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シナリオ詳細

<デジールの呼び声>僕等の貞操を守って

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●竜宮城を闊歩する濁悪海軍
 深怪魔の出現で混乱する竜宮城を、明らかに海賊と言わんばかりの風体の男達三十人ばかりが、悠々と歩いて行く。その顔には、いずれも下卑た笑みが浮かんでいた。
 男達は、海賊集団海乱鬼(かいらぎ)衆の中でも凶悪さ、凶暴さ、残忍さで群を抜く集団、濁悪(だあく)海軍に属する者達だ。
「それにしても、初物ばかりの店なんて、楽しみで仕方ありやせんね、お頭」
「ああ。もう、今から俺の息子が疼いて仕方ねえや」
 集団のボスと思しき男に、如何にも楽しみで仕方ないと言った風情で部下が話しかけた。お頭と呼ばれた男は、ニヤリとした笑みを浮かべながら部下に応える。それを聞いた部下達は、ゲラゲラと下品な笑い声を上げた。
 濁悪海軍の者達が狙っているのは、竜宮城はマイスター通りにあるバニークラブ『イノセント・リリー』だ。イノセント・リリーのコンセプトは、「キャストは全員『純潔』」。
 このコンセプトが刺さる者には刺さったのか、イノセント・リリーは大手のクラブほどではないがなかなかの人気を博していた。だが、その一方で濁悪海軍の者達に興味を抱かせ、竜宮城の混乱もあって招き寄せる結果となってしまった。

(まずい……このままじゃ、みんなが危ない)
 その様子を物陰から見ていた、まだ幼さの残るバニーボーイは、クラブに迫る危機を知らせるべくイノセント・リリーへと裏道を駆けた。

●『イノセント・リリー』にて
 バニーボーイからの報せを受けたイノセント・リリーは、ローレットに救援を求めた。その要請を受けた『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)は、何とか手の空いているイレギュラーズをイノセント・リリーに集めることに成功する。
「アタシの声に、応じてくれて、ありがとうよ」
 いろいろと駆けずり回ったのだろう、はぁはぁと肩で息をしながら、ユメーミルが言った。
「今回の依頼は、さっきも言ったとおり、このクラブとキャスト達を守ることだよ。
 このクラブの中に入れちまうと厄介だし、キャスト達が巻き込まれるかも知れないから、何とか店の外で食い止めておくれ」
 ユメーミルの言葉にイレギュラーズ達が頷いた時、バァン! とクラブの入口が開いた。襲撃かと緊張が走ったが、中に入ってきたのは襲撃者ではなくユメーミルの元部下だった。
「姐御、ここを狙ってる奴らの素性がわかりやした! 奴らは濁悪海軍で、その頭は仁藤 令覇(にとう れいは)でさぁ!」
「だから姐御じゃなくて……まぁ、それはおくとしても、仁藤 令覇とは厄介だね」
 いつものツッコミも、さすがに時間が無くて端折られる。令覇の噂は、ユメーミルも聞いていた。
 令覇は濁悪海軍の幹部格の一人と見られているが、特筆すべきは令覇らが略奪を行った後に残る遺体には、年老いた者でない限り男女問わず、拘束され執拗に陵辱された跡があることだ。その中で若い女性の遺体は目立って少ないのだが、これは拠点とする船に連れ去られたものと見られている。
 さらに令覇が厄介なのは、襲撃から逃げ延びた生存者の話によると魔種である可能性が高いことだ。常人なら息絶えているであろう程の矢弾を受けても、平然としていたと言う報告がある。
「令覇が厄介なのは、おそらく魔種だからだよ。得物は二本の刀、いわゆる二刀流ってやつだね」
 さすがにキャスト達がいる前で前者の理由は言えず、ユメーミルは後者の理由だけを告げ、その戦い方に触れた。

