シナリオ詳細
<総軍鏖殺>街の警護に勤しもう
オープニング
鉄帝は、群雄割拠の気配を見せ始めていた。
全ては、『煉獄編第三冠"憤怒"』バルナバス・スティージレッドと『麗帝』ヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルズの決闘の結果である。
今まで挑まれた帝位挑戦に対する全防衛記録を持つ最強のヴェルスと、魔種という次元すら超越している冠位七罪たるバルナバスの戦いは一日以上にも及び――
激しき死闘の果てに玉座に君臨していたのは、バルナバスであった。
玉座についたバルナバスは、弱肉強食を是とし、それを合法とする発布を出す。
これにより各地は混乱の坩堝へと移ろうとしていた。
バルナバスの『弱肉強食』とする勅令を喜び、思うがままに振るわんとする無法者。
勅令により解放された犯罪者。
鉄帝と領土を接する諸国の不穏な動き。
様々な不穏が入り混じる中、各地で混乱が起こる。
そんな中、鉄帝国のとある端に属する街では、嵐に備えるように動いていた。
「とりあえず、戦闘が苦手な子とかは、一時的に疎開できるように手配しておくわ」
幻想の商人であるリリスは、街の実質的な統治者である鉄帝軍人ギギルに言った。
「最悪、住人全員を移住させるぐらいの用意はしてるわ。全員同じ場所にって訳にはいかないから、幻想とかラサとか、あと海洋にリゾート地として開発してる島とかに分散して貰うことになるけど。もし街から離れるつもりがあるなら言って」
「最悪は、それも考えとくよ」
街の周囲の地図を確認しながら、ギギルは言った。
「それにしても動きが早いな。いつぐらいから用意してたんだ?」
「少なくとも、この街に関わるよりも前からよ」
一年以上前から、リリスは街に投資をしている。
街は、小規模遺跡群の近くにあり、そこから出る遺物を取引していた。
さらに、街の中での食糧生産や特産品の製造なども進め、ようやく形になり始めた頃に今回の騒動である。
「元々、私達が商売してるのって、この世界で何か起きた時に、巻き込まれる子達をとりあえず安全に避難させられないかってのが始まりだし。こういう用意は、コツコツしてたのよ」
「『この世界』、ねぇ」
一見するとリリスは幻想種に見えるが、実際は旅人だ。
「お前さんらからすると、今のこの騒動は、バカバカしく見えんのかね?」
「そんなことないですよ。単純に、まだ若いなとは思いますが」
話に加わったのは、こちらも幻想種に見えるが、旅人のヴァン。
「若い? どういうこった?」
「まだ『英雄の時代』真っ只中なんだなぁ、とか思ってます」
「英雄の時代ねぇ……そりゃあれか、個人の武勇が一番かどうかってことか?」
「それもあるけど、ノリと勢いというか……神話の時代から英雄の時代になって、その次の時代に向かってるんじゃないの? って感じがするのよ、余所者の私とかからすると」
「時代の移り変わりってことかねぇ?」
「さて、それは解りませんが。どちらにせよ、世の中が混乱して巻き込まれるのは確実ですし、出来ることしましょう」
そう言うとヴァンは、ギギルが見ていた街の周辺地図に書き記していく。
「とりあえず、街の籠城化も出来るよう対処をしていきましょう。街の中に侵入するのに適した道以外は、前から進めていた壁作りや地雷設置を進めてます。仮に侵入しても察知できるよう、探知術式を設置したので不意打ちは防げるでしょう」
「なら問題は、街に続く道の守りか。俺らだけじゃ、人手が足らねぇな」
ギギルは、若い新兵を中心とした配下を率いているが、とてもではないが街ひとつを警護するには足らない。
「そっちの当ても、任せていいのか?」
「いいわよ。うちの商会で契約してるラサの傭兵の子達が近い内に来てくれるわ」
