シナリオ詳細
<総軍鏖殺>髑髏よ髑髏、機械仕掛けの
オープニング
●戦国謳歌
「フジャケンナ――フジャッケンナ!」
やや独特の毒づき方で、箒に乗った魔女は空を器用に蛇行飛行していく。
骨で出来た矢が彼女を撃ち落とさんと次々に飛び、それを回避しながら飛ぶという有様だ。
地上には巨大な骸骨に炎の車輪がついたようななんともグロテスクかつ狂暴な――骸骨戦車とでもいうべき怪物が並んでいる。
魔女もとい――『フリームファクシの魔女』トバリは髑髏マークの描かれた魔導書を開き反転死霊術(ターンアンデッド)の魔術を発動。魔術弾を機関銃の如く連射させて骸骨戦車へと浴びせ始める。
が、効果は薄い。どうやら死霊術でできた怪物ではないらしい。チッと舌打ちして通常弾に切り替えるトバリ。
「なぁにがラドバウ旅行だ! 新鮮な空気を吸いに都会にだ! 都会、めっちゃくちゃになってんじゃねえか!」
「せやなあ」
そう言いながら、戦車の両脇から現れ両手を突き出すようにして魔術の炎を放ってくる骸骨歩兵たちを次々に斬り捨てていく男がいた。
久慈峰 弥彦。かつて鳳圏憲兵隊陸軍中将という地位にあった人物である。鳳圏というミクロネーションは紆余曲折あった末鉄帝支配下かつ鳳圏出身イレギュラーズ管理下という実質的な独立状態を手に入れている。なので国連承認国家でこそないが、民らが国と想うことを誰もとめていないのだ。……さておき。
「おもろいことになったなあ。やっぱり、戦は楽しい」
弥彦はにやりと笑い、歩兵をまた新たに一刀両断。
「今じゃ、どこへ出ても戦、戦やからなあ。楽しいなあ?」
「楽しいわけあるか!」
●軍靴を鳴らせ
時は戦国嵐の時代。皇帝ヴェルスが冠位魔種ナルナバスに敗北し、鉄帝国のルールに従い冠位魔種を王と戴く国家が誕生してしまった。
下されたのは弱肉強食の勅令。ヴェルスの統治によってやっと側面的な平和を維持できていたこの国は一転、群雄割拠の乱世へと墜ちたのだ。
一方ラド・バウは周囲の群雄割拠ぶりをあえて無視し、それまでの闘技場を中心とした活気ある日常を維持しようとしていた。
ならばラドバウ独立自治区などとも呼ばれるこのエリアは平和なのかといえば……残念ながらそうではない。
「中将殿……いえ、久慈峰弥彦がラド・バウ遊びに興じていた間に今回の勅令が下ってしまい、ヴィーザル地方との連絡路が閉ざされてしまったのです。本国。もとい鳳自治区がどうなっているのか……」
久慈峰 はづみはハアとため息をつき、額を抑えている。
ここはラドバウ自治区にある酒場であり、ローレットの仮拠点だ。
テーブルを挟んだ向かいにはローレットの面々が集まり、その中には加賀・栄龍(p3p007422)とヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の姿もあった。
「それは……なんとも……」
「災難……ですわねぇ……」
二人はもやもやと空想の雲を広げた。
夏休みの小学生がそのまま大人になったような弥彦殿が、鳳圏がローレット管理下に入って仕事が減ったからとウキウキ気分で遊びにいくさまを。そこになんか苦々しい顔のトバリがくっついていくさまが……なぜか連想された。
「なぜトバリが?」
ヴァレーリヤが首をかしげると、はづみが補足するように言う。
「彼女は身を隠していた間、ラド・バウ周辺で生活していましたから。それらの整理をつけにきたのでしょう。そう頻繁に行き来出来る距離でもありませんから」
「ああ……」
そういえばそんなこともあった。数々の冒険の中にある思い出を引っ張り出し、ヴァレーリヤは少しだけ懐かしい気持ちになった。
そして。
「……まって。トバリも『巻き込まれて』いるのですわね」
「……はい」
時は戦国嵐の時代。群雄割拠の乱世である。
『あの久慈峰弥彦』が大人しくステイホームするはずがなく、それにトバリも引っ張り出されているということだろう。
「とはいえ、いつまでもここにいるわけにもいきません。うちの久慈峰が受けてしまった仕事を、早期に解決したいのです。直近の問題を片付けて、一刻も早く鳳自治区に戻らなくては」
そういうわけで、ローレットへお鉢が回ったわけである。
具体的な依頼内容は天衝種(アンチ・ヘイヴン)の撃滅。
骸骨をモチーフとしたような憤怒の魔物たちで、骸骨戦車と骸骨歩兵という一団であるという。
てっきり死霊術の類いかとおもったが、よおく観察してみると機械仕掛けの怪物のようだ。
「現地で戦闘中の二人と合流して、骸骨機甲小隊を撃滅してください。よろしくおねがいします」