●キャスト達の懇願
 ユメーミルからの説明が一段落すると、キャスト達の中から一人の――濁悪海軍が襲来することを知らせた――バニーボーイが、おずおずと進み出て何か言いたそうにしていた。それを察したユメーミルが、発言を促す。
「イレギュラーズの皆さん、僕等の貞操を守って下さい。どうか、よろしくお願いします」
 バニーボーイが発言する間、縋るような視線がイレギュラーズ達へと向けられる。その主の中には、このクラブのコンセプトもあって幼ささえ感じさせるほどに若い者も少なくない。
 守って欲しいのが「僕等を」ではなく「僕等の貞操を」なのは、令覇に襲われた者のその後を知らない故に命だけは奪われないと考えているから、そして貞操を奪われればこのクラブで働けなくなってしまうと考えているからなのだろうと、ユメーミルは推察した。
 だが、わざわざより過酷な現実を口に出して指摘することもない。イレギュラーズ達が令覇らを撃退すれば、何の問題もないのだから。
「アタシも純潔は白馬の王子様に捧げたいからねぇ、その気持ちはわかるよ。
 大丈夫、イレギュラーズはきっとアンタらを守ってくれる。
 だから、アタシと一緒にイレギュラーズを信じて、ここから応援してやっておくれ」
 故に、ユメーミルはキャスト達に出来る限りの笑顔を見せながら、そう告げた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 そう言えばユメーミルもこのクラブのキャストになれるのでは、とか思いました。

 それはさておきまして、今回は全体依頼<デジールの呼び声>のうちの1本をお贈りします。
 好色の魔種仁藤 令覇や、彼に従う濁悪海軍を退け、イノセント・リリーのキャスト達の貞操を守って下さい。
 
●成功条件
 敵の撃退

●失敗条件
 令覇、もしくは濁悪海軍が1人でもイノセント・リリーの店内に進入する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 竜宮城のマイスター通り、イノセント・リリーの前。
 道幅は戦闘には十分であり、イノセント・リリーを含む周囲の建物には保護結界が展開されています。
 環境による戦闘へのペナルティーはありません。

●初期配置
 イレギュラーズ達は、全員イノセント・リリーの入口前にいます。
 令覇と濁悪海軍は、全員マイスター通りの、イレギュラーズ達から40メートル離れた位置にいるものとします。
 なお、付与等に関しては戦闘開始前にかけていても構いません。

●仁藤 令覇
 濁悪海軍の幹部の一人です。色欲の魔種であり、男女問わずその毒牙にかかった者は少なくありません。
 竜宮城内で深怪魔が出現した混乱に乗じて竜宮城に入り、イノセント・リリーのキャスト達を手下達と共に陵辱しようとしています。
 二刀流の使い手で、攻防共に隙がありません。海賊らしく軽装ではありますが、二刀により攻撃を受けたり流したりしますので、防御技術も高くなっています。
 そして、令覇は1回の行動で左手、右手による攻撃を1回ずつ行います。これはEXA判定の成否によらず確定で、EXA判定が成功すればさらに左手、右手による攻撃を1回ずつ行います。
 なお、イレギュラーズ達が隙を見せれば、面倒なイレギュラーズ達の相手は手下に任せてイノセント・リリーへと侵入し、己の欲望を満たそうとすることでしょう。
 また、イノセント・リリーのキャスト達を陵辱したいと言う欲望が強いため、【怒り】が効きにくくなっています。

・攻撃能力など
 刀 物至単 【邪道】【出血】【流血】【失血】【滂沱】【毒】【猛毒】【致死毒】【廃滅】
 薙ぎ払い 物至範 【邪道】【出血】【流血】【失血】【滂沱】【毒】【猛毒】【致死毒】【廃滅】
  両手の刀で周囲を薙ぎ払います。この攻撃は、両手を同時に使うため1回の行動で1回までとなります。
 衝撃波 物/近~超/単 【邪道】【出血】【流血】【失血】【毒】【猛毒】
  剣閃によって、敵に衝撃波を放ちます。
 十字剣 神超貫 【防無】【溜】
  闘気を充填した二刀で十字を作り、凝縮した闘気を敵に向けて放出します。
  威力は絶大なのですが、闘気の充填に時間を要するためホイホイと連発することは出来ません。
  この攻撃も、両手を同時に使うため1回の行動で1回までとなります。
 【怒り】耐性(大)

