シナリオ詳細
まどろむダンスホールで悪人は踊る
オープニング
●ナイトクラブと昏睡強盗
――一大リゾートへと発展した『シレンツィオ・リゾート』。
ラサの商人、豊穣や海洋などのツアー客、鉄帝からの貿易船と技術協力チーム。あらゆる人々が、ひと時の安らぎと欲望を求め、こぞって訪れる、そこは複数の島々で構成されたリゾート地である。
二番街(サンクチュアリ)のとあるバーラウンジに、『強欲情報屋』マギト・カーマイン(p3n000209)の姿があった。そこでマギトは、ある男――依頼人からの相談に応じていた。
中折れ帽を目深にかぶった40代の男──カールトンは、三番街と二番街の境付近にあるナイトクラブについて語り始める。
「『トルマリン』というナイトクラブは知っているか?」
『トルマリン』は、富裕層向けのナイトクラブとしてそれなりに知られている店である。
最近クラブに来ていた複数の客が、昏睡強盗の被害に合っていることが発覚したという。カールトンはクラブの関係者らしく、店のバーテンダーが関与していることを突き止めていた。
「――バーテンダーが、客に出した酒に睡眠薬を入れていたんだ。もちろん、そのバーテンダーはクビにしたんだが、まだ被害は治まっていない」
バーテンダーを解雇しても、次々と買収されるらしく、このままではいたちごっこを繰り返すしかないという状況であった。だが、バーテンダーを買収するための仲介役を担っているのが、クラブの関係者であることも判明した。
「仲介役は用心棒、警備主任の『イザール』という男だ──」
バーテンダー、強盗と共謀していたイザールはギャングとの付き合いがあるらしく、その筋の仲間のためにスパイとして働いていたようだ。
「なるほど……それで、イザールを追い出したいということですか?」
マギトの質問に対し、カールトンは答えた。
「いや、それはまだ準備段階だ。イザールが仕事をしている間に、店のオフィスからある物を盗み出したい。あんたらには、その手伝いを頼む」
カールトンは耳を傾けるマギトに、イレギュラーズに求める役割を詳しく話す。
「──実際に盗み出すのは、俺の部下にやらせる。ローレットのあんたらには、店で派手に騒ぎを起こしてほしい」
「ということは――警備主任のイザールの手を焼かせるほどのことをしでかせと?」
マギトは「クラブの評判に傷がつくのでは?」と憂慮する素振りを見せたが、カールトンは店の評判よりも、イザールを陥れることに強くこだわっていた。
「今は何より、イザールの奴を徹底的に潰すためのネタがほしい。あの恩知らずの裏切者に、思い知らせてやる必要があるんだよ」
カールトンはそう言って、苛ついた様子で煙草に火をつける。
「……彼は相当な爆弾を抱えているようですね」
意味ありげなマギトの一言を聞いたカールトンは、思わず目を見張った。
「災難でしたねぇ……ゲス野郎の被害に合われたのは、どこの娘さんでしたか?」
すでに情報を嗅ぎつけていることをそれとなく示すマギトに対し、カールトンは乾いた笑い声をあげた。口角は上がっているものの、カールトンはまったく笑っていない眼差しでその場を濁す。
「何にせよ、頼んだぞ。クズがこの島から減るならそれでいい、遠慮なく暴れてくれ」
●潜入と陽動
「――という訳で、皆さんには客としてナイトクラブに潜入してもらいます」
マギトはローレット・フェデリア支部に招集されたイレギュラーズに向けて、ナイトクラブ『トルマリン』からの依頼について詳細を語った。
営業時間の20時以降に入店し、手段はどうでもいいから用心棒であるイザールの注意を引きつけておけ、というのが依頼人の要望である。つまりは他の客に絡みまくる鬱陶しい酔っ払いクソ客を演じるなり、誰彼構わず喧嘩を吹っ掛けるなりして行動を起こせということ。
クラブ内で揉め事が起きれば、イザール以外にも5人の屈強な用心棒が対処しようとするだろう。客の中にも、イザールの仲間がいても不思議ではない。
ナイトクラブに潜入と聞いて、TPOやら何やらについてどこか考え込む表情を見せる一部の者に対し、マギトは言い添えた。
「それなりに客を選ぶ店のようですが、カールトン殿の名前さえ出せば、顔パスで入店できるよう手配するとのことです。……手段は問わないとはいえ、ガチの殺生はやめてくださいよ?」
