PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Anyone knows――no one knows

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●誰でも知っていて、誰も気づいていないもの、なあんだ
「        、           、    」
 その言葉を最後に敬虔なる信徒は信心を喪い、規則を破り、道徳に背き、礼節を壊し、おぼれるように堕落したという。

 伸び放題の髪。こすれきって泥と吐瀉物で汚れた服。
 およそ人間がはなつとは思えないような臭いに充ちた部屋の奥に、かの者はいた。
 鉄の扉が開き、光と共に三角形の覆面を被った人物の逆光がうつる。
「彼はいつからこんな様子だ」
「発見時からです。むしろ綺麗にしたくらいなのですが……」
「酷いものだな」
「信じられません。だって、この方は……」
「よい。下がっていなさい」
 覆面の者は見張りの男に手を翳すと、部屋に入って扉を閉めさせた。
 翳したカンテラの明かりだけが双方を照らす。
「……」
 覆面を脱ぐ。
 現われたのは異様な顔立ちだった。
 頭に埋まった無数のボルト。顔半分を覆う火傷跡。歯が見えるほど裂けた唇。
 あなたは彼を知っている。彼の薄色の目を知っている。
 天義の異端審問官『スナーフ』であることを知っている。
「なぜ、君がこんな有様になった。君ほどのものが」
 身を屈め、顔を近づける。
 死にかけの獣がごとき悪臭に顔をしかめる様子もなく、じっと顔を覗き込んだ。
「        、           、    」
 観察してみれば、乾いた唇がかすかに動いている。
 なにかを述べようとしている。
 いや……何かをしきりに繰り返していた。
 耳を近づければ、空気がこすれるようなきわめてか細い声で、男はこう述べていた。
「誰でも知っていて、誰も気づいていないもの、なあんだ」
 暫く声を聞いていたスナーフは腰を上げ、扉を開け、見張りの者に手を翳して言った。
「これは『本物』かもしれない。今すぐ抹消せよ。誰にも知られるな」

●あの足音が聞こえるだろうか
「よく集まってくれた。イレギュラーズの諸君。
 君たちに依頼するのは『ある遺跡の調査』だ」
 広い円形テーブル。壁際に並ぶ燭台。椅子についたイレギュラーズたちに、異端審問官スナーフは二枚の写真と一枚の羊皮紙を差し出した。
「彼はニコライノフ。私と同じ異端審問官を務めていた男だ。経験は私と同じだけ長く、教会の一つを任されていた。きわめて敬虔で、きわめて信心深い、尊敬すべき人物だった」
 永年の親友を語るような口ぶりで、しかしその全てが過去形であることを、イレギュラーズたちは聞き逃さない。
 薄色の目を伏せ、スナーフは二枚目の写真を指さした。
 一枚目のとても真面目そうな風貌とは別人だと思うほど、汚らしい人物が写っている。
「彼はある日を境に失踪し、七日ほどして天義<ネメシス>と幻想<レガド・イルシオン>のなかほどで発見された。
 場所は『呪われた神殿』と呼ばれている場所だ。
 ここに巣くう『なにか』によって今の状態にされたと推測される。
 この場所の調査を頼みたい」
 羊皮紙には簡易的な地図がついていて、スナーフの指定した『呪われた神殿』の場所が示されている。
「くれぐれも、この調査は内密に行なって欲しい。
 もし天義の者が遺跡の存在を知れば民はみな義憤にかられ、剣をもち神の名を叫びながら飛び込んでいくことだろう。
 いかなる危険をも顧みず……結果ニコライノフと同じ姿になってしまうとしてもだ。
 善良な人々を生きた死体のごとく変えるわけには、いかぬのだ」
 それゆえ、イレギュラーズへの依頼なのである。
 だがイレギュラーズはもうひとつだけ知っていた。
 この天義における『呪われた遺跡』が、幻想では別の名前で呼ばれていることを。
 その名も――『常夜の谷』。

GMコメント

『常夜の谷へようこそ』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/739

 当シナリオは上記シナリオと密接につながっています。
 具体的にはこの場所と全く同じ場所を『調査』するものであります。
 よって当過去リプレイの内容がきわめて重要なヒントになっています。
 一応、このリプレイを全く読まなかったとしてもそれなりの成果を出せるようにはなっています。
 深い考察が得意なかた好きなかた、相談を知的に引っ張るぜというかた。ぜひぜひ目を通してみてくださいませ。
 逆にそういった方に考察を任せて相談の下準備を別に進めるのも、(プレイヤーとしての)チームプレイというものかもしれません。

 どの辺りを調査すべきか、手分けはすべきかどのくらいの人数比で分かれるべきか……といったあれこれは、おそらく自力で割り出せるはずです!

