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シナリオ詳細

ちょっと危険なマリンスポーツ大会

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 九月中旬。
 晩夏から初秋へと差し掛かろうかという時期だが、ダガヌ海域を始めとした海洋では、まだまだ夏真っ盛りの暑さだ。
 なので、フェデリア島のようなリゾート地では、観光客が途切れず訪れている。
 それはフェデリア島のような大規模リゾート地だけでなく、海洋の島々でも同様だ。
 大手に負けないよう、それぞれ特色を生かした観光地として頑張っている。

 けれど、どこも巧くいっているわけじゃない。
 場所によっては、閑散とした島もある。
 Meer=See=Februar(p3p007819)が訪れている島も、そのひとつだった。

◆  ◆  ◆

「わぁっ、面白いねー、これ」
 高圧水流を吹き出す機械に乗り、浮かび上がったMeerは歓声を上げる。
 Meerが乗っている機械は、練達の科学者が作ったものだ。
 なんでも旅人から得た知識で作ったらしい。
 板状の機械に、靴のような足を嵌める部分があり、ホースが繋がっている。
 ホースから送られた高圧水流を噴射し、その勢いで浮かび上がっているのだ。
「楽しいねー」
 巧くバランスを取りながら浮かんでいるMeerに、依頼人のヴァンとリリスが呼び掛ける。
「そろそろ機体のチェックするので降りて来て下さーい」
「冷たい物用意してるわよー」
「分かったー」
 Meerは水流の勢いを落とし、ゆっくりと着水。
 靴に当たる部分から足を引き抜き、試乗していた高圧水流噴射式浮上装置を持って砂浜に上がる。
「これ、誰に渡せばいいの?」
 Meerの問い掛けに、練達の科学者であるニコラが応える。
「儂に渡してくれ。不備がないか確かめる」
 ニコラに渡し、Meerは砂浜に設置されたテーブルに向かい椅子に座ると、冷たく冷やされた炭酸飲料で喉を潤した。

 Meerが島にいるのは、少し前の依頼の縁だ。
 他のイレギュラーズと共に、島に上陸する深海魔を倒し、フリーパレット達とマリンスポーツをしてあげることで成仏させてあげた。
 そのあと島の元々の目的である、マリンスポーツを目玉にしたリゾート地開発を手伝ってあげていた。
「操作性は どうでした?」
 ヴァンに訊かれ、Meerは応える。
「慣れたら大丈夫。でも最初は、教えてあげる人がいると良いかも」
「やはり誰でもすぐ使える、というわけにはいきませんか」
「となると、やっぱり最初は見世物として始めた方が良いわね」
 リリスが考え込むように応えた。
 いま話しているのは、島の目玉となる物についてだ。
 島は定期的に好い波が来るので、サーフィンなどのマンスポーツを主眼に置いているのだが、色々と種類をどうするかで思い悩んでいる。
 観光客が自発的に楽しめるようにすることも必要だが、観光地として積極的に働きかけることも必要だ。
 その一環として、マリンスポーツの大会をして客引きに繋げることを考えていた。
「ひとつは、いまやって貰った物でいきましょう」
「こっちはパフォーマンス性に重きを置いた、芸術点で競う物になりそうですね」
「器械体操とか新体操とか、そんな感じね。でもそれだけだと物足りないから、競技性のある物も欲しいわね」

 ということで、協力しているMeerは、海上にいた。

「それじゃ、そこから砂浜まで目指して進んで下さい」
「いいよー」
 船に乗って並走しているヴァン達に応えると、Meerは大きめのサーフボードに乗り、パドルで海水を漕いで砂浜を目指す。
 いわゆる、立ちこぎボードというヤツだ。
 沖合から砂浜まで目指すレースの試しをしている。
「どんな感じかしら?」
「好い感じー。余裕があるかも?」
 バランスを取る必要はあるみたいだが、危なげは無いようだ。
「のんびりしたレースになりそうですね。波次第でしょうけど」
「そうね。途中に障害物を置くっていう手もあるけれど――なにしてんの?」
 何やら機械を弄っているニコラに、嫌な予感がしてリリスが訊くと、平然とした声で応えが返ってきた。
「この前、B級映画のノリでタコとイカ倒して貰ったじゃろ」
「そうね」
「あの時、B級映画チックなノリになる、謎な空間が発生したじゃろ」
「……あんたまさか」
「再現しようと思ってな」
「何か作ってるとは思ってたけど……それで、どうなの?」
「さて? 試しに起動させてはいるが、なんも起らんの」
「そういうこと言ってると、フラグになるんじゃないですかね?」

