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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>彼にとっては余興、村にとっては――

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 新たに皇帝の椅子に座った『煉獄編第三冠"憤怒"』バルナバス・スティージレッドの勅令。それは、所謂弱肉強食を善しとするものだった。その勅令が発令された後に、帝国内では様々な混乱が事件が起こっていた。それは、首都から遠く離れた南部にある村でも同じだった。
「おら! さっさと立て!!」
「で、ですが足に怪我を……」
「んなこたぁ、知らねぇよ! これはボスを楽しませる余興なんだよ。死ぬまでやれ」
 悪漢が、未だに足に血が流れている青年を引き摺りながら、雑な囲いがされた広場へと連れてこられる。彼をその場に放り投げると、その目の前に粗悪な剣が投げられる。
「ほら、あそこにいる女を殺せ」
「んーっ! んーっ!」
 悪漢にそう言われて顔を上げれば、そこには磔にされた娘がいた。彼女は、青年の恋人だ。青年は剣を手に取ることなく叫ぶ。
「そんなことできない!!」
「できないじゃねぇ! やるんだよ!!」
 悪漢は青年を蹴る。だが、それでも彼は屈することは無い。その様子を見ていた親玉らしき人物が、クックッと笑いながら「止めてやれ」と指示する。
「ヴェルデル様、良いんですかい!?」
「ああ、ああ。自分の女を守ろうとするなんて、泣かせるじゃねぇか……」
「そ、それじゃあ!」
 期待した目で、青年はヴェルデルと呼ばれた男を見上げる。すると、ヴェルデルはにぃっと笑い――、
「できねぇなら、死ね」
 そう言って、自ら持っていた剣を振り下ろした。


「本当に、何処も彼処もボルドーのような様相ね」
 ローレットにやって来たイレギュラーズたちの前に現れたのは、情報屋の『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)だった。彼女は溜息を一つ吐いて席に座ると近くにいたイレギュラーズたちを呼び寄せた。
「今、鉄帝で混乱が起こっているのは知っているわね? 今回の依頼は、南部戦線にいるザーバ派からの依頼よ。この村に、ある死刑囚が仲間と一緒に好き放題やっているみたいなの」
 机に鉄帝の地図を広げた彼女は、南部のある地点を指差した。そんなところに、何故死刑囚がいるのだろうか。その疑問に先回りするかのように、プルーは答えた。
「新皇帝バルナバス……彼は皆も良く知っている例の勅令を出したのと同時に、捕えられていた犯罪者や死刑囚たちも解放してしまったの。その内の一人――ヴェルデルが、南部までやって来て仲間を集めたってところかしら。彼は元々山賊の頭領で、相当な人殺しだったみたい。……村では既に死人も出ているって話よ」
 どうやら、できるだけ早く解決したいようだが、ザーバ派の兵士たちの人数が足りずに未だ解決に至っていないらしい。既に人命が蔑ろにされている今、村を解放しないわけにはいかない。
「傍から見ればザーバ派に肩入れしている、という風にも見えなくもないわ。けれど、見捨てるわけにもいかないでしょう?」
 プルーはイレギュラーズたちに、そう問いかける。当然だ、と言いた気に頷く。
「そうよね。それじゃあ……お願いするわね」
 プルーはそう言うと、上品に微笑んだ。

GMコメント

 初めまして、こんにちは、こんばんは。萩野千鳥です。
 早速ですが簡単に説明致します。

●目的
 山賊によって荒らされている村の解放

●地形
 小さな村内です。中央に広場らしき場所があり、開けています。
 それ以外は、既に山賊によって壊された家や、荒らされた畑、家畜小屋等、一部見晴らしが悪い場所もあります。
 村人たちは、広場付近に集められているようです。

●敵
『山賊』×15
 一般的な山賊です。
 物陰に隠れることもありそうです。
 剣や斧等で斬りつけたり、火炎瓶などを投げて来たりします。

『ヴェルデル』×1
 解放された死刑囚で山賊の頭領です。
 物を壊したり、人を殺したりすることに躊躇いはないようです。
 剣で斬りつけたり、炎の弾を撃ってきたりします。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 以上です。どうぞ宜しくお願いします!

