PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<総軍鏖殺>鏖の雄たけびを上げ、獲物を狩りたてよ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●帝都より悪意を込めて
「サングロウブルクまでもう少しです」
 そういうのは、鉄帝軍服を着たものや、警察組織の服を着たもの達だ。近くには、持てるだけの私物を持って、スチールグラードを脱出した住民たちの姿がある。
 帝は墜ちた。
 不敗の帝王であったはずの『麗帝』ヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルズは、冠位魔種たるバルナバス・スティージレッドに敗北を喫した――と言われている。勝敗そのものは不明とは言え、バルナバスが実権を握り、皇帝をたるを謳いだしたのは事実である。
 バルナバスはひたすらに自由な国を生み出した。
 生きるも自由死ぬも自由。否、殺すも自由奪うも自由、とすべきか。
 強者だけがすべてを得、弱者は無残に死す、混沌のコトワリ。鉄帝自体にそう言った側面がなかったとは言えないが、しかしそのカオスの悪しき側面をことさらに強調したバルナバスの勅命は、すなわちこの世に地獄を生み出すこととなる。
 鉄帝の住民たちが鍛えることに余念がなかった、とはいえ、しかし勝者がいる以上、必ず敗者が存在し、強者が存在するなら相対的に弱者も存在することとなる。
 で、あるならば、弱者は何処へ行けばいいのか――。
 バルナバスの治世を『良しとしない』ものも居る。例えば、それは鉄帝国宰相バイル・バイオンを始めとした帝政派である。全皇帝ヴェルスの治世を取り戻す、或いは『もっとマシな奴を帝位に据える』ことを目的とし、かつての安定した鉄帝の姿を目指す彼ら帝政派は、スチールグラード近郊の街サングロウブルクにて活動と抗戦を開始していた。
 となれば、弱者は必然、庇護を求める。
 一部の住民たちは、サングロウブルクへの離脱を開始。帝政派は、その建前上、弱者を受け入れざるを得ず、護衛戦力の派遣を行わなければならなかった。
 解体された警察機構の一部官憲、或いは一部軍人たちによる臨時軍がそのバックアップにつき、今まさに逃げ出した住民たちの保護を行っている……というのが、現在の背景だ。
「参ったな。これだけの住民となると、距離が稼げねぇ」
 緑髪の女性軍人が言う。エリ、と呼ばれたその声に、彼女は頷いた。
「まずいな、追手が来る」
 副官であるその男に、エリは舌打ちした。
「新皇帝がわざわざ追手をよこした……んじゃねぇだろうな。大方、チンピラの類だ。逃げた奴を追って略奪してやろうみたいな」
「そうだろうが、しかし一番勢力を持っているのは、そういうチンピラどもだぞ。数だけは多い。俺たちだけじゃ、抑えきれん……」
「くそ、軍もボロボロか。内部分裂であっちに着いちまった連中もいる……。
 南部の連中に連絡がつけられれば、ちっとは変わるんだろうが」
「連絡がつけられんには事実だ。となれば、今の戦力で何とかやりくりするしかない」
 副官の男の言葉に、エリはチッ、と舌打ちをした。
「しょうがねぇな、サングロウブルグへは連絡がとれるだろ? ローレットの力を借りるしかねぇ」
「……そうだな。避難民の救助は、ある意味でこちらの大義名分を誇示する活動でもある。速やかに本部も動いてくれるはずだ」
 その言葉に、エリは頷く。増援が見込めるとはいえ、なるべく、距離は稼がないといけない。時間との闘いは続きそうだった。

