民らの救出に向かう。雪之丞もしばしそのサポートに当たるようだ。
「さて、状況は芳しくありませんが……、あたしなりに、できることをやろう」
 ――こういう状況で、一番重要なのは冷静かつ迅速であること。
 『瀉血する灼血の魔女』ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)が説くと、フローラの表情が変わる。
「無法者は、怖い、ですが……戦う覚悟は、決まりました」
「強いヤツってカッコ良いじゃん。最後は必ずそういう奴が勝ってんだ」
 強さとは、ただ身体だけを指すわけでない。夏子は一言そう告げた。


「「フハハハハハハァ!」」
 思うままに振舞い、人々を傷つけようとする犯罪者達。
 とりわけ、彼らは建物や工房を中心に破壊しようとしていた。
 そんな敵の前に、颯爽と現れたうさ耳リボンの少女。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!」
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)はポーズを決めて、犯罪者へと呼び掛けた。
「商店街は破壊させないよ。ラド・バウのファイターとして、ここはボクが守ってみせる!」
 相手の気を引きながらも、彼女はセララフィールドを展開して近場の建物の保護しようとする。
「んだと……!?」
 品のない犯罪者共はセララへと武器を差し向けてくるが、近場の住民が戦闘や流れ弾に当たらぬようできるなら、彼女にとっては好都合だ。
「新皇帝の統治を望むなら当然、力ずくで鎮圧される事にも文句はないな?」
 『ラド・バウB級闘士』イズマ・トーティス(p3p009471)のといかけにも、数の利、そして狂紅熊とも称される魔物ギルバディアの存在もあって気を大きくした犯罪者は汚らしい笑みを浮かべるのみだ。
 これ以上、破壊させるわけにはいかない。
 昴は事前に決めた作戦で皆が犯罪者や魔物達それぞれに盾役、誘導役が付くことになっていることを思い返す。
 例えば、イズマは犯罪者の中でも轟音とも称されるガルボラの引き付けに当たって。
「お前達は……建物を壊して戦力をこそがないと勝てない程に弱いと、そういうわけか」
「ふん、武器に頼る闘士に言われたくはないわ!」
 周囲の空気を全てのみこむ程に空気を吸い込むガルボラ。
 その隙を突き、イズマは鋼の細剣から旋律の波を撃ち出して敵の気を強く引く。
「……俺も一応闘士でな? お前の好きにはさせない。暴れたいなら、建物でも住民でもなくまず俺を潰してみるんだな!」
「上等だ!」
 身体を膨れ上がらせたそいつは両手のクローを突き出して突進してくる。すでにモード・スレイプニルによって身体能力を高めていたイズマは直撃を避け、その特攻をやり過ごす。
 すでに咆哮を発する為の準備はできているガルボラ。轟音とも言われる叫びは周囲を破壊する衝撃波を巻き起こす。
(あの咆哮は危険です。必ず止めないと)
 これを最優先で止めようと、ルトヴィリアが相手の力を封じる。
 封じるとはいえ、簡易的なものでしかない為、すぐに使えるようになるが、敵の攻撃を阻害できるのは大きいとルトヴィリアは考える。
「周りの人の安全が最優先だね! お店もなるべく壊されないようにしないと」
 例え、人命を救出しても、彼らがその後生活できぬようでは意味がない。
「皆、あっちに店を破壊しようとしてる敵が!」
 焔は神域展開で流れ弾などによる被害を止めつつ、広域俯瞰で発見したフリーとなる敵の存在を仲間へと知らせる。
「まだ……危険な敵がたくさん」
 実力的には劣っていても、犯罪者達は街を破壊しようとしている。
 そいつへ、ルトヴィリアは自らの傷口より流れる血を飛ばし、動きを止めようとする。
 加えて魔性の茨も行使し、ルトヴィリアはとにかく敵の動きを止めにかかる。
 仲間同様、夏子もまた敵の引き付けに当たっていて。
「女性は何か理由があるに違いないからともかく」
 犯罪者の中に混じる女性達を意識する夏子だが、彼はできる限り多くの敵を集めようとして男性犯罪者も煽る。
「何か君らみたいのって 弱いモノいじめしかしてないよね……ハッキリ言ってクソダサい~」
「死にてえようだな!」
 語彙力なく、汚らしい言葉をぶつけてくる犯罪者らの斬撃、殴打、刺突。適当な武器を手に襲ってくる相手に、夏子は身を固めて戦況の推移を待つ。
 その夏子やイズマを中心に、回復役となるフローラが癒しに当たる。
 周囲に要救助者がいないか、瓦礫にも注意を払いながらも、フローラは仲間達へと呼び掛ける。
「大丈夫です。このままいきましょう」
 号令を発するフローラは仲間の傷を塞ぐべく、支援の為にと聖域を展開していた。
「こっちにもいるよ!」
 また、新たに1人、フリーとなる敵を見つけた焔だが、仲間がすぐ動けぬこともあって直接犯罪者の抑えに向かい、戦いの鼓動を高める。
「うーん、ラド・バウの人達を倒すって言ってたみたいだけど……この程度で勝てると思ってたの?」
「うるせえあああ!!」
 どこからか奪った剣を振り回す敵を引き付け、焔は人の少なく、かつ戦いやすい開けた場所まで誘導していた。