  • <総軍鏖殺>彼にとっては余興、村にとっては――完了
  • GM名萩野千鳥
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
リズリー・クレイグ(p3p008130)
暴風暴威
観音打 至東(p3p008495)
リフィヌディオル(p3p010339)
リドニア・アルフェーネ(p3p010574)
蒼穹の魔導書

リプレイ

●視線を惹く
 とある村の広場に、村人が全員集められていた。目的はただ一つ。死刑囚・ヴェルデルの余興のためだ。
「ほら、次の奴、前に出ろよ」
 そう言って、山賊の一人が村人の背を蹴る。蹴られた村人は特に拘束されている訳ではない。だが、抵抗すればどうなるかよく分かっているようで、ただ怯えるだけで逃げ出そうとはしない。
「さっきも説明したが、非力なお前が俺を殺せばボスが村人全員逃がしてやるってよ!」
「まぁ、できるわけないんだけどなぁ!」
「ぎゃはは!!」
 取り巻きの山賊たちの笑い声が響く中、前に出された村人が使い物にならないであろう剣を手にする。へっぴり腰で構えると、武器を持ってへらへらする山賊の前に立つ。しかし、動けない。山賊は村人の持つ剣の先がぶるぶると震えているのを見ながら、どう嬲り殺してやろうかとニヤニヤ考えているところだった。
「ボス! ネズミです!」
 村を見張っていた山賊たちが、隠れていた一人の男――『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)を指差して叫ぶ。夏子は飄々とした態度で、ばれてしまったか、と観念したように手を上げながら広場の近くに現れると山賊たちの前で言い放った。
「やあ~、皆を解放して英雄と持ち上げてモテる作戦がパアだよ~」
「はっ! 英雄なんてくだらねぇ。この世は弱肉強食ってやつなんだよ。皇帝様もそう仰っている!」
「お前も大人しく死んでろや!」
 山賊たちが侵入者である夏子を襲う。しかし、夏子は山賊の攻撃をひらりと躱していく。そんな中、夏子は地面に魔石を打ちつけると、そこから火花が散り、爆竹の爆ぜたような音が響いた。それらの光や音に、広場周辺にいた山賊たちが夏子に引き寄せられ彼に近づく。
「オアー、やめろ近寄んな! 僕ぁヒーローになるんだよ! 女の子にチヤホヤされんだ!」
「うるせぇ! できるもんなら、やってみろ!!」
 そう言いながら襲い掛かる山賊たちを、ヴェルデルは後ろから観察している。視線は完全に夏子に向いている。
(よし、そろそろだな)
 夏子は、誰にも悟られないように視線だけちらりと広場上空へ向けた。鴉がぐるりと村を見回っていた。