 フラグになった。

「キシャー!」
 突如、海中から現れる半漁人。
 深海魔、フォアレスターだ。
 フォアレスターは、リリス達が乗る船に手を掛け乗り込もうとし――
「危なーい!」
「ギャー!」
 Meerがサクッと倒した。
「今の内に、砂浜に向かおう」
 Meerの言う通りにするリリス達。
 その間も何度かフォアレスターが現れるが、サーフボードに乗ったMeerがザクザク倒し、無事に砂浜に上陸。
 すると、フォアレスター達はいなくなった。
「なんだったんですかね?」
「B級映画空間発生させつつ、さっきの海域に行ったら湧いて出るんじゃないかの?」
「ってことは、あの辺りに行ったら誘き寄せる事も出来るってことかしら?」
「その可能性は高いのぅ。どうするんじゃ?」
「あいつらを障害物にした立ちこぎボードレースをして貰いましょう、ローレットに依頼出して」
 一挙両得を狙ってリリスは言った。
「あんな危ないのがいたらリゾート地に出来ないから駆除して貰って、ついでに、大会をしたっていう実績も作るわ」
「宣伝用ってことですか?」
 ヴァンの問い掛けにリリスは応える。
「ええ、そうよ。どのみち島をリゾート地として実働するのは来年になるから、今年は準備と宣伝の年と思って割り切りましょう」
「それなら、大会する必要はあるかのぅ?」
「あるわよ。宣伝するのに実績あるのとないのじゃ反応が違うし。でも嘘を宣伝するわけにはいかないから、実際にやって貰いましょう」
 そう言うとリリスは、Meerに提案した。
「そういうわけで、マリンスポーツの大会をするついでに、危ないのの駆除をローレットに頼もうと思うの。引き受けてくれないかしら?」
「ちょっと待て。B級映画空間は実験中なんじゃが」
「頑張って」
 無慈悲にニコラに応えると、笑顔でMeerに言った。
「もし良かったら、考えておいて」
「分かった。考えておくね」
 応えるMeerだった。

 などということがあり、ローレットに依頼が出されました。
 内容は、マリンスポーツ大会をしつつ、フォアレスターを駆除して欲しいというもの。
 理由は謎ですが、竜宮幣を持って海上にいると襲撃してくるようなので、それを倒してくれとのことでした。
 依頼内容を聞き、引き受けたイレギュラーズ達は、早速島に向かうことにするのでした。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
今回は、アフターアクションでいただいた内容を元に作った物になります。

そして、以下詳細になります。

●成功条件

マリンスポーツの大会をしつつ、フォアレスターを駆除する。

●方法

船で沖合まで運んでくれます。
そこから、大きなサーフボードに乗って砂浜を目指します。
依頼人が船でB級映画空間発生装置を起動させると、フォアレスターが現れるので倒しましょう。
依頼人にB級映画空間発生装置を起動させたままにして、餌にする形でフォアレスターをまとめて誘き寄せて倒すとかも出来ます。
依頼人を餌にしても成功率は下がりません。

●マリンスポーツ

二種類行います。

1 立ちこぎボード

大きめのサーフボードに乗り、沖合から砂浜を目指しパドルで漕いでいく競技です。
道中、フォアレスターが出て来るので倒しつつゴールを目指して下さい。
敵となるフォアレスターは雑魚ですが、今回のフォアレスターは特に雑魚です。
なのでサクッと倒せます。

