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シナリオ詳細

<デジールの呼び声>瘴気の竜を退けて 竜拠の祠を破壊せよ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ミアズマドラゴン、出現
 その祠は、天浮の里の外れにひっそりと建っていた。里の外れにあることからその存在が住民達に広く知られることはなかったが、竜を模した像が祀られていることから、この祠を知る者は竜拠の祠と呼んでいた。
 
 天浮の里にイレギュラーズが訪れてしばらくした頃、この祠から黒い瘴気が漏れ出して辺りに漂った。瘴気はだんだんと濃くなり、範囲を広げていく。祠の周辺一体を覆い尽くすまでに拡がった瘴気はやがて、祠を中心に凝縮していった。
「Guooooooo――!」
 凝縮した瘴気は、体高十メートルにならんとする竜の姿を象る。その竜は、産声を上げるかの如く、大きく咆えた。

 その後、瘴気の竜は竜拠の祠から離れることなくずっとその場に居続けた。祠の守護者が如く。
 そして、瘴気の竜が生まれた後も祠からは絶えず瘴気が漏れ出し続け、周囲一帯を覆っていった。

●祠を破壊するための、二つの障害
「ああもう、忙しいったらありゃしないね!」
 ローレットの情報屋、『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)がぼやきつつ、天浮の里を駆ける。
 ギルド・ローレットはシレンツィオと協力し、悪神ダガヌを攻撃し消耗させ再封印するため、インス島への一斉攻撃を決定。だが、その作戦決行の直前に、二つの凶報がローレットにもたらされた。
 一つは、深怪魔による再度の竜宮への襲撃。先の襲撃の際に残された『深怪魔の種』から深怪魔が出現し、竜宮は内部から襲われたと言うのだ。
 そしてもう一つは、天浮の里での『海援様』なる存在の蠢動。海援様は虚滅種を従えているかのようであり、天浮の里周辺の海域で航行する船を次々と襲撃。結果、天浮の里に外部の者が囚われている。天浮の里自体にも只ならぬ気配が漂っており、住民の中には様子がおかしくなっている者も出始めていた。
 襲撃されている竜宮を放置するわけにはいかないし、天浮の里の住民達からは「海援様を止めてほしい」との依頼が出ている。
 かくしてローレットは、インス島、竜宮、天浮の里の三正面作戦を強いられることになったのだが、そのため情報屋であるユメーミルはこの三カ所を駆けずり回ることとなってしまったのだ。

「――遅くなってすまないねぇ。それじゃ、依頼の話をしていくよ」
 ユメーミルは既に集合して待機しているイレギュラーズ達に簡単に詫びると、依頼の説明に入った。
「今回の依頼は、この里の外れにある、竜拠の祠の破壊だよ」
 海援様が活動してからわかったことだが、この竜拠の祠は――そして、天浮の里にある竜を模したその他の祠や遺跡も――海援様の力の源になっていると言う。つまり、海援様を止めるにはこれらの祠や遺跡を破壊する必要があるのだ。
「ただ、祠を破壊するには二つ問題があってね」
 一つは、祠を覆うが如く周囲に拡がる瘴気。その濃度は、中で生きていられる者はいないのではと思われるほどだ。
 そしてもう一つは、祠を守護する虚滅種ミアズマドラゴンの存在。
「ドラゴンとは言っても、もちろん竜種と言うわけではなくてだね。
 虚滅種によくある、姿は竜だけど実力は普通の魔物と言う奴だよ」
 とは言え、ミアズマドラゴンは単体で祠を守護するだけあり、その実力は侮れないだろうとユメーミルは言う。普通の魔物とは、あくまで竜種と比較してのことに過ぎない。
「とりあえず、この手の魔物によくある特徴はまとめておいたから、あとはこれを読んで戦い方を考えておくれ」
 そう言って、ユメーミルはイレギュラーズ達に紙の束を渡す。イレギュラーズ達はそれを読み、ミアズマドラゴンの能力を想定し、対処する手段を講じるための話し合いをはじめた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は全体依頼<デジールの呼び声>のうちの1本をお贈りします。
 今回の難易度はNormalですが、敵の強さはHard寄りとしています。それを踏まえまして、ご参加をよろしくお願いします。
 それでは、ミアズマドラゴンを撃破して、海援様に力を送る竜拠の祠を破壊して下さい。

