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シナリオ詳細

<デジールの呼び声>インス島近海海戦

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●深夜の密会
 むくり。海洋軍艦シーガイアの艦長室にあるベッドの上で、艦長であるアンモナイトの海種、老騎士アモンは身を起こした。アモンはベッドから出ると、机にある書類を手に取って、艦長室を出た。
 そしてアモンはランタンに照らされた廊下を甲板への出口に向かって歩いて行くが、常のアモンを知る者がそれを見れば、普段の矍鑠とした様子とは全く違うことに違和感を抱いたことだろう。
 誰とも会うことなく、アモンは甲板に出た。それもそのはずで、外は濃い夜闇に包まれていたからだ。時間にして言えば、午前二時頃。
 アモンは甲板の縁に寄ると、そこにあるロープを海面に向けて投げ下ろす。すると、ロープをよじ登ってカムイグラ風の、如何にも海賊と言った風体の男が甲板の上に立った。大きな背嚢が、その背に背負われている。
「ご苦労、ご苦労。これが、今日の分だな」
 男はアモンから、尊大な態度で書類を受け取る。そして、背嚢を降ろすとアモンに渡した。
「いよいよ明日だからな。これを、船の中に目立たないように満遍なく置いてくれや。頼んだぜ」
 男はそれだけ言い残すと、ロープを使い海面へと下りていく。そして、シーガイアに横付けしている小舟に乗って去って行った。
 アモンはロープを元どおりに片付けると、背嚢を持って艦内へと戻っていく。するとそこには、何人もの乗組員達が待っていた。アモンは、背嚢から紫色の中身が入ったビンを取り出し、乗組員達に渡していく。ビンを渡された乗組員達は、それをシーガイアの各所に目立たないように置いていった。まるで、男の言葉に従うかのように。

●旗艦、艦隊より離脱せり
 悪神ダガヌを攻撃し消耗させ、より強固に封印するべく、シレンツィオ総督府はダガヌが本拠とするインス島周辺への一斉攻撃を決定した。
 老提督アモン率いる六隻の艦隊は、その一斉攻撃に参加すべく海洋から派遣され、一列に並んでインス島へと航行している。だが、その先頭にいる旗艦シーガイアには、異変が起こっていた。
 艦の各所に目立たない様に置かれたビンが、パリン、パリンとひとりでに壊れていく。そして、中に入っていた紫色の個体は昇華して気体となり、時を置かずしてシーガイアの艦内全体に充満していった。
「何だ、この紫の……」
「おい、如何した!? しっかり……」
 靄がかった紫色の気体を吸引したシーガイアの乗組員達は、次々に意識を喪い倒れていった。が、すぐに起き上がる。だが、倒れてから起き上がったシーガイアの乗組員達の動作には、それまでとは違ってキビキビとした軍人らしさはなかった。

「おい、ヒョウモン。シーガイア、急に速度を上げてねぇか?」
「確かに、上がってますね……あれでは、漕ぎ手がもたないはずですが」
 外からシーガイアの異変に気付いたのは、そのすぐ後方を航行する二番艦アンリミテッド・バイオレンスの艦長であるホオジロザメの海種ホオジロと、その副官であるヒョウモンダコの海種ヒョウモンだ。
 シーガイアは急に――このままではアンリミテッド・バイオレンス以下の随伴艦を置き去りにしてしまうほどに――速度を上げている。だが、海洋艦隊の艦は全て推力を漕ぎ手に依存するガレー船であり、戦闘時ならいざ知らず通常航行ならば漕ぎ手を疲労させすぎない速度で進まねばならない。
「それがわからねぇアモンのジジイじゃねぇはずだが……」
 軍に入りたて、船に乗りたての小僧ならともかく、ホオジロやヒョウモンさえひよっこ扱いされるほどに長い軍歴を持つアモンが艦長としてのイロハを理解していないはずがない。首を傾げるホオジロだったが、ヒョウモンの問いによって意識を思考の渦から現実に引き戻された。
「随伴艦としては、如何しますか?」
「仕方ねぇ、速度を上げさせろ。何があったか知らねぇが、旗艦に置いていかれるわけにはいかねぇ。
 それと、シーガイアに伝令を出せ。如何してそこまで急ぐのか、聞いてくるんだ」
 ホオジロの指示通り、アンリミテッド・バイオレンス以下の随伴艦はシーガイアに引き離されないように速度を上げた。そして、アンリミテッド・バイオレンスからは、飛行種の伝令がシーガイアへと飛んだ。

 ――三十分後。
「これ以上は、漕ぎ手がもちません。後続も、脱落しかけています」
「追いつくのは、諦めるしかねぇか……漕ぎ手は、しばらく休ませてやれ。
 後続も、無理をしない範囲で追いつかせろ」
 ヒョウモンの報告に、ホオジロは舌打ちしてそう指示を下した。三十分の間、シーガイアと随伴艦の間は徐々にではあるが広がっていき、さらには随伴艦の間でも距離が広がりだしている。このままでは随伴艦は行動不能となり、さらには艦隊としての隊列も維持できなくなるだろう。艦長として、副指揮官として、やむを得ない判断だった。
 そして、ほぼ時を同じくして、シーガイアに送った伝令が戻ってきた。だが、その身体には弓が何本も刺さっており、命からがら戻ってきたことが伺える。
「おい! 如何したんだ!? 何でそんな傷を負ってやがる!?」
「それが、シーガイアに近付いたら問答無用で矢を射かけられまして……。
 伝令だという呼びかけも全く通じず……」
「そうか、わかった。傷の手当てを受けて、ゆっくり休め」
 報告を受けたホオジロは、伝令を労ると、さらに先へと進んでいくシーガイアを見やった。
「くそっ。何か知らんが、おかしなことになってやがるな……」
 伝令を攻撃したのもそうだが、シーガイアが一向に速度を落とす気配を見せないのも「おかしなこと」である。
 戦闘要員ならまだしも、漕ぎ手に艦の間で大きな差があるとは考えにくい。アンリミテッド・バイオレンスやその他の随伴艦の漕ぎ手が限界なら、それ以上の速度を出し続けているシーガイアの漕ぎ手はとっくに疲労困憊に陥り、失速しているはずなのだ。

