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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>青き雪の導き<騎士語り>

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 薄汚い部屋の中にけたたましい鼾が反響する。
 体格の良い男がベッドの上にふんぞり返り泥酔していた。
 男はヴィーザル地方のノルダインの村『サヴィルウス』の戦士ヴィダル・ダレイソンだ。
 左目に大きな傷がある屈強で獰猛な戦士である。
 敵対するハイエスタの民からは『獣鬼』と恐れられる程の存在であった。

 そんな荒くれ者が泥酔して眠り転けている。
 傍には華奢な少年が一人佇んでいた。
 ヴィダルの飼い犬『闘奴』のクルトだ。
 少年は泥酔しているヴィダルが起きてこないか様子を伺う。
 このチャンスを逃す手は無い。

 ――こんな所、逃げ出してやる。もう、うんざりだ。
 少年は歯を食いしばり軽装のまま部屋を飛び出した。

 サヴィルウスの村人に見つからないように夜の内に森の中へ紛れ込む。
 走って、走って、走った。
 クルトが振り返ると村が遠くに見える。
「やった、逃げられた……」
 それでも安心は出来ない。もっと遠くに逃げなければ。

 クルトが踵を返し、深呼吸をした瞬間。
 直ぐ近くで木の枝が割れる音がした。
「どこだぁ? クルト」
 この声は紛れもない。泥酔しているはずのヴィダルの声だ。
 どうして、ここが分かったのだろう。どうして。
 このままでは見つかってしまう。

 逃げないと。逃げないと。怖い、怖い。
 クルトは走った。無我夢中で森の中を走り抜ける。

 ――――
 ――

 銀色の美しい神殿で、儚き少年が耳を澄ませていた。
「森が騒いでる……」
 青い瞳を上げた『青雪花の精霊』エーミルは何かが近づいて来る気配を感じる。
 彼は森の中に響く声を感じ取る性質を持つ。森の植物との共感なのだろう。
 そんな森の植物たちが囁くのだ。誰かが酷く怯えて必死に助けを求めているのだと。
「何か悪い魔物に追われている動物でしょうか?」
 銀泉神殿の巫女セシリア・リンデルンの言葉にエーミルは首を振った。
 これは動物ではない。おそらく人間で、それもまだ子供であった。
「多分、子供だと思うけど。怪我をしているみたいだ。僕が先に行って見てくるよ」
「ええそうですね。お願いします。何かあれば知らせてください。準備はしておきます」
 素早く回復を行えるように、癒やしの巫女セシリアは立ち上がる。
「念のためヴィルヘルムとギルバートに伝えて」
「はい、そちらも」
『氷獅の騎士』ヴィルヘルム・ヴァイスに加護を与えている氷の精霊はエーミルとの相性が良い。
 遠く離れて居ても声を伝えられる。つまり伝令として機能するという訳だ。
 ヴィルヘルムからの情報は村のリーダーである『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)へと伝わる。それが一番効率的に村の危機に備える事ができるのである。
 エーミルは銀泉神殿から急ぎ駆け出した。

 森の中に怯えた子供の叫び。
 声ではない。恐怖の心だ。
 早く助けてあげなければ、早く――


「ああ、丁度良かった君達も来てくれないか」
 忙しなく走るギルバートへ手を振ったリースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は「どうしたのか」と赤い瞳で問いかける。
「どうやら、森で何かあったようなんだ。子供が追いかけられているらしい」
「子供が? 熊にでも追われてるのか?」
 食堂のカフェテラスから立ち上がったシラス(p3p004421)はギルバートへ顔を向けた。
「先に様子を見に行ったエーミルによると、見た事の無い獣と男が一人だそうだ」
「エーミルさんが見た事のない獣ですか?」
 ギルバートの後から歩いて来たヴィルヘルムにジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)が首を傾げる。エーミルはこのヘルムスデリー村周辺に詳しい精霊だ。
「ああ、エーミルが見た事の無い獣というならば、その男が連れて来たと考えるのが妥当だろう」
「だからこうして俺達村の騎士が出る事になってね」
 戦闘準備を整えたギルバート達は今からその少年を救出しに行くらしい。
「君達が居てくれると、助かるよ。こちらも被害を出来るだけ少なくしたいからね」

 鉄帝国の動乱に際し、ノーザンキングスを率いる現在の盟主シグバルドは戦争を仕掛けると宣言したのだ。シグバルドらが帝都や、周辺領域に向けて進軍してくるのは時間の問題。
 そしてヘルムスデリー村周辺に詳しい精霊が『見知らぬ獣』と称する何かが近づいてくるというのだ。
 それが、シグバルド率いるノーザンキングス解放戦線の尖兵だとしても不思議では無い。寧ろそう考える方が妥当であろう。