立ちこぎボード競技なので、泳いだりしてゴールを目指すのは反則になります。
戦闘で一端海に入ったり、浮遊したりはオッケーです。

2 水流浮上パフォーマンス

いわゆる、フライボードです。
高圧水流で浮かび上がる機械に乗って、パフォーマンスをして下さい。

●敵

フォアレスター

半魚人型深海魔です。
首から上に魚がまるごと乗っているような造形をしており、人間と同じく武器をもって戦います。

雑魚敵ですが、今回出てくるフォアレスター達は、さらに弱いです。
出てくる数に関しては、プラン次第で多くなったり少なくなったりします。
基本、より多くのフォアレスターを誘き寄せて倒すことを目指していると、出てくる数が多くなります。

●流れ

今回は、以下のような流れになります。

1 島に到着。必要な物などあれば、この時点で用意してくれます。

2 立ちこぎボード競技開始。フォアレスターが障害物として出てくる中で、倒しつつゴールを目指しましょう。

3 水流浮上パフォーマンス。どんなパフォーマンスをするかプランにお書きください。

●NPC

依頼人

リリス&ヴァン&ニコラ

必要な物を用意してくれます。

立ちこぎボード競技の時は、船に乗って並走してます。
餌にして敵を誘き寄せるのに使ったりしてもオッケーです。

放置しても死なないぐらい強いので、餌にしても問題なしです。
餌にされたからといって、PC達にきつく当たるとかは無いです。

●情報精度

このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。

説明は以上になります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • ちょっと危険なマリンスポーツ大会完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月24日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
Meer=See=Februar(p3p007819)
おはようの祝福
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

 観客を盛り上げるように、『出張店『隠れ宿polarstern』』Meer=See=Februar(p3p007819)は元気良く言った。

「絶好のマリンスポーツ日和! 今日もめいっぱい楽しもうねっ」
 歓声が上がる。
 前日からMeerが晴天祈願をしてくれたお蔭か、気持ちの良い青空の中、観客のノリも良い。
 人が多いのは、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も一枚噛んでいる。
「実況や解説、あと宣伝を頼みたくて。観客は多い方が楽しいし」
 領民を呼んでくれている。渡航は依頼人が手配しており、宣伝も兼ねリゾート宿泊券や食事券を渡していた。
 掛かる費用は屋台などで回収しているようだ。それを見て――
「つくづく商魂の逞しい連中だ」
 苦笑しながら言ったのは、『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)。
 依頼人によろしく頼まれ、応えを返す。
「マリンスポーツなぁ……種族柄泳いだり船を操るだけなら日常茶飯事だが、この手のモンにはとんと縁がねぇんで、期待せんでくれると有難いね。というか、アレだ――」
 提案するように言う。
「海洋じゃ有名なやつらがこんだけ揃ってるんなら宣伝効果は充分だろうし、か弱いおっさんは特別審査員枠って形でも……そういうのはねぇって? やれやれ作戦失敗か、仕方ねぇな」
 そこまで言うと、怪しい機械を調整しているニコラを見て尋ねる。
「……それはそうと、B級映画空間発生装置ってのは何だい?」
「B級映画っぽいことが起り易くなる謎空間発生装置です」
 応える依頼人のヴァン。それを聞いて――
「つまり! B級映画らしく、レースをすれば深怪魔たちを、たおせるのでしょうか……?」
 疑問を口にしたのは、透き通った尾が綺麗な『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)だ。
「映画には、くわしく、ありませんけれど、お力になれるよう、がんばりますの」
 ノリアの言葉に礼を言う依頼人。
 その間も準備は進み、水着に着替え用意万端な者も。
「カンちゃん、今日はいっぱい楽しんでね」
 夫である『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)に、『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は笑顔を浮かべる。
 2人の姿は、史之が白のサーフパンツにエメラルドグリーンのパーカー、睦月は白のフリルたっぷりビキニ。
 リゾート地に遊びに来たカップルといった出で立ちだ。
「しーちゃん。海洋のためにも、いっしょにがんばろうね」
 史之が喜んでくれるよう、内心ちょっと複雑な気持ちはあるものの、睦月は一生懸命だ。これに史之は――
「うん、一緒に頑張ろう」
 笑顔で応えた。
 仲の好い2人を見てリリスは、依頼が終ったあと島で2人がゆったりできるよう手配してくれた。
 そうした気遣いを依頼人は皆にしている。
「食べたいもの?」
 希望を訊かれ、青い海を思わせる水着に、同じ色合いのパラソルを手にした、『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は応える。
「戦いながらボートをこぐのってつかれそうだから、トロピカルなジュースや甘いデザートが食べたいな」
 手配するリリス。
 後の楽しみも出来たので、やる気が盛り上がる。
「えーと、ボートに乗りながらB級えいがっぽく出てきたフォアレスターをたいじ……?」
 少し考えて――
「よくわかんないけどわかった!」
 リリス達に言った。
「そうち? とかいうので引きよせるなら、おとり、がんばってくれたら話ははやいね! まかせたよ!!」
 リリス達は快く引き受けた。
 皆にリリス達は話を聞いて回り、『元魔人第十三号』岩倉・鈴音(p3p006119)にも声を掛けた。
「服、それで好かったかしら?」
 今の鈴音の姿は、リリス達が用意したゴスロリ服。
 可愛らしく、体型はふんわりと目立たないようになっている。
 声を掛けられた鈴音は、競技を十全にするため尋ねた。
「操作手順を教えて貰えないか? 生物なら乗りこなす自信はあるんだが、コレは分からないからな」
 コツを教えて貰い――
「安全で楽しいレースにするとしよう」
 気合を入れると、観客達が声援を送った。