●救いを呼ぶ声
「……以上が、我々が置かれている状況だ」
 そう、あなた(イレギュラーズ)たちへ言ったのは、鉄帝国宰相バイル・バイオン。今や帝政派のトップである男だ。
「意外か? だが、これは我々の建前を守るための仕事でもある。ならば、わしが直々に頭を下げるのも必然だろうよ」
 バイルの言葉に、あなた達は頷いた。少なくともかつての帝都の姿を取り戻すのが彼らの主張である以上、その帝都を構成する『民』を守るのは、彼らの役目であり建前の重要なものの一つだ。畢竟、「ここで民を見捨てるようであれば、その主張は根底から崩れる」。なればこそ、バイル直々に、イレギュラーズへ依頼をした……という事にも頷ける。
「早馬を使って、速やかにエドヴァウのチームに合流してもらいたい」
 エリ・エドヴァウというのが、避難民救助チームのリーダーのようだ。鉄帝軍人で、階級は少尉。小部隊のリーダーを行っていたこともあるための抜擢だというがさておき。
「我々も保有戦力は少ない……その為、一騎当千の貴様らが選ばれた、というわけだ」
 バイルの言葉に、イレギュラーズ達は頷いた。
「時間がない。細かい作戦行動は行きの馬車内で決めろ。時間は短いが、それでも貴様等ならやってくれるだろう。
 ……頼むぞ。緒戦だが、重要な戦いと心がけてほしい」
 バイルの言葉に、あなた達は頷いた。残された時間は少ない。あなた達はサングロウブルクを出発すると、すぐさまにスチールグラードに続く街道を、馬と共に走りだした。

「チッ、もうきやがったか!」
 エリが叫ぶ。後背をついて襲い掛かってきた彼らは、思い思いの格好をした『愚連隊』とでもいうような連中だ。リーダーらしき男は、
「ハ――ハッ!! いーいねぇ、より取り見取りじゃんかよぉ!!」
 叫ぶ。ガウズ・ガウガルン。ラド・バウでも有名なラフファイターだ。恐らくラド・バウ派との方針が分かれて追い出されたのだろう――それはさておき、今はただの野盗にすぎまい。
「奴らは軍人かッ! 先刻までは良い面しやがって、今はただのかられる獲物だ!
 テメェら、全員狩り殺せ! 皆殺しだ! 持ってるものはすべて奪え! この国は、俺たちのもんだッ!」
 叫ぶガウズ――エリは舌打ちしつつ、
「攻めるな! 防衛に注力! イレギュラーズが来るまで戦線を維持!」
「了解!」
 副官が叫ぶ。
 ――貴方たちが戦場へと到着したのは、そんな時だった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 バイル一派からの依頼を受けて、避難民を救助するのが皆さんのお仕事です。

●成功条件
 すべての敵の撃破・撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 帝都スチールグラードから、サングロウブルクに向けて、避難民が離脱中です。
 護衛となったのは、バイル一派(帝政派)の軍人、エリとその小隊。
 軍人とは言うものの、現在の戦力はさほど大きいとは言えず、満足な数の護衛を運用することはできない状態でした。
 それを狙って現れたのが、野盗に身をやつした元ラド・バウファイターのガウズ・ガウガルンとそのチーム。
 彼らは逃走する避難民を狙い、攻撃を仕掛けてきました。数少なく、疲弊もしているエリ達の小隊では、それを防衛しきることはできません……。
 という所で、救いの手は皆さんの力に任されました!
 皆さんは、バイルの依頼を受け、戦場に急行! 今まさに衝突を開始しようとしていた両軍の戦場に突撃します!
 皆さんはエリ達帝政派軍人たちとこ協力し、ガウズら野盗どもを蹴散らしてください!
 作戦決行エリアは、長い街道の1エリア。特に戦闘面でのペナルティは発生しません。

●エネミーデータ
 新皇帝派・無頼漢 ×60
  新皇帝の方針に賛成し、暴虐の限りを尽くす悪党どもです。鉄帝でも札付きのワルどもで、性格も残虐。
  避難民のことなどは動く狩りの獲物程度にしか思っていません。
  数は多いですが、半数以上はエリ達の中隊が請け負ってくれます。戦うのは20~30程度と言った所でしょうか。
  基本的には脳みそ迄筋肉、なので、物理系統の中距離~至近距離攻撃を行ってきます。
  遠距離攻撃が苦手な分、接近して来たら強力な攻撃をお見舞いしてきますので、距離が離れているうちにある程度ダメージを与えてやったりすると良いかもしれません。