「兎も角、その少年を助け出し、男の素性を探りたいと思っている」
「協力してくれるかい?」
 ヴィルヘルムとギルバートは「頼む」とイレギュラーズに手を差し出した。

 ――――
 ――

 眩い光が木々の奥に見えた。
 クルトは傷だらけの身体を引き摺って光の見える方へ向かう。
「……君、大丈夫かい?」
 光の中から現れたのは儚く美しい少年だった。
 きっと人ではない。森に棲まう優しき隣人。
「君は……」
「僕は『青雪花の精霊』エーミル。君の声が聞こえたから、助けに来たよ」
「あ……、たすけ、に?」
 エーミルはクルトに花の蜜を固めた飴を渡す。
 口に含めば蕩けるように甘く、傷の痛みが引いていった。
「もう、大丈夫だから……」
 クルトはエーミルの優しい声に安堵した。温かく優しい光。
「よかった……ぅ、う」

 されど、邪悪はすぐ傍までやってくる。
「――クルト! ああ、こんな所に居やがったのか……!」
「……っ!」
 手で口を押さえながら目を見開くクルト。
 ずっと前にヴィダルを巻いた筈なのに、どうしてこの場所が分かってしまうのか。
 心の底が冷えて身体が小刻みに震える。その身に刻まれた恐怖が首を擡げる。
「みいつけたァ!」
「ひっ!?」
 脹脛を掠めた斧が地面へと突き刺さった。
「くは、はっ! 良いねェその表情! 『どうして見つかったの?』ってか?」
 クルトの胸ぐらを掴んだヴィダルはそのまま少年を宙へ持ち上げる。
「お前の腹に、発信器を埋め込んでんだ。俺にしか聞こえねェヤツをよ。だから、何処に逃げてもお前の居場所は分かるって寸法さ。今まで逃げて来れたのも、俺が逃がしてたからって訳よ」
 邪悪な笑みを浮かべるヴィダルは、絶望の表情を浮かべるクルトを見遣り心底愉しいと思った。
「はははっ! 望みを持ったか? 逃げられると? 世の中そんな甘くねぇよなァ!?」
「痛っ!」
 木の幹に頭を打ち付けられ、意識がぐらりと歪む。
 馬乗りになったヴィダルの手がクルトの首に掛かった。
 男の顔は汚い愉悦に満ちていて。

 その向こうに心配そうにこちらを見つめるエーミルが見える。
 ――ああ、最後に見られるのが美しい花の精霊で良かった。
 視界が、白ばみ。
 息が……

GMコメント

 もみじです。少年を助けてください。
 鉄帝編は国そのものが関わるお話なので騎士語りも密接に絡みます。
 どうぞ、お楽しみ下さい。

●目的
・クルトの救出
・ヴィダルの撃退
・敵の撃退

●ロケーション
 ヘルムスデリーは丘の上にあります。背後はゴツゴツとした岩肌。
 見下ろしたヒースの原は湿地帯ですので、村人はあまり近づきません。
 水に棲む怪物が出てくるからです。
 森も近くにあり、狼のような魔物などが生息しています。

 今回は、ひょろ長い木々が茂っている森の中です。
 森が騒がしいということで『青雪花の精霊』エーミルが先行しています。
 イレギュラーズが到着した時にはクルトが横たわり、ヴィダルが斧を構えています。

●敵
○『獣鬼』ヴィダル・ダレイソン
 左目の大きな傷と屈強な肉体を誇るノルダインの戦士です。
 戦いとあればその斧を振い、荒れ狂う獣のように戦場を駆け抜けます。
 その戦い振りからハイエスタの間では『獣鬼』と恐れられています。
 戦士の名に違わぬ臨機応変な戦いをします。

○ギルバディア×3
 天衝種(アンチ・ヘイヴン)です。大型のクマ型の魔物です。
 凄まじい突進能力があり邪魔な木々は軽く薙ぎ倒す程の性能があります。
 また、敵を吹き飛ばす様な一撃を宿している事もある模様です。

○グルゥイグダロス×20
 天衝種(アンチ・ヘイヴン)です。巨大な狼のような姿の怪物です。
 俊敏にして獰猛。その爪や牙をマトモに受ければ『出血』は免れないでしょう。

●味方
○『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)
 ヴィーザル地方ハイエスタの村ヘルムスデリーの騎士。
 正義感が強く誰にでも優しい好青年。
 翠迅を賜る程の剣の腕前。
 ドルイドの血も引いており、精霊の声を聞く事が出来る。
 守護神ファーガスの加護を受ける。
 以前イレギュラーズに助けて貰ったことがあり、とても友好的です。