●集団を崩す
 今回の作戦は陽動からの奇襲。そして、その間に素早く村人たちを救出することである。夏子は今、山賊たちを引き付けている。『暴風暴威』リズリー・クレイグ(p3p008130)は、身を隠しながら空を見上げた。鴉が飛んでいる。その鴉は村人救出にあたっている仲間のファミリアーだ。しばらくぐるりと回っていた鴉が、何かを確認すると二回鳴いた。――配置完了の合図だ。リズリーは一度咆哮を上げると、夏子が引き付けた山賊たちの前に飛び出した。
「さぁ、アタシの相手をしてもらうよ!」
 夏子に仲間がいたことに驚いた様子を見せた山賊だが、すぐに各々武器を取り出し夏子とリズリーへと襲い掛かる。夏子は山賊たちが村人へと目を移してしまう前に、先程のように派手に目を引き付ける。その隙にリズリーがまとめて思い切りタックルを喰らわせる。
「ぐあっ!」
「この野郎……!!」
 夏子に目もくれず、火炎瓶を持った山賊の一人がリズリーへと突撃しようとする。しかし、その火炎瓶に火が点く前に、『刹那一願』観音打 至東(p3p008495)が彼女の持つビーム刀身で斬り落とされていた。その業に、山賊はひゅっと喉を鳴らす。
「今回は人命最優先ですからネ。――正直言いますと、おまえたちは皆殺しでも足りぬ。誰かの慈悲に感謝なさい」
「ヒ、ヒィ……っ!」
 後退りし逃げる山賊。しかし、見逃してくれるほど甘くはない。『救海の灯火』プラック・クラケーン(p3p006804)が木の上から山賊に飛び蹴りをする。
「悪いが、殺すつもりはないが逃がすつもりもない。さぁ、悪党共。お遊びの時間は終いだ」
 気絶した山賊を今はその場に放置しておき、村人から視線を切らせるようにプラックも山賊たちの前に立ちはだかる。だが、彼らは怯むこともなく家や木に身を隠しながら近くにいる者に攻撃を仕掛ける。
「ちまちまと小賢しいね! 集団行動できないのかい?」
 暗にまとめてかかってこいと挑発するように言ったリズリー。そんな見え透いた挑発に乗り、山賊たちは数人でまとまり襲い掛かる。しかし、息が合っているとは言い難い。連携をとるのが苦手なのだろうか。互いが互いの足を引っ張るような混戦。リズリーはふっと笑みを浮かべると、一人ずつ、確実に薙ぎ払っていく。
 そんな中、パリンというガラスの割れる音が耳に届いた。しかし、炎は上がっていない。となると、理由は一つ。村人たちの避難開始の合図である。
「そもそも下手打った連中がさぁ なんで同じ事できるワケ?」
 夏子がそんな疑問を口にしながら、山賊たちに軽槍で横薙ぎにしていく。その度に閃光と発砲音が響く。
「そんなの決まってるだろう!? 俺たちは新皇帝様に許されたんだよ! 警察もいない! 俺たちの天下だとヴェルデル様が言ったんだよ!!」
「ふぅん?」
 確かに、警察機構を解体したのも、犯罪者を解放したのも、「強い奴が勝手に生き、弱い奴が勝手に死ね」と言ったのもバルバナスだ。とはいえ、ここで山賊たちを殺すのは違うと夏子は思っている。犯罪人を裁くのはイレギュラーズの仕事ではない。被害者を慰めるのが、自分勝手な私刑であってはならない。故に、殺さず、ただ倒していく。
 仲間たちが次々に倒れていく。そんな様子に、一人、また一人と逃げ出そうとする。だが、そちらはプラックが空中から攻撃を仕掛けることで、今の所一人も逃がしていない。
「クソッ!」
 逃げようとする山賊が、ぶんぶんと剣を振り回す。時折、こうやって向う見ずな攻撃を行う者もいたが、やけになっているため大した被害にはならなかった。
「粗方、雑魚は片づけたな。……数が少ないのが気になるが」
 プラックは動けずにいる山賊たちの数を数える。まだ立ち向かってくる者たちを含めても、報告より数が少ない。リズリーが至東に尋ねる。
「まだ潜んでいるか、村人の方に行っているか、だな。どうだ?」
「村人を追いかけている方に三人いるようですが、問題はなさそうですヨ?」
「そうか。なら、アタシはヴェルデルの方を助太刀してくるよ」
「はいはい~、それなら、こっちはさっさと片付けてしまいますかねぇ」
 リズリーはヴェルデルの方へと向かうと、残された三人は武器を構えて残り少ない山賊たちに立ち向かった。