 声援を受けながら船で沖合に向かい、ボードに乗り大会が始まった。

●倒して進め!
 スタートと同時に動いたのはリュコス。
(わぁ、いっぱいいる)
 優れた感覚で海中の敵を知覚。
(ふねに、向かってる?)
 囮を頼んだ効果があったようだ。
 海中から船に上がろうとする敵を、魔力で作り出した大顎で噛み砕く。
 すると仲間がやられ興奮したのか、わらわら出てくる。それを倒しながら納得する。
(B級えいがって、こういうのなんだ)
 巧みにボードを操作しながら、近付く敵は切り裂き、時に跳ね上げ魔力の大顎で粉砕。
(こんなかんじでひたすらおそわれるのが、B級えいがなんだね。エキサイティング)

 次々現れる敵。
 数では不利だが、覆すようにイズマは動く。

「響奏術を掛けるよ!」
 仲間に知らせるため声を上げながら加護を付与する。
 ギフトも相まって、歌うように祝福のハーモニーが奏でられた。
(これで水中に引き摺りこまれても大丈夫)
 効果切れの時間を考慮に入れながら戦う。
(船に集まってるな)
 囮の効果が出ているが放ってはおけない。
 優れた機動力を強化し、瞬く間に船に近付くと、紫色に染まる終焉の帳を展開。
 纏めて薙ぎ払い船の安全を確保した上で、新たに近付こうとする敵は神聖な砲光で消し飛ばした。
(この調子でいけば問題ないな。どうせなら、討伐数も競ってみるか?)
 巧みにボードを操作しながら、目覚ましい勢いで敵の数を減らしていった。

 次々現れる敵を皆は倒していく。

(よし、コツは掴めた)
 僅かな時間で要領を得た縁は、慣れた動きでボードを操る。
(ボードの真ん中に立って、足は肩幅程度に開いて目線は遠く。身体は曲がらねぇよう胸を張るっと……基本は大事だね)
 安定した動きで敵に近付くと、斬り裂いていく。
「ほら、こっちだこっち」
 挑発され、敵は怒り狂ったように叫びながら襲い掛かって来るが、縁は巧くボードを操作し翻弄する。
 翻弄される敵は叫び続け、引き寄せられるように数が増えていく。
(よし、釣れたな)
 引き付けを意識して縁は動きながら、敵の気の流れを探る。
(流れの要は……ここか)
 周辺の気脈も同時に感じ取り、自身の気を通して干渉。
 まるで激しい引き潮に曝されるように敵は自由を奪われ、内部から荒れ狂う気の乱れで、内側から裂けていった。

