PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<総軍鏖殺>憤怒による蹂躙の始まり

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


 鉄帝はある日、環境は一変した。
 強者こそ法律であり、全て。その理は鉄帝にある以上変化することはない。
 だが、突如として皇帝が変わり、国は無法地帯と化した。
 力ある者としてはこの上なく自らの力を見せつける場となったが、そうでない者からすれば、いつ命を奪われる危険に見舞われるか怯えながら日々を過ごすしかなくなってしまった。
「力さえあれば、何でも許される。改めてこの国に生まれてよかったと実感するぜ」
 力こそ全てと認められたこの状況ならばと、大っぴらに暴れ始めたのは、かつてごろつきとして暴れて恐れられていたドミンゴ・ムンギア。
 機械となった両腕から繰り出される拳からは衝撃波すら放つことができるという。
「思うように振舞っていいたぁ、最高じゃねぇか」
 こちらは元地上げ屋の雇われ、機械となった右腕で大斧を担いだバルドゥルだ。
 相方の女性がいなくなっていたようだが、それはさておき、ごろつきコンビとして彼らは10数名の子分を従え、自分達の力を見せつけようと暴れ始めているようだ。
 ただ、スラムの人々は逃げようにも逃げる場所もない。
「ここまでかねぇ……」
「ああ、今死ぬのなら、それが天啓ってやつなんだろう」
 スラムの人々は諦観した表情で、荒くれ者どもが周囲の建物を破壊する様をじっと見つめていたのだった。


 浮遊島アーカーシュの争乱もようやく終結し、ローレットも一段落つくことができると考えていたのだが、地上では思いもしない出来事が起こっていた。
「恐るべき事態です。鉄帝の皇帝として、『煉獄編第三冠"憤怒"』バルナバス・スティージレッドが即位したのです」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は淡々と語るが、それは彼女のギフトによるところが大きい。
 バルナバスは前代の『麗帝』ヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルズを倒し、自らの治世に関する勅命を出した。
 曰く、治安維持の為の警察を解体。
 強い者が全てを得て、弱い者は息絶える。
 まさに鉄帝の理を色濃く反映した国へと変貌しかけている。
 強者は好機とばかりに力を示し、勢力拡大に動いていたが、鉄帝には力なき者も少なくなく、救いの手をローレットへと差し伸べている者もいた。
「彼らの声を聞き逃すわけにはいきません」
 まずは、鉄帝のスラムに寄り添って暮らす人々を助けたい。
 そこでは最近になって、ごろつきが暴れ出すようになった。どうやら、以前ローレットが解決した依頼にて倒したごろつきが力を取り戻しているらしい。
 力を示すのであれば、それ以上の力をぶつけて倒すだけ。
 現状の鉄帝の状況を収めていく為には、堅実にそれを積み重ねる他なさそうだ。
「ごろつき達の鎮圧、よろしくお願いいたします」
 弱き人々の盾となるよう、アクアベルはイレギュラーズ達へと願うのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 魔種による鉄帝の政変。冠位憤怒による宣言によって、鉄帝国内は1日にして無法地帯へと一変してしまいました。
 力なき鉄帝の民が蹂躙される状況を見過ごすことはできません。皆様の手で救ってくださいませ。

●目的
 荒くれコンビとその部下の討伐

●状況
 鉄帝のスラムでごろつきどもが暴れ出します。
 バラックなどが密集して立ち並ぶ場所であり、相手は意図して破壊してくる為、保護結界で守り切るのも困難です。
 スラムで広い場所を見つけるのは大変な為、バラックとそこに住む人々を護る必要があります。
 スラムの人々は行き場もなく、鉄帝の状況が大きく変わったことでほとんど動こうとしない為、避難させる為にはそれなりの話術、理由等が必要です。