- <総軍鏖殺>髑髏よ髑髏、機械仕掛けの完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月26日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●髑髏よ髑髏
爆発。空を穿ち燃える音が空のかなたより近づいてくる。
ズドンという衝撃と共に、すぐそばの三階建て集合住宅に『彼女』が激突し、ベランダの手すりをおおきく歪ませるかたちで止まっていた。
「う、おおお……」
「トバリ? ラドバウ旅行は、お楽しみ頂けていまして?」
上下逆さになった『フリームファクシの魔女』トバリは、耳にかかる髪をそっとあげながら覗き込む『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の顔を見た。
「楽しんでるように見えるか……?」
「ふふ、冗談ですわ」
手を差し伸べるヴァレーリヤ。その手を掴み、トバリはよっこいせと言いながら身体を起こした。
「ただでさえ忙しいのに、面倒がわらわらと湧いてきやがりましたね。
しかし焦ってはいけません。着実に、堅実に、しっかりとこなす事が一番の近道です」
彼女たちを守るように立ち、件を抜く『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)。
会話中だろうが構わず、骸骨歩兵の一体が建物を迂回しながらこちらへと走ってくる。
「なんなんだろうなこの敵は。死霊かと思えば機械ときた。
どっかに作ってる奴がいるんだろうが…まずはここを制圧しないとな!」
が、そこは百戦錬磨の『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)たち。
翼を滑空状態にして地面すれすれを飛びながら、骸骨歩兵を剣で思い切り破壊しつつスライディング。
オリーブたちと合流する。
「相手のペースに乗せられたら負けだよ。焦っちゃダメ。こういう時は冷静になって行動を選択しないとネ♪」
駆けつけた『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)も『Chocolate ghoul』のスペルを使って残る骸骨歩兵たちを崩していった。
「骸骨だらけ、と思ったがなんだ、機械か。死霊の類でないのなら、物理的に殴れば問題ないだろう」
ガタガタと震えながら上半身を起こし、手を伸ばす骸骨歩兵。手のひらから炎が吹き出――る前に、『燼灰の墓守』フォルエスク・グレイブツリー(p3p010721)が『ジ・アズラーイール』の先端部をハンマーのように叩きつけて破壊した。
彼のいうように、骸骨歩兵はアンデッドを摸した悪趣味な機械にすぎない。
「今、この国は狂気に落ちかけている…だからこそ、私達はそれを止めなければいけないのです」
『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は崩れた骸骨歩兵たちが再び動き出さないのを確認してから、指先にピッと小さなカッターナイフを走らせた。
空中に大きな円を描くように血のついた指を動かし、X字、V字と円周上をきるように走らせ、最後に点をうつ。完成した朱色の魔方陣がボウッと燃えるように輝き、マリエッタの姿を7割ほど『それ』に近づける。
そこへ、軍帽をしっかりと被り直した『鳳の英雄』加賀・栄龍(p3p007422)が駆けつけた。
「お待たせしました、皆さん! ええと……トバリ殿、中将閣下…じゃない! 弥彦殿はどちらに?」
「あ」
服についた砂やら砕けた石やらをぱたぱたおとしていたトバリがはたと気付いて顔をあげた。
「あ……」
その表情のいわんとすることを察し、同じ空を見上げる栄龍。
鼻歌交じりに手をかざす。刀を回転させ風を起こし、吹き付ける炎を振り払う。
口ずさむ歌は軍歌にあらず。子供が歌うわらべうただ。
まるで手鞠遊びでもするような調子で、久慈峰弥彦は骸骨歩兵と切り結んでいた。
「やぁ、楽しいなあ? 皇帝がやられたんは聞いたけど、こないに楽しくなるもんやなあ」
「え、そーお? 確かに歩いてるだけでエンカウントする時代になったのは楽しいかも?」
『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)がその隣で同じように刀をくるくるやって炎を吹き払っていた。
「こう? こうやんの?」
「そーそー、うまいうまい」
「ちゅーーーじょーーーーー!」
すんげー勢いで栄龍がダッシュしてきた。