 皆が敵を倒す中、勇猛果敢に戦っているのは鈴音。

「かかってこい。わが聖王封魔の餌食にしたるわ~~!」
 サメぐるみを抱きつつ、敵の引き付けに動く。
 ゴスロリ姿でサメぐるみを抱いているので、B級映画のノリで敵がわらわらやって来る。
 加えて、サメぐるみ自体も敵を引き付けやすい効果を持っていたので、結構山盛りで来た。
 それを蹂躙するように、鈴音は光輝の魔術を放つ。
「数を揃えれば勝てると思うな~!」
 魔術で生み出した光の縛鎖が敵を縛り上げ、そこに攻性魔術を叩き込み次々倒していく。
 しかし数が多く、ボードに乗ったままでは仕留める勢いが上がらないので――
「水中でやらせてもらう!」
 海に飛び込むと、今まで以上の勢いで蹴散らしていった。

 次々湧いて出る敵。
 あまりの多さに、疑問を持つMeer。

(それにしても半魚人はどこから来てるんだろう? あの装置が呼び込んでる?)
 だとすれば取扱いが気になる。
(うーん、危ない機械は島にとってもよくないんじゃないかなぁ。あとで注意しておかなきゃだね)
 あとで注意を受けることが決まったリリス達。
 それはそれとして戦闘に集中する。
(B級映画? っていうは調べてもよくわかんなかったけど、美男美女が狙われるのはホラーとかパニックものの定番だよね? だったら、ギフトで変化したら寄ってこないかな?)
 試しに、ギフトでにゅるりと姿を変える。
 すると今回は、妙齢の美女の姿に。
 途端、わらわら敵が集まってくる。
「きゃーこわーい! ……なんちゃってね!」
 か弱く引き付けた所で、進路上の敵に向かって火焔を振るう。
 ごっそりと焼かれ海底に沈んでいく。
(やっぱり、あまり強くないね。まとめて薙ぎ払って――)
 進路上だけでなく船に群がる敵も焼き払った。
(このまま進めて――)
 敵を倒すだけでなく、大会のことも考えてくれている。
「安全確保しなきゃ、次の競技も出来ないしね!」

 皆は勢い良く倒していく。
 中には、ピッタリ息を合わせ倒していくカップルも。

(リリスさんたちには、ちょっとお休みしてもらって――)
 睦月は囮役になるため、夜に咲く花のように、目を向けずにはおれない魅力をみせ、人外であろうと引き寄せた。
 艶やかな花を摘もうとするように敵が近付く。
 けれど睦月は、映えるオール捌きで避けながら、招き寄せるように唄を歌う。
 その仕草は自然で、強張った所は無い。
(しーちゃんといっしょに練習した成果が出てるかな?)
 一緒に練習した時のことを思い出し、自然と笑みが浮かぶ。
 その表情には、敵に囲まれていても恐怖は無い。
 なぜなら睦月には、頼りになるしーちゃんがいるからだ。
「大切なご主人さまへは指一本触れさせないよ」
 睦月に近付く敵を、史之は巧みにボードを操作し叩き切る。
「カンちゃんに、指一本でも触れられると思わないことだね」
 自身に加護を付与して高揚しているのか、勢い良く戦っていく。
 睦月を守るように蛇行しながら進み、尽くを斬り伏せる。
 史之を信頼している睦月は、彼を援護するように魔力を乗せた歌を響かせる。
(しーちゃんが安心して動けますように)
 睦月の願いを込めた加護を受けた史之は、不意に押し寄せてきた高波に乗ると、敵の頭上を飛び越えながら鋭い刃を振るった。
 史之は翻弄するように敵を誘導し1か所に集めた所で――
「カンちゃん」
 見せ場を作ってあげる。
 応えるように、くるりと睦月は反転し、残った敵の群れへ突っ込み紫色の終焉の帳を放つ。
 避ける事など出来ず、敵はまとめて倒された。