●成功条件
 竜拠の祠の破壊(ミアズマドラゴンの撃破)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 天浮の里、竜拠の祠周辺。
 水中行動がなくても特に行動にも戦闘にもペナルティーはありませんが、水中行動スキルやそれに類する装備があれば、やや有利に判定されます。
 また、ここに漂っている瘴気により、戦場にいるイレギュラーズは毎ターン開始時に【必中】【鬼道】【毒】【猛毒】【致死毒】【廃滅】の付いた攻撃を受けるものとして処理されます。

●初期配置
 ミアズマドラゴンは、竜拠の祠のすぐ側にいます。
 また、ミアズマドラゴンは竜拠の祠から離れることはありません。

●ミアズマドラゴン ✕1
 竜拠の祠の周囲にある瘴気が集まって生まれた虚滅種です。体高およそ10メートル。
 竜に姿と行動が似ているためドラゴンの名が付いていますが、当然竜種ではありません。
 ですが戦闘能力はそれなりに強力で、極めて高い生命力と高い攻撃力を持ちます。また、1ターンの間に確定で噛み付き、爪✕2、尾による4回の攻撃を行ってきます(ブレスを吐いたターンを除く)。
 先述したとおり、ミアズマドラゴンは竜拠の祠から離れることはありません。これは、【怒り】を受けていても同様です。

・攻撃能力など
 噛み付き 物至単 【邪道】【鬼道】【出血】【流血】【失血】【毒】【猛毒】【致死毒】【廃滅】
 爪 物至単 【邪道】【鬼道】【出血】【流血】【毒】【猛毒】【致死毒】
 尾 物至範 【弱点】【毒】【猛毒】
 瘴気のブレス 神/近~超/域 【邪道】【鬼道】【毒】【猛毒】【致死毒】【廃滅】
 瘴気の霧化
  瘴気の霧に姿を変えます。
  ミアズマドラゴンは瘴気の霧になっている間、能動的な行動は出来ません。一方、物理攻撃は無効化され神秘攻撃のみが有効となります。
  また、この状態で物理神秘問わず攻撃された場合、霧が攻撃してきた者に反撃を行い、算出されたダメージの50%のダメージを返します。なお、後述する弱点による攻撃を受けた場合、追加ダメージは計算に含まれない上、返してくるダメージは半減されます。
  なお、この状態は一定ターン経過後解除され、再使用するには同じく一定ターンの経過を要します。
 優先行動:竜拠の祠の側で、竜拠の祠を守る
  ミアズマドラゴンは、竜拠の祠の側で竜拠の祠を守ることを最優先とします。この行動は、【怒り】の効果に優先します。
  なお、竜拠の祠を攻撃してミアズマドラゴンの気を引こうとしても、その相手が大した脅威ではないと判断すれば、他の脅威を先に排除しようとします(その方が結果として祠を守れると判断するため)。
 弱点:聖属性
  神気閃光やアンデッドに対しては【不殺】とならないスキル、その他聖剣によるもの等フレーバー含めて聖なる属性を持つと判断される攻撃は、ミアズマドラゴンには【防無】扱いとなった上で、追加ダメージを与えます。
  加えて、大天使の祝福のような聖なる属性を持つと判断される回復スキルは、ミアズマドラゴンには攻撃として作用し、やはり【防無】扱いとなった上で、追加ダメージを与えます。
 再生
  周囲の瘴気を吸い上げて、それによりダメージを癒やします。【致命】で妨害することは出来ません。
 BS緩和
 【封殺】無効
 マーク・ブロック不可

●竜拠の祠
 竜を模した像が祀られているため、竜が拠っているとの名が付けられた祠です。
 天浮の里の他の竜を模した祠や遺跡と同じように、海援様に力を送っています。
 ミアズマドラゴンが結界で保護しているため、ミアズマドラゴンを放置して祠を破壊することはほぼ不可能です(結界を解除する間にミアズマドラゴンから攻撃を受ける上、ミアズマドラゴンが行動を消費せずに結界を再展開します)。
 
●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <デジールの呼び声>瘴気の竜を退けて 竜拠の祠を破壊せよ完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月08日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
山本 雄斗(p3p009723)
命を抱いて
シャーラッシュ=ホー(p3p009832)
納骨堂の神
アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)
アーリオ・オーリオ
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女