●挟撃されし海洋艦隊
「二時と十時に敵影! 二時に濁悪(だあく)海軍! 十時にギガ・シーサーペント!」
「ちっ!? よりによって、こんな時に!」
 アンリミテッド・バイオレンスが静止してからしばらく立った頃、マストの見張り台で見張りが声をあげた。
(このままだと、シーガイアがやべえな。もう一度漕ぎ手に無理をさせるか……?)
 既に随伴艦から遠く離れて航行するシーガイアは、ちょうど濁悪海軍とギガ・シーサーペントに挟撃される位置にいる。
 濁悪海軍は、海賊集団海乱鬼(かいらぎ)衆の中でも、特に群を抜いて凶悪なことで知られる集団だ。そして、ギガ・シーサーペントは全長五十メートルを超える巨体を持つウミヘビのような狂王種で、その攻撃で沈んだ船の噂はホオジロも耳にしている。
 いくら堅牢なシーガイアとて、この両者から攻撃されては無事でいられるはずはない。漕ぎ手に無理をさせてでもシーガイアを救援するべきか、ホオジロは珍しく逡巡した。だが、それも見張りから次の報告がもたらされるまでのことだった。
「濁悪海軍、ギガ・シーサーペント、こちらに向かってきます!」
「何だとぉ!? シーガイアには向かってねぇのか!?」
「はい! そんな様子は、全く見せていません!」
 シーガイアが堅牢な大型艦であるとは言え、濁悪海軍とギガ・シーサーペントが揃って近くにいる艦を無視するなど考えられない。
(まさか……アモンのジジイ……)
 先に伝令が攻撃されたことも含め、よからぬ疑念がホオジロを襲う。だが、ホオジロはブンブンと必死に頭を横に振り、その疑念を追い払った。決して口に出すことはないだろうが、ホオジロはアモンに海洋軍の先達として敬意を抱いている。ジジイ呼ばわりも、ホオジロは否定するだろうがホオジロなりの敬意の形だ。故に、裏切ったのではなどと考えることさえ悍ましかった。
「アモンの爺さんとシーガイアのことは、後で考えましょう。今は、この場を切り抜ける方が先です。
 艦長は、指揮をお願いします。私は、イレギュラーズ達に助力を要請してきます」
「――そうだな。何があったかは知らないが、アモンのジジイは後で必ず、一発ぶん殴ってやる。
 砲戦の用意だ! ここで、奴らを迎え撃つぞ!」
 ヒョウモンが、ホオジロに助け船を出すかのように、その思考を切り替えさせにかかった。そもそも豪放磊落であるホオジロにはあれこれと悩むのは似合わないし、何よりアモン不在の今ホオジロは副指揮官として艦隊の指揮を執らねばならない立場なのだ。
 ホオジロもヒョウモンのその配慮を察して、アモンのことは後回しにし、目の前の責務に向き合うことにした。そして、艦全体に響くかのような大声で、ホオジロは咆えた。
 そして、ヒョウモンはインス島上陸時に備え艦内に待機しているイレギュラーズに力を貸してもらうべく、艦内へと駆けていった。

●魔種と、狂王種と
「こうも上手く行くとは、『仕込み』の甲斐があったな」
 二十艘の小舟を従える旗艦の甲板で、この場の濁悪海軍を率いる名原 月光(なばら つきみつ)は、満足そうにほくそ笑んだ。月光は、良く言えば怜悧、悪く言えば狡猾な、冷徹な印象の男だ。実際、月光はシーガイアが艦隊から離脱するような「仕込み」を行うとともに、ギガ・シーサーペントに共闘を持ちかけて承諾を得ている。
「あのデカブツは後で如何とでもするとして――残りの奴らは、健気にもやる気らしいな。
 ならば、捻り潰してくれよう。昼とは言え、あの程度は容易い事よ」
 海洋艦隊がその場に留まり続けるのを見て、月光は自信満々な笑みを浮かべながら言い放った。海洋艦隊は指揮官と盾役となる艦を失い、戦力と士気を大きく落としている。その上で、ギガ・シーサーペントと挟撃するのだ。いくら昼であっても、負けることなど考えられるはずはなかった。

 同じ頃。
(――よもや、我が人間と共闘することになろうとはな)
 ふよふよと宙に浮くクラゲのような狂王種五十体ばかりを従えながら、海洋艦隊に向けて進むギガ・シーサーペントはそんな風に考えていた。
 もっとも、濁悪海軍と共闘することになった巡り合わせを不思議には思いつつも、ギガ・シーサーペントにとってそれを拒絶する理由はなかった。人間共をインス島に通してやる気は、ギガ・シーサーペントにはない。ならば、「こちら側」である濁悪海軍との共闘には利があった。それに、話を持ちかけてきた月光という男が、人間と言うよりも明らかに自身に近い存在だったこともある。
(さて、奴の手並みを見せてもらうとしようか)
 あとは、実際の戦場で月光がどれだけの力を示せるかだ。とは言え、力の差がありすぎて退屈なものにしかならないだろうと、ギガ・シーサーペントは予想した。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は全体依頼<デジールの呼び声>のうちの1本をお贈りします。
 艦隊旗艦であり、艦隊の盾でもあるシーガイアを喪った海洋艦隊を、濁悪海軍と狂王種の挟撃から守って下さい。
 
