シナリオ詳細
<総軍鏖殺>ディア・マイ・ベストフレンド
オープニング
●城塞バーデンドルフ・ライン
ザーバ・ザンバ率いる南部戦線の防波堤として、城塞バーデンドルフ・ラインは有名だ。
しかしこの城塞ひとつが鉄帝の守りなのかといえば、当然違う。
広く長く、そして永い時のなかで幻想王国とじわじわ戦い続けた彼らは無数の砦をほぼ等間隔に築き、壁を並べ、時には兵力を集中させることで一点突破を防ぐという戦法をとるエリアも存在していた。
ポルコフス防壁およびポルコフス砦。しかしいまこの場所は、内側(つまりは鉄帝側)から攻め込む魔物たちの侵攻を食い止める砦として機能していた。
「幻想の連中が動きニブってるからいいものの、いま来られたら死ぬぞ俺ら!」
「うるせー! だまって弓撃て! こちとら来月結婚する予定だったんだぞ!」
「おめーこそ黙ってろ! 死にそうな予定立てやがって!」
防壁越しに、二人の兵士が弓やライフルを撃ち続けている。
砦は横に長く、高い壁の上から弓を撃つという形で防衛する作りとなっている。
本来幻想側に向けて撃つ作りであったため、上り下りのしやすい高所には簡易飛行パッケージを用いて飛び乗り、もとあった階段やハシゴは破壊している。ライオットシールドと土嚢を組み合わせた簡易防壁を作ってその間から射撃を行っているという有様だ。
弓を装備した兵の名はハンサムで女にモテるスピギャレリ。
ライフルを装備した兵の名は地味だが結婚をひかえたアンシュッツ。
棒っきれを振り回してドラゴン殺しの英雄ごっこをしていたガキ時代からの親友で、同じ頃にザーバ将軍に憧れ同じ歳に軍へ入隊。志願して南部戦線へ配属された二人である。
軍入隊後もおよそ十年という月日のなかでそれぞれ別の交友関係ができたり、離れた砦へ移動したりと連絡をとらない期間も増え、いつのまにか数年ほど互いの顔を見ない時期が続いた。
それが急に終わったのが、ヴェルス皇帝敗北及び新皇帝即位のニュースが飛び込みザーバ軍が独立を表明した時であった。
それを追い立てるように攻め込む魔物の群れを対処すべく、防衛拠点のいくつかを破棄して戦力を固め、一部では酷い籠城戦を強いられているとも聞く。
そんな中、混乱する軍部の人事異動によって数年来に顔を合わせたスピギャレリとアンシュッツ。
彼らは、もしかしたら十数年ぶりに肩を並べ、それぞれの武器を構えていた。
「こうしてると思い出すよな」
「校長の像スナイプして先生に屋上から吊されたことか?」
「ちげえよ。それも今思い出したけどよ。最悪の思い出だぞそれ」
「じゃあ……最初に林檎を撃ち落としたほうがミザリーに告白するって決めた時か?」
「……ああ」
「落としたのは俺だった」
「だな。俺は最初の一発を外しちまったから」
「けど、ミザリーが好きだったのは、お前だったんだ」
「……だな。本当に『最初の一発』を外したのはお前の方だった」
「結婚おめでとう……まだ言えてなかった」
「来月生きてたら、お前も式に招待するよ」
「だから死ぬような事言うんじゃねえってんだよ!」
●ポルコフス砦防衛戦
「手短に説明しよう。ここからかなり離れた距離に『ポルコフス砦』という場所がある。
この場所に天衝種(アンチ・ヘイヴン)の群れが襲撃を仕掛ける動きを今朝観測した。早朝を狙って砦を落とすつもりだろう。
航空観測班の報告では『グルゥイグダロス』と『ギルバディア』の混成部隊とのことだ。
私の見立てでは……彼らは一日ともたん。今すぐに馬車や馬で出て、彼らを救助して欲しい」
作戦の性質上、砦を攻める魔物の群れに後方から馬なり馬車なりバイクなりで突っ込んでいってその勢いのまま魔物の集団を突き抜けるように突破。
砦で抵抗している兵士たちに加わって彼らを治癒支援なり付与支援しつつ、主力となって魔物たちを撃退するという流れになるだろう。
「馬の持ち合わせがないなら、こちらで軍馬を数頭程度貸すことはできるが……自前のモノのほうがいざという時の動きはやはりいいだろう。そちらを勧めておく。
他に質問は? 結構――」
バーデンドルフ・ラインに務める将校の一人は作戦指令書をバインダーにとじ、吠えるように叫んだ。
「では、出撃してくれ! 未来ある兵を、一人でも死なせたくはない!」
- <総軍鏖殺>ディア・マイ・ベストフレンド完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年10月16日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●バックアタックへのバックアタック
四足亜竜のドレイクが、頑強かつ大きな馬車を引いている。いわゆるドレイク・チャリオッツである。