●頭を抑える
 見晴らしの悪いその場所に、『夢先案内人』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)とリフィヌディオル(p3p010339)は待機していた。二人の視線の先には、夏子の様子を伺うヴェルデルの姿。彼は二人に気づいていないようである。
(……酒が不味くなりますわね、こういう輩を見ていると。ま、いいでしょう。やりましょうか、お片付け)
 もう村人からもヴェルデルからも十分離れている。例え、山賊たちが村人側の方へ行っても、他の仲間たちが対処してくれるだろうから問題ないだろう。あとは、二人がヴェルデルを抑えられれば良いだけである。
 鴉が二回鳴く。それは仲間たちの配置が完了した合図だ。リドニアはリフィヌディオルに、目で合図を送る。通じたのか、リフィヌディオルはこくんと頷き、二人は一斉にヴェルデルを背後から襲った。
「っ!!」
「なあ大将首! お前、大将首だろう!? 首寄越せよ!」
 普段のお嬢様らしい言葉使いと外見からは想像できない荒々しい言葉にヴェルデルは一瞬驚くが、楽しそうにニヤリと笑う。
「奪えるもんなら奪ってみろ。その代わり、お嬢さんの綺麗な顔に傷が付いても文句は言うなよ?」
 そう言いながら腰に差した剣を抜き、振り下ろす。しかし、その剣はリドニアを斬ることは叶わなかった。細身のレイピアが剣を受け止めていたのだ。
「死刑囚のヴェルデル、ですよね?」
「今は解放されたから『元』だけどな!」
「ですが、それだけのことをしたのでしょう?」
「そうだ、な!」
 ヴェルデルがリフィヌディオルのレイピアを弾く。好機と感じたのだろう。ヴェルデルに一瞬の隙ができる。
「ほらほらほら、私が狙っているぞ!」
「ぐぅ――っ!」
 そう言いながら、空へと跳ねあげるような一撃をお見舞いする。それは見事に当たり、ヴェルデルは体勢を崩した。だが、それでは終われない。すぐにリドニアへと反撃しようと剣を構えて振ろうとするヴェルデル。リフィヌディオルはレイピアを拾い上げ、リドニアとヴェルデルの間に割って入る。
「またか! しつけぇな!」
「ええ。邪魔させてもらいます」
 容赦なくブロックするリフィヌディオル。ヴェルデルが段々とイライラしてくるのが、剣を交えなくとも分かる。その結果、剣で攻撃するのを止めリドニアに向けて炎の弾を放つ。
「っ!」
「ほら、ぼさっとするなよ!」
「分かっていますわ」
 リドニアは炎の弾を受けるが、それでも怯むことは無い。持ちこんだヴォードリエ・ワインを地面に叩き割り、意気揚々に宣言する。
「やってみせなさいな皆様! 復讐のお時間ですわ!」
 その声を合図に、再び場が動き出す。一体何が起こるのか。ヴェルデルは後ろを振り向いてしまった。広場にいるはずの村人たちが逃げている。ヴェルデルがその光景に気をとられている隙に、リドニアは拘束術式を解除し淡々と告げる。
「蒼熾の魔導書、起動――」
 その瞬間、ヴェルデルは炎と雷に襲われる。逃げようにも逃げられない。本来ならば意思を持たないそれが、ヴェルデルを焼き尽くそうとする。それだけではない。この状況下でも、リフィヌディオルが行く道を阻むのだ。
「さぁ、大人しく捕まってください」
 その言葉に、ヴェルデルは一つ舌打ちをする。今劣勢であるということは理解しているらしい。ヴェルデルは近くにいるリフィヌディオルを斬りつけ、続けてリドニアを斬りつける。流石、頭領といったところか。身のこなしは軽い。だが、それで怯むようなことはない。リドニアはヴェルデルの背中越しに、リズリーの姿を捉えた。
「まだまだ、ですわ」
 再び魔導書を開くと、ヴェルデルに向けて炎を放った。

●その場に足止めさせる
 夏子が山賊たちを誘導している間、広場近くで待機していた『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は物陰に隠れつつ自身のファミリアーである鴉を飛ばし仲間の位置を確認する。しばらくぐるりと回ると、鴉は二回鳴いた。どうやら、皆配置についているようだ。鴉の鳴き声を聞いた他の仲間たちは、各々動き始める。山賊たちの目を引き、ヴェルデルを抑える。広場に残された村人たちは、急に現れたイレギュラーズたちに驚き、戸惑っていた。これは、助けがきた、ということなのだろうか。
 パリンとガラスの割れる音がヴェルデルの方から聞こえた。
「やってみせなさいな皆様! 復讐のお時間ですわ!」
 これはリドニアからの合図だ。ヴェルデルはほぼ動けない。動くなら今。未だに状況が把握しきれていない村人たちの元へ、咲耶と『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)はこっそりと近づいた。
「! あ、貴女たちは……?」
「私たちは皆さんを助けに来ました」
「ザーバ殿からの救援でござる。お主たち、早く安全な所へ逃げよ!」
「は、はい!」
 村人たちは幸い拘束されていない。また、ここにいる村人は傷を負っている者もいるが、動けない程ではないようだ。できるだけ物音を立てないように、静かに村人たちを誘導する。しかし、そう簡単にはいかなかった。
「見つけたぜぇ!」
「皆、先に行くでござる!」
 幸い、避難先は近い上に数もそう多くはない。走れる者は走り、そうでない者たちは山賊たちから庇いながら避難先へと向かわせる。
「チッ、村の奴らは逃げたか……まぁ、良いぜぇ」
「まずはお前らからだ!」
「おら、死ね!」
 山賊は火のついた火炎瓶を二人に向けて投げる。瓶がパリンと割れると、油が撒き散らされ地面が燃える。しかし、二人はこの程度で屈することはない。
「脅してもこの先には行かせません!」
 シフォリィが神聖な光をもって、山賊たちに裁きを与える。その光に動けないでいる隙に、咲耶が山賊の一人と距離を詰め、刀へと変化した手甲で斬る。その鮮やかな連携に山賊たちは怯むが、それでも降参するつもりはないらしい。一人が大声を上げて自身を鼓舞すると、近くにいた咲耶へと襲い掛かる。しかし、彼女はひらりと避け、刀の切先を山賊たちに向ける。
「今降参するなら、命だけは助けよう。大人しく縄につくが良い」
「断る!」
「でしたら、ここで足止めさせて頂きます」
 シフォリィはフルーレを構えると、遠慮なく山賊たちに振るう。ちらりと広場の方を見れば、倒れている山賊たちの数が増え、ヴェルデルも劣勢を強いられているようだ。もうすぐで終わる。そろそろこちらも片をつけよう。
「『指一本触れさせない』とは言いませんけれど、少なくとも今まで働いた狼藉を、貴方たちを許すことは出来ません!」
 殺すことは本意ではない。故に、殺さずに仕留める。山賊たちには連携という言葉がないようで、ある意味動き易かった。二人は互いに連携を取り合いながら、山賊たちを縛り上げたのだった。