 敵を引き付けながら倒す中、一番引き付けたのはノリアだ。

(B級映画に、必要なのは……犠牲者役ですの)
 囮としてどうすれば一番か考える。
(犠牲者は、目立って、鼻持ちならないのが、お約束。心苦しくは、ありますけれど……悪役令嬢風の演技を、心がけますの)
 B級映画のノリをとても良く分かっている。なので――
「わたしの、つるんとしたゼラチン質のしっぽの美しさは、世界一ですの」
 ボードに伏せた状態で乗りながらアピール。
「変化したら、この尻尾が、見えませんの……わたしだけは、立ち乗りではなく、伏せて乗るのが、当然ですの」
 魅惑的な柳葉状の尾を、ちょこんと海につける。
「このとおり……しっぽを、海につけたって、なにも出てなんて……えっ」
 めっちゃ一杯来た。
 お前、尾っぽ美味そう丸齧り。
 ぐらいの勢いで敵が押し寄せる。
 憐れヒロインは海に引き摺りこまれ――というように見えるだけで、海中では敵の方がズタボロにされている。
 美味しそうな尾に釣られ近付けば、熱水を吹き出す杖で煮られ、反撃しようにも、ノリアを包むように守っている水球が棘状になり刺し貫かれていた。

 ガスガス敵を倒し、出て来なくなった所でレースは終盤。

「そこのけそこのけワタシがとおる~」
 先行するのは鈴音。
 海に飛び込んでザクザク敵を倒し妨害を完全排除した上で猛ダッシュしたのが効いている。
 そこに物凄い追い上げをするのはイズマ。
 少し遅れて皆も追い駆けていき――
「一等賞ー!」
 ギリギリ逃げ切った鈴音が一位になった。

 一端休憩を入れて、次は水上パフォーマンス競技。

「こいつの扱い方はどうやるんだったかねぇ」
 早く終わらせて一休みしようと、縁が一番手で出る。
「――あぁ、ひざは曲げずに身体は真っ直ぐ、か、了解」
 要領を聞いてそつなくこなす。とはいえ――
(パフォーマンスしなきゃならんのだよな……)
 観客に期待感のこもった視線を向けられ、工夫する。
 突如高く浮かび上がると、その反動で振り落とされる。
 あわや事故か? と観客が息を飲む中、竜を思わせるウィーディーシードラゴンに変化した姿を現す。
 途端、拍手が上がる。
「……やれやれ、イルカにでもなった気分だ」

 終わったのでのんびり一休み。
 二番手は、リュコス。

「わわっ……けっこう高く上がるんだね」
 思ったより高いので驚いてると、観客の応援が飛んできた。
 手を振って応えると、盛り上げようと頑張る。
(ちょっぴりきんちょうするけどここは――)
 勢いを強め、ジャンプするように跳ね上がる。
 暴れ馬のような勢いだったが、空を跳ねるように浮かんでみせた。
(よし、このままの勢いで)
 跳ねたかと思えば急降下。
 落ちそうな所で再び跳ね上がり派手な動きで魅せていく。
(思ったより、たのしいね)
 魅せるだけでなく楽しんで、観客を盛り上げた。

 終わったあとは、リリス達が用意してくれた冷たいドリンクと甘い物で一休み。
 三番手は、鈴音。

(今までの演技を参考に)
 ゴスロリ服を着たまま、鈴音は競技に参加。
 日傘さしながら優雅に一回転すると、手伝いのリリス達がお茶のポッドを投げ空中でキャッチ。
 カップも受け取り、優雅に飲みながら空中を華麗に飛び回る。
 拍手が湧いた所で、ゆっくりと降り競技終了。

 競技が終れば、持って来ていた馬車を簡易医療室にして待機する。
「大天使の祝福もあるから、何かあっても大丈夫。必要ない怪我? ツバつけときゃ治るッ!」
 怪我の対応も万全な中、四番手はノリア。