「それと練達の知り合いの科学者が、小型の飛行人型ロボットを連れて来てくれることになっているので、そちらも戦力に加わる予定です」
「なら時間が経てば、どうにかなりそうだが……問題は、それまでこの街が狙われない保証がないってことだよな」
「他の街は、どうなんですか?」
「ボチボチ噂は聞いてる。獄中から自由になった罪人やら、この機に火事場泥棒しようとしてる野盗連中とか……知り合いの所も被害受けてるみたいだし、出来れば助けに行ってやりてぇが、今の状況で離れるわけにはいかねぇ。とにかく手が足りねぇ」
「なら、人手を増やしましょう」
「……ローレットか?」
「ええ。頼りになるでしょ」
何度か依頼をしたことのあるリリスは言った。
「きっと他の所でも引く手あまたでしょうから、早めに依頼を出しておくわ」
「そうか、それなら助かるが……なぁ、仮に野盗とかにここが攻めて来られたとして、そうつらどうする? あの腐れ勅令のせいで牢に放り込むこともできねぇしな」
「どうしようもないのは殺すしかないでしょ。でも少しでも見込みがあるなら、こっちで引き受けるわ。何度か同じような子達を引き受けて働かせてるから、ノウハウはあるもの。でも、条件があるわね」
「なんだ?」
「徹底的に心をへし折るぐらいに叩きのめして。そうじゃないと、仕込むのに手間取るから」
「はっ、おっかねぇ。まぁ、殺されるよりゃマシだろ。分かった。そんときゃ、可能ならそうするよ」
出来る余裕がなければ殺す。
言外に滲ませながらギギルは言った。
そうした防衛に奔走する者達もいれば、奪うために集まる者達もいた。
「それで、俺らに手を貸してくれるってのか?」
バルナバスの勅令により解き放たれた罪人が1人、とある人里離れた場所で尋ねた。
「牢から出たばかりで物がねぇから、くれる物は何でも貰うが、そっちの得は何だ?」
「個人的なものだよ」
応えたのは、細身の男だった。
「君達のような者達が、この国をどう掻き回すのかが見たい。それが目的だ」
「ふぅ~ん。そっちのオッサンも同じ口か?」
「私は、将来への投資だよ」
穏やかな声で、もう1人の男は言った。
「私は犯罪組織を運用していてね、鉄帝でも広めたい。君達のような人達が、これからの鉄帝の街を支配してくれるなら、今の内に食い込んでおきたいのさ」
「随分と暢気な話だな。今のこの国の状況見てたら、どうなるか分かんねぇぞ。下手すりゃ更地になるんじゃねぇかなって思ってるぜ、俺は。それはそれで面白そうだけどよ」
楽しげに笑いながら、罪人の男は言った。
「そっちのオッサンの目的は分かったけど、アンタは、よくわかんねぇな。アンタの家は、帝政派だろ? それなのにこんなことしていて良いのか? バレたら殺されそうだけど」
「構わないよ。どの道、私は家からは捨てられているようなものでね」
病んだ笑みを浮かべ、細身の男は言った。
「私は鉄帝の人間にあるまじき病弱でね。既に親に廃嫡され、弟が家督を継いでいるんだ。そんな私が今さらどうなろうと、関係ないよ」
「はっ、そりゃつまりあれか。恨み辛みの憂さ晴らしを俺らでしようってわけか?」
「そうとって貰っても構わないよ」
「はははっ、いいぜ~。そういう分かり易いのは好きだぜ。アンタは憂さ晴らし。そっちのオッサンは金儲け。それに俺らが乗っかるってわけだ。任せろ。好きに暴れてやるからよ」
そう言うと、手を差し出す罪人の男。
「とりあえず何かくれよ」
「なら、これを渡そう」
「何だこれ? 地図か?」
「襲うのに旨味のある街の地図だよ。街の規模の割には潤っている場所が記してある。使ってくれ」
「へぇ、結構あるな……折角だから知り合いにも渡してやろ~っと」
「君が独占しなくても良いのかね?」
「そんなことしても、今の状況じゃすぐ、あっちこっちでお祭だ。そうなる前に、恩を売っとく。それにその方が、余計に混乱するから俺らも動き易くなるしな」