●濁悪海軍 ✕30
 海賊集団海乱鬼衆の中でも、特に凶悪さ、凶暴さ、残忍さで群を抜いている巨大勢力。そのうち、令覇に従う者達です。
 令覇と共に、イノセント・リリーのキャスト達の陵辱を満喫しようとしています。
 能力傾向として特筆すべきは、攻撃力にやや偏重しているくらいでしょうか。防御については、軽装であるため回避>防御技術となっています。
 令覇同様、隙を見せればイノセント・リリーへと侵入し、己の欲望を満たそうとします。
 また、イノセント・リリーのキャスト達を陵辱したいと言う欲望が強いため、【怒り】が効きにくくなっています。

・攻撃能力など
 刀 物至単 【出血】【流血】【毒】【猛毒】
 手裏剣 物遠単 【出血】【毒】【猛毒】
 【怒り】耐性(中)

●イノセント・リリー
 竜宮城のマイスター通りにある、ちょっと変わったコンセプトのバニークラブです。
 そのコンセプトとは、この店のキャストはバニーガールもバニーボーイも、異性との性経験が無いと言うことです。
 もしも経験してしまった場合、この店のキャストから「卒業」と言うことになります。
 なので、もしキャスト達が令覇らに陵辱されてしまった場合、ただ純潔を奪われるだけでなく働き口も奪われることになります。
 まぁ、それ以前におそらく令覇らの船に連れ去られ、奴隷として陵辱され続け最後には用済みとして殺されることになるでしょう。

 なお、外から店内に入る経路は、通りに面している入口とその反対側にある裏口の2カ所のみです。
 窓などからの侵入については、考えなくていいものとします。

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <デジールの呼び声>僕等の貞操を守ってLv:20以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年10月08日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
プロメテウスの恋焔
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
うそつき
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
柊木 涼花(p3p010038)
奏でる言の葉
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女
解・憂炎(p3p010784)
通行止め

リプレイ

●濁悪海軍の襲来を前に
(外道が……一匹足りとも、生かしておけないね……)
 バニークラブ『イノセント・リリー』のキャスト達を弄ばんとする濁悪海軍への憤りを抱きつつ、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はイノセント・リリーの裏口を封鎖しにかかっていた。戸には堅い板を打ち付けて開けなくした上、その前には土嚢を積み上げている。濁悪海軍のイノセント・リリーへの進入を阻止すべく、サイズは鍛冶屋として、あるいは職人として、持てる全ての技術を注ぎ込んでいた。
 その頃、イノセント・リリーの中では、『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)がキャスト用の服を借りてバニーボーイの姿になっていた。アルヴァは着替えつつ、縋るような視線と共になされたキャスト達の懇願のことを思い出していた。
(僕らの”貞操を”守って、か……確かに随分と呑気な話だけど、余計なことは知らぬが華か)
 賊がキャストを狙って押し入ってくるのであれば、奪われるのはキャスト達の貞操だけで済まないのは容易に想像の付くところだ。自由や生命さえ、奪われてもおかしくはない。ましてや、今回の相手は凶悪さで知られる濁悪海軍であり、それを率いるのは色欲の魔種だ。そうなるのは、十中八九――いや、百のうち九十九までは間違いないところであろう。
 故にアルヴァにはキャスト達の懇願が呑気に思えたのだが、確かに、年端もいかない少年少女達にわざわざ過酷な現実を教える必要もない。
「良いぜ。どの道魔種は俺らの討伐対象だ、守り抜いてやるさ」
「うん。イノセント・リリーのみんなには手出しさせないよ!」
 アルヴァの隣でバニーボーイ姿に着替えている『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は、そう意気込みながらアルヴァの言に頷いた。もっとも、リュコスはキャスト達を待ち受ける運命については本人達よりもはっきりとは理解しておらず、「何か酷いことをされる」と言う程度の認識でしかない。それでも、キャスト達を守るには十分な理由だった。
 『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)もまた、アルヴァやリュコスとは別の部屋でバニーガール姿へと着替えている。
(話だけでも反吐の出る下衆野郎達ね……ええ、見過ごせないに決まってるじゃない!)
 そう憤りつつも、セレナの身体は小刻みにカタカタと震えている。そんなセレナの身体を、『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)が後ろからそっと優しく抱きしめた。
 怖くて震えているのではない、怒りで震えているのだ――後ろを振り返りそう言おうとしたセレナだったが、玉兎が何も言わなくていいと首を横に振りながら微笑みかけると、ふぅ、と息を吐いて玉兎にその身を任せた。セレナの内の恐怖心は振り払えたわけではなく、まだ身体の震えは収まらない。だが、玉兎の抱擁は安心と勇気をセレナに与えており、その震えを確かに和らげていた。