【常夜の谷/呪われた神殿】
 古代の呪いによって常に夜闇に覆われているという土地です。
 土地の中央には石でできた建物があり、天義ではこれを神殿だとしています。
 建物はとてつもなく巨大な岩山を削りに削って建物の形にしているという狂気じみた構造になっていて、あちこちに細かい彫刻が施されています。
 以前イレギュラーズが歩いて回ったところ彫刻にかわったところはなかったといいます。
 その代わり『夜魔』と呼ばれているモンスターが何らかのトリガーによって現われ、ひとによってはひどい怪我をおったり最悪死んだりしたそうです。

【調査判定】
 このシナリオは調査が全てです。
 戦闘は『できるかぎり起きない方がいい』くらいのレベルで、起きてしまったらもうなんていうか、とにかく抵抗に抵抗を重ねつつ必死に逃げてください。もう一度いいます。抵抗しながら逃げてください。大事なことです。

 調査の判定を予めいくつか開示しておきます。
(※このシナリオ限定の判定方法を多く含むため他シナリオへ感覚を持って行かないようにを気をつけください)
・調査結果で何がわかるかは1D100の行為判定ロールで決まります。
・非戦スキルの有無によって行為判定ロール値が1.5倍になります
・方法をプレイングに書くことによって行為判定ロールにボーナス値が加わります。
・有効なアイテムを有効な状態で使用することで行為判定ロールにボーナス値が加わります。
・箇所ないしは対象を狭めることによって行為判定ロールがX倍されます。

【成功条件】
 スナーフ氏の依頼は神殿の調査のみなので、厳密には『半数以上が生きて帰ってくること』になります。
 実質的には全員無事に帰ってくることが成功条件だと思ってください。
 リスクを負えば負うほど得るものが増えますが、当然重傷リスクが増大します。くれぐれもお気をつけください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • Anyone knows――no one knows完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月01日 20時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

鏡・胡蝶(p3p000010)
夢幻泡影
御幣島 戦神 奏(p3p000216)
黒陣白刃
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
優響の音色
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
守護の獣
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
陰陽 の 朱鷺(p3p001808)
ずれた感性
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer

リプレイ

●とこよのたに
 夜は長し。されど永遠ともなれば。
 草木の育たぬ乾いた土と、月明かりだけがさす谷。
 生き物の気配はなく、ひどく寂しい遺跡があった。
「ダンジョンいいよねダンジョン! 特にこういう危険な香りなところだいすき!」
 一転して『戦神』御幣島 戦神 奏(p3p000216)は明るいテンションで進んでゆく。
 刀の柄をトントンとやってリズムをとっている。
「げっへっへ、暴いてやるぜー」
「確かに、興味深いわねぇ……」
 『夢幻泡影』鏡・胡蝶(p3p000010)がおちる前髪を人差し指でどけて、徐々に夜闇に慣れゆく目を細めた。
「以前の報告書は読んだけれど……まぁ、そうね。安全に調査したいわね?」
「…………」
 『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)が、ふと足を止める。
「常夜の谷……呪われた神殿、ですか」
 今立っている場所は、かつて彼女が最初に戦闘をした場所だ。
 ある冒険家の依頼で日記の回収をした場所でもある。一人目の日記がこの場所に落ちていた筈。
 思えば、あの時から奇妙な場所ではあったのだ。
「神殿、というよりは王国のように感じるがな」
 『迷い込んだ狼と時計』ウェール=ナイトボート(p3p000561)がサイバーゴーグルを装着した。
「所で、気づいたか? 月の位置が変わっている」
 言われて見上げてみると、確かに月の位置が変わっていた。
 入るときは昼間だったものが急に夜になったので意識もしていなかったが、ただ闇に覆われているだけではないようだ。
「前に来た時も、同じ位置にあったような気がします……」
 Lumiliaはふと思い出したように言った。
 『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)が大きく息を吸い込む。
 ほんのかすかに血の臭い。ここでかつておこったという夜魔による殺人の残り香であろう。
 随分と乾いてしまっているようだが、血の臭いは神殿の奥へと続いている。
「ふふ、こういう雰囲気嫌いじゃないね。何を隠して何が隠そうとしているのか、楽しみだね?」
 先にあるのは、闇ばかりだ。