●敵
 いずれも過去の拙作に登場した敵キャラ。
 地味に強くなっている連中が我が物顔で暴れ回っています。

〇ドミンゴ・ムンギア
 初期の「思い上がった連中を力でねじ伏せろ!」で登場。
 両腕が機械となった荒くれのボスで直接攻撃もさることながら、拳圧による衝撃派は相手を貫く程の威力を持ちます。

○バルドゥル
 「バラックとその住人の救出を」で登場。
 こちらは右腕のみ機械化。大斧を主武器とし、挑発した相手を脳天からかち割ってきます。
 叩き割った地面を広範囲で巻き上げてダメージを与えてくることもあります。
 地上げ屋だったはずですが、どうやらクビになった模様。相方が女性だったはずですが、愛想をつかされたようです。

○ごろつき×15体
 ドミンゴ、バルドゥルの取り巻き。
 脳筋で物理攻撃オンリー戦法かと思いきや、銃砲や重火器を使うこともあり、思ったより知能を得た印象を受けます。
 人数もいる為、立ち回りを考えないと思った以上に手こずるかもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <総軍鏖殺>憤怒による蹂躙の始まり完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月30日 22時16分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
シラス(p3p004421)
超える者
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
ノア=サス=ネクリム(p3p009625)
春色の砲撃
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女

リプレイ


 鉄帝種首都スチールグラード。
 強者が統べる街では、必ず弱者が生まれる。
 国の体制が変わったことで、それはより顕著になる。
「それにしても、鉄帝はもう旧皇帝という大いなる楔を失ってもう分裂状態だね……」
 『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は頭を振って。
「新皇帝の方針が浸透すればこうなるに決まってるよ……!」
 すでに、イレギュラーズが向かっているスラムの方では、すでにあちらこちらで破壊音がこだましている。アリアは悲痛な表情でそちらの方向を見つめていた。
「まぁ、あの勅令から受ける影響としては概ね想定通りの事態だね」
 『帝国軽騎兵隊客員軍医将校』ヨハン=レーム(p3p001117)はこの事態を見越していた。
 ただ、現在進行形で暴れているごろつき達のように、新皇帝の方針に賛同する者もいるわけだが、それが善政とは言い難いとヨハンは断言する。
「斬り捨てるのは簡単だろうけど、暴君の軍門に下るつもりはないよ!」
 アリアの主張に『救海の灯火』プラック・クラケーン(p3p006804)は冷めた反応を示すが、この状況を見過ごせぬのは間違いない様だ。
 現に、前方のスラムでは狼藉を働く者がいて、弱者が虐げられている。
「例えスラムだろうと人の暮らす場所よ。力を誇示したいだけの為に壊すだなんて許せないわ!」
 『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)も、私欲の為に破壊活動を行うごろつき達の行為に憤り、語気を強める。
「力さえあれば、何でも許される……」
 仲間達の会話を耳にしていた『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は小さく呟いて。
「なら自分は、力なき人の盾と、剣となる。力なき人が理不尽に蹂躙されないための盾と、理不尽に対する剣と……!」
 力に抗えない人々の力となるべく、ムサシは拳を握りしめて誓いを立てる。
 皆、体制の在り方、そしてそれに呼応して我欲を満たそうとする連中に対する想いを語ったところで、ヨハンが改めて状況を纏める。
「目的は荒くれへのお仕置き、だがこの状況はスラムの救助もお願いしてるとしか思えないね」
 この場にいない依頼説明をした情報屋の少女へ、ヨハンは「ボーナスは弾むんだぜ」と呼び掛けてから現地へと向かっていたが、彼女はできる限り頑張ると応じていたことを仲間達は思い出す。
「それでは善良なるいちゼシュテル民として皇帝陛下に反旗を翻すとするか!」
 応じる仲間達と共に、ヨハンは轟音響くスラムへと急ぐのである。