●成功条件
 敵の撃退(「撃破」ではないことに留意して下さい)

●失敗条件
 ホオジロかヒョウモンの死亡
 アンリミテッド・バイオレンスの撃沈

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 インス島近海。時間は昼間、天候は晴天、波は凪。
 水上や水中での行動については、それを可能にする装備が貸し出されているため、特にペナルティーなく行うことが出来ます。
 自前で水上行動、水中行動を可能にするスキル・装備を用意している場合、有利に判定されます。

●戦場MAP
   至インス島
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢A▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢D▢▢▢▢▢▢▢E▢
▢▢▢▢▢B▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢C▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢C▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢C▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢C▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

A:シーガイア
B:アンリミテッド・バイオレンス
C:その他の随伴艦
D:ギガ・シーサーペントら狂王種
E:濁悪海軍

※あくまで、ざっくりとしたイメージです。
 正確な距離関係を示しているわけではありません。

 なお、イレギュラーズは最初は全員Bのアンリミテッド・バイオレンスに乗っていますが、狂王種や濁悪海軍が接近してくるまでには時間があるので、戦闘判定開始時までにDやEとの中間地点やCの三番艦以降の随伴艦に移動しておくことは可能です。


【敵】
●名原 月光
 濁悪海軍の幹部の一人で、魔種です。属性は傲慢。
 インス島に迫る海洋艦隊を迎え撃つために、シーガイアが離脱するように「仕込み」を行いつつ、ギガ・シーサーペントに共闘を持ちかけました。
 能力傾向はいわゆるハイバランスですが、海賊らしく軽装であるため防御技術はやや低めになっています。

 戦況にもよりますが、「自身がある程度負傷する」「濁悪海軍がある程度損耗する」「ギガ・シーサーペントらが撤退する」の何れかが発生した場合、撤退しようとします。

・攻撃能力など
 月光剣 物至単 【邪道】【変幻】【出血】【流血】
  月の光を宿しているとされる刀です。
 薙ぎ払い 物至範 【弱点】【変幻】【出血】
 偃月斬 神/近~超/単or範 【多重影※】【邪道】【変幻】【出血】【流血】【失血※】
  剣閃によって、三日月状の光の刃をいくつも飛ばします。
  光の刃はホーミングして敵を追尾するため、【変幻】の値は他の攻撃よりも大きくなっています。
  対象を単体とした時の方がダメージが大きく、また【多重影】【失血】もこの時に限り適用されます。
 
●濁悪海軍 ✕50
 海賊集団海乱鬼衆の中でも、特に凶悪さ、凶暴さ、残忍さで群を抜いている巨大勢力、その一部です。
 10人が月光と共に旗艦に残り、40人が2人ずつ20艘の小舟に分乗して海洋艦隊に迫ろうとします。
 能力傾向として特筆すべきは、攻撃力にやや偏重しているくらいでしょうか。防御については、軽装であるため回避>防御技術となっています。

・攻撃能力など
 刀 物至単 【出血】【流血】【毒】【猛毒】
 火矢 物遠単 【火炎】
 焙烙玉 物遠範 【溜】【火炎】【業炎】
  主に対艦攻撃用ですが、対人でも用いることが出来ます。

●ギガ・シーサーペント
 全長50メートルを超える、ウミヘビのような姿をした狂王種。人語を解し、亜竜と混同されることもあります。また、船ごと攻撃して沈めてしまうこともあるため、船乗り達には恐れられています。
 月光の提案に乗り、インス島に迫る海洋艦隊を阻止するべく共闘しました。
 能力傾向として、攻撃力と生命力がずば抜けて高くなっています。鱗があるため防御技術もそれなりに高いのですが、一方で巨体であるためか反応は低く、回避はマイナスの領域に入っています。
 かなりの巨体であるため、【怒り】以外のBSや【封殺】は入りません。また、マークやブロックも不可能です。

 戦況にもよりますが、「自身がある程度負傷する」「月光らが撤退する」の何れかが発生した場合、撤退しようとします。

・攻撃能力など
 噛み付き 物至単 【弱点】【邪道】【災厄】【鬼道】【出血】【流血】【失血】【滂沱】
 体当たり 物超範 【移】【弱点】【邪道】【飛】【鬼道】【乱れ】【崩れ】【体勢不利】【崩落】
 サンダーブレス 神/中~超/扇 【邪道】【鬼道】【痺れ】【ショック】【感電】【雷陣】
 帯電 神特特 【変幻】【邪道】【鬼道】【痺れ】【ショック】【感電】
  胴部に纏わり付いた、頭部では対処しにくい敵を排除するために体表から放つ電撃です。
  効果範囲・対象は、ギガ・シーサーペントの体表から10メートル以内にいる者全てです。
 再生
 BS無効(【怒り】は除く)
 【封殺】無効
 マーク・ブロック不可
 
●ウィンドエボシ ✕50
 飛行し、触手で攻撃してくるクラゲのような狂王種です。
 このシナリオではギガ・シーサーペントの取り巻きとなっており、戦況によって海洋艦隊への攻撃かギガ・シーサーペントの護衛か、何れかを選択して行動します。
 ギガ・シーサーペントの取り巻きとなっているためか、行動を誘引されること(つまり【怒り】)については、耐性を持っています。