箱馬車状態となっているその天井部を開き、大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)は『九四式四六糎三連装砲改』を展開した。
積み込んでいたウェポンパッケージを背部に接続。上向いていた三連砲塔が前方へと向き、いつでも砲撃ができる体勢を整える。
「この武蔵、例え行先が海の上でなかろうと、助けを求める声あらば、救いに向かう所存である……」
腕組みをし、敵が射程圏内に入るのをいまかいまかと待っていた。
ドレイクに跨がり馬車をひいているのは『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)である。彼も頑強なドレイクに負けず劣らず、頭まですっぽりと覆う鎧に身を包んでいる。
「ぶはははッ、そうだな! 未来ある若もんを簡単に死なせちゃあならんよなぁ!」
スピギャレリとアンシュッツ。彼らのみならず、若い兵士たちが砦でモンスターの集団に襲われているという。
幻想側への守りを固めたこの砦は、逆側からの防御が当然薄い。彼らはなんとか今をしのいでいるが、それが続くのはもうあと僅かといったとろらしい。
やや高所から高度をさげて飛行してきた数騎のワイバーン。速度を維持するべく低空飛行状態をとると、そのひとつに跨がっていた『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)がやれやれと言った様子で息をついた。
「戦働きは不得手ですが、この状況ではそうも言っていられませんね」
「砦の兵士さんたちは死なせないんだよ――とつげきー!」
同じくワイバーンの上でグーにした手を突き出す『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)。
機械仕掛けのワイバーン型飛行ドローンの上に立ち乗りした『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)が、既にアクティブ状態にある『マジカルゲレーテ・アハト』の狙いを砦へとつける。
正確には、砦の手前に群がっているモンスターたちへだ。
「砦が破られれば外からの敵が入り放題になる。
そうなればその後ろにいるたくさんの人たちが危険にさらされる。
それに砦で今も戦っている兵士の人たちがいる。
彼らの命も、砦も、絶対に守ってみせる。
――オニキス・ハート、出撃するよ」
一方で、独自に飛行できる『ラッキー隊隊長』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)と『新たな可能性』シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)はワイバーンに飛行と加速を任せながら、自らの羽根をわずかに広げてバランスをとっていた。
騎馬で戦う戦士がいるように、飛行できるからといってワイバーンを使わないということはない。
「普段は自分で飛んでるから、こうやって誰かに乗せてもらうのは新鮮だな。頼むぜ相棒!」
ぽんとワイバーンを叩くジュート。ワイバーンは吠えることでその期待に応えようとした。
なるほどこうやるのか……という様子でシャノのもぽんと叩いてやる。
「『俺、この戦いが終わったら……』これ禁句、お約束。
でもそんなこと、言いたくなる状況、あるの分かる、例えば今回とか。
本当にそんなことにならないように、頑張る」
「皆、そろそろだよ!」
『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)が騎乗した状態で剣を抜いた。
茶太郎。巨大な騎乗ポメラニアンの茶太郎である。勇ましさの割に可愛い顔したそれがぴょんと跳び上がると、何もない空中をたかたかと走り始める。
「この動乱で失われた……私達が間に合わなかった幸せは沢山あると思う。
だからこそ、今間に合うかも知れない幸せは、間に合わせて見せる!」
●
敵の襲来を、グルゥイグダロス(巨狼)たちは素早く感知していた。
狼型ゆえに嗅覚や聴覚が鋭いのだろうか。彼らは今襲っている砦よりもより危険な存在が後方から接近することを直感したのだ。
それは、僅かに遅れて振り返ったギルバディア(狂紅熊)も同じであった。
人間をバターのように切り裂ける鋭い爪を露出させると180度反転。突進してくるサクラと茶太郎へと構えた。
「茶太郎!」
ワウッと小さく吠えた茶太郎はギルバディアが顔面めがけて爪を繰り出すその一手前、強く両足で地面を蹴るとその巨体を見事に飛び越えてしまった。
空振りし、ハッとした様子で振り返るギルバディア。
「私は天義の聖騎士、サクラ・ロウライト!