 敵の抑えを行うメンバーがいる中、敵戦力を減らそうと数人のメンバーが動き、中でもクマ型の魔物ギルバディアは優先して討伐に当たる。
「さぁ、おいでませ。今宵は熊鍋にでも致しましょう」
 知人のアリスが避難誘導に当たる様子を横目に、雪之丞は霊気を籠めて硬質化させた手で拍手を始める。
「グワアッ、ガアアアアアオオオオオ!!」
 その音に反応して近づいてくる狂紅熊2体を纏めて捉え、雪之丞は双刀による乱撃を浴びせかけていく。
 一時、セララおやつタイムで取り出したおやつをもぐもぐ食べていたセララはセラフィムの力を自らへとインストールする。
 指を動かして挑発することで相手を引き付けるセララは距離を詰めて突進を封じつつ、角や噛みつきを盾で受け流し、素早く避けてみせる。
「好き勝手暴れた対価を払って貰うぞ」
 自身の役割……手早く敵の処理を行うべく武器を構えた昴。
 先手必勝と間合いを詰めた昴は鋼鉄の拳へと全身の力を漲らせて雷へと変換する。
 そして、彼女はそのまま見定めた狂紅熊を殴りつけた。
 昴の渾身の力で殴られた魔物は全身に駆け巡る雷によって痺れたのか、一時身体を硬直させていたのだった。