 ガウズ・ガウガルン ×1
  元ラド・バウの悪徳ファイター。相手を過度に痛めつけるラフスタイルの戦い方は、観客からも顰蹙を買っていました。
  この度新皇帝派となって、好き放題に暴れています。同情の余地なしの悪党なので、思いっきり倒してやってください。
  物理インファイターで、スピードもそこそこ。命中力がやや低いですが、その分一撃が重いため、しっかり防御するか、回避してやるのがいいと思います。

●味方NPC
 帝政派軍人小隊 ×30
  元鉄帝軍・警察隊などの人員で構成される部隊です。ほぼ全員が物理インファイターです。とても鉄帝。
  敵愚連隊の相手をしてくれます。おおむね30前後の敵は、彼らに任せてしまって問題ないでしょう。援護してあげると、さらに力を発揮するかもしれません。

 エリ・エドヴァウ ×1
  緑髪の女性少尉です。彼女も割と脳筋なので、物理インファイターをやってくれます。
  上記の小隊員を指揮しつつ、愚連隊と戦っています。放っておいても充分仕事をしてくれます。指示などすると、さらによく動いてくれるかもしれません。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <総軍鏖殺>鏖の雄たけびを上げ、獲物を狩りたてよ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月02日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
セララ(p3p000273)
魔法騎士
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
ユーフォニー(p3p010323)
誰かと手をつなぐための温度

リプレイ

●ショウ・ダウン
「野郎ども! 根こそぎ奪い取れ!」
 叫ぶ、下卑た声。ガウズ・ガウガルンの雄たけびが、総数60にも及ぶ暴漢たちにエリ・エドヴァウ以下30名程の部隊員たちは、後輩に避難民たちを庇いつつ、防御の布陣をとった。
「好き勝手言ってくれるぜ」
 エリが舌打ち一つ、副官に叫ぶ。
「うちのチームは警官や自警団あがりもいる。本格的な対群戦闘は未経験のはずだ。
 だからってのものあるが、今は防戦を重視してくれ! ローレットの連中が来るはずだ!」
「了解! 全軍に通達、防戦セヨ、オーバー!」
 副官が叫ぶ。輸送用のトラックを盾に、避難民たちを庇った。そこからさらに進んで防衛線を構築、自分たちもまた盾として二重の壁を構築する。
「向こうは、イカれ野郎どもだ。すまんが、死ぬかもしれねぇ覚悟はしておいてくれ」
「仕方ありません! このご時世に、一秒でも長生きできたならいいとしやしょう!」
 部下からおどけるような声が響いて、笑い声が上がる。それは強がりであって、決意の表れでもあった。
「頼むぜ、ローレット。オレ達はともかく、避難民が傷つく前にきてくれよ……!」
 エリ、そして護衛部隊たちが決意を胸に、戦場へと飛び出した瞬間――。
 一筋の弾丸が、無頼漢の一人を穿った。ぐあ、と悲鳴を上げて、男が倒れ伏す。
「なんだ――!?」
 ガウズが叫んだ。再びの銃声が、無頼漢を狙う。ばちっ、と音を立てて、男に銃弾が突き刺さり、倒れ伏した。
「狙撃だ! 狙われている!」