天義と鉄帝は敵国と言っても良いかも知れない! それでも罪なき人々を守りたいという気持ちには何の変わりもないと私は信じてる!」
サクラの咆哮ともいうべき名乗りは、砦で戦う兵士達へのものだ。
ライフルのリロードを行っていたアンシュッツが驚いた様子で彼女を見る。
「天義だと? 国が動いたってのか?」
「そんなわけがあるか、後ろに続く連中を見てみろ」
スピギャレリが弓でグルゥイグダロスを撃ちながら叫ぶ。
「おらぁッ! どけどけケダモノども! 竜と戦艦のお通りだぁッ!」
ドレイクに跨がったゴリョウが吠えるように叫びながらグルゥイグダロスの群れへと突入していく。
無論、馬車の上から身を乗り出した武蔵による砲撃つきで。
「陸上戦艦武蔵、突撃する!!」
三連装砲が次々に発射され、グルゥイグダロスが吹き飛び、そうしたところをあえてゴリョウの跨がったドレイクが撥ねて進むという豪快さだ。
「敵陣に突入する。側面攻撃に注意を!」
手を翳し叫ぶ武蔵。実際グルゥイグダロスたちは正面からの勢いを受けきれないと判断してか側面に回り込み一斉に飛びかかる作戦をとったようだ。
が、こちらとて無策で突っ込んでいるわけではない。
シャノとジュートののったワイバーンがいわゆる矢尻陣形をとるようにしてゴリョウたちの後方へ追従。
「よろ、シノ。ごーごー」
シャノは弓を、ジュートは二丁拳銃をそれぞれ抜いた。
「来ると分かっていりゃあ、狙い撃てるんだよ!」
「ハリネズミ、なりたいやつ、どんどんこーい」
二丁拳銃による激しい乱射がグルゥイグダロスの腹をうち、一方でシャノの矢がグルゥイグダロスを貫通――したかと思うと込められていた魔法が爆発し空気による破裂が周囲のグルゥイグダロスを一斉に吹き飛ばす。
倒れた彼らを飛び越える必要などない。低空飛行状態であればそれが可能だ。
「ポルコフス砦へ兵士さんをお迎えにあがりまぁす! っと!」
「熊、故郷、よく狩ってた。油断できない。でも、怖くもない。あと割と美味い」
シャノたちが次に狙いをつけたのはこちらを追いかけてくるギルバディアだ。
あの巨体がそのまま砦に突っ込めばコトである。
「獣、狩人、敵わない。諦めろ」
シャノは矢で牽制をかけながらギルバディアを足止めした。
倒すのは仲間に任せる、ということである。
具体的には、矢尻陣形の最高尾を中央側へ寄せるかたちで移動してきた瑠璃たちだ。
瑠璃はワイバーンの上でパチンと指を鳴らすと、事前にくみ上げていた魔術を解放。
黒い魔術の球体群がギルバディアめがけて次々に、そして複雑に乱れた軌道を描いて殺到する。回避しようにも球筋が乱れすぎてよみきれない、そういう軌道調整による砲撃である。
「――!」
そこへ、リュコスはのっていたワイバーンから跳躍する形でギルバディアへと襲いかかった。
砲撃によって僅かに怯んだギルバディア。反撃にと繰り出した腕を、リュコスはギリギリのところで回避。
回避したその勢いで前方へ高速回転すすると、繰り出した踵落としをギルバディアの肩へと直撃させた。
反転して飛び退き、それをターンしてきたワイバーンにキャッチさせて即座に離脱。
なぜ離脱したのかと言えば、メカワイバーンの背にのったオニキスが砲撃の準備を終えていたためである。
両足をワイバーン背部のフットロックに固定。腰部から発射した鎖とワイバーン前部を接続することで上体固定を行うと、折りたたんでいた『マジカルゲレーテ・アハト』を展開。
ヘッドセットから片目を覆うように展開した半透明なプレート越しにギルバディアに狙いをつけると――。
「120mmマジカル迫撃砲重力弾――発射(フォイア)」
魔法の砲弾が放たれ、ギルバディアへと直撃。はげしい爆発の中を突っ切ったオニキス。乗っていたメカワイバーンの目がギラリと、広がる爆煙の中で光る。
●
「よっ、待たせたな。ローレットだ。あんたらのボスから依頼をうけての援軍ってとこさ」
銃口でカウボーイハットのつばをわずかにあげてみせるジュート。
ワイバーンを使っているだけに、砦の上で射撃をしていたスピギャレリたちを更に見下ろす位置からだ。