(観客の皆様を、沸かせられれば、いいのですけれど)
 不安を感じるノリアだったが、それは杞憂だった。
 空を泳ぐように飛び回り、極技二刀流の動きを活かした巧みなパドル捌きで、バトンのように操ってみせると大歓声。
(喜んで、貰えてますわ)
 楽しげな笑顔に応えるように、華麗に飛び回り、さらに観客を沸かせた。

 演技が終わっても歓声が向けられる。
 それに手を振って応えてあげる、ノリアだった。
 盛り上がる中、睦月と史之はペアで出る。

「じゃ、始めようか、カンちゃん」
「うん」
 少し恥ずかしがる睦月を、史之は背中から抱きしめると、2人でゆっくり浮かび上がる。
 見上げるほどに浮かび、空の青と映える中、円を描くように飛んでいく。
 少しずつスピードを上げ、すっと離れると、2人で向かい合うようにして飛び回る。
 その息はピッタリで、ぶつかりそうな程ギリギリまで近づくと双曲線を描く。
 湧き起る拍手。
 応えるように2人は飛び回ると、最後の締めに大きなハートを描くアクロバティックな動きを見せた。
(し、新婚だから、これくらいは許されますよね? えへへ)
 睦月の想いを祝福するように、さらなる拍手と歓声が沸き上がった。

 演技が終われば、リリスが用意してくれたカップル席でゆったりとする睦月と史之。
 場が盛り上がる中、次に出たのはMeerだ。

「いくよー、みんなー」
 観客に呼び掛けて、楽しく歌いながらMeerは盛り上げる。
「天高く舞おう♪ さあ、僕らは青い海の上♪」
 Meerの歌に合わせ、観客は手を鳴らす。
「波飛沫と一緒に♪ 心臓も跳ねる、跳ねる♪」
 心から楽しもうというように、唄う、歌う。
「声高く笑おう♪ ほら、みんな青い空の下♪」
 天真爛漫に、皆で楽しもうという呼び掛けに、観客も応える。
 手を叩き、歌に合わせ歓声を上げ、笑顔が広がっていく。
 Meerはベルで伴奏しながら心のままにクルクル回り、失敗しそうになってもスマイルスマイル!
 観客と一緒に楽しみながら、Meerは演じきった。

 拍手を浴びながら競技を終わらせると、今度は屋台を引いてpolarstern出張店を開店。
 リリス達も手伝う中、B級映画空間発生装置についての懸念を伝えると、使い所に気を付けると応えが返って来た。

 盛り上がりが続く中、大トリを務めるのはイズマ。

(エキシビジョンなら音や光を使ってもいいかな?)
 イズマは使える技能は全て使い、観客を魅せていく。
 最初に勢い良く飛ぶと、脚を動かして水しぶきを上げ、スピンや宙返り。
 脚を軸に全身でバランスを取り、高く飛んでポーズを決めた。
 拍手が上がった所で、今度は舞踏を思わせる洗練された動きで魅了する。
(みんなのお蔭で観客も盛り上がってる。これならさらにギアを上げても大丈夫だな)
 洗練された動きに、アクロバティックな派手さも加える。
 さらにギフトで動きに合わせて軽快な音を響かせ、相乗効果で観客を大いに沸かせた。
 広がる拍手と歓声。
 それをさらに広げるように演技を続け、最後にひときわ高く飛び上がり急降下すると、海面に落ちる寸前で軽く水を噴射させ優雅に着水。
 締めのポーズをとると、大きな拍手が響いた。

 競技は終わり、審査発表。
 皆が高得点の中、洗練さとアクロバティックな動き、それに合わせた軽妙な音も使い観客を沸かせたイズマが優勝となった。

 終わった後も、観客達は笑顔のまま。
 島に訪れた皆を笑顔にしてくれた、イレギュラーズ達であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

皆さま、お疲れ様でした!

皆さまのお蔭で、島は良い評判が立ち、観光客の興味を惹くことが出来ました。
地元に戻った観光客は、楽しい想い出を家族や友人に話し、更なる観光客が増えることでしょう。
それも、皆さまがノリ良くご参加いただけたお蔭です。

それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

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