リプレイ

●竜拠の祠を破壊するために
 天浮の里の外れへと、十人のイレギュラーズが歩いて行く。少しずつ濃くなっていく辺りを漂う瘴気は、目的の場所である『竜拠の祠』が次第に近くなっていることを示しているかのように、イレギュラーズ達には思えた。
「瘴気を出し続ける祠なんて、一体何の為にあるんだろう?」
「『海援様』とやらを、かつては祀っていたのかも知れないが……」
 『命を抱いて』山本 雄斗(p3p009723)が竜拠の祠の存在意義について首を捻ると、『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)が推察混じりに応じた。情報屋からの説明に拠れば、竜拠の祠は最近天浮の里で蠢動している海援様なる存在に力を送っており、その蠢動が始まった時期から竜拠の祠では瘴気が噴き出し続けていると言う。だが、それ以上のことは、雄斗にもジョージにもはっきりとはわからない。
「穢されたのか、元々そういう存在なのかは知らないが……まずは、この瘴気を止めることが先決だな」
「そうですね……清浄なる青き海を汚染する瘴気、数多の生物が犠牲になっているかもしれません。
 しかと祓いましょう、その穢れと共に」
 今はあれこれ考えても仕方ないと、ジョージが意識を自分達の為すべき事に向ける。その言に、『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)もコクリと深く頷いた。今はまだわずかではあるが、瘴気によって自身の命が蝕まれているのは、アンジェリカも感じている。イレギュラーズであるアンジェリカさえそうであるのだから、海中の生物が生命を奪われているのは想像に難くなかった。動物を愛でるアンジェリカとしては、そのような事態を放置できるはずもない。
「そのためにも、先ずはドラゴンを退治しなくちゃね」
「そうだよねぇ~。ミアズマドラゴン……敵が祠に結界を張っている以上、倒す必要があるねぇ」
 瘴気を止めるためには竜拠の祠を破壊する必要があるが、そのためには雄斗の言うように、祠の側にいる虚滅種ミアズマドラゴンの撃破が先決だった。ミアズマドラゴンは祠を破壊しようとする者を排除せんと攻撃してくるだけでなく、『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)が言うように祠に結界を展開してくるのだから。
「楽な相手じゃなさそうだけれど……」
「穢れし邪竜は退け、早々に祠を破壊してしまいましょう」
 シルキィに被せるようにして、全身黒づくめのスーツ姿の『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)が言った。ホーの言葉には急かすような響きがあったが、実際、ホーは急いていた。
 ホーは今回初めて、水中戦を経験する。もっとも、戦場は天浮の里の外れで、しかも『竜宮の波紋・改』の加護を受けており、水中とは言え地上と変わらずに戦えるため、厳密な意味での水中戦とは言えない。だが、如何に地上と変わらず動けようとも、陽が差し込むこともない海の底と言う場所は、ホーに溺れるのではないかという心配を抱かせ、陸を恋しくさせた。そのため、ホーは早々にこの依頼を完遂したかったのである。

 歩みを進めるイレギュラーズ達は、やがて瘴気の奥に黒い竜を視認する。
「せめて忌神じゃなくて、守護神として顕現しろよな……」
 『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が、ぼやくように独り言ちた。実際、マカライトがぼやきたくなるのも無理はない話で、最初はただのリゾート地を造るだけの話がここまで大事になったのは、何者かの悪意があるとしか思えない。
「今回はオマケに、竜の形を取るってのは一体どういう巡り合わせなんだか……」
「どう見てもドラゴンだよなあ……リヴァイアサン様に似てるもんな、それっぽくてもしょうがない。うむ」
 釈然としない様子のマカライトに、『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)は頷くが、カイトはマカライトよりは幾分割り切った様子だった。虚滅種に共通の特徴として、かつてイレギュラーズ達に立ちはだかったリヴァイアサンを思わせる雰囲気や気配を有すると言う特徴がある。リヴァイアサンを畏れるカイトには、そんな虚滅種がリヴァイアサンと似た姿になるのは道理とも思われた。
 何にせよ、そのリヴァイアサンは静かな眠りについている。ならば。
「サラッと消えて頂くのが、一番だな」
 事も無げに、マカライトは言った。
(まがい物と言っても、これだけ巨大な竜と戦うのは流石に緊張するわね……!)
 マカライトとは対照的に、緊張を隠せない様子でゴクリと唾を飲み込んだのは、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)だ。いくら純粋な竜種ではなく紛い物たる虚滅種が相手とは言え、体高十メートルにならんとする竜が相手ともなれば、そうなるのも無理からぬ事であろう。
 だが、セレナは緊張こそすれど怯えはしない。
「瘴気の霧の竜……でも、やりようは幾らでもあるわよね。月の聖なる側面を乗せて……浄化してあげるわ!」
 強気を崩すことなく、セレナはそう意気込んだ。

