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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>牙研ぐ時

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<総軍鏖殺>牙研ぐ時
 剣戟の音が鳴り響く、鉄帝国。
 平穏たる街は、突如として発生した新皇帝『バルナバス・スティージレッド』の勅命が命じられる。
 強い奴が弱い奴から奪う『弱肉強食』……その勅命に諸手を挙げて喜ぶ者共。
『ヒヒヒヒ! さぁさぁ、てめぇらの持ってるもの、ぜんぶぜーんぶ俺達の物だぜぇ!! 嫌だって言うならよぉ、おめぇらの力で抵抗してみろよってんだよぉ!!』
 残忍な笑みを浮かべながら、貧しい農村『ゾフィ村』にて蹂躙の限りを尽くすのは、帝政派バイルー党に属する一派、『グルカント』一家。
 その蹂躙する影には身の丈程ある武器を振り回す者も居れば、獰猛な人を喰う獣を嗾ける者も居る。
 残虐非道な行い、本来であれば警察機構が取り締まりに来てくれるのが本来の筋……しかし新皇帝の勅命によりその機構は最早動く事も無い。
 そして粗方の物資が奪われ、村民達もほぼ全てが虐殺された後。
『うぅぅ……も、蒙これ以上は持っておりません……どうにかこれで赦して貰えませんかのぅ……』
 ゾフィ村の村長は、声を震わせながら……なけなしの物資を差し出す。
 しかし、グルカント一家は。
『あぁ? たったこんだけだとぉ? そんなんじゃ満足できねぇんだよぉ! 隠し持ってるのがあんだろ、ゴラぁ!』
 大剣の切先を突きつけて脅すが……村長は首を振る秤。
『ほぅ……そうかいそうかい。んじゃー、もう『用なし』だな、この村はよ。やれ』
『ああ!』
 ニヤリと残忍な笑みを浮かべし者が、村長を叩っ切る。
 絶望の表情と共に絶命する村長、悲鳴を上げる周りの村民達。
『へっへっへ! さぁ、次は誰にするかなぁ!?』
 と、グルカント一家は血に濡れたその剣を見せつけるように掲げ、周りの者達を恐怖に陥れるのであった。


「お主達……力を貸して暮れて、感謝する」
 鉄帝国首都近郊、サングロウブルクの街。
 君たちを前にしたバイル・バイオンは、杖を突き齢を隠せないではいるものの、その視線は……とても力強い。
 彼は、反・新皇帝派として、バルナバスの勅命に異を唱えた……だが、その結果、混乱の渦中にあるスチールグラードからの撤退を余儀なくされ、ここ、サングロウブルクに仮の拠点を築いていた。
 そして君たちイレギュラーズに力を講い、君たちは集められていたのだ。
「皆も知っての通り、バルナバスの勅命を受け、今鉄帝国は混乱の極みに陥っている。この近隣にありし『ゾフィ村』も、力を持ちし『グルカント』一家に目を付けられた様なのだ」
「この『グルカント』一家は新皇帝の弱肉強食の方針を利用し、近隣の町や村を次々と襲撃し、力無い民を次々と虐殺している様な状況だ。このままでは……ゾフィ村の何もかもが奪われてしまう。しかし今ならまだ間に合う。頼む、急ぎイレギュラーズ達の力で、村を護って欲しいのだ。頼めるか?」
 皺ある顔ながらも、真摯たる表情で見つめるバイル。
 君たちは……その声に静かに頷き、急ぎ『ゾフィ村』へと急ぐのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 鉄帝国の空の上の事件が一段落しましたが……地上でキナ臭い事件がまたも起きてしまっている様です。

 ●成功条件
  『ゾフィ村』を、『グルカント』一家からんお襲撃から護る事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  首都近郊にあるちいさな農村、『ゾフィ村』が舞台となります。
  本当に貧しい村で、市民の方々も貧しい生活をしている……そんな状態です。
  当然資材もあんまり無い状態なのですが……『グルカント』一家はそんな村から根こそぎ何もかもを奪い去ろうとしています。
  幸い今回は、皆様がほんの僅か先に到達出来るので、彼等を迎撃する形になります。

 ●討伐目標
  ・凶暴かつ獰猛たる『グルカント』一家:14人
    力こそ全て、その力で周囲の街村を次々と襲撃し、何もかもを根こそぎ奪い去って行こうとする者達です。
    特に連携するとかの能力はないものの、巨大な剣や長い剣、更には鋭い刃の付いた拳で攻撃してきます。
    攻撃力及び体力がとても高い相手達ですが、回避力はそんなに高く無い様です。
    又、そんなに頭が良い奴らでもないので、挑発等も決行簡単に引っかかってくれるでしょう。
 