にやついた笑みを浮かべ、罪人の男は言うのだった。
●
「街の警護に協力して欲しいのです」
招集されたイレギュラーズに向けて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の詳細を説明してくれる。
「鉄帝が今ヤベー状況なので、もしかしたら野盗とかに襲われるかもしれないのです。その予防に、就いて欲しいと言ってるのです」
時間が経てば、他から警備のための戦力を引き込むことが出来るが、それまでの間を守るために来て欲しいということだ。
「街にいる間に襲撃されるとは限らないので、のんびり楽が出来るかもしれなのです」
そうならない可能性も多々あるのだが、とりあえずユリーカは笑顔でイレギュラーズ達を送り出すのだった。
- <総軍鏖殺>街の警護に勤しもう完了
- GM名春夏秋冬
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月26日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
現地に訪れ依頼人達に出迎えられたイレギュラーズ達は、挨拶した。
「やっほー、元ハッピー隊!」
以前、依頼でギギル達と一緒に戦ったことのある『幸運の女神を探せ』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)が親しげに声を掛ける。
「俺達が集まったからには町の人を誰一人傷つけさせねぇ。気張ってこうぜ!」
これにギギル達は信頼するように言った。
「よろしくな隊長。今回も頼むぜ」
笑顔を浮かべ応えると、要望が無いか訊いてきた。
「必要な物があったら言ってくれ。用意する」
これに、『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)は返す。
「街の全容が分かる地図はない?」
すぐに用意してくれ、皆で確認。
頭に叩き込み、協力して警備の死角を減らす話し合いをする。
「昼と夜の二班に分けて、二交代制で警備しようぜ」
積極的に提案するは、『抗う者』サンディ・カルタ(p3p000438)。
「もちろん襲撃されたら、みんなでやっつけよう。このやり方でいくなら、俺は昼の担当に立候補させて貰いたい」
皆は賛同し班を分ける。
「私は夜目がちょっと効くから夜を担当させて貰っても良い?」
そう言うと、『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)は提案するように続けた。
「連絡用にファミリアーのネズミさんを見張りの場所に置くから、何かあったらすぐ知らせるわ」
「助かる。俺達も何かあればすぐに駆けつける」
ギギルの言葉に、ヴィリスは返す。
「私も、事が起ればすぐに駆けつけるわ。何かあったら起こしてちょうだい。あ、でも寝るときは流石に仮面を外すけれど素顔は見ちゃだめよ?」
「淑女のマナーを破るような真似はしねぇから安心してくれ」
ギギルは冗談めかして言うと、他に必要なことは無いか皆に尋ねる。
これに、『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)は応えた。
「防備の回らない地域の人達に発煙筒を渡せないかな? 襲撃を見かけたら使えるようにしてほしい。あと、戦えない人達がすぐに逃げ込める場所があると良いんだけど」
これにはリリス達が対応すると返答。
それを聞いてサンディは提案した。
「街の端に見張りっぽく立たせておくカカシを用意出来ないか?」
「デコイってことか?」
ギギルの問いにサンディは応える。