「呪われた神殿の調査ですか……誰が何を呪ったのでしょう?」
 陰陽 の 朱鷺(p3p001808)はいつになく深く、そして広く考えを巡らせていた。
「キーワードは、呪い、遺跡、光、影、彫刻、夜、夜魔、天義、異端審問……」
 指折り数えていく。
「天義の民が義憤にかられるというのはどういう意味でしょうか? 教典に反するものがあると?」
「いや、違うんじゃないかな」
 『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)がこきりと首を鳴らした。
「今回の依頼内容は遺跡の調査……ってことは、彼らもここに何があるか分かってないんじゃないかな。義憤っていうのは、神父が廃人にされたことへの義憤じゃない?」
「では、禁じられた歴史や悪魔を奉じた場所というのはどうでしょう」
「はは、悪魔って」
 半分だけ笑って、はたと口を押さえた。
「……冗談だよね?」
「……」
 ごくり、と『笑顔の体現者』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)がつばを飲み込んだ。
「思えば奇妙な場所です。常夜の呪いだけじゃなくて、目立った外傷もなく精神だけを壊されたニコライノフさんや、犠牲者の生首をあつめる部屋や、持ち物だけを置いておく部屋。そもそも物品をわざわざ動かすのも不思議です。噂に聞く『真なる夜魔』……あながち無関係とも言えません」
 行きましょう。
 ユーリエは腕まくりをして、サイバーゴーグルを装着した。

●首の塔
 明確な殺意と敵意。
 奏はそれを、肌感覚で理解していた。
 周囲に広がる夜闇の中で、無数の夜魔がこちらを見ているような気がするのだ。
 そのくせ噂に聞く『骨が軋むような音』というのが聞こえない。
「きもちわるー。あとカンジわるー」
 刀の柄を強く握り込んだまま、いつでも即座に戦闘に入れるように軽く構えつつ進む。
「夜魔ってゆーのはギシギシ音がするルールなんじゃなかったの?」
「報告にはそうあったけれど……いや、うん?」
 鼎は途中まで喋ってから、情報の違和感に気がついた。
 前回の探索者も同じ道を通り、確かエネミースキャンをかけた結果周囲からずっと敵意が向けられていることを察したというが、その時例の音があちこちから聞こえていないのは妙だ。
 矛盾している、と考えかけてやめた。
 そもそも『骨の軋むような音がする』と主張したのはイクサであり、それを依頼人のデルタが聞き、又聞きという形で前回探索者が認識していたのだ。
「どうやら、途中に嘘か誤解があるみたいだね。遭遇時に音がしていることもあるから……『戦闘に入る際に音がする』ってところじゃないかな」
 事実、鼎の鋭敏な聴覚は夜魔の軋音を聞いていない。
 ちょろちょろと走らせたネズミが先行し、臭いをかいでは目的の場所を目指す。
 探索の記録というのは素晴らしいもので、目的としていた『生首が並べられた部屋』へは迷い無く到達することができた。
「ふむ……」
 部屋の前。サイバーゴーグルで周囲を観察するウェール。
「先はいろっか?」
 危ないかどうか確かめるよと顎で示す奏。
 ウェールは頷こうとして、思いとどまった。奏の腕を掴んで止める。
「待て。確か前回の探索者は部屋に入った時点で戦闘状態になったはずだ。このまま進むのは危険かもしれない」
「おっと、そうだね」
 ウェールは生首を積み上げることが何かの儀式なのではないかとアタリをつけていた。イクサの生首がここへ運ばれたなら、同じ要領でその後新しい犠牲者が出たかどうかも調べられるはずだ。塔というだけあって上階の探索もできるやも、ということも考えていた。
 どうしようかと二人が考えている間、奏奏が石の手すりをつつーっと指でなぞる。指先にはほこりひとつついていなかった。
 屋外の手すりとはいえ綺麗すぎやしないか。
「誰かが掃除してるのかな。でも広いよねー。お手伝いさん沢山いるのかな?」
 暫く相談した後、鼎がファミリアーで使役したネズミを部屋に入らせて様子をうかがうことに決めた。
「それじゃあ行くよ」
 部屋からは今もなお吐き気を催すような臭気が漂っている。
 あちこちが血にまみれ、乾いてこびりついた血液の跡もあった。
 使役された鼠は部屋へ小走りに入り込み――即座に身体を切断された。
「――ッ!」
 共有していた感覚からか思わず幻痛が走る。
「まずいな……!」
 せめて情報だけでも。
 ウェールはそう考えて、塔の中へと飛び込んだ。
 そして、それを見た。
 サイバーゴーグルによる若干の暗視効果でも分かるほど。
 大量の生首が積み上げられていた。
 否、積むなどという表現では足りない。部屋いっぱい、壁から天井からほとんどを埋め尽くすほどの生首が詰まっていた。上部からころがり落ちた首のひとつと目が合う。
 ギリギリという軋む音。
「襲いかかってくるぞ! 走れ!」
 ウェールは姿を現わした影を殴りつけると、すぐに塔の外へと走り出した。
「鼎さん、逃げ道を探してくれ! ついていく!」
「おや、これは……」
 塔からあふれるように飛び出してくる夜魔の群れ。
 ひとつふたつは倒せる気はするが、その間に四肢が引きちぎられるさまが容易に想像できた。
「困ったことになったね?」
 そう言いながらもきびすを返し、迷い無く走り出す鼎。
 フィンガースナップの反響で物理構造を予測し、土のにおいで野外に近いルートを探る。
 ウェールはそれを守るようにそばについて走った。
「ここから飛ぶよ」
「飛び降りるのか……よし!」
 建物の二階程度の高さから手をとってジャンプするウェールと鼎。
 着地し、ごろごろと土の上を転がる。
「奏奏さんも――!」
 振り向くウェール。最後尾を走っていた奏奏は、飛び降りることなくくるりときびすを返した。
 刀を一本、更にもう一本。
 交差するように構えて、踵をしっかり地につける。
「奏奏さん、まさか」
「ここは私に任せて先にいけぃ」
 ニヤリと笑い、奏奏は夜魔の群れへと自ら飛びかかっていった。