 スラムではあちらこちらで土埃を上げ、バラックが崩壊していた。
「良くも悪くもスラムという場所には多少の思い入れはありますよ」
 『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)は脳内に自分の手で焼いてしまいたい程不愉快な記憶が去来すると語る。
「それでいて他人の手で壊されるのは不愉快な程度には私の人生の大半で……まあ、仕事と関係ない話ですが」
 ここに住む住民達は住む場所を失ってなお、無事なバラックへと集まったり、バラックを立て直そうとしたり、崩れたバラックの上に座り込んだりしていた。
「観念したような面が気に入らないぜ」
 『竜剣』シラス(p3p004421)がそんな住民達の様子にやや苛立つ中、近場からバラックが崩れる音が。
「力さえあれば、何でも許される」
「ああ、最高じゃねぇか」
 豪快に笑う2人のごろつき、ドミンゴ、バルドゥル。
「「ガハハハハハ!!」」
「「イーッヒッヒッヒ!!」」
 それに合わせ、取り巻き共も汚らしい笑い声を上げた。
 間もなく開戦とみて、ライは所持するビタミン剤を飲み込む。
「これで何かあっても8割方は大丈夫」
 自己強化できる反面、多少、運に左右される部分があるかもしれない。
 デメリットについて語るライだが、ギャンブルはいつだって愉しいものでしょうと彼女は笑いかけた。
「大丈夫、やれるわ」
 続き、自らを鼓舞していたセレナが前に出て。
「力こそ正義? なら、もっと強い力に叩きのめされる覚悟だってあるんでしょうね!」
「ほぉん、この大斧に叩き潰されてぇのか!?」
 機械化した右腕を持つバルドゥルは今にも真っ二つにせんと担いだ大斧をこれ見よがしに見せつける。
 同じタイミング、アリアもごろつきのリーダー格の片割れ……両腕が機械化したドミンゴの相手をと進み出る。
「力が支配するなら、私があんた達を叩きのめして支配するのもありってことだよね?」
「大口を叩くねえ」
「新皇帝の方針に賛同するつもりはないけど、こういうときは便利だなあ」
 アリアの言葉を受け、ドミンゴはシャドーボクシングの仕草でこちらを脅そうとしてくる。
 無論、敵の威嚇にセレナもアリアも屈することなく、身構えていた。
「2人が抑えてくれている間に避難誘導であります!」
 ごろつきを率いる2人を、彼女達が抑えに回ってくれているなら、自分達は別の役目をとムサシは戦場となりそうな近場にいる人々に退避を促すよう動く。
「人質でも取られたら難儀な仕事だよ。早急に始末していこう」
 ヨハンとて相手を過小評価しているわけではないが、敵も狡猾な相手。なりふり構わぬ行動をしてくることは想像に難くない。
「同感だ。皆も人質を取られぬよう注意してほしい」
「「やっちまえええええ!!」」
 皆にヨハンが促すと、一斉に吠えるごろつきどもがイレギュラーズへと襲い掛かってくる。