「まぁ、矢の一本でも無駄にしてくれれば、敵の動きのヒントが取れるから『儲け』ってことで。あと、街の住人を避難させる時に、軍人から何人か出して避難誘導して欲しい。その方が混乱も少ないだろうし」
同意し実行されることになる。
手順を聞いていたハリエットは、住人達の安全を第一に言った。
「もし、住人が野盗とかに出くわしたら大きな音を立ててほしいんだ。そして逃げてほしい。命を無駄にしないでほしいんだ」
「もちろんだ。そう言って貰えると、こっちもやる気が出るね」
笑顔で返すギギル。
防衛案がまとまり実行に移す前、『六天回帰』皇 刺幻(p3p007840)が確認するように尋ねた。
「襲撃者は最悪……殺していいんだな」
「あんたらには負担を掛けて悪いが、最悪そうしてくれ。元々この国は力が一番だったが、今はそのタガが外れてる。強者は何しても良いって有り様だからな」
鉄火場に慣れているギギルは感情を押し殺した声で応えた。それに――
「だったら俺達が、襲ってくる奴らより強けりゃいいんだよ」
ジュートは、あえて明るい声で言った。
「強い者が弱い者を好きにしていいっていうなら、俺は町の皆も守りてーし、野盗の奴らも改心するなら救ってやりてぇ。だって血を見るより手を取り合える未来を見た方がハッピーじゃん!」
これに刺幻は小さく笑みを浮かべ、応えるように言った。
「ハッピーなのはいいな。この街を襲う者が出るというなら、私達の強さを思い知らせてやろう」
力強い刺幻の言葉に、皆は同意した。
そして街の警備が始まる。
それぞれ担当時間を巡回し街の安全に勤めていた。
「こんばんは!」
夜。遅くから働いている住人に、『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)は元気よく声をかけた。
「今日もお疲れ様!」
住人が不安を覚えぬよう、守る意志を言葉にする。
「街の安全は私達が守るから心配しないで!」
ここ数日続けていることもあり、住人達は親しげに応えを返す。
信頼してくれる様子に、余計に気合が入る。
(皆に安心感をお届け! 後はこれで悪い人が誰も来なければ御の字!)
襲撃を意識しながらも、避けられれば良いとも願っている。
けれど同時に、備えは怠らず守りを固める。
「ここにも篝火をひとつ。死角が出来ないようにしよう」
巡回の途中、『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)は、住人達と一緒に守りを固めていた。
「うん、そこで良いと思う。隣の区画は設置済みだから後は――」
指導していると、ギギル隊の若い衆が駆け寄ってくる。
「人形持って来たよー!」
「ありがとう。この辺りに、設置して貰える?」
地図で示された場所に若い衆は人形を持って行き設置する。
簡単なデコイだが出来ることは可能な限りしたい。
屈託なく警備に奔走する彼らを見て、ルチアは思う。
(内乱で国家の統制が緩んだ途端に野盗が跋扈するのはロクでもないことだけど、街の守備隊が立派なのは不幸中の幸いね)
安堵する気持ちはあるが、油断する気はない。
広範囲を俯瞰した感覚で探りながら、ルチアは巡回を続けた。
警備を続け何事もなく依頼は終わるかに思えたが、昼の最中に、その時はやって来た。
●襲撃者から街を守れ!
最初に気付いたのは街の入口周辺で警備していた刺幻だった。
街道から向かって来る一群を確認。
(50って所か……そこそこ多いな)
鴉型のファミリアーを仲間に飛ばしながら状況把握。
(まずは出方を見るか)
幻影を作り出し入口に配置。
襲撃者の様子を探っていると、幻影に向かって声を掛けてきた。
「おい、お前街に雇われてんのか? だったら止めて俺らに加われ」
(……見縊ってるな)
いきなり殺しに来る可能性を考えたが、その気配はない。
(あと少しで援軍も来る……時間を稼ぐか?)