・攻撃能力など
 触手 物/至~超/単or範 【多重影※】【鬼道】【毒】【猛毒】【致死毒※】【麻痺】【呪縛※】
  対象を単体とした時の方がダメージが大きく、また【多重影】【致死毒】【呪縛】もこの時に限り適用されます。
 【怒り】耐性
 飛行


【???】
●シーガイア&艦長アモン
 シーガイアは海洋軍の大型艦で、堅牢さに定評がある艦です。
 インス島を攻撃する艦隊の旗艦として、艦隊の戦闘を航行していましたが、突如後続の随伴艦を突き放すように速度を上げてインス島へと消えていきました。その際、濁悪海軍と狂王種に挟撃されうる位置にいながら、その双方に無視されています。
 アモンはアンモナイトの海種の老騎士で、シーガイアの艦長にして艦隊指揮官です。しかし、やはりシーガイアと共にインス島へと消えていきました。その前に不穏な行動があったのは、OP冒頭をご覧頂いたとおりです。


【友軍】
●アンリミテッド・バイオレンス&艦長ホオジロ&副官ヒョウモン
 アンリミテッド・バイオレンスは海洋軍の軍艦で、艦長や副官の性質もあってか、火力や白兵戦力に定評がある艦です。今回は艦隊の二番艦として、シーガイアに随行しています。
 砲撃担当とは別に戦闘要員20名を擁しており、1:1での実力は濁悪海軍やウィンドエボシにやや劣るとは言え、海洋艦隊の中では高い水準にあります。
 また、艦長と副官の指示が直に届くと言うこともあり、シーガイアが離脱したにもかかわらず高い士気を維持しています。
 ホオジロはホオジロザメの海種で、アンリミテッド・バイオレンス艦長にして海洋艦隊の副指揮官です。ヒョウモンはヒョウモンダコの海種で、ホオジロの副官です。
 この2人は共に攻撃性が高く、海洋軍の中では危険人物として知られています。ですが、『大号令』以降、時にはイレギュラーズ達の手を借りながら様々な作戦を成功させています。
 実力の方も高く、濁悪海軍やウィンドエボシ程度なら余裕で相手できます。ですが、月光やギガ・シーサーペントが相手となるとさすがに分が悪いでしょう。

 ホオジロやヒョウモンはこれまで何度もイレギュラーズに助けられているため、イレギュラーズを強く信頼しています。そのため、よほど危険な内容であるとか、複数のイレギュラーズから矛盾する指示が出ているとかでなければ、イレギュラーズからの指示には素直に従います。
 なお、随伴艦には(OPで負傷した者とはまた別の)飛行種の伝令によって指示が伝えられるため、ホオジロかヒョウモンに指示を出せばそれは艦隊全体に伝わります。

●三番艦以降の随伴艦
 アンリミテッド・バイオレンス以外の、海洋艦隊の随伴艦です。
 砲撃担当とは別に戦闘要員20名を擁しているのはアンリミテッド・バイオレンス同様ですが、1:1での実力は濁悪海軍やウィンドエボシにはっきりと劣ります。
 また、シーガイア離脱に困惑しているため、士気も大きく落ちています。

 なお、アンリミテッド・バイオレンスからの伝令を通じて、士気高揚のアプローチをかけることも出来ます(効果を上げたい場合や砲戦の指揮を執りたい場合は直接行くことも出来ますが、その分濁悪海軍や狂王種に直接対峙する手が減ることになりますので、GMとしてはあまりお勧めしません)。


●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

●サポート参加について
 今回、サポート参加を可としています。
 シナリオ趣旨・公序良俗等に合致するサポート参加者のみが描写対象となります。
 極力の描写を努めますが、条件を満たしている場合でも、サポート参加者が非常に多人数になった場合、描写対象から除外される場合があります。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <デジールの呼び声>インス島近海海戦Lv:40以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年10月09日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC4人)参加者一覧(10人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
黒星 一晃(p3p004679)
黒一閃
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