 無頼漢が叫ぶ。同時、大地を叩く蹄の音が響いた。早馬に乗って/或いは自らの脚で駆ける8名が、今まさに戦場へと到着せんとしていた。
「このまま敵をけん制する」
 銃弾の主=『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)。自らの四肢で大地を蹴りながら、その上半身は一切ブレることなく、ライフルを構える。
「隊長はいるか! ローレット、ラダ・ジグリだ! 連絡はいっているな!?」
「ああ、こっちだ! すまねぇ、助かる!」
 エリが叫んだ。
「相手の数は多い。そちらの力も借りたい! そのうえで、指示を聞いてほしい」
「ああ、OKだ。部下たちへの細かい指示はオレが出す、大まかな方針をくれれば大丈夫だ!」
「助かる。では、まずは避難民たちをこのまま移動させてほしい。私たちが来た方向は安全だ。万が一にも敵が避難民たちに接触しないように!」
「よし来た! おい、聞いての通りだ。副官のお前をリーダーに、避難民に何人かつけろ。そのまま誘導させて一気に走らせるんだ!」
「サー!」
 副官が走りだす。
「残りはここで壁、で間違いないな?」
「ああ。それと、もう一つ――」
「人死には出さないで、で頼むよ」
 ウインクしつつ、『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)が言った。
「ああ、それと、終わったらデートでもしてくれると、士気が上がるんだけどね?」
「無事に済んだら考えてやるよ。雑魚共の方はこっちにも任せてくれ。半分か……アンタらの指揮があればそれ以上もいけるはずだ!」
「了解。じゃ、情報伝達は密に行うよ。ユーフォニーさん? リディアちゃんの目の調子はどうさ?」
 夏子がそういうのへ、『誰かと手をつなぐための温度』ユーフォニー(p3p010323)が頷いた。
「戦場俯瞰、よし……リーちゃん、大丈夫です! いつでも『視』ていられます!」
 そう言って、ユーフォニーはエリへと向き直った。
「情報は常に伝えます。よかったら、此方のアドバイスを聞いてもらえると、嬉しいです」
「もちろんだ。えーと、ユーフォニー、でいいな? エリ・エドヴァウ。エリでいい」
「はい、エリさん。一緒に、皆を守りましょう!」
 ユーフォニーが微笑む。そう言ってゆっくりと祈る様に瞳をつむると、足元にぽん、ぽん、ぽん、とドラネコさん達が召喚された。そのままにゃーにゃーにゃー、とドラネコさん達が歌い始めると、その歌声が、仲間達の活力となって、力を湧きあがらせるのだ。
「はは、助かるぜ」
 エリが笑う。
「力を貸してくれ。この国の……なんてデカい事を言うわけじゃないが、まずは今、苦しんでる奴らのために」
「もちろんです」
 そう言って、頷くのは『散花閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)だ。
「バルナバスのやっていることは、もはや統治などではない。
 彼にこの国を任せることは、彼が魔種である以上に危険であると判断します。
 故に――力なき人々のために、俺も力を尽くしましょう」
 ルーキスが言う。仲間達も、既に無頼漢たちと衝突を開始していた。
「行きましょう、エリさん!」
 ルーキスの言葉に、エリは頷いた。
「ああ! 全隊、攻撃開始だ!」
 護衛部隊も雄たけびを上げて、敵兵たちに突撃する。すぐに、あちこちで剣戟が鳴り響いた。