●神殿地下
 足音が強く反響する。
 Lumiliaのともす僅かな明かりが、四人分の影を薄ぼんやりと長く伸ばしていた。
「ニコライノフさんは確か、ひどく汚れていたのでしたね」
「そうね。いわゆる廃人状態のついでといった気もするけれど……」
 胡蝶はぼんやりと、薬物中毒者のありさまを想像した。
 それはもう酷いことになっているものなのだが、仮にそればかりが理由では無いとするならば……。
「あの時、地下の部屋を『ゴミっぽいにおい』と表現されてました。関係があるのかもしれません」
「かも、しれないわね」
 胡蝶は通路の先。前回探索者が目的のアイテムを見つけた場所。そこへ向けて意識を集中させてみた。
「何か目立った音は聞こえましたか?」
 朱鷺の問いかけに、胡蝶は小さく首を振った。
「なにがあるか分かりません。警戒して進みましょう」
 朱鷺は長い棒であちこちを軽く叩きながら進んでいく。
 そばには斥候というか、いざというときのためのデコイとして式神が二体ついている。(※細かく確認してみたところ遠く離れた仲間へのレンタル式神はできないということでしたので自分で活用する形にシフトしています)
「どこかにスイッチや罠があるかもしれません。最後は直感と観察力だけが頼りですね」
 そうしているうち、ユーリエたち四人は目的の部屋へとたどり着いた。
 サイバーゴーグル越しに薄暗い部屋を見回すユーリエ。
「人に荒らされた痕跡とか、天義由来のものとかがあったら確保してね」
 一旦敵が現われないことを確認してから、四人はそれぞれ探索を始めた。
 淡い光を翳し、Lumiliaは落ちている服や杖といった道具をどかしていく。
 奇妙なことに部屋に落ちているアイテムの多くは衣服だった。
 たしか日記を見つけた時もジャケットと一緒だったが、ここにはジャケットに限らずシャツや靴下や下着までもが落ちていた。
 血かなにかで汚れた形跡があるものばかりなので、とても持って帰りたい気分にはならないが……。
「切り落とした首は一箇所に集められ、衣服や持ち物はこの部屋に放置され……『他』は一体どこへいったのでしょう」
「さあ……それより、死体の持ち物よりも首を丁寧に扱ってることの方が不思議ね。普通、侵入者を殺して身ぐるみをはぐなら、金目の物は奪うでしょう?」
 胡蝶があちこちを探してみると、簡単に金品が見つかった。
 持ち帰るには不吉すぎるので捨て置くとして、人間やその他がわざわざ身ぐるみはがしてまで金品を捨てておくのは不自然に思えた。
 モンスターの仕業にしては理知的だし、人間にしては反社会的だ。
「人間ではあるがお金のいらない人種なのかもしれませんよ」
 ぽつりと呟く朱鷺。
 その一方で、ユーリエは手際よく探索を進めていた。
 落ちているアイテムを掴んでは捨て掴んでは捨てを繰り返していく。
 そのなかでぴたりと手を止めたのが、血に汚れた封筒だった。
 そっと中身をあらためると、なんと出てきたのは免罪符。それも天義のものである。
 しかし持ち帰ったとて使い物にならないだろう。
 なぜなら、余白をびっしりと埋めるかのように文字が書かれていたからである。
「これ、たぶん、ニコライノフさんのものだ」
 特に確証はない。部屋の片隅。微妙に空いているスペースを見て、ユーリエはそんな推理をもった。