リプレイ

●アンリミテッド・バイオレンスにて
 インス島を攻撃すべく海洋から派遣された、老騎士アモン提督率いる海洋艦隊は、今まさに危機に晒されていた。艦隊指揮官であるアモン提督が旗艦シーガイアごと突如離脱した上、濁悪海軍と狂王種に挟撃されたのだ。
「……オイオイ、あっちこっちから敵が出てきたっスね。少しは加減っつーものがあっていいだろうが、って言っても仕方ねぇか」
「もう少し……というところで。しかし、これは厄介です。こんな場面で挟撃……しかも海戦」
 海洋軍艦アンリミテッド・バイオレンスの甲板で、二時方向に現れた濁悪海軍と十時方向に現れたギガ・シーサーペントら狂王種を交互に見やりながら、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が苦虫を噛み潰したような顔をした。その隣で、やはり迫り来る敵を確認していた『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)の表情も暗い。だが、厳しい状況を悲観してばかりもいられなかった。
「――どこまでやれるかはわかりませんが、どうにか生き延びないといけませんね」
「そうっスね……この船は、何としても落とさせはしねぇ。全員まとめて、ベンチにでも戻ってもらうっスよ」
 マリエッタの言に、葵はこくりと深く頷きながら意気込んでみせた。
(静かな海というのは、得難いものなのですね。海洋と豊穣の海路が開通しても、アルバニアを倒しても、問題ばかりが次々と……)
 『高速機動の戦乙女』ウルリカ(p3p007777)は、騒然とするアンリミテッド・バイオレンスの組組員達をよそに、遠く今は見えなくなったシーガイアの方を眺めて物思いに耽っていた。確かに、絶望の青が静寂の青と名を変えた今でも、こうして事件は起き続けている。
(さて、アモン様たちはご無事だといいのですが。軍艦が突如艦隊から離脱する事態……どのような理由があったのでしょう?)
 ウルリカは首を捻るが、その理由は未だ判然とはしなかった。
(まさかアモンの爺さんが裏切ったんじゃねぇか……とか考えているんだろうな、ホオジロの旦那のあの表情は)
 『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は、アンリミテッド・バイオレンスの艦長であるホオジロに目を向け、表情からその思考を推察した。
(……ま、この状況は俺もそう思っちまったがね。旗艦が独走した上、そのタイミングで挟み撃ちに遭うなんてのはさすがに偶然じゃ済まされねぇ)
 だが、アモンが裏切ったのならばシーガイアもこの機に乗じて攻めかかってくるはずだ。そうしないのは、解せないところではある、が。
「そいつを知りてぇなら、まずはこいつらをどうにかするのが先か……やれやれ、まったく骨が折れるぜ」
 如何にも面倒くさそうに首を捻ってゴキゴキと骨を鳴らしながら、縁は青刀『ワダツミ』の柄に手をやった。
「ホオジロのおっちゃんとヒョウモンのおっちゃん! このままだと挟み撃ちにあいそうだぜ!
 シーガイアの動きも気になるけど、まずはこいつらなんとかしようぜ!」
「ああ、もちろんだ! ――砲は、濁悪海軍の旗艦に向けろ!」
「砲撃要員以外は、クロスボウ用意!」
 『生イカが好き』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)がホオジロとその副官ヒョウモンに訴えると、二人とも即座にその言を聞き入れ、すぐさま砲撃要員や戦闘要員達に指示を下した。
 そんなアンリミテッド・バイオレンスの艦内に、スピーカーボムで拡大された『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)の声が響き渡る。
「挟撃の上にシーガイアは暴走……レーさんも弱音を吐きたくなるけど、絶望の青を超えた時に比べると全然っきゅ。
 あの時まで乗り掛かった舟に乗る旅人だったけど、勲章もらったから頑張るっきゅ! なんて単純だったけど、約束をしたから、約束を果たす日までずっと進み続けると。
 アンリミテッド・バイオレンスの人達も随伴艦の人達も、こんな所で海の藻屑になってる暇はないっきゅよ。大切な人、愛してる人、家族が帰りを待ってるっきゅ。
 ――みんなで、帰るために。状況的にシーガイアに何かしたとしか考えられない濁悪海軍をぶちのめすために、みんなで全力を出すっきゅ!!」
「「「おおっ!!」」」
 レーゲンの演説にアンリミテッド・バイオレンスの乗組員達は奮い立ち、これを伝令によって伝えられた後続の随伴艦の乗組員達もその士気を上げた。
 
 アンリミテッド・バイオレンスに乗船していたイレギュラーズ達は、どちらかを放置するというわけにはいかず、二手に分かれて濁悪海軍とギガ・シーサーペントら狂王種の対応に当たることになった。
「おっちゃん! アンリミテッド・バイオレンスと随伴艦にはあのクラゲたちの相手を頼むぜ!
 あいつら随伴艦を狙ってきてるみてーだし、気を付けて戦ってくれな!」
「ああ、任せとけ!」
「皆さんも、お気を付けて」
 ワモンがホオジロとヒョウモンに声をかけると、ホオジロは腕に力こぶを作りながら豪快に笑い、ヒョウモンはペコリと頭を下げてワモンに応えた。
「そっちは頼んだぜ。全部片づいたら、後でアモンの爺さんからの詫び酒で乾杯といこうや」
「そうだな……確かに、一発ぶん殴るだけじゃ足りねえ。たっぷりと飲ませて貰わなきゃ、割に合わねえな」
 縁は笑いかけながら、ホオジロの肩をポンと叩く。ホオジロは、ニヤリとした笑みを縁に返した。
「皆さん、どうか無茶はなさいませんよう。
 私達と違う……それは、ええ、明確です。けれど、ここで倒れてしまってはいけないのですから。
 無茶をするのはこの後。今、本当に無茶をするのは私達です……だから、頼ってくださいね」
 マリエッタはそう言って、アンリミテッド・バイオレンスの戦闘要員達を激励して回る。ただ、これは彼らのためではなく、主としてマリエッタ自身のためであった。
 こうしておかないと、マリエッタ自身が心の内に抱いている、敵など放っておいてシーガイアを追い、その先の邪智を垣間見たいと言う魔女の意識に揺らいでしまいそうなのだった。だが、マリエッタとしてはそんな意識に負けるわけにはいかなかった。