●護衛戦闘
「ガウズは俺が抑える」
 黒い影が飛ぶ。無頼漢たちの頭を超えるように、低空を疾駆する、黒の影=『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)。その身を包む黒の衣装は、悪を狩る義賊のそれである。
「飛んでくる奴の落とし方も知ってるんだぜぇ!」
 ガウズがバチン、と指を鳴らした。指弾である。いうなれば、闘気を石のように固め、指にて打ち出す格闘業。放たれた指弾が、アルヴァの頬を擦過した。わずかに、血が流れ出るのを、拭うでもなくほうっておく。
「アンタ、随分好き放題やってるみたいだな。
 俺ぁ賊専門の義賊でね、アンタらの身包みも剥いでやる」
 アルヴァがそう言いつつ、戯れるように空砲をうち鳴らした。やってみるかい、闘士さんよ。嘲るようなそれが、ガウズのこめかみに血管を浮かべさせる。
「おうおう、調子こいてんじゃねぇぞゴミが! テメェみてぇな三下を、ぼこぼこにしてやるのがラド・バウでも日常だった俺だぜ!?」
「三下はどっちだ。来いよ、雑魚が」
 ちょい、と指を倒し、「かかかってこい」と意を表す。ひくひくと、ガウズの口の端がひきつった。
「死ねよゴミが!」
 次々と放たれる指弾を空中で回避しながら、アルヴァは一気に地面に落下する。脚から着地、その際に近くにいた無頼漢の頭を落下の速度乗せながらついでに蹴り飛ばして、地面に降り立つ。
「こっちだ、三下」
 狙撃銃から牽制射を放ちながら、後方へと跳躍する。ガウズは見事に挑発に乗って、アルヴァの後を追いかけた。無頼漢たちと言えば、それを特に気にすることもない。元より、仲間という意識の薄い愚連隊である。
「セララ・スラーッシュ!!」
 一方、巨大な剣を振るい、無頼漢を斬りつける『魔法騎士』セララ(p3p000273)の姿がある。倒れた無頼漢、その影から、ナックル・ダスターを装備して殴り掛かってくる無頼漢の姿があった。セララはにっ、と笑うと、
「通じないよ!」
 と聖なる乙女の祈りの盾、ラ・ピュセルでその一撃を受け止めた。強烈な衝突音が鳴るが、祈りはその程度では傷一つつかない。聖剣ラグナロクを振るい、無頼漢を斬り飛ばす。
「魔法騎士セララ参上!
 強さっていうのはね、奪うためじゃなくて守るためにあるんだよ。それが真の強さなんだ!」
「うるせぇ! 強ければすべてを奪えるんだろうがよ!」
 無頼漢が叫び、巨大な蛮刀を振るう。セララに切りかからんとしたそれを、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が現れ、受け止めて見せた!
「確かに、強いモノが偉い……みたいな所は、鉄帝にもあったケドね!」
 イグナートが、無頼漢を殴り飛ばした! ぎゃん、と悲鳴を上げて、地面にたたきつけられる無頼漢が意識を失う。
「けど、強い故のセキニンなんてのものあったものだよ。オマエたちとは、違う!」
 イグナートが、さらに襲い掛かってきた無頼漢を殴り飛ばす。顔面に、強烈な拳の一撃。ぐいぇ、と悲鳴を上げた無頼漢が斃れるのを構わず、次なる獲物にけりかかる!
「セララ! ガウズってヤツを任せた! アルヴァだけに任せるわけにもいかないからね!」
「ありがと! イグナート!」
 セララが笑い、駆けだす。あちこちで、無頼漢たちと、イレギュラーズ・護衛部隊たちの激闘が続いていた。
「帝政派と革命派。今は敵というか、派閥をたがえる者同士。ですが、その根底に、民を想う気持がある事は疑いません」
 そういう『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の声が、戦場に響いたのを、セララはきいていた。
「それがある限り、私は今、ここで力を貸しましょう。聖女として振る舞えというのなら、それを成し遂げましょう。
 未来がどのような形をとるのであれど、新皇帝派……このような人たちに未来を任せるよりは、まだまだマシなはずですもの!」
 炎の燃え盛るメイスを握る。赤き聖女よ、今ここに人の嘆きを背に立て。怯え惑う人々の祈りを、お前は受けたのだ。
 すぅ、とヴァレーリヤが息を吸う。同時に、その胸の内に巻き起こる炎が、メイスのそれを輝かせた。突き出す。そのまま、駆けだす。炎の守護をまといし、聖女の行進。炎は帯となって、無頼漢を次々と吹き飛ばす。
「怒れというのなら怒りましょう。今こそがその時とするならば! さぁ、さぁ、此処が正念場!」
 ヴァレーリヤがウインク一つ。セララは頷いて、炎の聖女の貫く道を駆けだした。前方。狙撃手(アルヴァ)に接近する、悪漢(ガウズ)。勇者(セララ)は吠え、跳んだ!
「ガウズ・ガウガルン! ボクと勝負だよ!」
 セララが大上段から、刃を振り下ろした。ガウズは舌打ちと共に、籠手でその斬撃を受け止める。
「まさかラド・バウのファイターが挑まれた勝負から逃げるなんて事は無いよね?
 もし逃げるなら――それはファイターじゃなく、弱虫ってことだよね!」
 振り下ろす刃の圧を振り払い、ガウズが後方へ跳躍。
「舐めてんじゃねぇぞ、ガキが!」
 雄たけびと共に突撃! 振るわれる拳を、セララはラ・ピュセルで受け止める。勢いは殺せず、そのまま後方へと跳躍。追撃にうつろうとするガウズは、しかしアルヴァの銃弾が擦過して止めた。
「おっと、二体一じゃ戦えないかい、三下」
 アルヴァの言葉に、ガウズはぎりり、と奥歯をかみしめた。
「待ってろ、全員殺してやる……!」
 セララが盾と剣を構え、アルヴァが銃を構える。後方陣地での激突が、激しい始まりのゴングを叩きならしていた。