●イレギュラーズ、猛攻
 仲間達に先駆けて、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が戦闘の口火を切った。
(虚滅種の竜……瘴気から生まれた竜なれど、その力は計り知れません……)
 だが、ミアズマドラゴンを倒しておかないと、他に影響が出かねない。故に。
「ここで確実に、止めさせていただきます!」
 ミアズマドラゴンから二十メートル弱まで距離を詰めたシフォリィは、そう宣言しつつフルーレ・ド・ノアールネージュを真っ直ぐミアズマドラゴンに向けた。すると、漆黒の剣の先端から数多の小さな炎が放たれ、桜吹雪の如く吹き荒れながらミアズマドラゴンを包み込んでいく。
 ミアズマドラゴンは本能的に炎を回避しようとするが、その巨体では到底避けきれるものではない。ジュウゥゥ、と音を立てて、炎がミアズマドラゴンの様々な部位を焼いていった。
 その間にもシフォリィは次々と炎を放ち続け、ミアズマドラゴンの瘴気の身体を焼き続けていく。
「――ここからが、本命です!」
 ミアズマドラゴンが攻撃に対応する余力を喪失し、ただの的と化したところで、シフォリィはミアズマドラゴンを中心にして破邪の結界を展開する。
 結界の中に満ちる破邪の力が、既に焼かれたミアズマドラゴンの体表から内部へと染み入って、その身体を構成する瘴気を浄化する。それに伴い、ミアズマドラゴンの体表には至る所で無数の細かな亀裂が入り、体表付近の身がボロボロと朽ちて崩れて落ちていった。
 さらに二度、重ねて展開された破邪の結界によって、ミアズマドラゴンの身は次々と崩れて消えていく。
「Guaaaaaaa――!」
 破邪の結界によって身を削られ、さらにはその行動も封じられたミアズマドラゴンの咆哮は、苦痛の故でも口惜しさの故でもあるように思われた。
「竜の祠なんだからさ、竜に力を与えてやってほしいもんだぜ。や、リヴァイアサンにはまだ寝てて欲しいけどな?
 海援ってやつに力を与える祠なら、その海援ってやつを祀ってほしいぜ。竜をダシにするなよってな!」
 神鳥の加護をその身に降ろしたカイトは、竜拠の祠とミアズマドラゴンとを見据えながら、バサリと大きく羽ばたいた。その羽ばたきからは、羽根と炎を纏った竜巻のような旋風が発生し、ミアズマドラゴンとその後背にある竜拠の祠とを狙い突き進む。
 紅い旋風は、ミアズマドラゴンの脚を貫通してその周囲を炎で包むと共に、ガクンとバランスを崩させた。そして竜拠の祠も焼いてしまわんとさらに進んでいくが、これは竜拠の祠に展開されている結界によって阻まれた。
「さて、竜種の姿ではあるが本質は瘴気の澱み……不遜にも竜の形をとるとはな。目的の祠ごと、刈らせてもらう」
 竜種信仰を有する『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)にとって、瘴気の澱み如きが竜種の姿を取るなど、レイヴン自身が口にしたとおり不遜であり、その存在は許し難いものがある。
 ならばとレイヴンは、はるか上空から鋼の星を喚び、竜拠の祠ごとミアズマドラゴンを圧し潰さんとした。
「想いは星に。物語は永遠に。廻る月日の祝福が、きっと皆にありますように――」
 そのレイヴンに合わせるように、シルキィが天に向けて願いの言の葉を紡ぎ、天空から流星を喚ぶ。
 鋼の星と流星、二つの星は水の抵抗など存在しないかのように、海面から海底へと落下速度を落とすことなく突き進んだ。既に回避する余力を失っていることに加え、上空から迫る故に二つの星を察知するのが遅れたミアズマドラゴンは、まず鋼の星に、そして間を置かず流星に、強かにその身体を打ちのめされた。その身体の大部分を海底に押さえつけられたのみならず、鋼の星と流星が命中した部分はクレーター状に大きく深く抉れている。