●十時方向、対ギガ・シーサーペント&狂王種
 イレギュラーズ達の方針としては、与しやすいであろう濁悪海軍の戦力を削り、その撤退を促すと決まった。挟撃している片方が撤退すれば、もう片方も利無しとして撤退するだろう。だが。
「いずれにしても、あのデカブツを放置しておくわけにはいかないからな……」
 ギガ・シーサーペントに向けて砕氷戦艦「はくよう」を操船しながら、『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は独り言ちた。海洋艦隊を守るためにも、誰かがギガ・シーサーペントら狂王種の足を止めなくてはならないのだ。
(何やら不審な点は数多い、旗艦の暴走、伝令を射かけ、さらには濁悪海軍と狂王種が連携する動きを見せているうえに真っ只中を進む船を無視する……。
 何が起こっているかは大体予測がつくが……今はそれよりも、道を阻む敵を退ける方が先決か。まあいい、精々暴れさせてもらうとしよう)
 海上を駆けながら、『黒一閃』黒星 一晃(p3p004679)は思案に耽る。が、狂王種らが目前ともなれば、一晃は意識をこれからの戦闘に切り替えた。
「黒一閃、黒星一晃、一筋の光と成りて、海路を阻む者を断つ!」
 一晃は叫びつつ抜刀し、ヒュッヒュッヒュッと連続で刀を振るった。その一振り一振りから斬撃が烈風の如く飛んでいき、ギガ・シーサーペントやその周囲にいるウィンドエボシを次々と斬り裂いていった。
「生意気にも、我に挑んでくるか……面白い」
 ギガ・シーサーペントは一晃をギロリと睨み付ける。だが。
「来いよデカブツ! 俺が相手だ!」
「ほほう、よかろう」
 一晃よりも先行し、己の存在を誇示するかのように咆えたエイヴァンに、その視線は向いた。同時に、少なからぬウィンドエボシが、エイヴァンへと集っていく。
 エイヴァンに集った以外のウィンドエボシは、一晃やマリエッタ、ワモンを狙った他、海洋艦隊の方にもいくらか向かっていった。
「しかし戦う相手……あの巨体。本当に、不釣り合いだと思いませんか? 魔女と言われていたらしいといっても、風貌はただの村娘ですのに。
 ――なんて、言ってて力が沸き上がってくるなら安いものですけどね」
 戯けた風にマリエッタは言いつつ、味方の状況を立て直す号令を放つ。号令は言霊と化して、ウィンドエボシの攻撃によって麻痺していた一晃やワモンの身体を自由にさせた。さらにマリエッタは、福音を紡いで一晃の傷を癒やす。
 それとほぼ同時に、戦場に朗々とした歌声が響き渡った。
「歌、だと!?」
 ギガ・シーサーペントが訝しんだその歌声の主は、『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)だ。涼花は調和の力を癒やしの歌声に変えて、さらに一晃の傷を癒やしていく。
「ありがたい!」
 二人がかりの回復によって負った傷の大部分が癒えた一晃は、快哉を叫んだ。
「では、我の相手をしてもらおうか」
 ギガ・シーサーペントははくように体当たりを仕掛け、その船体を大いに揺らす。その衝撃はエイヴァンをも襲い、エイヴァンは船室の壁に叩き付けられた。だが、エイヴァンにとってこの程度は大したことはない。
「おっちゃん! ガンガンうってくからオイラのうち漏らした奴らは任せたぜ! 随伴艦も併せてうちまくれー!」
 ワモンは、海洋魂を見せてやると言わんばかりに、海洋艦隊に向かったウィンドエボシに多数のガトリング弾を放った。弾丸は尽くウィンドエボシ達に命中し、その身体に幾つもの穴を開けるが、ウィンドエボシ達の動きは未だ止まらない。だが、これは海洋艦隊にとって十分な援護になっていた。

「来たな、クラゲ共。まとめて、片付けてやろう」
 アンリミテッド・バイオレンスの甲板では、『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)がウィンドエボシ達を待ち構えていた。アンリミテッド・バイオレンスに迫ったウィンドエボシ達に、ウェールは無数のカードを放つ。カードは炎を纏いながら猛然と突き進み、ウィンドエボシ達の身体を貫通した。ガトリング弾の穴だらけのウィンドエボシは、さらに大きな穴が一つ開いた上に、炎に包まれる。
 その時点でウィンドエボシ達の大部分が力尽きて海に落ち、辛うじて生き残っているウィンドエボシもアンリミテッド・バイオレンスや後続の随伴艦からの射撃を受け、後を追うように海に落ちていった。