●その両手で、守り切ったもの
「信じられねぇな、押せ押せじゃねぇか……!」
 エリが苦笑する。確かに誰もが、避難民を守っての死を意識していた。エリもその一人であったが、しかし今はどうだ。8人の援軍は、その比類なき慧眼と実力で、あっという間に戦線をひっくり返そうとしている。もちろん、その英雄たちとて無傷とは言えない。だが、それでも、この状況下でここまでの結果を導き出せるのであれば――。
「一騎当千か……くそ、カッコいいなぁ、ああいう連中は! 悔しいが、オレもまだまだか……!」
 エリが笑った。憧れのような、頼れるような。そういうものが、エリの中にあった。
「負けんなよ、野郎ども! オレたちはヒーローじゃないかもしれんが、でもプライドはあるだろう!?」
「サー、隊長! やってやりますとも!」
 隊員たちが、おどけるように笑う。その様子を見ながら、ユーフォニーは少しだけ笑った。
「大丈夫みたいですね……皆さん。ヒーロー、なんて言われると、少しくすぐったいですけど」
「まぁ、良いんじゃない? ヒーローを求められてるなら、その真似事くらいはね?」
 夏子が言う。眼前に現れた無頼漢を、その槍で殴り倒す。
「しかし、人を動く獲物にしか思わない連中ってのは……最早ワルとか、そう言う次元じゃ無い気がするなぁ。ヒトか? ホントに?」
「うるせぇ! スカしてんじゃ――」
 飛び掛かってきた無頼漢を、夏子の槍の柄が叩き落とす。
「しかし、言いたいことがあるね。隊員君にはね。 ああ、ああ聞き給え諸君!
 避難民に被害が無いのはヒトエに! 志高き勇者諸君のおかげだろう!
 武勇に優れた 誇り高き鉄帝マン達と一緒に武功を挙げられる事 誇りに思う! マジよマジ」
 ふふん、と笑う夏子。ごう、ごう、と感謝の雄たけびが、護衛部隊たちから響いた。
「いいじゃねぇか、デートも前向きに考えてやるよ、ヒーローさんたちよ!」
 エリが笑いながら、無頼漢を殴り飛ばす。あれほど、山のようにいた無頼漢たちは、瞬く間に駆逐されていった。これも、イレギュラーズ達の助力の成果に間違いない。
「デートはいいですから、この後は驕りで飲み会とかでしょうか!? 私、期待してお財布を持ってきていませんわ!!」
 ヴァレーリヤがそう笑うのへ、
「良いぜ、聖女様! 生きて帰ったら宴会と行こう!」
 護衛部隊たちが叫ぶ。あーあ、とルーキスがため息を吐いた。
「これは、サングロウブルク中のお酒が空になりますよ……?」
「まぁ、良いだろうさ。景気づけにもなるだろう?」
 ラダが笑う。ラダの放つ銃弾は、怒涛のごとく降り注ぐも、その一打のどれもが、味方には当たらない、驚異の技術によって成り立っている。自らの身体すれすれを飛び交う銃弾に、イレギュラーズ達はもちろん、防衛部隊のメンバーも、いつしか気にしなくなっていた。それだけ、ラダの腕を信頼していた。
「無頼漢どもはこっちで処理できる。ルーキス、夏子、イグナート。あの元闘士の所へ行ってくれ。残りは引き続き、無頼漢どもを散らそう! ユーフォニー、どこから突破できそうだ?」
「はい、右手の方が、此方の戦力が厚いです。そこからなら、安全に突破できるはずです!」
 ユーフォニーがそういう。にゃにゃにゃー、と足元でドラネコたちが鳴いた。
「好いBGMです。心が躍りますね」
 ルーキスが、刃を抜き放ち、駆けだす。
「ほいほい、じゃあトドメと行きましょうか」
 夏子が軽い調子で、槍を持って駆けだした。
「頭を潰せばナントヤラ、だね!」
 イグナートが笑う。駆け抜ける前方には、セララ&アルヴァと激しい攻防を繰り広げる、ガウズの姿があった。