 さらには、その衝撃は竜拠の祠にも及び、祠を守る結界に亀裂を走らせた。
「フォーム、チェンジ! 烈風!」
 勇壮な曲を響かせ、燦然とした輝きをその身に集めながら、雄斗はヒーロースーツ・烈風を装着する。ここからは、ヒーローとしての時間だ。白を基調にやや淡い青のヒーローとなった雄斗は、瞬く間にミアズマドラゴンとの距離を詰めた。
(もう避ける力はないみたいだね。それなら……!)
 ミアズマドラゴンは、既に攻撃を避ける余力のない巨大な的でしかなくなっている。ならば、あらん限りの攻撃を叩き込むまでと、雄斗は分身しながら――否、幾つもの残像を残しながら、ナノメタルソード・アードラーで幾重にも幾重にも腹部に斬りつけていった。雄斗によって刻まれた傷からは、瘴気が次々と漏れ出しては霧散していく。
「海援様とやらが何なのかは知らないが、貴様の放つ瘴気――それを見れば、貴様の主が我々にとって敵であるのは明白!」
 そう断じながら、ジョージもまたミアズマドラゴンとの距離を一息に詰める。
「貴様を打倒し、その瘴気を阻止させてもらおうか!」
 咆哮と共に、ジョージは神威たる右ストレートを雄斗が刻んだ傷を狙って放つ。ジョージの腕は肩の近くまでミアズマドラゴンの体内に食い込むと共に、その周囲の身を崩壊させていった。ジョージが右腕をミアズマドラゴンから引き抜くと、それに引きずられる様に崩壊した身の残骸が海中に放出され、跡形もなく消滅する。
「愛に穢れし天使よ。私の声に応えて、彼の者に口づけを――」
 アンジェリカが求めると、ミアズマドラゴンの側に天使が喚ばれた。天使は雄斗やジョージが攻撃した付近に、癒やしのキスをする。だが、全身が瘴気からなるミアズマドラゴンにとって、そのキスは癒やしではなく攻撃として作用した。キスをされた場所の周囲は、既に雄斗やジョージに攻撃されて脆くなっていたこともあってか、一瞬にして消滅し深く抉れた跡が残るのみとなる。
「Gyaaaaaaa――!」
 その苦痛からであろう、ミアズマドラゴンは再び大きく叫び声を上げた。
「瘴気が竜の形を取るのなら、俺も龍で対抗するとしよう」
 ティンダロスType.Sに騎乗しているマカライトは、自身の上半身に生えている六本の鎖のうち、右側の三本を膨張させつつ複製。その鎖で、黒龍の頭を編み上げた。鎖で編まれた黒龍の頭は、ミアズマドラゴンの方へと勢いよく飛んでいくと、その首に牙を深々と突き立てる。そのまま、黒龍の頭はミアズマドラゴンの首の身を噛み千切った。噛み千切られた身は黒龍の口の中で霧散し、噛まれた傷口からも瘴気がゆらゆらと立ち上っては海水の中に消えていった。
(この分なら、思ったよりも早く地上に帰れそうですね……そのためにも、畳みかけましょう)
 予想以上に有利な戦況は、地上が恋しいホーにとって願ったり叶ったりだった。そして、「その時」を一刻でも早めるべく、ホーはミアズマドラゴンの側面に回り込み、黒龍の頭が噛んだ傷口を邪悪を灼く聖光で照らし出す。聖光に灼かれた傷口の周囲にある身はボロボロと細かく崩れて瘴気の粒子となり、最後には浄化されて消滅した。
「Guoooooo――!」
 傷に塩、ならぬ聖光を浴びせられたミアズマドラゴンは、苦しそうに頭部をブンブンと横に振りながら叫んだ。
「灰は灰に、瘴気も灰に……消えなさい!」
 ホーとは逆の側面に回り込んだセレナが、己の身長ほどもあろうかと言う杖をミアズマドラゴンに向けた。そこから、殲滅の聖光が迸る。聖光は真っ直ぐミアズマドラゴンの首へと伸び、マカライトやホーが穿った傷の方へと貫通していった。聖光が貫いたその周囲もボロボロと崩れ落ちて消滅したため、ミアズマドラゴンの首には空いた穴は聖光が貫いたよりも大きなものとなった。
「――――!」
 最早叫び声も上げられなくなったミアズマドラゴンは、首をもたげて大きく口を開き悶えるだけであった。