「純潔を奪っ……!? そ、そんなこと、絶対にさせるわけにはいきません!
 それに、もし負けたらわたしたちも……」
 色欲の魔種仁藤 令覇と、令覇が率いる濁悪海軍の所業を聞いた『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)は驚き、最悪の事態を一瞬想像してしまった。だが、涼花はぶんぶんと首を横に振って、その最悪の想像を頭から振り払う。
 今は、負けたらなどと考えている場合ではない。何しろ、相手は三十、こちらは十で多勢に無勢であり、しかも相手には魔種がいる。涼花の支援が、戦線維持の要になるかも知れないのだ。
(勿論いつも全力ですけれど、今できる最高の支援を!)
 恐怖に立ち向かう勇気なら、既に仲間達に貰っている。ならば、涼花は全力かつ最高の支援でそれに返すまでだ。皆で、最高の結末を掴み取るために。
「……自らの欲望を満たす為に陵辱を繰り返すだなんて、とんだケダモノだわ」
 涼花とは違って、嫌悪感たっぷりに言い放ったのは、『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)だ。そんな連中に純潔を奪われると考えたらなどと考えるだけでも、アルテミアには悍ましい。
「いけ好かない奴らだな。ならばこそ、僕らが黙ってはおけないよ」
「自らの欲望を満たすためだけに人を弄ぶ輩……絶対に許さんであります!」
 アルテミアの言に呼応するように、『だから、守るのさ』解・憂炎(p3p010784)は静かに不快感を、『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は激しい義憤を露わにした。
 憂炎の今回の立ち回りは「戦術家」であり、実際にイレギュラーズの配置から不慮の事態への対応など、様々な点について憂炎は方策を固めていた。その中でも、アルテミアは魔種にチェックメイトをかけるキーパーソンである。また、この店を絶対に守ってみせると意気込んでいるムサシも、イノセント・リリーに濁悪海軍らを進入させないための最終防衛ラインを担っている。

(ああ、色欲ねぇ……分かりますよ分かりますよ良く知っていますよ?)
 聖職者風の装いの『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)だけは、令覇ら濁悪海軍の所業を聞いて、微かに笑みを浮かべていた。
 色欲は容易に正気を奪い、時には命をも簡単に奪う、甘美な毒だ。そして、ライ自身が用いる毒でもある。故に、令覇ら濁悪海軍の所業もライには理解しうるところだ。
 そのライの笑みには、真っ当な聖職者は持ち得ない、甘い蜜で獲物を誘き寄せては食らう食虫植物のような趣があった。