  ・グルカント一家に買われた獰猛な狼型魔者『グルゥイグダロス』:3匹
    彼等が飼っている……かどうかは分かりませんが、彼等に同行し、村人達を貪り喰らう獣です。
    巨大な狼のような姿、かつ爪・牙の攻撃には常に『出血』の効果が付与されます。
    さらにとても素早い為、回避力も高い様です。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <総軍鏖殺>牙研ぐ時完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
冬越 弾正(p3p007105)
終音
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)
ゴーレムの母
ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)
微笑みに悪を忍ばせ

リプレイ

●悪逆は正
 剣戟の音が至る所から鳴り響く国、鉄帝国。
 空の上の事件に決着が付き、一時の平穏を取り戻したと思った……その時。
「うーん……アーカーシュが一段落して、ゆっくり出来るかしら、と考えて居た所にこの始末……鉄帝という国は忙しないわね。全く……面倒なことは起こさないで欲しいのに」
 と深い失望の溜息を吐くのは、『紅蓮の魔女』ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)。
 その失意の溜息に対し、頷きながら『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)が。
「うん。たいへん、こういう時にすぐに動き出すのは、けいきょもうどう? というか、何も考えてないヒトたちだったりするのだけれども、それはそれで被害が出るから見過ごせないの」
 と、耳をぴこぴこと揺らす。
 二人が言う通りに、今鉄帝国は新皇帝『バルナバス』の勅命により、国は弱肉強食……強い者は弱い奴から奪うのを認められた結果、国の様々な所において略奪行為が行われ始めていた。
 無論、その被害に逢うのは、戦う力を持たない極々普通の一般市民達が多い……ここ、鉄帝国首都近郊に点在する貧しい農村も、その脅威に晒されている。
 そして、反・新皇帝派の一派であるバイルからの依頼を受けたイレギュラーズ達は、そんな危険に晒されし村『ゾフィ村』へと向かっていた。
 そんな道すがらに、馬車と共に歩く『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)は。
「しかし……くくっ、でもこれは、なんともまぁ『鉄帝らしい』政策な事ですねぇ……勿論それに反攻する勢力が出るのも織り込み済みなのでしょう」
 と不敵な笑みを浮かべる彼に、『雷虎』ソア(p3p007025)は。
「そうなんだろうね。でも、ボクは彼等の言う『弱肉強食』って言葉、あまり好きじゃない。だって、まるで自然の掟が無法を振るう免罪符の様に使われるから。だって、グルカント一家みたいな横暴をする動物なんていないよ」
 彼女の言葉に、『残秋』冬越 弾正(p3p007105)と『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は。
「そうだな。本当、イーゼラー様への捧げものにもならん様な輩が鉄帝に溢れているな」
「ああ……弱肉強食は自然の理。とはいえ、ヒトにはヒトの理がある。止めるものではなく、余剰ではなく、無い所から奪い尽くそうという心根は気に入らない……俺も強者には含まれない側だから、そう思うのかもしれないがな」
 瞑目するアーマデルに、ソアは。
「そうなんだ。これが人間の流儀なら、ボクはそれに合わせるよ。自分たちのしていることを思い知らせてあげる。何より、悪いやつの肉は美味しいから」
 いつもよりも、何処か辛辣な言葉を口にするソアに、ウィルドも。
「そうですね。まぁ新皇帝……もとい魔種ですから。しかしその魔種の狙いがわかりませんね。あの皇帝を正面から倒せるくらいですし、国を混乱させたいなら今からでも宰相なりザーバなりを始末していけばいいものを……罪人を解放して国を混乱させて……そもそも何を狙っているのか分かりませんが……国家を相手にした悪巧みで幻想貴族に勝てるとは思わないことです。ひとまずこの場は目の前の依頼を片付けますが、いずれは新皇帝サマも叩き潰してさしあげましょう」
 物腰柔らかながらも辛辣に吐き捨てる。
 その言葉にジュリエット、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)、弾正それぞれが。
「ま、八つ当たりには丁度良さそうな相手よね。力が全て? 結構じゃない。自身を上回るものが相手になった時、どんな顔をしてくれるのか……魅せて欲しいものね」
「ええ。抵抗……という言い方はあんまり好きじゃ無いわね。これは誅罰。応報を知りなさい。神がそれを望まれるわ」
「哀れなる魂よ、神の身元に還るがいい!」
 そんな仲間達の言葉に、『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)は拳を突き合わせた音を鳴り響かせながら。
「……ちょっとでも反撃されそうなところにゃ手が出せないチワワどもが……本物の捕食者(プレデター)ってモンを教えてやるよ」
 と、一際強い気合いを口にしながら、イレギュラーズ達は貧しき『ゾフィ村』へと急ぐのであった。