「じゃない! 弥彦殿ッ、なにやってるんですか!」
「遊――仕事やけど?」
「遊びって言いかけたぞこの元中将」
あとからぞろぞろとやってくるミーナたち。
「ぴんぽんぱんぽーん!迷子のお知らせです。鳳圏からお越しの弥彦様。酒場で、はづみ様がお待ちです。至急、私のところまでお越し下さいましー!」
トバリの箒に相乗りした状態で、ヴァレーリヤが雑誌を丸めたメガホンごしに呼びかける。
「う゛」
はずみの名前を出されるのはつらいのか、弥彦の扇風機がとまった。
浴びせられる炎。
「ちゅーじょー!」
●機械仕掛けの
「しょうがねえなー、A龍くんはー。
この時期に鉄帝旅行は失敗するからやめとけって言ったのにー
ま、なんで失敗するのかっていえばそりゃあ…
後でウチがヴァリューシャと全力で祝勝会するからなんだけどなっ!当然呼ぶから覚悟しろYO☆」
横ピースでてへぺろ顔をする秋奈……は真夏の太陽にやられたのかってくらい真っ黒だった。弥彦につられて扇風機をとめたせいである。
「この人達は本当に……」
「おっけー、全力でぶっ飛ばしてやるぜ。いやーこんだけいたらアクティブスキルが大花火大会だわ」
「えーなー花火大会」
同じく真夏仕様の弥彦がからから笑う。
彼に小言を言い続けピリピリしていた榛名元大佐のことをおもい、栄龍は眉間をもんだ。
祖国のためにと叫んで特攻すればよかった一兵卒から一転、祖国の『領主』となってしまった彼の仕事はえげつないほど多い。多くを文官達になげているとはいえ、のしかかるプレッシャーもまた重いのだ。
それでも……。
「『これ』だけは、変わらないよな」
ヒュウウンという、遠くから風をきる音がした。
大砲の弾が迫る音だと、既に知っていた。
栄龍は軍帽のつばをつまみ、小さく笑い。そして軍刀に手をかけた。
「前に出て、戦い続ける!」
振り向きざまに抜刀。切り上げた剣は砲弾を破壊。ぎらりとにらみ付けると、巨大な骸骨があしらわれたキャタピラ式戦車がこちらへ向けてきゅらきゅらと方向転換している。
走る。
それが兵隊のつとめであり、今なお続くことだ。
栄龍の横には秋奈が並び、弥彦が並び、更にはオリーブも並んでくれた。
「敵は数が多く、一定の連携も見受けられますけど、こちらはイレギュラーズの他にも味方がいます。その方々と連携すれば十分に勝機はあるでしょう。効率良く、そして油断無く」
オリーブのこの真面目さが、今はものすごく頼もしい。癒やしですらある。
兜ごしにこくりと頷いたオリーブに、秋奈たちがおうと答え……そして加速。
骸骨戦車が天に向けて大量に骨の矢を発射。放物線を描いたそれらが頭上から降り注ぐが、彼らはジグザグに走りながらも矢を剣で切り払う。まるで卓越した集団組体操か雑技団のそれだ。
「もーらったー!」
秋奈が剣を繰り出す。事ここに至ってはもはや工夫も外連味もなく、ただ『切断』した。
星を、あるいは時限を斬ると言われたその剣は、この世界でも僅かながら力を取り戻しつつある。故に、骸骨戦車の大砲がその一発で突如輪切りにされたのだ。
驚愕、でもするかのようにがぱりと骸骨の口が開き、中からサブマシンガンが露出するが……その時には既にオリーブの剣が突っ込まれ、射撃に必要な構造そのものを破壊。
弥彦がサイドから回り込むように剣を放ち、栄龍は開いた骸骨の口に銃剣を突っ込み至近距離から撃ちまくった。
内部から破裂し、爆発を起こす骸骨戦車。
オリーブは爆発に巻き込まれぬように飛び退くと、ロングソードを握り直した。
周囲を再確認。建物を迂回する形で骸骨戦車が現れ、それを守るように骸骨歩兵が整列する。
どうやら、秋奈たちが遊んでいた歩兵は先走った連中であったらしい。
「随伴し接近を防止するのが歩兵の役目というわけですか」
ならばと駆け出すオリーブ。それを追い越すような速度でミーナとフォルエスクが走り出した。
「こいつらは任せな。余り前に一人で出すぎるなよ。慌てずに処理していくんだ」
「新鮮な都会の空気を吸いたいなら、この状況を素早く沈静化に向かわせることしかできないからな。……ひどい光景ではあるがな」
フォルエスクは鎌をクルクルと回すと、舞うような動きで骸骨歩兵を切断。それが通り過ぎたのを確認してから、ミーナは鎌に宿らせた力を解放する形で斬撃を飛ばした。
漆黒の斬撃が、まるで昼間の風景を切り取るかのように骸骨歩兵たちへとぶつかる。ぎゃりぎゃりと音を立て、抵抗しようと腕を突き出した骸骨歩兵はその腕から炎をはみ出させ、しまいには爆発炎上してしまった。
「毒を以て毒を制す。だから戦車には戦車をぶつけるのよ!!