●二時方向、対名原 月光&濁悪海軍
 海上に、楽団が召喚される。だが、この楽団が奏でるのは楽器による音楽ではなく、弾幕による銃撃音だ。
「ぐおっ!」
 立て続けに放たれる銃弾を前にして、小舟の濁悪海軍らは自らの血に染まり、小舟を進めることもままならなくなっている。
「アンリミテッド・バイオレンスには行かせられないっスからね」
 その様子を確認した葵は、上手く小舟の足を止められたことに満足げな様子を見せた。
「さぁて、俺の相手をしてもらおうか」
 縁は、手近な濁悪海軍の小舟に向けてワダツミを振る。その刀身から伸びた剣閃に斬られた濁悪海軍らは、傷口を押さえつつ明確な敵意の視線を縁に向けた。狙いどおりとばかりに、縁は微かに笑みを浮かべる。
「あーもう、ムカつく事ばっかだねっ……海軍なんて、もう二度と名乗らないでっ!」
 『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)は、飛行する緑色のワイバーン「リョク」の上で憤っていた。その憤りのままに、眼下の濁悪海軍を堕天の輝きで照らし出す。
「うぐあっ!?」
 その輝きに照らされた濁悪海軍は何が起きたかも理解出来ないままに、生命を呪われて悶え苦しむ。葵が喚んだ楽団に撃たれていたこともあり、濁悪海軍らは瀕死に陥っていた。
「はいはーい、血塗れにすればいいんだよね? さっさと、片付けちゃお♪」
 リリーの側から、身長三十センチほどの黒い装束を身に纏った少女が嬉々として急降下していった。リリーと同じ小型複製体の、ブラッドだ。
 前方に意識を集中している濁悪海軍が、上空から迫る、しかも三十センチ程度の大きさのブラッドに気付くはずもなく、ブラッドはあっさりと濁悪海軍の側に降り立つと、その手の鎌で首筋を斬っていった。
「……あ?」
「え……?」
 何が起きたか理解出来ないままに、血が噴出する首筋を押さえながら、小舟の濁悪海軍は息絶えた。
(護衛ミッションって大変なのよね……とりあえず迫って来てる連中を素敵な水死体に処理してあげましょうか!)
 黒い塗料を全身に塗った『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は、水中から飛び上がると小舟の一つを狙い、奇襲攻撃を仕掛けた。
「なっ!?」
 塗料で黒く染まっている故にイナリの接近に気付けなかった濁悪海軍は、一気に加速したイナリの体当たりを受け、二人共が水中に叩き落とされる。
「さて、切り刻んで水面を死体と血で真っ赤に染めてみましょうか。きっと、綺麗よ♪」
 水中に落ちた濁悪海軍への追撃と、そして周囲の小舟からの攻撃の回避を兼ねて、イナリは再び水中へと潜った。
「まずは多数の敵を倒して手数を減らす……それが戦場の基本というものです」
 ウルリカは、飛空探査艇の高速飛行によって発生した衝撃波に指向性を与え、小舟の一つへと飛ばした。
「ぐおっ!」
「うあっ!」
 衝撃波に強かに打ち付けられた濁悪海軍らは、血を流しながらふらふらとよろめく。それでも、如何にか耐えきったかと濁悪海軍らが思ったところに、二度目の衝撃波が来た。その二度目には耐えきれず、濁悪海軍らはドサリと小舟の上で斃れた。
「行くっきゅよ?」
「任せてよ! 事情は分からないけど、起きてる事態は止めないとね」
 頭上を飛行する『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシルに、連携を求めてレーゲンは声をかけた。アクセルは、自信満々に頷いてみせる。
 アクセルの返事を聞いたレーゲンは、小舟の一つを狙い、漆黒の闇で包み込む。かつてレーゲンが迷子になり、孤独に苛まれたときの闇夜を具現化したものだ。
「うぐっ……」
「ううっ……」
 濁悪海軍らは、自分達を包む闇に心を蝕まれていく。孤独感や寂寥感が、士気を著しく挫いていった。その間に自身の魔力を魔法杖「雲海鯨の歌」に集中したアクセルは、その先端から魔力の砲弾を撃った。闇の中の濁悪海軍らは、魔力の砲弾をその身体に受けて力尽き、戦闘不能に陥った。
「海賊として今まで奪ってきたなら自身の命を奪われる覚悟もできて、るわけねえか。
 シーガイアの暴走と同時に襲撃に来たなら、今まで全然勝てないイレギュラーズが怖くてこそこそ姑息な手を使って、勝てる戦いしかしない臆病者だもんな」
 『散らぬ桃花』節樹 トウカ(p3p008730)は、周囲の濁悪海軍らに向けて嘲弄混じりにこう言い放ち、その敵意を煽った。防御面で脆いレーゲンを守るためだ。そして、その声を聞いた濁悪海軍らはトウカの目論見どおり、トウカに敵意を込めた視線を向けた。
 
●月光の撤退
「くっ……不甲斐ない! たったあれだけの敵に、こんなに言いようにされるとは!」
 濁悪海軍の旗艦の甲板で、指揮官である魔種、名原 月光は苦々しげに叫んだ。いくらイレギュラーズが相手とは言え、戦力を分散したかだか十人もいない敵に、こうも戦力を削られるとは。既に十艘の小舟に分乗した部下達は全滅し、旗艦の上は乗り込んできたイレギュラーズとの間で乱戦になっている。
(ここを落とせば向こうも退くだろうし、速攻で終わらせないとな)
 葵は月光目掛けて、サッカーボール「ワイルドゲイルGG」を蹴った。
「ぬっ!」
 月光は刀でワイルドゲイルGGを受けたが、葵の本命はここからだ。刀で止められ跳ね返ってきたワイルドゲイルGGを、さらに葵は蹴った。
「ぐあっ!」
 狙い澄ましたシュートが、月光の顔面を直撃する。月光が思いっきり仰け反った隙を衝いて、縁が黒き大顎を喚び、けしかけた。
(こいつで、退いてくれりゃいいんだがな)
「ぐっ!」
 黒き大顎は月光の脇腹に噛み付き、深々とその牙を突き立てる。牙が抜けた痕からは、ドクドクと紅い血が流れ落ちていた。
「濁悪海軍でしたら相応の痛手を与えてきました。ここにいる者も含め、全滅は時間の問題ですよ」
「うぬっ……」
「何を目的としているのかは知りませんが……お互い死ぬまでやり合いますか?」
「やかましい! 死ねっ!」
 淡々と事実を告げるウルリカに苛立った様子で、月光はブンブンと刀を振った。その一振り一振りからは三日月のような光の刃が発生し、ウルリカに襲い掛かる。
「……ううっ!」
「大丈夫っきゅ!?」
 幾多もの光の刃に斬られたウルリカは、次を食らえば可能性の力を費やす所まで追い込まれた。だが、レーゲンが天使の救済の如き癒やしをウルリカにもたらし、次までは如何にか耐えられそうな所まで回復させた。
「ありがとうございます……行きます」
 レーゲンに礼を述べたウルリカは、衝撃波が発生するほどのスピードで飛空探査艇を急加速させた。その衝撃波に指向性を与え、月光の生命を奪う死神の魔弾へと変える。
「がっ!」
 衝撃波の魔弾は、月光の頭部を貫通した。常人なら即死していてもおかしくない一撃だったが、魔種はこの程度ではまだ斃れない。再度ウルリカは衝撃波の魔弾を放ったが、月光はそれにも耐えきった。
「隙あり、ね」
 突如月光の背後に転移してきたイナリが、木製の小刀「木落し」二本を両手に持ち、突きかかっていく。
「ぐああっ!?」
 いきなり背後に転移して来るような相手に備えられようはずもなく、月光の背には多数の刺突による傷が刻まれた。
「……狂王種に頼るなんて、まるで虎の威を借りる狐だねっ。むしろそういう事して……自分が強いと思ってるのかなっ?」
「ええい、五月蠅い……っ!」
 嘲るようなリリーの問いに、月光はギリリ、と歯噛みをしながらそれだけを答えた。月光としては「勝てばよいのだ」と言い放ちたいところであったが、小舟は全滅して旗艦に乗り込まれ、自身も傷を負っていると言う状況ではさすがにそれを口に出すことは出来なかった。
 その問答の間にも、リリーは魔道銃「DFCA47Wolfstal改」で呪いを帯びた魔法の弾丸を撃った。弾丸は月光の腹部に突き刺さり、その心身を苛んでいく。さらにリリーは三度、月光に同じ弾丸を撃ち、さらなる傷を負わせていった。