- まどろむダンスホールで悪人は踊る完了
- GM名夏雨
- 種別通常(悪)
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
カールトンからの依頼を遂行するため、イレギュラーズはナイトクラブ『トルマリン』に入店した。
カールトンの計らいもあり、イレギュラーズの8人はスムーズに潜入を果たした。
各々が店内の風景に溶け込む中、1人のウエイターがイレギュラーズに声をかけてきた。
「こちら、カールトン様からです」
その一言からカールトンの部下であることをにおわせるウエイターは、8人それぞれにカクテルやソフトドリンクを振る舞う。
友人同士である『金色凛然』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)と『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)は、振る舞われた飲み物を掲げて乾杯する。
「なかなかいい雰囲気のお店ですね」
そうつぶやいたライは、場違いなシスター服を着ているためか、どことなく周囲の客の視線を感じていた。
見た目からしていかにも清楚な雰囲気をまとうライは、音楽に乗ってダンスホールで浮かれ騒ぐ客たちを眺める。
(「昏睡強盗ね……まあ何ですか、今日も世界は平和です」)
金品だけを奪われたならマシなほうだと、ライは考えていた。ライがかつて生きてきた環境の中では、内臓や命を奪われても不思議ではなかっただろう。
エクスマリアはグラスを傾けながら、壁際に並ぶVIP席、イザールやその仲間の位置を把握する。
──個人的恨みが大きそう、だが……依頼であれば、そのようにするのみ、だ。
「ついでに、少しばかり楽しませて貰えるなら、悪くない」
依頼の達成はもちろんのことだが、エクスマリアは客らしく過ごすことも忘れない。ライと共にダンスホールに出向き、ノリノリのダンスミュージックに合わせて踊り出す。時には手を取り合いながら踊るエクスマリアとライは、ナイトクラブを楽しむ機会を存分に活用していた。
『A級賞金首・地這』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)は店外に待機し、入店した7人を見送った。
――さて、とりあえずイザールたそに一泡吹かせれば良いんですよねー?
どのように営業妨害してやろうかと、ピリムは機会を待ちながら考えを巡らせる。
クラブに列を成す女性たちは、露出の多い服装で着飾る者たちが目立った。ピリムの視界にも映る大胆に披露された生脚は、どことなくピリムの感情をざわつかせた。しかし、それは一瞬で落ち着き、ため息をこぼすピリムは心中でぼやいた。
――非常に残念ですが、今回はお預け……イザールたその脚を引っ張るしかないですねー。
周囲の声をかき消すほどに響く音楽、パリピたちが集う店の雰囲気に慣れないながらも、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は店内の様子を窺う。
──……これも音楽の楽しみ方の一つだ、少しは浸ってみるか。
イズマはしばらくダンスホールで過ごすことを考え、ナイトクラブを楽しむ客らしく振る舞う。
「俺と踊らない? 貴女となら楽しくなりそうだ」
イズマは積極的に他の客に声をかけていく。声が音楽にかき消されないよう、相手の耳元に顔を寄せるイズマは、さりげなく至近距離に迫る。踊る客同士がひしめくフロアで、イズマは誰にも気づかれることなくあることを実行していた。
いくつものディスコライトが輝き、彩られる店内、賑やかなダンスホールの様を前にして、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は言った。
「へえ、こりゃずいぶんド派手な店だね。ま、そうでなくちゃ面白くねえ!」
トレードマークの毛皮を羽織り、派手なスーツやアクセサリーを身に着けたグドルフは、カールトンが手配したVIP客用のソファー席を遠慮なく利用する。
「ゲハハハッ! そら、飲め飲め。おれさまのオゴリだぜえ!」