●雫拭う
 そして……イレギュラーズ達は、村に到着。
『……』
 見れば村人達の表情は総じて暗い……新皇帝の勅命により、すでに周りの村や町が襲われており、この村も間もなくだろう……というのが、村人達の共通認識。
 ……だが、それ以上に村の状況は極めて貧しい様で。
「っ……何もねぇ村だ。ここから何を奪おうってんだろうんじゃ、連中」
 貴道は周りを見渡しながら、一つ溜息。
 それにイーリンが。
「ええ……まぁ彼等は小さく貧しい村にしか、狙いを定めていないのでしょう」
「ああ。言っちゃ悪いが、何の旨味もねぇ、取るだけ無駄ってもんだろう? ……本当にダサイ連中だ。最近こういう連中が多いよな、鉄帝も。どうせ取るなら要塞の一つでも取りに行けってんだ」
「コヤー。その覚悟も無いのでしょうから、仕方ないの」
 更に胡桃も肩を竦めつつ、よいしょよいしょ、と人目を避けつつ、炎狐を呼び出すと、更にアーマデルも。
「……ここに縁のある死霊達よ。周りに殺気を持った物が近づいて来たら教えてくれ。又、その者達と戦っている最中に、身を隠して回り込む様な者達が居たら、教えて欲しい」
 と周りに眠る死霊の霊達に向けて、協力を呼びかける。
「えっと、村の周りで見張ってて欲しいの。何かあったら教えてなの」
 呼び出した炎狐はこくりと頷き、人目を忍び村の外へ。
「さて、と……それじゃ、私達は村人の方達の避難誘導を進めるとしましょうか」
「解った。なら……私は敢えて囮になりましょうか。これでも貴族ですから、彼等の求める物は色々と持って居ますしね」
 イーリンの言葉にウィルドはくすりと笑いながら、持ち込んだ馬車を村へと配置。
 その馬車の中には多くの食料と宝飾品……更に彼自身、いつもより宝石などの装飾品を多く身につけ、金持ちである事をあからさまに示す。
 ……そんな彼の姿に村人達からは羨望の眼差しが向けられ、僅かな反発が見て取れるのだが……そんな村人達にソアや胡桃が。
「苛立たしいかもしれない、ごめんね。でも、ボク達は村を護る為に来たんだ。ああやって目立つ事で、村の人達の安全を守れるんだよ」
「そうなの。皆さん、すっごく不安に感じていると思うの。でも、わたしたちが絶対にこの村を守るから、安心して欲しいの!」
 二人の言葉に、そうなんだ……と納得し、そしてイーリンが。
「それじゃ皆、家の中に避難して。そしてドアと窓を、何でも言いから物を置いて塞いで。そして、一人でも多く、身を寄せ合って」
 と指示を行い、村人達はそれに従い……家等に避難していく。
 ……そして、イレギュラーズ達が村で動き始めて十数分。
「……!」
 胡桃の炎狐が、東の方から騒がしく近づいてくる者達を察知。
「あっちの方から来てるみたいなの」
「解った」
 うっすらと笑みを浮かべ、ウィルドはその方角の村の入口に移動。
 ……村の外から見えるようにし、そして……。
『おい、次はあの村でいいんじゃねぇか!』
『そうだなぁ……おっ、何か貴族っぽい奴が偶然訪れてる様だぜ! アイツ含めてぶっ殺せば、豊作だぜ、ヒャッハー!!』
 陽気に笑い合いながら、警戒する事無く村に向けて一気に襲撃を仕掛ける『グルカント』一家と、狼型魔物『グルゥイグダロス』。
 怒濤の如くの勢いで仕掛けてくる彼等が、ウィルドとその馬車、更に入口近くの家々に襲撃を仕掛けてくる。
 ……そんな敵の襲撃に、颯爽と馬に乗ったイーリンが。
「その略奪、待った!」
 と声を上げ、突撃。
『ぐぁっ……何だこいつっ!』
『てめぇ、逆らうようならお前から殺してやる!』
 突然の不意打ちに驚きの声を上げつつも、反撃の狼煙を上げる彼等。
 傍らに立つ狼型魔物に指示を与え、立ちはだかるイレギュラーズ達への攻撃指示を与える。
 しかし狼達よりも一足早く貴道、ソア、胡桃の三人がその前へと立ちはだかる。
『グルゥゥ……!!』
 立ちはだかれ、涎を垂れ流しながら威嚇の鳴き声を上げる狼……それにソアが。