●ミアズマドラゴン、消滅せり
 ミアズマドラゴンは周囲の瘴気を吸い上げて自身の身体を修復するが、イレギュラーズの攻勢に追いつくものではなかった。修復が完了する前に、次々とミアズマドラゴンの身体はボロボロと脆く朽ち、その身を構成していた瘴気は霧散し、あるいは浄化されていく。
 それに耐えかねたのかミアズマドラゴンは自身の身体を瘴気の霧へと変じたが、あらゆる攻撃を無効化出来るわけではなく神秘攻撃が通じる以上、ただ撃破されるまでの時間をわずかに先延ばしにしたに過ぎなかった。ミアズマドラゴンが瘴気の霧になっている間、もし可能ならばと何人かが竜拠の祠の破壊を試みたが、これは都度再展開される結界に阻まれ続けた。もっとも、ミアズマドラゴンを撃破すれば祠の破壊を妨害する者はいなくなるのだから、早かれ遅かれ祠も破壊される運命であった。

 ミアズマドラゴンは何時までも身体を瘴気の霧に変えていられるわけではなく、程なくして黒竜の姿に戻った。それは、撃破される時間の先延ばしが終わったのと同義でもある。特に物理攻撃を主な攻撃手段とする者は、ここぞとばかりに猛烈に攻撃を繰り出していく。もちろん、神秘攻撃を主にする者も、負けず劣らずだ。
 瘴気による修復が追いつかず、シフォリィによって行動をほぼ封じられている以上、竜拠の祠から離れることがないミアズマドラゴンが生き延びる術はない。
「これで――終わりです!」
 シフォリィは残る気力をほぼ全て費やして、ミアズマドラゴンとの決着をつけんと破邪の結界を展開した。身体はすっかり希薄になり、辛うじて竜の姿を取っているだけのミアズマドラゴンは、結界の中に満ちる破邪の力に耐えることは出来ず、跡形残らず消滅した。
「Gaaaaaa――!!」
 後には、一帯に響き渡る断末魔の叫びが残るだけであった。

「想いは星に。物語は永遠に。廻る月日の祝福が、きっと皆にありますように――」
「ワタシも手伝おう」
 未だ瘴気の漂う竜拠の祠の周囲に、流星を喚ぶシルキィの詠唱が響く。シルキィの意図を察したレイヴンも、鋼の星を天空に喚んだ。水中にもかかわらず、空中と変わらぬ速度で落ちてきた二つの星によって竜拠の祠は圧し潰され、粉々に粉砕された。
 竜拠の祠を破壊し依頼を達成したイレギュラーズ達は、その残骸を退けて祠の調査を行った。だが、竜拠の祠の名の元となった竜を模した像の破片以外、これと言ってめぼしいものは見当たらない。
「ひとまず、回収しておくか。これから、何か分かることもあるかもしれんしな」
 ジョージは、二つの星に圧し潰されてバラバラになった竜を模した像の破片を出来る限り拾い集め、持ち帰ることにした。
 ――そうしてイレギュラーズが竜拠の祠を後にする頃には、祠からの瘴気の噴出はすっかり止んでおり、辺りを漂っていた瘴気も海水の中にかき消えていた。

成否

成功

MVP

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍により、ミアズマドラゴンは撃破され、祠も破壊されました。
 MVPは、連続攻撃とスプラッシュによる回避減衰で味方の攻撃をアシストしたこと、またその連続攻撃で高ダメージを叩き出したこと、そして【封印】でミアズマドラゴンの行動を封じて味方の損害を軽減したことの三点から、シフォリィさんにお贈りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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