グドルフは気前のいい金持ちのおっさんとして、店中の美女たちに上等な酒を振る舞う。
VIP席の中央に陣取るグドルフは、タダ酒目当ての美女たちをはべらせ、豪快に酒宴を催していた。
ウエイターから酒を受け取った『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)は、カウンター席から移動し、VIP席の様子が見渡せる場所に向かう。
壁に寄りかかることほぎは、VIP席の一角から立ち去るイザールの姿を目で追った。ことほぎは店内を巡回するイザールに注意を向ける。匂い立つような色気を放つことほぎは、その間にも周囲の男たちの視線を集めていた。1人の視線に気づいたことほぎは、視線が合った相手に意味ありげに微笑んでみせる。美女が壁の花になっているのを放ってはおけないと、ことほぎに声をかける男たちは後を絶たなかった。やんわりとあしらい続けることほぎの姿は、やがてイザールの仲間の目にも止まった。
「お兄さんて、マフィアか何か? 何のお仕事してるの?」
『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)に声をかけられた女性は、無邪気に尋ねた。
大柄で強面なウィルドの見た目に気圧される者も多いが、ウィルドはその女性客と一時の会話を楽しんだ。
マフィアと勘違いした女性のように、ウィルドにそのような印象を抱く者は大勢いた。ウィルドはその厳めしいスーツ姿から、用心棒らの視線も集める。用心棒らの注意を引きつけることが狙いでもあったウィルドは、しばらくダンスホール付近で時間を潰すと、バーテンダーのいるカウンター席に落ち着いた。
ウイスキーのロックを注文したウィルドに対し、バーテンは慣れた手付きで注文の酒を用意した。
ウイスキーをひと口飲んだウィルドは、バーテンに向けて「いい酒ですねぇ」とにこやかに話しかける。バーテンはどこか関わりたくなさそうな、強張った笑みを浮かべて相槌を打つ。そんなバーテンの様子は気にせず、ウィルドは言葉を続ける。
「──ところで、まさかこれにクスリは入っていないでしょうね?」
「ねえ、俺らと一緒に飲まない?」
エクスマリアとライに声をかけてきたのは、VIP席にいたイザールの仲間──その内の2人、全身タトゥーまみれの若い青年だった。海種らしき青年2人のタトゥーは、濡れたように光沢を帯びているように見えた。タトゥーに触れれば、その部分だけシャチの皮膚のようにツルツルとした感触であることがわかるだろう。
他の強面4人と比べれば、青年2人はまだ取っ付きやすい見た目をしていなくもない。
怪訝そうに顔を見合わせるエクスマリアとライに対し、青年らは信用させるためなのか、イザールの名前を出してきた。
「──俺ら、ここの警備主任のイザールて奴とダチなんだよ」
「紹介してやろうか?」
そう言って、青年の1人は店内のイザールの姿を探す。
「オウ、そこのニイチャンよ、イッパイどうだ?」
丁度その頃、イザールは酒宴の最中のグドルフに絡まれていた。
グドルフはショットグラスに注いだテキーラをイザールの方へ掲げると、
「――男ならテキーラのひとつやふたつ、ガツンと飲まねェとなあ?」
イザールに酒をすすめる。同席する美女たちからも、一気コールが巻き起こる。上客らしいグドルフのご機嫌取りのためか、イザールはためらいなく酒を飲み干した。
「おお、いい飲みっぷりじゃねえか!」
グドルフはイザールが調子に乗るようにけしかけ、酒を注ぐ手を休めなかった。
青年らが口説いているエクスマリアとライのことを、ソファーに座って眺める仲間の4人は口々に批評する。
「これだから、ガキ臭い奴はよぉ……」
「女だったらなぁ、ああいう上玉に限るだろ?」
そう言って、男の1人──ギャングAはことほぎのことを指してアゴをしゃくる。
「おい、声かけてこいよ」とギャングBは促したが、「お前が行けよ!」とギャングAからは突き放された。それに対し、ギャングBは散々ギャングAを煽ってみせる。
「まあ、あんないい女がお前に釣られるとも思えねえしな」
イカの海種であるギャングAの体表は、赤黒いまだら模様に変化していく。ギャングBの一言に静かに怒りを露わにしたギャングAは、グラスの酒をあおる。中身を飲み干したグラスを乱暴にテーブルの上に置いた直後、ギャングAはまっすぐにことほぎの下に歩み寄った。