「「ヒャッハアアアアアアッ!!」」
 力を示そうと暴れるごろつきどもは好き勝手に暴れる。
 殴打武器や格闘武器を使い、力で攻め立ててくるだけかと思いきや、手にする重火器から火を噴かせて遠方からも攻撃してくるのが地味に厄介だ。
 そして、それらのリーダーはかつてイレギュラーズに倒されてはいるものの、実力者である。
「ふはははははあああ!!」
 ごろつきの長、ドミンゴ・ムンギア。
 元々、暴力で人々を屈させようとしていた荒くれ者だったが、イレギュラーズに負け、しばらくは大人しくせざるを得なかったらしい。
 それだけに、今回の政変で再び自身の恐ろしさを見せつけようと考えたのだろう。
 そのドミンゴへ、アリアは呪詛の歌を直接歌い聞かせる。
「ブチのめされたいらしいなぁ!」
 拳を叩きつけてくるドミンゴの一撃は衝撃波を伴うほどの威力。
 直接攻撃を受けるのはもちろん、多少避けたとしても無傷とはいかない。
 もう一方、元地上げ屋の関係者バルドゥル.
「くらえくらえくらええぇ!!」
 機械となった右腕で振るう大きな斧の一撃はあらゆるものを両断、もしくは粉砕する威力を持つ。
「オジサン、あなたの相手はわたしよ。まさかこんな小娘から逃げたりなんてしないわよね?」
 その凶刃をスラム民へと向けさせぬよう、セレナは相手を挑発する。
「ほう、どうだ。俺の女にならねぇかぁ?」
 だが、セレナはその誘いには一切反応せず。
「相方の女の人はどうしたのかしら。もしかしてフラれた?」
 以前の記録によれば、バルドゥルには相方となるサブリーダーの女性がいたらしいが、その姿はない。愛想つかれたのに違いないだろう。
「見るからに女の人に好かれそうにないものね?」
「てめぇ……!」
 あまり触れられたくないこともであるのか、バルドゥルは振り上げた斧を叩きつけてくる。
(どうして人に対してそんなに暴力的になれるの? どうして平気で物を、命を奪えるの?)
 ただ、セレナは内心では怯えながらも、結界で斧を受け止める。
 バラックを破壊されぬよう位置取りを変えることを意識し、彼女は敵を一層煽っていく。
 そのセレナを、ヨハンがサポートし、聖体頌歌を響かせて癒しに当たっていた。
 また、ごろつき達に向け、ライが前に出て攻撃を惹きつける形となる。
 殴打や銃弾、銃火にさらされながらも、ライは握るロザリオというなの銃に平和の祈りを捧げる。近づくごろつきにはしっかりと一撃を叩き込んでいたようだった。

 近場のバラックでは、メンバー達はスラム民に避難するよう説得に当たる。
 ムサシが展開する保護結界。それは仲間達が思うままに範囲攻撃ができるようにと展開したものだ。
 不慮の事故を防ぐ状況を確認し、ノアは温度視覚でバラックにいる人々を見つけ出し、逃げる意志のある者から退避させていく。
(居場所を追われ、理不尽に押しつぶされる……どれほど辛いことが、自分には想像もつかないことであります……)
 すでに、バラックを破壊されたスラム民もおり、彼らが今回の事態でいかに追い込まれているか。ムサシはその全てを慮ることはできない。
「気にせんでくれ」
「ここで死ぬなら、それが天啓ってやつだ」
「これが天啓だァ?」
 だが、シラスはその返答とを是とはせず、一喝する。
「そんなもんスラムに追い込まれた時にとっくに沙汰は下ってんだよ! そんなこと言われなくたって分かってるだろうが!」
 人心掌握術も伴うシラスの言葉に、多くのスラム民が注目する。
「それでも今日まで暮らしてこられたのはどうしてだ、テメーらの胸に確りと聞いてみやがれ! あるんだろう! 生きてる理由!」
 理由は様々だが、スラムの民とて、日々毎日を必死に生きているはずだ。
 その時、アリアが魔眼を働かせ、諦観する1人を催眠状態として。
「大丈夫、助けるから。だから希望を捨てずに、皆に伝えて。『ローレットが助けに来た。もう大丈夫だ』って」
 すると、催眠状態のスラム民が呼びかけを行うことで同調する人々を、アリアが統制して纏め、安全な場所へと誘導する。
「大丈夫でありますよ。自分達が奴等を追い払い、そしてこの場所を守り切ります」
 続けて、ムサシも、彼らの居場所を守る。それを保証し、実行したいという強い意志を持って。
「宇宙保安官として、人の命と安心できる世界を守ること、それが自分の責務でありますから!」
 そのムサシもまたローレットに所属している。人々もスラムを幾度か守ってくれていることに感謝はしているのだが……。
「だが、我々には行き場がないのだ」
「行き場がない、ねぇ」
 そこで、ノアが進み出る。
「そうね、確かに今のこの国の惨状をみればそれは私にも理解できるわ」
 どこに行こうと、獣のように僅かな未来を生きる為に他者から奪いあわねばならない。この国は新たな皇帝のせいであり方を間違えてしまったのだとノアは説く。
「だけど、あなたたちは知性を持った人でしょう。人なら、協力して未来を切り開く事もできるはず」
 私も人だから、あなた達に協力する。何なら、鉄帝にある自身の領地で保護をすることをノアは提案を持ちかける。
 これには、スラムの民の中にも魅力的だと感じてノアについていくことを希望した者がいたようだった。