「主も選べない哀れな獣、ボクが終わらせてあげる!」
 と言いながら、敵に間を開けずに接近。
「一瞬に消し炭にしてあげるんだから!」
 と荒ぶる雷の一撃をその口中に向けて一発、二発と立て続けに叩き込んで行く。
 一匹がソアの攻撃で一気に体力が削られる……しかし他の狼2体は、それで怯むような事は無く、牙を剥き退治する二人に牙を突き立て、血に濡れる。
「これくらい、大丈夫なの!」
「ああ。いいか、一匹たりとも逃がさねえ!」
 そう胡桃、貴道はソアとは別方向へ怒りを与えつつも惹きつけながら誘導。
 三匹の狼を分散させる事により、他狼やグルカント一家と連携させないように仕向ける。
 そして、狼達を分断した所へ、グルカント一家を足止めするべくジュリエット、ウィルド、イーリン、アーマデルが接近。
『くそったれが! てめぇら絶対に殺す。その宝石も、村のも全部俺達のもんだ!』
 そんな戯れ言を吠える彼等にウィルドは。
「ほう……本当に強欲な者達ですね。まぁ……所詮は負け犬の戯れ言です。本当に自分の物にしたいというのなら、私を倒してみなさい?」
 蔑む様に笑うウィルド、更にイーリンも。
「そうね……みんな、左のあいつを狙うわよ」
 と仲間達に、グルカント一家の一人を指さす。
 ……確かにその男は、先程狼達に指示を与えた奴で……このグルカント一家の獣使いなのは、ほぼ間違い無いだろう。
「解った」
 そう短くアーマデルは告げると共に、獣使いと思しき敵が居るエリアを巻き込むように英霊の未練の音色を奏でる。
 そしてその音色に動きを大幅に制限された所へ、その死角から飛び込み仕掛ける弾正。
「貴様らには蜘蛛糸ほどの慈悲もくれてやるものか!」
 辛辣な言葉と共に、己の視座を上げると共に多重残像を伴う攻撃で斬り裂いて行く。
 そんな弾正とアーマデルの連携で、獣使いのグルカントの動きを完全に封殺しつつ、残るグルカント一家達にはジュリエットの轟く雷鳴が迸り、感電させていく。
『ぐ、ぐぬぅぅう……!!』
 なんとかそれら攻撃を躱した数人が、その実力差を感じて唇を噛みしめる。
 ……だが、容赦無くウィルドは。
「さぁ、どうした? 私は貴族だぞ? これを売れば、数週間は楽して暮らせるんだがな?」
 宝飾品を見せつけるようにして、挑発を重ねていく……そしてグルカント一家はなにくそ、と反骨精神を見せて、更に攻撃の勢いを上げていく。
 しかし、場を乱す要である狼達は最早自分達の所に戻ってくる事は無い……故に自分達の力だけで攻撃せざるを得ない。
 その一撃自体は確かに攻撃力は高いものの、幾重の激戦をくぐり抜けてきたイレギュラーズの前では、体力を中々削るには至らない。
 ……どうにか場の逆転を狙うべく、イレギュラーズ達を見渡し……女性陣を狙うのだが。
「ふふ……弱そうとでも思ったのかしら? でも、魔女だからって白兵がこなせない訳じゃないのよ?」
 そうジュリエットは軽く微笑むと共に、近づいて来た相手に亡霊の慟哭を与え、苦しめる。
 そうグルカント一家を仲間達が惹きつけている間に、三体の狼型魔物を貴道、ソア、胡桃が着実に討伐。
「良し。後はグルカントの奴らだけだ! 行くぞ!」
「わかったの!」
 皆頷くと共に、彼等彼女らも一気にグルカント一家の下へ。
『くそっ……奴らも来やがった!』
 舌打ちし、巨大な剣を振りかぶり、叩きつける……が。
「体力自慢かい? オーケーオーケー、ならばこの拳……全部受けてみな? 蜂の巣みてえな身体にしてやるよ、ゴミども!」
 笑う貴道の拳により、敵は宙に舞う。
 それを見せつけた上で、イーリンが。
「バカにでもわかるように教えてあげる。今、逃げなきゃ死ぬわよ?」
 そんな最後通牒を突きつけるのだが……最早彼等の頭には逃げるなどという選択肢は失われており。
『う、うるせえ!! ころ、ころしてやる、殺してヤルっ!!』
 半ば自暴自棄を伴いながら暴れる彼等……そんな彼等を一人だけ残し、残る敵を確実に倒して行くのであった。