○ヴィルヘルム・ヴァイス
 ハイエスタの村ヘルムスデリーに住む騎士。『氷獅』の名を持つ。
 氷の精霊の加護を受けし者。
 剣技では『聡剣』ディムナには引けを取るが、
 氷魔法においては右に出る者は居ない。

○『青雪花の精霊』エーミル
 ヘルムスデリー村周辺に棲まう精霊です。
 花の蜜は癒やしの効果を持ちます。
 戦闘自体には参加しませんが、隠れてこっそり回復をしてくれます。

○クルト
 ヴィダルに囲われていた闘奴の少年です。
 命辛々ヴィダルの元から逃げ出しましたが、体内に発信器が埋め込まれているので逃げても見つかってしまいます。
 戦闘開始時は意識を失っています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●騎士語りの特設ページ
https://rev1.reversion.jp/page/kisigatari

  • <総軍鏖殺>青き雪の導き<騎士語り>完了
  • GM名もみじ
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月13日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談9日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
シラス(p3p004421)
超える者
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
ジュリエット・フォーサイス(p3p008823)
翠迅の守護
ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)
レ・ミゼラブル
ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)
不屈の太陽
フーガ・リリオ(p3p010595)
青薔薇救護隊

リプレイ


 アジュール・ブルーの空は高く風が少しだけ肌寒く感じる。
『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)は手を上げて近づいて来る『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)と握手を交した。
「フーガも来ていたのか、手伝ってくれるかい?」
「もちろんだよ。子供を助けに行こう。助けるなら一刻を争う、だろ?」
 その言葉にギルバートは翠瞳で頷く。
「ああ。この村を守護してくれている精霊エーミル言うには、どうやら少年の腹には発信器が入れられているらしいんだ」
「発信機って……どこでも相手の位置を知ることができる機械……だっけ?」
「その、発信器と言うのは存じませんが、あんな少年のお腹に機械を?」
 ギルバートは隣で首を傾げた『シロツメクサの花冠』ジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)へ顔を向けた。
「ああ、俺も仕組みはよく分からないが機械のようなものを埋め込まれているそうだ」
「なんて事でしょう……酷いです」
 口元を覆ったジュリエットは眉を下げて首を振った。
「おいおい……なに子供の腹ん中に変な物入れてんだ、この変態獣!」
 フーガは追いかけて来ているという男に憤る。
「そんな酷い扱いが許される所から逃げて来られたのですね、必ず助けなければ!」
 ジュリエットの言葉にフーガとギルバートは走り出した。

 このヴィーザル地方に住む人間は限られると『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は森の中を進みながら考えを巡らせる。
 ヘルムスデリーの人間ではないのは明らかであり、獣を使役しているのなら、他のハイエスタでもない。
 恐らくはシルヴァンスでも無いのだろう。
「この獰猛かつ野蛮な振る舞いは……森向こうに住む者。ノルダイン!」
「……本当にどこにでもいますね、獰猛な狼は」
 リースリットの傍では『ライカンスロープ』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)が溜息を吐いていた。
「御伽話は作り物だけれど、こうして実際に悪さをする狼を目の当たりにすると、やっぱりちょっと悲しくなりますね」
 ノルダインの男は天衝種の狼(グルゥイグダロス)を引き連れているらしい。
 ミザリィは人狼の旅人だ。同じ狼として思う所があるのだろう。
 ――けれど私は誰も傷付けない。それがたとえ敵であっても。
 僅かに金瞳を伏せたミザリィは唇を引き結ぶ。
「その少年の事は任せます。私は前線の維持に務めますので」
 ミザリィの提示した作戦にリースリットは「分かりました」頷いた。

 保護対象も気になる所だが……と『戦飢餓』恋屍・愛無(p3p007296)は翠色のマントを翻すギルバートを見つめる。其れよりもギルバートの動向が気掛かりなのだ。
 今回の標的はおそらく彼の『仇』に連なる者なのだろう。
 ギルバートの隣にいるジュリエットが『精神的な』ストッパーになってくれるとはいえ、咄嗟に『力』で抑えられるのは愛無の方が適任であろう。
 暴走とまでは行かないだろうが、突出しないとも限らないのだから。
 そういう危うさをギルバートは秘めているのだと愛無は感じ取っていた。
「何があったか知らないけれど……」
 息を上げながら木の幹に手を付いた『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は一歩前へ踏み出す。その男にどんな理由があるのだとしても、小さな子供に暴力を振うことは最低な行いだ。
「さ、行くわよ、アタシの可愛いお隣さんたち。あの子を助ける力を貸して頂戴な!」
 纏う香りと竪琴の音色が森に暮らしている精霊達の元へと届いた。
 ヘルムスデリーの周辺には不思議なマナが流れているとジルーシャは感じ取る。
 以前何処かで感じた事があるような、柔らかなマナを。だが、それを追うには今は時間が惜しい。
「アンタたちの大切な森を荒らさせてたまるもんですか」
 ジルーシャの呼び声に導かれ、森の精霊が周囲に現れる。