●マイスター通り側にて
 イノセント・リリーの出入口を、表も裏もサイズが封鎖し、そのそれぞれにイレギュラーズ達が分かれて配置完了したところで、マイスター通りを悠々と歩く濁悪海軍の姿が見えた。そのボスと思しき男――色欲の魔種、仁藤 令覇――が、ヒュゥ♪ と嬉しそうに口笛を吹いた。店の前にいる七人の内、三人がバニー姿であり、一人は紅く可憐なドレスに身を纏った少女で、残る二人も若い女性だったからだ。ボスと違い、男色の趣味はない濁悪海軍らも、五名が女性とあって下卑た期待に顔をにやつかせた。
「わざわざ店の外で出迎えたぁ、ありがてえな。だがその様子を見るに、健気にも抵抗しようって腹か?」
「先へ進ませるわけにも、卒業するわけにもいかないんでね」
 アルヴァは濁悪海軍らを縫うようにして駆けながら、令覇の問いに答え、その前に立ち塞がった。「卒業」と言う言葉を用いることで、純潔を喪ったら店を去ることになるイノセント・リリーのキャストであると思わせる。
「破っ!」
 そのまま、アルヴァは気迫を込めた大喝を放った。ビリビリとした衝撃が令覇を襲う――が、令覇を後ずさらせるまでには至らない。
「ほう……やるじゃねぇか。ますます、後が楽しみになってきたぜ」
「勝手に言ってろ」
 舌なめずりする令覇の言を、アルヴァはあっさりと切って捨てた。
「うさぎさんは、簡単につかまらないんだよ!」
 リュコスは濁悪海軍がより多く密集している所へ飛び込み、その影からうねうねと蠢く何かを生やして、濁悪海軍らを攻撃する。
「うわっ! 何だ、こいつはっ!?」
 突如影から生えて牙を突き立ててくる何か――Do=《怒》に、濁悪海軍らは困惑した。その間にも、リュコスの周囲にいる濁悪海軍らは次々とその牙の餌食となっていく。
 令覇は両手の二刀でアルヴァに斬りつけていくが、その刀身がアルヴァを捉えることはない。アルヴァの回避の技量は、令覇の攻撃の技量を上回っていたのだ。
「くそっ、何故当たらん……!? テメェ、イレギュラーズか!」
「さぁ、どうだろうな? ただのバニーボーイに当てられない、テメェがヘボいだけじゃねぇのか?」
 令覇は遅まきながらもアルヴァ達の正体に気付くが、アルヴァははぐらかしつつ、令覇を挑発した。もっとも、魔種たる令覇の攻撃を避ける時点で、アルヴァがただのバニーボーイと言うのは無理があったろう。
「鍛冶妖精姫、この清き体は妖精に捧げる物、汚せる物なら汚して見せなさい。
 力ずくでしか快楽を貪れない哀れな魔種や海賊よ……地獄に行け!」
 サイズはメープルシロップの甘い香りを漂わせながら、仲間達と濁悪海軍の中間あたりまで進み出て、濁悪海軍らを誘惑しつつ挑発した。セレナが濁悪海軍らを誘引する手筈とは言え、それは恥ずかしく精神的にきつい役割であり、サイズは申し訳なささえ感じている。故に、出来る限りセレナの負担を減らしたいところであった。そして、濁悪海軍の何人かは、上品な姫と言った態のサイズに、欲望を湛えた視線を向けた。
 そして挑発と同時に、サイズは黒き大顎を喚び、令覇に放っていた。ガジリ、と大顎は令覇の肩に食らいつき、その肉を食い千切る。だが、令覇は動じることなく平然としていた。
「…………」
 濁悪海軍らとは言葉を交わすにも値しないとばかりに、玉兎はただ無言で、濁悪海軍らの運命を闇のように深い黒へと塗り替える。
「……うっ!?」
 運命を塗り替えられた濁悪海軍らはその生命をも蝕まれていたが、自身に何が起こったかわからないと言った様子で苦しげに呻いた。
「純潔のバニーならここにも居るわ。ねえ、欲しくない?」
 セレナは前に歩み出ると、やや前屈みになって、胸のジッパーを少し下ろしながら濁悪海軍らに向けてアピールした。持てる限りの技能を尽くして、純潔と性的な誘惑と言う一見相反する要素を両立させている。また、ここでリュコスと涼花がテスタメントを用いてセレナの技能を強化したこともあり、セレナは濁悪海軍らの注目の的となった。