征服、蹂躙、圧倒!味の無いスポンジにはクリームとソースを塗りたくるの!
生者でも死者でもないのに骸を模すなんて生意気だわ!責任者は出てきなさい! きゃははっ!」
マリカは『No life queen』のスペルを用いて自らの能力を強化すると、更に『Chariot cherry』を行使。
歩兵を抜けて接近する彼女たちを恐れてか骸骨歩兵が急速後退するが、逃がさない。
マリカは一気に距離を詰めて再び『Chocolate ghoul』を放った。
屍の鎌『The Sweet Death』が骸骨戦車へガツンと突き刺さり、その力を放射状に行使していく。
「人が相手ではないのならば、遠慮はなしで行けそうですね」
マリエッタが宙に手をかざすと、回転しながら血の大鎌が振ってきた。
それをキャッチし、回転をころさぬようにくるくると自らも周りながら構えに入る。
斬撃……ではない。もはや投擲といって差し支えない形で鎌を放ると、回転を強めた血の大鎌は巨大な回転のこぎりと化して骸骨戦車へ食らいついた。
「来なさい。機械仕掛けの髑髏の兵。終わりなき戦いは、この私も得手としているのですよ」
血のような目をしたマリエッタはどこかうっとりと笑い、それを横目に見ていたトバリがぞくりと肩をふるわせた。
「うお、なんだアンタ、魔女か!?」
「まじょではないですけど!?」
ろれつの定まってない反論をしながら、マリエッタはビッと骸骨戦車を指さす。
「トバリさん、ヴァレーリヤさん。お願いします!」
「お任せあれ、ですわ!」
ヴァレーリヤはトバリの箒からぴょんと飛び降りると、骸骨戦車めがけてまっすぐにダッシュした。
「トバリ、悪いのだけれど、上空から撹乱して頂いてもよろしくて?」
「しょーがねーなー!」
トバリは高度をあげると空に小さな魔法の杖を翳した。
燃える髑髏のような幻影をいくつも作り出すと、それを骸骨戦車めがけて発射。
骸骨戦車はそれを撃ち落とそうと砲身の角度をあげ、骨の矢をトバリめがけて撃ちまくった。
しかしそこは空中戦に長けたフリームファクシの魔女。箒にまたがったまま華麗に矢を回避する。
それでもなんとか落とそうと骸骨戦車が集中している……その隙に。
「行きますわ! どっせえーーい!!!」
飛びかかったヴァレーリヤのメイスが激しい炎をあげ、骸骨戦車にあしらわれた巨大髑髏を叩き潰した。
いや、それだけではない。内部の燃料にでも引火したのか激しい爆発を引き起こす。
ヴァレーリヤはその爆風にあおられて空中を舞うが、
「ヴァレーリヤ殿!」
ヘッドスライディングした栄龍によってキャッチされた。
「なーいすA龍ゥ」
「ないすーやでぇ」
ビッと親指を立てて笑う秋奈と弥彦。ミーナたちの治癒をうけたからなのか、もうすっかり肌色が元通りである。
(トバリ殿、苦労したんだろうな。この人相手に……)
栄龍は心の中だけで呟いて立ち上がる。
振り返ると、新たな骸骨戦車と骸骨歩兵が現れこちらに狙いをつけはじめた。
駆け出し、両手から炎を噴射する骸骨歩兵。
が、炎なにするものぞ。
オリーブ、栄龍、秋奈、弥彦は炎を突っ切り歩兵へと急接近。
「俺にまで斬りかからないでくださいよ、弥彦殿ッ――オオオ!」
物凄い大ぶりで味方ごと切り払ってしまうような斬撃を繰り出す弥彦……の斬撃の下をすり抜けるように栄龍が骸骨兵士に銃剣を突き刺し、ライフルを撃ちまくる。
「バイブスアゲてこーぜ! いえーあ!」
オリーブと秋奈はといえば、斬撃の上を飛び越えるようにして骸骨兵士の上をとり、大上段からその偽りの髑髏をかちわった。
金属パーツがバラバラに飛び散り、その上をマリエッタが、そしてフォルエスクとミーナが飛び越えていく。
真正面から振り払うべく、骸骨戦車は大砲を発射。
しかし、マリカが『Immortal tart』によって呼び出した『お友達』が砲弾の盾になった。
「併せて下さいっ!」
「おーけー」
「――ん」