「遊びに出かけてたお国さんがとんでもない騒ぎになったもんだな」
 巨大な岩を軽々と飛び越えた『二花の栞』ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)は視界を阻む木々をそっと押し上げた。
「全くどんなであろうと子供相手に好き勝手してくれるぜ。
 戦いの裏で巻き込まれて泣きを見るのはいつも女子供だ、……ウンザリするぜ
 ……そのクルトってガキ大丈夫かね。無事でいてくれるといいんだが」
「ええ、その為に私達が居るんですもの」
『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は愛馬ムーンリットナイトに跨がり森の奥を見据える。
「子供が襲われている。怪しい男がいる。
 例え、陰謀があろうとなかろうと、騎士として放置出来るわけないわ!」
「ああ、そうだな。早く行ってやんねーと。狼どもはこっちで引きつける。レイリーはクルトを頼む」
 大岩から飛躍したジェラルドの後ろからレイリーが蹄鉄を鳴らし駆け抜ける。
 その後には『竜剣』シラス(p3p004421)が追従した。
「事情は知らないが、連中は分かりやすく『敵』だな」
 精霊エーミルが残した印をシラスは見つけ、レイリーに向かうべき方向を伝える。
「あっちだ!」
 真っ直ぐにクルトを助けに向かうレイリーの幻影を作り出せば、数の多い敵達にとって多少の攪乱にはなるだろう。白い騎士の幻影がグルゥイグダロスの群れの中に揺れる。

 誰よりも速く戦場を駆け抜けたレイリーは横たわるクルトと斧を構えた『獣鬼』ヴィダル・ダレイソンの間に割り込んだ。
 レイリーが突き入れたランスの突撃を軽々と躱したヴィダルは獰猛な瞳に怒りを迸らせる。
「んだぁ? てめェ」
「私の名はレイリー=シュタイン! 良い男ね、ちょっと一緒にデートしない?」
「くははっ、その綺麗なツラが恐怖に歪むのが拝めるとは。悪くねぇ。他の連中も後からたっぷり遊んでやるからよお」
 天衝種へ攻撃命令を下したヴィダルはレイリーに斧を向ける。
「他に目を向けさせる暇なんてないぐらい、楽しませてあげる」
「そういう誘いは嫌いじゃねぇぜ」
 レイリーのランスがヴィダルの斧に弾かれ、二人の視線が交差した。

「ふ、む。どうやら、貴方はその子供を手に掛けたいようで。ならば、見過ごせない」
『ぬくもり』ボディ・ダクレ(p3p008384)はヴィダルに『嫌悪』を示す。
「どんな事情があるかは知りませんが、私はソレが、嫌だ」
 ボディにとって子供を殺すということは、ある種のトラウマであるのだろう。
 明確な嫌悪と忌避感は、己が機械であることなどどうでも良いと思える程に強い『意思』であった。
「さぁ、此処からご退去願いましょう」
 ボディはヴィダルの元へ踏み出すが、目の前に現れた天衝種に行く手を阻まれる。
「……敵の数が多いですね」
 全部で二十を超える数の天衝種だ。
「減らしましょう。クルトさんも心配ですし」
 リースリットはボディと共に幻影の炎を周囲に展開する。
 赤く燃える焔は魔眼の力で顕現する刻印の呪いだ。
 絡みつく炎が天衝種を包み込み、視界を覆う様はどんな存在であろうと怒りの情動を覚える。
 リースリットへと向かう天衝種とは別方向へボディは魂喰らいの呪詛をまき散らした。
 黒い羽虫が群がる如く、敵の視界を遮り狂気へと叩き落とすのだ。
 二人の背に降り注ぐのはジルーシャとフーガの音色だ。
 この戦場でリースリットとボディは要である。その二人を強く支援する事は戦況を優位に進める為にも有効であろう。
「熊の方の攻撃は気を付けましょう。吹き飛ばされないように」
「ええ」
 ボディとリースリットはお互いを見合わせ頷いた。