「持ち帰るならわたしを、どう、かしら?」
 顔を恥ずかしさで火照らせながら、上目遣いに瞳を潤ませて、ジッパーの隙間から素肌を覗かせるセレナが声を震わせつつ誘う姿は、如何にも初心(うぶ)で無垢な少女が、健気にも他のキャスト達のために自らの身を犠牲に捧げている様に濁悪海軍らには見えた。
 そんな少女を、濁悪海軍らが放っておくはずもない。セレナの周囲には、たちまち十人の濁悪海軍が集った。残る二十人の内、五人はサイズへと集り、五人はイノセント・リリーの中へ進入すべくムサシを排除せんとする。そして十人ばかりが、面倒なイレギュラーズを相手にするよりはと、裏口へ向かった。
「あぁ? 何だぁこりゃぁ!?」
「まぁ、いいじゃねぇか。苦労させられる分、たっぷりと楽しませてもらうとしようや」
「へへっ。そうだな、兄弟」
 セレナに手を出そうとした濁悪海軍らは、セレナを護る結界に阻まれて素っ頓狂な声をあげた。だが、それは濁悪海軍らの欲望をそそる結果にもなった。
 獲物を狩る獣のような目をしながら、濁悪海軍らは結界を破壊しようと、刀で斬ったり突いたりを繰り返してくる。その度に、セレナの心は恐怖に襲われ、泣きたくなった。足も、ガクガクと震えている。
 だが、イレギュラーズでもなく、結界も持たないキャスト達がこんな目に遭ったら、如何であろうか。きっと、今のセレナ以上の恐怖を感じるに違いない。
(だから、代わりに戦わなきゃ。暴力と、欲望と。何されたっていい)
 傷つけられようが辱められようが、心だけは屈しないと、セレナは改めて覚悟を決めた。
(く……俺がもう少しこいつらを引き付けられていれば……ごめんな)
 サイズは五人に囲まれ、その攻撃を避け、あるいは自身の本体である鎌で受け流しながら、セレナの様子を気にしていた。もう少し濁悪海軍らを誘き寄せ、セレナの負担を軽減できていればと思う。
「ハッハァ! 隙ありだぜぇ! こいつは決まったろう!」
 その隙を衝いて、濁悪海軍らの一人がサイズの腹部に、峰打ちではあるが強烈な一撃を見舞った。もうサイズを倒したものと思い、その濁悪海軍は得意げにする。だが。
「こんなもの、痛くも痒くもないな」
 ドレスの下に仕込んでいた追加装甲が、濁悪海軍の刀を受け止めていた。サイズにダメージが全くないわけではないが、今のセレナの状況を思えば、この程度は何らの痛痒にもならない。
「さぁ来い、悪党ども……! 最後の最後の最後まで自分はここから下がらない……!」
「うるせえ! 邪魔だ! 退けよオラァ!」
 イノセント・リリーの入口の前で立ちはだかるムサシを片付けようと、五人の濁悪海軍は各々ムサシを攻撃した。たちまち傷を負わされるムサシだったが、ここで倒れることは出来ない。ムサシが倒れてしまえば、それはこの場を明け渡すに等しく、いくらサイズが入口を封鎖しているとは言え遅かれ早かれイノセント・リリーへの侵入を許すことになるだろう。
「誰一人として、貴様らに汚させはしないであります!」
「うがはっ!」
 ムサシはそう咆えながら、質量を伴った残像を発生させつつ、その残像と共にレーザーコーティングされた警棒を伸ばして濁悪海軍の一人を連続で殴打した。既に玉兎に運命を黒く染められていたその濁悪海軍は、深手を負い昏倒寸前に至る。
(セレナさん、頑張って――!)
 濁悪海軍らに囲まれ、結界を攻撃されているセレナを援護するべく、涼花は調和の力を癒やしの歌として響かせた。セレナの元に届いた歌声は、攻撃を受けて所々ひび割れていた結界を、完全にではないが修復する。セレナは、涼花に向けて軽くペコリと頭を下げた。
 セレナに頷き返した涼花は、すぐに戦況を見据えた。回復役として、誰一人倒れさせるつもりはない。そのためなら、例え限界を超えてでも、最後まで歌声を戦場で響かせる覚悟だった。