●真なる夜魔
 虫の声すらしない夜。
 ルチアーノは迷い無く歩いて行く。
 暗闇ですらしっかりとものを認識できるというかれの特技ゆえだが、それを差し引いてもどこか足取りは軽い。
 まわりに仲間はいない。
 前回探索者たちがたどり着いたという『円形の部屋』を目指して歩いていた。
 ここへ至るまでに気づいたことがひとつ。
 あちこちを透視しようとしたところ、それが壁や床によって阻まれたということである。
 残念だなと思う一方で。岩山をくりぬいただけの古代建造物に防透視処理が施されている事実を発見した。
「少なくとも遺跡はつい最近作ったものじゃないだろうし……元からあったんだろうけど……」
 目的の場所で立ち止まる。
 円形の部屋。
 中央には椅子が一つ。
 通常の夜魔とは異なる、騎士甲冑を纏ったかのような影が無数に現われたという部屋だ。
 ルチアーノは霊魂疎通を試みた。
 だが相手から拒絶されてしまった。
 電話をかけたがすぐに切られたような、そんな状態である。
 であればと、帽子を脱いで咳払いをした。
「僕は異世界より召喚された旅人です。この常夜の遺跡の調査に参りました。騎士様達は何故、この場に留まり続けているのでしょう。理由を教えて頂けませんか?」
 答えは返ってこない。
「誰でも知っていて、誰も気づいていないもの、なあんだ」
 答えは返ってこない。
 おかしい。
 部屋に踏み込んだ、その時。
 周囲から無数の影がわき出した。
 前の探索者たちは、逃げれば追ってこないと報告していた。
 逃げようか。
 そう思った瞬間、ルチアーノの両目が、背後からそっとふさがれた。
「だあれだ」

 ユーリエは免罪符にびっしりと書かれた文字を、要点だけ抜き出して読み始めた。
「『私は出会ってしまった。邪教徒があがめる神ならざる神は実在した』
 『神ならざる神は私に呼びかけた。甘く囁くように呼びかけた』
 『私はその声を聞いてはならなかったのだ』
 『私が正気で居られるのはいつまでだろう。私を構成するいくつもの事柄が頭から抜け落ちていくように思える』
 『原罪の呼び声か。いや違う。もっと直接的で、もっと恐ろしい』
 『私が壊れてゆく』」

 ルチアーノは逃げた。
 余裕や、プライドや、人格や、建前や、社会性や、色々なことを捨てそうになりながら逃げた。
 どんな声をあげていたのか、どんな顔をしていたのか、どんな道を通ったのかも分からない。
 その姿に彼本来の知性やシニカルさやクールさは存在せず、ただの動物として逃げた。
 大量の夜魔が取り囲む。
 弾を撃ち尽くした銃を振り回すが、まるで攻撃にならなかった。
 理性が吹き飛ぼうとしている。
 視界が真っ暗になった。

「気がついたかね」
 覆面を被った男が、ルチアーノを負ぶって歩いていた。
 振り返れば、常夜の谷は遠くにあった。
「私がここへ来たことは、天義の者には秘密にしてくれ」
 なぜ来たのか。ルチアーノはかすれた声で言った。
「外部の者とはいえ未知の危険に晒す以上、責任というものがある。
 責任をとることをかの者たちはよく思わないが、私は必要なことだと思う。
 だから来て、だから助け、だから今こうしている。もう歩けるかね?」
 覆面の隙間から様子から、それがスナーフ氏だとわかった。

 後にユーリエが持ち帰った免罪符の端。
 発狂したような文章の最後にこう書かれていた。
 『真なる夜魔をたたえよ』

成否

成功

MVP

なし

状態異常

御幣島 戦神 奏(p3p000216) [重傷]
黒陣白刃
ルチアーノ・グレコ(p3p004260) [重傷]
Calm Bringer

あとがき

 ――mission complete
 ――good night

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