 ミザリィは戦場を見渡す。
 天衝種を上手く引きつけたリースリットとボディたちによって戦場は安定していた。
 怒りが解けて他の仲間に攻撃を仕掛ける個体はあれど、概ねグルゥイグダロスはリースリットとボディに牙をむけていた。ミザリィやフーガが回復を施すのにも、タンク役である二人が大半の敵視を集めていた事は功を奏し、集中的に傷を癒す事が出来たのだ。結果、ミザリィとフーガが回復に専念する事で仲間へのダメージは殆ど無かったといえるだろう。
 リースリットとボディが集めた敵にジュリエットとジルーシャの魔法が広がる。弱った敵はシラスとジェラルドが確実に命を刈り取った。地道ではあるが着実に敵の数は減る。
 その分、長期戦を余儀なくされたレイリーの損耗は激しいものであった。されど、ヴィダルがレイリーとの一騎打ちを『愉しんで』いたこともあり抑え役としては十分な功績である。
 ミザリィは己が攻撃の手を選べなくとも、せめて仲間を回復する事で役に立てればと思っていた。
 今回は、その回復があったからこそ戦闘が優位に運んだともいえるだろう。
 仲間がいたからこそ。ミザリィは最後まで気を引き締めなければと視線を上げる。

 シラスは敵の数が少なくなってきたのを見計らいヴィダルの元へ駆けた。
 レイリーの損耗を危惧したのもあるが、最悪なのは彼がイレギュラーズを無視してクルトを奪取する可能性を捨てきれなかったからだ。ヘルムスデリーはヴィーザル地方の中でもローゼンイスタフに近い場所にあるノーザンキングスに属さない村だ。謂わばノーザンキングスとの境界線にあるといってもいいだろう。そんな場所までクルトを追いかけて来た執念は侮れない。
 されど、簡単に此方の思惑に乗る相手にも見えない。獰猛であるが故の賢さと俊敏さがあるのだ。でなければ、ヴィーザルで生き抜く事は出来ない。
「よぉオッサン、自慢のペット共ならもう片付くぞ。
 ノルダインは精強と聞いたが、まさかガキを虐めて燥いでるとはな。
 戦士の名が泣くぜ、違うってんなら実力を見せてみろよ?」
 レイリーから視線を外し、シラスへと振り返ったヴィダルはニヤリと口の端を上げる。
「あら、余所見? 妬けてしまうわ?」
 くすりと微笑んだレイリーはランスをヴィダルの喉元目がけて突き入れた。
「ほら、もっと、貴方の本気見せてよ!」
「おおー、こえぇ。こえぇ。おい、ボウズ聞けよ。この嬢ちゃん綺麗なナリしてよお。笑いながら戦ってんだぜえ。なあ、戦いはよお。愉しいよなぁ!」
 斧を振り上げたヴィダルはレイリーの胸元へ刃を向ける。
 其れを盾で受け流したレイリーはランスを横薙ぎに振った。本来ならば刺突に特化した武器であるがリーチの長さを利用する。それは『次』に繋ぐ為の一手。
「後ろが空いてるぜ」
「チッ」
 舌打ちをしたヴィダルはシラスの拳を避けきれず、地面に深い靴跡を残す。
「いてえ、いてぇ」
 獰猛な瞳でシラスとレイリーを見遣るヴィダル。
 その視線にレイリーは身体の芯が疼くのを感じる。口の端が自然とつり上がるのが押さえられない。
 ――私は強者と戦うのがとても愉しくてしょうがない。
 血沸き肉躍り、次の瞬間死ぬかもしれない闘争に歓喜する。愉しすぎて笑いがこみ上げた。
 生きるために家を捨てた放蕩娘が、こんな死線の戦いを好む粗暴者であること。
 それを隠しているわけではない。
 されど、己は騎士であるのか。そう名乗ってもいいのか。
 答えはまだレイリー自身にも見つかっていない。

「さて……そろそろこの大太刀の錆になって貰うかね」
 ジェラルドの大太刀がヴィダルの肩口へと走る。
 一瞬の差で避けられた刃を再び構え直したジェラルドは大太刀を持ち上げ歯を見せ笑った。
「はは、やるねぇ。獣鬼って呼ばれるだけの事はあるってか」
「ドラゴニアとは珍しい」
 赤黒い肌と特徴的な尻尾。大陸の南に位置する覇竜の民を北のヴィーザルで見かける事は少ない。
「行くぜ! おっさん!」
 ジェラルドの大太刀とヴィダルの斧が重なり、薄暗い森の中に火花が散る。
「アタシの魔力はちょっとやそっとじゃ尽きたりしないもの」
 重なる砂の檻はジルーシャが放ったもの。
 巻き起こる風は砂を孕み、視界が白く濁る。
「アンタが諦めるまで折れたりしないわよ!」
 ジルーシャは竪琴をぎゅっと握り締めた。獰猛な戦士であるヴィダルと対峙するのは正直な所、怖いと思うのだ。されど、この森に住まう精霊エーミルが助けたいと願うクルトがいる。
 ならば、精霊の友人でありたいと願うジルーシャは彼のお願いに応えなければならない。
 それがジルーシャの矜持である。