すでにハリエットは入口を射程に収める位置で物陰に隠れており、いつでも狙撃が出来る体勢を取っている。
昼班のサンディとジュートも現場に向かっており、夜班は街の人間が連絡しているのを、ファミリアーの視覚を通じ確認していた。
「街に何の用だ?」
戦闘体勢を取りながら、刺幻は姿を見せる。
合わせて消える幻影に、襲撃者は面白そうに声を上げた。
「消えた! なんだそれ、お前がやったのかよ」
若い、というよりは幼い反応。
実際、ほぼ全員が10代後半に見えた。
だが油断せず、刺幻は対峙する。
「街はローレットが守っている。危害を加えるつもりなら、相応の報いを受ける覚悟をしろ」
これに襲撃者達は笑い声をあげた。
「お前、1人でこの人数に勝てるつもりかよ」
「――警告はした」
瞬速を体現する。
反応などさせず間合いを詰め斬り裂く。
「テメェ!」
リーダー格らしい青年が即座に指示。
「囲んで潰せ!」
一斉に動くが、刺幻は強化した動きで翻弄。
囲まれることを防ぎながら、加減なしで刃を振るう。
(おおよそこの情勢下では、火事場泥棒や内乱は完全に防げはしないだろう。依頼主には申し訳ないが、全て殺すつもりで依頼にあたらせてもらう)
襲撃者達の強さはそれなりだったので、即死ほどではないが深い傷を与えていく。
さらに見せしめも兼ね、動きを封じるように倒した者の足を斬り裂いていた。しかし――
「相手は1人だ! ビビるな!」
仲間が重傷を受けても怯えた様子もなく刺幻を囲んで潰そうする。
刺幻だけならばそうなったかもしれないが、彼は独りじゃない。
「捉えた」
ハリエットは、刺幻の死角に忍び寄ろうとした相手の足を精密射撃で撃ち抜く。
すぐさま次弾準備。
精密さよりも数で制圧することを意識し連続射撃。
魔力の込められた弾丸は襲撃者の間合いに入ると、軌道を歪め跳ね回り暴力の嵐と化す。
襲撃者は魔弾を食らい、けれど怯んだ様子もなくハリエットに突進。
だがハリエットは静かに迎え撃つ。
精密射撃で足を撃ち抜き動きを止めながら、静かに呟く。
「国が揺れれば、それに乗じた輩が動く。この前読んだ本で学んだことそのままの状況だね」
学んだことを反復するように呟くのは、この先に生かしていくため。
情報屋として生きていくために、そして――
(今の状況が続けば街には親を亡くした孤児が溢れ、孤児は生きるために悪事に手を染めていく……召喚前の、私のような子を出さないためにも、この街は守りきろう)
自身の過去を想いながら無力化していった。
だが敵の数は多い。
どうしても撃ち漏らしが出て接敵されるが――
「させるかよ!」
敵の数の多さを発煙筒を焚いて知らせ終え、現場にジュートと共に到着したサンディが、ハリエットに近付こうとした敵を斬り伏せ無力化する。そして――
「俺が前に出て皇をカバーする! 後方支援は頼む!」
「分かった」
走り出すサンディを援護するように、ハリエットは狙撃。合せて――
「そのまま走れ! 援護する!」
ジュートが支援攻撃。
サンディに横手から斬りかかろうとする一団に、激しく瞬く神聖なる光を放ち動きを止める。
お蔭で危なげなく距離を詰めることが出来たサンディは、刺幻の死角を守る配置につくと、敵を引き付けるように声を張り上げた。
「何してんだ! こんなクソ寒い土地で共食いみたいなことしてたら良くて共倒れだろ! 正気じゃねぇぞっお前ら!」
「うるせぇっ! そういう国だろうがよここは!」
敵リーダーの青年が言った。
「強けりゃ生き弱けりゃ死ぬ! だったら強くなろうとするのは当たり前だろうが!」
激情をぶつけてくる。
それをサンディは受け止めながら刃を振るう。
「当たり前だからって流されてんじゃねぇ!」
自身の生命力を破壊力に変え、まとめて吹っ飛ばしながら高らかに名乗りを上げる。
「俺は泣く子も黙る大怪盗、サンディ・カルタだ! 掛かってきやがれ!」
すると敵の何割かがサンディに向かっていく。
刺幻と互いの死角をカバーするようにして近接戦を続ける。
敵の数の多さで幾らか傷を受けるが、即座にジュートが癒してくれた。
「攻撃に専念してくれ。いつでも回復させるし、死角から来る相手はこっちで受け持つ」
仲間の中央に位置取り、刺幻やサンディが目の前の敵に集中できるよう動いた。
邪魔と見た敵はジュートを排除しようとするが、近付かせることなく戦闘不能にしていく。
すると敵は叫ぶように言った。
「余所者が余計なことしてんじゃねぇ!」
これにジュートは返す。
「街の人達に襲い掛かろうとする奴らを野放しに出来るわけないだろ」
「はぁ? この国はそういうもんだ! 弱肉強食ってヤツだろ!」
「この国が弱肉強食ってんなら、お前らさっさと肉になれよ」
ポーカーフェイスで表情を消しながら言いつつ、漏れ出そうになる感情は押し殺す。
(良心は痛むけど、野盗としての心を折らなきゃ更生の道はねぇ。我慢だぜ!)