「話相手になってやろうか?」と詰め寄るギャングAに対し、ことほぎは努めて淑やかな口調で相手をする。ギャングAが現れたことで、ことほぎにアタックしようとする他の男性客はピタリと途絶えた。
誰もがギャングAに物怖じしていることを察したことほぎは、「腰抜けばかりじゃねぇか」と心中でぼやきつつ、次の手を打とうとする。その時、ことほぎはカウンター席に座るウィルドの姿に気づいた。
「──ところで、まさかこれにクスリは入っていないでしょうね?」
ウィルドからそう尋ねられたバーテンは、作り笑いを浮かべてごまかそうとする。
「くくっ、安心しなさい、別に咎めるつもりはありません」
ウィルド自身を探るようなバーテンの目付きに気づいていたが、ウィルドは不敵な態度を貫く。
「──貴方のような人間が、あの男の使いっぱしりで終わるには惜しいと思っているだけですよ」
すでにカウンター席に居座っていた『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)は、店内の状況を逐一把握することに努めていた。バルガルはあることを伝えるために、1つ離れた席のウィルドの椅子をさりげなく足で小突く。他人のフリを続けるバルガルを一瞥した後、ウィルドは背後を振り返る。
ウィルドはギャングAに絡まれることほぎの姿を見つけ、バルガルの行動が何を意味していたのか理解した。振り向いたウィルドに向けて、ことほぎも目だけで訴えている様子が窺える。ウィルドはその訴えに応じ、ことほぎの方へと向かった。
ウィルドとことほぎがトラブルの渦中となるであろうことを見越して、バルガルも行動を起こす。
バルガルは何気ない動作を装い、隣りの席の客のグラスが自身に向かって倒れるように傾けた。中身がこぼれたことでスーツを濡らしたバルガルは、一方的に相手を責め立てる。
「これから商談があるというのに、なんてことをしてくださったのですか? ねぇ?」
脅すように文句を畳みかけるバルガルに対し、絡まれた客は面倒な相手に閉口している様子だった。その様子を見たバーテンは、即座に用心棒を呼びつけた。
「なかなかいいクラブですが、掃除が必要みたいですね」
ウィルドはギャングAに聞こえるようにその一言を発した。
ことほぎらの前に颯爽と現れたウィルドは、「彼女の迷惑になっているのでは?」とギャングAをたしなめる。しかし、ギャングAはウィルドを睨みつけて言った。
「あぁ? なに言ってんだ? 聞こえねえよ」
ギャングAは、ウィルドの言葉に耳を傾けるつもりはなかった。ダンスホールからも歓声が響き、一層の盛り上がりを見せてはいるが、ギャングAが聞こえないフリをしているのは断定できる。
ことほぎは困ったような表情を作り、「退屈はしていたから、ありがたいんですけど……」と助け船を出そうとするウィルドに対し言葉を濁す。
一方で、ウィルドが背にしたダンスホール側では、イズマが多くの客を盛り上げていた。ミキサー、ターンテーブルなどがあるステージの上に立つイズマは、いつの間にかDJと化し、熱気高まるダンスホールを演出している。それが数珠つなぎで起こるトラブルの前振りであることなど知るはずもないイザールは、2人の前で締まりのない表情を見せていた。
青年らからイザールを紹介されたライは、渾身の上目遣いで愛嬌を振りまく。
「こんなステキなお店を任されるなんて、すごいんですね~」
エクスマリアも態度を一変させ、イザールに気を持たせるような言動を繰り返す。
「きっとイザールさんが、頼りになる方だからでしょうね」
イザールとは違い相手にされない青年らは、すごすごと席に引き返していく。
媚びを売るエクスマリアとライに気を取られていたイザールだったが、しばらくしてバーテンに突っかかるバルガルの存在に気づいた。
仲裁に入ろうとしたバーテンにも、バルガルは高圧的な態度を崩さない。
「で、何が言いたいのですか? あなたが代わりに弁償してくれるんですか?」
とげとげしい声を響かせるバルガルによって、次第に店の空気も剣呑としたものに変わっていく。