「後は貴方だけです、ノルダインの戦士。まだ続けますか」
 リースリットは赤い瞳でヴィダルを睨み付ける。
「あー? ったく使えねぇなあ。これだから畜生は。やっぱ『人間』じゃねぇとな。殺りがいもねえ」
 大袈裟に溜息を吐いたヴィダルは首を横に振った。
「大した実力ですね。名のある戦士の御様子ですが」
「そら、どうも。綺麗な顔の嬢ちゃん。俺はヴィダル。『獣鬼』ヴィダル・ダレイソンとは俺の事よ」
 高らかに嗤い声を上げたヴィダルは斧を肩に担ぐ。
「もはや貴方一人では勝ち目は無いと思いますけれど?」
 リースリットはヴィダルが此方の様子を伺っているのに気付いた。
 鋭い洞察力で、どう『クルト』持ち帰るかを計算している。或いは、子供を囮に使ってどう逃げるかを計っているのだ。戦い続け此処で死ぬ程、愚かでは無いのだろう。
 ならば、ヴィダルが次に取る行動は――
「ったく……面倒くせぇな」
 クルトを殺したいという意思がリースリットには伝わって来た。
 リースリットは焔を戦場に咲かせる。ニタリと笑ったヴィダルに狂気を感じた。

「魔物も消え、私達が此処にいる。それでもなお子供に執着するほど、あなたは愚かですか?」
 ボディはヴィダルへと問いかける。
 それは遠回しに『去れ』という警告であった。
「はは、そうだなあ。もうちょっと遊ぼうぜ。なあ?」
 ヴィダルはボディに斧を振り上げた。これだけ戦力差があり向かってくるには何か訳がある。
 ボディもそう感じ取った。戦う事もそうだが……何か。
「胡散臭いドルイドの使い走り。ベルノだったか。そのペットにしては仕事ができる。弱い者を集団で叩くのは基本だ」
「……へえ、お前はベルノの事を知ってるのか」
 ヴィダルの口からその名を聞き、顔を上げたのはギルバートだ。彼の言葉を聞き漏らさないように注意深く観察する。愛無は目の前の男の蛮族じみた風貌をじっと見入る。
 随分と場慣れしているということは、煽り耐性も見た目より高いだろう。
 だが、このタイプは自身の事よりも身内を貶められる方が逆上しやすい……昔の傭兵仲間もそうだったと愛無は記憶を思い返す。
「胡散臭いドルイドってのは、誰の事だ? ああ、村はずれのエルヴィーラか。はは……胡散臭いってのは違いねえ。あんな何考えてるのか分かんねー貧弱な女の何処が良いのかね。俺はよお、そこの白い騎士のねーちゃんや赤い目のねーちゃんみたいなのが良いぜ。まあ相手してくれんならそこのボウズでもいいが」
「節操が無いのでは」
 愛無はヴィダルとの『会話』を続ける。
 それは相手の動向や考えを探る意味もあった。
 このまま逃がしてしまえば、得られる情報が限られてくる。
 一方的に此方の戦力が伝わってしまうのは厄介だと愛無は考えた。
「……なるほど」
 リースリットはボディへと振り返った。
 ボディやリースリットが感じ取っていた違和感ともいえる狂気の原因。
 それは、できる限り此方の『情報』を持ち帰ること。
 愛無がノーザンキングスの動向を探りたいと思ったのと同じく、ヴィダルも此方の情報を得ようと考えて居るのだろう。
 鉄帝国の動乱において情報は時として金より価値のあるものとなる。
「ヴィダルさん、貴方はシグバルドと何か関係があるのですか?」
 ジュリエットは勇気を振り絞ってヴィダルの鋭い視線の前に立ちはだかった。
「あ?」
 威圧するようにジュリエットを睨み付けたヴィダル。
「もちろん、あるだろうよ。統王シグバルドはベルノの父親だからな。あのジジイが死んだ後はベルノがノーザンキングスの王になる。俺はそれが楽しみで仕方がねえ。そうすればクルトのやつもよお、王様の家臣だぜえ? 逃げださなけりゃな。おい、クルト。良いのか?」
 王の家臣といってもヴィダルの闘奴であることには変わり無いのだ。
 クルトはぶるぶると首を振った。
「何故クルトさんに残酷で恐ろしい事を? まるで貴方自身も獣の様……」
「クルトはリブラディオンで拾ったんだよ。本当ならあそこで死んでるはずだった。それを俺が拾って生かしてやったんだ。逃げ出さないように躾けて、それでも迷子になる可哀想なヤツを見つけやすいようにしてるだけだぜ? めちゃくちゃ優しいだろ?」
 ジュリエットの思考では追いつかない残虐性。このような者とこれから戦わねばならないのか。
 震える指先をそっと握り締めるジュリエット。