 ごろつきは力任せに暴れるだけで、それほど統率も感じない。
 それは、2つの組織が合わさったことによるところが大きいのだろう。
 加えて、リーダー格2人はセレナとアリアがしっかり抑えつけている。
 高めた魔力で展開する魔術をバルドゥルへと撃ち込むセレナ。
(あの斧だって、まともに当たったらひとたまりもないわ)
 ――怖い、怖い、怖い!
 心の奥で怯え、震えるセレナだが、ある言葉を思い出す。
『あなたなら無事にこなせる』
「アンタ程度相手できなきゃ、胸を張れないのよ!」
 強がりだと認めながらも、一歩も退かぬ彼女は掌の上に闇の月を輝かせ、相手のミスを誘う。
「ぐおおっ、おおおおおっ!!」
 さらりと大斧を避け、セレナは相手の気を引き続ける。
 一方、アリアは気を引くドミンゴ目がけ、周囲に漂う根源的な力を泥として具現化し、浴びせかけていく。
「お膳立てはここまで……ここからは重いからね?」
「その前に叩き潰して……!」
 拳を振り上げる敵へ、アリアは零距離から強烈な一撃を打ち込む。
「ぐああああっ!」
 これには、ドミンゴも顔を顰めて大きく仰け反っていた。

 簡単には慣れ親しんだスラムを離れることはできないと考える者は少なくない。
 イレギュラーズはごろつきどもを相手にする間に、そんな人々へと呼びかけを行う。
 入れ替わりで仲間達が駆け付けたことで、傷つくライは交替しつつ人々へと呼び掛ける。
「死にますか? 私はお勧めしませんが」
 強いカリスマに惹かれ、シスター服姿のライに集まる人々。
 ライ自身、シスターというのは演技であり、偽りであるのだが、そこは何かスラム民も彼女に何かを感じたのだろう。
「神は自ら助くる者を助く……怠惰に生を諦めたあなた方に神が微笑むかどうか、私は保証しかねます」
 この場でただ、ごろつきに命を狩られるままでいいのか。
 住み慣れた場所で逡巡する人々へとシラスが広げた掌を突き出して続ける。
「良いか? あのバルナバスとかいう魔種の皇帝は俺達が退かしてやる、5ヶ月待ってくれ!」
 破壊されたバラックなぞ、力を合わせれば5日で建て直せるとシラスは豪語する。
「だがその前に見てろよ、今ここで暴れてるごろつき共を片付けてやる、5分もかからねえぞ! さあ、危ねえから大人しく下がってな!」
 雑多でお世辞には綺麗とは言い難い場所であっても、スラム民にとっては拠り所であるのだろう。
「練達の領地を引き払って、こんな惨状真っ只中の鉄帝に領地を構えた変な人だと私を思うでしょうけど……貴方達を助けたいのは本心だから」
 さらに、前線で戦う仲間達の回復に当たっていたノアも人々に呼びかける。
「そのためにも、まずは貴方達の命を繋ぐわ!」
 あんなごろつきどもで終わるのが天啓など、ノアは全力で否定すると宣言する。
「貴方達に力を示せば、天啓なんかよりも頼りになる人だってわかってくれるでしょう?」
 イレギュラーズの力はこれまで数々の事件、事変で証明済み。ノアは続けて雷を発してごろつきを纏めて倒していく。
 見れば、先程呼びかけを行っていたライが後方から魔力の弾丸を撃ち込んでいて。
(これらの祈りが、彼らの「胸をうち」「心へ届く」と良いのですけれどね)
 卒倒するごろつきは何か感じ取っていたなら、ライも働いた甲斐があったというものだ。
「レーム家は弱き者を見捨てない。ギア・バジリカでの戦いでもそうだった」
 そこで、自らの出自について声を荒げるヨハン。鉄帝では知名度のある彼の言葉は、少なからず人々にも響いて。
「この身は護国の剣、バルド=レーム卿に代わり職務を全うする!」
「今は、自分たちにここの守りを任せて! 貴方達は、自分の命を守るために避難を!」
 呼びかけを続けていたムサシも、人々へと避難を促すと。
「頼むぞ、ローレット」
「お前たちの勝利を信じているからな!」
 メンバー達に説き伏せられ、人々は戦場から少しずつ離れるよう動き始めていた。