「ガウズ・ガウガルンですね!? その狼藉もここまでです!」
 ルーキスが、斬撃と共に飛び掛かった。振り下ろすように振るわれるそれを、ガウズは籠手で打ち払う。
「ちっ、新手か! 他の連中は何してやがるんだ……!?」
「元々連携獲るほど仲良くないでしょ? アンタら」
 夏子が小ばかにするように、槍を突き出した。バランスを崩しながら、ガウズが後方へ跳躍――が、後ろにはイグナートがいる!
「未来を寄りイイ方向へ導ける力こそ強さだよ! だからオレは戦う力が無いヒトを守るんだ!
 守った人の中に本当の強さを持っているヒトが必ず居るから!」
 叩き込まれた拳が、ガウズの背中を抉る! が、と息を吐いたガウズ、そこへ、アルヴァの銃弾が突き刺さる。たんっ、と以外にも軽い音が響いて、ガウズの左肩のあたりを貫いた。
「ぎいっ!!」
 悲鳴を上げる。痛みに顔をしかめたそこへ、セララの飛び込み斬りが迫る!
「逃がさないよっ!」
 振り下ろされたそれが、ガウズの左腕を叩いた。籠手が切り裂かれ、地に落下する。あらわになった素手に、赤い線が走った。セララの斬撃、籠手のみならず、肉をも浅く切り裂いていた。
「くそっ……! こんなはずじゃ……!」
 ガウズが吠える。アルヴァが冷徹に言い放った。
「どんなはず、だったんだ? 抵抗もできない弱者を一方的に踏みつけて、気持ちよくなって満足、だったか?」
 かちゃり、と狙撃銃を構える。
「先に弱肉強食の道を選んだのはアンタらだ。
 弱者を狩ろうとしてた奴が、逆に狩られたとしても文句は言えないよな?
 第一、俺はテメェみたいに弱い奴しか攻撃できねえ奴が一番嫌いなんだ!」
 ずだん、と狙撃銃が火を噴いた。右手の籠手を、銃弾が吹き飛ばした。
「ぐ、ぐ、くそ、がぁぁっ!」
 ガウズが吠える。捨て身の突撃! もはや進退窮まったが故の破れかぶれのそれは、しかし夏子の一撃で、それを留め置かれた。
「はいよ、そこまで」
 ずだん、と鋭く叩き込まれた槍の柄が、ガウズを地面に叩き落とした。がっ、と悲鳴を上げ、ガウズが地面に転がる。
「死んでナイみたいだ。そうだね。そのホウがいいよ」
 イグナートが笑った。
「うん。ラド・バウの悪評立てたくないからね。悪い奴は、ちゃんと法に則って成敗されてもらおうー」
 ぶい、とセララがブイサインをした。それとほぼ同時くらいに、後方でも剣戟の音が鳴りやんだ。すでに無頼漢たちは制圧されていて、仲間達も、傷はおったものの、死人を出さぬという目的を達することはできたのである――。

「さて、ここからもうひと仕事だな」
 ラダが言う。あちこちに散らばっているのは、避難民たちが遺した大きめの荷物だ。荷車や、トラックなどにのせられたそれを、確認して回る。
「ああ、これを運ばないといけないのですわね……」
 ヴァレーリヤが肩を落とす。先に逃がした避難民たちと合流する際に、荷物を渡す必要があった。
「もう少し頑張りましょう? 終わったら、祝勝会ですよ」
 ユーフォニーがそういうのへ、ヴァレーリヤは頷いた。
「ええ、ええ! ただ酒ですわね!?」
 その言葉に、仲間達は苦笑する。いずれにしても、後は避難民たちと合流するだけだ。そして、サングロウブルクへは、もうすぐに到着するのだった。

成否

成功

MVP

ユーフォニー(p3p010323)
誰かと手をつなぐための温度

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆さんの活躍により、避難民たちはサングロウブルクへと無事到着。
 感謝と歓喜の声を、皆さんに送り続けたそうです。

PAGETOPPAGEBOTTOM