「これ以上の戦いは無意味だと思いますが、この辺りで引いて頂けませんか?」
 ミザリィは頃合いを見計らいヴィダルの前に手を広げた。
 お互いこれ以上腹の探り合いをしても何も出てこないだろう。
 目標はあくまで撃退。深追いや無駄な損耗は避けるべきだとミザリィは考える。
 それにクルトをこのまま戦場に残しておくのは危険だとシラスもミザリィと同じ意見だった。
 本音を言えばこの場で仕留めたいとは思う。
 だからありったけの、挑発をくれてやる。
「俺はシラスだ、次に会ったらその汚い面の残り半分もぶっ潰してやるよ」
 シラスは己の右こめかみを指差して吐き捨てた。
「はは、いいねえボウズ……シラスか。その気の強さはねじ伏せたくなるぜ。覚えとくぞそのツラ」
 斧を担ぎ上げたヴィダルは踵を返しイレギュラーズに背を向ける。
「また、会いましょう。今度は私を倒せることを祈ってるわ」
 レイリーの言葉に手を上げたヴィダルは森の奥へと消えた。
 ――そう、今回はお前を倒せなかったから痛み分け。次は絶対私達で倒させてもらうわ。
 ヴィダルが消えた森の奥を見つめレイリーは騎士とは何なのかと己に問いかける。


「ギルバートさん、あのノルダインは……」
 戦闘が終わり警戒を解いたギルバートの元へリースリットが駆け寄って来た。
 ギルバート達はあのヴィダルという男の事を知っているだろう。
 あれだけの強さを持った戦士であり、尚且つ此処まで足を伸ばせる程度には近くに住んでいるノルダインということなのだろう。
「ああ、俺も相まみえるのは初めてだよ。ハイエスタの中では『獣鬼』ヴィダル・ダレイソンと言えば有名だからね。左目の傷の斧使い。荒れ狂う獣と呼ばれる男だ。ベルノの仲間だね」
「それって、リブラディオンの?」
 リースリットの問いかけにギルバートは頷く。
 五年ほど前、リブラディオンで起きたノルダインの強襲。村民は殆どが殺された。ギルバートの従姉妹であるアルエット・ベルターナもその時惨殺されている。
 リースリットはギルバートの手が震えているのに気付いた。
 怒りのままに斬りかかることを必死に抑えていたのだろう。彼の胸の内には『復讐』という名の呪いが秘められているのかもしれない。
 リースリットは隠れていたエーミルと共にクルトの様子を伺いにくる。
「……密かに手助けしてくださってましたよね。ありがとうございます」
「ううん。お礼を言うのはこちらの方。あの子を助けてくれてありがとう」
「そうだ、手術するのなら……いっその事、銀泉神殿まで戻っては如何でしょう?」
 幸いな事にミザリィの回復によってクルトの意識は回復していた。
 自分で歩けるのなら、摘出手術はきちんとした場所で行った方が良い。
 銀泉神殿には癒やしの巫女であるセシリア・リンデルンもいる。フーガが手術を行うにしても回復手は多いに越したことはない。
「そうだな。一度村に戻ろう」
 レイリーはリースリットの提案に頷く。
「無事そう……か?」
 ジェラルドはレイリーの愛馬にクルトを乗せながら心配そうに顔を覗いた。
「うん。ありがとう、お兄ちゃんたち……」
 馬に乗せられ運ばれる事に不安を覚えたのだろう。
 少し眉を下げたクルトの頭を優しく撫でるジェラルド。
「これからそのお腹の発信器を取り除く」
「え……」
 お腹を押さえたクルトは蒼白になって周りのイレギュラーズを見渡す。
「冗談とかじゃない。本当に取り出す。大丈夫、フーガがちゃんと取り出してくれるから」
 シラスはクルトの肩をぽんと叩いた。
「そういえば、どうしてノルダインの所に居たんですか?」
 ジュリエットはクルトへと問いかける。
「俺はリブラディオンの生き残りなんだ。生きる為にあいつの奴隷と戦って勝った。でも、ヴィダルにつれて行かれた……サヴィルウスって村」

 ――――
 ――

 村に戻ったジュリエットはボディと共に銀泉神殿で綺麗な水を汲んでくる。
「お腹に発信器を埋め込まれているってことは……どこかに手術痕があったりするのかしら」
 フーガが手術の準備をする間、ジルーシャがクルトの身体を観察していた。
「うーん、俺にも分からないんだ。いつの間にかつけられてたみたい」
 両手を挙げて首を傾げるクルト。
「……本当、酷いことするわね」
「お水此処においておくわ」
 レイリーは水差しに汲んだ水を神殿の一室に持って来る。
 部屋の隅には巫女であるセシリアが控えていた。
 愛無とシラスは手術中の手伝いを行う。主に力仕事だ。