 ラド・バウにほど近い通りで起こる戦いは、敵の破壊活動もあって、あちらこちらで土埃が舞い上がる。
「危ないから離れて!」
 イズマは近場の住民らを巻き込まぬよう、スピーカーボムで呼びかける。
「建物が壊れそうだ、伏せて!」
 傍の建物が崩壊に巻き込まれぬよう避難していた数名が身を屈める。
「瞳の青い大きなカラスを追って」
 避難を促していたルトヴィリアのファミリアーであるカラス、サングィスの誘導で難を逃れた人々。
 一般人を人質にとることも考えていたはずの犯罪者達だが、抑えるメンバーに気をとられ、そちらを注視する様子はない事をルトヴィリアは確認する。
 人々を誘導してすぐ戦場へと戻ってくるサングィスは、ルトヴィリアの指示もあって犯罪者を鋭い視線で見つめていた。
「俺はお前達の破壊行為も弱肉強食なる無法も許さない。街はこれ以上壊させない……!」
 犯罪者の中でも一際強い力を持つガルボラ。
 その猛攻に耐えるべく、イズマは幻想纏いで身を固めつつ、能力阻害の封印を放つ。
「猪口才な……!」
 自慢の雄叫びを封じられ、忌々しげにクロウを振るうガルボラに対し、イズマはしっかりと反撃を叩き込み、体力を削っていく。
 それでも、イズマのダメージは小さくなく、フローラが福音をもたらして傷を塞ぐ。
 フローラは戦場を見渡し、逃げ遅れた一般人がいないか気を払う。全くいないわけではなかったが、仲間達の誘導もあってすぐに遠くへと離れてくれる。
 加えて、仲間達の抑えが機能していたことも大きい。
「我々もそうだろって? いやあずっと強い連中の相手ばっかで雑魚の相手とか滅多にないよ。えーん君達強いよぉ~」
 夏子も周囲にアンテナを張り、街や民草への被害がないかを気にかけつつ敵を煽り続ける。
 さすがに狂紅熊まで捉えるのは難しかったが、そちらの掃討は程なく済みそうだ。
 イレギュラーズの攻撃が集まり、既に激しく息づく狂紅熊へと零距離から攻める小柄なセララが相手の角を避け、すぐさま雷光を纏う斬撃でその体を灼き、見事に両断してみせた。
 もう1体の討伐もすぐに加速する。身体を痺れさせた狂紅熊へ、昴は火焔を立ち上らせて猛攻撃を繰り出す。
 体を業火に包んで怯む魔物へ、焔が仕掛ける。
 速力で敵を翻弄していた焔。相手は身体のあちらこちらで燃え上がる炎に苦しみ、悶えながらも力で薙ぎ倒そうとしてくる。
 焔は敢えて速力をもって攻め続け、手にする槍で心の像を穿つ。
 どす黒い血を吐き出した狂紅熊は重い音を立てて崩れ去ったのだった。

 魔物を倒されたことで犯罪者の戦意が衰えたが、イレギュラーズの攻勢は勢いを増すばかり。
「君達が弱肉強食の世界を望むっていうなら、正面からボク達にぶつかって来なよ」
「おらああああ!!」
 挑発するセララ目掛け、武器を振りかざす犯罪者達。
 人的避難から戻ってきたアリスが炎を舞わせた戦槌を叩きつけ、雪之丞が重ねて乱撃を見舞う。
「ここで逃がしたら、また何か悪い事をするかもしれないからね」
 怪我した犯罪者が退路を探すのを逃さず、焔は強引に注意を向けさせる。
 そいつをセララが一気に斬撃を見舞い、倒してしまった。
 彼女はそのまま、剣先を残るガルボラへと向けて。
「さあ、ラド・バウの場外試合だよ!」
「チッ……」
「恨むなら誰を恨めって? 恨まれるのすら怖いとか最早可哀想なのでは~???」
 聞こえよがしに舌打ちしたガルボラへ、夏子が煽る様に言い放つ。
「大体誰よ、ヴェルクルスて」
「うるせえ……」
 全身を震わせ、ガルボラは封印が解けたのを逃さず空気を吸い込んで。
「うるせえええああああああああああああ!!」
 まさに轟音。身体を大きく揺さぶられるような衝撃と振動にイレギュラーズは見舞われる。
「僕も随分ウルサイ方だけど アッチはもう何か武装レベルね」
 思った以上の攻撃にげんなりする夏子。すかさずフローラが相手の咆哮を防ぐべく動く。
「弱者をいたぶり、侮って破壊にかまけている人物だからこそ、この一撃も通りやすいはず」
 すでに仲間達が幾度も封印を施している。フローラもまたとっておきとばかりに聖王封魔によって轟音の力を封じてしまった。
 胸部の機械が思ったように動かぬようになったガルボラは膂力だけでクローを薙ぎ払い、攻めたててくる。
 ここまで猛攻を凌いでいたイズマだが、やはり仲間達の支援も加わって相手の力を封じられていたのは大きい。
 イズマ自身もいつまた敵の力が解放されるかと懸念し、封印を重ねつつ猛攻に合わせて反撃を叩き込む。
 敵が怯めば、セララは鉄帝の皆を護る為、その想いを刃に込めて。
「全力全壊! ギガセララブレイク!」
 迸る雷を全身に駆け巡らせたガルボラに、雪之丞とアリスが息を合わせて仕掛ける。
 流れるような連撃を見舞う雪之丞。アリスが先端に灼熱の業火を纏わせた一打を打ち込むと、雪之丞がなおも無双の防御攻勢で次々に斬撃を浴びせかけた。
 だが、轟音ガルボラも並々ならぬタフネスをみせつける。
「これでは、ヴェルクルス殿に申し訳がたたん」
 確かに出たその名を耳にしながら、ルトヴィリアもまた血の鞭を操り、拘束する。
 続けて、焔は投げつける札から炎を噴き出させ、拘束を強めていた。
「お前たちが信じる暴力でもって捩じ伏せてやろう」
 相手を感電させ、炎に包んでいた昴は最大火力を叩き込むべく、拳に力を籠める。
 動けぬ敵へと飛びかかる昴はまず、拳で殴り掛かって。
「私は基本的に殴ることしか出来ないのでな」
 相手はクローを振るって応戦しようとするが、昴の連撃が敵を圧倒する。
 それでも、昴は攻撃を止めず、徹底的に殴り続ける。
「うう、ぁ……」
 ついにガルボラも白目を剥き、失神してしまったのだった。