●引き渡す
「よぅし、これで最後か?」
 プラックが気を失ったり、戦意喪失したりしている山賊たちを縄で縛り、村の木に吊るした。ザーバ派の拠点へと運ぶには人数が多い。そのため、ここで兵士たちを待つことにしたのだ。吊るされている山賊たちの中には、まだ意識のあるヴェルデルもいる。とはいえ、火傷を負い大人しくしている。
 後は他の仲間たちに任せ、プラックは念のために村に取りこぼしが無いか確認しに回った。咲耶は連絡した兵士が来たときの案内役として、村の入り口の方へ向かう。シフォリィは至東と共に村人たちが避難した先へと向かったようだ。山賊たちを捕まえた報告と、亡くなった者たちの弔いをするらしい。
 その場に残された四人は監視も兼ねて、山賊たちの元で待機している。
「くそ……っ」
「弱肉強食は人にも当てはまる真理だが、だからって振り切っちまえば人を越えて獣に堕ちちまう。そして、悪さした獣は人に狩られるもんだ。それが末路、それが道理さ。わかるか? 今のてめえらのことだよ」
「法というものは面倒ですが、大切な仕組みだと思っています。ありのままの人の姿は貴方たちの方なのかも知れません。ですが、己を律する生き方もまた人のものだと思います」
「うるせぇ!」
 リズリーとリフィヌディオルが吊るされている山賊たちに説くが、全く聞く耳を持っていないようだ。そんな風に待っていると、馬車を引き連れた兵士が村へとやって来た。数は四名ほど。人手が足りないと言うのは、本当らしい。
「お待たせいたしました! 本当に感謝致します」
「どーも。それより、代弁者気取ってるワケじゃ無いけど……流石に何度も不始末は無い、よねぇ?」
「勿論であります!」
 夏子が兵士たちに念を押す。彼らはしっかりと頷くと吊るされた山賊たちを降ろし、馬車に乗せて拠点へと向かっていった。
「はぁ………山賊上りが出しゃばる辺り、この国の危機がホントに身を持って感じられますわね。」
「本当でござる」
「あの皇帝閣下が負ける程の相手……私達で勝てますのかしら」
 煙草を取りだしたリドニアが、火を点け紫煙をくゆらしながらぼやく。その言葉に咲耶も口を閉じる。鉄帝の治安は一向に悪くなるばかりである。それに、冬も近い。ここの村人のように、弱者と呼ばれる者たちがどれだけ冬を越すためにも、新皇帝派を打ち倒さなくては。
(……やれやれですわ)
 リドニアは煙草の火を消すと、遠くに見える村人たちを見る。山賊たちが引き渡されたのを確認したからか、広場に戻ってきたのだ。一緒に居たシフォリィと至東もやって来た。村人たちの前に出てきたのは、年老いた男性。彼が村長らしい。
「本当に、本当に、有難うございます」
 そう深く礼を言うと、後ろにいた村人たちも口々に感謝の言葉を述べる。この先も、気が重くなるようなことばかり続くだろう。だが、それでも少しずつ解決していかなくてはならない。
 イレギュラーズたちは村人たちに見送られながら、帰還したのだった。

成否

成功

MVP

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子

状態異常

リフィヌディオル(p3p010339)[重傷]

あとがき

お疲れ様でした。
村は無事、山賊たちから解放されました。
ご参加頂き、ありがとうございました!

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