敵の数は多いが勢い良く戦う。
そこに夜班も駆けつけ、一気に攻勢に出た。
(本当に来やがった)
嫌悪感を飲み込みながら、風牙は敵の只中に跳び込む。
勢い良く突進してくる風牙に、敵は迎撃態勢を取ろうとするも、風牙が先制攻撃。
高めた『気』を敵陣の中心に向けて放ち、爆散。
飛び散った『気』は敵の内部を乱し、強制的に脱力させる。その隙を逃さず――
(ここだ!)
雷撃を叩き込む。
轟音と共に敵の1人はまともに食らい、一撃で無力化した。それを見た敵リーダーは――
「次から次に! 邪魔すんじゃねぇ!」
「うっさい! 不埒者!」
怒りと共に風牙は間合いに跳び込み、強力な一撃を放つ。
気を爆発させ己自身を打ち上げるようにして、敵に拳を減り込ませ殴り飛ばす。
「お前らみたいに警察が機能しなくなった途端に犯罪に走る連中は、ほんっっとに嫌いなんだよ!」
これに、攻撃を受け立ちあがった敵リーダーは怒りの声を上げる。
「知るか! 弱ぇ奴らから奪って何が悪ぃ! そういうもんだろうが!」
「勝手な理屈押し付けんな! 貴様らに渡すものはコメ一粒だってありゃしねえ!!」
戦闘は激化していく。
「怪我したくないなら、そのまま大人しくしてなさい」
乱戦続く渦中に飛び込んだヴィリスは、躍動的なステップを踏み術式を発動。
呪縛により動きを封じられた敵は、しかし強引に逃れようともがく。
「止めなさい。大人しくしてくれれば手荒なことはせずに済むの」
「知るか! 殺されるのが怖くてこんなことやってれるか!」
「そのつもりはないわよ」
残像が生じるほどの速さと、舞い踊るかのような華麗さで連続攻撃を重ね叩きのめしていく。
「痛い目は見て貰うけど、殺す気はないの」
「舐めてんのか!」
「違うわよ」
途切れることなく攻撃を重ねながら、ヴィリスは言った。
「罪は償ってこそでしょ? 殺したら、叶わなくなるわ」
諭すように言いながら、敵を無力化していった。
敵を押していく。
そんな中、敵リーダーは叫ぶように言った。
「邪魔すんな! 俺らはこの国の弱肉強食に従ってるだけだ!」
「それだけじゃ駄目じゃないかな?」
皆の回復と壁役として動いていたンクルスはシスターの如く、説法するように言った。
「確かに強いってのは大事な要素だと思うけど、それよりもっと大切な物はあるよ」
襲い掛かって来た相手の首に腕を回し締め落としながら、ンクルスは伝えるように語りかける。
「強さよりも心が大切だよ。それが無い暴力はダメだよ」
近付く敵の頭を、空気を操作し掴みながら主張する。
「心なき力は暴力! そして暴力は良くない物だよ! そして悪い人には天罰が下る物!」
だからシスターである自分が体現する、と言わんばかりの勢いで、次々締め落とし無力化していく。
「安心して! 悪い人から改心できるように、愛と勇気の大事さとか創造神様の事とかシスターさんは素晴らしいとか大事な心構えをいっぱいお話してあげるからね!」
全力で拒否するように襲い掛かってくる敵の攻撃を、持ち前の再生力で受けながら、要所要所で締め落としていくンクルスだった。
戦いは佳境に向かい、敵は次々倒されていく。
けれど不利になるほど敵は苛烈に暴れ、そこに止めを刺すようにイレギュラーズは攻撃を重ねていった。
「できれば、改心の機会は設けてあげたい所だけれど……」
殺して終わりにしたくないルチアだったが、街の住人の命と財産の保護を第一に考え、躊躇なく攻撃していく。
雷撃を連ね、放つ。
蛇のようにうねるそれは、避けようとした敵に食いつき感電させる。
倒れ伏し無力化した相手には追撃は与えず、未だ暴れる敵に雷撃を重ね撃ち続け無力化していくが、敵は最後まで抵抗してきた。
「クソが! 俺達が成りあがる邪魔すんじゃねぇ!」
特に敵リーダーがしぶとい。
「俺達は成り上がって美味いもん食って欲しいもんを手に入れる! 邪魔すんな!」
「それは他人を傷つけて叶える夢じゃないよ」