「助かった。これで結婚式に行ける。こいつ、この戦いが終わったら結婚すんだよ」
そう言ってアンシュッツの背を叩く。
「そういう奴って普通死ぬんじゃねえのか?」
「戦後に何回結婚式があったと思ってんだよ。むしろ生きるだろ。要は運だよ運!」
そう言われて、ジュートはポケットからコインを一枚取り出した。
「なら、俺が来てラッキーだったな。俺はジュート=ラッキーバレット。幸運の女神に一族郎党キレられてる男さ」
「ダメじゃね?」
「不運は俺に吸われるってことだよ」
「楽しそうな話題ですが……来ますよ?」
瑠璃がワイバーンにのって同じ高さまでやってきた。
いまは砦の戦力に併せて瑠璃たちが防衛にあたっている状況だが、攻め入るモンスターの数はそこまで減ったとは言いがたい。ギルバディアにも激しい打撃をあたえたが……全身の半分に火傷を負った酷い上体でありながらフウフウと荒い息をしながらこちらへと歩いてくる。
「思いのほかタフでしたね」
「獣、手負い、強い。油断、だめ」
シャノが加わり、弓を構える。
矢尻に込められているのは魔法ではなく毒だ。シタシディ族に伝わる草の種子からとれる毒で、こういう狂暴なヒグマを殺すためにある。
「シノ」
ワイバーンに呼びかけると、ギルバディアへ攻撃すべく高度を下げながら突進を開始。
高高度からでは攻撃をかわされるリスクがあるため――であり、砦へ一直線に突っ込まれたら困るためである。
咆哮をあげ、突進をしかけるギルバディア。常人ならボーリングのピンのように吹き飛ばされるだろうが、シャノはかまわずギルバディアの胸めがけて矢を放った。
こういうときに頭を撃ってはいけない。それこそ、一族に伝わる知恵だ。
「そこか!」
ジュートも拳銃を撃ちまくり――そして巨大なボールがギルバディアに直撃した。
いやちがう。身体をまるめながらローリングしたゴリョウだ。
「こいつをくらいな!」
突き出した籠手をギルバディアの口に突っ込む。
かみ砕こうと顎に力をこめるギルバディアだが、その寸前に籠手に仕込まれた炸薬が爆発。黒煙をあげギルバディアは大きく二歩後退した。
「下がれば負けるんですよ。強襲作戦は特にね」
瑠璃はその最高のタイミングを一切逃さず、仕込んでいた魔法を発動。ギルバディアの顔面を吹き飛ばす。
「ここが正念場だよ! 耐えて! 苦しい時は守りたい者の顔を想いなさい!」
サクラは砦を前にして茶太郎からあえて降り、剣を抜いてグルゥイグダロスの集団へと構える。
「あんた、危ないぞ!」
「よく言われる」
サクラは薄く笑うと、剣に深紅の力を宿した。
剣は間合いの奪い合い。犬の間合いが足と牙で出来ているなら、それを先んじて踏み込んだ方が勝るのだ。
(それに、あの人達よりずっと遅いよ)
集中しすぎてスローになった世界のなかで、サクラは大きく踏み込んだ。タイミングをあわせてこちらの喉笛を食いちぎろうと狙っていたグルゥイグダロスの側面を駆け抜けるように大股で過ぎると、すれ違いざまに剣を放つ。
グルゥイグダロスは自分が何をされたのか分からないまま、顎の付け根を基点に上下真っ二つに切断された。
あまりにも圧倒的な力だ。と思えば、リュコスがワイバーンから飛び降り怯んだグルゥイグダロスの頭部をフリーフォールパンチによって叩き潰していた。
ぴょんと飛び退き、後方宙返りをはさんでから再び身構えるリュコス。
これまでの砦を護ってきた兵達とはあまりにも違い過ぎる戦闘力。世界に通用するレベルの戦士達の戦いぶりを前に、グルゥイグダロスたちは本能で恐れたのださ。
そして……。
「強襲側が退く。更に怯む。だから負けるのですよ!」
武蔵は地面にどっしりと両足をつけると、接続していた『九四式四六糎三連装砲改』を再び展開。小さなチェーンアンカーを発射して四方の地面に食い込ませることで固定すると……。
「全砲門、開け! 斉射!!」
グルゥイグダロスを激しい面制圧射撃によって地面事吹き飛ばしてしまった。
吹き上がる土砂。宙を軽く回転しながら落下するグルゥイグダロスたち。
武蔵はちっちゃい妖精さんみたいなやつが急いで再装填をするなか、ちらりとオニキスのほうを見た。
「次まで時間がかかる。任せても?」