●命の欠片拾い
 そして……グルカント一族を退治したイレギュラーズ達。
「ふぅ……どうやらこれで決着は着いた様ね」
 息を吐き、周りを見渡すジュリエット。
 ……流石に村が無事とは言えず、様々な所に被害の爪痕が残っている。
「それにしても……終わった後の村の片付けも面倒そうねぇ……」
 と言いながらジュリエットは、壊れた家の破片やら、土、粘土など、手軽に集められる物を一通り集めて……ちょっとした重たい物を持ち運びが出来る、復興作業用のゴーレムを作り出す。
 幾つか作ったゴーレムを分散させて、瓦礫を片付け、障害物を取り除き……と、村の復興作業を行わせる。
『おぉ……あ、ありがとうございます……』
 と村人の一人が、深く頭を下げるとジュリエットは。
「別に気にしないでくれていいわ。ま、今後も使いそうなら、彼等を警備用としておいてもいいわよ、別に」
 ぶっきらぼうな言葉ながらも、ゴーレムと共に村人達の手伝いを進んで行う彼女。
 更にはアーマデルは、弾正に。
「あいつらは、弾正に任せていいか?」
「ああ……アーマデルはアーマデルの出来る事をしてくれ」
「解った」
 頷いたアーマデルは、倒れた襲撃者達の骸を前に。
「……」
 手を合わせ、軽く冥福を祈る。
 そして……それら骸を前に、周りで様子を伺う村人達へ。
「……こいつらを、少し離れた所にでも葬って大丈夫か?」
 と尋ねる。
 村人達からすれば、自分達の村を襲撃した……憎むべき相手。
 とは言え彼らも又、鉄帝国に棲まう人であり……新皇帝に運命を狂わされた被害者の一人でもある。
 そんな複雑な心境を推し量り、アーマデルは死者らを一人、村の外へと運び、弔う。
 ……その一方、たった一人生き残らせたグルカントの者の周りには、イーリン、弾正、胡桃が取り囲み、目を覚ますのを待つ。
 暫しして……目を覚ました彼。
『……う……?』
 朧気な表情で、周りを見渡す……己達を倒したイレギュラーズの顔にはっとして。
『な……何だ、何だよ!』
 声を荒げる彼に対し、弾正が開口一番。
「……お前を残したのは理由がある。今や鉄帝は世紀末。ゾフィ村が貧しく弱い限り、また荒くれ者に襲撃されてしまうだろう……だが、この村の守護は俺達、ローレットの特異運命座標に任された。襲いに来たらどうなるか……身を持って解っただろう?」
「そうなの。結局、誰にも負けないヒトしか得をしないの。そういうのは、あんまり楽しくないの」
「貴方達は負けた……そして、私達がついている村をまた襲うようなら、同じ目に遭うわ。それだけじゃない、私達は貴方をこのままにしておけば、村民達にリンチにされるのは間違い無いわよ?」
 ふふっ、と笑みを浮かべながらのイーリンの言葉に、恐怖の表情を浮かべる。
 そんな彼の恐怖に、弾正は強面で。
「……解ったなら、行け。そして貴様の仲間に伝えるんだな。ゾフィ村には指一本触れさせんと!」
 威圧するよう言うと、ひぃぃぃ、と悲鳴を上げて、何度も何度も転びながら村から逃げていく彼。
「……生きたまま返して良かったのでしょうかね?」
 とウィルドが問うと、それに貴道と弾正が。
「ま、これで懲りずに攻めてくる様なら、今度こそ命はねえ……それだけの事だ。だよな?」
「ああ……」
 ただ倒すだけでは、悲劇の連鎖は繰り返されるだろう……だからこそ、敢えて生きて帰す。
 勿論、混乱下の鉄帝国の状況からでは、第二第三の掠奪者が現れるかもしれないが……噂を伝搬させる事で、少しでも無くなれば良い。
「それじゃ、村の後片付けをしないと。また襲われないように、ね」
 とソアがニコッと笑い、イレギュラーズ達は手分けして、村の後片付けを始めるのであった。

成否

成功

MVP

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女

状態異常

なし

あとがき

鉄帝騒乱解決に力を貸して頂き、ありがとうございました!
弱肉強食を強制される世界……戦う力の無い村人の方々を救うためには、皆様の力が大事です。
派閥それぞれの思惑はあると思いますが、是非とも皆様のお力を……宜しくお願いいたします!

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