●裏口にて
 表のイレギュラーズを相手していられないと裏口に回った濁悪海軍の十人だったが、ある者はチッと舌打ちをし、ある者はだらしない笑みを浮かべながら欲望に塗れた視線を向けた。舌打ちの理由は、裏口にも三人のイレギュラーズがいたこと。そして、笑みと視線の理由はそのうち二人が犯し甲斐のありそうな女性であることだ。
 濁悪海軍らの視線は、出るところががしっかりと出ていて女性的な肉感のあるアルテミアと、スレンダーで清楚な聖職者風のライとにはっきりと分かれた。
(あいつらは、純潔を嗅ぎ分ける嗅覚でもあるの!?)
 ジロジロと舐め回すように肢体を見つめてくる濁悪海軍らの視線に、ゾワゾワと鳥肌が立つのをアルテミアは感じていた。実際には、濁悪海軍らにそんな嗅覚はないのだが、それはさておき。
「悪いけれど、お前たちのような下郎共に屈するほど私は安くないのよ!!」
 纏わり付く視線の不快感を振り払うかのように、アルテミアはダッと前へと駆けた。そして濁悪海軍らの中へと飛び込むと、青き細剣と淡い青の短剣の二刀で、周囲の濁悪海軍らを次々と斬って傷を負わせていく。
「ぐっ、この女(あま)ァ!」
「なぁに、後の楽しみが増えるってもんさ」
(……ケダモノは、何処までもケダモノなのね)
 戦闘中にもかかわらずそんな会話をしている濁悪海軍らに、半ば呆れ、半ば不快感を強めながら、アルテミアは濁悪海軍らを斬り続けた。
「かっ……神は、このようなふるまいを許されませんよ! ひっ、嫌……来ないでください……!」
 ライは濁悪海軍らの視線を受けると、涙目になり手で自身の胸を庇いながら怯えた。もちろんこれは演技であるのだが、濁悪海軍らにそれを見抜けるはずはなく、まんまとライに騙された。
「大人しくしてりゃ、可愛がってやるがよ?」
「そ、んな……やめ、て……!」
 濁悪海軍らの半数が、次々とライを峰打ちで打ち据えていく。だが、それはライにとっては望むところ――むしろ、生温くさえあった。傷を負えば負うほど、ライの復讐の刃は研がれていくのだから。
 アルテミアにも濁悪海軍らの半数が迫っていたが、そもそもアルテミアの回避の技量は、濁悪海軍らの及ぶところではない。濁悪海軍らの刀は、空を斬るばかりであった。
「イルナークが解・憂炎、罷り通らせてもらう!」
 憂炎は竜を思わせる咆哮を、ライを取り囲む濁悪海軍らに向けて放った。その咆哮を受けた濁悪海軍らのうち三人までは十メートルほど後ずさりさせられて、脚力も落とされていたが、濁悪海軍らの目は引き続きライに向いたままだった。