ルチアは電撃を叩き込み無力化しようとするが、それでも敵リーダーは暴れる。
それに鼓舞されたように残りの敵も暴れ傷を受ける者も出たが、ルチアが即座に回復。
慈愛の息吹を吹かせ、傷を癒した。
傷付けても回復され、敵は叶わないと自覚させられる。
それが敵の心を折り勢いを弱めるが、それでも最後まで戦おうとした。
しかしイレギュラーズ達は油断せず攻勢を続け、応援に駆け付けたギギル隊と共に完全制圧した。
重傷で動けない者も念のため拘束。
完全に動きを封じた状況で、イレギュラーズ達の中には言葉を掛ける者もいた。
「これ以上やると死ぬよ? ここで死ぬ? それとも賊から足を洗って働く?」
ハリエットは魔眼も使い、説得。
「悪いことをしようとしたら邪魔をする人は絶対いるんだから気をつけなさいよ?」
ヴィリスは諭すように言う。
心を圧し折られている襲撃者達の大半は、無言のまま。
ごく一部、リーダーの青年などは反抗的な視線と言葉を返した。
するとンクルスは、使命を心に宿したシスターのような熱意を込め言った。
「大丈夫。貴方達が大切なことを理解できるよう、いっぱいお話するね! 不眠で!」
「やめろおぉぉぉっ!」
心底拒絶されるが、当然のように不眠耐久説法がされることに決まった。
その後、依頼人であるリリス達に、どうするのか聞くと――
「あれならどうにかなるから、うちで仕込むことにするわ。色々と苦労かけたわね、ありがとう」
依頼人に礼を言われ、街にも被害を出さず、依頼を完遂したイレギュラーズ達であった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
皆さま、お疲れ様でした!
皆さまのお蔭で、街は被害もなく平穏無事でした。
そして襲って来た野盗は、重傷な者もいましたが死んだ者は居らず、これからしごかれて更生されることとなりました。
それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!
GMコメント
おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
色々と鉄帝が世紀末な感じにヒャッハ―状態でモヒカンの野盗とか出てきそうなんで警備に来てね、という内容です。
以下が詳細になります。
●成功条件
街を守る。
●方法
街へと入るための道で、襲撃者があれば侵入を防ぐ。
道は出口と入口がありますが、出口は鉄帝の軍人と部下が守るので、入口の警護をして下さい。
●場所
戦場となる可能性の場所の情報です。
街道であるため、戦闘に支障はありません。
●敵
現状、周囲で目に付くほど大きな動きは無く、襲撃があるとしたら野盗の類と思われます。
そのため強さは、そこそこと予想されています。
もし戦闘になった場合は、心がへし折れるほど叩きのめすか、どうにもならない相手は殺してくれとの事です。
心をへし折られた者については、どこかで更生のために働かせるという話です。
これについては、現在鉄帝では犯罪者が野放し状態のため、捕縛しても収監する場所がないからになります。
●街
小規模の遺跡群に隣接する町。
街の規模の割には潤っているが、それに目を付けられ野盗などに襲われ易い。
●NPC
ギギル&部下
鉄帝の軍人達です。戦闘経験も多く強いのですが数は多くありません。
PC達の要望は、基本聞いてくれます。
リリス&ヴァン
依頼人です。
必要な物があれば用意してくれます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
説明は以上になります。
それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。
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