マリエッタは血の大鎌を、フォルエスクは黒き大鎌を、ミーナは死神の大鎌をそれぞれ振りかざし、全く同時に骸骨戦車へと斬りかかった。
重なる斬撃。そして、ヴァレーリヤと栄龍が両サイドから飛びかかり、剣とメイスを振り上げる。
「加勢、致しますわ!」
挟み撃ちによって逃げ場を無くしたことを察した骸骨戦車が、苦し紛れなのか恐怖ゆえなのか、がぱりと髑髏の口を大きくあけた。
それだけだ。最後は彼女たちの集中攻撃によって見事なまでにスクラップと化したのだった。
●そして鳳は
「そういえばトバリ、ここに来たからにはやりたい事があったのではなくて?」
戦いを終え、散らかった機械の破片やらを片付けたあたりでヴァレーリヤが振り返った。
「え、ああ、いやあ……」
トバリは頭をかりかりとやって斜め上を見る。
その方向には見覚えのある建物。
確か、トバリがフリームファクシから失踪し身を寄せていたアパートメントの部屋があった。
「魔導書を、な。部屋に……」
確かはずみは『整理をつけにきた』と言っていた。荷物整理、ということだったのだろうか。
「つかそれどころじゃねーよ。情報も寸断されちまってフリームファクシの森もどうなってるかわかんねー」
「ん、もどるの?」
マリカが機械仕掛けの髑髏を拾ってから、興味なさげにぽいっと投げ捨てる。
フォルエスクはその様子をただ横目で眺めていた。
「あの、すみません。フリームファクシの森というのは?」
マリエッタがそっとオリーブに尋ねると、オリーブは分厚い報告書を取り出してぺらぺらと捲った。
「魔女のみによる、『魔法の血統』をもつ一族だそうです。交配を行わず外から魔女を招き入れ、魔法を脈々と高度化させていると聞きます。特色として、空中戦闘に優れた魔法がありますね」
「そんな場所が……」
トバリに関しては少々事情が複雑なので色々はぶくが……。
「終わったし、ちゅーじょーも鳳圏帰るんでしょ?」
秋奈がかるーい調子で鳳圏のある方角を指さす。
「ん?」
「え?」
刀を収めて全く別方向に歩き出そうとしていた弥彦が振り返った。
「弥彦殿? ともかく、仕事は終わったのですから帰りましょう」
「けどラドバウまだやっとるし」
「はづみ殿がかなりお怒りなんですからね!」
連れ帰れなかったらその怒りが自分に向くかも知れない。そう想像して栄龍は弥彦の腕をむんずと掴んだ。
一方で……。
ミーナはあちこちに散らばったパーツを拾ってしげしげと眺めていた。
「これだけのものを、魔術じゃなく機械仕掛けで動かすのはそれなりに知識がいるはず……。誰が作った? それも、こんな無作為にばらまく意味があるのか?」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
戦いは終わり、彼らは鳳圏(鳳自治区)へと帰還を始めました。
GMコメント
●オーダー
骸骨機甲小隊の撃滅。
事情は色々あるのですが、要するにヴィーザル出身の彼らはすぐにでもヴィーザルに帰って祖国の事情を確認したいので直近で抱えてる討伐仕事を片付けてしまいたいということのようです。
●エネミーデータ
・骸骨戦車×複数
巨大な骸骨に炎の車輪がついた戦車。骨の矢を雨のように発射したり、大砲から打ち出したりする。
非常に頑丈でぎゅいんぎゅいん走る。見た目から死霊術感が出ているが、どうやら機会仕掛けであるらしい。
・骸骨歩兵×複数
随伴歩兵としてついてきている骸骨。両手から炎の魔法を放つ。
よおく見ると魔術発生機を内臓した骨型の機械であるようだ。
●味方
・久慈峰弥彦
ヴィーザル系鳳圏出身。鳳圏陸軍の中将殿。
えらく強いが戦いを楽しみすぎる性格のせいで帰ってきてくれない。さっさと仕事を終わらせて帰らせよう。
・トバリ
中将殿に引っ張り出されてる魔女。同じくヴィーザル系の『フリームファクシの魔女』という部族のひとりで、卓越した飛行戦闘能力と魔術の才をもっている。
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