 魔物を倒し、犯罪者らを捕縛したイレギュラーズ。
「逃げて人質でも取ろうものなら……眼球を突っついてやりなさい、サングィス」
 ルトヴィリアの指示もあって瞳を光らせるファミリアーのカラスに、犯罪者共も身を竦ませる。
「無闇な殺しはナシで。裁くのは法だ。僕じゃない」
 またいつか、鉄帝には新たな法ができる。その下で彼らは裁かれるだろうと夏子は話す。
 ただ、その前にイズマにはどうしても聞いておきたいことが。
「ヴェルクルスって誰だ?」
 最近まで収監されていた者達が魔物を操るなど考えにくい状況。必ず、裏で手を引く者がいたはずだ。
「…………」
「弱肉強食では次に食われるのは自分だ。だから話した方がいいと思うよ」
 無言を貫こうとするガルボラへとイズマが詰問する。
 焔も今回の一件を唆した存在を気にかけていたが、相手はこの場では口を割らず、辛抱強く聞き出す他なさそうだ。

 他のメンバーは、今なお戦いに巻き込まれた人々の保護と、瓦礫、建物の片づけと現状における生活を最低限支える為の土壌づくりに注力する。
 フローラは破壊された建物や倉庫などを透視、物質透過して人々の救出に当たる。救出した人が怪我を負っていれば、応急手当ても忘れない。
 雪之丞、アリスもまた人助けセンサーを働かせて今なお瓦礫に埋もれた人がいないかと通りを歩いており、通行の妨げになる瓦礫はイズマがモード・スレイプニルによる圧倒的なスピードで手早く片づけていた。
 また、イズマは建物が直るまでの一時的処置として、雨露を凌げるようテントセットを設置する。
 自分達を助けてくれるイレギュラーズに感謝する住民達へ、セラrも声をかける。
「ボクも手伝うよ。だって、ここはラド・バウ。ボクが毎週お世話になってる所だものね」
 普段から足繁く通い、かつ有事に支えてくれるメンバー達に、住民らは感謝してもしきれないといった様子だった。
「いや、助かる。私達も武器以外はからきしという者も多いからな」
 アリスの言葉に、雪之丞は使い手のない武器を流用して防壁や砦化の提案を行う。
 また、先程からイズマが尋問していたが、黒幕の情報を引き出すことも必要だ。
 やるべきことは多い。それでも、雪之丞は一息ついたからとアリスに呼びかける。
「皆様と、お茶にしませんか? まずは一服。心の平穏からでしょう」
「ああ、そうだな」
 こうした状況こそ、落ち着いた対応が必要。
 住民の保護が確認できたタイミングで、イレギュラーズは一旦休息をとり、さらなる作業の為の英気を養うのだった。

成否

成功

MVP

三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは仲間に支えられながらも、自分の役割を全力で果たし、轟音を撃破した貴方へ。
 ヴェルクルスなる存在が彼らを釈放したことが分かっていますが……。続報を待ちたいところです。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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