 その後ろ姿を目にし、ムサシは一層気合を入れて。
「あとはごろつきの撃退と……約束通り、ここを傷つけず守りきらねば!」
 相手は意図的に建物も破壊してくる。
 その為展開する保護結界もあまり意味がないが、ムサシは身体を張ってバラックの破壊を食い止める。
「この場所は絶対に壊させない……! 必ず、自分が守り切るであります!」
 ごろつきの攻撃を多数受け、傷だらけになれど、ムサシは気丈に堪えてこれ以上破壊されるのを防ぐ。
 仲間達が説得してくれたことで、人的被害は食い止められそうだ。
 ならばとシラスが敵陣へと漆黒の泥と化した根源の力を浴びせかけ、さらに吹雪が如き炎で1体ずつ倒す。
 気づけば、ごろつきは倒れ、ドミンゴとバルドゥルのみとなっていた。
 シラスは流れるようにそちらの対処へと移行し、魔光で照らす。
 加えて、シラスは簡易封印を施すことで、一時的に敵の技を封じてしまう。
「「ぐうっ!」」
 同時に硬直する敵をノアが纏めて破壊的な魔力で撃ち抜けば、立てして身構えるムサシが傷の深いドミンゴ目掛けて火焔纏わせたレーザーソードで切りかかる。
 相手が態勢を崩せば、ここまで主としてドミンゴを抑えていたアリアが肉薄し、零距離から魔力の極撃を爆裂させた。
「また、だと……!」
 白目をむいて倒れるドミンゴを目の当たりにし、バルドゥルも顔を引きつらせるが、ライがその隙を逃さず。
「あなたが壊したそれ、多分犬小屋ではなく誰かの寝床ですよ。想像もつかないかもしれませんけどね」
 数発の弾丸を受けた敵へ、ヨハンが渾身の魔力を振り絞り、神滅の魔剣を創造して肉薄する。
「神をも滅する魔剣……その威力を思い知るが良い! レイ=レメナー!!」
 魔力で身体を貫通されたバルドゥルだが、血を吐きながらも踏みとどまる。
「因果応報。他人を追い詰めた分だけ痛い目を見るって事、教えてあげる」 
 敵が大斧を振り下ろした瞬間、セレナは魔力を集中させた圧倒的な一撃を炸裂させて。
「ぐ、ぞおぉぉ……」
 バルドゥルもまたスラムの地面に伏していったのだった。


 討伐後、スラム民の一部はイレギュラーズの誘いに応じてくれたものの、この場に執着する者も少なくなかった。
 それだけ、スラム民の団結は強い。
「さて、思惑の違いや立場の違いでとても団結も何もない状態だけど……」
 そんな人々の姿を目にしながら、アリアは頬を叩きながら。
「自分にできることをしっかり頑張っていかないとね!」
 鉄帝の現状を改善すべく、アリアは仲間と共に更なる事件の解決へと臨むのである。

成否

成功

MVP

アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはローレットの名前を出しつつ人々に避難を促し、かつ強敵を抑え、撃破した貴方へ。
 さらなる事件が起こることが予想されます。有事に備えていただきますよう願います。
 今回はご参加ありがとうございました。

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