エクスマリアはバーテンや客と揉めるバルガルを見て、「なんだか、怖い方もいるのですね……」とライと顔を見合わせてみせる。イザールに対し、エクスマリアは懇願するような眼差しで続けた。
「警備がしっかりしている安全なお店でないと、今後もここに来るのを許してもらえなくなっちゃいます……」
イザールの用心棒としての手腕を頼り、不安げに体をすり寄せるエクスマリアとライ。イザールは軽くエクスマリアの肩に触れながら、バルガルをすぐに退店させることを約束した。エクスマリアに触れるイザールの下心が透けて見え、ライは鬼のような形相で舌打ちする。音楽にかき消され、イザールはそのことに気づかなかった。
店内の各所に不穏な空気が流れ、各々が揉め事の中心となってほぼ同時に進行していく。険悪なムードがピークに達しようとしたとき、不意にBGMが止まった店内に、イズマの声が響き渡る。
「ちょっとした手品を見せようか――」
DJとしてステージの上に立っていたイズマは、おもむろに懐からあるものを取り出した。
「さて皆さん注目。これ誰のかな?」
そう言ってイズマが手にしていたのは、複数の財布だった。それを見た客の何人かは、財布を手にしたイズマに釘付けになる。財布の中身を抜き取ったイズマは、空の財布だけをダンスホールに放り投げた。
笑えないイタズラに激昂し、イズマに詰め寄ろうとする客たちがステージの方へと近づく。ステージ上のイズマは客たちの反応にはお構いなしに、タクトを振り上げるような動作を見せた。全員の注意がイズマに向けられ、イレギュラーズ一同はその動きから多くを察する。
イズマを中心にして発生した音の衝撃波は、店全体を揺るがす。その衝撃によって押し退けられた周囲の客たちは、ドミノ倒しのように転倒していく。
揉め事に対処しようと近づいてきた用心棒やテーブルなどを盾にすることで、他のイレギュラーズは衝撃を凌いだ。
一挙にパニック状態と化した店内では、客同士の諍いから続々と喧嘩に発展する。その先陣をほぼ同時に切ったのは、バルガルとウィルドであった。衝撃波を受けた直後を容赦なく狙い、2人は盾突いた相手を瞬時に叩きのめす。駆けつけた用心棒もまともに相手をできず、ウィルドの拳、バルガルのナイフの餌食となる。
混沌と化す店内から外へ逃れようと、正面側の出入り口には多くの客が殺到した。その客たちを押し退けて店内に分け入ってきたのは、刀を構えたピリムだった。
ピリムを見た客たちの表情には一斉に緊張が走る。客たちは今以上のトラブルが起こるのを恐れ、そそくさと店外へ立ち去っていく。最悪のトラブルが予見されるピリムの姿にも気づかず、乱闘を続ける者らも大勢いた。そんな中、1人の用心棒――用心棒Aが不審人物であるピリムに対し果敢に咎める。
「イザールたそはどこですか?!」
鋭い声を上げるピリムは、その言動からイザールとの痴情のもつれを匂わせる。
「イザールたそに会わせるまで、出ていきませんよ!!」
ピリムは刀を振り回し、『自暴自棄になったヤバい女』を演じる。押えつけようとした用心棒Aの腕を斬りつけ、他の店員に対しても八つ当たりのように飛び蹴りをかまし、ピリムは大いに暴れ回る。
ギャングらが加勢しようとも、イレギュラーズは相手に引けを取ることはなかった。クラブの用心棒らは慌てた様子で喧嘩する客同士を仲裁しようとし、イレギュラーズばかりに注意を割く訳にもいかなくなる。
「いや飲んだ飲んだ。さァてボチボチ帰るか」
そうつぶやいたグドルフは、当然のように伝票の存在を無視し、何食わぬ顔で店を後にしようとする。用心棒Bは、料金を踏み倒そうとするグドルフに目聡く気づいた。
グドルフは呼び止められたものの、「あーそういうのいいから」と相手にしようとせず、用心棒Bをかわそうとする。用心棒Bが強引にグドルフの腕をつかむと、グドルフは途端に鋭い眼差しを向ける。
「うるせェなあ、どけ」
そう言った直後、グドルフは用心棒Bの顔を躊躇なく殴打した。
店内の各所で暴力行為が横行する中、バルガルに対処しようとしたイザールは返り討ちに合う。バルガルのナイフと一体化している鎖によって、イザールのは片足は絡め取られた。その鎖によって引き倒された直後、イザールの顔すれすれの場所にナイフが突き立てられる。反射的にバルガルを見上げるイザールに対し、