「大丈夫。準備はできてるよ」
オニキスは既に展開していたマジカルゲレーテに加え、メカワイバーンにマウントしていたマジカルアハトアハトを落とさせ装着。
左右同時に構えると……。
「砦には一歩も近寄らせない。出力全開。マジカルアハトアハト、フルバースト……!」
二つの色の光があたりをなめるように貫いていき、グルゥイグダロスたちを文字通り吹き飛ばしてしまった。
●
「私達の勝利だ! 勝鬨を上げよ!」
全ての敵を倒し、剣を掲げるサクラ。
スピギャレリたちも声をあげて勝利を叫んでいる。
敵の大半をサクラたちが倒したのは事実だが、砦をこれまで護ってきた兵士達や、それからも援護射撃を続けた彼らあっての勝利であることは間違いない。
「砦、守れた。兵士さん、守れた。間に合って、よかった」
シャノもほっとした様子でワイバーンからおりる。
ジュートもやれやれという様子でおりたが、なんだかワイバーン酔いしたのか足元がふらついている。
「もし砦が落とされていたと思うと……恐ろしいな」
武装を下ろして肩をトントンと叩く武蔵。同じく変身を解いていたオニキスは、遠いここではないどこかを見つめた。
ラインが一つ破壊されれば連絡も絶たれる。まるで穴をあけた水風船のように破裂してしまうことだってあるだろう。
更には、彼らが護っていた一般市民たちのすむ村へ先ほどの怪物たちがなだれ込むことだってある。その場に自分達がいられる保証など、やはりないのだ。
「…………」
リュコスが何かを察したのか、ぽんとオニキスの肩を叩く。
瑠璃は同じ事を考えていたのかもしれないが、ジュートたちが兵士と早速打ち解けて持ち込んだ酒を飲んでいるのをただ黙ってみていた。
「ま、とにかく飯だ。勝ったら飯! 腹一杯食わねえとな!」
ゴリョウがぶははと笑いながら、馬車に積んでいた食料を出し始めた。
結婚式には、きっと彼らも呼ばれることだろう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●オーダー
ポルコフス砦へ突っ込み、モンスターを蹴散らしてピンチの兵を救いましょう。
敵は以下の通り。
・グルゥイグダロス(巨狼)
巨大な狼のような姿の怪物です。
俊敏にして獰猛。その爪や牙をマトモに受ければ『出血』は免れないでしょう。
・ギルバディア(狂紅熊)
大型のクマ型の魔物。凄まじい突進能力があり邪魔な木々は軽く薙ぎ倒す程の性能があります。また、敵を吹き飛ばす様な一撃を宿している事もある模様です。
数の比率はグルゥイグダロスが大半、ギルバディアのやや強力な個体が複数といった様子。
グルゥイグダロスで勢いよく砦に押し寄せ、ギルバディアのパワーで破壊し兵の防衛能力ごと砕くという戦術が予想されています。
要するに、放っておくと砦ごとパーなので急いで向かいましょう。
●騎乗戦闘
このシナリオでは騎乗戦闘が推奨されます。機動力等は一旦よこにおいといて、物凄いスピードで魔物の群れに突っ込み突き抜けるという戦い方が求められているためです。
普通なら敵陣に突っ込んだ時点で各種戦闘能力が若干低下してしまいますが、『騎乗戦闘』スキルがあればこれを回避しほとんど能力を低下させることなく戦うことが可能です。
また、こうした騎乗戦闘スキルをもった仲間の馬(またはバイクとか)に相乗りさせてもらって突っ込む間は支援に徹するという作戦も有効です。
いくら後方からとはいえ敵陣に突っ込めばそれなりのダメージも受けるので、兵士達に合流した直後に消耗しているという状態になりがちです。その時矢面に立って防衛できるメンバーを温存しておくという意味でも、このスタイルは役に立つでしょう。
勿論、集まったメンバー次第ではもっと別の作戦をつかう事も出来る筈です。
※注意
兵士たちへの合流が遅れたり、防衛に失敗したりすると兵士達が死亡する確率が急上昇します。
無論、スピギャレリがアンシュッツの結婚式に出ることができなくなる可能性だってあるでしょう。
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