●令覇の最期
 濁悪海軍がいくら凶悪であり、また数でイレギュラーズを上回るとは言っても、イレギュラーズ達の敵ではなかった。ムサシ、ライが深手を負わされ、セレナの結界が破壊される寸前まで追い込まれてはいた。だが、ムサシはいくら傷を負わされても必殺と言える一撃を受けない限りは決して倒れることはなく、ライは傷を負えば負うほど攻撃の威力が上昇するため、これらは戦術を立案した憂炎の想定内であった。
 セレナは危ういところではあったが、涼花からの癒やしが集中していたこともあり、可能性の力を費やすことなく耐えきった。
 令覇はアルヴァを振り切る事も出来ず、またアルヴァにまともに攻撃を当てる事も出来ず、時間を浪費してしまった。その間に、表口側ではリュコスや玉兎やサイズの範囲攻撃によって、裏口側ではアルテミアの範囲攻撃や傷を負い威力を増したライの攻撃によって、濁悪海軍らは全滅の憂き目に遭った。
 令覇は不利を悟り逃亡を図ったが、アルヴァを振り切れない以上、逃亡が成功するはずもない。アルテミア、ライ、憂炎らが裏口から回ってくると、もう「チェックメイト」だった。

「ごばあっ!?」
 電光石火の如く令覇との距離を詰めたリュコスの影から飛び出したⅠ=《哀》が、全身に傷を刻まれて死に体の令覇の背中をアッパー気味に殴りつけ、その身体を宙に浮かせた。
「今まで傷つけた人間の痛み、その報いを受けるがいい」
 その令覇を狙い、アルヴァは対人狙撃銃「HOUND&CHIMERA Model 7360」を連射する。四発の銃弾が令覇の身体を貫通し、傷口からさらなる血を流させた。
「今まで好き勝手してきた報いを、ここで受けなさい!」
「うぐおっ!」
 無数の残像を発生させながら飛翔したアルテミアが、その残像と共に令覇を突く。令覇の身体には蜂の巣にされたような、無数の穴が空いた。
 令覇は着地すると、背後から攻撃してきたリュコスに連続して斬りつけ深手を負わせたが、それが最後の抵抗だった。
「これで、終わりだ!」
「ごきげんよう。さようなら」
「必殺! ゼタシウムブレイザーV!」
「海賊の暴力よりも、僕らの知恵の方が上だったな」
「…………」
 着地からの攻撃で出来た隙を狙い、サイズが、ライが、ムサシが、憂炎が、玉兎が、令覇を仕留めんとして一気に攻めかかった。黒き大顎が、令覇の左脇腹に深々と牙を突き立ててガブリと食い千切る。魔力で構成された五十口径の弾丸が、眉間を貫通する。ムサシの必殺剣が、胴体にV字の傷を深々と刻む。生ハムの原木が、後頭部をゴスッ! と強打する。剣先に集約された魔力ごと、鳩尾に星の剣が突き刺さる。
 五人からの一斉攻撃を受けた令覇は息絶えたりこそしなかったものの、既に戦う力を喪っており、両手の刀をそれぞれ杖代わりにして立っているのがやっととなった。もっとも、死ぬまでの時間がわずかに伸びたに過ぎない。
「その薄汚い欲望ごと、灰にしてあげる!」
 令覇に止めを刺すべく、セレナは殲滅の聖光を令覇に放った。既に生命力が残っていない令覇に抵抗する余力はなく、令覇の身体は徐々に灰へと変わっていき、さらさらと崩れて消えていった。
「セレナさん、大丈夫ですか!?」
 戦闘が終わったと結界を解き、力が抜けて崩れ落ちそうになったセレナを、駆け寄ってきた涼花が危ういところで抱き抱えて支える。そして涼花は、セレナの心身を癒やすべく歌う。その歌声はマイスター通りに、そしてイノセント・リリーの店内に、優しく響き渡るのだった。

成否

成功

MVP

アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮

状態異常

リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)[重傷]
うそつき
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)[重傷]
あいの為に
ムサシ・セルブライト(p3p010126)[重傷]
宇宙の保安官
セレナ・夜月(p3p010688)[重傷]
夜守の魔女

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍によりイノセント・リリーのキャスト達の純潔は守られ、令覇ら濁悪海軍も全滅しました。
 MVPは、魔種令覇をマークし続けて、その自由な行動を封じ続けたアルヴァさんにお贈りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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