「こんな喧嘩にも負けるってんなら大人しくしていた方が良かったですのに」
殺気をにじませるバルガルは、「あぁ、そうだ一つだけ」と更に言い添える。
「――此方に敵対してきた以上、無番街で煙草咥える暇があるとは思わないように」
極めて不愉快そうにイザールに凄むバルガルに向けて、ギャングCは拳銃の引き金を引いた。しかし、撃ち損じた弾丸は壁面の電飾に当たり火花を散らす。
カウンターテーブルを遮蔽物にしようと、バルガルはテーブルを乗り越えてその裏側に飛び込んだ。そのまま引きずられたバルガルは、テーブル正面の中央に的のようにして釣られる状態になった。
イズマは逃げ遅れる者を出さないように、音を操る自らの能力を駆使して援護する。
「……よし、もういいな」
カールトンの部下、ウエイターがこそこそとオフィス側のドアから出入りするのを認め、
店外へ退避したことでイズマはつぶやいた。その手から眩い光を放ち、イザールらの動きを封じると共に、イズマは更に視界を遮る煙幕を発生させる。盗み出した財布の中のすべての金をステージの隅に置いて、イズマは店から姿をくらました。
イズマの支援もあり、各々クラブから退散したイレギュラーズは、うまく追手を振り切ることができた。
ナイトクラブでの騒動はパリピの間で話題になり、物見高い客が増えたりもしたとか。その後、イザールの姿をクラブで見た者はいなかった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
今回、殺しはNGでしたが、何かしら気持ちよく悪役ロールできる依頼を今後も考えていきたいです。
GMコメント
ダンスしたり、ナンパしたり、音楽や飲みニケーションを楽しんだりするあのナイトクラブに潜入するミッションです。
※未成年に見えるキャラが飲酒、喫煙する描写はできませんのでご了承ください。
●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『海洋』における名声がマイナスされます。また、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
●シレンツィオ・リゾートについて
https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio
●シナリオ導入
多くの客が集い、音楽の盛り上がりと共に高揚感で満ちる店内──あなたたちイレギュラーズは無事にナイトクラブに潜入を果たした。そこで警備主任のイザールと特徴が一致する人物を見つける。イザールは店の奥のソファー席、VIP専用席で客と談笑しているようだ。その客たちはイザールと同様に屈強な男たちで、見た目からして裏社会オーラをムンムンに漂わせている。
爆音のダンスミュージックが響くナイトクラブ独特のテンションぶち上げな雰囲気をしばらく楽しむのもいいが、どのようにイザールの注意を引きつけるか考えなければならない――。
●成功条件
騒ぎを起こし、イザールの注意を充分に引きつけた後、店外へ脱出すること。(相手を戦闘不能にするなどは許容範囲、それ以上はNG。カールトンから依頼されたことを気づかれてはいけない)
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●戦闘場所について
吹き抜けのダンスホールをメインフロアとし、その周辺や2階にVIP専用の席やブースが設置されている。ちなみにブースは予約制だが、カールトンに頼めば確保してもらえる。
1階、2階それぞれに店のオフィスに通じる入り口がある。
●イザールやその他の敵について
海種のイザールの他にも、人間種の用心棒5人が警備を務めている。
クラブに来ている6人のイザールのギャング仲間は、いずれも海種。敵対する恐れがある対象は計12人。
主に【物至単】の攻撃を扱うことが予測されるが、イザールの仲間の何人かは、中距離系の拳銃を所持している恐れも考えられる。
個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。
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