 部下の多数を喪い、自身も度々傷つけられた月光は、撤退の判断を下した。濁悪海軍の旗艦は反転し、戦場を離脱していく。濁悪海軍の旗艦に乗り込んでいたイレギュラーズ達は、それぞれ最後に追撃を行うと、艦から降りてアンリミテッド・バイオレンスの方へと戻っていった。これで、ギガ・シーサーペントもここで戦う利を喪い、撤退していくだろうと思われた。

●ギガ・シーサーペントの撤退
 濁悪海軍の旗艦が撤退していく様は、ギガ・シーサーペントの側からもはっきりと見えていた。
「――ふん。自信満々だった割に、存外情けないものだな」
 いくら多数が向こうに行ったとは言え何たるだらしなさかと、ギガ・シーサーペントは侮蔑を込めて吐き捨てた。こちらの方は、マリエッタと涼花の二人がかりの癒やしを以てしても、皆が倒れる寸前の深手を負わせている。そうなったのは、ギガ・シーサーペントがウィンドエボシ達の多数を自身の援護に当てていたことが大きかった。イレギュラーズ達はウィンドエボシの数を削る一方で、ウィンドエボシ達によっても傷を負わされていたのだ。
 マリエッタと涼花の癒やしがなければ、幻想を纏い致命的な一撃を受けなければ倒れることのないエイヴァン以外のイレギュラーズは、可能性の力を費やした上で力尽きていたことだろう。

「狂王種も災難だな。のこのこと出てこなければ、このような目にあうこともなかったろうに」
 高く飛翔した一晃が、刀の先端を下に向けて急降下する。狙いは、ギガ・シーサーペントの右目だ。果たして、一晃の刀は柄の付近まで深く、グサリとギガ・シーサーペントの右目に突き刺さった。
「がああああっ! 貴様あっ! よくも、我の眼を……!」
 ギガ・シーサーペントは右目を喪った怒りに、大きく咆えた。だが、ギガ・シーサーペントがいくら咆えようとも、一晃が恐れを抱くことはない。何故なら、一晃はギガ・シーサーペントのような強大な相手ほど斬りたくなるのだから。
「これ以上痛い目を見たくなければ、帰るんだぜ! 向こうも、帰っちまったろ?」
「うぬっ!」
 ワモンは、潰されたギガ・シーサーペントの右目の周辺に、ガトリング弾を浴びせかけた。ガトリング弾は鱗など存在しないかのように、ギガ・シーサーペントの右目周辺に次々と穴を穿っていく。
「そうだぜ、クラゲ共も大分減っただろ?」
「それに、モタモタしてたら向こうの仲間達もこちらに来てしまいますよ」
「ぐおおおおおおっ!!」
 さらに畳みかけるように、エイヴァンは巨斧の内部に組み込んだ艦砲を首に近い胴体目掛けて撃った。砲弾は、命中した部位の周囲の空間ごと肉を抉り取り、そこを中心にギガ・シーサーペントの身をクレーター状に凹ませた。
 エイヴァンの砲撃の間に、自身の血を媒介にして影を大鎌の形に作り替えていたマリエッタは、その大鎌でクレーターの中心目掛けて斬りつける。出来たばかりの深い傷をさらに鎌で深々と斬られたギガ・シーサーペントは、苦痛にその巨大な身体を捩らせながら悲鳴のような咆哮を上げた。
「――わ、わかった……この場は、退こう。それで、よいな?」
 濁悪海軍の撤退、戦力たるウィンドエボシの減少、自身の負傷、そして濁悪海軍側のイレギュラーズ達が参戦する可能性。それらを総合的に判断すれば、イレギュラーズ達が撤退を促している以上、戦闘を続ける理はギガ・シーサーペントにはない。
 ギガ・シーサーペントはイレギュラーズの言を容れて撤退を申し出て、イレギュラーズ達はそれを受諾。戦闘は終結し、アンリミテッド・バイオレンスをはじめとする海洋艦隊は挟撃の危機を乗り越えた。

成否

成功

MVP

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾

状態異常

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)[重傷]
波濤の盾
黒星 一晃(p3p004679)[重傷]
黒一閃
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)[重傷]
生イカが好き
ウルリカ(p3p007777)[重傷]
高速機動の戦乙女
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)[重傷]
死血の魔女

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍により、月光ら濁悪海軍とギガ・シーサーペントら狂王種は退けられ、海洋艦隊はこの窮地を切り抜けることが出来ました。
 MVPは、ギガ・シーサーペントの攻撃を受け止め続けたエイヴァンさんにお贈りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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