「じゃあ、始めるよ」
 フーガは簡易ベッドの上に横たわらせたクルトのお腹を触る。
 発信器はお腹に埋め込まれているのだ。
 この銀泉神殿の中ならば、手術中の光景を周囲に見られる心配もない。
 フーガはクルトのお腹を押して、内部の感触を確認する。
 弾力のある腸や臓器とは別の固い何かが臍の下にあった。
「これかな……」
 おそらく指の腹に感じる肌の下の異質なしこりは機械である。
 フーガは深呼吸をする。これからメスを入れるのだ。
 麻酔も無く刃物で内臓を切られる痛みにクルトが耐えられるのか。それが心配だ。
 何があっても平常心を保たなければ。
 手元が狂えば、命を終わらせてしまうのだからとフーガは唇を噛みしめる
「……っぐ」
「ごめん、シラス、愛無押さえて」
 痛みにクルトが動くのをシラスと愛無が押さえ込む。
 其処へ香るのはジルーシャの鎮静効果のある香だ。
 シラスと愛無を握るクルトの手の力が緩んだ。
「はぁ……、はっ、」
 痛みで浅い息を繰り返す少年。
 手術自体が危険行為で、クルトをさらに苦しめることになるのはフーガも分かっている。
 されど、腹の中に発信器がある限り、ヴィダルの手の中にいるようなものだ。
 フーガはそれはだめだと首を振る。
「だから、本当の自由を夢見る子供を救うため、全力でやらせてもらうぜ」
 意を決して手術を再開するフーガ。

 痛みを耐える声が部屋の外にいるジェラルドまで聞こえてくる。
 それはやがて止み、クルトを抱えたフーガが部屋の中から出て来た。
「おお、良かった終わったんだな」
「うん……大丈夫。もうこの子が苦しむことはない」
 ミザリィは綺麗にされ布に包まれた発信器を持ち上げる。
「これは壊さずにいたほうが良い気がします。
 いずれ戦わねばならない相手なら、きっとまたこれを追ってくるでしょう。
 相手を誘き寄せるための釣り餌として使えるのではないでしょうか」
「確かに、そうかもしれない」
 フーガはミザリィへと頷いてギルバートへ発信器を託すと告げる。
「じゃあ俺が持って行くぜ。丁度聞きたいことがあったからな」
 ジェラルドは発信器を受け取ってギルバートの元へ向かった。
 此処へくる前にヴィーザル地方の報告書を幾つか読んだジェラルド。
 友人であるアルエットと同じ名前の少女が其処には記されていたのだ。
「だから、気になって。その従姉妹のアルエットはどんな少女だったんだ?」
 同じ名前であるというだけで、友人と繋がるとは思っていないけれど。
 それでも、彼女の事を少しでも知りたいと願うから。
「アルエットは聡明で真面目な子だったよ。彼女は『調停の民』だったんだが、その修行は子供にとって余り楽しいものではないからね。それでも、文句一つ言わず勤めを果たしていた。俺には年相応の表情を見せてくれるから、そこも可愛かったんだが」
「そうなんだな……ギルバートに似てたか?」
 ジェラルドの問いかけにギルバートは少し考え込む。
「髪と目の色が少し似てるかな。金色の緩やかなウェーブ、翠の瞳、背中には調停の民の証である白い翼がある。俺は父の血を濃く受け継いでいるから母のように白い翼は生えなかった」
 ギルバートが自身がカオスシードとスカイウェザーの両親の間に生まれたのだと語った。
「あ、ギルバートさん此方にいらしたのですね」
 ジュリエットが駆け寄ってくるのを見つめ、ジェラルドはその場を離れる。
 彼女の手には両手サイズの包みが抱えられていた。
 戦争という大変な時期ではあるが、先日ギルバートの誕生日があったのだ。
「お誕生日おめでとうございます。貴方の無事と、小さな幸福がこれから沢山ありますように」
 包みの中には果実酒と小さな花束を持った小熊の縫いぐるみが入っていた。
「ありがとうジュリエット、嬉しいよ」
「あの、これは勘違いではないので……」
 少し緊張で震えるジュリエット手をギルバートが包み込む。
 ジュリエットは以前、感謝の気持ちを込めて頬へ口付けをしたことを、「男性は勘違いしてしまうから」と嗜めた事をきにしているらしい。ギルバートとしては『他の男にして欲しくない』という意味だったが、どうやら誤解があるようだ。
 ギルバートはジュリエットの手を取り感謝の口付けを落した。

成否

成功

MVP

恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者

状態異常

レイリー=シュタイン(p3p007270)[重傷]
ヴァイス☆ドラッヘ

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 クルトを無事に助け出す事が出来ました。
 MVPは敵の情報を上手く聞き出した方へ。
 ご参加ありがとうございました。

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